説明

透明なフィルム

本発明は、少なくとも270℃の融解温度を有する半結晶性ポリアミド、または半結晶性ポリアミド(A)と第2ポリマー(B)とのブレンド、および任意選択的に少なくとも1つの添加剤を含むポリマー組成物で作製された光学的に透明なポリマーフィルムもしくは押出製品であって、この半結晶性ポリアミド(A)がポリマー組成物の総重量に対して、50重量%超の量で存在し、光学的に透明なポリマーフィルムもしくは押出製品におけるポリマー組成物が270〜340℃の範囲の融解温度(Tm−C)を有し、かつ、フィルムもしくは押出製品の一部が、ASTM D1003Aに準拠した方法で測定される、12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する、ポリマーフィルムもしくは押出製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、光学的に透明なポリマーフィルムおよびその他の光学的に透明な押出製品に関する。より具体的には、本発明は、透明でありかつ良好な機械的および熱的特性、より具体的には高い耐熱性を有するポリアミド組成物で作製されたこのような製品に関する。本発明はまた、超高バリア可撓性フィルム材料を実現することを目的に無機物堆積用の基材材料として使用される耐高温性ポリマーフィルム材料に関する。
【0002】
耐熱性の透明なシートおよびフィルムは、可撓性を向上させ、そしてより薄く、より軽量の製品を製造するために、従来のガラス基材の代替物として、ディスプレーなどの電子デバイスにおいて使用できるように研究が続けられている。これらのフィルムは、250℃超の、すなわち従来のアクリルまたはポリカーボネートシートよりも高い、高い熱変形温度を持たなければならない。高温フィルム用途向けの現在使用されている材料としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリノルボルネン(PNB)が挙げられる。それらの高い融解温度またはガラス転移温度のために、これらの材料で作製されたフィルムは、比較的高い温度までそれらの形状および機械的特性を保ち、非常に高い温度に加熱されない限り融解または分解しない。最近、0.25mm以下の厚さ、90%の光透過率、そして280℃までの温度に耐えることができる、高い熱耐久性の透明なポリイミドフィルムが三菱によって開発された。しかし、これらの材料のほとんどは高価であり、かつ加工が困難である。
【0003】
ポリアミド樹脂は優れた靱性、強度、および耐化学薬品性を有し、これらの特性により、ポリアミド樹脂は多種多様な用途向けエンジニアリング樹脂として有用なものになる。多くの用途向けに、透明なポリアミドを使用することが望ましいであろうが、多くのポリアミドは半結晶性材料であり、したがって、入射光がポリマー中に存在する結晶性領域によって散乱されるので、多くの場合不透明である。透明なポリアミドは公知であるが、典型的には非晶質であるか、または非晶質の熱可塑性脂肪族コポリアミドと限定量の半結晶性の熱可塑性ポリアミド、もしくは低融点で比較的低い結晶化速度の半結晶性の熱可塑性ポリアミドとのブレンドであり、結果として、低下した耐熱性を有し、これらの材料から形成された物品は、時間とともにクリーピングまたは変形に悩まされる傾向がある。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0030692A1号明細書は、少なくとも80%の透明度の製品を記載している。一実施例において88%の透明度が述べられている。これらの製品は、少なくとも9個のC原子の少なくとも50重量%のモノマーを含む10〜30%の結晶化度の微結晶性コポリアミドをベースにしている。
【0005】
米国特許第4,404,317号明細書は、非晶質の熱可塑性脂肪族ポリアミドコポリマーと半結晶性の熱可塑性ポリアミドとのブレンドを開示している。生じたブレンドは、透明にすることができ、良好な耐溶剤性、寸法安定性、および湿ったまたは湿潤条件下での物理的特性の保持を有すると開示されている。特開平03−033157号公報は、イソフタル酸と、テレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンと脂環式ジアミンとから得られたコポリアミドを、芳香族ジアミンとジカルボン酸とから得られた半芳香族ポリアミドと配合することによって調製された、耐アルコール性の改良されたポリアミド樹脂組成物を開示している。
【0006】
米国特許出願公開第2006/036044−A1号明細書は、少なくとも280℃の融解温度を有する50〜95重量%の非晶質の半芳香族ポリアミドと5〜50重量%の半結晶性の半芳香族ポリアミドとのブレンドを開示している。これらの組成物は、65%またはそれ以上の低い光透過率を有する。89%の光透過率が報告されている一実施例においては、組成物は、18重量%の半結晶性の半芳香族ポリアミドと82重量%の非晶質の半芳香族ポリアミドとから構成された。
【0007】
したがって、耐高温性ポリマーフィルム材料、特に非晶質ポリアミドおよび/またはポリイミドのようなより安価な材料と比較して、より優れた性能の材料が必要とされている。
【0008】
透明でありかつ良好な機械的特性および高温でのそれらの保持ならびに、制限された熱膨張および/または高い変形温度の寸法安定性によって示される、高い耐熱性を有するポリアミドポリマーフィルムを提供することが本発明の目的である。本発明の別の目的は、透明性および向上したバリア性の両方を有するポリアミドポリマーフィルムを提供することである。
【0009】
本明細書において開示され、そして特許請求される本発明は、半結晶性ポリアミド(A)を含むポリマー組成物で作製された透明なポリマーフィルムもしくは押出製品であって、半結晶性ポリアミド(A)が、少なくとも270℃の融解温度(Tm−A)を有し、かつ半結晶性ポリアミド(A)が半芳香族の半結晶性ポリアミドからなるか、もしくは半芳香族の半結晶性ポリアミドと脂肪族の半結晶性ポリアミドとのブレンドからなる場合には、それぞれの場合に少なくとも60重量%の量で存在し、あるいは半結晶性ポリアミド(A)が脂肪族の半結晶性ポリアミドからなる場合には少なくとも75重量%の量で存在し、この重量%はポリマー組成物の総重量に対するものであり、このポリマー組成物が少なくとも270℃の融解温度(Tm−C)を有し、このフィルムもしくは押出製品の一部が、ASTM D1003Aに準拠した方法で測定される、12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する、ポリマーフィルムもしくは押出製品に関する。
【0010】
本明細書においてさらに使用される用語、半結晶性ポリアミドは、特に具体的に表現されない限り、半芳香族の半結晶性ポリアミドおよび脂肪族の半結晶性ポリアミドの両方を含むことを意図されるであろう。
【0011】
