説明

透光性セラミックおよびその製造方法、ならびに光学部品および光学装置

一般式:Ba{Tix1x2(Mg1−tZn(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.015≦x1+x2≦0.90、0<x1≦0.90、0≦x2≦0.60、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、0<t<1、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分とする、透光性セラミック。この透光性セラミックは、直線透過率が広い波長帯域にわたり高く、
屈折率が高く、屈折率およびアッベ数の調整範囲が広く、複屈折がないため、これを用いて構成されたレンズ(2)は、小型化および薄型化が要求される、たとえば光ピックアップ(9)等に有利に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ等の光学部品の材料として有用な透光性セラミックおよびその製造方法、ならびにそれを用いた光学部品および光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ピックアップ等の光学装置に搭載するレンズ等の光学部品の材料としては、たとえば特許文献1および特許文献2に記載されているように、ガラスもしくはプラスチックまたはニオブ酸リチウム(LiNbO)等の単結晶が用いられている。
【0003】
ガラスおよびプラスチックは、光透過率が高く、所望の形状への加工が容易であることから、主としてレンズ等の光学部品に用いられている。他方、LiNbO等の単結晶は、電気光学特性および複屈折を利用して、主として光導波路等の光学部品に用いられている。このような光学部品を用いた光ピックアップなどの光学装置ではさらなる小型化や薄型化が要求されている。
【0004】
ところが、従来のガラスおよびプラスチックでは、その屈折率が1.9未満であることから、それらを用いた光学部品や光学装置において小型化や薄型化に限界がある。また、特にプラスチックでは、耐湿性が悪いという欠点を有するとともに、複屈折が生じることがあるため、入射光を効率良く透過および集光させることが難しいという欠点も有している。
【0005】
他方、LiNbO等の単結晶は、たとえば屈折率が2.3と比較的高い。しかしながら、LiNbO等の単結晶は、複屈折が生じるため、レンズ等の光学部品に用いることが難しく、用途が限定されてしまうという欠点を有している。
【0006】
複屈折を生じず、かつ優れた光学特性を与え得る材料として、Ba(Mg,Ta)O系ペロブスカイトまたはBa(Zn,Ta)O系ペロブスカイトを主成分とする透光性セラミックが挙げられる。これらは、それぞれ、たとえば特許文献3および特許文献4に記載されている。
【0007】
特許文献3に開示されているBa(Mg,Ta)O系ペロブスカイトを主成分とする透光性セラミックにおいて、屈折率やアッベ数等の光学特性は、4価元素であるSnおよび/またはZrでMgおよび/またはTaの一部を置換することにより変化させることができ、その変化量は置換量が増加するほど大きくなる。しかし、これらの透光性セラミックでは、置換量の上限が0.40と低いため、屈折率やアッベ数を大きく変化させることが難しい。たとえば、屈折率にして、2.071〜2.082の範囲の変化しか得られていない。
【0008】
同様に、特許文献4に開示されているBa(Zn,Ta)O系ペロブスカイトを主成分とする透光性セラミックにおいても、ZrでZnおよび/またはTaの一部を置換しているが、これも置換量の上限は0.06と低く、屈折率やアッベ数を大きく変化させることが難しい。たとえば、屈折率にして、2.128〜2.132の範囲の変化しか得られていない。
【0009】
したがって、これらの透光性セラミックを用いて光学部品を構成した場合、光学装置の設計において、十分な自由度を得ることが困難である。
【0010】
また、レンズなどの光学部品では、一般的に、可視光の直線透過率の波長依存性が小さいことが望ましいが、上述の2種の透光性セラミックでは、波長が短くなるに従い直線透過率が低下する傾向にあり、好ましくない。
【特許文献1】特開平5−127078号公報(全頁、図1)
【特許文献2】特開平7−244865号公報(請求項6、段落「0024」)
【特許文献3】特開2004−75512号公報(全頁、全図)
【特許文献4】特開2004−75516号公報(全頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い屈折率を有し、かつ屈折率やアッベ数を広い範囲で調整し得る、透光性セラミックおよびその製造方法を提供しようとすることにある。
【0012】
本発明の他の目的は、可視光の直線透過率の波長依存性の小さい、透光性セラミックおよびその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、小さな外形寸法で所望の光学特性を発揮し得る、光学部品およびこの光学部品を用いた光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る透光性セラミックは、第1の局面では、一般式:Ba{Tix1x2(Mg1−tZn(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.015≦x1+x2≦0.90、0<x1≦0.90、0≦x2≦0.60、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、0<t<1、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分としている。
