説明

逆温度応答性ゲル化特性を有する生分解性ジブロック共重合体およびその使用方法

生分解性ポリエステルを含有する、重量で61〜85の生分解性、疎水性Aブロック、および5000未満の数平均分子量を有する単官能性ポリエチレングリコール(PEG)を含有する、重量で15〜39%の生体適合性、親水性Bブロックを含有する、水溶性、生分解性AB型ジブロック共重合体であって、15000未満の数平均分子量を有し、逆温度応答性ゲル化特性を有する上記ジブロック共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明が属する技術分野
本発明は一般に、水溶性で、低分子量で、温度感受性の生分解性ジブロック共重合体であって、高い重量パーセンテージ(約61〜85wt%)の生分解性疎水性ブロック(複数のブロック)を有するもの、および、薬物の非経口、眼内、局所、経皮、経膣、口腔内、経粘膜、肺内、経尿道、直腸内、経鼻、経口、または耳内投与のためのそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は生分解性ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、ポリカーボネート、またはポリエステルカーボネートおよび低分子量(5000ダルトン未満)ポリエチレングリコール(PEG)ブロックに基づいた温度感受性の生分解性ジブロック共重合体に関する当該システムは、比較的低分子量(15000ダルトン未満)および比較的高い疎水性のブロックポリマー含量(61%以上)を持つ、選択されたそのようなジブロック共重合体のサブセットだけが、水中において5℃〜34℃で、またはおよそ同じ温度で溶液として存在するが、温度がほぼ体温(一般にヒトの場合37℃)に上昇すると、それらは自発的に相互作用し、ゲルネットワーク内に高いパーセンテージの捕捉された水を含有し、そして依然として実質的に水に不溶であるという発見に基づく。
【背景技術】
【0002】
関連技術
最近、多様な治療的適用に効果的な多くのペプチド/蛋白質薬物が、組換えDNAおよびその他の技術の進歩によって市販されるようになってきた。しかし、高分子量で、消化管酵素により分解され、体内における短い半減期を持つポリペプチドまたは蛋白質は、静脈内、筋肉内または皮下注射のような経路による非経口投与に限定されている。多くのペプチド薬物は慣用の液体キャリア中では限定された溶解性および/または安定性を示し、それゆえ製剤し、投与することが困難である。その上、多くの場合、長期間、期待される効果を得るために非常に多くの投与が必要である。そのようなポリペプチドまたは蛋白質の長期間の制御された送達は、これらの医薬品の実際に役立つ適用を提供し、進歩したバイオテクノロジーに由来する薬物を利用するために必須である。別の問題は患者のコンプライアンスである。処方された投与計画に患者を従わせることは、とりわけ処方箋が慢性疾患のためのものであり、薬物が急性副作用を有する場合にしばしば困難である。したがって、治療的有効性を最適化し、副作用および毒性を最少化し、それによって有効性を高め、患者のコンプライアンスを高めるために、長期間にわたり、制御された速度で先に述べた問題なしにポリペプチドまたは蛋白質薬物を送達するためのシステムを提供することが非常に好ましい。
【0003】
薬物を負荷したポリマー装置(device)および剤形が、様々な疾患の長期間の治療的処置のために研究されてきた。ポリマーの重要な特性は生分解性であり、ポリマーが薬物の放出に伴って、あるいはすべての薬物が放出された後のいずれかに、体内で分解(break down)または分解(degrade)可能なことを意味する。さらに、装置を作製し、薬物を負荷するための技術、手順、溶媒および別の添加物が、患者にとって安全で、周辺組織への刺激状態を最少化し、薬物に適合した媒質である剤形を生み出さなければならない。
【0004】
多くの生分解性で、埋め込み可能な徐放装置は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、またはグリコール酸と乳酸の共重合体のような、固体ポリマーから作製される。これらのポリマーの疎水性のために、これらの材料を使用した薬物負荷および装置作製は、たとえばメチレンクロリド、クロロホルム、酢酸またはジメチルホルムアミドのような有機溶媒の使用を必要とする。ある種の溶媒は毒性であるため、一般に、この工程の後に、十分に乾燥させて過剰な溶媒を除去することが必要である。多くの場合、最終ポリマー化装置は、しばしば組織の外傷に至るような埋め込み手術を必要とする、明確な固体状の形態(たとえば球、板または棒)に作られる。
【0005】
現在、ペプチドおよび蛋白質薬物を含む、薬物の制御された送達に使用することができる合成または天然のポリマー材料はほとんどない。なぜなら、明確に定義された分解経路を有する生体適合性、および分解産物の安全性のような、厳密な規制遵守の必要性が存在するためである。利用可能な毒性学的および臨床データに関して、最も広範に検討され、進歩した生分解性ポリマーは、脂肪族ポリ(α−ヒドロキシ酸)、たとえばポリ(D,L−またはL−乳酸)(PLA)およびポリ(グリコール酸)(PGA)ならびにそれらの共重合体(PLGA)である。これらのポリマーは市販され、現在生体再吸収性縫合糸として使用されている。ロイプロリドアセテート、Lupron DepotJの徐放のためのFDAに認可されたシステムも、PLGA共重合体に基づく。Lupron DepotJは注射可能なマイクロスフェアからなり、それらは前立腺癌の治療のために長期間(たとえば約30日間)にわたりロイプロリドアセテートを放出する。この使用歴に基づき、PLGA共重合体は生分解性キャリアを使用する非経口徐放性薬物送達システムの初期デザインにおける優れた材料とされてきた。
【0006】
いくつかの限られた成功があってとしても、これらのポリマーは物理化学的性質および作製法に伴う問題を有する。ポリペプチドのような親水性高分子は疎水性マトリックスまたはポリラクチド膜を通って容易く拡散することができない。PLAおよびPLGAを使用した薬物負荷および装置作成は、しばしば毒性を持つ有機溶媒の使用を必要とし、固体剤形は機械的に組織刺激状態を誘発する可能性がある。
【0007】
A.S.Sawhney and J.A.Hubbell,J.Biomed.Mat.Res.,24,1197−1411(1990)は、in vitroで速やかに分解するD,L−ラクチド、グリコリドおよびε−カプロラクトンからなるターポリマー(terpolimer)を合成した。たとえば、60%グリコリド、30%ラクチド、および10%ε−カプロラクトンからなるターポリマーは17日間の半減期を示した。材料の疎水性はポロキサマー界面活性剤(Pluronic(登録商標)F−68)との共重合体化により増加した。このポロキサマーは、重量で約20%の比較的疎水性のポリ(オキシプロピレン)ブロックと重量で80%の親水性ポリ(オキシエチレン)ブロックを含有するブロック共重合体である。ポロキサマーとの共重合体化により、より強く、部分的に結晶性の材料が得られ、そしてそれは生理的温度(たとえば37℃)において水中で機械的に安定であった。この共重合体の半減期は基礎ポリマーに比較してわずかに増加した。しかし、ポロキサマー型界面活性剤が生分解性ではないことは公知である。
【0008】
注射可能または埋め込み可能なポリマー薬物送達装置としての使用に最適な材料は生分解性で、親水性または疎水性薬物と適合し、水のような扱いやすく、安全な溶媒を用いて作製され、投与後の付加的なポリマー化または別の共有結合形成反応を必要とするべきではない。