光学的に透明な製品とは、特に明記されない場合には、ASTM D1003Aに準拠して測定される、少なくとも88%の光透過率を有する不可欠な部分を含む製品と本明細書においてはさらに理解される。光透過率とは、それに入射する光束に比べて検体を透過した光束の百分率と理解される。ヘーズは、2.5°以下だけ入射光から外れる、前方散乱によって検体を通過する透過光の百分率である。光学特性は、フィルムそれ自体について、または厚さに対する補正なしに、押出製品における薄い部分について測定される。
【0012】
さらに本明細書において用語、光学的に透明な、および、透明な、は、互いに並べて使用されてもよいが、特にはっきりと述べられない限り、同じ意味、すなわち光学的に透明な、を有する。
【0013】
フィルムは、単語フィルムもしくはシートで一般に示される平坦な形状の製品という通常の意味を有すると本明細書においては理解される。単語フィルムおよびシートは、それぞれ、たとえばより薄い製品とより厚い製品とを、または半エンドレス製品と有限長さの製品とを区別するために他のどこかで使用されてもよいが、単語フィルムはこれらのすべてをカバーすると本明細書においては理解される。半エンドレスの薄いフィルムは、長いロールフィルムの形態を容易に取ることができるが、有限長さのシートはパイルへ積み重ねることができる。
【0014】
用語、押出製品とは、押出法によって得られるが、フィルムもしくはシートではない製品と本明細書においては理解される。フィルムもしくはシートは、その厚さは別として、典型的には2次元に伸びているが、押出製品は、それが3次元に伸びているという点においてフィルムもしくはシートとは異なると本明細書においては理解される。たとえば、押出製品はチューブまたは異形材であってもよい。
【0015】
12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する押出製品の部分は、本明細書においてはまた、透明な部分と表示される。
【0016】
用語、融解温度とは、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランにおけるDSCによってASTM D3418−03に準拠した方法で測定される、融解温度と本明細書においては理解される。本明細書においては、融解吸熱の最大ピークが融解温度として取られる。
【0017】
本明細書において述べられる半結晶性ポリアミド(A)の融解温度Tm−Aは、ポリマーについて測定されるが、組成物の融解温度Tm−Cは、フィルムもしくは押出製品における組成物について測定される。
【0018】
半結晶性ポリマーとは、少なくとも5J/gの融解エンタルピーを有するポリマーと本明細書においては理解される。それに沿って、非晶質ポリマーは5J/g未満の融解エンタルピーを有するポリマーであると本明細書においては理解される。
【0019】
用語、融解エンタルピーとは、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランにおけるDSCによってASTM D3418−03に準拠した方法で測定される、発熱エネルギーと本明細書においては理解される。
【0020】
本明細書において使用される用語、ガラス転移温度(Tg)とは、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランにおいてDSCによってASTM E 1356−91に準拠した方法で測定される、ガラス転移範囲に入り、そして最高のガラス転移速度を示す、温度と本明細書においては理解される。最高のガラス転移速度を示す温度は、親熱曲線の変曲点と一致する親熱曲線の(時間についての)一次導関数のピークでの温度として測定される。
【0021】
本発明による透明なポリマーフィルムおよび押出製品におけるポリマー組成物は、前記高融点の半結晶性ポリアミドと並んで1つ以上のその他のポリマーおよび/または1つ以上の添加剤を含んでもよい。しかし、必要条件は、生じたポリマー組成物が少なくとも270℃の融解温度(Tm−C)を有することである。好ましくはTm−Cは270〜340℃の範囲に、より好ましくは280〜330℃の、またはさらに良好には290〜320℃の範囲にある。融解温度が高ければ高いほど、高い耐熱性はより良好である。他方では、一般に融解温度が低ければ低いほど、加工がより容易である。
【0022】
少なくとも270℃である、半結晶性ポリアミド(A)の融解温度Tm−Aは、広範囲にわたって変化してもよく、340℃ほどに高くてもまたはそれよりさらに高くてもよい。この後者は、半結晶性ポリアミド(A)の熱安定性およびそれの配合可能性に依存する。加工は、このような高融点のポリアミドが別のより低融点の半結晶性または非晶質ポリアミドとブレンドされるときに改善されるであろう。好ましくは、半結晶性ポリアミドは、270〜340℃の範囲のTm−Aを有する。
【0023】
ポリマー組成物、またはその中の半結晶性ポリアミド(A)は、大きい範囲にわたって変化してもよい、融解エンタルピーを有する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態においては、ポリマー組成物、またはその中の半結晶性ポリアミド(A)は、少なくとも25J/g、より好ましくは少なくとも40J/g、さらにより好ましくは少なくとも50J/gの融解エンタルピーを有する。本発明に沿って、融解エンタルピーは、半結晶性ポリアミド(A)の融点に第一に関係し、その結果として270〜340℃の温度範囲内、またはこの温度範囲に近い。好ましくは、測定される融解エンタルピーの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%は、270〜340℃の温度範囲内にあるものとする。
【0025】
透明な製品の結晶化度が高ければ高いほど、耐熱性および高温での寸法安定性、より良好な機械的特性、およびより低い熱膨張はより良好である。特にフィルムの延伸および/またはヒートセッティングまたは押出製品のアニーリング後に、融解エンタルピーは増加する可能性があり、70J/gより十分に上の値、90J/gまたはそれ以上に高い値さえ達成する可能性があり、依然として透明なポリアミドを持ちながら、おそらく90J/g超の値を達成する。フィルムは120J/gまたはそれ以上に高い融解エンタルピーを有する可能性があるが、非常に良好な特性は、融解エンタルピーが25〜100J/gの範囲にあるときに既に得られる。
【0026】
半結晶性ポリアミド(A)は、少なくとも270℃、好ましくは270〜340℃の範囲にある融解温度を有するあらゆる半結晶性ポリアミドであってもよい。好適には前記半結晶性ポリアミドは、半結晶性の半芳香族ポリアミド、または半結晶性の脂肪族ポリアミドもしくは組み合わせ、またはそれらのあらゆるブレンドである。半結晶性ポリアミド(A)が異なる半結晶性ポリアミドのブレンドからなる場合には、このブレンドの融解温度は依然として少なくとも270℃である、好ましくは270〜340℃の範囲にあるものとする。
【0027】
