逆浸透膜エレメント交換装置
【課題】圧力容器に対する逆浸透膜エレメントの装填作業の自動化を図ると共に、作業の安全性を維持することのできる逆浸透膜エレメント交換装置を提供する。
【解決手段】ロール状に形成されたRO膜エレメント80を長手方向に寝かせた状態で載置する載置台12と、載置台12を昇降させる昇降手段と、載置台12をRO膜エレメント80の載置方向と平行に移動させる平行移動手段と、載置台12に載置したRO膜エレメント80を圧力容器(ベッセル92)に押し込む押込手段15と、を備え、押込手段15は、RO膜エレメント80の長手方向長さ以上の押し込み量を有する構成としたことを特徴とする逆浸透膜エレメント交換装置。
【解決手段】ロール状に形成されたRO膜エレメント80を長手方向に寝かせた状態で載置する載置台12と、載置台12を昇降させる昇降手段と、載置台12をRO膜エレメント80の載置方向と平行に移動させる平行移動手段と、載置台12に載置したRO膜エレメント80を圧力容器(ベッセル92)に押し込む押込手段15と、を備え、押込手段15は、RO膜エレメント80の長手方向長さ以上の押し込み量を有する構成としたことを特徴とする逆浸透膜エレメント交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜エレメントの交換に用いる装置に係り、特に、長尺なベッセルに対する逆浸透膜エレメントの装填に好適な逆浸透膜エレメント交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜エレメントを用いた海水淡水化設備において、逆浸透膜エレメントを交換する方法としては、特許文献1に開示されているようなものが知られている。具体的には、圧力容器(ベッセル)内に装填された複数の逆浸透膜エレメントのうち、ベッセルにおける一方の開口部(供給水側あるいは透過水側)から、使用済みの逆浸透膜エレメントを抜き取ると共に、他方の開口部から新たな逆浸透膜エレメントを装填するというものである。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている逆浸透膜エレメントの交換方法は、メンテナンス期間を短く(実施形態中では1年単位)し、端部の逆浸透膜エレメントだけを交換するというものである。このような方法では、メンテナンス頻度が多くなり、稼動効率が悪いという問題がある。また、特許文献1に開示されている方法では、ベッセルの開口部における供給水側と透過水側の双方に作業員が必要となるため、交換作業には、必ず複数の作業員が必要となり、作業効率が悪いといった問題もある。
【0004】
しかし、海水淡水化設備の稼動効率を考慮し、ベッセル内に装填された逆浸透膜エレメントの全数交換を行う場合には、次のような問題があった。海水淡水化設備は近年、処理水の多量化を目的として、逆浸透膜エレメントの直径が大型化されると共に、ベッセルの長尺化による装填数の増加も図られている。このため、ベッセルに対する逆浸透膜エレメント装填時の摺動抵抗(摩擦抵抗)が増加し、装填作業、および抜き取り作業が人力では困難となるという問題が生じてきている。
【0005】
これに対し、逆浸透膜エレメント装填時の摺動抵抗の低減を図るための手段が、特許文献2に開示されている。具体的には、ベッセルの内周面に、逆浸透エレメントとの間における摩擦抵抗低減処理を施すというものである。ここで、摩擦抵抗低減処理の具体的手段としては、特に限定されてはいないが、ベッセルの内周面に凸部や凹部、滑り性の高い部材、及び回転体などを設置するというものであれば良いという。このような手段を施して、逆浸透膜エレメントの摺動抵抗を低減させれば、逆浸透膜エレメントの交換作業が容易となり、作業性も向上すると考えられる。
【0006】
この他に、作業者の作業負担を軽減することを視野に入れ、逆浸透膜エレメントの交換作業の自動化を図るための手段が、特許文献3に開示されている。特許文献3に開示されている手段は、海水淡水化設備においてベッセルを垂直方向に配置し、ベッセルに対して逆浸透膜エレメントを吊上げ方式、あるいは押し込み方式で装填するというものである。このような手段によれば、逆浸透膜エレメントを持ち上げ、回転させ、押し込むといった作業を作業員が行う必要が無くなり、作業負担が軽減されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−114239号公報
【特許文献2】国際公開第2009/104750号
【特許文献3】国際公開第2011/007326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、特許文献3に開示されているような自動化手段で交換作業を行えば、作業員の作業負担が軽減し、作業効率も向上することが考えられる。しかし、特許文献3に開示されている手段では、ベッセルが垂直配置されるため、逆浸透膜エレメントの装填数が増えるほど、引き上げ、あるいは押し込みに掛かる負荷が増大する。この負荷は、逆浸透膜エレメントの自重に重力加速度が付加されたものであるため、水平状態に配置された逆浸透膜エレメントを押し込む際の摺動抵抗(摩擦抵抗)よりも大きいことは明らかである。
【0009】
また、垂直状態に配置したベッセルに対して重量物である逆浸透膜エレメントを装填する作業には、逆浸透膜エレメントの落下といった危険が伴うため、作業の安全性に懸念が生ずる。
【0010】
そこで本発明では、ベッセルに対する逆浸透膜エレメントの装填作業の自動化を図ると共に、作業の安全性を維持することのできる逆浸透膜エレメント交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る逆浸透膜エレメント交換装置は、ロール状に形成された逆浸透膜エレメントを長手方向に寝かせた状態で載置する載置台と、前記載置台を昇降させる昇降手段と、前記載置台を前記逆浸透膜エレメントの載置方向と平行に移動させる平行移動手段と、前記載置台に載置した前記逆浸透膜エレメントを圧力容器に押し込む押込手段と、を備え、前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの長手方向長さ以上の押し込み量を有する構成としたことを特徴とする。
【0012】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置では、前記逆浸透膜エレメントを前記載置台に載せた状態で移動を可能とする移動手段を備えるようにすると良い。
【0013】
このような構成を備えることにより、逆浸透膜エレメントを保管する場所と、逆浸透膜エレメントを装填する圧力容器の設置場所との距離が遠い場合であっても、逆浸透膜エレメントの輸送作業が容易となる。
【0014】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記載置台には、前記逆浸透膜エレメントの支持部に、摩擦抵抗軽減手段を備えるようにすることが望ましい。
【0015】
このような特徴を有することによれば、載置台の支持部に搭載した逆浸透膜エレメントを押し出す際の摩擦抵抗が低減する。このため、押込手段の駆動力を低減することができる。また、摩擦抵抗による逆浸透膜エレメント外周部の損傷を抑制することもできる。
【0016】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置では、前記逆浸透膜エレメントを前記圧力容器に押し込む際の反力による前記載置台の移動を抑制する反力受を備えるようにすると良い。
このような特徴を有することにより、逆浸透膜エレメントの装填作業時に、反力による逆浸透膜エレメント交換装置の転倒や、逆浸透膜エレメントの押し込み不足が生じる虞が無くなる。
【0017】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端部に当接する当接棒と、前記当接棒を支持し、前記載置台に沿って前記圧力容器側へスライドするスライド板とを基本とし、前記逆浸透膜エレメントの下部に位置する前記載置台に駆動機構を設けた構成とすることができる。
このような特徴を有することによれば、載置台の全長を短くし、逆浸透膜エレメント交換装置全体としての小型化を図ることができる。
【0018】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端を押圧する液圧シリンダとすることもできる。
このような特徴を有することによれば、機械式の押込手段に比べて、簡易な構成で、大きな押し込み力を得ることが可能となる。
【0019】
さらに、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記液圧シリンダは、ロッドをテレスコピック構造とした多段式液圧シリンダとしても良い。
