説明

逆F型内蔵アンテナ

【課題】要求される共振周波数への調整が容易であり、しかも落下による破損の恐れがなく、軽量化も達成可能な逆F型内蔵アンテナを提供する。
【解決手段】逆F型内蔵アンテナ10は、基体11の表面に逆F型のパターンで形成されるメッキ層によってアンテナエレメント12が構成されるため、その逆F型のパターンを若干変更するだけで共振周波数を調整することができ、要求される共振周波数への調整が容易である。また、セラミックスに較べてじん性が高く比重の小さい誘電体プラスチックスによって基体11が構成されているため、落下による破損の恐れがなく、軽量化も達成可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う各種の機器に内蔵可能な小型の内蔵アンテナに関し、詳しくは、RFID(Radio Frequency Identification)システムに好適な逆F型内蔵アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグの情報をRFIDリーダライタにより非接触で読み書きするRFIDシステムにおいては、一般に小型の内蔵アンテナが使用されている。この種の内蔵アンテナとして、アンテナ基板21小型のループアンテナ、ダイポールアンテナ、逆F型アンテナなどが特許文献1に記載されている。また、この種の逆F型アンテナの構造が特許文献2に記載されている。
【0003】
ここで、逆F型アンテナは、λ/4対応のモノポールアンテナの先端を折り曲げたL型アンテナを低姿勢化し、その給電点付近に短絡部を設けて給電点でのインピーダンス整合を取り易くしたアンテナである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−253977号公報
【特許文献2】特開2003−158419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に記載されているような従来の逆F型アンテナは、例えばセラミックス製の誘電体に板金製のアンテナエレメントを接合した構造を有するものであり、両者の接合に手間が掛かるという製造上の問題がある。また、この接合構造に起因してアンテナエレメントの形状変更が難しいため、要求される共振周波数への調整が容易でないという問題がある。さらに、セラミック製の誘電体を使用する場合には、落下により破損し易く、重量も重くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、要求される共振周波数への調整が容易であり、しかも落下による破損の恐れがなく、軽量化も達成可能な逆F型内蔵アンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、本発明に係る逆F型内蔵アンテナは、スティック状ないしブロック状の誘電体プラスチックスからなる基体と、この基体の表面に逆F型のパターンで形成されるメッキ層からなるアンテナエレメントとを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る逆F型内蔵アンテナは、基体の表面に逆F型のパターンで形成されるメッキ層によってアンテナエレメントが構成されるため、その逆F型のパターンを若干変更するだけで共振周波数を調整することができ、要求される共振周波数への調整が容易である。また、セラミックスに較べてじん性が高く比重の小さい誘電体プラスチックスによって基体が構成されているため、落下による破損の恐れがなく、軽量化も達成可能である。
【0009】
本発明の逆F型内蔵アンテナにおいて、アンテナエレメントは、放射部の基端部側に連続して形成された給電部および短絡部を有するものとして、この給電部および短絡部が形成される基体の基端部には、誘電正接(タンジェント・デルタ)を減少させるための段部が形成されているのが好ましい。
【0010】
また、本発明の逆F型内蔵アンテナにおいて、誘電体プラスチックスからなる基体の誘電率εが3〜20の範囲であると、誘電体プラスチックスによる波長短縮率が大きくなるため、逆F型内蔵アンテナを一層小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る逆F型内蔵アンテナは、基体の表面に逆F型のパターンで形成されるメッキ層によってアンテナエレメントが構成されるため、その逆F型のパターンを若干変更するだけで共振周波数を調整することができ、要求される共振周波数への調整を容易に行うことができる。
【0012】
また、セラミックスに較べてじん性が高く比重の小さい誘電体プラスチックスによって基体が構成されているため、落下による破損の恐れがなく、軽量化も達成可能である。
【0013】
本発明の逆F型内蔵アンテナにおいて、誘電体プラスチックスからなる基体の基端部、すなわちアンテナエレメントの給電部および短絡部が形成される基体の基端部に、誘電正接(タンジェント・デルタ)を減少させるための段部が形成されている場合、基体のエネルギ損失が減少し、送受信する電波の帯域幅が一層狭まるため、より高精度の送受信が可能となる。
【0014】
また、誘電体プラスチックスからなる基体の誘電率εが3〜20の範囲であると、誘電体プラスチックスによる波長短縮率が大きくなるため、逆F型内蔵アンテナを一層小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る逆F型内蔵アンテナが組み込まれるRFIDリーダーライタの内部構造を示す平面図である。
【図2】一実施形態に係る逆F型内蔵アンテナの上面および右側面を基端部側から見て示す斜視図である。
【図3】一実施形態に係る逆F型内蔵アンテナの上面および左側面を基端部側から見て示す斜視図である。
【図4】一実施形態に係る逆F型内蔵アンテナの上面および左側面を先端部側から見て示す斜視図である。
【図5】一実施形態に係る逆F型内蔵アンテナの下面および右側面を基端部側から見て示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る逆F型内蔵アンテナの実施の形態を説明する。一実施形態に係る逆F型内蔵アンテナは、例えばRFID(Radio Frequency Identification)システムに採用されているUHF950MHz帯の電波の1/4波長に対応した逆F型の内蔵アンテナである。
【0017】
この逆F型内蔵アンテナは、例えば図1に符号10,10…で示すように、RFIDシステムを構成するRFIDリーダライタ20に内蔵されたアンテナ基板21の裏面側に4本を1組として装着されている。なお、このアンテナ基板21は、移相器22,22…、スイッチ付きコネクタ23,23…、RFコネクタ24などが装着されている。
