説明

透明オーバーコート組成物、ならびにこの組成物を使用する方法および検出する方法

【課題】画像を保護するために用いる透明オーバーコート組成物を検出する。
【解決手段】紫外線吸収添加剤を含む透明オーバーコート組成物を与え、透明オーバーコート組成物を、光学増白剤を含む基材の上にあるインクベースの画像またはトナーベースの画像に塗布し、オーバーコーティングされた画像を紫外線源にさらし、それによって、基材中の光学増白剤を活性化させ、コントラスト画像を作成し、オーバーコーティングされた画像について、画像センサを用いて活性化を評価し、紫外線吸収添加剤の存在を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、例えば、インクベースの画像およびゼログラフィー画像にオーバーコートを塗るために使用可能な、透明または実質的に無色のオーバーコート組成物に関する。本明細書に記載のオーバーコート組成物は、1種類以上の紫外線(UV)吸収添加剤を含む透明固体インクである。また、基材(例えば、表面に印刷された画像を含む基材)と組み合わせた状態でオーバーコート組成物を使用し、検出する方法およびシステムも記載される。
【背景技術】
【0002】
ワックスベースのインク(相転移インクまたは固体インクとして知られる場合もある)を用い、加熱した圧電インクジェットヘッドまたは音響インクジェットヘッドを用い、紙の上にデジタル画像を作成する。印刷ヘッドによるインク液滴の放出は、電気的に制御される。いくつかの実施形態では、熱い液滴は、中間体表面(多くはアルミニウムドラム)に衝突すると部分的に冷える。中間体表面に完全な画像が並び、次いで、紙に転写され、圧力と熱を組み合わせることによって紙の上に固定され、固体インクになるか、またはワックスベースのインク印刷物になる。または、ワックスベースの画像を基材に直接印刷してもよい。また、紙に直接印刷された画像が圧力および熱の組み合わせにさらされ、基材の上に画像が固定される。
【0003】
インクまたはトナーベースの画像を保護する既知の方法は、基材にオーバーコート組成物を塗布することを含む。しかし、これら両者の表面を後でコーティングするのは困難な場合がある。それに加えて、固体インクまたはワックスベースのインクを用いて作成した印刷物のコーティングは、このような印刷物の堅牢性が、インクジェットまたはゼログラフィーによる印刷物と比較すると相対的に低いという事実のため、特に難しい場合がある。この事実は、広告用メール、すなわち「ダイレクトメール」の業界で用いられる用途では、かなり問題となる。ダイレクトメール用途での従来のアプローチは、文字を、目に見える画像に対して登録されている透明インクの文字画像でオーバーコートすることであり、このアプローチは、他の色(例えば、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)、黒色(k))で用いられているのと同じ様式で透明色の印刷および登録を必要とする。色を用いる場合、印刷および登録は、特定のシステム、例えば、目に見える色を検出するための構成をもつイメージ−オン−ウェブ−アレイ(IOWA)インラインスキャニングセンサを用いて達成される。しかし、このようなシステムに透明インクを用いる際の問題点は、透明インクが透明であるために検出不可能であることである。したがって、現行のシステムは、検出可能な透明固体インクを必要としている。
【0004】
上記の問題に対処するために、以前提案された方法は、透明オーバーコートインク組成物に蛍光または赤外光(IR)に感受性の材料を用いていた。しかし、蛍光材料には、例えば、透明蛍光染料に特有の費用の高さ、白色光沢紙でのコントラストが悪いこと、熱安定性が悪いことのような、いくつかの欠点がある。また、IR染料にも、固体インク基剤のような極性の低い媒体への溶解度が悪いといった欠点がある。また、IR染料は、透明オーバーコートを可視化する通常の光線条件で、完全に見えないというわけではない。または、2010年4月9日に出願されたMichelle N.Chretienらに対する米国特許出願第12/757,415号(代理人整理番号20090286−US−NP)は、透明UVゲルインクを用いることによる、紙基材の蛍光測定の使用を提案している(引用することで本明細書に組み込まれる)。しかし、この方法は、透明固体インクオーバーコート組成物を用いた場合にはうまくいかない。なぜなら、固体インクは、現時点で容易に入手可能なUV光であるブラックライトをあてても吸収がないからである。