このような特徴を有することによれば、逆浸透膜エレメントの押し込み距離を長くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置によれば、従来、最も労力が必要とされていた圧力容器に対する逆浸透膜エレメントの装填作業の自動化を図ることができる。また、装填作業は、逆浸透膜エレメントを長手方向に寝かせた状態で行うため、逆浸透膜エレメントを垂直に押し込む(引き上げる)といった作業を行う従来技術に比べ、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の側面構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の正面構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の平面構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の斜視図である。
【図5】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置における載置台の構成を示す図であり、押出手段にチェーン駆動方式を採用した場合の例を示す。
【図6】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置における載置台の構成を示す図であり、押出手段にリニアガイド方式を採用した場合の例を示す。
【図7】反力受の変形形態としてのベッセル把持冶具の構成を示す斜視図である。
【図8】ベッセル把持冶具と、載置台とを連結するための連結棒の構成を示す斜視図である。
【図9】ベッセル把持冶具の使用形態を示す斜視図である。
【図10】反力受の変形形態としての床面滑り防止冶具の構成を示す斜視図である。
【図11】床面滑り防止冶具における脚部の内部構造を示す図であり、(A)は定常時、(B)はロック時を示す図である。
【図12】実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による圧力容器への装填を行う逆浸透膜エレメントの構成を示す斜視図である。
【図13】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの装填準備の様子を示す斜視図である。
【図14】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの装填状態の様子を示す斜視図である。
【図15】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置に用いる油圧シリンダの構成を示す図であり、(A)はロッドを短縮させた状態(B)はロッドを伸張させた状態をそれぞれ示す。
【図16】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの装填準備の様子を示す斜視図である。
【図17】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置により逆浸透膜エレメントを装填する様子のうち、第1ロッドを伸張させた状態を示す斜視図である。
【図18】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置により逆浸透膜エレメントを装填する様子のうち、第2ロッドを伸張させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の逆浸透エレメント交換装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1から図6を参照して、第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置について説明する。なお、図1は、第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の側面構成を示す図であり、図2は、同正面構成を示す図、図3は、同平面構成を示す図、図4は、同斜視図である。また、図5、図6は、それぞれ逆浸透膜エレメント交換装置の一部構成である載置台の構成例を示す図である。本実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置(以下、単に交換装置10と称す)は、載置台12と、載置台12を支持するベース40とを基本として構成されている。
【0023】
載置台12は、逆浸透膜エレメント(以下、単にRO(Revers Osmosis)膜エレメント80と称す)を載置するための台である。
なお、本実施形態で用いるRO膜エレメント80は、図12に示すように、中心パイプ82の外周に、袋状に形成された浸透膜84と、原水(塩分含有水)を通過させるためのメッシュスペーサ88が層を成すようにして、ロール状に巻かれている。袋状に形成された浸透膜84の内部には、透過された水を通過させるためのスペーサとして、流路材86が配置されている。このような構成のRO膜エレメント80では、一方の端板90(供給水側)における開口部から、浸透膜84間に配置されたメッシュスペーサ88部分に原水(塩分含有水)が流れ込む。メッシュスペーサ88部分に流れ込んだ原水に、浸透圧力以上の圧力を付与することで、原水中の水が浸透膜84を透過して、袋状に形成した浸透膜84内部の流路材86に流れ込む。流路材86に流れ込んだ水(透過水)は、中心パイプ82に流れ込み、他方の端板90(透過水側)の中心に設けられた孔(中心パイプ82に繋がった孔)から排出される。なお、透過されずにメッシュスペーサ88部分に残った濃縮水は、他方の端板側のメッシュスペーサ88部分から排出される。
【0024】
このような構成とされるRO膜エレメント80を載置する載置台12には、少なくとも支持部14と、押込手段15が備えられる。実施形態で用いるRO膜エレメント80は、図12に示すように、円柱形を成すものであるため、載置台12には水平状態、すなわち長手方向に寝かせた状態で載置することとなる。このような載置形態を採ることで、水平状態で配置されたベッセル(圧力容器)92(図13、14参照)に対する装填が可能となるからである。
【0025】
このような理由から支持部14は、RO膜エレメント80の載置方向に沿って配置される。本実施形態の場合、支持部14は、載置台12の幅方向端部側に、長手方向に沿って2列のライン状に設けている。円柱状のRO膜エレメント80を安定支持するためには、断面視した状態で、最低2点の支持点が必要となる。一方で、支持点を増やすことによれば、RO膜エレメント80の支持状態の安定化を図ることはできるが、RO膜エレメント80を押し出す際の摺動抵抗(摩擦抵抗)が増加することとなる。このため、支持部14を2列のライン状とすることで、摩擦抵抗の低減と、支持状態の安定化の双方の効果を得ることができる。
【0026】
ここで、本実施形態の支持部14には、摩擦抵抗低減手段14aが設けられている。なお、摩擦抵抗低減手段14aとは、RO膜エレメント80をベッセル92側へ押し出す際の摩擦抵抗を低減することができる手段であれば良く、その構成を限定するものでは無い。例えば、図1から図4に示す例では、摩擦抵抗低減手段14aとして、支持部14の先端に複数のローラを配置している。ローラの転がり方向とRO膜エレメント80の押し出し方向を一致させれば、支持部14とRO膜エレメント80との間における摩擦抵抗を低減することができるからである。また、ローラに替えて、支持部14の先端に樹脂製のレールを配置した場合でも、摩擦抵抗低減手段14aとしての体を成す。滑り性の良い樹脂(例えばポリエチレン系の樹脂)であれば、RO膜エレメント80を押し出した際の摩擦抵抗を低減することができるからである。
【0027】
押込手段15は、本実施形態の場合、当接棒18とスライド板16を基本として構成されている。当接棒18は、支持部14に載置されたRO膜エレメント80の後端部分に当接され、詳細を後述するスライド板16による押し出しにより、RO膜エレメント80をベッセル92内部へ押し込む役割を担う。本実施形態では、当接棒18の先端に、RO膜エレメント80に対する押圧力の分散を図るための当接板18aを設けている。具体的な構成としては、当接板18aの平面積を当接棒18の先端部の平面積よりも大きく、かつRO膜エレメント80の端板90の平面積より小さくすれば良い。
【0028】
スライド板16は、上述した当接棒18の後端側を支持すると共に、載置台12の長手方向に沿って設けられた溝に沿ってスライドする板片である。スライド板16のスライドは、スライド板16の下部、すなわち載置台12の内部に設けられた駆動機構により実現される。駆動機構の方式については特に限定するものでは無いが、例えば図5に示すようなチェーン駆動方式や、図6に示すようなリニアガイド方式などを挙げることができる。
【0029】
チェーン駆動方式は、図5に示すように、駆動歯車20と従動歯車22の間に掛け回されたチェーン26と、チェーン26に固着されたスライダ28を基本として構成される。スライド板16は、スライダ28上に固定されることで、駆動歯車20の回動に伴ってスライドが成されることとなる。ここで、スライダ28の下部には、スライダ28の安定性を向上させるためのスライドガイド24を設けるようにすると良い。なお、駆動歯車20には、モータ等の図示しない駆動手段を設けるようにする。
【0030】
