説明

透明−円偏光フォトクロミックデバイスおよびその作製方法

本発明は、フォトクロミック直線偏光素子と、透過した放射線を円または楕円偏光する複屈折層とを含む光学素子を提供する。フォトクロミック直線偏光素子は、基材と、(1)活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有し、かつ化学線に応答して第1の吸収状態から第2の吸収状態に切り換わるように、また熱エネルギーに応答して元の第1の吸収状態に戻るように、またこれら2つの状態の少なくとも一方で透過した放射線を直線偏光するように動作可能な、位置合わせされた熱可逆性フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティング;または(2)基材に接合された、少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートのいずれかと、ポリマーシートに少なくとも部分的に位置合わせされ活性化状態で2.3超の平均吸収比を有する熱可逆性フォトクロミック−2色性化合物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2006年10月31日に出願された米国特許出願第11/590,055号の一部継続出願であり、この米国特許出願第11/590,055号は、米国特許7,256,921号の分割出願であり、2003年7月1日に出願された米国仮特許出願第60/484,100号の利益を同様に主張し、これらの各々は本明細書において特に参照として援用される。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
該当なし。
【0003】
(配列表の参照)
該当なし。
【背景技術】
【0004】
本明細書に開示される様々な実施形態は、一般に、光学素子、セキュリティ液晶セル、およびその作製方法に関する。
【0005】
モバイルデバイス、ATM、および屋外で使用され得るその他の機械の表示画面には、太陽光可読性、UV劣化、耐久性、使用温度範囲、および耐用年数に関する問題があることが多い。太陽光可読性は、いくつかの方法で改善することができる。ある解決方法は、より多くの冷カソード蛍光ランプ(CCFL)バックライト管を付加することによって、バックライト強度を能動的に増大させることである。残念ながらこの手法は、バッテリの消耗、より大きなデバイスサイズ、熱の発生、および重量の問題のため、ほとんどのモバイルデバイスにおいて欠点を有する。第2の手法は、LCDの光学積層体に輝度増強フィルムを付着することによって、バックライト強度を受動的に増大させることである。能動的手法の欠点のほとんどが回避されるが、この解決法は、輝度を約2倍増大させるだけであり、これは太陽光可読性の問題を解決するのに不十分である。第3の解決法は、反射防止コーティングおよびフィルムおよび円偏光子の使用などによる、反射光の最小化である。これらの解決法のそれぞれは、所望の効果が最適化されるように、他のものと組み合わせてもよい。
【0006】
円偏光子は、従来の直線偏光素子および4分の1波長リターダ(retarder)のアセンブリである。リターダの軸は、直線偏光子の軸に対して45度を向いている。入射光は、アセンブリを通過するときに円偏光に変換される。円偏光子は、伝統的に、その反射防止特性により使用されてきた。そのような応用では、光がリターダを通して鏡面から後方に反射する場合、偏光の平面が当初の向きに対して90度回転し、したがって直線偏光子は、戻ってくる反射光を遮断する。
【0007】
サングラス用直線偏光レンズおよび直線偏光フィルタなどの従来の直線偏光素子は、典型的には、2色性染料などの2色性材料を含有する延伸ポリマーシートから形成される。従来の直線偏光素子は、単一の直線偏光状態を有する静的素子である。したがって従来の直線偏光素子が、適切な波長のランダムに偏光された放射線または反射した放射線に曝される場合、素子を透過したいくらかのパーセンテージの放射線は、直線偏光されることになる。本明細書で使用される「直線偏光」という用語は、光の電気ベクトルの振動を1つの方向または平面内に限定することを意味する。
【0008】
さらに、従来の直線偏光素子は、典型的には着色剤(即ち、2色性材料)を使用して色付けされ、化学線に応答して変化しない吸収スペクトルを有する。本明細書で使用される「化学線」は、紫外線および応答を引き起こし得る可視光線などであるがこれらに限定されない電磁放射線を意味する。従来の直線偏光素子の色は、素子の形成に使用された着色剤に左右されることになり、最も一般的には中性色(例えば、褐色または灰色)である。従来の直線偏光素子は、その色合いのため反射光グレアを低減させるのに有用であるが、ある低光量条件下での使用には十分適していない。さらに、従来の直線偏光素子は、単一の色付けされた直線偏光状態のみ有するので、情報を保存または表示するその能力に限りがある。
【0009】
上記にて論じたように、従来の直線偏光素子は、典型的には、2色性材料を含有する延伸ポリマーフィルムのシートを使用して形成される。本明細書で使用される「2色性」という用語は、透過した放射線の2つの直交面偏光成分の一方を、他方よりも強力に吸収することが可能であることを意味する。このように、2色性材料は、透過した放射線の2つの直交平面偏光成分の一方を優先的に吸収することが可能であるが、2色性材料の分子が適切に位置決めされておらずまたは配置されていない場合、透過した放射線の正味の直線偏光は実現されない。即ち、2色性材料の分子のランダムな位置決めにより、個々の分子による選択的吸収は、正味のまたは全体的な直線偏光作用が発揮されないように互いに打ち消されることになる。したがって、正味の直線偏光を実現するために、別の材料とのアライメントを行うことによって2色性材料の分子を適切に位置決めし配置することが一般に必要である。
【0010】
2色性染料の分子を位置合わせする(align)1つの一般的な方法では、ポリビニルアルコール(「PVA」)のシートまたは層を加熱してPVAを軟化させ、次いでこのシートを延伸してPVAポリマー鎖を配向させる。次いで2色性染料を延伸シートに含浸させ、染料分子はポリマー鎖の配向をとる。即ち染料分子は、この染料分子の長軸が配向済みポリマー鎖にほぼ平行になるように、位置合わせされる。あるいは、2色性染料を最初にPVAシートに含浸させることができ、次いでシートを、上述のように加熱し延伸して、PVAポリマー鎖および関連する染料を配向することができる。これにより、2色性染料の分子は、PVAシートの配向ポリマー鎖内に適切に位置決めされまたは配置され、かつ正味の直線偏光が実現される。即ち、PVAシートは、透過した放射線が直線偏光されるように作製することができ、言い換えれば、直線偏光フィルタを形成することができる。
【0011】
上記にて論じた2色性素子とは対照的に、従来の熱可逆性フォトクロミック材料を使用して形成されるフォトクロミックレンズなどの従来のフォトクロミック素子は、化学線に応答して、第1の状態、例えば「透明状態」から、第2の状態、例えば「着色状態」に変換し、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻ることが、一般に可能である。本明細書で使用される「フォトクロミック」という用語は、少なくとも化学線に応答して変化する、少なくとも可視光線に関して、吸収スペクトルを有することを意味する。したがって従来のフォトクロミック素子は、一般に、低光量および高輝度の両方の状態で使用するのに十分適している。しかし、直線偏光フィルタを含まない従来のフォトクロミック素子は、一般に、放射線を直線偏光するようになされていない。即ち、従来のフォトクロミック素子の吸収比は、どちらの状態でも、一般に2未満である。本明細書で使用される「吸収比」という用語は、第1の平面で直線偏光された放射線の吸光度と、この第1の平面に直交する平面で直線偏光された同じ波長の放射線の吸光度との比を指し、この第1の平面は、最高吸光度を有する平面とされる。したがって、従来のフォトクロミック素子は、従来の直線偏光素子と同じ程度まで反射光グレアを低減させることができない。さらに、従来のフォトクロミック素子は、情報を保存または表示する能力に限りがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、直線偏光およびフォトクロミック特性の両方を示すよう適合された素子およびデバイスを提供することが有利と考えられる。さらに、例えば表示画面の太陽光可読性を改善する試みで、円または楕円偏光およびフォトクロミック特性を示すよう適合された、素子およびデバイスを提供することが有利と考えられる。そのような素子およびデバイスは、包装材料を通した可視性を改善するのに、および包装材料内に含まれる光感受性物品を保護するのに、使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
(a)(i)基材;および
(ii)基材に接合されたコーティングであって、第1の吸収状態および第2の吸収状態を有し、化学線に応答して第1の吸収状態から第2の吸収状態に切り換わり、化学線および/または熱エネルギーに応答して元の第1の吸収状態に戻り、第1の吸収状態および/または第2の吸収状態で透過した放射線を直線偏光するよう動作可能なコーティング
を含み、コーティング(ii)が、活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされた熱可逆性フォトクロミック−2色性材料を含む、フォトクロミック直線偏光素子と、
(b)フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続された複屈折層であって、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能な複屈折層と
を含む、光学素子を提供する。コーティングは、基材の全面を必ずしも覆う必要はなく、即ち、部分コーティングであってもよいことに留意されたい。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、
(a)(i)少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシート;および
(ii)ポリマーシートに対して少なくとも部分的に位置合わせされかつ活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する可逆性フォトクロミック−2色性材料
を含む、フォトクロミック直線偏光素子と、
(b)フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続され、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能な複屈折層と
を含む、複合光学素子を提供する。
【0015】
本発明の様々な実施形態は、図面と併せて読むことによってより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本明細書に開示された様々な実施形態によるコーティングで得られた、2つの平均差吸収スペクトルを示す図である。
【図2】図2は、本明細書に開示された、1つの非限定的な実施形態によるオーバーモールドアセンブリの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書および添付される特許請求の範囲で使用される、冠詞「a」、「an」、および「the」には、1つの指示対象に明確にかつはっきりと限定しない限り、複数の指示対象が含まれる。
【0018】
さらに、本明細書の目的で、他に指示しない限り、成分の量、反応条件、およびその他の性質、または本明細書で使用されるパラメータを表す全ての数値は、「約」という用語によって全ての場合に修飾されることを理解されたい。したがって、他に指示しない限り、以下の明細書および添付される特許請求の範囲に記述される数値パラメータは、近似値であることを理解すべきである。最低限でも、また特許請求の範囲に対する均等物の原理の適用を制限するものとしてではなく、数値パラメータは、報告された有効数字の値および通常の丸め技法の適用に照らして読むべきである。
【0019】
さらに、本発明の広い範囲について記述する数値範囲およびパラメータは、上記にて論じた近似値であり、実施例で記述される数値は、できる限り正確に報告される。しかし、そのような数値は本来、測定装置および/または測定技法により、ある誤差を含有することを理解すべきである。
【0020】
次に、本発明の様々な実施形態による光学素子およびデバイスについて、記述する。本明細書に開示される様々な実施形態は、基材と、この基材に接合された第1の状態および第2の状態を有するコーティングとを含む、光学素子を提供し、このコーティングは、化学(および/またはその他の)放射線に応答して第1の状態から第2に状態に切り換わるように、また、熱エネルギーに応じて元の第1の状態に戻るように、また、第1の状態および第2の状態の少なくとも一方で、透過した放射線を直線偏光するように、動作可能なものである。本明細書で使用される「熱エネルギー」という用語は、熱の任意の形を意味する。
【0021】
「状態」という用語を修飾するのに本明細書で使用される、「第1の」および「第2の」という用語は、任意の特定の順序または時系列を指すものではなく、代わりに、2つの異なる条件または性質を指す。例えば、本明細書では限定的ではないが、コーティングの第1の状態および第2の状態は、可視光線および/または紫外線の吸収または直線偏光などであるがこれらに限定されない少なくとも1つの光学特性が、異なっていてもよい。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、コーティングは、第1および第2の状態のそれぞれにおいて異なる吸収スペクトルを有するように適合させることができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、コーティングは、第1の状態で透明にすることができ、第2の状態で着色することができる。あるいは、コーティングは、第1の状態で第1の色を、第2の状態で第2の色を有するように適合させることができる。さらに、以下により詳細に論じるように、コーティングは、第1の状態で直線偏光しないように(または「非偏光」)、第2の状態では直線偏光するように適合させることができる。
【0022】
本明細書で使用される「光学」という用語は、光および/または視覚に関係しまたは関連付けられることを意味する。例えば、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、光学素子またはデバイスは、眼科用素子およびデバイス、表示素子およびデバイス、窓、鏡、シュリンクラップおよび透明で除去可能な保護上層を含む透明包装材料などの包装材料、以下の本明細書に記述されるポリマー基材のいずれかのようなポリマー材料から調製された包装材料、パッシブおよびアクティブ液晶セル素子およびデバイスから選択することができる。本明細書で使用される「眼科用」という用語は、眼および視覚に関係しまたは関連付けられることを意味する。眼科用素子の例には、単焦点レンズ、またはセグメント化もしくは非セグメント化多焦点レンズ(2焦点レンズ、3焦点レンズ、およびプログレッシブレンズなどであるがこれらに限定されない。)であってもよい多焦点レンズを含む、矯正および非矯正レンズ、並びに、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、および保護レンズまたはバイザーを含むがこれらに限定するものではない、視力を矯正、保護、または高めるのに(審美的にまたはその他の手法で)使用されるその他の素子が含まれる。本明細書で使用される「表示」という用語は、単語、数値、記号、デザイン、または図による、情報の目に見える表現または機械可読性表現を意味する。表示素子およびデバイスの例には、スクリーン、モニタ、およびセキュリティマークなどのセキュリティ要素が含まれる。本明細書で使用される「窓」という用語は、内部を放射線が透過できるよう適合されたアパーチャを意味する。窓の例には、自動車および航空機のトランスペアレンシー、フィルタ、シャッタ、および光スイッチが含まれる。本明細書で使用される「鏡」という用語は、入射光の大部分を鏡のように反射する面を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「光感受性」製品という用語には、当業者に公知の、光に曝されると損傷、早期老化、能動または機能部品の不活性化などの悪影響を示す、食材、化粧品、医薬品、光学デバイス、電子部品などが含まれる。
【0024】
本明細書で使用される「液晶セル」という用語は、秩序化することが可能な液晶材料を含有する構造を指す。能動液晶セルは、電場または磁場などの外力を加えることによって、液晶材料を秩序状態と無秩序状態との間でまたは2つの秩序状態の間切り換えることが可能な、セルである。受動液晶セルは、液晶材料が秩序状態を維持するセルである。能動液晶セル素子またはデバイスの一例は、液晶ディスプレイである。
【0025】
本明細書で使用される「コーティング」という用語は、均一な厚さを有しても有していなくてもよい流動性組成物から得られた裏付きフィルムを意味し、特にポリマーシートは除外する。本明細書で使用される「シート」という用語は、ほぼ均一な厚さを有しかつ自立可能な予備成型フィルムを意味する。さらに、本明細書で使用される「〜に接合された」という用語は、物体に直接接触しているか、または1つもしくは複数のその他の構造もしくは材料を通して物体に間接的に接触していることであって、その少なくとも1つが物体に直接接触していることを意味する。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、第1の状態および第2の状態を有するコーティングは、基材の少なくとも一部に直接接触することができ、または1つもしくは複数のその他の構造もしくは材料を通して基材の少なくとも一部に間接的に接触することができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、コーティングは、1つまたは複数のその他の少なくとも部分的なコーティング、ポリマーシート、またはこれらの組合せに接触することができ、その少なくとも1つは、基材の少なくとも一部に直接接触している。
【0026】
一般に言えば、本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用するのに適した基材には、有機材料、無機材料、またはこれらの組合せ(例えば、複合材料)から形成された基材が含まれるが、これらに限定するものではない。本明細書に開示される様々な実施形態により使用できる基材の例を、以下に、より詳細に記述する。
【0027】
本明細書に開示される基材を形成するのに使用してもよい有機材料の特定の例には、ポリマー材料が含まれ、例えば、その米国特許の開示が参照により本明細書に特に組み込まれている、米国特許第5,962,617号および米国特許第5,658,501号の第15欄、第28行から第16欄、第17行に開示された、モノマーおよびモノマーの混合物から調製されたホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。例えば、そのようなポリマー材料は、熱可塑性または熱硬化性ポリマー材料にすることができ、透明または光学的に透明にすることができ、必要とされる任意の屈折率を有することができる。そのような開示されたモノマーおよびポリマーの例には、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)などのアリルジグリコールカーボネートであって、PPG Industries,Inc.からCR−39という商標で販売されているもの、ポリ尿素−ポリウレタン(ポリ尿素−ウレタン)ポリマーであって、例えば、ポリウレタンプレポリマーおよびジアミン硬化剤との反応によって調製されたものであり、そのような1種のポリマーに関する組成物は、PPG Industries,Inc.からTRIVEXという商標で販売されており、ポリオール(メタ)アクリロイル末端カーボネートモノマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;エトキシル化フェノールメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ポリ(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリチオウレタン;ビスフェノールAおよびホスゲン由来のカーボネート結合樹脂などの熱可塑性ポリカーボネートであり、そのような1種の材料は、LEXANという商標で販売されており、MYLARという商標で販売されている材料などのポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリビニルブチラール;PLEXIGLASという商標で販売されている材料などのポリ(メチルメタクリレート)、多官能性イソシアネートとポリチオールまたはポリエピスルフィドモノマーとを反応させることによって調製されたポリマーであって、ポリチオール、ポリイソシアネート、ポリイソチオシアネート、および任意選択でエチレン系不飽和モノマーまたはハロゲン化芳香族含有ビニルモノマーとホモポリマー化またはコおよび/またはターポリマー化されたものが含まれる。そのようなモノマーのコポリマーと、記述されるポリマーおよびコポリマーとその他のポリマーとのブレンドであって、例えばブロックコポリマーまたは相互貫入網目構造生成物を形成するためのものも考えられる。
【0028】
本明細書では限定的ではないが、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、基材は、眼科用基材にすることができる。本明細書で使用される「眼科用基材」という用語は、レンズ、部分的に形成されたレンズ、およびレンズブランクを意味する。本明細書に開示される様々な実施形態による眼科用基材の形成での使用に適した有機材料の例には、眼科用基材に有用な当技術分野で認められるポリマー、例えば、眼科用レンズなど、光学的用例のための光学的に透明な鋳造物を調製するのに使用される有機光学樹脂が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0029】
本明細書に開示される様々な実施形態による基材の形成での使用に適した有機材料のその他の例には、不透明なまたは半透明のポリマー材料、天然のおよび合成の織物、紙や木材などのセルロース系材料を含むがこれらに限定するものではない、合成および天然有機材料の両方が含まれる。
【0030】
本明細書に開示される様々な実施形態による基材の形成での使用に適した無機材料の例には、ガラス、鉱物、セラミック、および金属が含まれる。例えば、一実施形態では、基材はガラスを含むことができる。その他の実施形態では、基材は反射面を有することができ、例えば、研摩済みセラミック基材、金属基材、または鉱物基材である。その他の実施形態では、反射膜または層を、無機または有機基材の表面に堆積することができまたはその他の方法で付着させることができ、それによって、基材を反射性にしまたはその基材の反射率を高めることができる。
【0031】
さらに、本明細書に開示されるある実施形態によれば、基材は、その外面に、「ハードコート」などの耐摩耗性コーティングなどであるがこれらに限定されない保護コーティングを有していてもよい。例えば、市販の熱可塑性ポリカーボネート眼科用レンズ基材は、その表面が容易に傷付き、磨り減り、または擦られる傾向にあるので、その外面に耐摩耗性コーティングが既に付着されている状態でしばしば販売されている。そのようなレンズ基材の例は、GENTEX(商標)ポリカーボネートレンズ(Gentex Opticsから入手可能)である。したがって、本明細書で使用される「基材」という用語は、その(1つまたは複数の)面上に、耐摩耗性コーティングなどであるがこれらに限定されない保護コーティングを有する基材を含む。
【0032】
さらになお、本明細書に開示される様々な実施形態による基材は、色が付いていないか、色付けされるか、直線偏光するか、円偏光するか、楕円偏光するか、フォトクロミック性であるか、または色付けされたフォトクロミック基材にすることができる。基材に関して本明細書で使用される「色が付いていない(untinted)」という用語は、着色剤の添加(従来の染料などであるが、これらに限定されない。)を本質的に含まず、化学線に応答して著しく変化しない、可視光線に関して吸収スペクトルを有する基材を意味する。さらに、基材に関して「色付けされた(tinted)」という用語は、着色剤の添加(従来の染料などであるが、これらに限定されない。)と、化学線に応答して著しく変化しない、可視光線に関する吸収スペクトルを有する基材を意味する。
【0033】
本明細書で使用される、基材に関して「直線偏光する」という用語は、放射線を直線偏光するよう適合された基材を指す。本明細書で使用される、基材に関して「円偏光する」という用語は、放射線を円偏光するよう適合された基材を指す。本明細書で使用される、基材に関して「楕円偏光する」という用語は、放射線を楕円偏光するよう適合された基材を指す。本明細書で使用される、基材に関して「フォトクロミックである」という用語は、少なくとも化学線に応答して変化する、可視光線での吸収スペクトルを有する基材を指す。さらに、基材に関して本明細書で使用される「色付けされたフォトクロミックの」という用語は、着色剤の添加並びにフォトクロミック材料を含有し、少なくとも化学線に応答して変化する、可視光線に関して吸収スペクトルを有する基材を意味する。したがって、例えば、および限定するものではないが、色付けされたフォトクロミック基材は、化学線に曝された場合、着色剤の第1の色特性と、着色剤およびフォトクロミック材料の組合せの第2の色特性を有することができる。
【0034】
先に論じたように、従来の直線偏光素子は、典型的には延伸ポリマーシートおよび2色性染料を使用して形成される。しかし、これら従来の直線偏光素子は、一般に、単一の色付けされた直線偏光状態を有する。先に論じたように、「直線偏光する」という用語は、光波の電気ベクトルのばらつきを一方向に制限することを意味する。さらに、先に論じたように、従来のフォトクロミック素子は、従来のフォトクロミック化合物から形成され、少なくとも2つの状態、例えば透明状態および着色状態を有する。先に論じたように、「フォトクロミック」という用語は、少なくとも化学線に応答して変化する、少なくとも可視光線に関して吸収スペクトルを有することを意味する。しかし、従来のフォトクロミック素子は、一般に、放射線を直線偏光するよう適合されていない。
【0035】
上記にて論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子は、基材に接合されたコーティング(ii)を含み、このコーティングは、第1の吸収状態および第2の吸収状態を有し、典型的には化学線に応答して第1の状態から第2の状態に切り換わり、化学線および/または熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るものであり、これは、第1の状態および第2の状態の少なくとも一方で直線偏光することを実証している。即ち、本明細書に開示された様々な実施形態による光学素子は、フォトクロミック−2色性素子にすることができる。本明細書で使用される「フォトクロミック−2色性」という用語は、ある条件下でフォトクロミックおよび2色性(即ち、直線偏光)特性の両方を示すことを意味し、この特性は、計測によって少なくとも検出可能である。さらに、以下により詳細に論じるように、本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子は、少なくとも部分的に位置合わせされた、少なくとも1種のフォトクロミック−2色性化合物を使用して形成することができる。
【0036】