【0015】
本発明に係る透光性セラミックは、第2の局面では、一般式:Ba{Tix1x2Zn(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.01≦x1+x2≦0.60、0<x1≦0.60、0≦x2≦0.30、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分としている。
【0016】
本発明に係る透光性セラミックは、第3の局面では、一般式:Ba{Tix1x2Mg(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.04≦x1+x2≦0.80、0<x1≦0.80、0≦x2≦0.40、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分としている。
【0017】
本発明に係る透光性セラミックは、好ましくは、波長が633nmである可視光の、試料厚み0.4mmにおける直線透過率が20%以上である。
【0018】
また、本発明に係る透光性セラミックは、波長が633nmである可視光の屈折率が2.01以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る透光性セラミックは、多結晶体であることが好ましい。
【0020】
本発明は、また、上述したような透光性セラミックを製造する方法にも向けられる。本発明に係る透光性セラミックの製造方法は、セラミック原料粉末を所定形状に成形してなる未焼成のセラミック成形体を用意する工程と、上記セラミック原料粉末と実質的に同組成の同時焼成用組成物を用意する工程と、同時焼成用組成物を未焼成のセラミック成形体に接触させながら、酸素濃度が90体積%以上の雰囲気中で、未焼成のセラミック成形体を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0021】
本発明に係る透光性セラミックの製造方法において、好ましくは、同時焼成用組成物は粉末状態であり、焼成工程は、同時焼成用組成物の粉末に未焼成のセラミック成形体を埋め込んだ状態で実施される。
【0022】
本発明は、上述したような製造方法によって得られた透光性セラミックにも向けられる。
【0023】
本発明は、さらに、前述した透光性セラミックからなる光学部品、およびこの光学部品が搭載されている光学装置にも向けられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複屈折がなく、1.9以上の、好ましくは2.01以上の高い屈折率を有する透光性セラミックを得ることができる。このため、比較的小さな外形寸法で所望の光学特性を発揮可能な光学部品を得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る透光性セラミックは、屈折率やアッベ数を広い範囲で調節することができる。したがって、本発明の透光性セラミックを用いて構成した光学部品を搭載した光学装置の設計の自由度を高めることができる。
【0026】
さらに、本発明に係る透光性セラミックによれば、直線透過率の波長依存性を小さくすることができる。したがって、より透明度の高い光学部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
[図1]本発明に係る透光性セラミックを用いて構成される光学部品の第1の例としての両凸レンズ10を示す断面図である。
[図2]本発明に係る透光性セラミックを用いて構成される光学部品の第2の例としての両凹レンズ11を示す断面図である。
[図3]本発明に係る透光性セラミックを用いて構成される光学部品の第3の例としてのメニスカスレンズ12を示す断面図である。
[図4]本発明に係る透光性セラミックを用いて構成される光学部品の第4の例としての光路長調整板13を示す断面図である。
[図5]本発明に係る透光性セラミックを用いて構成される光学部品の第5の例としての球状レンズ14を示す断面図である。
[図6]本発明に係る透光性セラミックを用いて構成された光学部品を搭載した光学装置の一例としての光ピックアップ9を図解的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 記録媒体
2 対物レンズ
3 ハーフミラー
4 コリメータレンズ
5 半導体レーザ
6 集光レンズ
7 受光素子
8 レーザー光
9 光ピックアップ
10 両凸レンズ
11 両凹レンズ
12 メニスカスレンズ
13 光路長調整板
14 球状レンズ
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係る透光性セラミックの基本組成系は、Ba{(Mg,Zn)(Ta,Nb)}Oで表される。これは、本来、六方晶系の結晶構造を有する複合ペロブスカイトである。BaはペロブスカイトのAサイトを占め、MgおよびZnといった2価の元素ならびにTaおよびNbといった5価の元素はペロブスカイトのBサイトを占める。
【0030】