【0009】
水性溶液中で作製することができる1つのシステムとしては先に参照し、PluronicJ(登録商標)として市販される、ブロック共重合体のクラスが挙げられる。これらの共重合体は2種の異なるポリマーブロック、すなわち、親水性ポリ(オキシエチレン)ブロックと疎水性ポリ(オキシプロピレン)ブロックからなり、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシエチレン)のトリブロックを構成する。トリブロック共重合体は、水中で逆温度応答性ゲル化挙動を示すゲルを形成する。しかし、PluronicJ(登録商標)システムは非生分解性であり、ゲルの特性(水溶性ゲル)およびそれらのゲルからの薬物放出の速度論(非常に速い)が有用であることは明らかでなく、実質的な改善が必要である。
【0010】
溶液中で水溶性のポリペプチド薬物を組み込むために使用することができる親水性生分解性材料に対する強い必要性が存在する。A.S.Sawhney et al.,Macromolecules,Vol26,No.4,581−589(1993)は、オリゴ(D,L−乳酸)またはオリゴ(グリコール酸)のようなα‐ヒドロキシ酸のオリゴマーにより伸長し、アクリレート基によって停止する、ポリエチレングリコール中心ブロックを有するマクロマーを合成した。非毒性光開始剤を使用して、これらのマクロマーは可視光により速やかなポリマー化が可能である。マクロマーの多官能性のために、ポリマー化により架橋されたゲルが生じる。ゲルはオリゴ(α‐ヒドロキシ酸)領域のポリエチレングリコール、α‐ヒドロキシ酸、およびオリゴ(アクリル酸)への加水分解と同時に分解し、オリゴ(α‐ヒドロキシ酸)の適切な選択によって、それらの分解速度は1日未満〜4か月まで適合させることができる。しかし、このシステムでは付加的な共有結合‐形成光架橋反応の必要性だけでなく、付加的な成分である、光開始剤が使用される。皮膚の厚さおよび不透明度の個人差のために、この方法から非常に多様な、個人毎に異なる反応が生じることになる。
【0011】
Okada et al.,日本国特許2−78629(1990)はポリ(乳酸)(PLA)またはポリ(乳酸)/グリコール酸(PLGA)とポリエチレングリコール(PEG)のトランス‐エステル化により生分解性ブロック共重合体材料を合成した。PLGAブロックの分子量範囲は、400〜5,000であり、PEGブロックの場合、200〜2,000であった。混合物は窒素雰囲気下、1〜20時間、100EC〜250ECで加熱した。生成物は水と混和し、ヒドロゲルを形成した;しかし、それは室温以上で水中において沈殿した。言い換えると、水への溶解度とポリマー鎖間の相互作用が温度と共に変化した。このポリマーは、以下で検討するChurchillの特許に記載されたポリマーに類似し、水性懸濁液として利用されるか、または埋め込みのために固体ブロックに成形される。しかし、このポリマーが逆温度応答性ゲル化特性を示す徴候は見られない。
【0012】
T.Matsuda,ASAIO Journal,M512−M517(1993)は生分解性ポリマーゲルを使用して強力なペプチジル抗増殖剤、アンギオペプチンを送達し、罹病した血管が人工移植組織に置換されるか、または血管内装置によって治療される場合に発生する筋内膜過形成を予防した。ポリ(乳酸)およびポリエチレングリコール(PLA‐PEG)ブロック部分からなる、非常に粘性の高い液体のブロック共重合体がin situで被覆可能な薬物キャリアとして使用された。材料は、Taki Chemical Co.,Ltd.,Hongo,Japanによって供給された。0.5g PLA‐PEGおよび0.5mg アンギオペプチンからなるポリマーゲルを37ECに維持した緩衝液中に保った場合、in vitroでのゲルからのアンギオペプチンの持続的でゆるやかな放出が数週間にわたり認められた。初期の急激なアンギオペプチンの放出は認められなかった。これらの結果に基づいて、被覆された生分解性ポリマーゲルから、in vivoで損傷した血管への局所的な持続的アンギオペプチン放出が有効であると理論上想定した。
【0013】
L.Martini et al.,J.Chem.Soc.,Faraday Tras.,90(13)、1961−1966(1994)は、エステル結合を含む鎖の加水分解による開裂によってin vivoで分解されることが公知の、疎水性ポリ(ε―カプロラクトン)を組み込むことによって、非常に分子量の低いABA型トリブロック共重合体を合成し、そして彼らはPCL−PEG−PCLブロック共重合体の溶液特性を報告した。ブロック共重合体の水性溶液をゆっくり加熱した場合、白濁が認められた。2wt%の共重合体の水性溶液が白濁する温度は、PCL−PEG−PCL(450:4000:450)およびPCL−PEG−PCL(680:4000:680)でそれぞれ65ECおよび55ECであった。PCL−PEG−PCL(680:4000:680)溶液の冷却による可逆的ゲル化は、25ECにおいて13%〜80ECにおいて30%の範囲の臨界濃度および温度で認められた。溶液をさらに0ECに冷却しても、より低いゲル/ゾル転換は認められなかった。PCL−PEG−PCL(680:4000:680)のin vitroでの分解速度は、非常にゆるやかであった。モル質量(GPC由来)の約20%の減少だけが16週間にわたり認められた。そのような遅い分解は実用的な薬物送達ベヒクルにとって十分でない。
【0014】
Churchill et al.,米国特許第4,526,938号および4,745,160号は、自己分散性であるか、または水性溶液中で自己分散性になることが可能な共重合体を示す。これらの共重合体は、5000未満の分子量によって機能的になる、ポリラクチド(PLA)またはポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA)のような疎水性A−ブロックからなるABAトリブロックまたはABジブロック共重合体である。その上、有機溶媒およびポリエチレングリコール(PEG)またはポリビニルピロリドンのような、親水性Bブロックを使用しない、高分子量以外のABA型ポリマーの事例は存在しない。好ましくは、有機溶媒を使用せずに水中で自己分散性であるために、これらのポリマーは、疎水性(Aブロック)成分に比較して親水性(B−ブロック)成分を重量で50%以上含有しなければならないか、または疎水性成分(Aブロック)が5,000未満の平均分子量を有する共重合体である。1000程度の平均分子量を有するポリマーについて言及するが、有機溶媒を使用せずにこれらのブロック共重合体が任意の温度で水性溶液に可溶であるという徴候は見られず、薬物/ブロック共重合体を溶液として投与することができるという徴候も全く見られない。むしろ、ポリマーのコロイド懸濁液、または凍結乾燥して粉末にし、圧縮成型により処理して埋め込み型デポー製剤としての使用に適した固体を形成する薬物/ポリマー分散物としての投与が開示される。水性薬物/ポリマー懸濁液または分散物は2相系であり、そこでは分散されたポリマー相は連続した水相に懸濁される。そのような分散物は、細菌または他の毒性微粒子を除去するために滅菌濾過処理が必要である状況における使用には適さない。なぜなら、そのような処理はいずれも薬物/ポリマー粒子を同じように除去し、治療量以下にしてしまうためである。水溶性で、温度によってゲル化するABA型ブロック共重合体はChurchill,et al.,の特許には包含されず、教示もされない。
【0015】