半結晶性の脂肪族ポリアミドは、たとえばポリテトラメチレンアジパミド(PA46)、またはPA46のコポリアミド、たとえばPA46とPA6もしくはPA66とのコポリアミド、またはPA66とPA6CHDAとのコポリアミド(ここで、CHDAは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位を表す)であることができる。
【0028】
半結晶性の半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミンに由来する繰り返し単位のポリアミドであって、ジカルボン酸か、ジアミンかのどちらか、または両方が芳香族成分を含むが、残りが、線状、分岐、もしくは環状であることができる、脂肪族ジカルボン酸および/またはジアミン、および/またはアリール脂肪族ジカルボン酸およびジアミンを含むポリアミドであることができる。
【0029】
好適な芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸およびイソフタル酸である。
【0030】
好ましくは、半結晶性の半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸としてのテレフタル酸に由来する繰り返し単位を含む。好適な芳香族ジアミンの例は、メタ−キシリレンジアミンおよびパラ−キシリレンジアミンである。
【0031】
好適な半結晶性の半芳香族ポリアミドの例としては、270〜350℃の範囲の融解温度を有するPA7T、PA9T、PA10TおよびPA12Tのようなホモポリアミド、ならびにPA4T、PA5T、PA6Tおよび/またはPA8Tと、たとえばPA7T、PA9T、PA10T、PA11TPA12T、PA6、PA66、および/またはPMXD6とのコポリアミドが挙げられる。PA4T、PA5T、PA6TおよびPA8Tのホモポリマーは、340℃より上の融解温度を有するが、コポリマーは、340℃未満の融解温度を有するように調合することができる。好適なコポリアミドとしては、PA10T/6T、PA9T/M8T(ここで、M8=2−メチルオクタメチレンジアミン)、PA6T/5T、PA6T/M5T(ここで、M5=2−メチルペンタメチレンジアミン)、およびPA6T/10Tが挙げられる。ポリアミドは、本明細書で上のコポリアミドにおいて述べられたものと並んで、他のジアミンおよび二酸の他の繰り返し単位を含んでもよく、こうしてより複雑なコポリアミドを形成する。好適な半結晶性の半芳香族コポリアミドのさらなる例については、Kunststoff Handbuch、(Carl Hanser Verlag 1998)Band3/4 Polyamide chapter 6を参照されたい。
【0032】
好ましくは、半結晶性の半芳香族ポリアミドは、290〜335℃の範囲の、より好ましくは310〜330℃の範囲の融解温度を有する。より高い最低融解温度で、フィルムはより良好な熱特性および寸法特性を有する。より低い最高融解温度で、ポリマー組成物は透明なフィルムもしくは押出製品へより容易に加工することができる。より高い融解温度は、たとえば、より多い量のテレフタル酸および/または脂環式ジアミンもしくは芳香族ジアミン、または短鎖線状脂肪族ジアミンを使用することによって成し遂げることができる。当業者は、一般常識および所定の実験を用いて融点を適合させることができる。
【0033】
それぞれ、本発明による透明なフィルム、押出製品の一実施形態においては、半結晶性ポリアミド(A)は、
(a)25〜45モル%のテレフタル酸、
(b)5〜25モル%の、テレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸、および/または脂肪族ジカルボン酸、
(c)5〜30モル%の、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンおよびペンタメチレンジアミンからなる群から選択されるジアミン、
(d)20〜45%の少なくとも6個のC原子を含むジアミン、および任意選択的に、
(e)0〜10モル%の1つ以上のアミノカルボン酸およびまたはラクタム、ならびに
(f)0〜3モル%の、アミノ基および/またはカルボン酸基において一官能性または三官能性である化合物
に由来する繰り返し単位からなる半結晶性の半芳香族コポリアミド(A−X)であって、
a〜fのそれぞれのモル%はa〜fの合計に対するものである、コポリアミド(A−X)である。
【0034】
成分a〜fは、次の量で、個々に、または互いに組み合わせて好ましくは存在する:(a)35〜45モル%;(b)5〜15モル%;(c)10〜25モル%;(d)15〜25モル%;(e)0〜5モル%;および(f)0〜1モル%(a〜fのそれぞれのモル%はa〜fの合計に対するものである)
【0035】
本実施形態による透明なフィルムもしくは押出製品は、透明なPA6フィルムを製造するために典型的に適用されるフィルム巻取り条件を用いて、容易に製造できることが分かった。もちろん押出機中の溶融体の温度は、半結晶性ポリアミドA−Xのより高い融点のために採用されなければならない。前記半結晶性ポリアミドが325℃ほどに高い融解温度を有し、そして第2ポリマーなしに使用されるときでさえ、透明なフィルムが得られた。透明度はまた、前記加熱によって誘導され、そして加熱時に起こる結晶化にもかかわらず、フィルムの加熱後にも保持された。
【0036】
この点において、約320℃の融解温度のPA6T/66ポリアミドからのフィルムの製造のために同じ条件を適用すると透明なフィルムをもたらさず、その代わりに完全に曇ったフィルムをもたらしたことが指摘される。
【0037】
好ましくは、前記実施形態において半結晶性ポリアミド(A)は、290〜335℃の範囲の、より好ましくは310〜330℃の範囲の融解温度(Tm−A)を有する。より高い融解温度は、たとえば上記の実施形態における半結晶性の半芳香族コポリアミドにより多い量の成分(a)およびまたは成分(c)を使用することによって達成することができる。
【0038】
本発明による透明なフィルムもしくは押出製品の別の実施形態において、半結晶性ポリアミド(A)は、ポリテトラメチレンアジパミド(PA46)またはPA46のコポリアミドを含み、PA46は、テトラメチレンジアミンおよびアジピン酸に由来する繰り返し単位からなる。PA46のコポリアミドは、(i)テトラメチレンジアミンおよびアジピン酸に由来する繰り返し単位、ならびに(ii)その他の二酸、ジアミンおよび/またはアミノカルボン酸および/またはラクタムに由来する繰り返し単位を含む。本発明に沿ってコポリアミドは、少なくとも270℃、より良好には範囲270〜340℃の融解温度を持たなければならない。好ましくは、テトラメチレンアジパミドに由来する繰り返し単位(i)は、コポリアミドの総重量に対して、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%の量で存在する。繰り返し単位(i)の含有率が高ければ高いほど、それぞれ、透明なフィルム、押出製品の熱特性および寸法安定性はより良好である。