【0005】
したがって、固体インクおよびトナーベースの画像を保護するのに使用可能であり、特に、商業的な印刷用途において、トナーベースの画像およびインクベースの画像に対し、例えば、熱安定性および光安定性、耐引っ掻き性、耐摩耗(または摩擦)性を含むオーバーコートコーティングの性質を与え、さらに、現行の印刷および登録システムで用いられるスキャニングセンサによって検出可能なオーバーコート組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に示される実施形態によれば、オーバーコーティング組成物、インクベースの印刷物およびゼログラフィー印刷物とともに使用する方法が提供される。
【0007】
一実施形態では、インク媒剤および紫外線吸収添加剤をさらに含む透明オーバーコート組成物を与えることと、この透明オーバーコート組成物を、光学増白剤を含む基材の上にあるインクベースの画像またはトナーベースの画像に塗布することと、オーバーコーティングされた画像を紫外線源にさらし、基材中の光学増白剤を活性化させ、コントラスト画像を作成することと、オーバーコーティングされた画像について、画像センサを用いて活性化を評価し、紫外線吸収添加剤の存在を検出することとを含む、インクベースの画像またはトナーベースの画像を保護するために用いられる透明オーバーコート組成物を検出する方法が開示されている。
【0008】
さらに別の実施形態では、インク媒剤と、紫外線吸収添加剤とを含み、紫外線吸収添加剤が、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、置換ベンゾフェノン、置換シンナメート、およびこれらの混合物からなる群から選択され、透明固体インク組成物中に、透明固体インク組成物の合計重量の約0.1〜約10重量%の量で存在する、透明固体インク組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、UV吸収添加剤を含む透明ベースインク(SI)と、UV吸収添加剤を含まないSIの吸光度の差を示すグラフである。
【図2】図2は、UV吸収添加剤を含む透明インクオーバーコート組成物と、UV吸収添加剤を含まない透明インクオーバーコート組成物とについて、ブラックライトの下での検出可能性の差を示す写真である。
【図3A】図3Aは、種々の紙基材の上で、UV吸収添加剤または蛍光添加剤を含む種々の透明インクオーバーコート組成物について、ブラックライトの下での検出可能性の差を示す写真である。
【図3B】図3Bは、種々の紙基材の上で、UV吸収添加剤または蛍光添加剤を含む種々の透明インクオーバーコート組成物について、ブラックライトの下での検出可能性の差を示す写真である。
【図3C】図3Cは、種々の紙基材の上で、UV吸収添加剤または蛍光添加剤を含む種々の透明インクオーバーコート組成物について、ブラックライトの下での検出可能性の差を示す写真である。
【図3D】図3Dは、種々の紙基材の上で、UV吸収添加剤または蛍光添加剤を含む種々の透明インクオーバーコート組成物について、ブラックライトの下での検出可能性の差を示す写真である。
【図3E】図3Eは、種々の紙基材の上で、UV吸収添加剤または蛍光添加剤を含む種々の透明インクオーバーコート組成物について、ブラックライトの下での検出可能性の差を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上に説明したとおり、固体インクおよびトナーによる画像を保護するのに使用可能であり、特に、商業的な印刷用途において、トナーベースの画像およびインクベースの画像に対し、例えば、熱安定性および光安定性、耐引っ掻き性、耐摩耗(または摩擦)性を含むオーバーコートコーティングの性質を与え、さらに、現行の印刷および登録システムで用いられるスキャニングセンサによって検出可能なオーバーコート組成物が依然として必要とされている。いくつかの実施形態では、オーバーコート組成物は、透明固体インクの基剤の一部として用いられる。例えばダイレクトメール用途を含む主要な市場では、メールを取り扱うプロセスの間、印刷物は高画質を維持しなければならない。現行の固体インクは、このような要求を満たしていない。もっと一般的には、今日市販されている固体インクを用いて製造された印刷物の堅牢性は、インクジェットまたはゼログラフィーによる印刷物と比較すると、相対的に低い。このように、本実施形態は、保護を必要とする特定の画像をコーティングする透明または実質的に無色のオーバーコート組成物を用いることによってこれらの問題を解決する。ダイレクトメールの場合、このことは、保護を必要とする特定の文字、例えば、メール受取人の住所および名前を、透明オーバーコート組成物を用いて、オーバーコーティングすることを意味する。