Jeong et al.,Nature,388,860,1997は生分解性温度感受性ヒドロゲルを作製するためのジ−およびトリブロック共重合体における高分子量PEGの使用を開示する。しかし、Jeongのブロック共重合体の疎水性ブロック(PLGA)は60重量%未満である。さらに、該ブロック共重合体溶液は冷却中にゲル化される。
【0016】
Rathi et al.,の米国特許第6,117,949号;6,201,072号;6,004,573号および5,702,717号は、生分解性トリブロック共重合体を開示し、それらは逆温度応答性ゲル化挙動を示す、すなわち、低温で液状の溶液として存在し、その後生理的に適切な温度で可逆的にゲルを形成し、優れた薬物放出特性を提供する。とりわけ、重量で約51%〜83%の生分解性ポリエステルを含有する疎水性Aポリマーブロック、および重量で約17〜49%のポリエチレングリコール(PEG)からなる親水性Bポリマーブロックからなる、平均分子量約2000〜4990を有する生分解性ABA型またはBAB型ブロック共重合体。
【0017】
Jeong et al.,J.Polym.Science Part A,37,751,1999,Choi et al.,J.Polym.Science Part A,37,2207,1999,は一連のジ−およびトリブロック共重合体を開示し、その中の親水性ブロック、MeO−PEGは850以上の分子量を有し、疎水性ブロック(PLGA)の割合は60重量%未満である。さらに、ブロック共重合体溶液はまた、温度を下げることによりゲル化する。Jeong et al.,US2002/0173586は温度感受性ゲル化特性を示す分岐したポリマーを開示する。
【0018】
逆温度応答性ゲル化特性を有するトリブロック共重合体が存在するが、本発明のジブロック共重合体は、先に開発されたゲルに比較して、制御された様式における蛋白質およびペプチドのいっそう好ましい放出速度論を有する。本発明において利用されるジブロック共重合体の1つの大きな利点は、それらが低分子量であるために、小さい親水性または高分子注射薬物送達システムの設計にいっそう高い適応性を与えることである。したがって、薬物製剤におけるブロック共重合体濃度を容易に高めて、組み込んだ薬物の持続的放出のための密なネットワークを形成することができる。
【発明の開示】
【0019】
発明の概要
本発明は逆温度応答性ゲル化特性を有する、生分解性ジブロック共重合体を提供する。ジブロック共重合体は、以前に公知のヒドロゲルより、蛋白質およびペプチドの送達のための、いっそう好ましい放出特性を有する。種々の物理的相互作用に基づいた物理的ゲルは、主にポリマー対水の比が低く、密でないネットワークを生じるという理由から、用途は親水性高分子の送達のためだけに限定されると一般に考えられてきた。以前に公知のヒドロゲルに比較して、本発明のジブロック共重合体は、トリブロック共重合体より低い分子量を有する。したがって、蛋白質またはペプチド送達システムとしての適用のために、ブロック共重合体濃度を容易に高め、制御されたネットワークを都合よく形成することができる。本発明のジブロック共重合体はまた、逆温度応答性ゲル化特性を有する。以前の刊行物も、ジブロック共重合体の温度応答性ゲル化を証明している。しかし、以前の仕事は疎水性ブロック含量が低い(61%未満)ジブロック共重合体の水性溶液が温度を低下させる(冷却する)ことによりゲル化されることを示した。この現象は、科学的に“上限臨界溶液温度”(UCST)として説明されている。しかし、本発明の新規なジブロック共重合体は温度の上昇に基づいた逆温度応答性ゲル化特性を有する。この現象は、科学的に“下限臨界溶解温度”(LCST)として説明されている。後者の現象は注射用薬物送達システムの形成においていっそう好ましい。
【0020】
したがって、本発明の一態様は、低分子量ジブロック共重合体薬物送達システムを提供し、それらは生分解性であり、逆温度応答性ゲル化特性、すなわち、低温で液状の溶液として存在し、生理的に適切な温度で可逆的にゲルを形成し、そして優れた薬物放出特性を提供する。
【0021】
本発明はまた、親水性および疎水性薬物、ペプチドおよび蛋白質薬物、ホルモン、遺伝子/核酸、オリゴヌクレオチドおよび抗癌剤の非経口投与のための薬物送達システムを提供する。
【0022】
本発明はまた、体内でゲルデポーが形成される、生分解性ポリマーマトリックスにおける薬物の非経口投与のための方法を提供し、薬物はそのようなデポーから制御された速度で放出される。
【0023】
本発明の一態様は、450〜15000の平均分子量を有する生分解性AB型ジブロック共重合体に関し、そのようなジブロック共重合体は、重量で61〜85%の生分解性ポリエステル、生分解性ポリエステルアミド、生分解性ポリエーテルエステル、生分解性ポリウレタン、生分解性ポリエステルウレタン、生分解性ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートからなる群から選択されるメンバーである疎水性Aポリマーブロックと、重量で15〜39%のポリエチレングリコール(PEG)からなる親水性Bポリマーブロックからなる。
【0024】
好ましくは、生分解性ポリエステルは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、p−ジオキサノン、ε−カプロラクトン、ε−ヒドロキシヘキソン酸、γ−ブチロラクトン、γ−ヒドロキシ酪酸、δ−バレロラクトン、δ−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロオキシ酪酸、リンゴ酸、トリメチレンカーボネート、およびその共重合体からなる群から選択されるモノマーから合成される。より好ましくは、生分解性ポリエステルはD,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε−カプロラクトン、ε−ヒドロキシヘキソン酸およびその共重合体からなる群から選択されるモノマーから合成される。
【0025】
最も好ましくは、生分解性ポリエステルは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、およびその共重合体からなる群から選択されるモノマーから合成される。
【0026】
ポリエチレングリコール(PEG)はまた、時にはポリ(エチレンオキシド)(PEO)またはポリ(オキシエチレン)として呼ばれ、その用語は本発明の目的のために交互に使用することができる。好ましくは、本発明の親水性ブロックは、50〜5000ダルトン、より好ましくは350〜2000ダルトン、そして最も好ましくは500〜800ダルトンの平均分子量を有する。好ましくは本発明の疎水性ブロックは500〜5000ダルトン、より好ましくは1000〜4000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0027】
本発明の上記およびその他の特徴および利点は添付の図面と一緒に提示される以下の詳細な説明を考慮することから明らかになるであろう。
発明の詳細な説明
ここで、図面において説明された代表的な態様を参照することになり、それらを説明するために、本明細書では特有な用語が使用される。それにもかかわらず、それによって本発明の範囲を限定することを意図しないことは理解されるであろう。当業者および、本開示を所有する者は、本明細書で説明された発明の特徴の変更およびそれ以上の修正、ならびに本明細書で説明された発明の原則の付加的な適用に気付くことになるであろうが、それらは本発明の範囲内にあると見なされるべきである。