前述のように、本明細書に開示された様々な実施形態によるコーティングは、第1の状態で偏光しなくてもよく(即ち、コーティングは、光波の電気ベクトルのばらつきを一方向に制限しない。)、かつ第2の状態では透過放射線を直線偏光することができる。本明細書で使用される「透過放射線」という用語は、対象の少なくとも一部を通過する放射線を指す。本明細書では限定的ではないが、透過放射線は、紫外線、可視光線、またはこれらの組合せにすることができる。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、コーティングは、第1の状態で偏光しなくてもよく、かつ第2の状態では、透過紫外線、透過可視光線、またはこれらの組合せを直線偏光することができる。
【0037】
さらにその他の実施形態では、コーティング(ii)は、第1の状態で第1の吸収スペクトルを、第2の状態で第2の吸収スペクトルを有することができ、第1および第2の両方の状態では直線偏光されることになる。
【0038】
ある実施形態によれば、コーティング(ii)は、少なくとも1つの状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有することができる。例えば、コーティングは、少なくとも1つの状態で少なくとも1.5から50(またはそれ以上)の範囲の平均吸収比を有することができる。先に論じたように、「吸収比」という用語は、第1の平面で直線偏光された放射線の吸光度と、第1の平面に直交した平面で直線偏光された放射線の吸光度との比を指し、第1の平面は、最も高い吸光度を有する平面と解釈される。したがって、吸収比(および以下で述べられる平均吸収比)は、放射線の2つの直交平面で偏光された成分の一方が、対象または材料によってどのように強力に吸収されたかを示すものである。
【0039】
フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングまたは素子の平均吸収比は、以下に示すように決定することができる。例えば、フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングの平均吸収比を決定するには、コーティングを有する基材を光学ベンチ上に位置決めし、コーティングを、フォトクロミック−2色性化合物を活性化することによって直線偏光状態に置く。活性化は、飽和またはほぼ飽和状態(即ち、コーティングの吸収特性が、測定が行われる時間間隔で実質的に変化しない状態)に到達するのに十分な時間、コーティングをUV放射線で露光することによって実現される。吸収測定は、光学ベンチに直交する平面で直線偏光される光(0°偏光平面または方向と呼ぶ。)、および光学ベンチに平行な平面で直線偏光される光(90°偏光平面または方向と呼ぶ。)に関し、下記の順序、即ち、0°、90°、90°、0°などで、ある時間(典型的には、10から300秒)にわたり3秒間隔で行われる。コーティングによって直線偏光された光の吸光度は、試験がなされる波長の全てに関して時間間隔ごとに測定され、波長の同じ範囲にわたる非活性化吸光度(即ち、非活性化状態にあるコーティングの吸光度)は差し引かれて、活性化状態のコーティングに関する吸収スペクトルが0°および90°の偏光平面のそれぞれで得られ、その結果、平均差吸収スペクトルが、飽和またはほぼ飽和状態にあるコーティングの各偏光平面で得られる。
【0040】
例えば、図1を参照すると、本明細書に開示される一実施形態によるコーティングに関して得られた、1つの偏光平面における平均差吸収スペクトル(一般に、10で示される。)が示されている。平均吸収スペクトル(一般に、11で示される。)は、直交偏光平面で同じコーティングに関して得られた平均差吸収スペクトルである。
【0041】
コーティングに関して得られた平均差吸収スペクトルに基づき、コーティングの平均吸収比は下記の通り得られる。λmax−vis±5ナノメートル(一般に、図1の14で示される。)(但し、λmax−visは、コーティングが任意の平面で最高平均吸光度を有する波長である。)に対応する波長の所定範囲における各波長でのコーティングの吸収比は、下記の方程式に従って計算され、
ARλi=Abλi/Abλi 方程式1
式中、ARλiは、波長λでの吸収比であり、Abλiは、より高い吸光度を有する偏光方向(即ち、0°または90°)における波長λでの平均吸収であり、Abλiは、残りの偏光方向における波長λでの平均吸収である。先に論じたように、「吸収比」は、第1の平面で直線偏光された放射線の吸光度と、第1の平面に直交する平面で直線偏光された同じ波長の放射線の吸光度との比を指し、第1の平面は、最も高い吸光度を有する平面と解釈される。
【0042】
次いでコーティングの平均吸収比(「AR」)を、下記の方程式に従い、波長の所定範囲(即ち、λmax−vis±5ナノメートル)にわたる個々の吸収比を平均することによって計算し、
AR=(ΣARλi)/n 方程式2
式中、ARはコーティングの平均吸収であり、ARλiは、波長の所定範囲内の各波長ごとの、個々の吸収比(方程式1で既に決定された。)であり、nは、平均された個々の吸収比の数値である。平均吸収比を決定するこの方法のより詳細な記述を、実施例に示す。
【0043】
前述のように、本明細書に開示された様々な実施形態によれば、コーティング(ii)は、少なくとも部分的に位置合わせされた、少なくとも1種のフォトクロミック−2色性材料を含むことができる。先に論じたように、「フォトクロミック−2色性」という用語は、ある条件下で、フォトクロミックおよび2色性(即ち、直線偏光する)特性の両方を示すことを意味し、この特性は、計測によって少なくとも検出可能なものである。したがって、「フォトクロミック−2色性材料」は、ある条件下でフォトクロミックおよび2色性(即ち、直線偏光する。)特性の両方を示す化合物であり、この特性は、計測によって少なくとも検出可能なものである。このように、フォトクロミック−2色性化合物は、少なくとも化学線に応答して変化する、少なくとも可視光線に関して吸収スペクトルを有し、少なくとも透過放射線の2つの直交平面偏光成分の一方を、他方よりも強力に吸収することが可能である。さらに、上記にて論じた従来のフォトクロミック化合物のように、本明細書に開示されるフォトクロミック−2色性化合物は、熱的に可逆的にすることができる。即ち、フォトクロミック−2色性化合物は、化学線に応答して第1の状態から第2の状態に切り換わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻ることができる。本明細書で使用される「化合物」という用語は、2つ以上の要素、構成要素、成分、または部分の結合によって形成された物質を意味し、限定するものではないが、2つ以上の要素、構成要素、成分、または部品の結合によって形成された分子およびマクロ分子(例えば、ポリマーおよびオリゴマー)が含まれる。
【0044】
例えば、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、第1の吸収スペクトルを有する第1の状態と、第1の吸収スペクトルとは異なる第2の吸収スペクトルを有する第2の状態とを有することができ、少なくとも化学線に応答して第1の状態から第2の状態に切り換わるように、また熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように、適合させることができる。さらに、フォトクロミック−2色性化合物は、第1の状態および第2の状態の一方または両方で、2色性(即ち、直線偏光する。)にすることができる。例えば、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、活性化状態で直線偏光することができ、漂白または退色(即ち、活性化していない。)状態では非偏光にすることができる。本明細書で使用される「活性化状態」という用語は、フォトクロミック−2色性化合物の少なくとも一部が第1の状態から第2の状態に切り換わるのを引き起こすよう十分な化学線に曝されたときの、フォトクロミック−2色性化合物を指す。さらに、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、第1および第2の状態の両方で2色性にすることができる。本明細書では限定的ではないが、例えば、フォトクロミック−2色性化合物は、活性化状態および漂白状態の両方で、可視光線を直線偏光することができる。さらに、フォトクロミック−2色性化合物は、活性化状態で可視光線を直線偏光することができ、漂白状態でUV放射線を直線偏光することができる。
【0045】
必ずしも必要ではないが、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定したときに、活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有することができる。例えば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定したときに、活性化状態で2.3よりも大きい平均吸収比を有することができる。さらにその他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定したときに、活性化状態で1.5から50の範囲の平均吸収比を有することができる。その他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定されたときに、活性化状態で4から20、または3から30、または2.5から50の範囲の平均吸収比を有することができる。しかし、一般的に言えば、フォトクロミック−2色性化合物の平均吸収比は、デバイスまたは素子に所望の性質を与えるのに十分な、任意の平均吸収比にすることができる。適切なフォトクロミック−2色性化合物の例を、本明細書で以下に詳細に記述する。
【0046】
フォトクロミック−2色性化合物の平均吸収比を決定するためのCELL METHODは、コーティングされた基材の吸光度を測定する代わりに位置合わせされた液晶材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含有するセルアセンブリについて試験をすること以外、コーティングの平均吸収比を決定するのに使用される方法(上述のおよび実施例での)と本質的に同じである。より具体的には、セルアセンブリは、20ミクロン±1ミクロンだけ間隔を空けて配された2つの対向するガラス基材を含む。基材は、対向する2つの縁部に沿って封止されることにより、セルを形成する。各ガラス基材の内面は、ポリイミドコーティングでコーティングされ、その表面は、ラビングによって少なくとも部分的に秩序化されている。フォトクロミック−2色性化合物のアライメントは、フォトクロミック−2色性化合物および液晶媒体をセルアセンブリ内に導入し、液晶媒体を、ラビングされたポリイミド表面に位置合わせすることによって実現される。液晶媒体およびフォトクロミック−2色性化合物を位置合わせしたら、セルアセンブリを光学ベンチ上に置き(実施例で詳細に記述する。)、平均吸収比は、セルアセンブリの非活性化吸光度を活性化吸光度から差し引いて平均差吸収スペクトルを得ること以外、コーティングされた基材に関して既に述べた手法で決定する。
【0047】
既に論じたように、2色性化合物は、平面偏光された光の2つの直交成分の一方を優先的に吸収することが可能であるが、正味の直線偏光作用を実現するために、2色性化合物の分子を適切に位置決めし配列することが一般に必要である。同様に、一般に、正味の直線偏光作用を実現するために、フォトクロミック−2色性化合物の分子を適切に位置決めし配列することが必要である。即ち、活性化状態にあるフォトクロミック−2色性化合物の分子の長軸が互いにほぼ平行になるように、フォトクロミック−2色性化合物の分子を位置合わせすることが一般に必要である。したがって、上記にて論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、少なくとも部分的に位置合わせされる。さらに、フォトクロミック−2色性化合物の活性化状態が材料の2色性状態に対応する場合、フォトクロミック−2色性化合物は、活性状態にあるフォトクロミック−2色性化合物の分子の長軸が位置合わせされるように、少なくとも部分的に位置合わせすることができる。本明細書で使用される「位置合わせする」という用語は、別の材料、化合物、または構造と相互に作用させることによって、適切な配置構成または位置にすることを意味する。
【0048】
さらに、本明細書では限定的ではないが、コーティング(ii)は、複数のフォトクロミック−2色性材料を含むことができる。本明細書では限定的ではないが、2種以上のフォトクロミック−2色性化合物を組み合わせて使用する場合、フォトクロミック−2色性化合物は、所望の色または色相をもたらすために、互いに補うよう選択することができる。例えば、フォトクロミック−2色性化合物の混合物は、ニアニュートラルグレーまたはニアニュートラルブラウンなど、ある活性化した色を実現するために、本明細書に開示されるある実施形態により使用することができる。例えば、ニュートラルグレーおよびブラウンの色を定めるパラメータについて記述する、その開示が参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第5,645,767号、第12欄、第66から、第13欄、第19行を参照されたい。さらに、または代替として、コーティングは、相補的な直線偏光状態を有するフォトクロミック−2色性化合物の混合物を含むことができる。例えば、フォトクロミック−2色性化合物は、波長の所望の範囲にわたって光を偏光することが可能な光学素子をもたらすため、波長の所望の範囲にわたって相補的直線偏光状態を有するように選択することができる。さらになお、同じ波長で本質的に同じ偏光状態を有する相補的フォトクロミック−2色性化合物の混合物は、実現される全体的な直線偏光が強化されまたは高まるように、選択することができる。例えば、一実施形態によれば、第1の状態および第2の状態を有するコーティングは、少なくとも2つの少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含むことができ、このフォトクロミック−2色性化合物は、補色および/または相補的直線偏光状態を有している。
【0049】
先に論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態は、基材に接合されたコーティングを含む光学素子を提供し、このコーティングは、化学線に応答して第1の状態から第2の状態に切り換わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻り、第1の状態および第2の状態の少なくとも一方で少なくとも透過した放射線を直線偏光するよう動作可能なものである。さらに、様々な実施形態によれば、コーティングは、少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含むことができる。
【0050】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、コーティング(ii)は、コーティングの加工、性質、または性能の1つまたは複数を促進させることができる少なくとも1種の添加剤を、さらに含むことができる。そのような添加剤の例には、染料(dye)、アライメント促進剤(alignment promoter)、運動増強添加剤、光開始剤、熱開始剤、重合禁止剤、溶媒、光安定剤(限定するものではないが、紫外線吸収剤および光安定剤などであって、例えばヒンダードアミン光安定剤(HALS))、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤(限定するものではないが、界面活性剤など)、フリーラジカルスカベンジャー、自己集合性材料、ゲル化剤、および接着促進剤(ヘキサンジオールジアクリレートおよびカップリング剤など)が含まれる。
【0051】
本明細書に開示される様々な実施形態によるコーティング中に、存在することのできる染料の例には、所望の色またはその他の光学特性をコーティングに与えることが可能な有機染料が含まれる。
【0052】
本明細書で使用される「アライメント促進剤」という用語は、それが添加される材料のアライメントの速度および均一性の少なくとも一方を、促進させることができる添加剤を意味する。本明細書に開示される様々な実施形態によるコーティング中に、存在することのできるアライメント促進剤の例には、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,338,808号および米国特許公開第2002/0039627号に記載されているものが含まれる。
【0053】
本明細書に開示される様々な実施形態によるコーティング中に、存在することのできる運動増強添加剤の例には、エポキシ含有化合物、有機ポリオール、および/または可塑剤が含まれる。そのような運動増強添加剤の、より具体的な例は、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,433,043号および米国特許公開第2003/0045612号に開示されている。
【0054】
本明細書に開示される様々な実施形態によるコーティング中に、存在することのできる光開始剤の例には、開裂型光開始剤および引抜き型(abstraction-type)光開始剤が含まれる。開裂型光開始剤の例には、アセトフェノン、α−アミノアルキルフェノン、ベンゾインエーテル、ベンゾイルオキシム、アシルホスフィンオキシド、およびビスアシルホスフィンオキシド、またはそのような開始剤の混合物が含まれる。そのような光開始剤の商業的な例は、Ciba Chemicals,Inc.から入手可能なDAROCURE(登録商標)4265である。引抜き型光開始剤の例には、ベンゾフェノン、ミヒラーのケトン、チオキサントン、アントラキノン、カンファーキノン、フルオロン、ケトクマリン、またはそのような開始剤の混合物が含まれる。
【0055】
本明細書に開示される様々な実施形態によるコーティング中に、存在することができる光開始剤の別の例は、可視光線光開始剤である。適切な可視光線光開始剤の例は、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,602,603号の、第12欄、第11行から第13欄、第21行に記載されている。
【0056】
熱開始剤の例には、有機ペルオキシ化合物およびアゾビス(オルガノニトリル)化合物が含まれる。熱開始剤として有用な有機ペルオキシ化合物の具体的な例には、第3級ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどのペルオキシモノカルボネートエステル;ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ(第2級ブチル)ペルオキシジカルボネート、およびジイソプロピルペルオキシジカルボネートなどのペルオキシジカーボネートエステル;2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、過酸化イソブチリル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、過酸化プロピオニル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、およびp−クロロベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド(diacyperoxide);t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクチレート、およびt−ブチルペルオキシイソブチレートなどのペルオキシエステル;メチルエチルケトンペルオキシド、およびアセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシドが含まれる。一つの実施形態では、使用される熱開始剤は、得られる重合体を退色させないものである。熱開始剤として使用することができるアゾビス(オルガノニトリル)化合物の例には、アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、またはこれらの混合物が含まれる。
【0057】
重合禁止剤の例には、ニトロベンゼン、1,3,5−トリニトロベンゼン、p−ベンゾキノン、クロラニル、DPPH、FeCl、CuCl、酸素、硫黄、アニリン、フェノール、p−ジヒドロキシベンゼン、ジ−第3級ブチルフェノール、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、および2,4,6−トリメチルフェノールが含まれる。
【0058】
本明細書に開示される様々な実施形態によるコーティング中に、存在することができる溶媒の例には、コーティングの固体成分を溶解し、コーティングおよび素子および基材に適合し、かつ/またはこのコーティングが付着される(1つまたは複数の)外面に均一な被覆を確実にすることができるものが含まれる。可能性ある溶媒には、下記の化合物、即ち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびその誘導体(DOWANOL(登録商標)工業用溶媒として販売されている。)、アセトン、アミルプロピオネート、アニソール、ベンゼン、酢酸ブチル、シクロヘキサン、エチレングリコールのジアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびその誘導体(CELLOSOLVE(登録商標)工業用溶媒として販売されている。)、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメトキシベンゼン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、2−メトキシエチルエーテル、3−プロピレングリコールメチルエーテル、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0059】
自己集合性材料の例には、液晶材料および/またはブロックコポリマーが含まれる。
【0060】
レオロジー制御剤は、シリカなどの無機物、微結晶性セルロールなどの有機物、ヒドロキシステアリン酸、または粒状ポリマー材料など、典型的には粉末である増粘剤である。ゲル化剤またはゲル化薬剤は、しばしば、それらが添加される材料のチキソトロピーにも影響を及ぼす可能性のある有機材料である。適切なゲル化剤またはゲル化薬剤の非限定的な例には、天然ゴム、デンプン、ペクチン、寒天、およびゼラチンが含まれるが、これらに限定するものではない。ゲル化剤またはゲル化薬剤は、しばしば、多糖またはタンパク質をベースにすることができる。
【0061】
別の実施形態では、コーティング(ii)は、少なくとも1種の従来の2色性化合物を、さらに含むことができる。適切な従来の2色性化合物の例には、アゾメチン、インジゴイド、チオインジゴイド、メロシアニン、インダン、キノフタロン染料、ペリレン、フタロペリン、トリフェノジオキサジン、インドロキノキサリン、イミダゾ−トリアジン、テトラジン、アゾおよび(ポリ)アゾ染料、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントロキノンおよび(ポリ)アントロキノン、アントロピリミジノン、ヨウ素、およびヨウ素酸塩が含まれる。別の実施形態では、2色性材料は、重合可能な2色性化合物にすることができる。即ち、2色性材料は、重合されることが可能な少なくとも1個の基(即ち、「重合性基」)を含むことができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、一実施形態では、2色性化合物は、少なくとも1個の重合性基で終結する少なくとも1種のアルコキシ、ポリアルコキシ、アルキル、またはポリアルキル置換基を有することができる。
【0062】
さらになお、コーティング(ii)は、少なくとも1種の従来のフォトクロミック化合物を含むことができる。本明細書で使用される「従来のフォトクロミック化合物」という用語には、熱可逆的および非熱可逆的(または光可逆的)なフォトクロミック化合物が含まれる。一般に、本明細書では限定的ではないが、2種以上の従来のフォトクロミック材料が互いにまたはフォトクロミック−2色性化合物と組み合わされて使用される場合、所望の色または色相を生成するために、互いに補うように様々な材料を選択することができる。例えば、フォトクロミック化合物の混合物は、ニアニュートラルグレーまたはニアニュートラルブラウンなどの、ある活性化色を実現するために、本明細書に開示されるある実施形態により使用することができる。例えば、ニュートラルグレーおよびブラウン色を定めるパラメータについて記述する、参照によりその開示が本明細書に特に組み込まれる米国特許第5,645,767号の第12欄、第66行から第13欄、第19行を参照されたい。
【0063】
本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子は、光学素子の基材に接合された様々なコーティングのいずれかの結合、接着、または湿潤を促進させることができる、少なくとも1種の追加のコーティングをさらに含むことができる。例えば、一実施形態によれば、光学素子は、第1の状態および第2の状態を有するコーティングと基材の一部との間に、少なくとも部分的なプライマーコーティングを含むことができる。さらに、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、プライマーコーティングは、コーティングの成分と素子または基材面との相互作用、またはその逆の相互作用を防止する、障壁コーティングとして働くことができる。
【0064】
本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用することができるプライマーコーティングの例には、カップリング剤、カップリング剤の少なくとも部分的な加水分解物、およびこれらの混合物を含むコーティングが含まれる。本明細書で使用される「カップリング剤」は、少なくとも1つの面にある基と反応し、結合し、かつ/または会合することが可能な、少なくとも1個の基を有する材料を意味する。一実施形態では、カップリング剤は、同様であっても異なっていてもよい少なくとも2つの面の界面で、分子架橋として働くことができる。カップリング剤は、別の実施形態において、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、および/またはポリマーにすることができる。そのような材料には、シラン、チタネート、ジルコネート、アルミネート、ジルコニウムアルミネート、これらの加水分解物、およびこれらの混合物などの有機金属が含まれるが、これらに限定するものではない。本明細書で使用される「カップリング剤の少なくとも部分的な加水分解物」という文言は、カップリング剤の加水分解性基の少なくともいくつかから全てが加水分解されることを意味する。カップリング剤および/またはカップリング剤の加水分解物の他に、プライマーコーティングは、その他の接着増強成分を含むことができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、プライマーコーティングはさらに、接着増強量のエポキシ含有材料を含むことができる。接着増強量のエポキシ含有材料は、コーティング組成物を含有するカップリング剤に添加した場合、その後に付着されるコーティングの接着を、エポキシ含有材料を本質的に含まないコーティング組成物を含有するカップリング剤に比べて改善することができる。本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用するのに適したプライマーコーティングのその他の例には、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,602,603号および米国特許第6,150,430号に記載されているものが含まれる。
【0065】