リニアガイド方式は、2つの軸受30,32間に架け渡されたボールネジ34と、このボールネジ34の回転に応じてボールネジ34上を移動するスライダ36とを基本として構成される。上述したように、スライダ36上にスライド板16を配置することで、ボールネジ34の回転に伴ってスライド板16のスライドが成されることとなる。なお、何れか一方の軸受け側には、ボールネジ34を回転させるための駆動手段38を設けるようにする。
【0031】
このように、載置台12の内部に押込手段15の駆動機構を備えるようにすることで、RO膜エレメント80の搭載スペースの延長線上に駆動機構を配置する必要が無い。このため、載置台12の短縮化、すなわち交換装置10の小型化を図ることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、載置台12の先端側に、図13、図14に示すように、ベッセル92の先端に係合する反力受94を設けるようにしている。反力受94をベッセル92先端に引掛け、この状態でRO膜エレメントの装填を行うことで、RO膜エレメント80を押し出す際の反力で、交換装置10がベッセル92の開口部から離間してしまうといった事態を避けることができる。なお、反力受94の形態は特に限定するものでは無い。例えば、反力受の形態を、図7に示すような治具(以下、ベッセル把持冶具94aと称す)としても良い。すなわち、円弧状の2つの冶具本体95a,95bにおける一方の端部を蝶番95cにより連結し、他方の端部に、把持固定のためのロック機構95dを設けるというものである。なお、反力受として、図7に示すようなベッセル把持治具94aを採用する場合、ベッセル把持冶具94aと載置台12との間に図8に示すような連結棒96を設けるようにすると良い。ベッセル把持冶具94aと連結棒96の接続に関しては、種々の形態を採ることができるが、一例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0033】
すなわち、ベッセル把持冶具94aにおける冶具本体95bの外周に、連結棒96の直径より若干大きな幅を持つ凹部(図7に示す例では円弧状凹部95e)を形成する。これに対し連結棒96には、一対のフランジ96aを設ける。対を成すフランジ96aの配置幅を冶具本体95bの厚みより若干広くする。ベッセル把持冶具94aと連結棒96とにこのような構成を付加することで、冶具本体95bの円弧状凹部95eに連結棒96を嵌め込み、フランジ96aにより軸方向(RO膜エレメント80の押し込み方向)への抜け止めを図ることができる(図9参照)。なお、本発明では、連結棒96自体を反力受として適用させることもできる。具体的には、ベッセル92自体を固定するためのフレーム(棚:不図示)に、連結棒96のフランジ96aを引掛けるようにすれば良い。このような構成であっても、反力受としての効果を得ることができるからである。
【0034】
また、実施形態で使用する反力受としては、載置台12をベッセル92に固定するものだけでなく、交換装置10そのものがベッセル92から離間する方向へ動くことを防止する効果を得られるものも適用することができる。具体的には、図10に示す床面滑り防止冶具94bのようなものを、詳細を後述する交換装置10の台車部68の下に配置する場合であっても、これを反力受とすることができる。床面滑り防止冶具94bは、冶具フレーム98aと、脚部98bとを基本として構成される。図10に示す実施形態においては、冶具フレーム98aは、コ字状を成し、脚部98bは、コ字状を成す冶具フレーム98aの両端部に設けられている。このような構成とすることで、床面滑り防止冶具94bを床面に載置した際、冶具フレーム98aに傾斜面が形成され、台車部68の下部に形成される隙間に配置しやすくなる。
【0035】
図10に示す例では、脚部98bにフロアストッパ機構を持たせている。具体的には、脚部98bの下面にゴム板などの弾性体シート98dを設け、ストッパーレバー98cを下げることにより、弾性体シート98dの中央部を引き上げ、載置面(床面)に対する吸盤作用を奏するようにするというものである(図11(A)、(b)参照)。これにより、床面に対する滑り防止効果を高めることができる。
その他、ストッパーレバー98cを上げることにより、弾性体シート98dを床面に押し付けて滑り防止効果を得る構成としても良い。
【0036】
ベース40は、詳細を上述した載置台12を支持する役割を担う。ベース40は、垂直フレーム42と水平フレーム54、台車部68を基本として構成される。垂直フレーム42は、詳細を後述する台車部68を基部として垂直方向に立設された支柱型フレームである。垂直フレーム42には、詳細を後述する水平フレーム54を垂直方向に昇降させるための昇降手段と、作業員が交換装置10を移動させる際に使用するハンドル50が設けられている。
【0037】
昇降手段は、例えばリニアガイド方式のものであれば良い。すなわち、垂直フレーム42の長手方向(垂直方向)に沿って配置されたボールネジ44と、このボールネジ44の回転に伴って昇降移動することを可能とするスライダ48とを有するものであれば良い。このような基本構成を有する昇降手段では、ボールネジ44の一方の端部(本実施形態では上端部)には軸受、他方の端部(本実施形態では下端部)には、駆動用のモータ46等を設けるようにすれば良い。このような構成とすることで、モータ46を駆動させてボールネジ44を回転させることで、スライダ48を垂直フレーム42に沿って昇降させることが可能となる。なお、垂直フレーム42におけるハンドル50の配置側には、図示しない操作盤が設けられている。操作盤は、載置台12の昇降動作、水平移動、および押込手段15による押し込み動作を行うための制御信号を、各駆動部であるモータ等に出力するための制御部である。また、本実施形態では、垂直フレーム42における幅方向両端部に、スライドレール52を設け、載置台12の昇降動作の安定化を図るようにしている。
【0038】
水平フレーム54は、上述した載置台12を支持するフレームであり、上述した垂直フレーム42に設けられたスライダ48に接続された水平フレームベース56を基点として、水平方向に延設されている。具体的には、水平フレーム54は、水平フレームベース56を基点として、垂直フレーム42から離間する方向に延設されたフォーク状のフレームである。水平フレーム54には、リニアガイド58、ハンドル66、操作盤64、マニュアルハンドル62などが設けられている。
【0039】
リニアガイド58は、上述した載置台12をRO膜エレメント80の載置方向に対して平行に移動させるための平行移動手段の一例である。本実施形態におけるリニアガイド58は、水平フレーム54を構成する複数(実施形態においては2つ)のフォーク部分にそれぞれ設けられる。このような構成とすることで、重量物、および長尺物を移動させる際の安定性を向上させることができる。このような構成とする場合、各リニアガイド58を構成するボールネジを駆動させる各モータは、同期制御されるように電気的に接続しておく。このような構成とすることで、各ボールネジ上を水平移動するスライダ60の移動量が等しくなるからである。なお、水平フレーム54に設けたリニアガイド58のスライダ60上には、上述した載置台12が搭載・固定される。このような構成とすることで、載置台12をRO膜エレメント80の載置方向に対して平行に移動させることができる。
【0040】
ハンドル50は、水平フレーム54を構成するフォーク部分の先端側に設けられるバーハンドル(パイプ)である。ハンドル50の配置形態は、水平フレーム54を構成する複数のフォーク部分の先端を接続するというものである。このような構成のハンドル50を設けることにより、交換装置10を水平フレーム54の先端側からでも移動させることが可能となる。
【0041】
操作盤64は、載置台12の昇降動作、水平移動、および押込手段15による押し込み動作を行うための制御信号を、各駆動部であるモータ等に出力するための制御部である。水平フレーム54の先端側に操作盤64を配置することで、水平フレーム54先端側からであっても、載置台12の昇降動作、水平移動、および押し込み動作を行わせることが可能となる。
【0042】
マニュアルハンドル62は、載置台12の水平移動を手動で行うための回転ハンドルである。マニュアルハンドル62を介して載置台12を水平移動させる場合には、マニュアルハンドル62を回転させれば良い。このため、RO膜エレメント80を装填する対象となるベッセル92との位置ズレを微調整する場合に使用するのが好適である。制御信号による移動動作では、初期挙動が大きくなり、位置ズレの微調整が困難となる場合があるからである。
【0043】
台車部68は、交換装置10の移動を容易にするための走行手段である。台車部68は、交換装置10の安定性を高めるために、垂直フレーム42よりも幅広に形成し、水平フレーム54を延設させた側に延設する形態とすると良い。台車部68には、垂直フレーム42を立設した面と反対側の面に、複数(本実施形態では4つ)の車輪70,74が設けられている。本実施形態のように車輪70,74を4つとした場合、4つの車輪70,74は、台車部68を平面視した際に四隅となる部分に設けるようにすると良い。このような構成とすることで、交換装置10の安定性を高めることができる。