【0039】
PA46コポリアミドのポリアミドフィルムは公知である。しかし、これらはすべて曇った半透明のフィルムである。これは、とにかくPA46の透明なフィルムの製造を阻止すると考えられていた、PA46の速い結晶化速度のためであると一般に考えられる。本発明者らは、押出フィルムが冷たい急冷液中で直ぐに急冷されるフィルム製造方法でだけでなく標準的なフィルム製造方法でも、すぐ後にピック−アップロールによって巻き取られることを確認した。こうして得られたフィルムは曇っており、幾つかの不規則性および白斑を示した。本発明者らは、冷却ロールが押出装置のスリットダイの非常に近くに置かれ、氷水で冷却されるフィルム押出法を適用することによって透明なPA46フィルムを製造することに成功した。
【0040】
こうして得られた透明なPA46フィルムは、高温でのフィルムのより長いアニーリング時に透明なままであった。フィルムは、DSC測定における高い融解エンタルピーによって示されるように高レベルの結晶化度を示した。半芳香族の半結晶性ポリアミドで作製されたフィルムとは対照的に、PA46フィルムは、前記DSC測定において後結晶化のいかなる兆候も示さなかった。これは、透明なPA46フィルムが既に結晶化していたからと解釈することができよう。それにもかかわらずフィルムは高度に透明であった。
【0041】
上記の押出法から得られた透明なPA46フィルムはまた、フィルムの損傷または破断なしに高い延伸レベルまで二軸延伸することができた。これは、延伸することがより困難であり、そして延伸プロセスの早期に既にピンホールおよびその他の欠陥を示した上記の曇ったPA46フィルムとは対照的であった。
【0042】
主要化合物として高融点の半結晶性ポリアミド(A)を含む、本発明による光学的に透明なポリマーフィルム、ならびに押出製品は、非常に良好な熱安定性および寸法安定性という利点を有する。この透明なポリマーフィルムはまた、酸素(O)および二酸化炭素(CO)に対して低い透過性を有する。
【0043】
本発明でのポリマー組成物における第2ポリマー(B)の使用は、より高い融点の半結晶性ポリアミドと組み合わせて特に有利であり、それによって本発明による透明なフィルムもしくは製品を製造するための融解温度より上の融解温度での半結晶性ポリアミドの加工を容易にする。
【0044】
第2ポリマー(B)は、改善された特性のフィルムを達成するために比較的大量にさらに存在してもよい。使用することができる第2ポリマーの量は、両方とも半結晶性であるか、第1のものが半結晶性であり、そして他のものが非晶質であるかのどちらかである、半結晶性ポリアミド(A)および第2ポリマー(B)の特質、半結晶性ポリマーの融解温度、ならびに2つのポリマー間の相溶性に依存する。
【0045】
特に、より高い融点の半結晶性ポリアミド、たとえば300〜340℃の範囲のTm−Aの半結晶性ポリアミドとの組み合わせにおいて、高い耐熱性を持ったフィルムもしくは押出製品を依然として保持しながら、第2ポリマー(B)の量はさらに多くてもよい。
【0046】
幾分より低い融点の半結晶性ポリアミド(A)、たとえば280〜300℃の範囲のTm−Aのポリアミドとの組み合わせにおいて、使用することができる量は、しかし依然として相当量であることができ、その間ポリマー組成物の融解温度Tm−Cを270〜340℃の範囲に保持する。270〜280℃の範囲のTm−Aの半結晶性ポリアミド(A)を用いると、第2ポリマーの存在は、ポリマー組成物の融解温度Tm−Cにとって決定的に重要であろうし、その量は、まったく存在しないわけではない場合、好ましくは非常に低い。
【0047】
好ましくは、第2ポリマーの量は制限され、それによってさらにより良好な機械的特性および熱特性を得る。より良好な特性は、高温でおよび/または湿潤条件下により良好な耐クリープ性、より高い機械的強度、およびより良好な寸法安定性にあることができる。より少ない量の第2ポリマーで、フィルムはまた、より低いOおよび/またはCO透過性を示す。
【0048】
好適には、第2ポリマーは1〜40重量%または、より厳密には10〜25重量%の量で存在する。第2ポリマーについての好ましい量は、もしあれば、0〜25重量%、さらにより良好には0〜10重量%の範囲にある。本明細書において重量百分率は、本明細書の全体にわたってそうであるように、特に明確に記載のない限り、ポリマー組成物の総重量に対するものである。
【0049】
脂肪族の半結晶性ポリアミドが存在する場合には、第2ポリマーはとにかく25重量%までに制限されなければならない。
【0050】
第2ポリマー(B)は好適には、270℃未満の融解温度を有する非晶質の半芳香族ポリアミドおよび/または半結晶性の脂肪族または半芳香族ポリアミドを含んでもよい。このような非晶質または低融点の半結晶性ポリアミドである第2ポリマー(B)は、半結晶性ポリアミド(A)と十分に相溶性であり、より高い透明度およびより低いヘーズ値をもたらすという利点を有する。
【0051】
このような非晶質またはより低い融点の半結晶性ポリアミドは、半結晶性ポリアミド(A)のそれよりも高いOおよび/またはCO透過性を十分に有する可能性がある。第2ポリマー(B)の25重量%以下の含有率で、このようなより高いOおよび/またはCO透過性を有するときでさえ、透明なフィルムにおける半結晶性ポリアミド(A)の低いOおよび/またはCO透過性はほとんど影響を受けないことが観察された。
【0052】
本発明において好適に使用することができるこのようなより低い融点の半結晶性ポリアミドは、例えばポリアミド−6である。
【0053】
本発明によるフィルムもしくは押出製品におけるポリマー組成物は、半結晶性ポリアミド(A)またはそれと第2ポリマー(B)とのブレンドと並んで、1つ以上の添加剤を任意選択的に含む。この添加剤、またはこれらの添加剤は、透明度が損なわれない、少なくとも有意の程度に損なわれないように個々の量および組み合わせが選択されるという条件で、透明なフィルムに使用されるあらゆる補助添加剤であることができる。これらの添加剤は、可塑剤、安定剤、染料、蛍光増白剤、着色剤、滑剤、ナノスケール充填剤および強化材からなる群から選択されてもよく、好ましくは熱安定剤および/またはナノスケール充填剤を含む。添加剤のタイプおよび量は、一般常識および所定の測定により当業者によって選択されることができる。好適には、この添加剤、またはこれらの添加剤は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、0.25〜5重量%の範囲の量で存在する。本明細書において重量%は、組成物の総重量に対するものである。
【0054】
本発明によるフィルムもしくは押出製品におけるポリマー組成物は、
重量%がポリマー組成物の総重量に対するものとして、
(A)60〜100重量%の、270〜340℃の範囲のTm−Aを有する半結晶性の半芳香族ポリアミド、
(B)0〜40重量%の第2ポリマー、および
(C)0〜10重量%の少なくとも1つの添加剤