本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子は、さらに、基材の少なくとも一部に接合された、従来のフォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、円偏光コーティング、楕円偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング(上記にて論じたものなど)と、曇り止めコーティング、酸素障壁コーティング、および紫外線吸収コーティングなどの保護コーティングとから選択された少なくとも1種の追加のコーティングを含むことができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、(1つまたは複数の)追加のコーティングは、コーティング(ii)の少なくとも一部を覆うことができ、即ち、オーバーコートとしてであり、またはコーティング(ii)の少なくとも一部にあってもよく、即ち、アンダーコートとしてである。さらに、または代替として、コーティング(ii)は、基材の第1の面に接合することができ、追加のコーティングは、基材の第2の面に接合することができ、この第1の面は第2の面に対向しているものである。この場合も、コーティングは、必ずしも面全体を覆う必要はないことに留意されたい。
【0066】
従来のフォトクロミックコーティングの例には、以下に詳細に論じる従来のフォトクロミック化合物のいずれかを含むコーティングが含まれる。例えば、本明細書では限定的ではないが、フォトクロミックコーティングは、米国特許第6,187,444号に記載されているものなどのフォトクロミックポリウレタンコーティング;米国特許第4,756,973号、第6,432,544号、および第6,506,488号に記載されているものなどのフォトクロミックアミノプラスト樹脂コーティング;米国特許第4,556,605号に記載されているものなどのフォトクロミックポリシランコーティング;米国特許第6,602,603号、第6,150,430号、および第6,025,026号と、WIPO公開WO01/02449に記載されているものなどのフォトクロミックポリ(メタ)アクリレートコーティング;米国特許第6,436,525号に記載されているものなどのポリアンヒドリドフォトクロミックコーティング;米国特許第6,060,001号に記載されているものなどのフォトクロミックポリアクリルアミドコーティング;米国特許第4,756,973号および第6,268,055号に記載されているものなどのフォトクロミックエポキシ樹脂コーティング;および米国特許第6,531,076号に記載されているものなどのフォトクロミックポリ(尿素−ウレタン)コーティングにすることができる。前述の米国特許および国際公開の明細書は、参照により本明細書に特に組み込まれている。
【0067】
直線偏光コーティングの例には、限定するものではないが上記にて論じたものなどの従来の2色性化合物を含むコーティングが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0068】
本明細書で使用される「遷移コーティング」という用語は、2種のコーティングの間で性質の勾配を増大させるのを支援するコーティングを意味する。例えば、本明細書では限定的ではないが、遷移コーティングは、比較的硬質のコーティングと比較的軟質のコーティングとの間で硬さの勾配を増大させるのを支援することができる。遷移コーティングの例には、放射線硬化されたアクリレートをベースにした薄膜が含まれる。
【0069】
保護コーティングの例には、オルガノシランを含む耐摩耗性コーティング、放射線硬化型のアクリレートをベースにした薄膜を含む耐摩耗性コーティング、シリカ、チタニア、および/またはジルコニアなどの無機材料をベースにした耐摩耗性コーティング、紫外線硬化可能なタイプの有機耐摩耗性コーティング、酸素障壁コーティング、UV遮蔽コーティング、およびこれらの組合せが含まれる。例えば、一実施形態によれば、保護コーティングは、放射線硬化型のアクリレートをベースにした薄膜の第1のコーティングと、オルガノシランを含む第2のコーティングとを含むことができる。商用の保護コーティング製品の例には、SDC Coatings,Inc.およびPPG Industries,Inc.からそれぞれ入手可能なSILVUE(登録商標)124およびHI−GARD(登録商標)コーティングが含まれる。
【0070】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、基材と、この基材に接合されて、CELL METHODにより決定したときに活性化状態で2.3よりも大きい平均吸収比を有する、少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物とを含む光学素子を提供する。さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物の吸収比は、4から20に及んでよく、さらに3から30に及んでよく、さらになお2.5から50またはそれ以上に及んでよい。
【0071】
先に論じたように、「接合された」という用語は、対象に直接接触しており、または、その少なくとも1つが対象に直接接触している1つもしくは複数のその他の構造を通して対象に間接的に接触していることを意味する。したがって、上述の実施形態によれば、基材に接合されたフォトクロミック−2色性化合物は、基材に直接接触することができ、または、基材に直接もしくは間接的に接触している1つもしくは複数のその他の構造もしくは材料に接触させることができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、一実施形態では、フォトクロミック−2色性化合物は、基材の少なくとも一部に直接接触しているコーティングまたはポリマーシートの一部として、存在することができる。別の実施形態では、フォトクロミック−2色性化合物は、その少なくとも1つが基材に直接接触している1つまたは複数のその他のコーティングまたはシートに直接接触している、コーティングまたはシートの一部として存在することができる。
【0072】
さらにその他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、基材に直接(または間接的に)接触している少なくとも部分的に秩序化された液晶材料中に、含有されていてもよい。さらに、この実施形態によれば、光学素子は、2つの基材を含むことができ、フォトクロミック−2色性化合物を含有する少なくとも部分的に秩序化された液晶材料は、2つの基材の間に位置決めされて、例えば能動または受動液晶セルを形成することができる。
【0073】
さらになお非限定的な実施形態では、本発明は、光感受性製品の包装材料である基材に接合された、円偏光子である光学素子を含む。
【0074】
本明細書に開示された様々な実施形態と併せて使用するのに適したフォトクロミック−2色性化合物の例には、以下に列挙された化合物と、米国特許第7,256,921号の第19欄、第26行から第22欄、第47行に記載されている化合物とが含まれる:
(1) 3−フェニル−3−(4−(4−(3−ピペリジン−4−イル−プロピル)ピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]−ナフト[1,2−b]ピラン;
(2) 3−フェニル−3−(4−(4−(3−(1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−4−イル)プロピル)ピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(3) 3−フェニル−3−(4−(4−(4−ブチル−フェニルカルバモイル)−ピペリジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(4) 3−フェニル−3−(4−([1,4’]ビピペリジニル−1’−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−([1,4’]ビピペリジニル−1’−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(5) 3−フェニル−3−(4−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−(4−ヘキシルベンゾイルオキシ)−ピペリジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および
(6) 3−フェニル−3−(4−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−(4’−オクチルオキシ−ビフェニル−4−カルボニルオキシ)−ピペリジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
より一般には、そのようなフォトクロミック−2色性化合物は、(a)ピラン、オキサジン、およびフルギドから選択された、少なくとも1種のフォトクロミック基(PC)と、(b)このフォトクロミック基に結合された少なくとも1種の延長剤とを含み、この延長剤(L)は、下記の式I(以下に詳細に記述する。)により表される:
−[S−[Q−[Sd’−[Q−[Se’−[Q−[Sf’−S−P I
本明細書で使用される「結合される」という用語は、別の基に直接結合されまたは別の基を通して間接的に結合されることを意味する。したがって、例えば、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、Lは、PC上の置換基としてPCに直接結合することができ、またはLは、PCに直接結合される別の基(以下に論じられる、Rによって表される基など)の置換基にすることができる(即ち、LはPCに間接的に結合する。)。本明細書では限定的ではないが、様々な実施形態によれば、伸びたPC(即ち、フォトクロミック化合物)の吸収比がPC単独に比べて増強されるように、活性化状態にあるPCを伸ばしまたは延長するようにLをPCに結合することができる。本明細書では限定的ではないが、様々な実施形態によれば、PC上のLの結合部位は、PCの活性化形態の理論的な遷移双極子モーメントに平行な方向および直交する方向の少なくとも一方で、LがPCを延長するように選択することができる。本明細書で使用される「理論的な遷移双極子モーメント」という用語は、電磁放射線と分子との相互作用によってもたらされた一時的な双極子分極を指す。例えば、IUPAC Compendium of Chemical Technology、第2版、International Union ofPure and Applied Chemistry(1997年)を参照されたい。
【0075】
上記式Iを参照すると、各Q、Q、およびQは、独立して、出現するごとに、非置換または置換芳香族基、非置換または置換脂環式基、非置換または置換複素環基、およびこれらの混合物から選択された2価の基から選択することができ、ここで、置換基は、P(以下に記述する。)によって表される基、液晶メソゲン、ハロゲン、ポリ(C〜C18アルコキシ)、C〜C18アルコキシカルボニル、C〜C18アルキルカルボニル、C〜C18アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、パーフルオロ(C〜C18)アルコキシ、パーフルオロ(C〜C18)アルコキシカルボニル、パーフルオロ(C〜C18)アルキルカルボニル、パーフルオロ(C〜C18)アルキルアミノ、ジ−(パーフルオロ(C〜C18)アルキル)アミノ、パーフルオロ(C〜C18)アルキルチオ、C〜C18アルキルチオ、C〜C18アセチル、C〜C10シクロアルキル、C〜C10シクロアルコキシ、直鎖または分枝鎖C〜C18アルキル基であって、シアノ、ハロ、またはC〜C18アルコキシで一置換され、あるいは、ハロで多置換されたものと、下記の式:−M(T)(t−1)および−M(OT)(t−1)の一方により表される基(ここでMは、アルミニウム、アンチモン、タンタル、チタン、ジルコニウム、およびケイ素から選択され、Tは、有機官能基、有機官能性炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基から選択され、tはMの価数である)から選択される。本明細書で使用される「ポリ」という接頭語は、少なくとも2を意味する。
【0076】
上記にて論じたように、Q、Q、およびQは、独立して、出現するごとに、非置換または置換芳香族基、非置換または置換複素環基、および非置換または置換脂環式基などの2価の基から選択することができる。有用な芳香族基の例には、ベンゾ、ナフト、フェナントロ、ビフェニル、テトラヒドロナフト、ターフェニル、およびアントラセノが含まれる。
【0077】
本明細書で使用される「複素環基」という用語は、原子の環を有する化合物を意味し、環を形成する少なくとも1個の原子は、環を形成するその他の原子とは異なっている。さらに、本明細書で使用される複素環基という用語は、縮合複素環基を特に除外する。Q、Q、およびQとして選択することができる、適切な複素環基の例には、イソソルビトール、ジベンゾフロ、ジベンゾチエノ、ベンゾフロ、ベンゾチエノ、チエノ、フロ、ジオキシノ、カルバゾロ、アントラニリル、アゼピニル、ベンゾオキサゾリル、ジアゼピニル、ジオアズリル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、インダゾリル、インドレニニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、インドキサジニル、イソベンザゾリル、イソインドリル、イソオキサゾリル、イソオキサジル、イソピロリル(isopyrroyl)、イソキノリル、イソチアゾリル、モルホリノ、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサチアゾリル、オキサチアジル、オキサチオリル、オキサトリアゾリル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペラジル、ピペリジル、プリニル、ピラノピロリル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピラジル、ピリダジニル、ピリダジル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピリデニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル(pyrroyl)、キノリジニル、キヌクリジニル、キノリル、チアゾリル、トリアゾリル、トリアジル、N−アリールピペラジノ、アジリジノ、アリールピペリジノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピリル、非置換、一または二置換C〜C18スピロ二環式アミン、および非置換、一または二置換C〜C18スピロ三環式アミンが含まれる。
【0078】
上記にて論じたように、Q、Q、およびQは、一または二置換C〜C18スピロ二環式アミンおよびC〜C18スピロ三環式アミンから選択することができる。適切な置換基の例には、アリール、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはフェニル(C〜C)アルキルが含まれる。一または二置換スピロ二環式アミンの特定の例には、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル;3−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル;2−アザビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イル;および6−アザビシクロ[3.2.2]ノナン−6−イルが含まれる。一または二置換三環式アミンの特定の例には、2−アザトリシクロ[3.3.1.1(3,7)]デカン−2−イル;4−ベンジル−2−アザトリシクロ[3.3.1.1(3,7)]デカン−2−イル;4−メトキシ−6−メチル−2−アザトリシクロ[3.3.1.1(3,7)]デカン−2−イル;4−アザトリシクロ[4.3.1.1(3,8)]ウンデカン−4−イル;および7−メチル−4−アザトリシクロ[4.3.1.1(3,8)]ウンデカン−4−イルが含まれる。Q、Q、およびQとして選択することができる脂環式基の例には、シクロヘキシル、シクロプロピル、ノルボルネニル、デカリニル、アダマンタニル、ビシクロオクタン(bicycloctane)、パーヒドロフルオレン、およびクバニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
引き続き式Iを参照すると、各S、S、S、S、およびSは、独立して、出現するごとに、
(1)−(CH−、−(CF−、−Si(CH−、−(Si[(CH]O)−であって、式中、gは、独立して、出現するごとに、1から20から選択され、hは1から16から選択され、
(2)−N(Z)−、−C(Z)=C(Z)−、−C(Z)=N−、−C(Z’)−C(Z’)−、または単結合であって、式中、Zは、独立して、出現するごとに、水素、C〜C18アルキル、C〜C10シクロアルキル、およびアリールから選択され、Z’は、独立して、出現するごとに、C〜C18アルキル、C〜C10シクロアルキル、およびアリールから選択され、
(3)−O−、−C(O)−、−C≡C−、−N=N−、−S−、−S(O)−、−S(O)(O)−、−(O)S(O)O−、−O(O)S(O)O−、または直鎖もしくは分枝鎖C〜C24アルキレン残基であって、前記C〜C24アルキレン残基は、非置換であるか、またはシアノもしくはハロによって一置換されているか、またはハロによって多置換されている直鎖もしくは分枝鎖C〜C24アルキレン残基
から選択されたスペーサ単位から選択することができ、
但し、ヘテロ原子を含む2個のスペーサ単位が一緒に結合している場合、これらスペーサ単位は、ヘテロ原子が互いに直接結合しないように結合しており、またSおよびSがPCおよびPにそれぞれ結合している場合、これらは、2個のヘテロ原子が互いに直接結合しないように結合していることを前提とする。本明細書で使用される「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の原子を意味する。
【0080】
さらに、式Iでは、様々な実施形態によれば、c、d、e、およびfは、それぞれ独立して、両端を含む1から20の範囲の整数から選択することができ、d’、e’、およびf’は、それぞれ独立して、0、1、2、3、および4から選択することができ、但しd’+e’+f’の合計は少なくとも1であることを条件とする。その他の実施形態によれば、c、d、e、およびfは、それぞれ独立して、両端を含む0から20の範囲の整数から選択することができ、d’、e’、およびf’は、それぞれ独立して、0、1、2、3、および4から選択することができ、但しd’+e’+f’の合計は少なくとも2であることを条件とする。さらにその他の実施形態によれば、c、d、e、およびfは、それぞれ独立して、両端を含む0から20の範囲の整数から選択することができ、d’、e’、およびf’は、それぞれ独立して、0、1、2、3、および4から選択することができ、但しd’+e’+f’の合計は少なくとも3であることを条件とする。さらにその他の実施形態によれば、c、d、e、およびfは、それぞれ独立して、両端を含む0から20の範囲の整数から選択することができ、d’、e’、およびf’は、それぞれ独立して、0、1、2、3、および4から選択することができ、但しd’+e’+f’の合計は少なくとも1であることを条件とする。
【0081】
さらに、式Iでは、Pは、ヒドロキシ、アミノ、C〜C18アルケニル、C〜C18アルキニル、アジド、シリル、シロキシ、シリルヒドリド、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ、チオ、イソシアナト、チオイソシアナト、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバミル、アジリジニル、アリルオキシカルボニルオキシ、エポキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、アクリロイルアミノ、メタクリロイルアミノ、アミノカルボニル、C〜C18アルキルアミノカルボニル、アミノカルボニル(C〜C18)アルキル、C−C18アルキルオキシカルボニルオキシ、ハロカルボニル、水素、アリール、ヒドロキシ(C〜C18)アルキル、C〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、アミノ(C〜C18)アルキル、C〜C18アルキルアミノ、ジ−(C〜C18)アルキルアミノ、C〜C18アルキル(C〜C18)アルコキシ、C〜C18アルコキシ(C〜C18)アルコキシ、ニトロ、ポリ(C〜C18)アルキルエーテル、(C〜C18)アルキル(C〜C18)アルコキシ(C〜C18)アルキル、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、エチレニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ(C〜C18)アルキル、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ(C〜C18)アルキル、2−クロロアクリロイル、2−フェニルアクリロイル、アクリロイルオキシフェニル、2−クロロアクリロイルアミノ、2−フェニルアクリロイルアミノカルボニル、オキセタニル、グリシジル、シアノ、イソシアナト(C〜C18)アルキル、イタコン酸エステル、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン誘導体、主鎖および側鎖液晶ポリマー、シロキサン誘導体、エチレンイミン誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、非置換ケイ皮酸誘導体、メチル、メトキシ、シアノ、およびハロゲンの少なくとも1つにより置換されたケイ皮酸誘導体、または、置換もしくは非置換のキラルもしくは非キラルの1価もしくは2価の基であって、ステロイド基、テルペノイド基、アルカロイド基、およびこれらの混合物から選択されるものであり、但し置換基は、独立して、C〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、アミノ、C〜C10シクロアルキル、C〜C18アルキル(C〜C18)アルコキシ、フルオロ(C〜C18)アルキル、シアノ、シアノ(C〜C18)アルキル、シアノ(C〜C18)アルコキシ、またはこれらの混合物から選択され、あるいはPは、2から4個の反応性基を有する構造であり、またはPは、非置換もしくは置換開環メタセシス重合前駆体である。
【0082】
さらに、本明細書では限定的ではないが、Pが重合性基である場合、重合性基は、重合反応に参加するよう適合された任意の官能基にすることができる。重合反応の例には、参照によりその開示が本明細書に組み込まれるHawley’s Condensed Chemical Dictionary第13版、1997年、John Wiley &Sons、901〜902頁の「重合」の定義に記載されているものが含まれる。例えば、本明細書では限定的ではないが、重合反応には、フリーラジカルが開始剤であり、この開始剤が、モノマーの二重結合の一方に付加することによってモノマーの二重結合と反応し、同時に他方では新しい自由電子を生成する、「付加重合」;2個の反応分子が結合して、より大きな分子を形成し、水分子などの小分子が排除される、「縮合重合」;および「酸化カップリング重合」が含まれる。さらに、重合性基の例には、ヒドロキシ、アクリロキシ、メタクリロキシ、2−(アクリロキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリロキシ)エチルカルバミル、イソシアネート、アジリジン、アリルカルボネート、およびエポキシが含まれ、例えばオキシラニルメチルである。
【0083】
さらに、Pは、主鎖または側鎖液晶ポリマー、および液晶メソゲンから選択することができる。本明細書で使用される液晶「メソゲン」という用語は、剛性の棒状またはディスク状の液晶分子を意味する。さらに、本明細書で使用される「主鎖液晶ポリマー」という用語は、ポリマーの骨格(即ち、主鎖)構造内に液晶メソゲンを有するポリマーを指す。本明細書で使用される「側鎖液晶ポリマー」という用語は、側鎖でポリマーに結合された液晶メソゲンを有するポリマーを指す。本明細書では限定的ではないが、一般に、メソゲンは、液晶ポリマーの運動を制限する2個以上の芳香環で構成される。適切な棒状液晶メソゲンの例には、置換または非置換芳香族エステル、置換または非置換直鎖芳香族化合物、および置換または非置換ターフェニルが含まれるが、これらに限定するものではない。別の特定の実施形態によれば、Pは、ステロイドから選択することができ、例えば、限定するものではないがコレステロール化合物である。
【0084】
フォトクロミック基PCとして選択することができる、熱可逆性フォトクロミックピランの例には、ベンゾピラン、ナフトピラン、例えばナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、米国特許第5,645,767号に開示されているものなどのインデノ−縮合ナフトピラン、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,723,072号、第5,698,141号、第6,153,126号、および第6,022,497号に開示されているものなどの複素環式−縮合ナフトピラン;スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン;フェナントロピラン;キノピラン;フルオロアンテノピラン;スピロピラン、例えばスピロ(ベンズインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノピラン、およびスピロ(インドリン)ピランが含まれる。ナフトピランおよび相補的有機フォトクロミック物質の、より具体的な例は、参照により本明細書に特に組み込まれている米国特許第5,658,501号に記載されている。スピロ(インドリン)ピランも、テキストTechniques in Chemistry、III巻、「Photochromism」、3章、Glenn H.Brown編、JohnWiley and Sons, Inc.、New York、1971年に記載されている。
【0085】
PCとして選択することができるフォトクロミックオキサジンの例には、ベンゾキサジン、ナフトキサジン、およびスピロ−オキサジン、例えばスピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ピリドベンゾキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ベンゾキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノキサジン、およびスピロ(インドリン)キノキサジンが含まれる。PCとして選択することができるフォトクロミックフルギドの例には、フルギミドと、3−フリルおよび3−チエニルフルギドおよびフルギミドであって、米国特許第4,931,220号(参照により特に本明細書に組み込まれる。)に開示されているものと、任意の前述のフォトクロミック材料/化合物の混合物が含まれる。
【0086】
さらに、フォトクロミック−2色性化合物が少なくとも2個のPCを含む場合、これらPCは、個々のPC上の結合基置換基を介して互いに結合することができる。例えば、PCは、重合性フォトクロミック基、またはホスト材料に適合するようになされたフォトクロミック基(「適合化フォトクロミック基」)にすることができる。PCとして選択することができかつ本明細書に開示される様々な実施形態と併せて有用な、重合性フォトクロミック基の例は、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,113,814号に開示されている。PCとして選択することができかつ本明細書に開示される様々な実施形態と併せて有用な、適合化フォトクロミック基の例は、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号に開示されている。
