説明

透明な発光塗膜およびその形成方法

【課題】電流を流すことにより発光する透明な塗膜を提供する。
【解決手段】基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)が(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順に存在し、上記各層(A)〜(E)が塗料組成物により形成されており、電流を流すことにより発光する透明な塗膜であって、誘電体層(B)、発光体層(C)は、0.38μm以下の粒子径を有する粉末とバインダー成分とを含んでいる塗料組成物により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な発光塗膜およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光層などの複数の層からなるEL素子は種々の表示装置やバックライトとして広く用いられている。このEL素子を構成する各層の形成は、蒸着法、インクジェット法、紫外線照射法、スクリーン印刷法によって行われるのがこれまで一般的であった。
【0003】
これに対し、上記各層を塗装で形成することによって、これまでの方法では不可能であった、大面積を有したり、三次元形状を有したりする基材上に発光する塗膜を形成することが可能となった(特許文献1参照)。しかし、この方法で得られる導電体層、誘電体層、発光体層は不透明であるため、透明な発光塗膜を得ることはできない。
【0004】
一方、透明で、かつ、電流のオン/オフで発光が制御できる有機EL素子が開示されているが、これは各層をフィルム状に積層させたものであり、塗料を塗装して得られたものではない(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−259572号公報
【特許文献2】特開2005−97774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、塗装によって得られる、通電の有無で発光が制御できる透明な塗膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の透明な塗膜は、基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)が(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順に存在し、上記層(A)〜(E)が塗料組成物により形成されており、電流を流すことにより発光する。
また、上記誘電体層(B)は0.38μm以下の粒子径を有する高誘電体粉末とバインダー成分とを含んでいる塗料組成物により形成することができ、上記発光体層(C)は0.38μm以下の粒子径を有する発光体粉末とバインダー成分とを含んでいる塗料組成物により形成することができる。さらに、上記導電体層(A)および上記導電体層(D)はそれぞれ導電性物質を含んでいる塗料組成物により形成することができ、上記表面層(E)はクリヤー塗料組成物により形成することができる。
本発明の透明な発光塗膜の形成方法は、基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)を(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で、塗装により各層を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光塗膜は、無通電時は透明で、通電時に発光する。このため、本発明の発光塗膜は、非発光時は下地の色が透けて見え、通電時は発光することにより、外観が大きく変化するので、意匠性を必要とする、例えば、橋梁、ガードレール、表示板などの大型構造物、ドアや壁などの建築物の構成品、および、車、家具、携帯電話などの物品などについて、適用可能である。また、本発明の透明な発光塗膜の形成は通常の塗装方法によって行われるので、従来のEL素子を形成するのに用いられていたスクリーン印刷などパターニング方法のように特殊な装置の必要がなく、大面積の発光体を得ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る透明な発光塗膜およびその形成方法の構成について記述する。なお、本明細書における透明とは、例えば、新聞紙の上にこの塗膜を置いた場合、新聞の文字が透けて見え、判読できる状態をいうものであり、いわゆる半透明なものを含み得る。具体的には、分光光度計で測定した透過率が60%以上であるものをいう。
【0009】