前述した第1の局面での一般式:Ba{Tix1x2(Mg1−tZn(Ta1−uNb、第2の局面での一般式:Ba{Tix1x2Zn(Ta1−uNb、および第3の局面での一般式:Ba{Tix1x2Mg(Ta1−uNbにおいて、TaまたはNbの、MgまたはZnに対する比z/yは、1.60〜2.40の範囲であることにより、ペロブスカイト構造が保たれている。z/yが上記範囲を外れた場合、直線透過率が20%未満となり、好ましくない。ペロブスカイトのBサイトのAサイトに対する比vが1.00〜1.05の範囲に設定されるのも同じ理由である。なお、Oの含有比wは3に近い値となる。また、この複合ペロブスカイトは、そのBサイトがTiならびにSn、ZrおよびHfの少なくとも1種といった4価の元素で置換されることにより、その結晶構造が立方晶系に変化し、透光性が発現する。
【0031】
本発明の透光性セラミックの屈折率は、TiならびにSn、ZrおよびHfの少なくとも1種といった4価の元素の置換により変化させることが可能である。Snはこれらの屈折率を小さくする効果があり、Ti、ZrおよびHfは逆に屈折率を大きくする効果がある。特にTiの効果は大きい。また、この屈折率の変化量の絶対値は4価元素の置換量にほぼ比例することがわかっており、大きく変化させるためにはその置換量を増やせばよい。さらに、Tiと、Sn、ZrおよびHfの少なくとも1種とを適当な比率で混合して置換することによって、透光性セラミックの屈折率を自在に調節することが可能である。また、屈折率の波長依存性を表すアッベ数も、4価の置換元素であるTiならびにSn、ZrおよびHfの少なくとも1種の置換量を増やすことで大きく変化させることができる。Snはアッベ数を大きくする効果があり、Ti、ZrおよびHfは逆にアッベ数を小さくする効果がある。
【0032】
次に、本発明に係る透光性セラミックの具体的な組成について、前述の第1、第2および第3の局面に分けて説明する。これら第1、第2および第3の局面の間では、4価の置換元素の置換量の範囲が互いに異なっている。
【0033】
第1の局面では、透光性セラミックは、一般式:Ba{Tix1x2(Mg1−t(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.015≦x1+x2≦0.90、0<x1≦0.90、0≦x2≦0.60、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、0<t<1、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分としている。
【0034】
簡単に言えば、第1の局面では、2価の元素としてMgとZnが同時に存在することが特徴であり、これが4価元素の置換量x1+x2の上限を高くするのに作用しているが、4価元素にTiが含まれることにより、x1+x2の上限がさらに高くなる。第1の局面による透光性セラミックの場合では、x1+x2の上限が0.90と従来のBa(Mg,Ta)O系より高く、屈折率の変化幅は2.079〜2.362と大きく、かつアッベ数の変化幅は13.2〜29.9と大きい。x1+x2が0.015未満では、結晶を立方晶系に変化させることができず、直線透過率が20%未満となり、望ましくない。また、x1+x2が0.90を超えても、直線透過率が20%未満となり、望ましくない。
【0035】
第2の局面では、透光性セラミックは、一般式:Ba{Tix1x2Zn(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.01≦x1+x2≦0.60、0<x1≦0.60、0≦x2≦0.30、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分としている。
【0036】
上記のようなBa{Zn(Ta,Nb)}O系では、4価元素にTi、SnまたはHfが含まれることにより、4価元素の置換量x1+x2の上限が高くなるが、特にTiがx1+x2の上限を高くする作用を有している。第2の局面による透光性セラミックの場合では、x1+x2の上限が0.60と従来のBa(Zn,Ta)O系より高く、屈折率の変化幅は2.116〜2.294と大きく、かつアッベ数の変化幅は15.3〜29.3と大きい。x1+x2が0.01未満では、結晶を立方晶系に変化させることができず、直線透過率が20%未満となり、望ましくない。また、x1+x2が0.60を超えても、直線透過率が20%未満となり、望ましくない。
【0037】
第3の局面では、透光性セラミックは、一般式:Ba{Tix1x2Mg(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.04≦x1+x2≦0.80、0<x1≦0.80、0≦x2≦0.40、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分としている。
【0038】
第3の局面は、Ba{Mg(Ta,Nb)}O系であって、4価元素にTiが含まれることにより、x1+x2の上限が高くなる。x1+x2の上限は0.80であり、屈折率の変化幅は2.080〜2.307であり、かつアッベ数の変化幅は18.2〜29.8である。x1+x2が0.04未満では、結晶を立方晶系に変化させることができず、直線透過率が20%未満となり、望ましくない。また、x1+x2が0.80を超えても、直線透過率が20%未満となり、望ましくない。
【0039】
以上のように、特に第1および第2の局面による透光性セラミックは、従来の透光性セラミックと比較して、屈折率およびアッベ数を広範囲で変化させることが可能であり、光学装置の設計の自由度が格段に高まる。
【0040】
Tiの存在が4価元素の置換量の上限を高めることが可能になった理由は、定かではないが、以下のように考えることができる。すなわち、Zr、SnおよびHfのイオン半径に対して、Tiのイオン半径が小さいため、4価元素の置換量の上限を高めることとなったと推測される(イオン半径:Zr4+=0.072nm;Sn4+=0.069nm;Ti4+=0.061nm;Hf4+=0.071nm)。