【0011】
CMYKカラーを用いる場合と同様に、透明オーバーコート層は、一貫性のある高品質の印刷物にするために、印刷プロセス中にキャリブレーションを必要とする。カラーを用いる場合、このキャリブレーションは、現時点ではIOWAインラインスキャニングセンサのようなシステムを用いて行われ、このシステムによって目に見える色を検出することができる。これにより、色の登録、ヘッドアラインメント、欠けている吐出部の検出、均一な検出などが可能になる。しかし、このような透明オーバーコート組成物を用いることの障害は、透明組成物がIOWAのようなシステムでは検出できず、これらの現行システムを用い、一貫性のあるオーバーコート印刷物を確実に得ることができないことである。このシステムは、必要なときには検出可能であるが、オーバーコートの透明色に対して悪影響を与えない透明オーバーコート組成物を必要とする。上述のように、従来の方法は、透明オーバーコート組成物に蛍光感受性材料またはIR感受性材料を用いることを提案しているが、これらの材料は、いくつかの欠点を受けてしまう。他の方法は、透明UVゲルオーバーコート組成物を使用するが、この組成物は、照射される波長で吸収を持たない(ブラックライト(365nmのUV光)では検出することができない)ため、白色紙の上でコントラストをうまく示すことができないので、固体インク基剤を用いるとうまくいかないことがわかっている。したがって、このような固体インクオーバーコート組成物は、IOWAシステムを用いてキャリブレーションすることができなかった。
【0012】
本実施形態は、固体インクベース材料を含み、固体インクベース材料にUV吸収透明添加剤を加えることによって作られる透明オーバーコート組成物を用いることによって、上述の問題を克服する。添加剤は、励起波長で非常に高い吸光度をもつインクを与える。このように、オーバーコート組成物は、ある種の光学増白剤を含む基材に印刷されたとき、UV光、例えば、ブラックライトで簡単に検出することができる。蛍光添加剤とは異なり、UV吸収添加剤は、UV入射光をブロックするが、実際には、UV光によって励起されない。基材の光学増白剤は、UV入射光によって活性化され、典型的には青色の光を放出するため、検出に必要なコントラストが与えられる。XEROX 4200のような通常用いられる白色紙は、このような光学増白剤を含んでいる。
【0013】
光学増白剤は、UV入射光にさらされると青色または緑色の光を発する透明または無色の材料である。いいかえると、光学増白剤は、無色の蛍光材料である。光学増白剤は、発した光が、基材に起こり得る黄変を相殺し、白色紙またはパステル色の紙に対し光沢のある基材を与えるため、添加剤として紙基材に広範囲に用いられる。プラスチックでは、光学増白剤を用い、白色に対して光沢のある外観を与える。www.colour−index.org.でColor Index International(CI)によって特定される、約400例の既知の光学増白剤が存在する。基本的な種類の光学増白剤としては、例えば、トリアジン−スチルベン(ジ−、テトラ−またはヘキサ−スルホン化されたもの)、クマリン、イミダゾリン、ジアゾール、トリアゾール、ベンズオキサゾール、ビフェニル−スチルベンなどが挙げられる。
【0014】
UV光にさらされると、白色の紙シートは、紙に含まれる光学増白剤がUV光によって励起するため、強い青色の光を発する。その結果、UV吸収添加剤を含む固体インクベース材料で印刷された白色光沢紙上の領域は、通常の可視化する光線条件では無色であると思われるが、システムにUV光源(例えば、ブラックライト)が取り付けられている限り、明るい青色のバックグラウンドの上に黒く見え、目に見える優れたコントラストを与え、IOWAキャリブレーションプロセスで用いるために透明オーバーコート組成物を検出することができるだろう。ブラックライト源は、簡単に入手可能であり、安全性の問題もない。したがって、本実施形態は、従来技術と比較した場合、かなりの費用削減、実施容易性という利点をすぐに与える。
【0015】
本明細書に開示するオーバーコート組成物は、透明であるか、実質的に無色である。本明細書で使用する場合、「実質的に無色」は、オーバーコート組成物が、目で見ると実質的または完全に透明または無色であることを指す。このため、この組成物は、実質的に着色剤を含まなくてもよい。