【0087】
その他の適切なフォトクロミック基および相補的フォトクロミック基は、米国特許第6,080,338号の第2欄、第21行から第14欄、第43行;第6,136,968号の第2欄、第43行から第20欄、第67行;第6,296,785号の第2欄、第47行から第31欄、第5行;第6,348,604号の第3欄、第26行から第17欄、第15行;第6,353,102号の第1欄、第62行から第11欄、第64行;および6,630,597号の第2欄、第16行から第16欄、第23行に記載されており、前述の特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0088】
少なくとも1種の延長剤(L)の他に、フォトクロミック化合物は、PCに直接結合されるRによって表される、少なくとも1個の基をさらに含むことができる。必ずしも必要ではないが、先に論じたように、少なくとも1種の延長剤(L)は、Rによって表される少なくとも1個の基を通して、PCに間接的に結合することができる。即ち、Lは、PCに結合される少なくとも1個の基R上の置換基にすることができる。本明細書に開示される様々な実施形態によれば、Rは、独立して、出現するごとに、米国特許第7,256,921号の第26欄、第60行から第30欄、第64行に開示された置換基から選択することができる。本発明のフォトクロミック−2色性化合物には、米国特許第7,256,921号の第30欄、第65行から第66欄、第60行に開示された化合物および調製方法が含まれる。
【0089】
先に論じたように、本明細書に開示される一実施形態は、基材と、この基材の少なくとも一部に接合されて、CELL METHODにより決定したときに活性化状態で2.3超の平均吸収比を有している、少なくとも1種の少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物とを含む光学素子を提供する。さらに、この実施形態によれば、光学素子は、基材の少なくとも一部に接合された少なくとも第1の全体的方向(general direction)を有する少なくとも1つの配向機構をさらに含むことができ、少なくとも1種の少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物の少なくとも一部は、配向機構との相互作用によって少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0090】
本明細書で使用される「配向機構」という用語は、少なくともその一部に直接および/または間接的に曝される1つまたは複数のその他の構造の位置決めを、促進させることができるメカニズムを意味する。本明細書で使用される「秩序」という用語は、別の構造もしくは材料との位置合わせ、または何らかの力もしくは作用などによって、適切な配置構成または位置になることを意味する。したがって、本明細書で使用される「秩序」という用語は、別の構造および材料との位置合わせなどによる、材料の秩序化の接触法と、外力または作用に曝すなどして材料を秩序化する非接触法の、両方を包含する。秩序という用語は、接触および非接触法の組合せも包含する。
【0091】
例えば、一実施形態では、配向機構との相互作用によって少なくとも部分的に位置合わせされた、部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物の部分は、活性化状態にあるフォトクロミック−2色性化合物の長軸が配向機構の第1の全体的方向に本質的に平行になるように、少なくとも部分的に位置合わせすることができる。別の実施形態によれば、配向機構の一部との相互作用によって少なくとも部分的に位置合わせされた、部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物の部分は、配向機構の部分に結合しまたはその部分と反応する。材料または構造の秩序または位置合わせに関して本明細書で使用される「全体的方向」という用語は、材料、化合物、または構造の、支配的な配置構成または配向を指す。さらに、材料、化合物、または構造は、材料、化合物、または構造が少なくとも1つの支配的な配置構成を有する限り、材料、化合物、または構造の配置構成にいくらかばらつきがある場合であっても全体的方向を有することができることが、当業者に理解されよう。
【0092】
上記にて論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態による配向機構は、少なくとも第1の全体的方向を有することができる。例えば、配向機構は、第1の全体的方向を有する第1の秩序化領域と、第1の全体的方向とは異なる第2の全体的方向を有する、第1の秩序化領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化領域とを含むことができる。さらに、配向機構は複数の領域を有することができ、その領域のそれぞれは、所望のパターンまたはデザインが形成されるように、残りの領域と同じまたは異なる全体的方向を有するものである。さらに、少なくとも1つの配向機構は、1つまたは複数の異なるタイプの配向機構を含むことができる。本明細書に開示されるこのおよびその他の実施形態と併せて使用できる配向機構の例には、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含む少なくとも部分的なコーティング、少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシート、少なくとも部分的に処理された面、ラングミュア−ブロジェット膜、およびこれらの組合せが含まれる。
【0093】
例えば、本明細書では限定的ではないが、一実施形態によれば、配向機構は、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含むコーティングを含むことができる。本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用することができる適切なアライメント媒体の例には、光配向材料、ラビング配向材料、および液晶材料が含まれる。アライメント媒体の少なくとも一部を秩序化する方法を、本明細書で以下に詳細に記述する。
【0094】
上記にて論じたように、様々な実施形態によれば、アライメント媒体は、液晶材料にすることができる。液晶材料は、その構造により、一般に、全体的方向をとるように秩序化されまたは位置合わせされることが可能である。より具体的には、液晶分子は、棒またはディスク状の構造、剛性の長軸、および強力な双極子を有するので、液晶分子は、分子の長軸が共通軸にほぼ平行な配向をとるように、外力または別の構造との相互作用によって秩序化されまたは位置合わせされることができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、磁場、電場、直線偏光赤外線、直線偏光紫外線、直線偏光可視光線、または剪断力を用いて、液晶材料の分子を位置合わせすることが可能である。配向面を用いて液晶分子を位置合わせすることも可能である。即ち、液晶分子は、例えばラビング、溝切り、または光アライメント法によって、配向された面に付着させ、その後、液晶分子のそれぞれの長軸が、面の配向の全体的方向にほぼ平行になるように位置合わせすることができる。本明細書に開示される様々な実施形態によるアライメント媒体として使用するのに適した液晶材料の例には、液晶ポリマー、液晶プレポリマー、液晶モノマー、および液晶メソゲンが含まれる。本明細書で使用される「プレポリマー」という用語は、部分的に重合した材料を意味する。
【0095】
本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用するのに適した液晶モノマーには、単、並びに多官能性液晶モノマーが含まれる。さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、液晶モノマーは、架橋性液晶モノマーにすることができ、さらに、光架橋性液晶モノマーにすることができる。本明細書で使用される「光架橋性」という用語は、化学線に曝されると架橋することができる、モノマー、プレポリマー、またはポリマーなどの材料を意味する。例えば、光架橋性液晶モノマーには、重合開始剤を使用してもしなくても、紫外線および/または可視光線で露光されると架橋可能な液晶モノマーが含まれる。
【0096】
本明細書に開示される様々な実施形態により使用するのに適した架橋性液晶モノマーの例には、アクリレート、メタクリレート、アリル、アリルエーテル、アルキン、アミノ、アンヒドリド、エポキシド、ヒドロキシド、イソシアネート、ブロックドイソシアネート、シロキサン、チオシアネート、チオール、尿素、ビニル、ビニルエーテル、およびこれらのブレンドから選択された官能基を有する液晶モノマーが含まれる。本明細書に開示される様々な実施形態によるアライメント機構のコーティングで使用するのに適した光架橋性液晶モノマーの例には、アクリレート、メタクリレート、アルキン、エポキシド、チオール、およびこれらのブレンドから選択された官能基を有する液晶モノマーが含まれる。
【0097】
本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用するのに適した液晶ポリマーおよびプレポリマーには、主鎖液晶ポリマーおよびプレポリマーと、側鎖液晶ポリマーおよびプレポリマーが含まれる。主鎖液晶ポリマーおよびプレポリマーでは、棒またはディスク状の液晶メソゲンが、ポリマー骨格内に主に位置付けられている。側鎖ポリマーおよびプレポリマーでは、棒またはディスク状の液晶メソゲンは、主に、ポリマーの側鎖内に位置付けられている。さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、液晶ポリマーまたはプレポリマーは、架橋可能にすることができ、さらに光架橋可能にすることができる。
【0098】
本明細書に開示された様々な実施形態により使用するのに適した液晶ポリマーおよびプレポリマーの例には、アクリレート、メタクリレート、アリル、アリルエーテル、アルキン、アミノ、アンヒドリド、エポキシド、ヒドロキシド、イソシアネート、ブロックドイソシアネート、シロキサン、チオシアネート、チオール、尿素、ビニル、ビニルエーテル、およびこれらのブレンドから選択された官能基を有する主鎖および側鎖ポリマーおよびプレポリマーが含まれるが、これらに限定するものではない。本明細書に開示される様々な実施形態によるアライメント機構のコーティングで使用するのに適した、光架橋性液晶ポリマーおよびプレポリマーの例には、アクリレート、メタクリレート、アルキン、エポキシド、チオール、およびこれらのブレンドから選択された官能基を有するポリマーおよびプレポリマーが含まれる。
【0099】
本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用するのに適した液晶メソゲンには、サーモトロピック液晶メソゲンおよびリオトロピック液晶メソゲンが含まれる。さらに、本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用するのに適した液晶メソゲンの例には、コルマチック(columatic)(または棒状)液晶メソゲンおよびディスコチック(またはディスク状)液晶メソゲンが含まれる。
【0100】
開示された様々な実施形態と併せたアライメント媒体としての使用に適した光配向材料の例には、光配向性ポリマー網状構造が含まれる。適切な光配向性ポリマー網状構造の具体的な例には、アゾベンゼン誘導体、ケイ皮酸誘導体、クマリン誘導体、フェルラ酸誘導体、およびポリイミドが含まれる。例えば、一実施形態によれば、配向機構は、アゾベンゼン誘導体、ケイ皮酸誘導体、クマリン誘導体、フェルラ酸誘導体、およびポリイミドから選択された、少なくとも部分的に秩序化された光配向性ポリマー網状構造を含む、少なくとも1つの少なくとも部分的なコーティングを含むことができる。本明細書に開示される様々な実施形態と併せたアライメント媒体として使用することができる、ケイ皮酸誘導体の具体的な例には、ポリビニルシンナメート、およびパラメトキシケイ皮酸のポリビニルエステルが含まれる。
【0101】
本明細書で使用される「ラビング配向材料」という用語は、別の適切に織り込まれた材料で、材料の面の少なくとも一部をラビングする(rub)ことにより、少なくとも部分的に秩序化することができる材料を意味する。例えば、本明細書では限定的ではないが、一実施形態では、ラビング配向材料を、適切に織り込まれた布またはベルベットブラシでラビングすることができる。本明細書に開示される様々な実施形態と併せたアライメント媒体として使用するのに適したラビング配向材料の例には、(ポリ)イミド、(ポリ)シロキサン、(ポリ)アクリレート、および(ポリ)クマリンが含まれる。したがって、例えば、本明細書では限定的ではないが、アライメント媒体を含むコーティングは、ベルベットまたは布でラビングされたポリイミドを含むコーティングにして、ポリイミドの面の少なくとも一部が少なくとも部分的に秩序化されるようにすることができる。
【0102】
上記にて論じたように、本明細書に開示されるある実施形態による少なくとも1つの配向機構は、少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートを含むことができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、ポリビニルアルコールのシートは、シートを延伸することによって、少なくとも部分的に秩序化することができ、その後、シートを光学基材の面の少なくとも一部に結合して、配向機構を形成することができる。あるいは、秩序化されたポリマーシートは、例えば限定するものではないが押出しによる作製中にポリマー鎖を少なくとも部分的に秩序化する方法によって、作製することができる。さらに、少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートは、液晶材料のシートをキャスティングしまたはその他の方法で形成し、その後、例えばシートを少なくとも部分的に秩序化し、しかしそのシートを磁場、電場、または剪断力の少なくとも1種に曝すことにより、形成することができる。さらになお、少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートは、光配向法を使用して作製することができる。例えば、限定するものではないが、光配向材料のシートは、例えば、キャスティングし、その後、直線偏光された紫外線で露光することによって、少なくとも部分的に秩序化することにより、形成することができる。少なくとも部分的に秩序化したポリマーシートを形成するさらにその他の方法を、本明細書で以下に記述する。
【0103】
さらになお、本明細書に開示される様々な実施形態による配向機構は、少なくとも部分的に処理された面を含むことができる。本明細書で使用される「処理された面」という用語は、面の少なくとも一部に少なくとも1つの秩序化された領域が生成されるよう、物理的に変化させた面の少なくとも一部を指す。少なくとも部分的に処理された面の例には、少なくとも部分的にラビングされた面、少なくとも部分的にエッチングされた面、および少なくとも部分的にエンボス加工された面が含まれる。さらに、少なくとも部分的に処理された面は、例えばフォトリソグラフィまたは干渉法を使用して、パターニングすることができる。本明細書に開示される様々な実施形態による配向機構を形成するのに有用な、少なくとも部分的に処理した面の例には、化学的にエッチングされた面、プラズマエッチングされた面、ナノエッチングされた面(走査トンネル顕微鏡または原子間力顕微鏡を使用してエッチングされた面など)、レーザエッチングされた面、および電子線でエッチングされた面が含まれる。
【0104】
配向機構が少なくとも部分的に処理された面を含む、ある特定の実施形態では、配向機構をもたらすステップは、面の少なくとも一部に金属塩(金属酸化物または金属フッ化物など)を堆積し、その後、堆積物をエッチングして配向機構を形成するステップを含むことができる。金属塩を堆積するための適切な技法の例には、プラズマ気相成長法、化学気相成長法、およびスパッタリングが含まれる。エッチングプロセスの例は、上記にて述べる。
【0105】
本明細書で使用される「ラングミュア−ブロジェット膜」という用語は、面上の、1つまたは複数の少なくとも部分的に秩序化された分子膜を意味する。例えば、本明細書では限定的ではないが、ラングミュア−ブロジェット膜は、基材を液体に1回または複数回浸漬し、分子膜で少なくとも部分的に覆われるようにし、次いで基材を液体から取り出し、液体および基材の相対的表面張力によって、分子膜の分子が全体的方向に少なくとも部分的に秩序化するようにすることによって、形成することができる。本明細書で使用される分子膜という用語は、単分子膜(即ち、単層)並びに複数の単層を含む膜を指す。
【0106】
上述の配向機構の他に、本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子は、配向機構とフォトクロミック−2色性化合物(またはこれを含むコーティング)との間に介在する少なくとも部分的に秩序化されたアライメント転写(alignment transfer)材料を含む、少なくとも1つのコーティングをさらに含むことができる。さらになお、光学素子は、配向機構とフォトクロミック−2色性化合物との間に介在させたアライメント転写を含む、複数のコーティングを含むことができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、光学素子は、光学基材に接合された少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含むコーティングを含んだ少なくとも1つの配向機構と、この配向機構に接合された少なくとも部分的に秩序化されたアライメント転写材料を含むコーティングとを含むことができる。さらに、この実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、アライメント転写材料との相互作用によって、少なくとも部分的に位置合わせすることができる。より具体的には、本明細書では限定的ではないが、一実施形態において、アライメント転写材料の少なくとも一部は、アライメント媒体の少なくとも一部との相互作用によって位置合わせすることができ、フォトクロミック−2色性化合物の少なくとも一部は、アライメント転写材料の少なくとも部分的に位置合わせされた部分との相互作用によって、位置合わせすることができる。即ち、アライメント転写材料は、配向機構からフォトクロミック−2色性化合物への、適切な配置構成または位置の伝搬または転写を促進させることができる。
【0107】
本明細書に開示される様々な実施形態と併せた使用に適切なアライメント転写材料の例には、限定するものではないが、本明細書に開示されるアライメント媒体に関連した上述の液晶材料が含まれる。先に論じたように、液晶材料の分子と配向面とを位置合わせすることが可能である。即ち、液晶材料は、配向された面に付着させることができ、その後、液晶分子の長軸が、面の配向の全体的方向にほぼ平行な向きをとるように、位置合わせすることができる。したがって、アライメント転写材料が液晶材料を含む、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、液晶材料の少なくとも一部の分子の長軸が配向機構の少なくとも第1の全体的方向にほぼ平行になるように、液晶材料の少なくとも一部と配向機構の少なくとも一部とを位置合わせすることによって、液晶材料を少なくとも部分的に秩序化することができる。このようにして、配向機構の全体的方向を液晶材料に転写することができ、その全体的方向を別の構造または材料に転写することができる。さらに、少なくとも1つの配向機構が、あるデザインまたはパターンを一緒に形成する全体的方向を有する複数の領域を含む場合(前述のように)、そのデザインまたはパターンは、上記にて論じたように、液晶材料と配向機構の様々な領域とを位置合わせすることによって、液晶材料に転写することができる。さらに、必ずしも必要ではないが、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、液晶材料の少なくとも一部を、配向機構に対して少なくとも部分的に位置合わせしながら、磁場、電場、直線偏光赤外線、直線偏光紫外線、および直線偏光可視光線の少なくとも1つに曝すことができる。
【0108】
さらになお、基材に接合された少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物の他に、本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子は、基材に接合された、少なくとも部分的に秩序化された異方性材料を含むことができる。即ち、ある実施形態によれば、光学素子は、基材と、この基材に接合されて、CELL METHODにより決定したときに活性化状態で2.3超の平均吸収比を有している少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物と、この基材に接合された異方性材料とを含む。
【0109】
本明細書で使用される「異方性」という用語は、少なくとも1つの異なる方向で測定したときに値が異なる少なくとも1つの性質を有することを意味する。したがって、「異方性材料」は、少なくとも1つの異なる方向で測定したときに値が異なる少なくとも1つの性質を有する材料である。本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用するのに適した異方性材料の例には、限定するものではないが上述の液晶材料が含まれる。
【0110】
様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、異方性材料との相互作用によって位置合わせすることができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、フォトクロミック−2色性化合物の少なくとも一部は、2色性状態にあるフォトクロミック−2色性化合物の長軸が異方性材料の全体的方向に本質的に平行になるように、位置合わせすることができる。さらに、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物を、異方性材料に結合することができまたは異方性材料と反応させることができる。
【0111】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を、基材上のコーティングとして存在させることができる。例えば、一実施形態によれば、異方性材料を液晶材料にすることができ、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を、基材上の液晶コーティングとして存在させることができる。別の実施形態によれば、コーティングは、マトリックス相と、このマトリックス相に分布したゲスト相とを含む、相分離ポリマーコーティングにすることができる。本明細書では限定的ではないが、この実施形態によれば、マトリックス相は、少なくとも部分的に秩序化された液晶ポリマーを含むことができる。さらに、この実施形態によれば、ゲスト相は、異方性材料と、フォトクロミック−2色性化合物の少なくとも一部とを含むことができる。さらになお、上記にて論じたように、フォトクロミック−2色性化合物は、異方性材料との相互作用によって少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0112】
別の実施形態では、コーティングは、相互貫入ポリマー網目構造を含むことができる。この実施形態によれば、異方性材料およびポリマー材料は、相互貫入ポリマー網状構造を形成することができ、ポリマー材料の少なくとも一部と異方性材料とが相互貫入している。本明細書で使用される「相互貫入ポリマー網状構造」という用語は、複数のポリマーを巻き込む組合せを意味し、その少なくとも1種は架橋しており、互いには結合していないものである。したがって、本明細書で使用される相互貫入ポリマー網状構造という用語は、半相互貫入ポリマー網状構造を含む。例えば、L.H.Sperling、Introduction to Physical Polymer Science、John Wiley& Sons、New York(1986年)、46頁を参照されたい。さらに、この実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物の少なくとも一部は、異方性材料と位置合わせすることができる。さらになお、この実施形態によれば、ポリマー材料は、全体としてコーティングが異方性である限り、等方性または異方性にすることができる。そのようなコーティングを形成する方法を、本明細書で以下により詳細に記述する。
【0113】
本明細書に開示されるさらにその他の実施形態は、基材と、この基材に接合された少なくとも部分的に秩序化された配向機構と、この配向機構に接合されたコーティングとを含む光学素子を提供し、このコーティングは、秩序化された配向機構に少なくとも部分的に位置合わせされた異方性材料と、この異方性材料に少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物とを含む。
【0114】
先に論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態による配向機構は、第1の全体的方向を有する第1の秩序化された領域と、第1の全体的方向とは異なる第2の全体的方向を有する、第1の領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを含むことができる。さらに、配向機構は、特定のデザインまたはパターンを一緒に生成する多数の全体的方向を有する多数の秩序化された領域を含むことができる。この実施形態と併せて使用するのに適した配向機構の例は、上記にて詳述される。さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、アライメント転写材料を含むコーティングは、配向機構と、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングとの間に位置決めすることができる。さらに、配向機構の全体的方向またはパターンは、アライメントによって、アライメント転写材料に転写することができ、したがって配向機構の全体的方向を、アライメントによって、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングに転写することができる。即ち、コーティングの異方性材料は、アライメント転写材料と位置合わせすることができる。さらに、フォトクロミック−2色性化合物は、異方性材料との相互作用によって、少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0115】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、異方性材料は、フォトクロミック−2色性化合物が所望の速度で第1の状態から第2の状態に切り換わるよう適合させることができる。一般的に言えば、従来のフォトクロミック化合物は、化学線に応答して、それぞれが特徴的な吸収スペクトルを有している1つの異性体から別の異性体への変換を、受ける可能性がある。本明細書に開示される様々な実施形態によるフォトクロミック−2色性化合物は、類似した異性体変換を受ける。この異性体変換(および逆変換)が生じる速度または速さは、1つには、フォトクロミック−2色性化合物を取り囲む局所環境(即ち、ホスト)の性質に左右される。本明細書では限定的ではないが、本発明者らは、フォトクロミック−2色性化合物の変換速度が、1つにはホストの鎖セグメントの柔軟性に左右されることになり、即ち、ホストの鎖セグメントの移動性または粘度に左右されると考えられる。特に、本明細書では限定的ではないが、フォトクロミック−2色性化合物の変換速度は一般に、堅固なまたは剛性の鎖セグメントを有するホストの場合よりも、柔軟な鎖セグメントを有するホストにおいてより速くなると考えられる。したがって、異方性材料がホストである本明細書に開示されるある実施形態によれば、異方性材料は、フォトクロミック−2色性化合物が所望の速度で様々な異性体状態の間で変換されるよう適合することができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、異方性材料は、異方性材料の分子量および架橋密度の1つまたは複数を調節することによって、適合させることができる。