【0041】
本発明に係る透光性セラミックには、本発明の目的を損なわない範囲において、製造上不可避的に混入し得る不純物が含まれていてもよい。たとえば原料として用いる酸化物もしくは炭酸塩に含まれる不純物や作製工程中で混入する不純物として、SiO,Fe,B、CaO、Y、ZrO、Al、SrO、WO、BiおよびSb、ならびにLa等の希土類酸化物などが挙げられる。
【0042】
次に、本発明に係る透光性セラミックを製造する方法について説明する。
【0043】
透光性セラミックを製造するするため、セラミック原料粉末を所定形状に成形してなる未焼成のセラミック成形体が用意されるとともに、このセラミック原料粉末と実質的に同組成の同時焼成用組成物が用意される。次いで、同時焼成用組成物を未焼成のセラミック成形体に接触させながら、酸素濃度が90体積%以上の雰囲気中で、未焼成のセラミック成形体を焼成する工程が実施される。
【0044】
上記の製造方法において、同時焼成用組成物とは、たとえば、上記セラミック成形体と同じ組成となるように調整した原料を仮焼し、粉砕して得られた粉末である。この同時焼成用組成物により、上記セラミック成形体中の揮発成分が焼成時に揮発することを抑制することができる。したがって、焼成工程では、同時焼成用組成物の粉末に未焼成のセラミック成形体を埋め込んだ状態で実施されることが好ましい。なお、同時焼成用組成物は、粉末に限らず、成形体または焼結体であってもよい。
【0045】
同時焼成用組成物は、上記セラミック成形体のためのセラミック原料粉末と同じ組成を有することが好ましいが、実質的に同組成であればよい。同時焼成用組成物が未焼成のセラミック成形体のためのセラミック原料粉末と実質的に同組成であるとは、同一の構成元素を含んだ同等の組成系であることを意味し、全く同一の組成比率でなくてもよい。また、同時焼成用組成物は、必ずしも透光性を与え得る組成を有していなくてもよい。
【0046】
なお、焼成工程における圧力は、大気圧もしくはそれ以下で構わない。すなわち、HIP(Hot Isostatic Press)等の加圧雰囲気である必要はない。
【0047】
また、本発明に係る透光性セラミックは高い直線透過率を示すが、表面に反射防止膜(AR膜=Anti−Reflection膜)を形成すれば、さらに直線透過率を高めることができる。たとえば直線透過率が74.8%であり、かつ屈折率が2.114の場合、Fresnelの法則より、直線透過率の理論最大値は76.0%となる。このとき、理論値に対する相対透過率は98.4%となる。これは、試料内部での透過損失がほとんどないことを示している。したがって、試料表面に反射防止膜を形成すれば、得られる直線透過率をほぼ理論値とすることができる。
【0048】
また、本発明に係る透光性セラミックは、レンズ等の光学部品に用いることができ、たとえば、図1ないし図5にそれぞれ示すような両凸レンズ10、両凹レンズ11、メニスカスレンズ12、光路長調整板13、および球状レンズ14に利用することができる。
【0049】
また、このような光学部品を搭載した光学装置について、光ピックアップを例にとり、説明する。
【0050】
図6に示すように、光ピックアップ9は、コンパクトディスクやミニディスク等の記録媒体1に対して、コヒーレントな光であるレーザー光8を照射し、その反射光から記録媒体1に記録された情報を再生するものである。
【0051】
このような光ピックアップ9においては、光源としての半導体レーザー5からのレーザー光8を平行光に変換するコリメータレンズ4が設けられ、その平行光の光路上にハーフミラー3が設けられている。このハーフミラー3は、コリメータレンズ4からの入射光を通して直進させるが、記録媒体1からの反射光については、その進行方向を反射によりたとえば約90度変更するものである。
【0052】
また、光ピックアップ9には、ハーフミラー3からの入射光を記録媒体1の記録面上に集光するための対物レンズ2が設けられている。この対物レンズ2は、また、記録媒体1からの反射光を効率良くハーフミラー3に向かって送るためのものでもある。反射光が入射されたハーフミラー3では、反射により位相が変化することで、上記反射光の進行方向が変更される。
【0053】
さらに、光ピックアップ9には、変更された反射光を集光するための集光レンズ6が設けられている。そして、反射光の集光位置に、反射光からの情報を再生するための受光素子7が設けられている。
【0054】
このように構成される光ピックアップ9において、本発明に係る透光性セラミックを対物レンズ2の素材として用いた場合、本発明に係る透光性セラミックは屈折率が大きいため、光ピックアップ9の小型化や薄型化が可能である。
【0055】
次に、本発明に係る透光性セラミックを実験例に基づいて説明する。
【0056】
[実験例1]
実験例1は、本発明の前述した第1の局面に対応している。
【0057】
原料として、各々高純度のBaCO、MgCO、ZnO、Ta、TiO、SnO,ZrOおよびHfOの各粉末を準備した。そして、一般式:Ba{Tix1x2(Mg1−tZn(Ta1−uNb(Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種。wは電気的中性を保つための正の数。)で表される、表1および表2に示す各試料が得られるように、各原料粉末を秤量し、ボールミルで16時間湿式混合した。この混合物を乾燥させたのち、1300℃で3時間仮焼し、仮焼粉体を得た。仮焼後、wの値はほぼ3になっていた。
【0058】