本発明の発光塗膜は、基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)が(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で、塗装により各層が形成されている複層塗膜であり、電流を流さない状態では透明であり、電流を流すと発光する。
【0010】
上記基材は、その上に塗料による層形成が可能なものであれば、特に材質は限定されない。例えば、ガラスなどの無機物、樹脂、プラスチックなどの有機物が挙げられる。さらに上記基材は板状に限らず、三次元形状を有するものであってもよい。また、上記基材は構造物の表面を構成するものであってもよい。
【0011】
本発明の発光塗膜においては、上記基材の表面に上記導電体層(A)が存在している。上記導電体層(A)は、導電性物質を含んでいる塗料組成物を塗布することにより形成される。上記導電性物質として、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリアセトンなどの導電性高分子を挙げることができる。
【0012】
上記導電体層(A)を形成するための導電性物質を含んでいる塗料組成物は、通常、溶媒を含んでいる。上記塗料組成物における溶媒の量は、乾燥後、透明な膜が得られる量であれば、特に限定されないが、例えば、上記導電性物質と溶媒との比率は、上記導電性物質の濃度が1質量%以上となる値であることが好ましい。上記溶媒として、例えば、水、アセトン、エタノール、酢酸エチルを用いることができる。また、上記塗料組成物には塗膜物性を調整するための添加剤が含まれていてもよい。
【0013】
また、上記導電性物質として、上記導電性高分子の代わりに、無機導電性物質を用いることができる。上記無機導電性物質としては、例えば酸化インジュウム錫(ITO)を用いることが好ましい。上記無機導電性物質を用いる場合、上記導電性高分子に比べ、上記無機導電性物質自体は造膜性を有さないので、一般的にバインダー成分を併用する。上記バインダー成分として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂を挙げることができる。なお、上記バインダー成分には、メラミン化合物、ブロックされていてもよいイソシアネート、エポキシ化合物などの硬化剤や、樹脂が不飽和結合を有している場合にはドライヤーなど、硬化のための添加剤が含まれていてもよい。上記無機導電性物質とバインダー成分との質量比は、乾燥後、透明な層になる比率であれば、特に限定されるものでないが、上記無機導電性物質の量はバインダー成分の質量より少ない方が好ましい。
【0014】
上記導電体層(A)は、上記導電性物質を含んでいる塗料組成物を上記基材上に塗布し、乾燥することによって形成される。上記塗料組成物の塗布は、ロールコーター塗装、スプレー塗装、ローラ塗装、刷毛塗り、浸漬塗装など公知慣用の種々の方法によって行うことができる。さらに、上記塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物に適合した条件、例えば、常温乾燥や加熱乾燥によって行うことができる。
上記導電性層(A)の膜厚は、例えば、5〜10μmであることが好ましい。
【0015】
なお、上記導電性層(A)には、上記導電体層(A)に対して電圧をかけるための電極が設置されている。この電極を設置するための方法については、後述の塗装方法のところで説明を行う。
【0016】
本発明の透明な発光塗膜は、上記導電体層(A)の上に、上記誘電体層(B)が塗装によって形成されている。
上記誘電体層(B)を形成するための塗料組成物は、高誘電体粉末とバインダー成分とを含んでいる。上記高誘電体粉末は、例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウムなどの誘電率が高いものが好ましい。
【0017】
上記高誘電体粉末の粒子径は0.38μm以下が好ましい。可視領域外の波長に相当する粒子径が0.38μmであるため、上記高誘電体粉末の粒子径がこの値より大きいと、得られる塗膜が透明にならないおそれがある。上記上限値はふるいの透過によって決定されるものである。一方、上記高誘電体粉末の粒子径の下限値は、特に規定されないが、例えば、0.01μmとすることができる。この値は、上記ふるいの他、レーザー光散乱などの計測機器により得ることができる。
【0018】
上記誘電体層(B)を形成するための塗料組成物において、上記高誘電体粉末とバインダー成分との質量比は、乾燥後、透明な層が得られれば、特に限定されるものでない。好ましい高誘電体粉末/バインダー成分の質量比は固形分換算で、1/100〜10/1である。
【0019】
上記塗料組成物に含まれるバインダー成分としては、上記導電体層(A)のところで説明したものが利用できる。上記塗料組成物には、塗膜物性を調整するための添加剤が含まれていてもよい。
【0020】