【0044】
車輪70,74を4つとした場合、少なくとも2つの車輪74は、固定のための軸を回転可能な構成とする。このような構成とすることで、交換装置10の進行方向を変えることが容易となる。また、少なくとも2つの車輪70には、車輪70の回転を止めるロック機構72を備えるようにする。このような構成とすることで、交換装置10を所定位置に停止させておくことが可能となる。
【0045】
上記のような交換装置を用いたRO膜エレメント80の装填作業は、次のようにして行われる。
まず、交換装置10における載置台12に、RO膜エレメント80を搭載する。RO膜エレメント80の搭載作業は、作業員による手作業であっても良いし、既存のクランプ装置などを利用しても良い。
【0046】
次に、RO膜エレメント80を搭載した交換装置10を、RO膜エレメント80の装填対象となるベッセル92の開口部付近まで移動させる。ベッセル92の開口部付近まで交換装置10を移動させた後、昇降手段、および平行移動手段を用いて、RO膜エレメント80の長手方向中心軸をベッセル92の開口部の中心位置(長手方向中心軸)に合わせる。そして、載置台12(RO膜エレメント80)の位置合わせを行った状態で、反力受94をベッセル92の開口部外周に引掛ける(図13参照)。
【0047】
位置合わせ、反力受94の設置を終えた後、押込手段15を作動させてRO膜エレメント80をベッセル内部に押し込み、装填する(図14参照)。
このような交換装置10を用いたRO膜エレメント80の装填作業によれば、最も労力を伴うRO膜エレメント80の装填を自動で行うことができる。このため、ベッセル92の長尺化により、装填するRO膜エレメント80の数が増えた場合や、RO膜エレメント80の大径化が成された場合であっても、装填作業が容易となる。また、水平に載置したRO膜エレメント80を水平に配置されたベッセル92に装填する装置であるため、従来技術のように、RO膜エレメント80の落下による危険性は少なく、作業時の安全性が高い。
【0048】
次に、本発明の交換装置に係る第2の実施形態について、図15〜18を参照して説明する。なお、本実施形態に係る交換装置の殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係る交換装置10と同様である。よって、その構成を同一とする箇所には、図面に100を足した符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0049】
第1の実施形態に係る交換装置10と、本実施形態に係る交換装置110との相違点は、押込手段の形態にある。具体的には、本実施形態に係る交換装置110では、押込手段を液圧(油圧)シリンダ115としている。さらに、本実施形態では、載置台112に搭載したRO膜エレメント80をベッセル92の内部深くまで押込むことを可能とするために、シリンダロッドをテレスコピック型とした多段(図15に示す例では2段)式油圧シリンダ115とした。本実施形態で用いる油圧シリンダ115は、内部に油室(不図示)を備えるシリンダ115aと、油室に対する作動油の流入により伸張する第1ロッド115bと、第2ロッド115cを基本として構成される。
【0050】
このような構成とすることで、第1の実施形態に係る交換装置10よりも、RO膜エレメント80をベッセル92の内部深くにまで押し込むことが可能となる。よって、先に押し込んだRO膜エレメント80を、後から押し込むRO膜エレメント80で押すという状況が低減される。このため、RO膜エレメント80の装填数が増えた場合であっても、RO膜エレメントの装填数に応じて、押込み時の摩擦抵抗が増すことを抑制することができる。
【0051】
このような構成の交換装置110によるRO膜エレメント80の装填作業では、まず、RO膜エレメント80を載置台112に搭載する。次に、RO膜エレメント80を搭載した交換装置110を、RO膜エレメント80の装填対象となるベッセル92の開口部付近まで移動させる。ベッセル92の開口部付近まで交換装置110を移動させた後、昇降手段、および平行移動手段を用いて、RO膜エレメント80の先端の中心位置をベッセル92の開口部の中心位置に合わせる。載置台(RO膜エレメント80)の位置合わせを行った状態で、反力受94をベッセル92に引掛ける(図16参照)。
【0052】
位置合わせ、反力受94の設置を終えた後、図17に示すように、油圧シリンダ115の一段目のロッド(第1ロッド115b)を伸長させる。この動作により、RO膜エレメント80のベッセル92内部への装填が完了する。次に、図18に示すように、油圧シリンダ115の二段目のロッド(第2ロッド115c)を伸長させる。これにより、RO膜エレメント80をベッセル92内部における奥深くまで押し込むことができる。
【0053】
このような構成の交換装置110であっても、RO膜エレメント80の装填作業の自動化と、作業の安全性向上を図ることができる。なお、上記説明では、油圧シリンダにおけるロッドの段数を2段としていたが、さらに多段に延びる油圧シリンダを用いても良い。また、油圧シリンダを用いて第1の実施形態に係る交換装置と同様な効果を奏する場合には、油圧シリンダを単純な復動型のものとすれば良い。なお、押込手段として油圧シリンダを採用する場合には、作動油を貯留するためのタンクと、この作動油を圧送するためのポンプを備えるようにする必要があるが、機械式の押込手段に比べ、簡易な構成で大きな押し込み力を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
10………交換装置、12………載置台、14………支持部、14a………摩擦抵抗低減手段、15………押込手段、16………スライド板、18………当接棒、18a………当接板、20………駆動歯車、22………従動歯車、24………スライドガイド、26………チェーン、28………スライダ、30………軸受、32………軸受、34………ボールネジ、36………スライダ、38………駆動手段、40………ベース、42………垂直フレーム、44………ボールネジ、46………モータ、48………スライダ、50………ハンドル、52………スライドレール、54………水平フレーム、56………水平フレームベース、58………リニアガイド、60………スライダ、62………マニュアルハンドル、64………操作盤、66………ハンドル、68………台車部、70………車輪、72………ロック機構、74………車輪、80………RO膜エレメント、82………中心パイプ、84………浸透膜、86………流路材、88………メッシュスペーサ、90………端板、92………ベッセル、94………反力受。
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜エレメントの交換に用いる装置に係り、特に、長尺なベッセルに対する逆浸透膜エレメントの装填に好適な逆浸透膜エレメント交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜エレメントを用いた海水淡水化設備において、逆浸透膜エレメントを交換する方法としては、特許文献1に開示されているようなものが知られている。具体的には、圧力容器(ベッセル)内に装填された複数の逆浸透膜エレメントのうち、ベッセルにおける一方の開口部(供給水側あるいは透過水側)から、使用済みの逆浸透膜エレメントを抜き取ると共に、他方の開口部から新たな逆浸透膜エレメントを装填するというものである。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている逆浸透膜エレメントの交換方法は、メンテナンス期間を短く(実施形態中では1年単位)し、端部の逆浸透膜エレメントだけを交換するというものである。このような方法では、メンテナンス頻度が多くなり、稼動効率が悪いという問題がある。また、特許文献1に開示されている方法では、ベッセルの開口部における供給水側と透過水側の双方に作業員が必要となるため、交換作業には、必ず複数の作業員が必要となり、作業効率が悪いといった問題もある。
【0004】
しかし、海水淡水化設備の稼動効率を考慮し、ベッセル内に装填された逆浸透膜エレメントの全数交換を行う場合には、次のような問題があった。海水淡水化設備は近年、処理水の多量化を目的として、逆浸透膜エレメントの直径が大型化されると共に、ベッセルの長尺化による装填数の増加も図られている。このため、ベッセルに対する逆浸透膜エレメント装填時の摺動抵抗(摩擦抵抗)が増加し、装填作業、および抜き取り作業が人力では困難となるという問題が生じてきている。
【0005】
これに対し、逆浸透膜エレメント装填時の摺動抵抗の低減を図るための手段が、特許文献2に開示されている。具体的には、ベッセルの内周面に、逆浸透エレメントとの間における摩擦抵抗低減処理を施すというものである。ここで、摩擦抵抗低減処理の具体的手段としては、特に限定されてはいないが、ベッセルの内周面に凸部や凹部、滑り性の高い部材、及び回転体などを設置するというものであれば良いという。このような手段を施して、逆浸透膜エレメントの摺動抵抗を低減させれば、逆浸透膜エレメントの交換作業が容易となり、作業性も向上すると考えられる。