【0016】
適切なUV吸収添加剤は、スペクトルのUV範囲、一般的に、400nmより小さな波長、または約330nm〜約400nmの波長で構成される範囲に強い吸収をもつ。特に興味深いのは、約330nm〜約400nmのスペクトル範囲に強い吸収をもつUV吸収添加剤を含む実施形態である。なぜなら、この添加剤が、約350nm以上の波長で操作されるUVブラックライト源から発せられるUV光の有効な吸収剤であるからである。
【0017】
本実施形態では、所定量の(例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール群の化合物からの)UV吸収添加剤を含む透明インクオーバーコート組成物は、IOWAシステムで検出可能であることが示されていた。特定の実施形態では、約2重量%の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(フェノール置換されたベンゾトリアゾール(Ciba Specialty Chemicals(Basel、Switzerland)からTINUVIN P光吸収材料として入手可能)を含む透明インクオーバーコート組成物が検出可能であることが示された。他のUV吸収添加剤としては、例えば、CIBAから入手可能な他のTINUVIN材料のような他のヒドロキシフェニル置換されたベンゾトリアゾールが挙げられる。例としては、TINUVIN 123、326、171、234、328、Great Lakes Chemical CorporationからLOWILITE 234として市販される2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル))−2H−ベンゾトリアゾールが挙げられる。他のベンゾトリアゾールとしては、LOWILITE 26、27、28、29、35(すべてGreat Lakes Chemical Companyから入手可能)など、およびこれらの混合物が挙げられる。他の適切な材料は、BASFからTinosorb Sとして上市されているビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)のようなヒドロキシフェニル置換されたトリアジン、商品名Tinosorb OMCで入手可能なオクチルメトキシシンナメートのような置換シンナメート、置換ベンゾフェノン材料、例えば、Michigan(USA)のGreat Lakes Chemical Corporation(現在はChemtura Corporation.Iの一部である)から商品名LOWILITE 20で入手可能な2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、UV吸収添加剤は、オーバーコート組成物中に、オーバーコート組成物の合計重量の約0.01〜約50重量%、または約0.1〜約10重量%、または約0.2〜約5重量%の量で存在する。比較のために、この添加剤を含まない透明オーバーコート組成物を用いて作成したサンプルは、ブラックライト(365nmのUV光)のようなUV光で単純には検出することができなかった。対照的に、このUV吸収添加剤を含むオーバーコートサンプルは、白色紙(XEROX 4200)および種々の着色紙(XEROX Pastel)に印刷した場合、完全に検出することができた。本実施形態は、白色紙基材とともに用いた場合、優れたコントラストを与え、特に有益である。比較のために、蛍光添加剤を用いて作成したサンプルは、その蛍光が、白色紙の青色蛍光によって隠されるか、または青色蛍光の方が大きいため、白色紙上でのコントラストが悪いことが示された。蛍光添加剤の中では、赤色を発する染料のみが、ある程度コントラストを示した。したがって、本実施形態は、透明固体インクオーバーコート組成物を検出可能にするために、簡単で非常に有効な溶液を与える。したがって、本実施形態は、例えば、UV吸収添加剤が、蛍光染料およびIR染料に比べてかなり安価なため、顕著な費用低減、化学安定性および熱安定性、透明インク基剤に対する優れた溶解度、白色紙基材上での優れたコントラスト、着色紙および高収率紙の両方での検出可能性、通常の光線使用条件で完全に見えない状態であることのように、従来技術に比べて多くの利点を与える。
【0019】