【0116】
別の実施形態によれば、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングは、マトリックス相と、例えば限定するものではないが、液晶ポリマーと、マトリックス相に分布したゲスト相とを含む、相分離ポリマーコーティングにすることができる。さらに、この実施形態によれば、ゲスト相は、異方性材料を含むことができる。さらになお、この実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物の大部分は、相分離ポリマーコーティングのゲスト相に含有することができる。先に論じたように、フォトクロミック−2色性化合物の変換速度は、1つにはこの化合物が含有されるホストに左右されるので、この実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物の変換速度は、大部分がゲスト相の性質に左右されることになる。
【0117】
例えば、一実施形態は、基材と、この基材に接合された少なくとも1つの配向機構と、この配向機構に接合されて相分離ポリマーを含むコーティングとを含む、光学素子を提供する。この実施形態によれば、相分離ポリマーは、その少なくとも一部が配向機構に対して少なくとも部分的に位置合わせされているマトリックス相と、このマトリックス相内に分散された異方性材料を含むゲスト相と含むことができる。さらに、この実施形態によれば、ゲスト相の異方性材料の少なくとも一部は、配向機構に対して少なくとも部分的に位置合わせすることができ、フォトクロミック−2色性化合物は、異方性材料に対して少なくとも部分的に位置合わせすることができる。さらになお、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、相分離ポリマーのマトリックス相は液晶ポリマーを含むことができ、ゲスト相の異方性材料は、液晶ポリマーおよび液晶メソゲンから選択することができる。そのような材料の例は、上記にて詳述される。さらに、本明細書では限定的ではないが、この実施形態によれば、相分離ポリマーを含むコーティングは、実質的に曇りをなくすことができる。曇りは、ASTM D 1003の透明プラスチックの曇りおよび視感透過率に関する標準試験法(Standard Test Method of Haze and Luminous Transmittance ofTransparent Plastics)により、平均して2.5度超だけ入射光から逸れた透過光のパーセンテージと定義される。ASTM D 1003による曇り測定を行うことができるデバイスの例は、BYK−Gardener製のHaze−Gard Plus(商標)である。
【0118】
さらに、本明細書では限定的ではないが、その他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、少なくとも部分的に秩序化されたホスト材料で包封またはコーティングすることができ、次いでこの包封またはコーティングされたフォトクロミック−2色性化合物を、別の材料内に分散させることができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、液晶材料など、比較的柔軟な鎖セグメントを有する少なくとも部分的に秩序化された異方性材料で包封またはオーバーコートすることができ、その後、比較的剛性の鎖セグメントを有する別の材料に分散または分布することができる。例えば、包封されたフォトクロミック−2色性化合物は、比較的剛性の鎖セグメントを有する液晶ポリマーに分散または分布することができ、その後、この混合物を基材に付着させて、コーティングを形成することができる。
【0119】
さらに別の実施形態によれば、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングは、相互貫入ポリマー網状構造コーティングにすることができる。例えば、コーティングは、異方性材料と相互貫入するポリマー材料を含むことができ、フォトクロミック−2色性化合物は、異方性材料と少なくとも部分的に位置合わせすることができる。そのような相互貫入網状構造コーティングを形成する方法を、以下により詳細に記述する。
【0120】
本明細書に開示されるさらにその他の実施形態は、基材と、この基材に接合された少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含む第1のコーティングと、アライメント媒体に接合されかつ少なくとも部分的に位置合わせされたアライメント転写材料を含む第2のコーティングと、アライメント転写材料に接合された第3のコーティングとを含む光学素子を提供し、この第3のコーティングは、アライメント転写材料に少なくとも部分的に位置合わせされた異方性材料と、異方性材料に少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物とを含むものである。
【0121】
本明細書では限定的ではないが、様々な実施形態によれば、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含む第1のコーティングは、最終適用例および/または用いられる加工装置に応じて広く様々に変わる厚さを有することができる。例えば、一実施形態では、コーティングの厚さは少なくとも0.5ナノメートルから10,000ナノメートルの範囲であることができる。別の実施形態では、コーティングは、少なくとも0.5ナノメートルから1000ナノメートルの範囲の厚さを有することができる。さらに別の実施形態では、コーティングは、少なくとも2ナノメートルから500ナノメートルの範囲の厚さを有することができる。さらに別の実施形態では、コーティングは、100ナノメートルから500ナノメートルの範囲の厚さを有することができる。さらに、様々な実施形態によれば、光学素子は、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含む複数のコーティングを含むことができる。さらに、コーティングのそれぞれは、複数のその他のコーティングと同じまたは異なる厚さを有することができる。
【0122】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、アライメント転写材料を含む第2のコーティングは、最終適用例および/または用いられる加工装置に応じて広く変わる厚さを有することができる。例えば、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント転写材料を含むコーティングの厚さは、0.5ミクロンから1000ミクロンの範囲であることができる。別の実施形態では、コーティングは、1から25ミクロンの範囲の厚さを有することができる。さらに別の実施形態では、コーティングは、5から20ミクロンの範囲の厚さを有することができる。さらに、様々な実施形態によれば、光学素子は、アライメント転写材料を含む複数のコーティングを含むことができる。さらに、複数のコーティングのそれぞれは、複数のその他のコーティングと同じまたは異なる厚さを有することができる。
【0123】
さらになお、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含む第3の少なくとも部分的なコーティングは、最終適用例および/または用いられる加工装置に応じて、広く様々に変わる厚さを有することができる。一実施形態では、少なくとも部分的に位置合わせされた異方性材料と、フォトクロミック−2色性化合物とを含むコーティングは、少なくとも0.5ミクロンから1000ミクロンの厚さを有することができる。その他の実施形態によれば、第3のコーティングは、1ミクロンから25ミクロンの範囲の厚さを有することができる。さらにその他の実施形態によれば、第3のコーティングは、5ミクロンから20ミクロンの範囲の厚さを有することができる。さらに、様々な実施形態によれば、光学素子はそのようなコーティングを複数有することができ、そのコーティングのそれぞれは、複数のその他のコーティングと同じまたは異なる厚さを有することができる。適切なフォトクロミック−2色性化合物の例は、上記にて詳述される。
【0124】
さらに、様々な実施形態によれば、第3のコーティングの他に、第1および第2のコーティングのどちらかまたは両方は、第3のコーティングのフォトクロミック−2色性化合物と同じまたは異なるフォトクロミック−2色性化合物含むことができる。さらになお、様々な実施形態によれば、上述のコーティングのいずれかは、少なくとも1種の添加剤、少なくとも1種の従来の2色性化合物、および/または少なくとも1種の従来のフォトクロミック化合物を、さらに含むことができる。適切な添加剤、従来の2色性化合物、および従来のフォトクロミック化合物の例は、上述の通りである。さらに、先に論じたように、上述の第1、第2、および第3のコーティングの他に、本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子は、プライマーコーティング、反射防止コーティング、フォトクロミックコーティング、直線偏光コーティング、円偏光コーティング、楕円偏光コーティング、遷移コーティング、および保護コーティングをさらに含むことができる。そのようなコーティングの例を、上記にて示す。
【0125】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、基材と、この基材に接合された少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートと、このポリマーシートに接合されかつCELL METHODにより決定したときに活性化状態で2.3超の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物とを含む、複合光学素子を提供する。例えば、本明細書では限定的ではないが、一実施形態によれば、延伸ポリマーシートの配向ポリマー鎖によって少なくとも部分的に位置合わせされた、少なくとも1種のフォロクロミック−2色性化合物を含有する延伸ポリマーシートを、基材に接合することができる。
【0126】
さらに、様々な実施形態によれば、複合光学素子は、その少なくとも1つが少なくとも部分的に秩序化された、基材に接合された複数のポリマーシートを含むことができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、複合光学素子は、基材と、この基材に接合された、2つの寸法安定なまたは「剛性の」ポリマーシート間に介在する少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含む少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートを含むことができる。その他の実施形態によれば、複合光学素子は、基材に接合された、少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含む2つ以上の少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートを含むことができる。さらに、2つ以上の少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートは、同じ全体的方向または異なる全体的方向を有することができ、同じフォトクロミック−2色性化合物または異なるフォトクロミック−2色性化合物を含むことができる。さらになお、ポリマーシートは、基材上に積層しもしくは層状化することができ、または基材上に互いに隣接させて位置決めすることができる。
【0127】
この実施形態と併せて使用することができるポリマーシートの例には、限定するものではないが、延伸ポリマーシート、秩序化液晶ポリマーシート、および光配向ポリマーシートが含まれる。本明細書に開示される様々な実施形態によるポリマーシートの形成で使用することができる、液晶材料および光配向材料以外のポリマー材料の例には、限定するものではないが、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアクリレート、およびポリカプロラクタムが含まれる。ポリマーシートを秩序化する方法の例を、以下に詳述する。
【0128】
本明細書に開示されるさらにその他の実施形態は、基材と、この基材に接合された少なくとも1つのシートとを含む複合光学素子を提供し、このシートは、少なくとも第1の全体的方向を有する少なくとも部分的に秩序化された液晶ポリマーと、この液晶ポリマー内に分布された第2の全体的方向を有する少なくとも部分的に秩序化された液晶ポリマーと、液晶材料に少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物とを含み、この第2の全体的方向は、第1の全体的方向にほぼ平行である。
【0129】
本発明の光学素子は、さらに、フォトクロミック直線偏光素子に接続された複屈折層(b)を含む。複屈折層は、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能である。円偏光素子が望まれる場合、複屈折層は、4分の1波長板を含む。補償板もしくは層または遅延板もしくは層とも呼ばれる複屈折層は、1つのシートで構成されていてもよく、または2つ以上の多層構造であってもよい。
【0130】
本発明のある実施形態では、複屈折層(b)は、第1の全体的方向を有する第1の秩序化領域と、層内に所望のパターンが形成されるように、第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有して、第1の秩序化領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化領域とを有する層を含む。
【0131】
複屈折層の調製に使用される材料は、特に制限されるわけではなく、当技術分野で公知の任意の複屈折材料であってもよい。例えば、ポリマーフィルム、液晶フィルム、自己集合性材料、または液晶材料が位置合わせされるフィルムを、使用することができる。特定の複屈折層の例には、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,864,932号の第3欄、第60行から第4欄、第64行;米国特許第5,550,661号の第4欄、第30行から第7欄、第2行;米国特許第5,948,487号の第7欄、第1行から第10欄、第10行に記載されているものが含まれる。
【0132】
特定の複屈折フィルムの例には、(株)日東(日本)、またはNitto Denko America,Inc.、New Brunswick、New Jerseyから入手可能な,モデルNo.NRF−140、正の複屈折一軸フィルムが含まれる。GRAFIX Plastics,a division of GRAFIX,Inc.、Cleveland、Ohioから入手可能な、OPTIGRAFIX円偏光フィルムも適切である。
【0133】
複屈折層(b)の調製に使用される特定のポリマーシートは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C〜C12)アルキルメタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート)、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラールと、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシル化多価アルコールモノマー、およびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーからなる群のメンバーのポリマー;特に自己集合性材料、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリアルケン、ポリアルキレン−酢酸ビニル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、これらのコポリマー、および/またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0134】
複屈折層(b)は、所望の合成(resultant)偏光;即ち円または楕円偏光が得られるように、複屈折層の遅軸方向(屈折率が平面内で最大である方向)が偏光子のアライメント方向に対して配向するように、フォトクロミック直線偏光素子に付着させてもよい。例えば、4分の1波長板は、偏光子のフォトクロミック染料のアライメント方向に対して45°±5°の角度で配向させることが可能であり、しばしば45°±3°である。
【0135】
あるいは、光学素子の合成偏光は、複屈折層の厚さを設定することによって決定してもよい。例えば、円偏光素子を得るために、複屈折層の厚さは、新生(emerging)屈折光線が4分の1波長だけ相からずれるようなものである。
【0136】
次に、光学素子およびデバイスを作製する方法の実施形態について述べる。一実施形態は、基材上に、少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成するステップを含む、光学素子を作製する方法を提供する。本明細書で使用される「上」という用語は、対象(基材など)に直接接触している状態、または、1つもしくは複数のコーティングもしくは構造であってその少なくとも1つが対象に直接接触しているものを介して、対象に間接的に接触している状態を意味する。さらに、この実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物の他に、少なくとも部分的に秩序化された異方性材料を、基材に接合することができる。
【0137】
この実施形態によれば、コーティングは、少なくとも1.5の平均吸収比を有することができる。さらに、本明細書に開示される素子およびデバイスを作製する方法の、このおよびその他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定したときに活性化状態で2.3超の平均吸収比を有することができる。本明細書に開示される素子およびデバイスを作製する方法と併せて有用な、フォトクロミック−2色性化合物は、上記にて詳述される。
【0138】
本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成するステップは、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を基材に付着させ、異方性材料を少なくとも部分的に秩序化し、フォトクロミック−2色性化合物と異方性材料とを少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。本明細書に開示される様々な実施形態による方法と併せて使用することができる、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を基材に付着させる方法には、回転塗布、噴霧塗布、噴霧および回転塗布、カーテンコーティング、フローコーティング、浸漬塗布、射出成型、キャスティング、ロール塗布、ワイヤ塗布、およびオーバーモールディングが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0139】
その他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を基材に付着させるステップは、型に異方性材料のコーティングを形成するステップを含むことができ、これは剥離材料で処理できるものである。その後、異方性材料を少なくとも部分的に秩序化し(以下により詳細に論じるように)、少なくとも部分的に硬化することができる。その後、例えば基材形成材料を型の中にキャスティングすることによって、基材をコーティング上に形成することができる(即ち、オーバーモールディング)。次いで基材形成材料を少なくとも部分的に硬化して、基材を形成することができる。その後、基材および異方性材料のコーティングを型から剥離することができる。さらに、この実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、異方性材料と共に型に付着させることができ、または、異方性材料を型に付着させた後、異方性材料が少なくとも部分的に秩序化された後、もしくは秩序化された異方性材料のコーティングを有する基材が型から剥離された後に、異方性材料に吸収させることができる。
【0140】
本明細書に開示されるその他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成するステップは、異方性材料を基材に付着させ、フォトクロミック−2色性化合物を異方性材料に吸収させ、異方性材料を少なくとも部分的に秩序化し、フォトクロミック−2色性化合物と異方性材料とを少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。フォトクロミック−2色性化合物を様々なコーティングに吸収させる方法を、本明細書で以下により詳細に記述する。
【0141】
異方性材料を秩序化する方法は、異方性材料を、磁場、電場、直線偏光紫外線、直線偏光赤外線、直線偏光可視光線、および剪断力の少なくとも1種に曝すステップを含む。さらに、異方性材料は、異方性材料と別の材料または構造とを位置合わせすることによって、少なくとも部分的に秩序化することができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、異方性材料は、異方性材料と、限定するものではないが先に論じた配向機構などの配向機構とを、位置合わせすることによって、少なくとも部分的に秩序化することができる。
【0142】
前述のように、異方性材料の少なくとも一部を秩序化することにより、少なくとも部分的に、フォトクロミック−2色性化合物を異方性材料の内部に含有させまたはその他の手法で異方性材料に接合することが可能である。必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、活性化状態にあるときに少なくとも部分的に位置合わせすることができる。さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を基材に付着させるステップは、異方性材料の秩序化および/またはフォトクロミック−2色性化合物の位置合わせと本質的に同時に、前に、または後に、行うことができる。
【0143】
例えば、一実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を付着させるステップは、異方性材料の秩序化およびフォトクロミック−2色性化合物の位置合わせと本質的に同時に行うことができる。より具体的には、この限定的実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料は、付着中に異方性材料に剪断力を導入することができるコーティング技法を使用して、加えられる剪断力の方向とほぼ平行に異方性材料を少なくとも部分的に秩序化できるよう、基材に付着させることができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料の溶液または混合物(任意選択で溶媒または担体中)は、付着される材料に対する基材表面の相対運動により、付着される材料に導入されるよう、基材上にカーテンコーティングすることができる。剪断力は、面の運動の方向に本質的に平行な全体的方向で、異方性材料を秩序化することができる。上記にて論じたように、この手法で異方性材料の少なくとも一部を秩序化することにより、異方性材料に含有されまたは接合されたフォトクロミック−2色性化合物を、異方性材料によって位置合わせすることができる。さらに、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物が活性化状態にあるように、カーテンコーティングプロセス中に化学線にフォトクロミック−2色性化合物を曝すことにより、活性化状態にある間にフォトクロミック−2色性化合物の少なくとも部分的なアライメントを実現することができる。
【0144】
異方性材料の秩序化およびフォトクロミック−2色性化合物の位置合わせの前に、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を基材に付着させる別の実施形態では、材料を付着させるステップは、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料の溶液または混合物(任意選択で、溶媒または担体中)を基材上に回転塗布するステップを含むことができる。その後、この実施形態によれば、異方性材料は、例えば異方性材料を磁場、電場、直線偏光紫外線、直線偏光赤外線、直線偏光可視光線、または剪断力に曝すことによって、少なくとも部分的に秩序化することができる。さらに、異方性材料は、異方性材料と別の材料または構造、例えば配向機構とを位置合わせすることによって、少なくとも部分的に秩序化することができる。
【0145】
基材に付着される前に、フォトクロミック−2色性化合物が少なくとも部分的に位置合わせされ、異方性材料が少なくとも部分的に秩序化される、さらに別の実施形態では、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料の溶液または混合物(任意選択で、溶媒または担体中)を、秩序化されたポリマーシートに付着させて、コーティングを形成することができる。その後、異方性材料をポリマーシートに位置合わせすることができる。ポリマーシートは、その後、例えば限定するものではないがラミネート法またはボンディングによって基材に付着させることができる。あるいは、コーティングは、限定するものではないがホットスタンピングなどの当技術分野で公知の方法により、ポリマーシートから基材に転写することができる。ポリマーシートを付着させるその他の方法を、より詳細に本明細書に記述する。
【0146】
別の実施形態では、フォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を基材に付着させるステップは、液晶材料を含むマトリックス相形成材料と、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むゲスト相形成材料とを含む、相分離ポリマー系を付着させるステップを含むことができる。相分離ポリマー系を付着させた後、この実施形態によれば、マトリックス相の液晶材料およびゲスト相の異方性材料は少なくとも部分的に秩序化され、フォトクロミック−2色性化合物がゲスト相の異方性材料に位置合わせされるようになる。相分離ポリマー系のマトリックス相形成材料およびゲスト相形成材料を少なくとも部分的に秩序化する方法は、相分離ポリマー系を含むコーティングを、磁場、電場、直線偏光赤外線、直線偏光紫外線、直線偏光可視光線、および剪断力の少なくとも1種に曝すステップを含む。さらに、マトリックス相形成材料およびゲスト相形成材料を少なくとも部分的に秩序化するステップは、以下により詳細に記述されるように、その部分と配向機構とを少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。
【0147】