【0028】
本明細書で使用されるように、以下の用語は割り当てられた意味を有する:
“非経口的”は、筋肉内、腹腔内(intraperitoneal)、腹腔内(intra−abdominal)、皮下、および実行可能であれば、静脈内および動脈内を意味することになる。
【0029】
“ゲル化温度”は、生分解性ブロック共重合体が逆温度応答性ゲル化される温度、すなわち、ブロック共重合体がそれ以下で水に溶解し、ブロック共重合体がそれ以上で相転移して粘性を増すか、または半固体ゲルを形成する温度を意味する。
【0030】
“ゲル化温度”および“逆温度応答性ゲル化温度”などは、ゲル化温度に関連して交互に使用されることになる。
“ポリマー溶液”、“水性溶液”などは、そのような溶液に含有される生分解性ブロック共重合体に関連して使用される場合、機能的濃度でその中に溶解したそのようなブロック共重合体を有し、そしてブロック共重合体のゲル化温度以下の温度で維持される、水を基礎にした溶液を意味することになる。
【0031】
“逆温度応答性ゲル化”は、溶液の温度が共重合体のゲル化温度以上に上昇するに従って、ブロック共重合体の溶液が自発的に粘度を増し、多くの場合半固体ゲルに転換する現象である。本発明の目的では、“ゲル”という用語は半固体ゲル状態およびゲル化温度以上で存在する高粘度状態の両方を包含する。ゲル化温度以下に冷却された場合、ゲルは自発的に性質を変えて、低粘度溶液を再形成する。溶液とゲル間のこの循環は、ゾル/ゲル転移がポリマーシステムの化学的組成のどのような変化も伴わないため、限りなく繰り返されてよい。ゲルを生み出すすべての相互作用は本来物理的であり、共有結合の形成または切断を伴わない。
【0032】
“薬物送達液体”または“逆温度応答性ゲル化特性を有する薬物送達液体”は、温血動物への投与に適した薬物(薬物自体は溶解していても、コロイド状であってもよい)を含有するポリマー溶液を意味し、そのような溶液は、温度がブロック共重合体のゲル化温度、またはそれ以上に上昇した場合、ゲル化薬物デポーを形成する。
【0033】
“デポー”は、温血動物への投与後に、ゲル化温度、またはそれ以上に上昇している温度でゲルを形成している、薬物送達液体を意味する。
“ゲル”は、“ポリマー溶液”または“薬物送達液体”の温度が、ブロック共重合体のゲル化温度またはそれ以上に上昇する場合に自発的に生じる半固体相を意味する。
【0034】
“水性ポリマー組成物”は、薬物送達液体、または薬物および生分解性ブロック共重合体を均一にその中に含有した水相からなるゲルのいずれかを意味する。ゲル化温度以下の温度では、共重合体は水相に可溶性であってよく、そして組成物は溶液であろう。ゲル化温度またはそれ以上の温度では、共重合体は固体化して、水相を持つゲルを形成することになり、組成物はゲルか、または半固体であろう。
【0035】
“生分解性”は、ブロック共重合体が体内で化学的に変化するか、または分解して非毒性成分を形成できることを意味する。分解速度は薬物放出速度と同じであっても異なってもよい。
【0036】
“薬物”は生物活性を有し、治療目的に適合した、またはそのような目的に使用される任意の有機もしくは無機化合物または物質を意味する。広範な薬物の定義に基づいて、蛋白質、ホルモン、抗癌剤、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAおよび遺伝子治療薬が包含される。
【0037】
“ペプチド”、“ポリペプチド”、“オリゴペプチド”および“蛋白質”は、ペプチドまたは蛋白質薬について言及する場合、交互に使用されることになり、特記しない限り、いずれか具体的な分子量、ペプチド配列もしくは長、生物活性の分野または治療的用途に関して限定されるべきではない。
【0038】
“ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)”または“PLGA”は、乳酸およびグリコール酸の縮合ポリマー化に由来するか、またはラクチドまたはグリコリドのようなα−ヒドロキシ酸前駆体の開環ポリマー化による共重合体を意味することになる。“ラクチド”、“ラクテート”、“グリコリド”および“グリコレート”は交互に使用される。
【0039】
“ポリ(グリコリド)”または“PLG”はグリコール酸の縮合に由来するか、またはグリコリドの開環ポリマー化による共重合体を意味することになる。
“生分解性ポリエステル”は任意の生分解性ポリエステルを表し、それらは好ましくはD,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、ε−ヒドロキシヘキソン酸、γ−ブチロラクトン、γ−ヒドロキシ酪酸、δ−バレロラクトン、δ−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロオキシ酪酸、リンゴ酸、およびその共重合体からなる群から選択されるモノマーから合成される。
【0040】
したがって、本発明は、Aブロックが疎水性、生分解性ポリエステルを含有し、そしてBブロックが5000ダルトン未満の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)である、AB型ジブロック共重合体の発見に基づき、そのような共重合体は重量で61〜85%の疎水性含量および450〜15000ダルトンの範囲の全体のブロック共重合体分子量を有し、そしてそれらは低温で水溶性を示し、哺乳動物の生理的体温で逆温度応答性ゲル化される。そのような高い疎水性含量がありながら、そのようなジブロック共重合体が水溶性であることは予想外である。一般に、重量で50%を越える疎水性含量を有する任意のポリマーは実質的に水に不溶であり、溶けるとすれば、ある程度の量の有機共溶媒が添加された場合に、識別可能な程度にだけ水性システムに可溶になると教えられている。
【0041】
本発明に開示されたような有用性があるジブロック共重合体は、表1に概説されたような基準を満たす、すなわち表示された範囲内で、所望する逆温度応答性ゲル化挙動を実証するジブロック共重合体を生じるような組成物の構成を有する。分子量パラメータを開示するために、すべての報告された分子量値はNMRまたはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析技術による測定に基づく。報告された数平均分子量および平均分子量はそれぞれGPCおよびNMRによって測定された(GPCがジブロック共重合体の分子量測定に使用される場合、MWはやや高くなる可能性がある)。報告されたラクチド/グリコリド比はNMRデータから計算された。GPC分析は、RI検出と溶離液としてのクロロホルムを使用して、PEGによってキャリブレーションしたStyragel HR−3カラム上、またはRI検出と溶離液としてテトラヒドロフランを使用して、PEGによってキャリブレーションした、Phenogel混合ベッドとPhenogel500Åカラムの組み合わせ上で行った。NMRスペクトルは、CDCl中で、Bruker200MHz計器によって測定した。
【0042】
【表1−1】

【0043】