から都合よくなってもよい。
【0055】
A、BおよびCの量は、前記範囲内で変化することができ、それと同時にそれらは、A、BおよびCの組み合わせた量が100%であるという意味で互いに関連していることが指摘される。
【0056】
好ましくは、ポリマー組成物は、
重量%がポリマー組成物の総重量に対するものとして、
(A)75〜99.75重量%の、270〜340℃の範囲のTm−Aを有する半結晶性ポリアミド、
(B)0〜25重量%の第2ポリマー、および
(C)0.25〜10重量%の少なくとも1つの添加剤
からなる。
【0057】
ある特定の実施形態においては、ポリマー組成物は、
重量%がポリマー組成物の総重量に対するものとして、
(A)85〜99.5重量%の、270〜340℃の範囲のTm−Aを有する半結晶性ポリアミド、
(B)0〜14.5重量%の第2ポリマー、および
(C)0.5〜5重量%の少なくとも1つの添加剤
からなる。
【0058】
本発明によるフィルム、ならびに本発明による押出製品における薄い透明な部分は、十分な透明度を依然として持ちながら、広範囲にわたって変化する厚さを有してもよい。この範囲は、適用されるプロセス条件にだけでなく半結晶性ポリアミドのタイプにも依存するであろう。上記のポリアミド(A−X)のような半結晶性の半芳香族コポリアミドの場合、この厚さは、良好な透明特性を依然として持ちながら、500μmまたはさらにそれ以上に高くてもよい。厚さは1μmまたはそれ以下の低さであってもよい。好ましくは厚さは、1〜200μmの範囲にある。ポリマー組成物における主成分としてのポリアミド46で、フィルムもしくは押出製品の薄い透明な部分の厚さは一般により低く、好適には厚さは1〜200μmの好ましい範囲にある。
【0059】
一般に、より好ましい厚さは、5〜150μmの範囲にあり、または10〜100μmの範囲でさえあり、またはさらにより好ましくは20〜60μmの範囲にある。
【0060】
本発明によるフィルム、ならびに押出製品における薄い透明な部分はまた、ASTM D1003Aに準拠して測定されたときに、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満のヘーズ、および/または少なくとも90%、より好ましくは92%超の光透過率を有する。
【0061】
本発明はまた、本発明によるような透明なポリマーフィルムの製造方法に関する。本発明による方法は、
(1)本明細書において上に記載されたような少なくとも270℃の融解温度(Tm−A)を有する半結晶性ポリアミド(A)を含むポリマー組成物が加熱され、スリットダイを通して溶融押出されて押出ポリマー層を形成する工程と、
(2)この押出ポリマー層が40℃未満の温度を有する冷却ロール上に導かれ、それによってポリマーフィルムを形成する工程と、
(3)ポリマーフィルムが集められる工程と
を含み、
ここで、このポリマーフィルムは、ASTM D1003Aに準拠して測定されるときに12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する。
【0062】
好ましくは、スリットダイと冷却ロールとは、最大2cm、より好ましくは1.5cmの距離だけ離間されており、冷却ロールの表面温度は高くても10℃、より好ましくは高くても8℃である。本方法の好ましい実施形態においては、この距離は最大1.3cmであり、冷却ロールの表面温度は高くても5℃である。より好ましくは冷却ロールは湿潤表面を有し、氷水で冷却される。これは、押出ポリマー層と冷却ロールとの間のより良好な接触およびポリマーフィルムのさらにより良好な冷却を提供する。この後者の実施形態は、比較的大きい厚さの透明なPA46フィルムを製造するために有利に適用される。冷却ロールと押出ポリマー層との間のさらにより良好な接触を達成するために、静電気ピン止めおよび空気ピン止めのような、ピン止め技術が適用されてもよい。
【0063】
本発明はまた、ポリマーフィルムの後処理方法に関する。前記方法において、本発明によるもしくは本明細書において上に記載された方法によって得られた透明なポリマーフィルムは、フィルムが延伸される延伸工程にかけられるか、またはガラス転移温度(Tg−C)および融解温度(Tm−C)を有する透明なポリマーフィルムがTg−CとTm−Cとの間の温度まで加熱されるおよび/またはその温度である一定期間保たれるヒートセッティングもしくはアニーリング工程にかけられる。
【0064】
本方法によって得られるフィルムは、熱処理時に誘導結晶化を示す、非晶質フィルムである可能性があり、そしてこのフィルムは熱処理後に融解温度を示すにすぎないので、上に述べられる融解温度(Tm−C)は、処理後のフィルムについて測定される融解温度に関する。当業者は、DSC測定によって融解温度を測定し、それに応じて後処理プロセス中に適用される温度を調節することができるであろう。
【0065】
透明なポリマーフィルムの製造方法およびポリマーフィルムの後処理方法は、別々に実施されてもよいし、または1つの連続したプロセスに組み合わせられてもよい。延伸工程、ヒートセッティング工程およびアニーリング工程の効果は、機械的特性の向上および水取り込みの減少である。
【0066】
本発明はまた、前記プロセスで得られる、延伸された透明なフィルムに関する。
【0067】
本発明はまた、透明な部分を含む押出製品の製造方法に関する。本方法は、
i.上記のようなポリマー組成物が加熱され、ダイを通して溶融押出される工程と、
ii.この押出ポリマー組成物が、40℃未満の温度を有する急冷液を通して導かれ、それによって固体製品を形成する工程と、
iii.この固体製品が集められる工程と
を含み、
ここで、この固体製品は、ASTM D1003Aに準拠して測定されるときに12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する部分を含む。
【0068】
好ましい実施形態においては、急冷液の温度は、20℃未満、より好ましくは10℃未満である。
【0069】
本発明はまた、上記の本発明による、または下に記載される方法によって得られる、透明なポリマーフィルムの使用に、ならびに上記の本発明による押出製品の特定の実施形態に関する。
【0070】
本発明による押出製品は都合よく、容器または注射器などの、スチーム滅菌可能な医療物品であってもよい。
【0071】
本発明による透明なポリマーフィルムは、バリアフィルム向けおよび電子用途におけるなどの、多くの用途向けに使用することができる。
【0072】
バリアフィルムは有利には、単層状および多層状包装材料において適用することができる。
【0073】
フィルムは、電気および電子用途向けに使用されてもよい。例としては、電極、センサー、光電池およびその他の光学素子、ディスプレー構成要素における、PCBキャリアなどとしての、より具体的には、電子ペーパーおよび有機ELディスプレーを含む、LCDおよびOLEDなどの、フラットパネルディスプレーおよびフレキシブルディスプレー用のバックプレインとしてのフィルムの使用が挙げられる。