マトリックス相形成材料およびゲスト相形成材料を少なくとも部分的に秩序化した後、ゲスト相形成材料を、重合誘起相分離および/または溶媒誘起相分離によって、マトリックス相形成材料から分離することができる。明確にするために、マトリックスおよびゲスト相形成材料の分離について、マトリックス相形成材料から分離するゲスト相形成材料に関して本明細書に記述するが、この言語は、2種の相形成材料間の任意の分離を包含するものと理解すべきである。即ち、この言語は、マトリックス相形成材料からのゲスト相形成材料の分離と、ゲスト相形成材料からのマトリックス相形成材料の分離、並びに両方の相形成材料の同時分離およびこれらの組合せを包含するものである。
【0148】
本明細書に開示される様々な実施形態によれば、マトリックス相形成材料は、液晶モノマー、液晶プレポリマー、および液晶ポリマーから選択された液晶材料を含むことができる。さらに、様々な実施形態によれば、ゲスト相形成材料は、液晶メソゲン、液晶モノマー、液晶ポリマーおよびプレポリマーから選択された液晶材料を含むことができる。そのような材料の例は、上記にて詳述される。
【0149】
ある特定の実施形態では、相分離ポリマー系は、液晶モノマーを含むマトリックス相形成材料、液晶メソゲンを含むゲスト相形成材料、および少なくとも1種のフォトクロミック−2色性化合物の混合物を含むことができる。この実施形態によれば、ゲスト相形成材料の少なくとも一部をマトリックス相形成材料の少なくとも一部から分離させるステップは、重合誘起相分離を含むことができる。即ち、マトリックス相の液晶モノマーの少なくとも一部を重合することができ、それによって、ゲスト相形成材料の液晶メソゲンから分離することができる。本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用することができる、重合方法には、光誘起重合および熱誘起重合が含まれる。
【0150】
別の特定の実施形態では、相分離ポリマー系は、液晶モノマーを含むマトリックス相形成材料と、マトリックス相の液晶モノマーとは異なる機能性を有する低粘度液晶モノマーを含むゲスト相形成材料と、少なくとも1種のフォトクロミック−2色性化合物との混合物を含むことができる。本明細書で使用される「低粘度液晶モノマー」という用語は、室温で自由に流動する液晶モノマー混合物または溶液を指す。この実施形態によれば、ゲスト相形成材料の少なくとも一部をマトリックス相形成材料の少なくとも一部から分離させるステップは、重合誘起相分離を含むことができる。即ち、マトリックス相の液晶モノマーの少なくとも一部は、ゲスト相の液晶モノマーを重合させない条件下で重合することができる。マトリックス相形成材料の重合中、ゲスト相形成材料は、マトリックス相形成材料から分離することになる。その後、ゲスト相形成材料の液晶モノマーは、分離重合プロセスで重合することができる。
【0151】
別の特定の実施形態では、相分離ポリマー系は、液晶ポリマーを含むマトリックス相形成材料と、マトリックス相形成材料の液晶ポリマーとは異なる液晶ポリマーを含むゲスト相形成材料と、フォトクロミック−2色性化合物との少なくとも1種の共通溶媒に溶かした溶液を含むことができる。この実施形態によれば、ゲスト相形成材料の少なくとも一部をマトリックス相形成材料から分離させるステップは、溶媒誘起相分離を含むことができる。即ち、共通溶媒は、液晶ポリマーの混合物から蒸発することができ、それによって、2相を互いから分離させることができる。
【0152】
あるいは、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成するステップは、異方性材料を基材に付着させ、フォトクロミック−2色性化合物を異方性材料に吸収させ、異方性材料を少なくとも部分的に秩序付け、フォトクロミック−2色性化合物と異方性材料とを少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。さらに、本明細書では限定的ではないが、異方性材料を少なくとも部分的に秩序付けるステップは、そこにフォトクロミック−2色性化合物を吸収させる前に行うことができる。さらになお、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、活性化状態である間に少なくとも部分的に位置合わせすることができる。異方性材料を付着させ位置合わせする方法を、本明細書で以下に記述する。
【0153】
例えば、一実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、例えばフォトクロミック−2色性化合物を担体に溶かした溶液または混合物を異方性材料の一部に付着させ、加熱しながらまたは加熱なしで、フォトクロミック−2色性化合物を異方性材料に拡散させることによって異方性材料に吸収させることができる。さらに、この実施形態によれば、異方性材料は、上述の相分離ポリマーコーティングの一部にすることができる。
【0154】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、少なくとも1つの配向機構を基材に与え、その後、配向機構上で少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成するステップを含む、光学素子を作製する方法を提供する。本明細書に開示されるこのおよびその他の実施形態によれば、基材に配向機構を与えるステップは、基材上で少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含むコーティングを形成するステップと、少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートを基材に付着させるステップと、基材を処理するステップと、ラングミュア−ブロジェット膜を基材上に形成するステップの少なくとも1つを含むことができる。
【0155】
一実施形態によれば、基材上に配向機構を与えるステップは、基材上に少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含むコーティングを形成するステップを含むことができる。さらに、この実施形態によれば、コーティングを形成するステップは、基材にアライメント媒体を付着させ、アライメント媒体を少なくとも部分的に秩序化するステップを含むことができる。本明細書に開示される、このおよびその他の実施形態と併せて使用することができるアライメント媒体を秩序化する方法には、限定するものではないが、アライメント媒体を、直線偏光紫外線、直線偏光赤外線、直線偏光可視光線、磁場、電場、および剪断力の少なくとも1種に曝すステップが含まれる。さらに、アライメント媒体を秩序化するステップは、例えば、限定するものではないが、アライメント媒体の少なくとも一部をエッチングまたはラビングすることによって、アライメント媒体を含むコーティングを処理するステップを含むことができる。
【0156】
例えば、本明細書では限定的ではないが、配向機構が、光配向材料(限定するものではないが、光配向性ポリマー網状構造など)であるアライメント媒体を含むコーティングを含む一実施形態によれば、配向機構を与えるステップは、基材上に光配向材料を含むコーティングを形成し、この材料を直線偏光紫外線で露光することによって光配向材料を少なくとも部分的に秩序付けるステップを含む。その後、フォトクロミック−2色性化合物を、光配向材料に付着させ、少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0157】
必ずしも必要ではないが、配向機構を与えるステップが、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体のコーティングを形成するステップを含む様々な実施形態によれば、このアライメント媒体は、少なくとも部分的に硬化することができる。さらに、アライメント媒体を硬化するステップは、アライメント媒体を位置合わせするのと本質的に同時に行うことができ、またはアライメント媒体を位置合わせした後に行うことができる。さらになお、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、アライメント媒体を硬化するステップは、重合性成分の重合反応または架橋が触媒もしくは開始剤を用いてまたは用いない状態で開始されるように、この媒体を赤外線、紫外線、γ線、マイクロ波、または電子放射線に曝すことによって、媒体を少なくとも部分的に硬化するステップを含むことができる。望みまたは必要な場合には、この後、加熱ステップを行うことができる。
【0158】
上記にて論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、基材上に配向機構を与えた後、少なくとも部分的に位置合わせしたフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングが、配向機構上に形成される。そのようなコーティングを形成する方法は、上記にて詳述される基材上で少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成する方法を含む。
【0159】
例えば、本明細書では限定的ではないが、フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成するステップは、配向機構上に、フォトクロミック−2色性化合物を含む組成物を回転塗布し、噴霧塗布し、噴霧および回転塗布し、カーテンコーティングし、フローコーティングし、浸漬塗布し、射出成型し、キャスティングし、ロール塗布し、ワイヤ塗布し、およびオーバーモールディングし、その後、フォトクロミック−2色性化合物と配向機構および/または別の材料もしくは構造(存在する場合には、アライメント転写材料など)とを、磁場、電場、直線偏光赤外線、直線偏光紫外線、直線偏光可視光線、または剪断力に曝してまたは曝さずに、位置合わせするステップを含むことができる。
【0160】
一実施形態によれば、配向機構上で少なくとも部分的に位置合わせされるフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成するステップは、重合性組成物、異方性材料、およびフォトクロミック−2色性化合物を配向機構上に付着させるステップを含むことができる。その後、異方性材料は、配向機構と少なくとも部分的に位置合わせすることができ、フォトクロミック−2色性化合物は異方性材料と少なくとも部分的に位置合わせすることができる。異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を位置合わせした後、コーティングを、2重硬化プロセスにかけることができ、異方性材料および重合性組成物を、少なくとも2つの硬化方法を使用して、少なくとも部分的に硬化する。適切な硬化方法の例には、コーティングを紫外線、可視光線、γ線、マイクロ波放射線、電子放射線、または熱エネルギーに曝すステップが含まれる。
【0161】
例えば、本明細書では限定的ではないが、一実施形態では、異方性材料を、紫外線または可視光線で露光して、異方性材料を少なくとも部分的に硬化することができる。その後、重合性組成物は、熱エネルギーに曝すことによって、少なくとも部分的に硬化することができる。さらに、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、フォトクロミック−2色性化合物が第1の状態から第2の状態に切り換わるよう十分に、しかし異方性材料が配向機構と少なくとも部分的に位置合わせされる間は異方性材料が硬化するには不十分な状態で(上記にて論じたように)、コーティングを紫外線で露光することにより、活性化状態にある間に異方性材料と少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0162】
ある特定の実施形態では、重合性組成物を、ジヒドロキシおよびイソシアネートモノマーにすることができ、異方性材料は、液晶モノマーを含むことができる。この実施形態によれば、重合性組成物、異方性材料、およびフォトクロミック−2色性化合物を配向機構に付着した後、異方性材料を配向機構に少なくとも部分的に位置合わせすることができ、フォトクロミック−2色性化合物は、異方性材料に少なくとも部分的に位置合わせすることができる。さらに、アライメント後、異方性材料が少なくとも部分的に硬化するよう十分に、コーティングを紫外線または可視光線で露光することができる。さらに、異方性材料を硬化する前、間、または後に、コーティングを熱エネルギーに曝すことによって、重合性組成物を少なくとも部分的に硬化することができる。
【0163】
別の実施形態では、2重硬化プロセスは、まず、重合性組成物が少なくとも部分的に硬化するよう十分に、重合性組成物を熱エネルギーに曝すステップを含むことができる。その後、異方性材料を紫外線または可視光線で露光して、異方性材料を少なくとも部分的に硬化することができる。さらに、異方性材料は、コーティングを熱エネルギーに曝す前、間、または後に、および異方性材料を硬化する前に、少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0164】
さらに別の実施形態では、2重硬化プロセスは、例えばコーティングを紫外線または可視光線および熱エネルギーに同時に曝すことによって、異方性材料を硬化するのと本質的に同時に、重合性組成物を硬化するステップを含むことができる。
【0165】
さらに、相互貫入ポリマー網状構造を含むコーティングに関して既に論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングが全体として異方性である限り、重合性組成物は、等方性材料または異方性材料にすることができる。
【0166】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態による光学素子およびデバイスを作製する方法は、配向機構を基材に与える前にまたはその上にフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成する前に、基材上にプライマーコーティングを形成するステップをさらに含むことができる。さらに、フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、円偏光コーティング、楕円偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング、および保護コーティングから選択された少なくとも1種の追加のコーティングを、基材上および/またはフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティング上に形成することができる。適切なプライマーコーティング、フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング、および保護コーティングの例は、全て、既に記述される。
【0167】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、基材上にコーティングを形成し、そのコーティングを、化学線に応答して第1の状態から第2の直線偏光状態に切り換わり熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように適合させるステップを含む、光学素子を作製する方法を提供する。一実施形態によれば、基材上にコーティングを形成し、このコーティングが化学線に応答して第1の状態から第2の直線偏光状態に切り換わりかつ熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように適合させるステップは、本質的に同時に行うことができる。別の実施形態によれば、基材上にコーティングを形成するステップは、このコーティングが化学線に応答して第1の状態から第2の直線偏光状態に切り換わりかつ熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように適合させる前に、行われる。さらに別の実施形態によれば、基材上にコーティングを形成するステップは、このコーティングが化学線に応答して第1の状態から第2の直線偏光状態に切り換わりかつ熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように適合させた後に行われる。
【0168】
一実施形態では、基材上にコーティングを形成するステップは、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を基材に付着させるステップを含むことができ、コーティングを、化学線に応答して第1の状態から第2の直線偏光状態に切り換わりかつ熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように適合させるステップは、フォトクロミック−2色性化合物を少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。さらに、この実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物を少なくとも部分的に位置合わせするステップは、異方性材料を少なくとも部分的に秩序化し、フォトクロミック−2色性化合物と異方性材料とを少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。さらになお、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、例えば、フォトクロミック−2色性化合物を位置合わせする間にフォトクロミック−2色性化合物が第1の状態から第2の状態に切り換わるよう十分に、フォトクロミック−2色性化合物を化学線に曝すことによって、活性化状態にある間に位置合わせすることができる。
【0169】
別の実施形態では、基材上にコーティングを形成するステップは、アライメント媒体を基材に付着させるステップを含むことができ、コーティングを、化学線に応答して第1の状態から第2の直線偏光状態に切り換わりかつ熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように適合させるステップは、アライメント媒体を少なくとも部分的に秩序化し、アライメント媒体を含むコーティングにフォトクロミック−2色性化合物を付着させ、フォトクロミック−2色性化合物を少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。
【0170】
一実施形態では、アライメント媒体を含むコーティングにフォトクロミック−2色性化合物を付着させるステップは、アライメント媒体を含むコーティング上にフォトクロミック−2色性化合物および異方性材料を含むコーティングを形成するステップを含むことができる。さらに、フォトクロミック−2色性化合物を少なくとも部分的に位置合わせするステップは、異方性材料とアライメント媒体とを位置合わせするステップを含むことができる。さらに、必ずしも必要ではないが、アライメント媒体を含むコーティングは、フォトクロミック−2色性化合物を付着させる前に、少なくとも部分的に硬化することができる。
【0171】
さらに、または代替として、フォトクロミック−2色性化合物は、吸収によって、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含むコーティングに付着させることができる。適切な吸収技法は、例えば、その明細書が参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第5,130,353号および第5,185,390号に記載されている。例えば、本明細書では限定的ではないが、フォトクロミック−2色性化合物は、未処理のフォトクロミック−2色性化合物としてまたはポリマーもしくはその他の有機溶媒担体に溶解したフォトクロミック−2色性化合物を付着させることによって、少なくとも部分的に秩序化されたアライメント媒体を含むコーティングに付着させ、フォトクロミック−2色性化合物を、加熱しながらまたは加熱せずに、少なくとも部分的に秩序化したアライメント媒体を含むコーティング中に拡散させることができる。さらに、望む場合には、フォトクロミック−2色性化合物は、フォトクロミック化合物が拡散中に第1の状態から第2の状態に切り換わるよう十分に、化学線に曝すことができる。
【0172】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、基材上にアライメント媒体を含むコーティングを形成し、アライメント媒体を少なくとも部分的に秩序化し、アライメント媒体を含むコーティング上にアライメント転写材料を含むコーティングを形成し、アライメント転写材料とアライメント媒体とを少なくとも部分的に位置合わせし、アライメント転写材料上に異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを形成し、異方性材料とアライメント転写材料とを少なくとも部分的に位置合わせし、フォトクロミック−2色性化合物と異方性材料とを少なくとも部分的に位置合わせするステップを含む、光学素子を作製する方法を提供する。
【0173】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、アライメント転写材料を含むコーティングを形成するステップは、アライメント転写材料を含む、2から8ミクロンの範囲の厚さを有する第1のコーティングを形成し、第1のコーティングのアライメント転写材料とアライメント媒体とを少なくとも部分的に位置合わせし、第1のコーティングのアライメント転写材料を硬化するステップを含むことができる。その後、5ミクロン超から20ミクロンの範囲の厚さを有しかつアライメント転写材料を含む第2のコーティングを、第1のコーティングに付着させることができ、第2のコーティングのアライメント転写材料を、第1のコーティングのアライメント転写材料に少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0174】
本明細書に開示されるさらにその他の実施形態は、少なくとも1つの少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートを基材の少なくとも一部に接合するステップを含む、複合光学素子を作製する方法を提供し、この少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートは、その少なくとも一部に接合された少なくとも1種の少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含んでおり、CELL METHODにより決定した場合に活性化状態で2.3超の平均吸収比を有している。本明細書では限定的ではないが、この実施形態によれば、少なくとも1つの少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートは、例えば、延伸ポリマーシート、光配向ポリマーシート、少なくとも部分的に秩序化された相分離ポリマーシート、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0175】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、第1の全体的方向を有する少なくとも部分的に秩序化された液晶ポリマーと、液晶ポリマー中に分布した少なくとも部分的に秩序化された液晶材料と、液晶材料に少なくとも部分的に位置合わせされるフォトクロミック−2色性化合物とを含むシートを、基材に接合するステップを含む、複合光学素子を作製する方法を提供する。さらに、この実施形態によれば、液晶ポリマー中に分布した液晶材料は、液晶ポリマーにほぼ平行な第2の全体的方向を有することができる。
【0176】
例えば、本明細書では限定的ではないが、一実施形態によれば、シートを形成するステップは、液晶材料を含むマトリックス相形成材料と、液晶材料を含むゲスト相形成材料と、少なくとも1種のフォトクロミック−2色性化合物とを含む相分離ポリマー系を、基材に付着させるステップを含むことができる。その後、マトリックス相形成材料およびゲスト相形成材料は、少なくとも部分的に秩序化され、フォトクロミック−2色性化合物は、ゲスト相形成材料と少なくとも部分的に位置合わせすることができる。アライメント後、ゲスト相形成材料は、重合誘起相分離および/または溶媒誘起相分離によって、マトリックス相形成材料から分離することができ、相分離ポリマーコーティングは、基材から除去されてシートを形成することができる。
【0177】
あるいは、相分離ポリマー系を基材上に付着させ、上記にて論じたように秩序化し位置合わせし、その後、基材から除去して相分離ポリマーシートを形成することができる。その後、フォトクロミック−2色性化合物を、シートに吸収させることができる。あるいは、または追加として、フォトクロミック−2色性化合物は、シートが形成されるよう基材からコーティングを除去する前に、コーティングに吸収させることができる。
【0178】
さらに別の実施形態によれば、シートを形成するステップは、少なくとも部分的に秩序化した液晶ポリマーシートを形成し、液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物を液晶ポリマーシートに吸収させるステップを含むことができる。例えば、この実施形態によれば、液晶ポリマーを含むシートは、形成中に液晶ポリマーを少なくとも部分的に秩序化することができる、ポリマーシートを形成する方法によって、例えば押出しによって、形成しかつ少なくとも部分的に秩序化することができる。あるいは、液晶ポリマーは、基材上にキャスティングし、上述の液晶材料を秩序化する方法の1つによって少なくとも部分的に秩序化することができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、液晶材料は、磁場または電場に曝すことができる。少なくとも部分的に秩序化した後、液晶ポリマーを少なくとも部分的に硬化し、基材から除去して、少なくとも部分的に秩序化した液晶ポリマーマトリックスを含むシートを形成することができる。さらになお、液晶ポリマーシートをキャスティングし、少なくとも部分的に硬化し、その後、延伸して、少なくとも部分的に秩序化した液晶ポリマーを含むシートを形成することができる。
【0179】
少なくとも部分的に秩序化した液晶ポリマーを含むシートを形成した後、液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物を、液晶ポリマーマトリックスに吸収させることができる。例えば、本明細書では限定的ではないが、液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物は、担体に溶かした液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物の溶液または混合物を、液晶ポリマーに付着させ、その後、加熱しながらまたは加熱せずに、液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物を液晶ポリマーシート内に拡散させることによって、液晶ポリマーに吸収させることができる。あるいは、液晶ポリマーを含むシートを、担体に溶かした液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物の溶液または混合物に浸漬することができ、液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物を、加熱しながらまたは加熱せずに、拡散によって液晶ポリマーシートに吸収させることができる。
【0180】
さらに別の実施形態によれば、シートを形成するステップは、液晶ポリマーシートを形成し、液晶ポリマーシートに液晶メソゲンおよびフォトクロミック−2色性化合物を吸収させ(例えば、上記にて論じたように)、その後、そこに分布された液晶ポリマー、液晶メソゲン、およびフォトクロミック−2色性化合物を少なくとも部分的に秩序化するステップを含むことができる。本明細書では限定的ではないが、そこに分布された液晶ポリマーシート、液晶メソゲン、およびフォトクロミック−2色性化合物は、液晶ポリマーシートを延伸することによって少なくとも部分的に秩序化することができる。さらにこの実施形態によれば、液晶ポリマーシートは、押出しおよびキャスティングなどであるがこれらに限定されない従来のポリマー加工技法を使用して、形成することができる。