透明インクオーバーコート組成物は、典型的には、少なくともインク媒剤またはバインダーと、少なくとも1種類のUV吸収添加剤とを含む。媒剤は、エチレン/プロピレンコポリマー、酸化した合成ワックスまたは石油ワックスのウレタン誘導体、n−パラフィン系炭化水素、分岐パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、高度に分岐した炭化水素、エトキシル化アルコール、直鎖アルコール、炭化水素系ワックス、グラフト共重合によって調製したポリオレフィンの改質無水マレイン酸炭化水素付加物、モノアミドおよびテトラアミドの混合物、およびこれらの混合物からなる群から選択されるものを含んでいてもよい。また、インク媒剤は、UV放射線硬化性であってもよく、例えば、パラフィン、微晶質ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、脂肪酸、脂肪族アミドを含有する材料、スルホンアミド材料、エトキシル化アルコール、直鎖アルコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0020】
また、インク媒剤は、例えば、パラフィン、微晶質ワックス、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンワックス)、エステルワックス、脂肪酸および他のワックス状材料、脂肪族アミドを含有する材料、スルホンアミド材料、異なる天然源(例えば、トール油ロジンおよびロジンエステル)から作成した樹脂状材料、合成ワックスのようなワックスを含んでいてもよい。ワックスは、インクの約5重量%〜約25重量%の量で存在していてもよい。適切なワックスの例としては、Allied Chemical and Petrolite Corporationから入手可能なポリプロピレンおよびポリエチレン、Michaelman Inc.およびDaniels Products Companyから入手可能なワックスエマルション、Eastman Chemical Products、Inc.から市販されているEPOLENE N−15、VISCOL 550−P(三洋化成工業株式会社から入手可能な平均分子量が小さいポリプロピレン)および類似の材料が挙げられる。選択される市販のポリエチレンは、通常は、分子量が約1,000〜約1,500であるが、本発明のトナー組成物に利用される市販のポリプロピレンは、分子量が約4,000〜約5,000であると考えられる。適切な官能化ワックスの例としては、例えば、アミン、アミド、イミド、エステル、四級アミン、カルボン酸またはアクリルポリマーエマルション、例えば、JONCRYL 74、89、130、537、538(すべてSC Johnson Waxから入手可能)、Allied ChemicalおよびPetrolite CorporationおよびSC Johnson waxから市販されている塩素化ポリプロピレンおよびポリエチレンが挙げられる。
【0021】
本実施形態のオーバーコート組成物は、従来の添加剤に関連する既知の機能性を利用するために、従来の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、消泡剤、すべり剤およびレベリング剤などが挙げられる。
【0022】
本実施形態のオーバーコート組成物を、画像を受け入れる基材の上に直接吐出してもよい。次いで、オーバーコート組成物を、接触レベリングまたは非接触レベリングによって、平らにしてもよい。本実施形態を、中間基剤を使用する転写固定インクジェットデバイス、例えば、固体インクジェットプリンタ、インクジェットプリンタ、またはインクジェットファクシミリ機で用いてもよい。しかし、本明細書のシステムおよび方法は、中間体基材を用いることなく、画像を受け入れる媒体に直接画像を吐出する直接印刷システムにも同様に適用することができる。また、本明細書のシステムおよび方法は、放射線、またはUV吸収添加剤が吸収する波長の光を発光する放射線発光源の使用を含んでおり、それによって、光学増白剤を活性化させ、添加剤によってブロックされるだろう。いくつかの実施形態では、放射線発光源は、約300〜約400nmの範囲の波長の活性化放射線を作り出す。この様式で、その後に、透明インクオーバーコート組成物の有無は、画像センサによって検出することができ、相対強度によって、インクの量を検出することができる。
【0023】