【0059】


【0060】
なお、表1および表2中の「Mの元素種と含有量」の欄での表示について、Mの元素種が1種類の場合は、その含有量がx2の値と同じであり、元素種が2種類以上である場合は、それぞれの含有量の和がx2の値となっている。
【0061】
次に、上記仮焼粉体を水および有機バインダとともにボールミルに入れ、16時間湿式粉砕した。有機バインダとしては、エチルセルロースを用いた。
【0062】
次に、上記粉砕物を乾燥させた後、50メッシュの網(篩)を通して造粒し、得られた粉末を196MPaの圧力で押圧してプレス成形することにより、直径30mmおよび厚さ2mmの円板状の未焼成のセラミック成形体を得た。
【0063】
次に、上記未焼成のセラミック成形体を、そこに含まれるセラミック原料粉末と同組成の粉末中に埋め込んだ。この埋め込まれた成形体を焼成炉に入れ、大気雰囲気中で加熱し、脱バインダ処理を行なった。引き続き、昇温しながら大気雰囲気中に酸素を注入し、最高温度域の1625℃において、焼成雰囲気中の酸素濃度を約98体積%まで上昇させた。この焼成温度および酸素濃度を維持し、成形物を20時間焼成して焼結体を得た。
【0064】
このようして得られた焼結体を鏡面加工し、厚さ0.4mmの円板状に仕上げて透光性セラミックの試料とした。
【0065】
上記の試料のそれぞれについて、波長λが633nmにおける直線透過率および屈折率を測定した。透光性の指標である直線透過率の測定には、島津製作所製分光光度計(UV−200S)を用いた。また、屈折率の測定には、Metricon社製プリズムカプラー(MODEL2010)を用いた。
【0066】
さらに、プリズムカプラーにて、波長λが405nm、532nmおよび830nmでの屈折率も測定した。そして、これら4波長(405nm、532nm、633nmおよび830nm)での屈折率の値を用いて、波長と屈折率との関係式:式1より、定数a、bおよびcを算出し、波長と屈折率との関係を求めた。
【0067】

(式1において、nは屈折率、λは波長、a、bおよびcは定数。)
式1から、アッベ数(ν)算出に必要な3波長(F線:486.13nm、d線:587.56nm、C線:656.27nm)での屈折率を求め、アッベ数の定義式:式2からアッベ数を算出した。
【0068】

(式2において、n、nおよびnは、それぞれ、d線、F線およびC線における屈折率。)
以上のように求めた直線透過率、屈折率およびアッベ数を、表3および表4に示す。
【0069】