【0181】
さらに別の実施形態によれば、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物のコーティングを含む光配向ポリマーシートは、基材に付着される。例えば、この実施形態によれば、光配向ポリマーシートは、光配向性ポリマー網状構造を剥離層に付着させ、その後、光配向性ポリマー網状構造を秩序化し少なくとも部分的に硬化し、光配向性ポリマー網状構造を含む層上に異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物のコーティングを形成し、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物と光配向性ポリマー網状構造とを少なくとも部分的に位置合わせし、異方性材料を硬化することによって、形成することができる。次いで剥離層を除去し、異方性材料およびフォトクロミック−2色性化合物のコーティングを含む光配向性ポリマー網状構造の層を剥離層から除去して、秩序化されたポリマーシートを形成することができる。
【0182】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物を含むポリマーシートを基材に接合するステップは、例えば、ポリマーシートと基材とのラミネート化、融着、金型内キャスティング、および接着剤結合の少なくとも1種を含むことができる。本明細書で使用される金型内キャスティングは、シートが型内に配置されかつ基材がこのシートの少なくとも一部の上に形成される(例えば、キャスティングによって)オーバーモールディング;および基材がシートの周りに形成される射出成型を含むがこれらに限定されない様々なキャスティング技法を含む。一実施形態によれば、ポリマーシートは、基材の第1の部分の表面にラミネートすることができ、基材の第1の部分は、型内に配置することができる。その後、基材の第2の部分を、ポリマー層が基材の2つの部分の間になるように、基材の第1の部分の最上部に形成することができる(例えば、キャスティングによって)。
【0183】
別の特定の実施形態は、少なくとも部分的に秩序化した液晶材料および少なくとも部分的に位置合わせされたフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングを、光学基材上で、より具体的には眼科用基材上でオーバーモールディングするステップを含む、光学素子を作製する方法を提供する。次に図2を参照すると、この実施形態によれば、方法は、成型領域217を画定するために、透明な型216の面214に隣接して光学基材212の面210を配置するステップを含む。透明な型216の面214は、凹状もしくは球面としてネガティブ(spherically negative)にすることができ(図示されるように)、または望みに応じてその他の構成を有することができる。さらに、必ずしも必要ではないが、ガスケットまたはスペーサ215を、光学基材212と透明な型216との間に配置することができる。光学基板212を位置決めした後、少なくとも1種のフォトクロミック−2色性化合物(図示せず)を含有する液晶材料218は、光学基材212の面210および透明な型216の面214によって画定された成型領域217に導入することができ、液晶材料218の少なくとも一部がその間を流れるようにすることができる。その後、液晶材料218は、例えば電場、磁場、直線偏光赤外線、直線偏光紫外線、および/または直線偏光可視光線に曝すことによって、少なくとも部分的に秩序化することができ、フォトクロミック−2色性化合物は、液晶材料に少なくとも部分的に位置合わせすることができる。その後、液晶材料を重合することができる。重合後、少なくとも部分的に秩序化した液晶材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングをその表面に有する光学基材を、型から剥離することができる。
【0184】
あるいは、フォトクロミック−2色性化合物を含有する液晶材料218を、透明な型216の面214上に導入し、その後、光学基材212の面210の少なくとも一部をそこに隣接して配置して、面210の少なくとも一部が液晶材料218の少なくとも一部に接触するようにし、それによって、液晶材料218は、面210と面214との間を流れることが可能になる。その後、液晶材料218を少なくとも部分的に秩序化し、フォトクロミック−2色性化合物を、上記にて論じたように少なくとも部分的に位置合わせすることができる。液晶材料の重合後、少なくとも部分的に秩序化した液晶材料およびフォトクロミック−2色性化合物を含むコーティングをその表面に有する光学基材を、型から剥離することができる。
【0185】
さらにその他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物を含まずに、少なくとも部分的に秩序化した液晶材料を含むコーティングは、上記にて論じたように、光学基材の面上に形成することができる。型から基材およびコーティングを剥離した後、フォトクロミック−2色性化合物を、液晶材料に吸収させることができる。
【0186】
図2には示されていないが、さらにまたは代替として、第1の全体的方向を有する配向機構を、透明な型の面上に与え、その後、液晶材料を、型の内部および/または光学基材の面上に導入し、その後、光学基材の面と液晶材料とを接触させることができる。さらに、この実施形態によれば、液晶材料を秩序化するステップは、型の面および/または光学基材の面上で、液晶材料と配向機構とを少なくとも部分的に位置合わせするステップを含むことができる。
【0187】
上記にて開示された方法のいずれかを使用した、フォトクロミック直線偏光素子の調製後、複屈折層(b)をそこに接合する。複屈折層は、例えば、ラミネートまたは接着結合によって、フォトクロミック直線偏光素子に付着させることができる。あるいは、複屈折層(b)は、ホットスタンピングなどの当技術分野で公知の方法によって、フォトクロミック直線偏光素子に接続することができる。複屈折層をフォトクロミック直線偏光素子に接続するのに適した接着剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,864,932号の第4欄、第65行から第60欄までに開示されているものを含む。
【0188】
本明細書では限定的ではないが、コーティングを作製する前述のオーバーモールディング法は、多焦点眼科用レンズ表面にコーティングを形成するのに、または比較的厚いアライメント機構が望まれるその他の適用例でコーティングを形成するのに、特に役立てることができると考えられる。
【0189】
先に論じたように、本明細書に開示される様々な実施形態は、表示素子およびデバイスに関する。さらに、先に論じたように、本明細書で使用される「表示」という用語は、単語、数値、記号、デザイン、または図での、情報の目に見える表示を意味する。表示素子およびデバイスの例には、スクリーン、モニタ、およびセキュリティ要素が含まれる。セキュリティ要素の例には、基材に接合されたセキュリティマークおよび認証マークが含まれ、例えば、限定するものではないが、アクセスカードおよびパス、例えばチケット、バッジ、身分証明書または会員証、デビットカードなど;譲渡可能証券および譲渡不可能証券、例えば、手形、小切手、債券、紙幣、定期預金証書、株券など;公文書、例えば通貨、ライセンス、識別カード、給付カード、ビザ、パスポート、公的証明書、証書など;消費財、例えばソフトウェア、コンパクトディスク(「CD」)、デジタル−ビデオディスク(「DVD」)、電気製品、家電製品、スポーツ用品、車など;クレジットカード;および商品タグ、ラベル、および包装が含まれる。
【0190】
例えば、一実施形態では、表示素子は、基材に接合されたセキュリティ要素である。この実施形態によれば、セキュリティ要素は、第1の状態および第2の状態を有し、かつ少なくとも化学線に応答して第1の状態から第2の状態に切り換わるように、また熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように、また第1の状態および第2の状態の少なくとも一方で透過放射線を直線偏光するように適合された、コーティングを含む。少なくとも化学線に応答して第1の状態から第2の状態に切り換わるように、また熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように、また第1の状態および第2の状態の少なくとも一方で透過放射線を直線偏光するように適合されたコーティング、およびその作製方法の例は、上記にて詳述される。
【0191】
この実施形態によれば、セキュリティ要素は、セキュリティマークおよび/または認証マークにすることができる。さらに、セキュリティ要素は、透明基材および反射性基材から選択された基材に接合することができる。あるいは、反射性基材が必要とされるある実施形態によれば、意図される適用例に対して基材が反射性ではなくまたは十分に反射性ではない場合、反射性材料を最初に基材に付着させることができ、その後、セキュリティマークをそこに付着させる。例えば、反射性アルミニウムコーティングを基材に付着させ、その後、セキュリティ要素をその表面に形成することができる。さらになお、セキュリティ要素は、色付けされていない基材、色付けされた基材、フォトクロミック基材、色付けされたフォトクロミック基材、直線偏光基材、円偏光基材、および楕円偏光基材から選択された基材に接合することができる。
【0192】
さらに、前述の実施形態によるコーティングは、CELL METHODにより決定したときに活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも1種のフォトクロミック−2色性化合物を含むことができる。本明細書に開示されるその他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定したときに活性化状態で2.3超の平均吸収比を有することができる。さらにその他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定したときに活性化状態で1.5から50の範囲の平均吸収比を有することができる。その他の実施形態によれば、フォトクロミック−2色性化合物は、CELL METHODにより決定したときに、活性化状態で、4から20の範囲の平均吸収比を有することができ、さらに3から30の範囲の平均吸収比を有することができ、さらになお2.5から50の範囲の平均吸収比を有することができる。しかし、一般的に言えば、フォトクロミック−2色性化合物の平均吸収比は、デバイスまたは素子の所望の性質を与えるのに十分な任意の平均吸収比にすることができる。この実施形態と併せて使用するのに適したフォトクロミック−2色性化合物の例は、上記にて詳述される。
【0193】
さらに、前述の実施形態によるセキュリティ要素は、参照により本明細書に特に組み込まれている米国特許第6,641,874号に記載されている、視覚依存特性を有する多層反射性セキュリティ要素を形成するために、1種または複数のその他のコーティングまたはシートをさらに含むことができる。例えば、一実施形態は、第1の状態および第2の状態を有し、かつ少なくとも化学線に応答して第1の状態から第2の状態に切り換わるように、また熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように、また基材の少なくとも一部において第1の状態および第2の状態の少なくとも一方で少なくとも透過した放射線を直線偏光するよう適合されたコーティングと、複屈折層、偏光コーティングまたはシート、フォトクロミックコーティングまたはシート、反射性コーティングまたはシート、色付けされたコーティングまたはシート、円偏光コーティングまたはシート、遅延コーティングまたはシート(即ち、その内部を通過する伝搬放射線を遅延させまたは遅らせるコーティングまたはシート)、および広角視野コーティングまたはシート(即ち、視覚を拡げるコーティングまたはシート)から選択された、少なくとも1種の追加の少なくとも部分的なコーティングまたはシートとを含む基材に接合されたセキュリティ要素を提供する。さらに、この実施形態によれば、少なくとも1種の追加のコーティングまたはシートを、第1の状態および第2の状態を有するコーティングの上、このコーティングの下に位置決めすることができ、または多数のコーティングおよび/またはシートを、このコーティングの上および/または下に位置決めすることができる。
【0194】
その他の実施形態は、第1の面を有する第1の基材および第2の面を有する第2の基材を含む、表示素子またはデバイスであってもよい液晶セルを提供し、この第2の基材の第2の面は、開放領域が画定されるように、第1の基材の第1の面と対向しかつ間隔を空けて配置される。さらに、この実施形態によれば、少なくとも部分的に秩序化するよう適合された液晶材料と、少なくとも部分的に位置合わせされかつCELL METHODにより決定したときに活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有するように適合されたフォトクロミック−2色性化合物とは、第1の面および第2の面により画定された開放領域内に位置決めされて、液晶セルを形成する。
【0195】
さらにこの実施形態によれば、第1の基材および第2の基材は、色付けされていない基材、色付けされた基材、フォトクロミック基材、色付けされたフォトクロミック基材、および直線偏光基材から独立して選択することができる。
【0196】
本明細書に開示される様々な実施形態による液晶セルは、第1の面に隣接して位置決めされた第1の配向機構と、第2の面に隣接して位置決めされた第2の配向機構とをさらに含むことができる。先に論じたように、液晶材料と配向面とを位置合わせすることが可能である。したがって、この実施形態によれば、液晶セルの液晶材料は、第1および第2の配向機構と少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【0197】
さらになお、第1の電極を、第1の面に隣接して位置決めすることができ、第2の電極を、第2の面に隣接して位置決めすることができ、液晶セルは、電気回路を形成することができる。さらに、配向機構が存在する場合(上記にて論じたように)、電極は、配向機構と基材の面との間に介在することができる。
【0198】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態による液晶セルは、第1の基材および第2の基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に接合された、直線偏光コーティングまたはシート、フォトクロミックコーティングまたはシート、反射性コーティングまたはシート、色付けされたコーティングまたはシート、円偏光コーティングまたはシート、楕円偏光コーティングまたはシート、遅延コーティングまたはシート、および広角視野コーティングまたはシートから選択されたコーティングまたはシートをさらに含むことができる。
【0199】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、基材と、この基材の少なくとも一部にある第1の状態および第2の状態を有するコーティングとを含む光学素子を提供し、このコーティングは、コーティングの厚さ全体を通して螺旋状に配置された分子を有するキラルネマチックまたはコレステリック液晶材料と、フォトクロミック−2色性化合物の分子の長軸が液晶材料の分子にほぼ平行になるように、液晶材料と少なくとも部分的に位置合わせされる少なくとも1種のフォトクロミック−2色性化合物とを含むものである。この実施形態によれば、コーティングは、少なくとも1つの状態で円偏光または楕円偏光するように適合させることができる。
【0200】
別の非限定的な実施形態では、本発明の光学素子は、活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされた可逆性フォトクロミック−2色性材料を含む、直線偏光コーティングまたは少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートと、4分の1波長リターダとのアセンブリを含む、円偏光子が接合されている、光感受性製品のための包装材料などの基材を含む。別の非限定的な実施形態では、平均吸収比は少なくとも2.3である。
【0201】
次に、本明細書に開示される様々な実施形態を、下記の実施例で例示する。
【実施例】
【0202】
(実施例1)
ステップ1−フォトクロミック染料混合物
以下に列挙する固体フォトクロミック染料(1.6g)の混合物を、ガラス瓶に染料を添加し、そしてスパチュラで混合することによって調製した。
【0203】
【化1】

【0204】
(1)フォトクロミックAは、薄紫の活性色をもたらすことが報告されるインデノナフトピランである。
(2)フォトクロミックBは、桃色の活性色をもたらすことが報告されるインデノナフトピランである。
(3)フォトクロミックCは、青緑の活性色をもたらすことが報告されるインデノナフトピランである。
(4)フォトクロミックDは、緑青の活性色をもたらすことが報告されるインデノナフトピランである。
【0205】
ステップ2−樹脂安定剤混合物
固体安定剤の混合物を、下記の表に列挙されるように、全樹脂固形分の重量に対して重量%を与えるように調製した。
【0206】
【化2】

【0207】
(5)TINUVIN(登録商標)144は、CIBA Specialty Chemicalsから入手可能なCAS番号63843−89−0を有するヒンダードアミンクラス(HALS)の光安定剤であると報告される。
(6)IRGAFOS(登録商標)12は、CIBA Specialty Chemicalsから入手可能なCAS番号80410−33−9を有するポリマー加工安定剤であると報告される。
(7)IRGANOX(登録商標)1010は、CAS番号6683−19−8を有するポリマー加工熱安定剤であると報告される。
【0208】
ステップ3−ポリマー加工
Plasti−Corderミキサ(C.W.Brabender Instruments,Inc.)を、190℃に加熱した。Arkemaから入手可能なポリエーテルブロックアミドであると報告されたPEBAX(登録商標)5533樹脂(約40g)を、混合ヘッドに添加し、融解するまで1分当たり65から80回転(rpm)で混合した。ステップ2からの樹脂安定剤混合物を添加し、同じ速度で約1分間混合した。ステップ1からのフォトクロミック染料混合物を添加し、同じ速度で約2分間混合した。得られた混合材料を、混合ヘッドの方向を逆にすることによって、Plasti−Corderミキサから取り出した。
【0209】
回収したフォトクロミック樹脂を、PHI温度制御プレスに位置決めされた、2枚のTeflon(登録商標)コーティング付き鋼板の間に置いた。プレスを190℃まで加熱した。フォトクロミック樹脂が底板上で融解し始めた後、上板を、圧力を上昇させながら1分間付与し、次いで圧力を、約2分間にわたり2〜3トンに増大させた。圧力を解放した後、フィルムコーティングされた板を取り出し、20〜25℃で4〜5分間冷却し、15〜25℃の水で1〜2分間、水中に浸漬した。Pebaxフィルムを、Teflonコーティング付き鋼板から容易に分離した。
【0210】
ステップ4−サンプル調製
パートA
ステップ3からのフィルムの一部を、5×5センチメートル(cm)の小片に切断し、これを、100ミクロンのアルミニウムスペーサを用いて2枚のMYLAR(登録商標)ポリエステルフィルムの間に配置した。アセンブリを、PHI温度制御プレスに位置決めされた2枚のTeflon(登録商標)コーティング付き鋼板の間に配置した。プレスを190℃まで加熱した。鋼板をアセンブリに1分間接触させた後、圧力を、7〜10分間にわたり2〜3トンに増大させた。圧力を解放した後、鋼板およびアセンブリを氷水に浸漬して、サンプルを、20秒未満で190℃から0℃に冷却した。フォトクロミック樹脂フィルムを、MYLAR(登録商標)ポリエステルフィルムから引き離した。
【0211】
パートB
パートAからのフィルムの一部を、5×5cmの小片に切断し、INSTRON(登録商標)SF7モデル5543機器のサンプルホルダに配置した。ホルダ間の隙間は1インチであった。サンプルを、20〜22℃および相対湿度40〜65%の条件下、10mm/分の速度で4×(101.5mm)に延伸した。延伸後、1インチのフィルムは、およそ3.5インチまで延伸したことが示された。2枚のフィルム(フィルム1およびフィルム2)を、この手順に従って生成した。
【0212】
パートC
フィルム1を、McMaster Carから入手可能な厚さ3.3mmおよび直径50.86mmの2枚の溶融シリカ板の間に配置し、これらのプレートを一緒にテープで留めた。フィルム1は、透明−直線偏光子(clear to linear polarizer)である。透明−円偏光子(clear to circular polarizer)の場合、1枚の溶融シリカ板が、PS−100偏光計に配置される。140±10nmの遅延を有するAlightから得られた1/4波長板を、溶融シリカ板に付着し、交差した偏光子の間で配向させて、光軸が2つの直線偏光子透過軸と同じ方向に沿っていることを示すゼロ(null)位置を得た。フィルム2を、1/4波長板の最上部に付着し、最大光強度が得られるまで独立して配向させた。この位置で、フィルム2の配向は、フィルム透過軸が、1/4波長板の速い光軸および遅い光軸の間で45度になるようなものである。第2の溶融シリカディスクをこれらのフィルムの最上部に配置し、積層体全体を一緒にテープで留めた。1/4波長板の速軸および遅軸の間で45度になるまでのフィルム2のアライメントは、45±3度であると推定された。
【0213】
直線偏光子および円偏光子によるUV活性化サンプルの目視検査は、フィルム1が透明−直線偏光子であり、フィルム2と1/4波長板の積層体は、透明−円偏光子であることを実証した。
【0214】
ステップ5−サンプル試験
光学ベンチを使用して、フィルムの光学特性を測定し、透明−偏光および透明−円偏光特性に関して試験をしたときのそれぞれのフィルム関する吸収比を導き出した。試験前、サンプルのそれぞれを、Spectronics Corpから供給された4個のUV管BLE−7900Bの列から15センチメートル(cm)の距離で、活性化放射線(UVA)に10分間曝し、次いで40℃で1時間置いた。その後、サンプルを、General Electricから供給された4個のUVless管F4OGOの列から15cmの距離で1時間曝露し、最後に暗所で1時間保持した。その後、延伸フィルムアセンブリを、光学ベンチ上の温度制御された空気セル内(23℃±0.1℃)に配置した。活性化光源(Newport/Orielモデル67005 300ワットキセノンアークランプハウジング、69911電源および68945デジタル露光制御器であって、Uniblitz VS25(VMM−D4シャッタドライバを有する。)高速コンピュータ制御シャッタ(データ収集中に一時的に閉じて迷光がデータ収集プロセスを妨げないようになされている)、短波長放射線を除去したSchott 3mm KG−2バンドパスフィルタ、強度減衰のための(1つまたは複数の)減光フィルタ、およびビームコリメーションのための集光レンズを備えている)を、セルアセンブリの1/4波長板側ではなく延伸フィルム側の表面に対して30°から35°の入射角で方向付けた。
【0215】
応答測定をモニタするための広帯域光源を、セルアセンブリの表面に対して直角に位置決めした。より短い可視波長の高いシグナルは、スプリット端の分岐光ファイバケーブルを用いて100ワットタングステンハロゲンランプ(Lambda UP60−14定格電圧電源により制御される)から別々にフィルタリングした光を収集し組み合わせることによって得られた。タングステンハロゲンランプの片側からの光を、Schott KG1フィルタでフィルタリングして熱を吸収し、Hoya B−440フィルタは、より短い波長を通過させた。光のもう一方は、Schott KG1フィルタでフィルタリングまたはフィルタリングしなかった。光は、スプリット端の分岐光ファイバケーブルの個別の端部にランプの各面からの光を収束させることによって収集し、その後、ケーブルのシングルエンドから生じる1つの光源と組み合わせた。4”光パイプをケーブルのシングルエンドに取着して、適正な混合を確実にした。
【0216】
光源の偏光は、ケーブルのシングルエンドからの光を、コンピュータ駆動型モータ化回転ステージ(Polytech、PI製モデルM−061−PD)に保持されたMoxtek、Proflux Polarizerに通すことによって実現した。モニタリングビームは、1つの偏光平面(0°)が光学ベンチテーブルの平面に直角になるように、かつ第2の偏光平面(90°)が光学ベンチテーブルの平面に平行になるように設定した。
【0217】
偏光サンプルのアライメントは、交差した偏光子の間にゼロ強度が見出されるようサンプルを位置合わせすることによって実現した。UV活性化の前に、フィルム1および2を下記の通り位置合わせした。電気的暗(electrical dark)、参照、および暗スペクトルを、0および90度の偏光方向で収集した。フィルム1をビーム経路に配置し、レーザ(635nmを中心とするコヒーレント超低ノイズダイオードレーザモジュール)を、ビームステアリングミラーおよび第2のMG偏光子(Moxtek偏光子と交差している。)を並進させることによって、交差した偏光子およびサンプル内に通し、ビーム路程にもたらした。サンプルを、3度の間隔(step)で120度まで回転させて、カウントに最小値を見出した。次いでサンプルを、0.1度の間隔でこの最小値の周りで±5度回転させて、サンプルのアライメント方向を±0.1度に位置付けた。次にサンプルを、垂直にまたは水平に位置合わせした。レーザを切り換えて遮断し、レーザ指向ミラーおよびMG偏光子を光路から除去した。
【0218】
透明−直線測定を実施するため、セルアセンブリを、活性化光源からのUVA 6.7W/mで15分間露光して、フォトクロミック−2色性染料を活性化した。検出器システム(モデルSED033検出器、Bフィルタ、およびディフューザ)を備えたInternational Light Research Radiometer(モデルIL−1700)を使用して、試験前に露光を検証した。次いで0°偏光平面に偏光されたモニタリング源からの光を、コーティング付きサンプル内に通し、1”の積分球に収束させ、これを単機能光ファイバケーブルを使用してOcean Optics 2000分光光度計に接続した。サンプル内を通過した後のスペクトル情報を、Ocean Optics OOlBase32およびOOlColorソフトウェアと、PPG適正ソフトウェアで収集した。フォトクロミック−2色性染料を活性化させたが、Moxtek偏光子の位置を前後に回転させて、モニタリング光源からの光を90°偏光平面に偏光して戻した。データを、活性化中は5秒間隔で、また消失中は3秒ごとに、約15分間にわたり収集した。各試験ごとに、偏光子の回転を調節して、偏光平面の下記の順序:0°、90°、90°、0°などでデータを収集した。
【0219】
吸収スペクトルを、Igor Proソフトウェア(WaveMetricsから入手可能)を使用して各セルアセンブリごとに得、分析した。各セルアセンブリごとの各偏光方向での吸光度の変化は、試験をした各波長でのセルアセンブリに関する0時(即ち、非活性化)吸収測定値を差し引くことによって計算した。延伸フィルムでは多数のフォトクロミック化合物が使用されるので、明所視応答測定値を収集した。平均吸光度値は、この領域で各時間間隔で吸光度を平均することにより、各セルアセンブリごとに、フォトクロミック応答が飽和しまたはほぼ飽和した活性化プロファイルの明所視領域(即ち、測定された吸光度が経時的に増加せずまたは著しく増加しない領域)で得た。λmax−vis±5nmに対応する波長の所定範囲での平均吸光度値を、0°および90°偏光に関して抽出し、この範囲の各波長ごとの吸収比は、小さな平均吸光度でより大きな平均吸光度を割ることによって計算した。抽出された各波長ごとに、5から100個のデータポイントを平均した。次いでフォトクロミック−2色性染料に関する平均吸収比を、これらの個々の吸収比を平均することによって計算した。次いでサンプルに関する平均吸収比を、これら個々の吸収比を平均することによって計算した。