生分解性、疎水性Aポリマーブロックは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、ε−ヒドロキシヘキソン酸、γ−ブチロラクトン、γ−ヒドロキシ酪酸、δ−バレロラクトン、δ−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロオキシ酪酸、リンゴ酸、およびその共重合体からなる群から選択されるモノマーから合成されるポリエステルを含有する。本発明で使用することができる別の型の生分解性ポリマーには、ポリエステルアミド、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリ酸無水物、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、ポリカーボネート、およびポリエステルカーボネートが挙げられる。表1に記載されたAおよびBポリマーブロックの全分子量および重量パーセントの値から計算した場合、ポリマーAブロックの平均分子量は10,000ダルトン未満である。同じような計算により、親水性Bブロック部分は、好ましくは5000未満の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)である。
【0044】
本発明の生分解性ジブロック共重合体は、開環ポリマー化、または縮合ポリマー化によって合成してもよい。たとえば、B(PEG)ブロックはエステルまたはウレタン結合などによってAブロック(ポリエステル)に結合してもよい。縮合ポリマー化および開環ポリマー化法は、イソシアネートのようなカップリング剤の存在における、単官能性親水性Bブロックと二官能性疎水性Aブロックのいずれかの末端とのカップリングの方法として使用されてもよい。さらに、カルボニルジイミダゾール、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、N−ヒドロキシスクシンイミドおよびp−ニトロフェニルクロロホルメートなどのような活性化剤による官能基の活性化後にカップリング反応が起こってもよい。
【0045】
親水性Bブロックは、適切な分子量のPEGから形成される。PEGは、特有の生体適合性、非毒性、親水性、可溶化特性、および患者の体内からのすみやかなクリアランスのために、親水性、水溶性ブロックとして選択された。
【0046】
疎水性Aブロックは、それらの生分解性、生体適合性、および可溶化特性のために利用される。これらの疎水性、生分解性ポリエステルAブロックのin vitroおよびin vivoでの分解はよく理解されていて、分解産物は、患者の体内で容易に代謝される、および/または除去される、天然に存在する化合物である。
【0047】
驚くべきことに、疎水性ポリエステルAブロックの全重量パーセンテージは、親水性PEG Bブロックのそれに比較して高く、すなわち重量で約61〜85%の間、そして最も好ましくは重量で約65〜78%の間であるが、依然として得られたジブロック共重合体は所望する水溶性および逆温度応答性ゲル化特性を保持している。そのような疎水性成分の割合が高いブロック共重合体が通常の室温以下、たとえば冷蔵庫内の温度(5EC)で水溶性であるという発見は予想外である。この好ましい可溶性の特徴は、全体のジブロック共重合体の分子量を約150〜15000に低く維持することによって可能になっていると考えられている。したがって、親水性Bブロックまたは複数のブロックが共重合体の重量で約15〜39%を構成し、そして疎水性Aブロックまたは複数のブロックが共重合体の重量で約61〜85%を構成する、温度応答性が可逆的なゲル化特性を有する、水溶性生分解性ブロック共重合体が作製される。好ましい態様では、Aブロック(ポリエステル)は共重合体の重量で約65〜78%を含有し、PEG Bブロックは共重合体の重量で約22〜35%を含有してよい。さらに、好ましい全ジブロック共重合体の全体の平均分子量は、約850〜7000であろう。全ジブロック共重合体の最も好ましい全体の平均分子量は約1000〜5000であろう。
【0048】
ゲル化温度以下の温度でジブロック共重合体が可溶性である濃度は、機能的濃度として考慮することができる。一般に、3%〜約60%に至るまでのジブロック共重合体の濃度が使用可能であり、依然として機能的である。しかし、約5〜50%の範囲の濃度が好ましく、重量で約25〜45%の範囲の濃度が最も好ましい。共重合体により実行可能なゲル相転移を行うためには、たとえば重量で20%のようなある程度の最小濃度が必要である。低い機能的濃度範囲では、相転移により弱いゲルが形成される可能性がある。高濃度では、強いゲルネットワークが形成される。
【0049】
生分解性ブロック共重合体およびペプチド/蛋白質薬物の混合物、および/または別の型の薬物が、ゲル化温度以下でジブロック共重合体の水性溶液として作製され、薬物が部分的に、または完全に溶解していてよい薬物送達液体を形成してもよい。薬物が部分的に溶解している場合、または薬物が本質的に不溶である場合、薬物は懸濁液または乳濁液のようなコロイド状態で存在する。この薬物送達液体は、その後、たとえば患者への眼内、経膣、経尿道、直腸内、経鼻、経口、口腔内、肺内、または耳内投与によって、非経口的に、局所的に、経皮的に、経粘膜的に、腔に吸入、または挿入され、その結果、体温がゲル化温度以上であるために、それは逆温度応答性ゲル化される。
【0050】
このシステムは、材料の生体適合性およびゲルの柔軟性のために、周辺組織に最小の毒性および最小の機械的刺激状態を引き起こすことになり、そして特定の時間間隔内で、完全に乳酸、グリコール酸、およびその他の対応するモノマーに生分解されることになる。薬物放出、ゲル強度、ゲル化温度、および分解速度は、適切な設計および種々の共重合体ブロックの作製により、すなわち、AブロックとBブロックの重量パーセント、ラクテートとグリコレートのモル割合、およびABジブロック共重合体の分子量および多分散性の調節により、制御することができる。薬物放出はまた、薬物送達液体におけるポリマー濃度の調節によって制御することができる。
【0051】
溶解した薬物、または懸濁液または乳濁液としての薬物のいずれかを含有するジブロック共重合体溶液からなる剤形が身体に投与される。この製剤はその後、ブロック共重合体の逆温度応答性ゲル化特性のために、自発的にゲル化し、製剤の温度が体温まで上昇するにつれて薬物デポーを形成する。製剤にどのくらい薬物を負荷できるかに関する唯一の制限は、機能性の1種であり、すなわち受容できない程度に共重合体の温度応答性ゲル化特性が有害な影響を受けるまで、または受容できないほど製剤の投与を困難にするような程度に製剤の特性が有害な影響を受けるまで、薬物負荷を増加させることができる。一般に、多くの例では、薬物は製剤の重量で約0.01〜20%を構成し、約0.01〜10%の範囲が最も一般的であると予想されている。これらの薬物負荷の範囲は本発明を限定するものではない。機能性が維持される場合、これらの範囲を超えた薬物負荷は本発明の範囲内に包含される。
【0052】
本発明の主題の組成物にとっての明確な利点は、ジブロック共重合体が多くの薬物の溶解度を増す能力にある。疎水性Aブロック(複数のブロック)と親水性Bブロック(複数のブロック)の組み合わせがジブロック共重合体を事実上、両親媒性にする。驚くべきことは、全部でないとしても、大部分の薬物の可溶化の程度である。なぜなら、ジブロック共重合体の主要成分は疎水性Aブロック含量であるからである。しかし、すでに検討したように、疎水性ポリマーブロック(複数のブロック)が主要成分であっても、ブロック共重合体は水溶性であり、ブロック共重合体の水性相と組み合わさると薬物溶解度の付加的な増加があることが見出されている。
【0053】
本発明の組成物の別の利点は、ブロック共重合体が多くの薬物の化学的安定性を増す能力にある。薬物が本発明のジブロック共重合体存在下にある場合、薬物の化学的不安定性を誘導する、種々の薬物の分解機序が阻止されることが見出されている。たとえば、有機共溶媒中のパクリタキセルとシクロスポリンAのある種の水性溶液に比べて、これらの薬物は、本発明の水性ポリマー組成物中で実質的に安定化される。パクリタキセルとシクロスポリンAに関するこの安定化作用は、多くの別の薬物でも得ることができる効果をよく説明する。