【0070】


【0071】
表1〜表4において、試料番号に*を付したものは、本発明の範囲外の試料である。
【0072】
本発明の範囲内の試料2〜7、9〜45、47〜58、60〜62および65〜67によれば、表1および表2に示すように、0.015≦x1+x2≦0.90、0<x1≦0.90、0≦x2≦0.60、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、0<t<1、および0≦u≦1の各条件を満足しているので、表3および表4に示すように、直線透過率が20%以上であり、屈折率が2.01以上と大きく、しかも屈折率の変化幅が2.079〜2.362と大きく、かつアッベ数の変化幅が13.2〜29.9と大きい。
【0073】
また、試料2〜7の間、試料30〜33の間、試料34〜37の間、試料38〜41の間、試料42〜45の間、および試料47〜51の間でそれぞれ比較すればわかるように、Tiの含有量の増加に伴って、屈折率がより大きくなり、また、アッベ数がより小さくなっている。
【0074】
また、試料9〜29および54〜58の間で比較すれば、Tiと、Sn、ZrおよびHfの少なくとも1種とを適当な比率で混合して含有させることによって、屈折率およびアッベ数を自在に調節できることがわかる。
【0075】
他方、本発明の範囲外の試料1および46では、x1+x2が0.015未満であるので、直線透過率が20%未満となっている。これは、結晶を立方晶系に変化させることができなかったからである。
【0076】
また、本発明の範囲外の試料8では、x1が0.90を超え、かつx1+x2が0.90を超えるので、直線透過率が20%未満となっている。
【0077】
また、本発明の範囲外の試料59および63では、z/yが1.60〜2.40の範囲を外れ、本発明の範囲外の試料64および68では、vが1.00〜1.05の範囲を外れている。これらの試料では、前述した焼成工程において焼結しなかったり、あるいは、たとえ焼結しても、直線透過率が20%未満となったりしている。
【0078】
[実験例2]
実験例2は、本発明の前述した第2の局面に対応している。
【0079】
原料として、各々高純度のBaCO、ZnO、Ta、TiO、SnO、ZrOおよびHfOの各粉末を準備した。そして、一般式:Ba{Tix1x2Zn(Ta1−uNb(Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種。wは電気的中性を保つための正の数。)で表される、表5に示す各試料が得られるように、各原料粉末を秤量し、ボールミルで16時間湿式混合した。この混合物を乾燥させたのち、1300℃で3時間仮焼し、仮焼粉体を得た。仮焼後、wの値はほぼ3になっていた。
【0080】

【0081】
なお、表5中の「Mの元素種と含有量」の欄での表示については、表1および表2の場合と同様である。
【0082】
その後、上記仮焼粉体に対して、実験例1の場合と同様の操作を実施し、直径30mmおよび厚さ2mmの円板状の未焼成のセラミック成形体を得た。
【0083】
次に、上記未焼成のセラミック成形体を、そこに含まれるセラミック原料粉末と同組成の粉末中に埋め込んだ。この埋め込まれた成形体を焼成炉に入れ、大気雰囲気中で加熱し、脱バインダ処理を行なった。引き続き、昇温しながら大気雰囲気中に酸素を注入し、最高温度域の1600℃において、焼成雰囲気中の酸素濃度を約98体積%まで上昇させた。この焼成温度および酸素濃度を維持し、成形物を20時間焼成して焼結体を得た。
【0084】
このようして得られた焼結体を鏡面加工し、厚さ0.4mmの円板状に仕上げて透光性セラミックの試料とした。
【0085】
上記の試料のそれぞれについて、実験例1の場合と同じ評価方法にて、直線透過率、屈折率およびアッベ数を評価した。その結果を表6に示す。
【0086】


【0087】
表5および表6において、試料番号に*を付したものは、本発明の範囲外の試料である。
【0088】
本発明の範囲内の試料102〜111および113〜131によれば、表5に示すように、0.01≦x1+x2≦0.60、0<x1≦0.60、0≦x2≦0.30、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足しているので、表6に示すように、直線透過率が20%以上であり、屈折率が2.01以上と大きく、しかも屈折率の変化幅が2.116〜2.294と大きく、かつアッベ数の変化幅が15.3〜29.3と大きい。
【0089】
また、試料102〜111の間で比較すればわかるように、Tiの含有量の増加に伴って、屈折率がより大きくなり、また、アッベ数がより小さくなっている。
【0090】
また、試料113〜129の間で比較すれば、Tiと、Sn、ZrおよびHfの少なくとも1種とを適当な比率で混合して含有させることによって、屈折率およびアッベ数を自在に調節できることがわかる。
【0091】
他方、本発明の範囲外の試料101では、x1+x2が0.01未満であるので、直線透過率が20%未満となっている。これは、結晶を立方晶系に変化させることができなかったからである。
【0092】
また、本発明の範囲外の試料112では、x1が0.60を超え、かつx1+x2が0.60を超えるので、直線透過率が20%未満となっている。
【0093】
[実験例3]
実験例3は、本発明の前述した第3の局面に対応している。
【0094】
原料として、各々高純度のBaCO、MgCO、Ta、TiO、SnO、ZrOおよびHfOの各粉末を準備した。そして、一般式:Ba{Tix1x2Mg(Ta1−uNb(Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種。wは電気的中性を保つための正の数。)で表される、表7に示す各試料が得られるように、各原料粉末を秤量し、ボールミルで16時間湿式混合した。この混合物を乾燥させたのち、1300℃で3時間仮焼し、仮焼粉体を得た。仮焼後、wの値はほぼ3になっていた。
【0095】