【0018】
ここで、図2〜図5に示すように、一実施形態の逆F型内蔵アンテナ10は、長さ36mm、幅6mm、高さ(厚さ)8mm程度のスティック状の外観を呈する基体11と、この基体11の表面に逆F型のパターンで形成されたアンテナエレメント12とを備えている。
【0019】
基体11は、従来の誘電体セラミックスに較べてじん性が高く比重の小さい誘電体プラスチックス、例えば結晶性ポリスチレン(SPS)をベース樹脂とした熱可塑性樹脂で構成されており、誘電率εが10程度の高い誘電性を有する。この基体11は、半田加工が可能な耐熱性(260℃)およびメッキ加工性を備えている。
【0020】
このような基体11の基端部には、基体11の上面から見た場合に基体11の左側面から右側面に向かって3段の階段状に切り欠かれた形状の段部11Aが形成されている。また、基体11の底面には、図1に示したアンテナ基板21に装着するための4つの突部、すなわち、給電用突部11B、短絡用突部11C、固定用突部11Dおよび固定用突部11Eが形成されている(図5参照)。
【0021】
給電用突部11Bは、段部11Aが形成された基体11の基端部側の底面において、左側面に寄った個所に突設されている。また、短絡用突部11Cは、基体11の基端部側の底面において、右側面側に寄った個所に突設されている。そして、固定用突部11Dは、基体11の先端部側の底面において、先端面側に寄った個所の幅方向中央部に突設されている。また、固定用突部11Eは、基体11の先端部側の底面において、先端面側から若干離れた個所の幅方向中央部に突設されている。
【0022】
アンテナエレメント12は、銅(Cu)/ニッケル(Ni)/金(Au)の3層構造のメッキ層により、相互に連続した放射部12A、給電部12Bおよび短絡部12Cを有する逆F型のパターンに形成されている。放射部12Aは、基体11の基端部から先端部に亘って基体11の上面および先端面に形成されている。給電部12Bは、放射部12Aの基端部側を給電用突部11Bに連続させるように、基体11の左側面に寄った段部11Aの左端部に形成されている。短絡部12Cは、放射部12Aの基端部側を短絡用突部11Cに連続させるように、基体11の右側面に寄った段部11Aの右端部に形成されている。
【0023】
以上のように構成された一実施形態の逆F型内蔵アンテナ10は、基体11の誘電率εが10程度であって高い誘電性を有するため、その波長短縮効果により、UHF950MHz帯の電波を1/4波長に短縮して良好に送受信する。この逆F型内蔵アンテナ10は、従来の誘電体セラミックスに較べてじん性が高く比重の小さい誘電体プラスチックス、例えば結晶性ポリスチレン(SPS)をベース樹脂とした熱可塑性樹脂で構成されているため、落下による破損の恐れがなく、しかも軽量である。
【0024】
ここで、一実施形態の逆F型内蔵アンテナ10は、アンテナエレメント12の放射部12Aの基端部側に連続する給電部12Bと短絡部12Cとの間が段部11Aとして構成されており、この段部11Aが基体11の誘電損失である誘電正接(タンジェント・デルタ)を減少させるように機能する。このため、一実施形態の逆F型内蔵アンテナ10では、基体11のエネルギ損失が減少し、送受信する電波の帯域幅を一層狭めることができ、より高精度の送受信が可能となる。
【0025】
また、一実施形態の逆F型内蔵アンテナ10は、放射部12A、給電部12Bおよび短絡部12Cを有する逆F型のアンテナエレメント12が基体11の表面に形成されるメッキ層によって構成されるため、その逆F型のパターンを若干変更するだけで共振周波数を調整することができる。
【0026】
すなわち、一実施形態の逆F型内蔵アンテナ10によれば、落下による破損の恐れがなく、しかも軽量であって、より高精度の送受信が可能となる。加えて、要求される共振周波数への調整を容易に行うことができる。
【0027】
本発明に係る逆F型内蔵アンテナは、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、基体11は、誘電率が3〜20の範囲のセラミックスと、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)と、液晶ポリマ(LCP)とをコンパウンドした複合材料としてもよい。この複合材料からなる基体11も、高い誘電性を備えると共に、精密成形に適した寸法安定性およびハンダに対する耐熱性を備える。
【0028】
また、基体11の基端部に形成される段部11Aは、図示のような3段の階段状に限らず適宜の段数の階段状とすることができる。また、アンテナエレメント12の逆F型のパターンも図示の例と異なる適宜のパターンに変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
10:逆F型内蔵アンテナ
11:基体
11A:段部
11B:給電用突部
11C:短絡用突部
11D:固定用突部
11E:固定用突部
12:アンテナエレメント
12A:放射部
12B:給電部
12C:短絡部
20:RFIDリーダライタ
21:アンテナ基板
22:移相器
23:スイッチ付きコネクタ
24:RFコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スティック状ないしブロック状の誘電体プラスチックスからなる基体と、この基体の表面に逆F型のパターンで形成されるメッキ層からなるアンテナエレメントとを備えていることを特徴とする逆F型内蔵アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナエレメントは、放射部の基端部側に連続して形成された給電部および短絡部を有し、この給電部および短絡部が形成される前記基体の基端部には、誘電正接を減少させるための段部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆F型内蔵アンテナ。
【請求項3】
前記基体の誘電率εが3〜20の範囲であることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の逆F型内蔵アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98922(P2013−98922A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242547(P2011−242547)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(503229546)
【Fターム(参考)】