説明

透明カード

【課題】 視覚的に優れた透明感を有しながら、ATM、CD等の機械読み取り適性をも有する透明カードを提供する。
【解決手段】
本透明カード1は、透明コアシート11,12の外面に透明オーバーシート13,14を積層したカードからなり、透明コアシート13の1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキを全面に塗工し、透明コアシートの他の表面に、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを全面に塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層したことを特徴とする。透明コアシートは単層であってもよく、赤外線吸収剤含有印刷インキは、JISX6305が規定する光透過性測定領域の少なくとも一部に双方の塗工位置が一致するように重ねて塗工してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、社員証等の透明なカード基材を使用したカードであって、デザインの少なくとも一部に透明部分を有する透明カードに関する。
従って、本発明の利用分野は、キャッシュカード、クレジットカード等のカードの製造または使用等の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録部を有するクレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、社員証等のカードは、磁気記録データの読み取りのためにカード読み取り装置内で駆動される。
例えば、ATM(現金自動預け払い機)にカードを挿入すると、ATMは、カードの先端を検知してカードが挿入されたことを検知し、磁気記録部の読み取りを開始する。
【0003】
このため、ISO/IEC7810に準拠するJISX6301の8.1.10には、カードの光透過性が規定され「すべての機械読取りカードは、規定された領域で、1.5以上の光透過濃度をもたなければならない。」ことを規定している。
当該領域は、JISX6305に規定されていて、札入れサイズカード(幅85.4mm、高さ53.98mm、厚み0.76mmのID−1型)において、カード上部端縁から21.0mmの領域と、カード下部端縁から10.0mmの領域とされている。
また、試験装置としては、波長が900nmまでの感度をもつ光透過濃度計が指定されている。
【0004】
したがって、このカードの先端を検知するためには、多くの場合、透過型赤外線センサーが用いられる。透過型赤外線センサーは、ATMのカード走行経路に沿って、例えば、カードの表面側に赤外線の投光部が、裏面側に受光部が取り付けられる。カードが前記投光部と受光部の間を通過すると、受光部は投光部から照射されている赤外線がカードによって遮られるので、カードが通過したことを検知する。
ただし、外部読み取り装置によっては、上記光透過度規制領域以外の位置で赤外線センサーを使用してカードを検知している場合がある。この場合には、カードの全面が赤外線吸収特性を有する必要がある。
【0005】
カードが検知されるためには、カード基体は赤外線を遮断するものでなければならず、通常のカードの場合は、基材に不透明な白色顔料が練り込まれているので、赤外線を遮断する。一方、透明カードは、スケルトンカードとも言われ、おしゃれな感覚を有することから従来から愛好者が多い。したがって、視覚的には十分な透明感を有し、かつ、ATM等の光透過濃度の規定を満たす透明カードを供給する必要がある。
【0006】
このようなニーズを満たすために、従来から赤外線吸収剤をカード基体樹脂に練り込みして使用するか、印刷インキ化してカード基体に塗工することが行われている。
例えば、特許文献1は、「透明カード」に関するが、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物等の光吸収材料をカード基材に、単独または混合使用して、波長550nm以上、1000nm以下の光を吸収する透明カードを提案している。
しかし、赤外線吸収剤や光吸収剤はそれ自身が濃色であるものが多く、これら吸収剤を混入したカードは色がついた半透明カードのようになってしまい、カード全面が目視で透明度の高い透明カードの製造は困難である。また、カード基材に赤外線吸収剤を練り込みする場合は、あらかじめ大量の基材を製造しておくことが必要であって、小ロットの対応が困難である。
【0007】
特許文献2は、「透明磁気カード」に関するが、800nm〜1000nmの赤外領域を吸収する染料を含有するインキ層をカード基材に印刷することを提案している。しかし、赤外線吸収材料の具体的内容は明らかにされていない。
特許文献3は、本願出願人による先出願であるが、波長800nm〜1050nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤を使用した印刷インキを用いた透明カードであって、当該印刷インキには2種の赤外線吸収剤を混合して使用することを提案している。特許文献3は、具体的な赤外線吸収剤として、ビスチオベンジルニッケルやフタロシアニン化合物を挙げている。しかし、これによるカードも赤外線吸収剤インキ印刷部の透明感が十分でない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−301369号公報