【0096】
なお、表7中の「Mの元素種と含有量」の欄での表示については、表1および表2の場合と同様である。
【0097】
その後、上記仮焼粉体に対して、実験例1の場合と同様の操作を実施し、直径30mmおよび厚さ2mmの円板状の未焼成のセラミック成形体を得た。
【0098】
次に、上記未焼成のセラミック成形体を、そこに含まれるセラミック原料粉末と同組成の粉末中に埋め込んだ。この埋め込まれた成形体を焼成炉に入れ、大気雰囲気中で加熱し、脱バインダ処理を行なった。引き続き、昇温しながら大気雰囲気中に酸素を注入し、最高温度域の1625℃において、焼成雰囲気中の酸素濃度を約98体積%まで上昇させた。この焼成温度および酸素濃度を維持し、成形物を20時間焼成して焼結体を得た。
【0099】
このようして得られた焼結体を鏡面加工し、厚さ0.4mmの円板状に仕上げて透光性セラミックの試料とした。
【0100】
上記の試料のそれぞれについて、実験例1の場合と同じ評価方法にて、直線透過率、屈折率およびアッベ数を評価した。その結果を表8に示す。
【0101】


【0102】
表7および表8において、試料番号に*を付したものは、本発明の範囲外の試料である。
【0103】
本発明の範囲内の試料202〜211、213〜221、223〜227、230〜233、235および236によれば、表7に示すように、0.04≦x1+x2≦0.80、0<x1≦0.80、0≦x2≦0.40、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足しているので、表8に示すように、直線透過率が20%以上であり、屈折率が2.01以上と大きく、屈折率の変化幅が2.080〜2.307であり、かつアッベ数の変化幅が18.2〜29.8である。
【0104】
また、試料202〜211の間で比較すればわかるように、Tiの含有量の増加に伴って、屈折率がより大きくなり、また、アッベ数がより小さくなっている。
【0105】
また、試料213〜221の間で比較すれば、Tiと、Sn、ZrおよびHfの少なくとも1種とを適当な比率で混合して含有させることによって、屈折率およびアッベ数を自在に調節できることがわかる。
【0106】
他方、本発明の範囲外の試料201では、x1+x2が0.04未満であるので、直線透過率が20%未満となっている。これは、結晶を立方晶系に変化させることができなかったからである。
【0107】
また、本発明の範囲外の試料212では、x1が0.80を超え、かつx1+x2が0.80を超えるので、直線透過率が20%未満となっている。
【0108】
また、本発明の範囲外の試料222および228では、z/yが1.60〜2.40の範囲を外れ、本発明の範囲外の試料229および234では、vが1.00〜1.05の範囲を外れている。これらの試料では、前述した焼成工程において焼結しなかったり、あるいは、たとえ焼結しても、直線透過率が20%未満となったりしている。
【0109】
[実験例4]
表1に示した試料3、表5に示した試料115、および表7に示した試料205に係る各透光性セラミックについて、波長633nmにおけるTEモードおよびTMモードでの屈折率を測定した。その結果を表9に示す。
【0110】

【0111】
表9に示すように、いずれの試料についても、TEモードおよびTMモードでの各屈折率が互いに同じ値であることから、複屈折が生じていないことがわかる。
【0112】
[実験例5]
表1に示した試料3、表5に示した試料115、および表7に示した試料205の各組成について、鋳込み成形を適用することによって、2インチ角の未焼成のセラミック成形体を作製し、それぞれ、1625℃、1600℃および1625℃の各温度で焼成して焼結体を得た。これら鋳込み成形を経て作製された試料3、115および205は、成形方法をプレス成形から鋳込み成形に変更した以外は、実験例1、2および3において得た試料3、115および205の場合と同じ方法で作製したものである。
【0113】
上記の鋳込み成形を経て作製された試料3、115および205のそれぞれについて、実験例1の場合と同じ評価方法にて、直線透過率、屈折率およびアッベ数を評価した。その結果を表10に示す。表10には、プレス成形を経て作製された、実験例1、2および3においてそれぞれ得た試料3、115および205についての直線透過率、屈折率およびアッベ数も併せて示されている。
【0114】