【0006】
この他に、作業者の作業負担を軽減することを視野に入れ、逆浸透膜エレメントの交換作業の自動化を図るための手段が、特許文献3に開示されている。特許文献3に開示されている手段は、海水淡水化設備においてベッセルを垂直方向に配置し、ベッセルに対して逆浸透膜エレメントを吊上げ方式、あるいは押し込み方式で装填するというものである。このような手段によれば、逆浸透膜エレメントを持ち上げ、回転させ、押し込むといった作業を作業員が行う必要が無くなり、作業負担が軽減されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−114239号公報
【特許文献2】国際公開第2009/104750号
【特許文献3】国際公開第2011/007326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、特許文献3に開示されているような自動化手段で交換作業を行えば、作業員の作業負担が軽減し、作業効率も向上することが考えられる。しかし、特許文献3に開示されている手段では、ベッセルが垂直配置されるため、逆浸透膜エレメントの装填数が増えるほど、引き上げ、あるいは押し込みに掛かる負荷が増大する。この負荷は、逆浸透膜エレメントの自重に重力加速度が付加されたものであるため、水平状態に配置された逆浸透膜エレメントを押し込む際の摺動抵抗(摩擦抵抗)よりも大きいことは明らかである。
【0009】
また、垂直状態に配置したベッセルに対して重量物である逆浸透膜エレメントを装填する作業には、逆浸透膜エレメントの落下といった危険が伴うため、作業の安全性に懸念が生ずる。
【0010】
そこで本発明では、ベッセルに対する逆浸透膜エレメントの装填作業の自動化を図ると共に、作業の安全性を維持することのできる逆浸透膜エレメント交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る逆浸透膜エレメント交換装置は、ロール状に形成された逆浸透膜エレメントを長手方向に寝かせた状態で載置する載置台と、前記載置台を昇降させる昇降手段と、前記載置台を前記逆浸透膜エレメントの載置方向と平行に移動させる平行移動手段と、前記載置台に載置した前記逆浸透膜エレメントを圧力容器に押し込む押込手段と、を備え、前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの長手方向長さ以上の押し込み量を有する構成としたことを特徴とする。
【0012】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置では、前記逆浸透膜エレメントを前記載置台に載せた状態で移動を可能とする移動手段を備えるようにすると良い。
【0013】
このような構成を備えることにより、逆浸透膜エレメントを保管する場所と、逆浸透膜エレメントを装填する圧力容器の設置場所との距離が遠い場合であっても、逆浸透膜エレメントの輸送作業が容易となる。
【0014】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記載置台には、前記逆浸透膜エレメントの支持部に、摩擦抵抗軽減手段を備えるようにすることが望ましい。
【0015】
このような特徴を有することによれば、載置台の支持部に搭載した逆浸透膜エレメントを押し出す際の摩擦抵抗が低減する。このため、押込手段の駆動力を低減することができる。また、摩擦抵抗による逆浸透膜エレメント外周部の損傷を抑制することもできる。
【0016】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置では、前記逆浸透膜エレメントを前記圧力容器に押し込む際の反力による前記載置台の移動を抑制する反力受を備えるようにすると良い。
このような特徴を有することにより、逆浸透膜エレメントの装填作業時に、反力による逆浸透膜エレメント交換装置の転倒や、逆浸透膜エレメントの押し込み不足が生じる虞が無くなる。
【0017】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端部に当接する当接棒と、前記当接棒を支持し、前記載置台に沿って前記圧力容器側へスライドするスライド板とを基本とし、前記逆浸透膜エレメントの下部に位置する前記載置台に駆動機構を設けた構成とすることができる。
このような特徴を有することによれば、載置台の全長を短くし、逆浸透膜エレメント交換装置全体としての小型化を図ることができる。
【0018】
また、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端を押圧する液圧シリンダとすることもできる。
このような特徴を有することによれば、機械式の押込手段に比べて、簡易な構成で、大きな押し込み力を得ることが可能となる。
【0019】
さらに、上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置において前記液圧シリンダは、ロッドをテレスコピック構造とした多段式液圧シリンダとしても良い。
このような特徴を有することによれば、逆浸透膜エレメントの押し込み距離を長くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のような特徴を有する逆浸透膜エレメント交換装置によれば、従来、最も労力が必要とされていた圧力容器に対する逆浸透膜エレメントの装填作業の自動化を図ることができる。また、装填作業は、逆浸透膜エレメントを長手方向に寝かせた状態で行うため、逆浸透膜エレメントを垂直に押し込む(引き上げる)といった作業を行う従来技術に比べ、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の側面構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の正面構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の平面構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の斜視図である。
【図5】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置における載置台の構成を示す図であり、押出手段にチェーン駆動方式を採用した場合の例を示す。
【図6】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置における載置台の構成を示す図であり、押出手段にリニアガイド方式を採用した場合の例を示す。
【図7】反力受の変形形態としてのベッセル把持冶具の構成を示す斜視図である。
【図8】ベッセル把持冶具と、載置台とを連結するための連結棒の構成を示す斜視図である。
【図9】ベッセル把持冶具の使用形態を示す斜視図である。
【図10】反力受の変形形態としての床面滑り防止冶具の構成を示す斜視図である。
【図11】床面滑り防止冶具における脚部の内部構造を示す図であり、(A)は定常時、(B)はロック時を示す図である。
【図12】実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による圧力容器への装填を行う逆浸透膜エレメントの構成を示す斜視図である。
【図13】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの装填準備の様子を示す斜視図である。
【図14】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの装填状態の様子を示す斜視図である。
【図15】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置に用いる油圧シリンダの構成を示す図であり、(A)はロッドを短縮させた状態(B)はロッドを伸張させた状態をそれぞれ示す。
【図16】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの装填準備の様子を示す斜視図である。
【図17】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置により逆浸透膜エレメントを装填する様子のうち、第1ロッドを伸張させた状態を示す斜視図である。