【0054】
ある種の状況では、薬物を負荷したポリマーは溶液としてではなく、ゲル状態で投与してもよい。ゲル化は、投与前に薬物を負荷したポリマー溶液の温度をポリマーのゲル化温度以上に高めた結果であってもよく、あるいは投与温度で飽和濃度以上に溶液中のポリマーの濃度を上げることによって引き起こされてもよく、あるいはポリマー溶液に、溶液をゲル化する添加物を添加することによって引き起こされてもよい。いずれの事象においても、そのようにして形成されたゲルは、眼内、経膣、経尿道、直腸内、経鼻、経口、肺内、または耳内投与のように、非経口的に、局所的に、経皮的に、経粘膜的に、腔に吸入、または挿入されてよい。
【0055】
本発明は、核酸、ホルモン、抗癌剤を含むすべての型の生物活性物質および薬物に適用可能であり、ポリペプチドおよび蛋白質を送達するための非常に効果的な方法を提供する。多くの不安定なペプチドおよび蛋白質薬物は本発明のブロック共重合体に製剤し易く、本明細書に記載の逆温度応答性ゲル化過程の恩恵を被ることができる。以下のものに特に限定しないが、薬剤的に有用なポリペプチドおよび蛋白質の例は、以下のものからなる群から選択することができる:エリスロポイエチン、オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、プロラクチン、ルリベリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン(ヒト、ブタ、ウシなど)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン−2(IL−2)、インターフェロン−α、βまたはγ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストリン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、へパリナーゼ、骨形成蛋白質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、インターロイキン−11(IL−11)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリンならびにその合成類似体、改変体および薬理学的に活性なフラグメント、酵素、サイトカイン、抗体およびワクチン。
【0056】
使用することができるポリペプチドおよび蛋白質薬物に対する唯一の制限は、機能性の1種である。ある例では、ポリペプチドおよび蛋白質の機能性または物理的安定性も、ポリペプチドまたは蛋白質薬物の水性溶液または懸濁液への種々の添加剤の添加によって増加させることができる。ポリオール(糖を含む)、アミノ酸、界面活性剤、ポリマー、別の蛋白質およびある種の塩のような添加剤を使用することができる。これらの添加剤はブロック共重合体に容易に組み込まれ、それらは本発明の逆温度応答性ゲル化過程を経験することになる。
【0057】
蛋白質工学における進歩は、ペプチドまたは蛋白質の生来の安定性を増す可能性を提供することができる。そのようにして得られた、工学的に操作された、または改変された蛋白質は、規制という意味においては新規な実体として見なすことができるが、このことは本発明の使用にとってのそれらの適合性を変化させない。改変の典型的な例の1種は、ペギル化であり、そこではポリペプチド薬物の安定性は、ポリエチレングリコールのような水溶性ポリマーとポリペプチドを共有結合させることにより、著しく改善することができる。別の例としては、末端および/または内部の付加、欠失または置換による、1以上のアミノ酸残基の同一性または位置に関してのアミノ酸配列の改変が挙げられる。安定性のいずれかの改変は、治療的に有効なポリペプチドまたは蛋白質が、患者への薬物送達液体の単回投与後に長期間にわたり持続的に放出されることを可能にする。
【0058】
ペプチドまたは蛋白質を基礎にした薬物に加え、すべての治療的および医学的に有用なカテゴリーに由来する別の薬物を利用してもよい。これらの薬物はMerck Index、Physicians Desk Reference、およびThe Pharmacological Basis of Therapeuticsのような公知の参考文献に記載されている。具体的な物質の簡単な記載は説明の目的のためだけに提供され、限定するものと見なすべきではない:マイトマイシン、ブレオマイシン、BCNU、カルボプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、パクリタキセル、タキソテール、アクチノマイシンDおよびカンプトテシンのような抗癌剤;オランザピンおよびジプラシドンのような抗精神病薬;セフォキシチンのような抗細菌薬;イベルメクチンのような駆虫薬;アシクロビルのような抗ウイルス薬;シクロスポリンA(環状ポリペプチド型薬)、ステロイド、およびプロスタグランジンのような免疫抑制薬。
【実施例】
【0059】
以下は、本発明の好ましい態様を説明する実施例であるが、それらが代表的であることを意図しない。
実施例1
開環共重合体化によるMeO−PEG−PLGAジブロック共重合体の合成
図1に示す反応スキームに従って、50gのMeO−PEG(Mw=550)を真空下(5mmHg)、100ECで2時間乾燥した。89.58gのD,L−ラクチドおよび28.15gのグリコリドをフラスコに添加し、温度が155ECに到達するまで反応混合物を加熱した。反応混合物の温度が130℃の場合、1mLシリンジを使用して、0.04g(700ppm)のスタナスオクトエート(stannous octoate)を反応フラスコに添加した。反応の進行はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により追跡した。共重合体の分子量がそれ以上の増加を示さなくなったとき、反応を停止し、フラスコを冷やし、未反応のモノマーは2時間減圧蒸留することによりすべて除去した。
【0060】
実施例2
実施例1で概説した一般手順に続いて、ラクチドおよび/またはグリコリド含量を変化させる以外は同じPEGを使用して、別のジブロック共重合体を合成した。これらのジブロック共重合体の特性を以下の表に記載する:
【0061】
【表1−2】

【0062】
上の表に記載されたすべてのポリマーは逆温度応答性ゲル化特性を有し、ゲル化特性のためのジブロック共重合体濃度は水中で23wt%または25wt%であったことに注意するべきである。ジブロック共重合体溶液の分子量およびゲル化特性は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)および管反転法(tube inversion method)の両方により性状解析されている。
【0063】
実施例3
縮合共重合体化によるPLGA−PEGジブロック共重合体の合成
縮合共重合体化によるジブロック共重合体合成の反応スキームを図2に示す。窒素注入口、温度計、および水除去のための蒸留ヘッドの付いた三口フラスコに、DL−乳酸およびグリコール酸(モル比でそれぞれ3:1)を入れた。反応混合物は、155EC、窒素下で、撹拌しながら、大気圧で3時間、その後減圧下(5mmHg)で6時間加熱した。反応の進行はGPCで追跡した。反応は適当な時期に停止し、形成されたポリマーは、大過剰のメタノール中におけるジクロロメタン溶液からの沈殿により精製した。残渣はメタノールで粉砕し、真空下(0.05mmHg)、23ECで乾燥した。PLGAオリゴマーはGPC、IRおよびNMRにより性状解析した。得られたPLGAオリゴマーは1910の数平均分子量数(Mn)を有し、Mw/Mn比は1.8であった。