本開示のオーバーコート固体インクを、インクベースの画像またはトナーベースの画像を基材の上に作成した後、画像を作成することと、オーバーコート組成物を、基材全体の上に、画像全体の上に、画像の一部分に、基材の一部分に、またはこれらの組み合わせに対してインクジェット印刷することと、オーバーコート固体インクを硬化させることとを含む画像処理に用いてもよい。
【0024】
利用する基材は、印刷物の最終的な使用に依存して、ある種の光学増白剤を含む任意の適切な基材であってもよい。例示的な基材としては、限定されないが、普通紙、コーティング紙、プラスチック、ポリマー膜、処理済セルロース、木材、ゼログラフィー用基材、セラミック、繊維、金属およびこれらの混合物が挙げられ、場合により、これらをコーティングする添加剤を含む。
【0025】
トナーベースの画像をコーティングする場合、まず、融合したトナーベースの印刷物を得て、次いで、吐出可能なオーバーコート組成物を含むインクジェットプリンタに入れる。トナーベースの印刷物は、任意の適切なゼログラフィー技術またはその改変技術によって調製することができる。同様に、インクベースの画像をコーティングする場合、まず、インクベースの画像を作成し、これを吐出可能なオーバーコート組成物を含むインクジェットプリンタに入れる。インクジェットプリンタを用いてインクベースの画像を作成する場合、インクベースの画像を、吐出可能なオーバーコート固体インクを含む別個のインクジェットプリンタに入れてもよく、または、インクジェットインクが、上述の組成物と同じインクジェットプリンタに格納されていてもよく、これにより、インクジェットによるインク画像が生成した後に、上述の組成物が、基材および/または画像の上に、無色透明の流体としてコーティングされる。オーバーコート組成物を、インクベースの画像、特に、インクジェットプリンタを用いて作成した画像の上にコーティングする場合、画像は、任意の適切な従来プロセスまたはその改変プロセスによって調製することができる。オーバーコート組成物が固体インクの一部である場合、インクベースの画像は、単純に、固体インク組成物を基材に直接塗布することによって作成される。この場合、インクベースの画像は、画像作成のときにすでにオーバーコート組成物を含んでいるだろう。
【0026】
この組成物を画像または画像の一部、基材および/または基材の一部に別個にコーティングする場合、異なる解像度レベルになるように塗布してもよい。例えば、この組成物を、印刷ハーフトーンドットの解像度で塗布してもよく、画像の別個の部分の解像度で塗布してもよく、または、画像の別個の部分よりも少し低い解像度で塗布してもよく、基材のうち、画像のない領域でオーバーコート固体インクがある程度重なり合ってもよい。典型的な組成物の堆積量は、液径が約5〜約50ピコリットルの量である。この組成物を、任意の既知のインクジェット印刷技術(例えば、ドロップ−オン−デマンド式のインクジェット印刷、限定されないが、圧電式および音響式のインクジェット印刷を含む)を用いて画像を作成する任意の段階で、画像の上を少なくとも1回通過させることによって塗布してもよい。この組成物の塗布は、画像を作成するために用いられるのと同じ情報を用いて制御することができ、画像およびオーバーコート固体インクを製造するのに必要なのは、たった1個のデジタルファイルである。したがって、オーバーコート組成物は、完全にデジタルである。
実施例
【0027】
(比較例)
従来の透明固体インクオーバーコートが検出できないこと(UV VIS吸収スペクトル)
融点が約100℃の長鎖アルコール(30〜70個の炭素原子を含む混合物)からなり、UV添加剤(TINUVIN P)を含むか、または含まない相転移材料から作成した従来の透明オーバーコート固体インクベース(SI)のサンプルを、5ミクロンのスペーサーを備える石英スライドの間に溶融組成物を置くことによって作成した。
【0028】
図1に示すように、透明ベースインク(SI)は、本質的に検出波長で吸収をもたない(365nmのUV)。対照的に、2%のTINUVIN P(UV吸収添加剤)を加えると、新しいインクは、UV範囲で大きな吸収をもつ(赤色の線)。結果として、添加剤を含まないサンプル(そのもの)は、白色紙に印刷したとき、コントラストを示さない(検出することができない)と予想されることになる。
【0029】
(検出試験)
白色紙(XEROX 4200)および黄色紙(XEROX Pastel)基材の上に透明インクベースおよび透明固体インクオーバーコート基剤で線を描き(相転移インクベースをXerox ColorQubeプリンタで使用し)、TINUVIN PをUV吸収添加剤として用いることによって作成したオーバーコートを検出するために比較した(以下の表1のように特定)。