【図18】第2の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置により逆浸透膜エレメントを装填する様子のうち、第2ロッドを伸張させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の逆浸透エレメント交換装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1から図6を参照して、第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置について説明する。なお、図1は、第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置の側面構成を示す図であり、図2は、同正面構成を示す図、図3は、同平面構成を示す図、図4は、同斜視図である。また、図5、図6は、それぞれ逆浸透膜エレメント交換装置の一部構成である載置台の構成例を示す図である。本実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置(以下、単に交換装置10と称す)は、載置台12と、載置台12を支持するベース40とを基本として構成されている。
【0023】
載置台12は、逆浸透膜エレメント(以下、単にRO(Revers Osmosis)膜エレメント80と称す)を載置するための台である。
なお、本実施形態で用いるRO膜エレメント80は、図12に示すように、中心パイプ82の外周に、袋状に形成された浸透膜84と、原水(塩分含有水)を通過させるためのメッシュスペーサ88が層を成すようにして、ロール状に巻かれている。袋状に形成された浸透膜84の内部には、透過された水を通過させるためのスペーサとして、流路材86が配置されている。このような構成のRO膜エレメント80では、一方の端板90(供給水側)における開口部から、浸透膜84間に配置されたメッシュスペーサ88部分に原水(塩分含有水)が流れ込む。メッシュスペーサ88部分に流れ込んだ原水に、浸透圧力以上の圧力を付与することで、原水中の水が浸透膜84を透過して、袋状に形成した浸透膜84内部の流路材86に流れ込む。流路材86に流れ込んだ水(透過水)は、中心パイプ82に流れ込み、他方の端板90(透過水側)の中心に設けられた孔(中心パイプ82に繋がった孔)から排出される。なお、透過されずにメッシュスペーサ88部分に残った濃縮水は、他方の端板側のメッシュスペーサ88部分から排出される。
【0024】
このような構成とされるRO膜エレメント80を載置する載置台12には、少なくとも支持部14と、押込手段15が備えられる。実施形態で用いるRO膜エレメント80は、図12に示すように、円柱形を成すものであるため、載置台12には水平状態、すなわち長手方向に寝かせた状態で載置することとなる。このような載置形態を採ることで、水平状態で配置されたベッセル(圧力容器)92(図13、14参照)に対する装填が可能となるからである。
【0025】
このような理由から支持部14は、RO膜エレメント80の載置方向に沿って配置される。本実施形態の場合、支持部14は、載置台12の幅方向端部側に、長手方向に沿って2列のライン状に設けている。円柱状のRO膜エレメント80を安定支持するためには、断面視した状態で、最低2点の支持点が必要となる。一方で、支持点を増やすことによれば、RO膜エレメント80の支持状態の安定化を図ることはできるが、RO膜エレメント80を押し出す際の摺動抵抗(摩擦抵抗)が増加することとなる。このため、支持部14を2列のライン状とすることで、摩擦抵抗の低減と、支持状態の安定化の双方の効果を得ることができる。
【0026】
ここで、本実施形態の支持部14には、摩擦抵抗低減手段14aが設けられている。なお、摩擦抵抗低減手段14aとは、RO膜エレメント80をベッセル92側へ押し出す際の摩擦抵抗を低減することができる手段であれば良く、その構成を限定するものでは無い。例えば、図1から図4に示す例では、摩擦抵抗低減手段14aとして、支持部14の先端に複数のローラを配置している。ローラの転がり方向とRO膜エレメント80の押し出し方向を一致させれば、支持部14とRO膜エレメント80との間における摩擦抵抗を低減することができるからである。また、ローラに替えて、支持部14の先端に樹脂製のレールを配置した場合でも、摩擦抵抗低減手段14aとしての体を成す。滑り性の良い樹脂(例えばポリエチレン系の樹脂)であれば、RO膜エレメント80を押し出した際の摩擦抵抗を低減することができるからである。
【0027】
押込手段15は、本実施形態の場合、当接棒18とスライド板16を基本として構成されている。当接棒18は、支持部14に載置されたRO膜エレメント80の後端部分に当接され、詳細を後述するスライド板16による押し出しにより、RO膜エレメント80をベッセル92内部へ押し込む役割を担う。本実施形態では、当接棒18の先端に、RO膜エレメント80に対する押圧力の分散を図るための当接板18aを設けている。具体的な構成としては、当接板18aの平面積を当接棒18の先端部の平面積よりも大きく、かつRO膜エレメント80の端板90の平面積より小さくすれば良い。
【0028】
スライド板16は、上述した当接棒18の後端側を支持すると共に、載置台12の長手方向に沿って設けられた溝に沿ってスライドする板片である。スライド板16のスライドは、スライド板16の下部、すなわち載置台12の内部に設けられた駆動機構により実現される。駆動機構の方式については特に限定するものでは無いが、例えば図5に示すようなチェーン駆動方式や、図6に示すようなリニアガイド方式などを挙げることができる。
【0029】
チェーン駆動方式は、図5に示すように、駆動歯車20と従動歯車22の間に掛け回されたチェーン26と、チェーン26に固着されたスライダ28を基本として構成される。スライド板16は、スライダ28上に固定されることで、駆動歯車20の回動に伴ってスライドが成されることとなる。ここで、スライダ28の下部には、スライダ28の安定性を向上させるためのスライドガイド24を設けるようにすると良い。なお、駆動歯車20には、モータ等の図示しない駆動手段を設けるようにする。
【0030】
リニアガイド方式は、2つの軸受30,32間に架け渡されたボールネジ34と、このボールネジ34の回転に応じてボールネジ34上を移動するスライダ36とを基本として構成される。上述したように、スライダ36上にスライド板16を配置することで、ボールネジ34の回転に伴ってスライド板16のスライドが成されることとなる。なお、何れか一方の軸受け側には、ボールネジ34を回転させるための駆動手段38を設けるようにする。
【0031】
このように、載置台12の内部に押込手段15の駆動機構を備えるようにすることで、RO膜エレメント80の搭載スペースの延長線上に駆動機構を配置する必要が無い。このため、載置台12の短縮化、すなわち交換装置10の小型化を図ることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、載置台12の先端側に、図13、図14に示すように、ベッセル92の先端に係合する反力受94を設けるようにしている。反力受94をベッセル92先端に引掛け、この状態でRO膜エレメントの装填を行うことで、RO膜エレメント80を押し出す際の反力で、交換装置10がベッセル92の開口部から離間してしまうといった事態を避けることができる。なお、反力受94の形態は特に限定するものでは無い。例えば、反力受の形態を、図7に示すような治具(以下、ベッセル把持冶具94aと称す)としても良い。すなわち、円弧状の2つの冶具本体95a,95bにおける一方の端部を蝶番95cにより連結し、他方の端部に、把持固定のためのロック機構95dを設けるというものである。なお、反力受として、図7に示すようなベッセル把持治具94aを採用する場合、ベッセル把持冶具94aと載置台12との間に図8に示すような連結棒96を設けるようにすると良い。ベッセル把持冶具94aと連結棒96の接続に関しては、種々の形態を採ることができるが、一例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0033】
すなわち、ベッセル把持冶具94aにおける冶具本体95bの外周に、連結棒96の直径より若干大きな幅を持つ凹部(図7に示す例では円弧状凹部95e)を形成する。これに対し連結棒96には、一対のフランジ96aを設ける。対を成すフランジ96aの配置幅を冶具本体95bの厚みより若干広くする。ベッセル把持冶具94aと連結棒96とにこのような構成を付加することで、冶具本体95bの円弧状凹部95eに連結棒96を嵌め込み、フランジ96aにより軸方向(RO膜エレメント80の押し込み方向)への抜け止めを図ることができる(図9参照)。なお、本発明では、連結棒96自体を反力受として適用させることもできる。具体的には、ベッセル92自体を固定するためのフレーム(棚:不図示)に、連結棒96のフランジ96aを引掛けるようにすれば良い。このような構成であっても、反力受としての効果を得ることができるからである。
【0034】
また、実施形態で使用する反力受としては、載置台12をベッセル92に固定するものだけでなく、交換装置10そのものがベッセル92から離間する方向へ動くことを防止する効果を得られるものも適用することができる。具体的には、図10に示す床面滑り防止冶具94bのようなものを、詳細を後述する交換装置10の台車部68の下に配置する場合であっても、これを反力受とすることができる。床面滑り防止冶具94bは、冶具フレーム98aと、脚部98bとを基本として構成される。図10に示す実施形態においては、冶具フレーム98aは、コ字状を成し、脚部98bは、コ字状を成す冶具フレーム98aの両端部に設けられている。このような構成とすることで、床面滑り防止冶具94bを床面に載置した際、冶具フレーム98aに傾斜面が形成され、台車部68の下部に形成される隙間に配置しやすくなる。