【0064】
PLGAはMeO−PEG(Mw=550)と混合し、窒素雰囲気下、160ECにおいて、フラスコ中で加熱した。触媒として、0.1wt%のスタナスオクトエートを使用した。反応の進行はGPCで追跡した。適当な時期に反応を停止し、フラスコは室温に戻した。得られたPLGA−PEGジブロック共重合体は2260の数平均分子量(Mn)を有し、Mw/Mn比は1.6であった。重量平均分子量と数平均分子量はそれぞれGPCとNMRで測定した。ラクチド/グリコリド比はNMRデータから計算した。GPC分析は、RI検出と溶離液としてのクロロホルムを使用して、PEGでキャリブレーションしたStyragel HR−3カラム上で行った。NMRスペクトルはBruker200MHZ計器により、CDCL中で測定した。NMRピークの帰属によりジブロックAB構造を確かめた。
【0065】
実施例4
本発明の種々のABジブロック共重合体水性溶液のゲル化挙動は異なる濃度で研究した。重量で10〜40%のポリマー溶液は水中で作製し、粘度の変化は10E〜60ECの範囲の温度で認められた。ゲル化は、ポリマー溶液のバイアルを逆さにしたときに容易に流れない物理的状態として定義した。ゲル化研究から、温度とジブロック共重合体濃度の関数として実施例2のポリマーの状態図(図3)を得た。新規な、逆温度応答性ゲル化挙動は明白に認められ、ジブロック共重合体溶液が加熱された時に見出された。生理的に適切な温度(たとえば37EC)におけるゲル化がとりわけ一般的であり、医学的および薬物送達目的のための実質的なシステムの有用性のための基礎を形成した。
【0066】
実施例5
実施例1のPLG−PEGジブロック共重合体のin vitroでの分解は、異なる温度(−10EC、5EC、23ECおよび37EC)、および異なる初期pH(3.0、5.0および7.4)で、12週間にわたりインキュベーションした、重量で25%の共重合体の溶液またはゲル(1ml)に対して測定する。このジブロック共重合体の分解および生物分解は加水分解によって引き起こされ、最終分解産物として乳酸、グリコール酸およびPEGを生じる。
【0067】
試料(50μl)は毎週採取する。試料は凍結乾燥し、クロロホルムに溶かし、ポリマー残渣の分子量は先に記載のようにGPCによって測定する。ポリマーの分解は、3.0〜7.4のpHの範囲にわたり、実質的に初期のpHに依存せず、ポリマーが加水分解されて乳酸およびグリコール酸を形成することによる、媒質の酸性化に起因すると考えることができる。温度応答性ゲル化挙動は、同じpH範囲にわたりpHに依存しない。分解は高温ではさらに速い。
【0068】
実施例6
実施例1のジブロック共重合体のin vivoでの生物分解は8週間にわたり測定する。重量で23%のジブロック共重合体を含有する、0.40〜0.45mlの低温の水性溶液の試料をラットに皮下注射する。ポリマーのゲル化温度以上である体温に到達後、肉眼的に明白なゲル塊が速やかに形成される。試料は外科手術により回収し、4週間にわたる時間の関数として、ゲルは次第に小さくなることを示した。4週間〜8週間の間に、注射したジブロック共重合体の物理的状態はゲルから粘性液体中のゲルの混合物に、そして最終的にゲルを含有しない粘性液体に変化する。この液体は次第に完全に再吸収される。8週間の最後には、注射部位において製剤は肉眼的に全く見られない。顕微鏡的には、粘性液体の小さな袋が認められ、そしてそれらもその後の2週間で完全に再吸収される。
【0069】
実施例7
パクリタキセルおよびシクロスポリンAは、非常に水に溶けにくい(溶解度は約4μg/mlであった)疎水性薬物である。しかし、これらの薬物はPLG−PEGジブロック共重合体の水性溶液に溶かした場合、著しく高い溶解度を示す。たとえば、重量で30%の水性共重合体溶液(実施例1のポリマー)中、パクリタキセルは6mg/mlまで可溶であり、そしてシクロスポリンAは2mg/mlまで可溶である。
【0070】
パクリタキセルおよびシクロスポリンAは、水性共溶媒溶液(たとえば、水/アセトニトリル溶液中)で非常に不安定である。重量で30%の水性PLG−PEGジブロック共重合体溶液(すなわち、共重合体のゲル化温度以下)か、またはゲル(すなわち、共重合体のゲル化温度以上)のいずれかに含有されたパクリタキセルは、120日間の貯蔵(5ECおよび37EC)後に85%以上無変化であり、一方シクロスポリンAは100日間(5EC)にわたり安定である。
【0071】
実施例8
種々の重量濃度の、表1の数平均分子量2390を持つPLG−PEGジブロック共重合体の水性溶液を作製した。分子量40,000および4000のFITCデキストランをこのジブロック共重合体水性溶液に溶かし、最終濃度5mg/mlを得た。ポリマー試料1グラムをガラスシンチレーションバイアルに入れた。37℃で15分間インキュベーションしてゲルを形成後、10mMのPBS10mLをバイアルに添加した。しばらくして、媒質を新鮮な媒質に置き換えた。媒質に放出されたFITCデキストランはUV/VISスペクトロメーターにより、493nmで分析した。研究を通して、ポリマー溶液は、温度が37℃にセットされたインキュベーター中に維持した。試料は振とう機により75rpmで撹拌した。データは図4でグラフにまとめた。FITCデキストラン40000は持続的にジブロック共重合体から放出された。ジブロック共重合体23wt%の濃度において、組み込まれたFITCデキストランの約60%は42日間で放出された。しかし、陽性対照として使用されているトリブロック共重合体(ABA構造)は、ジブロック共重合体より速いFITCデキストランの放出(10日間で70%)を示した。
【0072】
図5に示すように、ジブロック共重合体サーマルゲルからのFITCデキストランの持続的放出は、ジブロック共重合体濃度の増加により、さらに認められた。濃度が30から40wt%に増加する場合、FITCデキストラン4000の放出は維持される(30wt%および40wt%それぞれに対して10日間で30%と24%)。注目すべきことには、初めの1日の放出が著しく急激ではないことである(10%未満)。ポリマー濃度が30から40%に増加するに従って、4時間以内のFITCデキストラン4,000の初期の急激な放出は、5.6%から3.0%に著しく減少した(図5−a)。トリブロック共重合体サーマルゲルに比較して、ジブロック共重合体ゲルは初期の急激な放出の顕著な減少を示した。ポリマー濃度30%では、トリブロック共重合体(BAB構造)ゲル由来のFITCデキストラン4,000の初期の急激な放出は24%であるが、ジブロック共重合体ゲルからの放出は4時間で6%だけであった(図5−b)。
【0073】
FITCデキストランの放出特性はまた、2種の異なるジブロック共重合体を混合することによって調節される(図5−c)。ゲル化温度が異なる2種の異なるジブロック共重合体の混合物は、FITCデキストラン4,000の異なる放出速度論を示す。ゲル化温度が高いジブロック共重合体と混合すると、ゲルマトリックスからのFITCデキストランの放出は促進されている。この実証は、異なるゲル特性を有する2種の異なるジブロック共重合体の混合が放出速度論とゲル化温度の調節に有用である可能性があることを明白に示唆する。
【0074】
したがって、長期間のジブロック共重合体サーマルゲルからの持続的放出は、この実施例によって明白に確立され、説明された。