【特許文献2】特開2001−319325号公報
【特許文献3】特願2003−327646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、カード基材に赤外線吸収剤を練り込みするのではなく、赤外線吸収効果の高い吸収剤を選んで印刷インキ化することによって小ロット生産に対応可能とし、かつ透明カードの透明感が視覚的に十分に得られるカードを達成すべく鋭意研究して、完成したものである。
すなわち、視覚で認識し易い可視光領域の透過率を高くし、かつ、JISX6305が規定するカードの光透過性測定領域において、1000nm超の赤外線をも遮断して十分な濃度が得られることを課題としてなされた発明である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキを全面に塗工し、透明コアシートの他の表面に、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを全面に塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード、にある。
【0011】
本発明の要旨の第2は、透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキを、透明コアシートの他の表面に、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを、それぞれJISX6305が規定するカードの光透過性測定領域の少なくとも一部に双方の塗工位置が重なるように塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード、にある。
【0012】
本発明の要旨の第3は、透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキと、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキと、が重ねて全面に塗工され、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード、にある。
【0013】
本発明の要旨の第4は、透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキと、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを、それぞれJISX6305が規定するカードの光透過性測定領域の少なくとも一部に双方の塗工位置が重なるように塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード、にある。
【0014】
上記透明カードにおいて、JISX6305が規定するカードの光透過性測定領域において波長800nm〜1150nmの領域にわたる分光光度計による光透過率が5.0%以下である、ようにでき、その場合には、近赤外域の大半において赤外線遮光特性が得られる。
【0015】
本発明の要旨の第5は、透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層するかオーバーコートを塗工したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを全面または一部に塗工し、透明コアシートの他の1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキを全面または一部に塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層するかオーバーコートを塗工したしたことを特徴とする透明カード、にある。
【0016】
上記透明カードにおいて、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキが、フタロシアニン系化合物を、2.0質量%〜3.5質量%の範囲で含有するシルクスクリーン印刷用インキと、とすることができ、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキが、該インモニウム塩系化合物を、2.0質量%〜3.5質量%の範囲で含有するシルクスクリーン印刷用インキであるようにすることができる。
【0017】
また、上記透明カードにおいて、金属原子を含まないインモニウム塩が、化学式[C66928 128 4]で示されるものであるようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の透明カードは、カードの未印刷部が透明であるため、いわゆるスケルトンと言われる視覚効果がある。ただし、実際には赤外線吸収効果があり、国際または国内規格を満足し、機械読み取り可能であるという特徴と効果を有する。
本発明の透明カードは、赤外線吸収剤含有印刷インキの塗工部が、オーバーシートとコアシートの間に設けられているので、カードの使用中において塗工部が磨耗し、赤外線吸収効果が次第に減少することがない。