【0035】
図10に示す例では、脚部98bにフロアストッパ機構を持たせている。具体的には、脚部98bの下面にゴム板などの弾性体シート98dを設け、ストッパーレバー98cを下げることにより、弾性体シート98dの中央部を引き上げ、載置面(床面)に対する吸盤作用を奏するようにするというものである(図11(A)、(b)参照)。これにより、床面に対する滑り防止効果を高めることができる。
その他、ストッパーレバー98cを上げることにより、弾性体シート98dを床面に押し付けて滑り防止効果を得る構成としても良い。
【0036】
ベース40は、詳細を上述した載置台12を支持する役割を担う。ベース40は、垂直フレーム42と水平フレーム54、台車部68を基本として構成される。垂直フレーム42は、詳細を後述する台車部68を基部として垂直方向に立設された支柱型フレームである。垂直フレーム42には、詳細を後述する水平フレーム54を垂直方向に昇降させるための昇降手段と、作業員が交換装置10を移動させる際に使用するハンドル50が設けられている。
【0037】
昇降手段は、例えばリニアガイド方式のものであれば良い。すなわち、垂直フレーム42の長手方向(垂直方向)に沿って配置されたボールネジ44と、このボールネジ44の回転に伴って昇降移動することを可能とするスライダ48とを有するものであれば良い。このような基本構成を有する昇降手段では、ボールネジ44の一方の端部(本実施形態では上端部)には軸受、他方の端部(本実施形態では下端部)には、駆動用のモータ46等を設けるようにすれば良い。このような構成とすることで、モータ46を駆動させてボールネジ44を回転させることで、スライダ48を垂直フレーム42に沿って昇降させることが可能となる。なお、垂直フレーム42におけるハンドル50の配置側には、図示しない操作盤が設けられている。操作盤は、載置台12の昇降動作、水平移動、および押込手段15による押し込み動作を行うための制御信号を、各駆動部であるモータ等に出力するための制御部である。また、本実施形態では、垂直フレーム42における幅方向両端部に、スライドレール52を設け、載置台12の昇降動作の安定化を図るようにしている。
【0038】
水平フレーム54は、上述した載置台12を支持するフレームであり、上述した垂直フレーム42に設けられたスライダ48に接続された水平フレームベース56を基点として、水平方向に延設されている。具体的には、水平フレーム54は、水平フレームベース56を基点として、垂直フレーム42から離間する方向に延設されたフォーク状のフレームである。水平フレーム54には、リニアガイド58、ハンドル66、操作盤64、マニュアルハンドル62などが設けられている。
【0039】
リニアガイド58は、上述した載置台12をRO膜エレメント80の載置方向に対して平行に移動させるための平行移動手段の一例である。本実施形態におけるリニアガイド58は、水平フレーム54を構成する複数(実施形態においては2つ)のフォーク部分にそれぞれ設けられる。このような構成とすることで、重量物、および長尺物を移動させる際の安定性を向上させることができる。このような構成とする場合、各リニアガイド58を構成するボールネジを駆動させる各モータは、同期制御されるように電気的に接続しておく。このような構成とすることで、各ボールネジ上を水平移動するスライダ60の移動量が等しくなるからである。なお、水平フレーム54に設けたリニアガイド58のスライダ60上には、上述した載置台12が搭載・固定される。このような構成とすることで、載置台12をRO膜エレメント80の載置方向に対して平行に移動させることができる。
【0040】
ハンドル50は、水平フレーム54を構成するフォーク部分の先端側に設けられるバーハンドル(パイプ)である。ハンドル50の配置形態は、水平フレーム54を構成する複数のフォーク部分の先端を接続するというものである。このような構成のハンドル50を設けることにより、交換装置10を水平フレーム54の先端側からでも移動させることが可能となる。
【0041】
操作盤64は、載置台12の昇降動作、水平移動、および押込手段15による押し込み動作を行うための制御信号を、各駆動部であるモータ等に出力するための制御部である。水平フレーム54の先端側に操作盤64を配置することで、水平フレーム54先端側からであっても、載置台12の昇降動作、水平移動、および押し込み動作を行わせることが可能となる。
【0042】
マニュアルハンドル62は、載置台12の水平移動を手動で行うための回転ハンドルである。マニュアルハンドル62を介して載置台12を水平移動させる場合には、マニュアルハンドル62を回転させれば良い。このため、RO膜エレメント80を装填する対象となるベッセル92との位置ズレを微調整する場合に使用するのが好適である。制御信号による移動動作では、初期挙動が大きくなり、位置ズレの微調整が困難となる場合があるからである。
【0043】
台車部68は、交換装置10の移動を容易にするための走行手段である。台車部68は、交換装置10の安定性を高めるために、垂直フレーム42よりも幅広に形成し、水平フレーム54を延設させた側に延設する形態とすると良い。台車部68には、垂直フレーム42を立設した面と反対側の面に、複数(本実施形態では4つ)の車輪70,74が設けられている。本実施形態のように車輪70,74を4つとした場合、4つの車輪70,74は、台車部68を平面視した際に四隅となる部分に設けるようにすると良い。このような構成とすることで、交換装置10の安定性を高めることができる。
【0044】
車輪70,74を4つとした場合、少なくとも2つの車輪74は、固定のための軸を回転可能な構成とする。このような構成とすることで、交換装置10の進行方向を変えることが容易となる。また、少なくとも2つの車輪70には、車輪70の回転を止めるロック機構72を備えるようにする。このような構成とすることで、交換装置10を所定位置に停止させておくことが可能となる。
【0045】
上記のような交換装置を用いたRO膜エレメント80の装填作業は、次のようにして行われる。
まず、交換装置10における載置台12に、RO膜エレメント80を搭載する。RO膜エレメント80の搭載作業は、作業員による手作業であっても良いし、既存のクランプ装置などを利用しても良い。
【0046】
次に、RO膜エレメント80を搭載した交換装置10を、RO膜エレメント80の装填対象となるベッセル92の開口部付近まで移動させる。ベッセル92の開口部付近まで交換装置10を移動させた後、昇降手段、および平行移動手段を用いて、RO膜エレメント80の長手方向中心軸をベッセル92の開口部の中心位置(長手方向中心軸)に合わせる。そして、載置台12(RO膜エレメント80)の位置合わせを行った状態で、反力受94をベッセル92の開口部外周に引掛ける(図13参照)。
【0047】
位置合わせ、反力受94の設置を終えた後、押込手段15を作動させてRO膜エレメント80をベッセル内部に押し込み、装填する(図14参照)。
このような交換装置10を用いたRO膜エレメント80の装填作業によれば、最も労力を伴うRO膜エレメント80の装填を自動で行うことができる。このため、ベッセル92の長尺化により、装填するRO膜エレメント80の数が増えた場合や、RO膜エレメント80の大径化が成された場合であっても、装填作業が容易となる。また、水平に載置したRO膜エレメント80を水平に配置されたベッセル92に装填する装置であるため、従来技術のように、RO膜エレメント80の落下による危険性は少なく、作業時の安全性が高い。
【0048】
次に、本発明の交換装置に係る第2の実施形態について、図15〜18を参照して説明する。なお、本実施形態に係る交換装置の殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係る交換装置10と同様である。よって、その構成を同一とする箇所には、図面に100を足した符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0049】
第1の実施形態に係る交換装置10と、本実施形態に係る交換装置110との相違点は、押込手段の形態にある。具体的には、本実施形態に係る交換装置110では、押込手段を液圧(油圧)シリンダ115としている。さらに、本実施形態では、載置台112に搭載したRO膜エレメント80をベッセル92の内部深くまで押込むことを可能とするために、シリンダロッドをテレスコピック型とした多段(図15に示す例では2段)式油圧シリンダ115とした。本実施形態で用いる油圧シリンダ115は、内部に油室(不図示)を備えるシリンダ115aと、油室に対する作動油の流入により伸張する第1ロッド115bと、第2ロッド115cを基本として構成される。
【0050】