先の説明により、当業者が逆温度応答性ゲル化特性を有する水性溶液を形成するAB型ジブロック共重合体を作製し、それらを薬物送達の分野で利用することを可能にする。分子量40,000および4000のFITCデキストランの制御された送達は実施例で説明され、ジブロック共重合体の水性溶液から形成されるヒドロゲルの機能性を示すが、これらの説明は、利用し、生分解性ブロック共重合体に負荷することが可能なすべての薬物の包括的な説明であることを意図しない。たしかに、種々のクラスの治療薬に由来する非常にたくさんの別の薬物は、本発明のこの説明において記載されるようにジブロック共重合体の水性組成物からの送達によく適合する。作製可能で、臨界逆温度応答性ゲル化特性を実証するすべてのジブロック共重合体が具体的に示されてはいない。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の改変を行ってもよいことは当業者には直ちに明白であり、本発明は以下の特許請求の範囲とそれらの機能的等価物によってだけ、限定されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】開環ポリマー化によるジブロック共重合体合成を説明する反応スキームである。
【図2】縮合ポリマー化によるジブロック共重合体合成を説明する反応スキームである。
【図3】異なる濃度および温度で研究された、PLG−PEGジブロック共重合体の水性溶液のゲル化挙動を説明する状態図である。
【図4】長期間にわたる、PLG−PEGジブロック共重合体サーマルゲルからのFITCデキストリン40000の継続的な放出を説明するグラフである。
【図5−a】30%と40%のポリマー濃度におけるABジブロック共重合体サーマルゲルからのFITCデキストラン4,000のin vitroでの放出を比較する。
【図5−b】30%ポリマー濃度におけるABジブロック共重合体およびトリブロック共重合体サーマルゲルからのFITCデキストラン4,000のin vitroでの放出を比較する。
【図5−c】23%ポリマー濃度におけるABジブロック共重合体と2種のジブロック共重合体サーマルゲルの混合物からのFITCデキストラン4,000のin vitroでの放出を比較する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含有する生分解性AB型ジブロック共重合体:
i)生分解性ポリエステル、生分解性ポリエステルアミド、生分解性ポリエーテルエステル、生分解性ポリウレタン、生分解性ポリエステルウレタン、生分解性ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートからなる群から選択されるメンバーである、重量で61〜85%の生分解性、疎水性Aブロック;および
ii)50ダルトン〜5000ダルトンの範囲内の数平均分子量を有する、単官能性ポリエチレングリコール(PEG)を含有する、重量で15〜39%の生分解性、親水性Bブロック、
であって、450ダルトン〜15000ダルトンの範囲の数平均分子量を有し、逆温度応答性ゲル化特性を有する上記ジブロック共重合体。
【請求項2】
生分解性、疎水性AブロックがD,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、ε−ヒドロキシヘキソン酸、γ−ブチロラクトン、γ−ヒドロキシ酪酸、δ−バレロラクトン、δ−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロオキシ酪酸、リンゴ酸、およびその共重合体からなる群から選択されるモノマーから合成される、請求項1に記載のジブロック共重合体。
【請求項3】
ジブロックポリマーにおいて、それぞれの疎水性Aブロックが500ダルトン〜5000ダルトンの数平均分子量を有し、それぞれの親水性Bブロックが350ダルトン〜2000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1に記載のジブロック共重合体。
【請求項4】
ジブロック共重合体において、それぞれの疎水性Aブロックが1000ダルトン〜4000ダルトンの数平均分子量を有し、それぞれの親水性Bブロックが500ダルトン〜800ダルトンの数平均分子量を有する、請求項3に記載のジブロック共重合体。
【請求項5】
以下のものが均一に含有されている水相からなる、逆温度応答性ゲル化特性を有する水性生分解性ポリマー薬物送達組成物:
(a)有効量の薬物;および
(b)請求項1〜5の1つに記載の生分解性AB型ジブロック共重合体。
【請求項6】
ジブロックポリマー含量が重量で3〜50%であり、薬物含量が重量で0.01〜20%である、請求項5に記載の水性ポリマー組成物。
【請求項7】
以下のことを含む、徐放形式での薬物の温血動物への投与の方法:
(1)以下のものが均一に含有されている水相からなる、逆温度応答性ゲル化特性を有する水性生分解性ポリマー薬物送達組成物を提供すること:
(a)有効量の薬物;および
(b)請求項1〜5の1つに記載の生分解性AB型ジブロック共重合体;
(2)上記ジブロック共重合体のゲル化温度以下の温度において液体として上記組成物を維持すること;および
(3)上記動物に液体として上記組成物を投与し、その後上記温血動物の体温によって上記組成物の温度が上記ジブロック共重合体のゲル化温度以上になるに従ってゲルが形成されること。
【請求項8】
上記投与が非経口、眼内、局所、吸入、経皮、経膣、口腔内、経粘膜、経尿道、直腸内、経鼻、経口、肺内、耳内への方法によるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記組成物のジブロック共重合体含量が重量で3〜50%であり、上記組成物の薬物含量が重量で0.01〜20%である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
逆温度応答性ゲル化特性を有する水性生分解性ポリマー薬物送達組成物中に、有効量の薬物を均一に混合することを含む、上記薬物の溶解性を促進するための方法であって、上記水性組成物が、請求項1〜5の1つに記載の生分解性AB型ジブロック共重合体をその中に均一に含有している水相からなる、上記方法。
【請求項11】
逆温度応答性ゲル化特性を有する水性生分解性ポリマー薬物送達組成物中に、有効量の薬物を均一に混合することを含む、上記薬物の安定性を促進するための方法であって、上記水性組成物が、請求項1〜5の1つに記載の生分解性AB型ジブロック共重合体をその中に均一に含有している水相からなる、上記方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−a】
image rotate

【図5−b】
image rotate

【図5−c】
image rotate


【公表番号】特表2008−510004(P2008−510004A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527890(P2007−527890)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028710
【国際公開番号】WO2006/023388
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(507050160)プロセリックス・ソルト・レイク・シティ,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】