上記誘電体層(B)の形成は、先に形成した上記導電体層(A)上に、上記誘電体層(B)を形成するための塗料組成物を塗布し、乾燥させることにより行われる。上記塗布および乾燥については、上記導電体層(A)のところで説明した内容が適用できる。上記導電性層(A)の膜厚は、例えば、5〜10μmであることが好ましい。
【0021】
本発明の発光塗膜は、上記誘電体層(B)の上に、上記発光体層(C)が形成されている。上記発光体層(C)の形成には、発光体粉末とバインダー成分とからなる発光体層形成用塗料組成物が用いられる。上記発光体粉末としては、例えば、硫化亜鉛やセレン化亜鉛に活性化剤としてCu、Mn、Al、Cl、Brなどを添加して焼成したものが好ましい。
【0022】
また、上記発光体粉末の粒子径は、先に述べたように、0.38μm以下が好ましい。粒子径が0.38μmより大きいものを用いると、得られる層が透明にならないおそれがある。上記発光体粉末の粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μmとすることができる。
【0023】
上記発光体層形成用塗料組成物は、上記発光体粉末をバインダー成分に溶解したものである。上記発光体粉末とバインダーとの質量比は、前記発光体粉末がバインダー成分より少ない量であることが好ましく、さらに好ましくは、発光体粉末/バインダー成分の質量比で4/100以下である。
【0024】
上記発光体塗料組成物に含まれるバインダー成分としては、上記導電体層(A)のところで説明したものが利用できる。また、上記塗料組成物には、塗膜物性を調整するための添加剤が含まれていてもよい。さらに、上記塗布および乾燥については、上記導電体層(A)のところで説明した内容が適用できる。
上記透明発光体層(C)の膜厚は、例えば、10〜40μmであることが好ましい。
【0025】
本発明の発光塗膜は、上記発光体層(C)の上に、導電体層(D)が形成されている。上記導電体層(D)の形成については、上記導電体層(A)のところで説明した方法に基づいて行うことができる。上記導電性層(D)の膜厚は、例えば、5〜10μmであることが好ましい。
なお、上記導電体層(D)を形成するための塗料組成物は、上記導電体層(A)を形成するための塗料組成物と同一であっても異なるものであってもよい。また、上記導電体層(D)には、上記導電体層(A)と同様に、電圧をかけるための電極が設置されている。
【0026】
本発明の発光塗膜は、上記導電体層(D)の上に、最上層として上記表面層(E)が形成されている。上記表面層(E)の形成には、クリヤー塗料組成物が用いられる。上記クリヤー塗料組成物は特別なものでなく、上記導電体層(A)のところで説明したバインダー成分を含むものが利用できる。上記塗布および乾燥については、上記導電体層(A)のところで説明した内容が適用できる。上記透明表面層(E)の膜厚は、例えば、20〜50μmであることが好ましい。
【0027】
本発明の発光塗膜は、上記導電体層(A)、上記誘電体層(B)、上記発光体層(C)、上記導電体層(D)、上記表面層(E)からなる複層塗膜であり、この複層塗膜の膜厚は特に限定されるものではないが、例えば、45〜120μmである。
【0028】
次に、本発明の透明な発光塗膜の形成方法について説明を行う。本発明の透明な発光塗膜の形成方法は、基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)を(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で、塗装により各層を形成することを特徴としている。上記各層の形成については、発光塗膜を形成する各層のところで説明した内容がそのまま適用されるので、各層間の混相防止および電極の設置について以下に説明する。
【0029】
本発明の発光塗膜の形成方法において、先に形成された層の上に次の層を形成する場合、2層間の混層が防止された状態、つまり、先に形成された層の表面が、次の層を形成するための塗料組成物の塗布により溶解しない状態である必要がある。そのため、塗装する前の層は事前に硬化していることが好ましいが、必ずしも完全に硬化が完全に終了した状態である必要はなく、先に形成された層と混層が生じない程度に硬化が進行した時点で、次の層を形成するための塗料組成物を塗装することができる。また、先に形成された層と次の層とを形成するための塗料組成物は、お互いが相溶しにくいものを使用することが好ましい。
【0030】