【0030】
図2に示すように、左から右へと線を描いた。(1)ColorQube固体インク透明基剤、(2)従来の透明固体インクオーバーコート、(3)TINUVIN添加剤を含む従来の透明固体インクオーバーコート(以下の表1のように特定)。検出のためにサンプルをブラックライトにさらした。図2は、白色紙および黄色紙の両方で、線(1)および(2)はコントラストがまったくない(検出されない)ことを示す。本実施形態の添加剤を含むサンプル(3)のみが、検出可能であった。
【0031】
(実施例1)
インクの調製
上の比較例で示されるように、従来の固体インクオーバーコート材料を検出することができないことを確認した後、検出可能な固体インクオーバーコートを現像し、すでに報告されている蛍光染料添加剤によるアプローチを用いた場合の効率を比較するために、焦点をシフトさせた。
【0032】
ホットプレート上で0.100gの添加剤を9.900gの溶融した透明インクベースに溶解し、撹拌することによって、「検出可能な」添加剤を含む数種類の透明インク組成物を調製した。このプロセスによって、均一に分散した透明インクを製造し、これをさらに評価した。比較のために、UV吸収添加剤サンプルと、透明蛍光添加剤を用いて作成したサンプルとを調製した。それに加えて、以下の2種類の透明インクを用いた。1つめは、従来の透明オーバーコート組成物(融点が約100℃の相転移材料に由来する)であり、2つめは、現在市販されているColorQubeインクベースである。表1は、調製したインクのリストである。
【0033】
【表1】

【0034】
透明青色蛍光染料を用いて作成したインク(表1に(b)および(c)として特定)が、透明オーバーコートベース中で蛍光をもたないという驚くべき観察結果であった。透明オーバーコートベース材料は、360nm(検出に使用)で光を吸収しないため、消光が起きたと考えられる。置換された長鎖アルキル材料である透明オーバーコートに由来する相転移材料が蛍光染料と反応し、これにより蛍光染料が分解したようである。その結果として、これらの染料は、蛍光の検出に役に立たなくなる。この理由のために、ColorQubeベースを用いてサンプルを調製し(表1に(d)として特定)、予想どおり蛍光が観察された。したがって、ColorQube基剤を用い、青色蛍光染料の概念を用いたものと、UV吸収添加剤とを比較した。このことにより、蛍光染料が化学的に不安定であるという問題が示されている。
【0035】
少量のインクを調製し、冷却した(固い)インクを用い、実際の「印刷物」を手書きによって作成した。この方法でも、それぞれのインクを用いた検出概念を示すのに十分である。
【0036】
検出
記憶を調べるために格納装置で一般的に用いられる種類の光であるUV光(365nm)を照射することによって、検出を行った。以下の数種類の紙基材を用いた。(1)白色紙(XEROX 4200、高光沢)(図3A)、(2)XEROX高収率ビジネス用紙(低光沢の紙)(図3B)、(3)XEROX Pastel Blue紙(図3C)、(4)XEROX Pastel Green紙(図3D)、(5)XEROX Pastel Yellow紙(図3E)。
【0037】
目的は、ダイレクトメールのような用途に好ましい種々の種類の紙基材の上で、さまざまな種類のインクの検出可能性を試験することであった。図3A〜3Eは、UV検出光の下での外観を示す。通常の光線条件下で、「印刷物」(単純な線によってあらわされる)は、すべての紙基材の上である程度光沢があるが、透明の線として、同じように見えた。すべての写真で、書かれたインクの順序は左から右に、UV吸収性(表1に(a)として特定)、赤色蛍光(表1に(f)として特定)、緑色蛍光(表1に(e)として特定)、青色蛍光(表1に(dd)として特定)である。すべてをブラックライトの下で見た。
【0038】
結果
UV吸収添加剤を含むインクは、白色および着色した5種類すべての紙基材について暗い青色の線として検出可能であった。UV吸収添加剤は、白色の光沢紙(XEROX 4200)で特に有利であった。
【0039】