【0074】
本発明による透明なポリマーフィルムは、超高バリア性能をもたらす、無機物堆積用の基材材料としての使用に著しく好適である。無機物堆積は任意選択的に構造化されてもよい。好適には、無機堆積物は、インジウム−スズ酸化物(ITO)または銅クラッディングである。これらは、これらのフィルムを、ITO、a−Si TFTおよび低温ポリシリコーンTFT(LTPS)に有用なものにする。
【0075】
本発明は、以下の実施例および比較実験でさらに例示される。
【0076】
[材料]
PA−1 ポリアミド46、脂肪族ポリアミド、Tm 295℃、Tg 80℃、VN=230ml/g
PA−2 ポリアミド46/6、脂肪族コポリアミド、7重量%カプロラクタム、Tm 285℃、Tg 78℃、VN 215ml/g
PA−3 ポリアミド6T/4T/66、半芳香族コポリアミド、Tm 325C、Tg 125℃、RV 1.9
PA−4 ポリアミド6T/66、半芳香族ポリアミド、Tm 320℃、
Tg 100℃、RV 2.6
PA−5 ポリアミド6、脂肪族ポリアミド、Tm 220℃、Tg 51℃、RV=3.2
【0077】
ポリアミドのそれぞれは、加工助剤および熱安定剤を含む、約0.5〜1.0重量%の標準添加剤パッケージを含んでいた。本明細書において述べられる融解温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、および相対粘度(RV)は、下に記載される方法によって測定された。
【0078】
[方法]
[粘度:相対粘度(RV)、粘度数(VN)]
相対粘度(RV)の測定は、ISO 307、第4版に準拠して行った。この測定のために、それの乾燥を24時間の間80℃で高減圧(すなわち50ミリバール未満)下に行った、あらかじめ乾燥したポリマーサンプルを使用した。相対粘度の測定は、25.00±0.05℃で100ml溶剤中1グラムのポリマーの濃度で行った。半芳香族ポリアミドPA−1〜PA−4用の溶剤は、硫酸96.00±0.15%m/mであり、PA−5(ポリアミド6)用には溶剤は90重量%ギ酸であった。溶液(t)および溶剤(t)のフロー時間を、25℃でSchott製のDIN−Ubbelohde(参照番号53020)を用いて測定した。
相対粘度は、RV=t/tと定義される。
粘度数は、次の通り計算した:
【数1】



式中、
VN=粘度数(mL/g)
t=秒単位での、サンプル溶液の平均フロー時間
=秒単位での、溶剤の平均フロー時間
c=濃度、g/mL(=0.005)
【0079】
[DSC測定:Tg、Tmおよび融解エンタルピー]
融解温度(Tm)は、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランにおけるDSCによってASTM D3418−03に準拠して測定した。
【0080】
融解エンタルピーは、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランにおけるDSCによってASTM D3418−03に準拠して測定した。
【0081】
ガラス転移温度(Tg)は、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランにおけるDSCによってASTM E 1356−91に準拠して測定され、ガラス転移範囲に入り、そして最高のガラス転移速度を示す。
【0082】
[光学特性]
光学特性は、ハロゲン光源Cを含むBYK Gardner XL 211 Hazeguard Systemを用いて、ASTM D1003Aに準拠して測定した。検出装置は、検体によって散乱される光を集めるための積分球を含んだ。集められた光を次にシリコン光検出器で測定した。検体を、ヘーズおよび/または透過率の測定のために入口ポートに置いた。使用された試験検体は50mmの横断面を有した。
【0083】
光透過率は、それに入射する光束と比べて検体を透過した光束の百分率である。
【0084】
ヘーズは、2.5°以下だけ入射光から外れる、前方散乱によって検体を通過する透過光の百分率である。
【0085】
[加工]
ポリアミドフィルムを、フィルムキャスト押出法によって製造した。単軸スクリュー押出機(スクリュー径30mm、L/D=30)を、調節可能なダイ−リップのスロットダイ付き供給ブロックに連結した。スロットダイの長さは300mmであり、ダイ幅は0.8mmであった。押出機にポリアミド材料を供給した。フィルムを、冷却ロールによって巻き取り、冷却ロール上で冷却した。フィルムの厚さは、それによって冷却ロール巻取速度と押出速度との間のドローダウン比に影響を及ぼす、冷却ロール巻取速度によって調節した。押出速度は一定に保たれ、14のドローダウン比で、フィルムの全厚さが約50μmであるようなものであった。
【0086】
下の実施例において記載されるようなすべてのフィルムは、水分との接触を防ぐために製造後に直接アルミナバッグにパックされた。
【0087】
[比較実験A]
PA−1を、300℃の押出域、供給ブロックおよびダイの温度設定でフィルム加工した。冷却ロールの温度は8℃であった。ダイとフィルムが冷却ロールに触れる場所との間の距離は約1cmであった。フィルム加工は、エアナイフの存在なしで実施した。フィルム厚さは48μmであった。生じたフィルムの光学品質は、局部的な白斑ありで全く不良であった。
【0088】
[実施例1]
実施例1は、エアナイフが適用され、そして冷却ロールの温度が3℃であったことを除いて比較実験Aと同一であった。この温度急冷は、氷水での冷却ロールの冷却によって達成した。フィルムの生じた厚さは47μmである。CE−Aと比較して、フィルムの光学特性は著しく向上し;白斑はもはやまったく存在しなかった。肉眼によって判断されるような光透明度は良好であった。前に記載された方法に従って測定される光透明度は92.5%(SD 0.1%)であり、ヘーズ値は2.3%(SD 0.4%)であった。
【0089】
[実施例2]
実施例2は、1つの相違ありで実施例1と同一であった:フィルム厚さを、冷却ロール巻取速度を下げることによって79μmに増やした。肉眼によって判断されるフィルムの光学品質は、前実施例に比べてより低かった。測定された光透明度は92.3%(SD 0.1%)であり、ヘーズ値は11.4%(SD 1.0%)であった。
【0090】
[比較実験B]
比較実験Bは、1つの相違ありで実施例1と同一であった:フィルム厚さを、冷却ロール巻取速度を下げることによって98μmに増やした。肉眼によって判断されるフィルムの光学品質は、前実施例に比べてより低かった。測定された光透明度は86.3%(SD 0.1%)であり、ヘーズ値は16.8%(SD 1.0%)であった。
【0091】
[実施例3]
実施例3は、PA−2がPA−1の代わりにベース材料として使用されたことを除いては実施例1と同一であった。フィルム厚さは47μmであった。肉眼によって予測されるような光透明度は良好であった。前に記載された方法に従って測定された光透明度は92.5%(SD 0.1%)であり、ヘーズ値は1.5%(SD 0.2%)であった。