また、本発明の発光塗膜の形成方法において、上記導電体層(A)および導電体層(D)に対して電極が設置される。この電極の設置を上記導電体層(A)に対して行う場合、例えば、上記誘電体層(B)を形成するための塗料組成物を塗装する前に、上記導電体層(A)の端部にテープなどによりマスクを施してから、上記誘電体層(B)を形成するための塗料組成物を塗装し、その後、マスクを外すことで、その上部に上記誘電体層(B)が塗装されていない上記導電体層(A)部分を露出させ、これに電極を設置する方法を取ることができる。なお、上記導電体層(D)に対して行う場合には、上記誘電体層(B)を形成するための塗料組成物がクリヤー塗料組成物となる。
【0031】
本発明の発光塗膜は、上記の形成方法によって得られるものであり、基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)が、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で、形成されている。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を挙げて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、%および部は特に断りのない限り質量基準である。
【0033】
製造例1:導電性物質を含んでいる塗料組成物a−1の製造
導電性物質溶液EL−P3040(AGFA社製、導電性高分子であるポリエチレンジオキシチオフェン3.5%溶液)5部および酢酸エチル5部を特殊機化工業社製のT.Kホモディスパーで混合攪拌し、導電性物質を含んでいる塗料組成物a−1を得た。
【0034】
製造例2〜5:導電性物質を含んでいる塗料組成物a−2〜a−5の製造
製造例1において、導電性物質としての導電性高分子の量ならびに溶媒の種類および量を表1の配合に変更した以外は同様の方法により、導電性物質を含んでいる塗料組成物a−2およびa−3を得た。また、製造例1において、導電性物質として導電性高分子に代えて、表1の配合で無機導電性物質を用いた以外は同様の方法により、導電性物質を含んでいる塗料組成物a−4およびa−5を得た。
【0035】
製造例6:誘電体層(B)を形成するための塗料組成物b−1の製造
高誘電体粉末BT−01(堺化学工業社製、チタン酸バリウム、粒子径0.1μm)0.1部、酢酸エチル4部、分散剤0.1部、アクリル樹脂(日本ペイント社製、固形分51%、水酸基価70、数平均分子量7000)3.9部、硬化剤(イソシアネート系硬化剤、日本ペイント社製、固形分75%)1.5部を製造例1と同様にT.Kホモディスパーで混合攪拌し、誘電体層(B)を形成するための塗料組成物b−1を得た。
【0036】
製造例7〜11:誘電体層(B)を形成するための塗料組成物b−2〜b−6の製造
製造例6において、高誘電体粉末の種類および量を表1の配合に変更した以外は同様の方法により、誘電体層(B)を形成するための塗料組成物b−2〜b−4を得た。
【0037】
製造例12:発光体層形成用塗料組成物c−1の製造
発光体粉末GG64(シルバニア社製、硫化亜鉛に活性化剤として銅を加えたもの)0.1部、酢酸エチル4部、分散剤0.1部、アクリル樹脂(日本ペイント社製、固形分51%、水酸基価70、数平均分子量7000)1.94部、硬化剤(イソシアネート系硬化剤、日本ペイント社製、固形分75%)0.742部を製造例1と同様にT.Kホモディスパーで混合攪拌し、発光体層形成用塗料組成物c−1を得た。
【0038】
製造例13および14:発光体層形成用塗料組成物c−2およびc−3の製造
製造例12において、発光体粉末の種類および量を表1の配合に変更した以外は、同様の方法により、発光体形成用塗料組成物c−2およびc−3を得た。
【0039】
製造例15:クリヤー塗料組成物e−1の製造
アクリル樹脂(日本ペイント社製、固形分51%、水酸基価70、数平均分子量7000)11部、硬化剤(イソシアネート系硬化剤、日本ペイント社製、固形分75%)4.2部,酢酸エチル6.3部,紫外線吸収剤A 0.065部、紫外線吸収剤B 0.045部を製造例1と同様にT.Kホモディスパーで混合攪拌し、クリヤー塗料組成物e−1を得た。
【0040】
【表1】

実施例
透明なアクリル板を用意し、その表面に、製造例1で得られた導電性物質を含んでいる塗料組成物a−1をスプレーで塗布した。これを温風乾燥機で110℃にて1時間乾燥し、導電体層(A−1)を得た。上記導電体層(A−1)は透明で、その膜厚は10μmであった。このようにして得られた導電体層(A−1)の端部の一部に対して、テープでマスキングを施してから、製造例6で得られた誘電体層(B)を形成するための塗料組成物b−1を、上記導電体層(A−1)の形成と同様にして塗布および乾燥を行い、膜厚10μmの誘電体層(B−1)を形成した。
【0041】
次に、製造例12で得られた発光体層形成用塗料c−1を上記導電体層(A−1)の形成と同様にして塗布および乾燥を行い、膜厚20μmの発光体層(C−1)を形成した。さらに、製造例1で得られた導電性物質を含んでいる塗料組成物a−1を用い、先と同様にして、膜厚10μmの導電体層(D―1)を形成した。