蛍光染料は、本質的に検出するのが難しく、特に、図3A〜3Eで、青色を検出することができない。この現象は、染料が発した蛍光が、本質的に、紙の光学増白剤添加剤が発した強い青色によって隠されてしまったために起こる。赤色を発光する染料のみが、ある程度コントラストを示した。蛍光添加剤は、着色した紙基材(色のため、光沢が少ない)の上で検出するのが最も簡単である。また、蛍光添加剤の中で、UV吸収材料と同様の検出可能性を発揮するものはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクベースの画像またはトナーベースの画像を保護するために用いる透明オーバーコート組成物を検出する方法であって、
インク媒剤および紫外線吸収添加剤をさらに含む透明オーバーコート組成物を与えることと、
前記透明オーバーコート組成物を、光学増白剤を含む基材の上にあるインクベースの画像またはトナーベースの画像に塗布することと、
前記オーバーコーティングされた画像を紫外線源にさらし、それによって、前記基材中の前記光学増白剤を活性化させ、コントラスト画像を作成することと、
前記オーバーコーティングされた画像について、画像センサを用いて活性化を評価し、前記紫外線吸収添加剤の存在を検出することとを含む、方法。
【請求項2】
前記透明オーバーコート組成物が固体インクである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記紫外線吸収添加剤が、前記透明オーバーコート組成物中に、前記透明オーバーコート組成物の合計重量の約0.01〜約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記紫外線吸収添加剤が、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、置換ベンゾフェノン、置換シンナメート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記紫外線吸収添加剤が、400nm以下のUV吸収をもつ、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記紫外線光源がブラックライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、白色紙および着色紙の両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
インクベースの画像またはトナーベースの画像を保護するために用いる透明オーバーコート組成物を検出する方法であって、
インク媒剤および
紫外線吸収添加剤
をさらに含む透明オーバーコート組成物を与えることと、
前記透明オーバーコート組成物を、光学増白剤を含む基材の上にあるインクベースの画像またはトナーベースの画像に塗布することと、
前記オーバーコーティングされた画像に、前記光学増白剤を励起させ、前記紫外線吸収添加剤によって吸収される波長をもつ活性放射線をあて、これによって前記活性放射線が、前記基材中の光学増白剤を活性化させ、前記オーバーコート組成物中の紫外線吸収添加剤によってブロックされることと、
前記保護された前記画像について、画像センサを用いて活性化を評価し、前記紫外線吸収添加剤の存在を検出することとを含む、方法。
【請求項9】
印刷した画像を検出する方法であって、
インク媒剤および
紫外線吸収添加剤
をさらに含む透明固体インク組成物を与えることと、
前記透明固体インク組成物を、光学増白剤を含む基材に塗布し、印刷した画像を作成することと、
前記印刷した画像を紫外線源にさらし、前記基材中の前記光学増白剤を活性化させ、コントラスト画像を作成することと、
前記保護された前記画像について、画像センサを用いて活性化を評価し、前記紫外線吸収添加剤の存在を検出することとを含む、方法。
【請求項10】
透明固体インク組成物であって、
インク媒剤と、
紫外線吸収添加剤と、を含み、前記紫外線吸収添加剤が、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、置換ベンゾフェノン、置換シンナメート、およびこれらの混合物からなる群から選択され、透明固体インク組成物中に、透明固体インク組成物の合計重量の約0.1〜約10重量%の量で存在する、透明固体インク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【公開番号】特開2012−218440(P2012−218440A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64471(P2012−64471)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】