【0092】
[実施例4]
実施例4においてはPA−3材料を、340℃の押出域のならびに350℃の供給ブロックおよびダイの温度設定でフィルム加工した。ダイとフィルムが冷却ロールに触れる場所との間の距離は1〜1.3cmであった。冷却ロールの温度は17℃であった。フィルム加工は、エアナイフの存在で実施した。生じたフィルムは48μmの厚さを有した。生じたフィルムの光学品質は、92%超の透明度および3%未満のヘーズで、良好であった。
【0093】
[比較実験C]
比較実験Cは、PA−4材料がPA−3の代わりに適用されることを除いては実施例4と同一であった。生じたフィルムは45μmの厚さを有した。フィルムは、前実施例において記載されたフィルムより幾分曇り、透明性がはるかにより少なく見え、光透明度は88%未満であり、ヘーズは12%を超えた。
【0094】
[実施例5]
実施例5は、PA−3とPA−5とのブレンド、比80/20が使用されたことを除いて、実施例4と同一であった。生じたフィルムは48μmの厚さを有し、光学品質は良好であった。
【0095】
[比較実験D]
比較実験Dは、PA−5材料がPA−3の代わりに適用され、そして押出域、供給ブロックおよびダイの温度設定が250℃に調節されたことを除いては実施例4と同一であった。生じたフィルムは47μmの厚さを有し、光学品質は良好であった。
【0096】
[さらなる測定および試験]
上記の実施例において記載されたようなすべてのフィルムは、水分との接触を防ぐために製造後に直接アルミナバッグにパックされた。
【0097】
[DSC研究]
上記フィルムの幾つか、実施例1、3および4を、これらのフィルムの結晶化度および結晶化挙動について知るために、DSCによって研究した。フィルムのサンプルをアルミナバッグから取り出し、直接その後DSCによって測定した。
【0098】
一次加熱曲線によって得られるようなサーモグラムが議論される。実施例4のフィルムは、ガラス転移温度を通った後にかなりの低温結晶化ピークを示した。それは、フィルム材料がフィルム製造後に高度に非晶質であったことを示唆すると考えられる。融解温度は、64J/gの対応する融解エンタルピーで、320℃であった。室温の下まで10℃/分で溶融体からサンプルを冷却し、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランへのサンプルの暴露後に、低温結晶化プロセスについての兆候はまったく見いだされなかった。これは、フィルム製造プロセスから得られたままのフィルムが、その高い透明度を説明し得る、非晶質特性を有することを示唆する。しかし、フィルムのアニーリング時に、フィルムは、アニーリングによって誘導され、そしてDSCによって証明される結晶化にもかかわらず、その透明特性を保った。
【0099】
実施例1および3のフィルムサンプルのDSCサーモグラムは、実施例4と比較して、異なる挙動を示した。ガラス転移温度と融点との間に低温結晶化についての兆候はまったく観察されず、フィルムがフィルム製造中に安定な結晶形態を成長させたことを示唆した。フィルムが光学的透明であるという事実と一緒に、もしあれば、存在する結晶子は非常に小さく、光の典型的な波長より小さいかもしれないという解釈があり得る。実施例1からのPA46フィルムの融解温度は、79J/gの融解エンタルピーで282℃であった。実施例3からのPA46フィルムの融解温度は、85J/gの融解エンタルピーで289℃であった。
【0100】
[アニーリングおよび水取り込み]
実施例1のフィルムの水取り込みは、熱重量分析によって測定した。微量天秤を、変化する相対湿度の雰囲気と組み合わせて使用した。フィルムサンプルを微量天秤に置き、フィルムが実験の開始時に乾燥していることを保証するために乾燥雰囲気中で順化させた。サンプルを85%相対湿度の雰囲気に曝し、フィルムの水取り込みによる重量増加を監視した。実施例1のフィルムの水取り込みは6.8重量%であった。一連の実験を、水取り込みを調べる前に260℃で窒素流れ下にオーブン中で熱アニールしたフィルムサンプルについて行った。アニーリング時間は変化した。8時間のアニーリング時間は、85%相対湿度で6.8重量%から5.2重量%への水取り込みの低下をもたらした。熱アニーリング時間を24時間に増やすと、4.6重量%の低下した水取り込みをもたらした。アニーリング時間を84時間までさらに増やすと、1.7重量%のさらにより低い水取り込みをもたらした。フィルムは、アニーリング後およびその後の水吸収後の両方で、それらの透明度を保持したことが目視により観察された。
【0101】
[延伸実験]
二軸フィルム延伸実験は、PA46フィルムについて行った。これらの実験は、オーブン中に置かれたテンタフレーム装置において行った。10cm×10cmの面寸法のフィルムを、この装置の側面に固定した。延伸を、アルミナバッグから取り出され、固定されそしてその後延伸温度まで熱風によって加熱されたフィルムについて行った。
【0102】
第1延伸実験において、比較実験Aからのフィルムを100℃の温度で延伸した。延伸プロセスは、フィルムの全面にわたって均一分散ではなかった。フィルムは非常に不均一に応答した。破断は、約1.4×1.4の延伸比で起こった。
【0103】
第2実験において、実施例2で製造されたままのフィルムを100℃の温度で延伸した。延伸プロセスはむしろ均一であり、透明な延伸フィルムをもたらした。破断が起こる前の最大延伸比は、約2.0×2.0であった。
【0104】
第3実験において、実施例3からのフィルムを一晩水浴中で膨潤させた。このフィルムを室温で延伸し、最大延伸比は2.2×2.2であった。フィルム延伸は均一に起こった。フィルムを120℃まで加熱し、3.0×3.0の総全体程度の延伸まで第2ステップで延伸した。生じたフィルムは均一であるように見え、透明であった。
【0105】
[酸素透過性試験]
実施例4および5ならびに比較実験Dのフィルムを酸素透過性試験にかけ、実施例4および5についての観察された透過性を、比較実験Dのそれに対して標準化した。比較実験Dについての1の標準化値と比較して、実施例4および5のフィルムは、互いにほんのわずかに異なる、はるかにより低い酸素透過性を有した:0.25対0.26。一見したところ、実施例4における半結晶性ポリアミドPA−3は、比較実験Dにおける脂肪族ポリアミドPA−6よりはるかに低い酸素透過性を示した。