【0220】
結果を以下に報告するが、第1の消失半減期(「T1/2」)の値は、活性化光源を除去した後に73.4°F(23℃)で最大ΔODの2分の1に到達する、サンプル中のフォトクロミック−2色性染料の活性化形態のΔODに関する秒を単位とした時間間隔である。第2の消失半減期(「第2のT1/2」)の値は、活性化光源を除去した後に73.4°F(23℃)で最大ΔODの4分の1に到達する、サンプル中のフォトクロミック−2色性染料の活性化形態のΔODに関する秒を単位とした時間間隔である。
【0221】
各サンプルごとに、上述の手順を少なくとも2回実行した。以下に報告される結果は、実施例1Aとして延伸フィルム単独に関するもの、および実施例1Bとして1/4波長板を有する延伸フィルムに関するものである。平均線形吸収比(Av.Lin.Abs.Ratio)に関して表に記載された値は、実験操作から得られた結果の平均を表す。透明−直線偏光試験の結果を、以下の表1に示す。
【0222】
【表1】

【0223】
透明−円偏光研究は、以下に述べる修正以外、透明−直線研究と同じ手法で実施した。Moxtek偏光子を、PI回転ステージ上で、フィルムアセンブリの対向する面に移動させた。円偏光測定を行うため、円偏光子は、4分の1波長板が互いに対面するように互いに向き合う必要がある。システムを位置合わせするために、公知のMG偏光子を、セルアセンブリの前に所定位置に配置し、レーザ光(コヒーレント超低ノイズレーザダイオードモジュール−635nm)の最大透過に対して0度に向けた。次いでMoxtek偏光子をステージ上で回転させて、ゼロ位置を実現した。4分の1波長板(Melles Griot製)を、Moxtek偏光子の直前でビーム路程に付着した。4分の1波長板(上板から76mm離れて回転中心点を有するOpto−Sigma製角度計に取り付けた。このアセンブリは、Melles Griot製1.5インチ減衰棒に取り付けた。)を回転させて、レーザのゼロシグナルを実現した。これにより、4分の1波長板の速軸または遅軸がMoxtek偏光子透過方向と位置合わせされたことが確実になった。
【0224】
次に、Moxtek偏光子を45度回転させ、MG偏光子を除去した。次にMoxtek偏光子は、MG 4分の1波長板の速軸および遅軸を二分し、左または右円偏光を生成した。電気的暗、参照、および暗参照スペクトルを、Moxtek偏光子を±90度回転させることによって(あるいは、MG 4分の1波長板の速軸および遅軸を、速軸から遅軸に次いで遅軸から速軸に二分することによって)、左および右円偏光の両方に関して収集した。
【0225】
収集したスペクトルを参照すると、サンプルは、温度制御された空気セル内に挿入された。Moxtek偏光子を45度回転させて水平にし、MG偏光子(0度)をビーム路程に配置して、交差偏光子構成を生成した。セルアセンブリをビーム路程に置き、レーザを、交差偏光子およびサンプル内に向けた。サンプルを、3度の間隔で120度まで回転させて、カウントに最小値を見出した。次いでサンプルを、0.1度の間隔で、この最小値付近で±5度回転させて、サンプルのアライメント方向を±0.1度に位置付けた。次にサンプルを、垂直または水平のいずれかに位置合わせした。レーザを切り換えて遮断し、レーザ指向ミラーおよびMG偏光子を光路から除去し、Moxtek偏光子を45度回転させて、MG 4分の1波長板を再び二分した。
【0226】
データ獲得は、前述の通り行った(120秒遅延、5秒間隔のデータ収集で15分活性化、30分消失または3秒間隔で第2の半減期へ)。Moxtek偏光子を、データ収集の全体を通して±90度回転させた。Moxtek偏光子の透過軸は4分の1波長板(MG)を二分したので、Moxtek偏光子の回転は遅−速軸の二分から遅−速軸の二分に移行し、一方の向きで右円偏光を生成し、他方の向きで左円偏光を生成した。
【0227】
4分の1波長板を有する延伸フィルムの測定は、1.0から0.5NDフィルタを使用することによってレーザ光強度が減少すること以外、本質的に同じプロセスであった。延伸フィルム単独に関する透明−円偏光研究の結果は、実施例1Cとして含まれ、1/4波長板を有する延伸フィルムは実施例1Dとして含まれ、これらを以下の表2に示す。
【0228】
【表2】

【0229】
表2では、透明−円偏光サンプル1Dは、2.38の平均円吸光度(Av.Cir.Abs.)比を示し、一方、直線透明−偏光サンプル1Cは、1.0の平均円吸光度比を示した。直線偏光子は、IDが透明−円偏光を示す限り、円偏光子と「交差」しない。
【0230】
本発明の記述は、本発明の明瞭な理解に関連して本発明の態様を示すことが理解されよう。当業者に明らかであると考えられ、したがって本発明のより良好な理解を促進するものではない本発明のある態様は、本発明の記述を単純化するために提示されていない。本発明を、ある実施形態に関連して述べてきたが、本発明は、開示される特定の実施形態を限定するものではなく、添付される特許請求の範囲によって定義された、本発明の精神および範囲内にある改変を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)基材;および
(ii)前記基材に接合された少なくとも1種のコーティングであって、第1の吸収状態および第2の吸収状態を有し、化学線に応答して前記第1の吸収状態から前記第2の吸収状態に切り換わり、化学線および/または熱エネルギーに応答して元の前記第1の吸収状態に戻り、そして前記第1の吸収状態および/または前記第2の吸収状態で透過した放射線を直線偏光するよう動作可能であるコーティング
を含み、前記コーティング(ii)が、活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされた可逆性フォトクロミック−2色性材料を含む、フォトクロミック直線偏光素子と、
(b)前記フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続された、ポリマーコーティングまたはポリマーシートを含む少なくとも1種の複屈折層であって、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能な複屈折層と
を含む、光学素子。
【請求項2】
前記フォトクロミック−2色性材料が、
(a)ピラン、オキサジン、およびフルギドから選択された、少なくとも1種のフォトクロミック基PCと、
(b)前記少なくとも1種のフォトクロミック基に結合され、下式:
−[S−[Q−[Sd’−[Q−[Se’−[Q−[Sf’−S−P
により表される、少なくとも1種の延長剤と
を含み、式中、
(i)各Q、Q、およびQは、独立して、出現するごとに、非置換または置換芳香族基、非置換または置換脂環式基、非置換または置換複素環基、およびこれらの混合物から選択された2価の基から選択され、ここで、置換基は、Pによって表される基、液晶メソゲン、ハロゲン、ポリ(C〜C18アルコキシ)、C〜C18アルコキシカルボニル、C〜C18アルキルカルボニル、C〜C18アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、パーフルオロ(C〜C18)アルコキシ、パーフルオロ(C〜C18)アルコキシカルボニル、パーフルオロ(C〜C18)アルキルカルボニル、パーフルオロ(C〜C18)アルキルアミノ、ジ−(パーフルオロ(C〜C18)アルキル)アミノ、パーフルオロ(C〜C18)アルキルチオ、C〜C18アルキルチオ、C〜C18アセチル、C〜C10シクロアルキル、C〜C10シクロアルコキシ、直鎖または分枝鎖C〜C18アルキル基であって、シアノ、ハロ、もしくはC〜C18アルコキシで一置換されているか、またはハロで多置換された直鎖または分枝鎖C〜C18アルキル基、および下記の式:−M(T)(t−1)および−M(OT)(t−1)の1つを含む基(ここで、Mは、アルミニウム、アンチモン、タンタル、チタン、ジルコニウム、およびケイ素から選択され、Tは、有機官能基、有機官能性炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基から選択され、tはMの価数である)から選択され、
(ii)c、d、e、およびfは、それぞれ独立して、両端を含む1から20の範囲の整数から選択され、各S、S、S、S、およびSは、独立して、出現するごとに、
(A) −(CH−、−(CF−、−Si(CH−、−(Si[(CH]O)−であって、式中、gは、独立して、出現するごとに、1から20から選択され、hは両端を含む1から16の整数であるもの、
(B) −N(Z)−、−C(Z)=C(Z)−、−C(Z)=N−、−C(Z’)−C(Z’)−、または単結合であって、式中、Zは、独立して、出現するごとに、水素、C〜C18アルキル、C〜C10シクロアルキル、およびアリールから選択され、そしてZ’は、独立して、出現するごとに、C〜C18アルキル、C〜C10シクロアルキル、およびアリールから選択されるもの、そして
(C) −O−、−C(O)−、−C≡C−、−N=N−、−S−、−S(O)−、−S(O)(O)−、−(O)S(O)O−、−O(O)S(O)O−、または直鎖もしくは分枝鎖C〜C24アルキレン残基であって、前記C〜C24アルキレン残基は、非置換であるか、シアノもしくはハロによって一置換されているか、またはハロによって多置換されている直鎖もしくは分枝鎖C〜C24アルキレン残基
から選択されたスペーサ単位から選択され、
但し、ヘテロ原子を含む2個のスペーサ単位が一緒に結合している場合、前記スペーサ単位は、ヘテロ原子が互いに直接結合しないように結合されており、そしてSおよびSがPCおよびPにそれぞれ結合している場合、2個のヘテロ原子が互いに直接結合しないように結合されていることを前提とし、
(iii)Pは、ヒドロキシ、アミノ、C〜C18アルケニル、C〜C18アルキニル、アジド、シリル、シロキシ、シリルヒドリド、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ、チオ、イソシアナト、チオイソシアナト、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバミル、アジリジニル、アリルオキシカルボニルオキシ、エポキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、アクリロイルアミノ、メタクリロイルアミノ、アミノカルボニル、C〜C18アルキルアミノカルボニル、アミノカルボニル(C〜C18)アルキル、C−C18アルキルオキシカルボニルオキシ、ハロカルボニル、水素、アリール、ヒドロキシ(C〜C18)アルキル、C〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、アミノ(C〜C18)アルキル、C〜C18アルキルアミノ、ジ−(C〜C18)アルキルアミノ、C〜C18アルキル(C〜C18)アルコキシ、C〜C18アルコキシ(C〜C18)アルコキシ、ニトロ、ポリ(C〜C18)アルキルエーテル、(C〜C18)アルキル(C〜C18)アルコキシ(C〜C18)アルキル、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、エチレニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ(C〜C18)アルキル、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ(C〜C18)アルキル、2−クロロアクリロイル、2−フェニルアクリロイル、アクリロイルオキシフェニル、2−クロロアクリロイルアミノ、2−フェニルアクリロイルアミノカルボニル、オキセタニル、グリシジル、シアノ、イソシアナト(C〜C18)アルキル、イタコン酸エステル、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン誘導体、主鎖および側鎖液晶ポリマー、シロキサン誘導体、エチレンイミン誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、非置換ケイ皮酸誘導体、メチル、メトキシ、シアノ、およびハロゲンの少なくとも1種で置換されたケイ皮酸誘導体、または、置換もしくは非置換のキラルもしくは非キラルの1価もしくは2価の基であって、ステロイド基、テルペノイド基、アルカロイド基、およびこれらの混合物から選択された1価もしくは2価の基であり、ここで置換基は、独立して、C〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、アミノ、C〜C10シクロアルキル、C〜C18アルキル(C〜C18)アルコキシ、フルオロ(C〜C18)アルキル、シアノ、シアノ(C〜C18)アルキル、シアノ(C〜C18)アルコキシ、またはこれらの混合物から選択され、またはPは、2から4個の反応性基を有する構造であり、またはPは、非置換もしくは置換開環メタセシス重合前駆体であり、
(iv)d’、e’、およびf’は、それぞれ独立して、0、1、2、3、および4から選択され、ここでd’+e’+f’の合計は少なくとも1である、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記基材の少なくとも一部に接合された、少なくとも第1の全体的方向を有する少なくとも1種の配向機構をさらに含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記コーティング(ii)が、2種以上の少なくとも部分的に位置合わせされた可逆性フォトクロミック−2色性材料を含み、前記フォトクロミック−2色性材料は、相補的吸収スペクトルおよび/または相補的直線偏光状態を有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記コーティング(ii)が、少なくとも1種の自己集合性材料を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記自己集合性材料が、液晶材料、ブロックコポリマー、およびこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記コーティング(ii)が、少なくとも部分的に秩序化されたマトリックス相と少なくとも部分的に秩序化されたゲスト相とを含む、相分離ポリマーをさらに含み、前記ゲスト相が、前記ゲスト相と少なくとも部分的に位置合わせされる可逆性フォトクロミック−2色性化合物を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
前記コーティング(ii)が、少なくとも部分的に秩序化された異方性材料およびポリマー材料を含む相互貫入ポリマー網状構造をさらに含み、前記異方性材料が、前記異方性材料と少なくとも部分的に位置合わせされる可逆性フォトクロミック−2色性化合物を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
前記コーティング(ii)が、前記コーティングに所望のパターンが形成されるように、第1の全体的方向を有する第1の秩序化された領域と、前記第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有する、前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有するコーティングを含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項10】
前記コーティング(ii)が、化学線に応答して第1の状態から第2の状態に遷移するように、および少なくとも前記第2の状態で透過した放射線を直線偏光するように適合されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項11】
前記コーティング(ii)が、染料、アライメント促進剤、運動増強添加剤、光開始剤、熱開始剤、重合禁止剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカルスカベンジャー、ゲル化剤、および接着促進剤から選択された少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項12】
フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング、接着コーティング、ミラーコーティング、および保護コーティングから選択された、少なくとも1種の追加の少なくとも部分コーティングをさらに含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項13】
前記複屈折層(b)が、前記層に所望のパターンが形成されるように、第1の全体的方向を有する第1の秩序化された領域と、前記第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有する、前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有する層を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
前記複屈折層(b)が、自己集合性材料およびフィルム形成材料から選択されたポリマーコーティングを含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項15】
前記複屈折層(b)が、自己集合性材料、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリアルケン、ポリアルキレン−ビニルアセテート、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、これらのコポリマー、および/またはこれらの混合物を含むポリマーシートを含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
前記複屈折層(b)が、4分の1波長板を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項17】
前記光学素子が、眼科用素子、表示素子、窓、鏡、包装材料、ならびに/またはパッシブおよびアクティブ液晶セル素子およびデバイスを含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
前記眼科用素子が、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、またはバイザーを含む、請求項17に記載の光学素子。
【請求項19】
前記表示素子が、スクリーン、モニタ、およびセキュリティ要素を含む、請求項17に記載の光学素子。
【請求項20】
前記基材が、有機材料、無機材料、またはこれらの組合せから形成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項21】
前記基材が少なくとも半透明である、請求項20に記載の光学素子。
【請求項22】
前記光学素子が、表示素子に接続されている、請求項21に記載の光学素子。
【請求項23】
(a)(i)少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシート;および
(ii)前記ポリマーシートに対して少なくとも部分的に位置合わせされかつ活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する可逆性フォトクロミック−2色性材料
を含む、少なくとも1種のフォトクロミック直線偏光素子と、
(b)前記フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続された、ポリマーコーティングまたはポリマーシートを含む、少なくとも1種の複屈折層と
を含み、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能な複合光学素子。
【請求項24】
前記フォトクロミック−2色性材料が、
(1) 3−フェニル−3−(4−(4−(3−ピペリジン−4−イル−プロピル)ピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]−ナフト[1,2−b]ピラン;
(2) 3−フェニル−3−(4−(4−(3−(1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−4−イル)プロピル)ピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(3) 3−フェニル−3−(4−(4−(4−ブチル−フェニルカルバモイル)−ピペリジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(4) 3−フェニル−3−(4−([1,4’]ビピペリジニル−1’−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−([1,4’]ビピペリジニル−1’−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(5) 3−フェニル−3−(4−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−(4−ヘキシルベンゾイルオキシ)−ピペリジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4] ナフト[1,2−b]ピラン;
(6) 3−フェニル−3−(4−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−(4’−オクチルオキシ−ビフェニル−4−カルボニルオキシ)−ピペリジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
から選択される、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項25】
前記ポリマーシートが、自己集合性材料、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリアルケン、ポリアルキレン−酢酸ビニル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、これらのコポリマー、および/またはこれらの混合物を含む、請求項23に記載の光学素子。
【請求項26】
前記ポリマーシート(i)が、延伸ポリマーシート、少なくとも部分的に秩序化された液晶ポリマーシート、および光配向ポリマーシートから選択される、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項27】
前記ポリマーシート(i)が、前記シートに所望のパターンが形成されるように、第1の全体的方向を有する第1の秩序化された領域と、前記第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有する、前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有するシートを含む、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項28】
前記フォトクロミック直線偏光素子が、化学線に応答して第1の状態から第2の状態に遷移するように、および少なくとも前記第2の状態で透過した放射線を直線偏光するように適合されている、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項29】
前記複屈折層(b)が、4分の1波長板を含む、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項30】
前記複屈折層(b)が、自己集合性材料およびフィルム形成材料から選択されたポリマーコーティングを含む、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項31】
前記複屈折層(b)が、自己集合性材料、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、アルキレン−酢酸ビニル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、これらのコポリマー、および/またはこれらの混合物を含むポリマーシートを含み、(b)が、ポリマー組成物を含む、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項32】
前記複屈折層(b)が、前記層に所望のパターンが形成されるように、第1の全体的方向を有する第1の秩序化された領域と、前記第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有する、前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有する層を含む、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項33】
有機材料、無機材料、またはこれらの組合せから形成された基材をさらに含む、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項34】
前記基材が、少なくとも半透明である、請求項33に記載の複合光学素子。
【請求項35】
前記基材が、色付けされていない基材、色付けされた基材、フォトクロミック基材、色付けされたフォトクロミック基材、および直線偏光基材を含む、請求項33に記載の複合光学素子。
【請求項36】
前記光学素子が、眼科用素子、表示素子、窓、鏡、包装材料、ならびに/またはパッシブおよびアクティブ液晶セル素子およびデバイスを含む、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項37】
前記眼科用素子が、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、またはバイザーを含む、請求項36に記載の複合光学素子。
【請求項38】
前記表示素子が、スクリーン、モニタ、およびセキュリティ要素を含む、請求項36に記載の複合光学素子。
【請求項39】
表示素子に接続された、請求項23に記載の複合光学素子。
【請求項40】
フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング、接着コーティング、ミラーコーティング、および保護コーティングから選択された、少なくとも1種の追加の少なくとも部分的なコーティングをさらに含む、請求項39に記載の複合光学素子。
【請求項41】
光感受性製品のための包装材料を含む基材に接合された、円偏光子を含む光学素子であって、前記円偏光子は、4分の1波長リターダと、活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされた可逆性フォトクロミック−2色性材料を含む直線偏光コーティングまたは少なくとも部分的に秩序化されたポリマーシートとのアセンブリを含む、光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−513044(P2012−513044A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542248(P2011−542248)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/067265
【国際公開番号】WO2010/080311
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】