【0115】
表10からわかるように、直線透過率、屈折率およびアッベ数の各々について、プレス成形の場合と鋳込み成形の場合とは、互いに同等または実質的に同等の値を示している。このことから、本発明に係る透光性セラミックの光学特性は、成形法に関わらず、優れた特性を示すことがわかる。
【0116】
[実験例6]
表1に示した試料3、表5に示した試料115、および表7に示した試料205の各組成について、焼成温度を、それぞれ、1650℃、1650℃および1550℃に変えて焼結体を作製した。これらの試料3、115および205は、焼成温度を変えた以外は、実験例1、2および3において得た試料3、115および205の場合と同じ方法で作製したものである。
【0117】
上記の焼成温度を変えた試料3、115および205のそれぞれについて、実験例1の場合と同じ評価方法にて、直線透過率、屈折率およびアッベ数を測定した。測定結果を表11に示す。表11には、1625℃、1600℃および1625℃の各焼成温度を適用して焼成した、前述の実験例1、2および3においてそれぞれ得た試料3、115および205についての直線透過率、屈折率およびアッベ数も併せて示されている。
【0118】

【0119】
表11からわかるように、直線透過率、屈折率およびアッベ数の各々について、焼成温度を変えても、互いに同等または実質的に同等の値を示している。このことから、本発明に係る透光性セラミックは、焼成温度を変えて作製されてもよいことがわかる。
【0120】
以上、本発明を、実験例に関連して具体的に説明したが、本発明の実施の態様は、上記実験例のような態様に限定されるものではない。たとえば、原料の形態は酸化物もしくは炭酸塩に限定されるものではなく、焼結体とした段階で所望の特性が得られる原料であれば、どのような形態でもよい。また、焼成雰囲気について、上記実験例の約98体積%という酸素濃度の値は、使用した実験設備の条件下において最も好ましいものであった。したがって、酸素濃度は約98体積%に限定されるものではなく、90体積%以上の酸素濃度が確保できれば、所望の特性を備えた焼結体が得られることがわかっている。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係る透光性セラミックは、直線透過率が広い波長帯域にわたり高く、屈折率が高く、屈折率およびアッベ数の調整範囲が広く、複屈折がないため、これを用いて構成されたレンズは、小型化および薄型化が要求される、光ピックアップまたはデジタルカメラ等に有利に適用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:Ba{Tix1x2(Mg1−tZn(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.015≦x1+x2≦0.90、0<x1≦0.90、0≦x2≦0.60、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、0<t<1、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分とする、透光性セラミック。
【請求項2】
一般式:Ba{Tix1x2Zn(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.01≦x1+x2≦0.60、0<x1≦0.60、0≦x2≦0.30、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分とする、透光性セラミック
【請求項3】
一般式:Ba{Tix1x2Mg(Ta1−uNb(ただし、Mは、Sn、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種であり、x1+x2+y+z=1であって、0.04≦x1+x2≦0.80、0<x1≦0.80、0≦x2≦0.40、1.60≦z/y≦2.40、1.00≦v≦1.05、および0≦u≦1の各条件を満足し、wは電気的中性を保つための正の数である。)で表される組成を主成分とする、透光性セラミック。
【請求項4】
波長が633nmである可視光の、試料厚み0.4mmにおける直線透過率が20%以上である、請求項1ないし3のいずれかに記載の透光性セラミック。
【請求項5】
波長が633nmである可視光の屈折率が2.01以上である、請求項4に記載の透光性セラミック。
【請求項6】
多結晶体である、請求項1ないし3のいずれかに記載の透光性セラミック。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれかに記載の透光性セラミックを製造する方法であって、
セラミック原料粉末を所定形状に成形してなる未焼成のセラミック成形体を用意する工程と、
前記セラミック原料粉末と実質的に同組成の同時焼成用組成物を用意する工程と、
前記同時焼成用組成物を前記未焼成のセラミック成形体に接触させながら、酸素濃度が90体積%以上の雰囲気中で、前記未焼成のセラミック成形体を焼成する工程と
を備える、透光性セラミックの製造方法。
【請求項8】
前記同時焼成用組成物は粉末状態であり、前記焼成工程は、前記同時焼成用組成物の粉末に前記未焼成のセラミック成形体を埋め込んだ状態で実施される、請求項7に記載の透光性セラミックの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の製造方法によって得られた、透光性セラミック。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれかに記載の透光性セラミックからなる光学部品。
【請求項11】
請求項10に記載の光学部品が搭載されている光学装置。

【国際公開番号】WO2005/097708
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515318(P2006−515318)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004050
【国際出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】