実施例5のブレンド中の20重量%PA−5の存在にもかかわらず、PA−3の低い酸素透過性は、少なくとも重量基準で予測することができるよりはるかに低い程度で、ほとんど影響を受けなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半結晶性ポリアミド(A)を含むポリマー組成物で作製された光学的に透明なポリマーフィルムもしくは押出製品であって、前記半結晶性ポリアミド(A)が、少なくとも270℃の融解温度(Tm−A)を有し、かつ前記半結晶性ポリアミド(A)が半芳香族の半結晶性ポリアミドからなるか、または半芳香族の半結晶性ポリアミドと脂肪族の半結晶性ポリアミドとのブレンドからなる場合には、それぞれ少なくとも60重量%の量で存在し、あるいは前記半結晶性ポリアミド(A)が脂肪族の半結晶性ポリアミドからなる場合には少なくとも75重量%の量で存在し、前記重量%は前記ポリマー組成物の総重量に対するものであり、前記ポリマー組成物が少なくとも270℃の融解温度(Tm−C)を有し、前記フィルムもしくは前記押出製品の一部が、ASTM D1003Aに準拠した方法で測定される、12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する、ポリマーフィルムもしくは押出製品。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランにおいてDSCによってASTM D3418−03に準拠して測定される、少なくとも25J/gの融解エンタルピーを有する、請求項1に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項3】
前記半結晶性ポリアミド(A)が、
(a)25〜45モル%のテレフタル酸、
(b)5〜25モル%の、テレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸、および/または脂肪族ジカルボン酸、
(c)5〜30モル%の、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンおよびペンタメチレンジアミンからなる群から選択されるジアミン、
(d)20〜45%の少なくとも6個のC原子を含むジアミン、
および任意選択的に、
(e)0〜10モル%の1つ以上のアミノカルボン酸およびまたはラクタム、
(f)0〜3モル%の、アミノ基および/またはカルボン酸基において一官能性または三官能性である化合物
に由来する繰り返し単位を含む半結晶性の半芳香族コポリアミドであり、
a〜fのそれぞれのモル%はa〜fの合計に対するものである、請求項1または2に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項4】
前記半結晶性ポリアミド(A)が、ポリテトラメチレンアジパミドであるか、または(i)テトラメチレンジアミンおよびアジピン酸に由来する繰り返し単位と(ii)その他の二酸、ジアミンおよび/またはアミノカルボン酸および/またはラクタムに由来する繰り返し単位とを含む、ポリテトラメチレンアジパミドのコポリアミドであり、テトラメチレンアジパミドに由来する前記繰り返し単位(i)が、前記コポリアミドの総重量に対して、少なくとも75重量%の量で存在する、請求項1または2に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、少なくとも1つのその他のポリマーおよび/または少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、270℃未満の融解温度を有する非晶質の半芳香族ポリアミドおよび/または半結晶性の脂肪族もしくは半芳香族ポリアミドを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が、
(A)60〜100重量%の半結晶性ポリアミド、
(B)0〜40重量%の少なくとも1つのその他のポリマー、
(C)0〜10重量%の少なくとも1つの添加剤
からなり、
前記重量%は前記ポリマー組成物の総重量に対するものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項8】
前記フィルムもしくは前記製品の一部の厚さが、最大でも500μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項9】
前記フィルムもしくは前記製品の一部が、ASTM D1003Aに準拠して測定されるときに5%未満のヘーズおよび少なくとも90%の光透過率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルムもしくは製品。
【請求項10】
(1)請求項1に記載のポリマー組成物が加熱され、スリットダイを通して溶融押出されて押出ポリマー層を形成する工程と、
(2)前記押出ポリマー層が40℃未満の温度を有する冷却ロール上に導かれ、それによってポリマーフィルムを形成する工程と、
(3)前記ポリマーフィルムが集められる工程と
を含む、透明なポリマーフィルムの製造方法であって、
前記ポリマーフィルムが、ASTM D1003Aに準拠して測定されるときに12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する方法。
【請求項11】
前記スリットダイおよび前記冷却ロールが、最大1.3cmの距離で離間されており、前記冷却ロールの表面温度は高くても8℃であり、より好ましくは前記冷却ロールが氷水で冷却される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のまたは請求項10もしくは11に記載の方法によって得られた透明なポリマーフィルムが、フィルムが延伸される延伸工程、および/またはヒートセッティング工程および/またはアニーリング工程にかけられ、ここで、ガラス転移温度(Tg)および融解温度(Tm)を有する透明なポリマーフィルムがTgとTmとの間の温度に加熱されるかまたはこの温度にある一定期間保たれる、ポリマーフィルムの後処理方法。
【請求項13】
i.請求項1に記載のポリマー組成物がダイを通して溶融押出される工程と、
ii.前記押出ポリマー組成物が、40℃未満の温度を有する急冷液を通して導かれ、それによって固体製品を形成する工程と、
iii.前記固体製品が集められる工程と
を含む押出製品の製造方法であって、
前記固体製品が、ASTM D1003Aに準拠して測定されるときに12%未満のヘーズおよび少なくとも88%の光透過率を有する部分を含む方法。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の押出製品を含むスチーム滅菌可能な医療物品。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のまたは請求項12もしくは13に記載の方法によって得ることができる透明なポリマーフィルムの、包装材料におけるまたは電気および電子用途における使用。

【公表番号】特表2012−515243(P2012−515243A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545741(P2011−545741)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050448
【国際公開番号】WO2010/081871
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】