このような構成とすることで、第1の実施形態に係る交換装置10よりも、RO膜エレメント80をベッセル92の内部深くにまで押し込むことが可能となる。よって、先に押し込んだRO膜エレメント80を、後から押し込むRO膜エレメント80で押すという状況が低減される。このため、RO膜エレメント80の装填数が増えた場合であっても、RO膜エレメントの装填数に応じて、押込み時の摩擦抵抗が増すことを抑制することができる。
【0051】
このような構成の交換装置110によるRO膜エレメント80の装填作業では、まず、RO膜エレメント80を載置台112に搭載する。次に、RO膜エレメント80を搭載した交換装置110を、RO膜エレメント80の装填対象となるベッセル92の開口部付近まで移動させる。ベッセル92の開口部付近まで交換装置110を移動させた後、昇降手段、および平行移動手段を用いて、RO膜エレメント80の先端の中心位置をベッセル92の開口部の中心位置に合わせる。載置台(RO膜エレメント80)の位置合わせを行った状態で、反力受94をベッセル92に引掛ける(図16参照)。
【0052】
位置合わせ、反力受94の設置を終えた後、図17に示すように、油圧シリンダ115の一段目のロッド(第1ロッド115b)を伸長させる。この動作により、RO膜エレメント80のベッセル92内部への装填が完了する。次に、図18に示すように、油圧シリンダ115の二段目のロッド(第2ロッド115c)を伸長させる。これにより、RO膜エレメント80をベッセル92内部における奥深くまで押し込むことができる。
【0053】
このような構成の交換装置110であっても、RO膜エレメント80の装填作業の自動化と、作業の安全性向上を図ることができる。なお、上記説明では、油圧シリンダにおけるロッドの段数を2段としていたが、さらに多段に延びる油圧シリンダを用いても良い。また、油圧シリンダを用いて第1の実施形態に係る交換装置と同様な効果を奏する場合には、油圧シリンダを単純な復動型のものとすれば良い。なお、押込手段として油圧シリンダを採用する場合には、作動油を貯留するためのタンクと、この作動油を圧送するためのポンプを備えるようにする必要があるが、機械式の押込手段に比べ、簡易な構成で大きな押し込み力を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
10………交換装置、12………載置台、14………支持部、14a………摩擦抵抗低減手段、15………押込手段、16………スライド板、18………当接棒、18a………当接板、20………駆動歯車、22………従動歯車、24………スライドガイド、26………チェーン、28………スライダ、30………軸受、32………軸受、34………ボールネジ、36………スライダ、38………駆動手段、40………ベース、42………垂直フレーム、44………ボールネジ、46………モータ、48………スライダ、50………ハンドル、52………スライドレール、54………水平フレーム、56………水平フレームベース、58………リニアガイド、60………スライダ、62………マニュアルハンドル、64………操作盤、66………ハンドル、68………台車部、70………車輪、72………ロック機構、74………車輪、80………RO膜エレメント、82………中心パイプ、84………浸透膜、86………流路材、88………メッシュスペーサ、90………端板、92………ベッセル、94………反力受。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に形成された逆浸透膜エレメントを長手方向に寝かせた状態で載置する載置台と、
前記載置台を昇降させる昇降手段と、
前記載置台を前記逆浸透膜エレメントの載置方向と平行に移動させる平行移動手段と、
前記載置台に載置した前記逆浸透膜エレメントを圧力容器に押し込む押込手段と、
を備え、
前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの長手方向長さ以上の押し込み量を有する構成としたことを特徴とする逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項2】
前記逆浸透膜エレメントを前記載置台に載せた状態で移動を可能とする移動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項3】
前記載置台には、前記逆浸透膜エレメントの支持部に、摩擦抵抗軽減手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項4】
前記逆浸透膜エレメントを前記圧力容器に押し込む際の反力による前記載置台の移動を抑制する反力受を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項5】
前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端部に当接する当接棒と、前記当接棒を支持し、前記載置台に沿って前記圧力容器側へスライドするスライド板とを基本として構成し、前記逆浸透膜エレメントの下部に位置する前記載置台に駆動機構を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の逆浸透エレメント交換装置。
【請求項6】
前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端を押圧する液圧シリンダであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の逆浸透膜エレメント。
【請求項7】
前記液圧シリンダは、ロッドをテレスコピック構造とした多段式液圧シリンダであることを特徴とする請求項6に記載の逆浸透膜エレメント。
【請求項1】
ロール状に形成された逆浸透膜エレメントを長手方向に寝かせた状態で載置する載置台と、
前記載置台を昇降させる昇降手段と、
前記載置台を前記逆浸透膜エレメントの載置方向と平行に移動させる平行移動手段と、
前記載置台に載置した前記逆浸透膜エレメントを圧力容器に押し込む押込手段と、
を備え、
前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの長手方向長さ以上の押し込み量を有する構成としたことを特徴とする逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項2】
前記逆浸透膜エレメントを前記載置台に載せた状態で移動を可能とする移動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項3】
前記載置台には、前記逆浸透膜エレメントの支持部に、摩擦抵抗軽減手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項4】
前記逆浸透膜エレメントを前記圧力容器に押し込む際の反力による前記載置台の移動を抑制する反力受を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の逆浸透膜エレメント交換装置。
【請求項5】
前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端部に当接する当接棒と、前記当接棒を支持し、前記載置台に沿って前記圧力容器側へスライドするスライド板とを基本として構成し、前記逆浸透膜エレメントの下部に位置する前記載置台に駆動機構を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の逆浸透エレメント交換装置。
【請求項6】
前記押込手段は、前記逆浸透膜エレメントの後端を押圧する液圧シリンダであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の逆浸透膜エレメント。
【請求項7】
前記液圧シリンダは、ロッドをテレスコピック構造とした多段式液圧シリンダであることを特徴とする請求項6に記載の逆浸透膜エレメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−52316(P2013−52316A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190095(P2011−190095)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、最先端研究開発支援プログラム(最先端PG(Mega−ton Water System)100万m3/日規模大型プラント構成最適化インテリジェントメガトンモジュールシステム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、最先端研究開発支援プログラム(最先端PG(Mega−ton Water System)100万m3/日規模大型プラント構成最適化インテリジェントメガトンモジュールシステム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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