【0042】
この導電体層(D−1)の形成後、導電体層(D−1)に対し、先にマスキングした部分の反対側端部の一部に対して、テープでマスキングを施した後、製造例15で得られたクリヤー塗料e−1を上記導電体層(A−1)の形成と同様にして塗布および乾燥を行い、膜厚25μmの表面層(E−1)を形成した。これにより、導電体層(A−1)、誘電体層(B−1)、発光体層(C−1)、導電体層(D−1)、表面層(E−1)からなる複層塗膜を得た。この複層塗膜の膜厚は75μmであった。また、この複層塗膜を新聞紙の上に置いた場合、新聞の文字が透けて見え、判読することができ、透明であった。上記複層塗膜の透過率を測定したところ、60〜70%であった。(装置名:分光光度計 UV−1650PC 島津製作所製、条件:380〜780nmの透過率を測定した平均値)
上記複層塗膜を形成する際に施した2箇所のマスキングを外し、導電体層(A−1)および導電体層(D−1)に電極を設置し、交流950Hzで200Vの電圧を印加したところ、0.6cd/mの輝度で上記複層塗膜が発光することを確認した。
【0043】
なお、導電体層(A−1)および導電体層(D−1)の形成について、導電性物質を含んでいる塗料組成物a−1に代えて、製造例2〜5で得られた塗料組成物a−2〜a−5を、また、誘電体層(B)を形成するための塗料組成物b−1に代えて、製造例6〜9で得られた塗料組成物b−1〜b−4を、さらに、発光体層形成用塗料組成物c−1に代えて、製造例12および13で得られた塗料組成物c−2およびc−3を用いたところ、それぞれ先と同様に透明な発光塗膜を得ることができた。
【0044】
比較例
上記実施例において、誘電体層(B)を形成するための塗料組成物b−1の代わりに、製造例10および11で得られた塗料組成物b−5またはb−6を用いた以外は同様にして複層塗膜を形成した。また、発光体層形成用塗料組成物c−1に代えて、製造例14で得られた塗料組成物c−3を用いた以外は同様にして複層塗膜を形成した。ところが、これらの代わりに用いた塗料組成物から得られる層が、いずれも透明でなかったため、上記3つの複層塗膜は透明ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の透明な発光塗膜は、通電の有無で発光が制御でき、塗装によって好適に得ることができるため、意匠性を必要とする、構造物、建築物構成品、物品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一態様を示す発光塗膜の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…発光塗膜、2…基材、3…導電体層、4…誘電体層、5…発光体層、6…導電体層、7…表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)が(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順に存在し、前記層(A)〜(E)が塗料組成物により形成されており、電流を流すことにより発光する透明な塗膜。
【請求項2】
前記誘電体層(B)は、0.38μm以下の粒子径を有する高誘電体粉末とバインダー成分とを含んでいる塗料組成物により形成された、請求項1に記載の塗膜。
【請求項3】
前記発光体層(C)は、0.38μm以下の粒子径を有する発光体粉末とバインダー成分とを含んでいる塗料組成物により形成された、請求項1または2に記載の塗膜。
【請求項4】
前記導電体層(A)および前記導電体層(D)は、それぞれ導電性物質を含んでいる塗料組成物により形成された、請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗膜。
【請求項5】
前記表面層(E)は、クリヤー塗料組成物により形成された、請求項1〜4のいずれか1つに記載の塗膜。
【請求項6】
基材上に、導電体層(A)、誘電体層(B)、発光体層(C)、導電体層(D)、表面層(E)を(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で、塗装により各層を形成することを特徴とする透明な発光塗膜の形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−115624(P2007−115624A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308594(P2005−308594)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】