請求項1、請求項3記載の発明の透明カードように、赤外線吸収剤含有印刷インキを全面に塗工した場合であっても従来のカードにない十分な視覚透明感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の透明カードの第1実施形態の層構成を示す図である。
【図2】同第2実施形態の層構成を示す図である。
【図3】同第3実施形態の層構成を示す図である。
【図4】同第4実施形態の層構成を示す図である。
【図5】第2実施形態の透明カードの平面図である。
【図6】各赤外線吸収インキの分光透過率曲線を示すである。
【図7】本発明の透明カードの分光透過率を測定したチャートである。
【図8】赤外線吸収剤添加量の変化による「Aインキ」の分光透過率を測定したチャートである。
【図9】赤外線吸収剤添加量の変化による「Bインキ」の分光透過率を測定したチャートである。
【図10】「Aインキ」と「Bインキ」重ね刷りの分光透過率を測定したチャートである。
【図11】従来の透明カードの分光透過率を測定したチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の透明カードは、大別して4種の実施形態があるので、以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の透明カードの第1実施形態の層構成を示す図、図2は、同第2実施形態の層構成を示す図、図3は、第3実施形態の層構成を示す図、図4は、第4実施形態の層構成を示す図、図5は、第2実施形態の透明カードの平面図、図6は、各赤外線吸収インキの分光透過率曲線を示す図、図7は、本発明の透明カードの分光透過率を測定したチャート、図8は、赤外線吸収剤添加量の変化による「Aインキ」の分光透過率を測定したチャート、図9は、赤外線吸収剤添加量の変化による「Bインキ」の分光透過率を測定したチャート、図10は、「Aインキ」と「Bインキ」重ね刷りの分光透過率を測定したチャート、図11は、従来の透明カードの分光透過率を測定したチャート、である。
なお、図1(A)はカード基材を熱圧プレスする前の状態、図1(B)はプレス後の状態を示している。図2(A)、(B)も同様の関係である。図3、図4は、プレス後の状態のみを図示している。
【0021】
本発明の透明カードの第1実施形態は、図1のように、透明コアシート11,12を中心層に有し、その両面に透明オーバーシート13,14が積層されている。透明オーバーシート13,14は、磁気テープ5,6を担持するとともに、印刷層や赤外線吸収剤塗工層を保護する役割をするが、同等の機能をするものであれば、印刷によるオーバーコート層であってもよいものである。第2実施形態においても同様である。
また、透明コアシートは2枚を用いる状態を図示しているが、2枚の合計厚みに相当する単層のシートであってもよい。カードの表裏の印刷(赤外以外の通常の印刷)を表裏分けて印刷する方が、工程上利点がある場合は、コアシートを2枚使用する場合が多い。
なお、透明コアシート、透明オーバーシートとは、透明性の高い樹脂シートをいう。
【0022】
図1(A)において、透明コアシート11の透明オーバーシート13面側には、1の赤外線吸収材料含有印刷インキ(便宜的に「Aインキ」とする。)による全面印刷2aがされている。同様に、透明コアシート12の透明オーバーシート14面側には、他の1の赤外線吸収材料含有印刷インキ(便宜的に「Bインキ」とする。)による全面印刷2bがされている。「Aインキ」と「Bインキ」の内容については後述する。
オーバーシート13,14には、磁気テープ5,6が転写されているが、双方の磁気テープを設けることは必須ではない。また、磁気テープの全くないものも本願発明の範囲に含まれるものである。
【0023】
通常、カードの発行主体やカードの使用者氏名を表示する面をカード表面というが、このカード表面側には、さらに他の印刷絵柄8が設けられる。これは、磁気テープ5を隠蔽する隠蔽印刷や装飾的デザイン等である。図1(A)の場合、転写紙7により絵柄8を転写する状態が図示されているが、直接印刷するものであっても構わない。
【0024】
図1(B)は、カード基体を熱圧プレスした後の状態を示している。転写紙7のベース基材7f自体は剥離除去され、絵柄8のみがオーバーシート13に転写される。
カード基体材料が自己融着性の場合は、熱圧プレスにより接着するが、自己融着性ではない材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の場合は接着剤や接着テープを併用して接着させる。したがって、赤外線吸収剤入りインキの「Aインキ」や「Bインキ」の場合も熱融着性について考慮する必要がある。
【0025】
本発明の透明カードの第2実施形態は、図2のように、「Aインキ」と「Bインキ」が部分的に塗工されている違いがある。この塗工部分は、主としてJISX6305が規定するカードの光透過性測定領域である。当該領域において、視覚透明感を有し、かつ赤外線を透過させない特性が求められるからである。また、当該領域の全面を塗工するものとも限られない。他の模様印刷用インキも用いられる場合があるからである。
光透過性測定領域ではないカードの中央領域は測定されないので、透明であるためには印刷を設けず基材の透明状態のままにしておけば良いが、絵柄の連続性のために当該中央領域にかけて透明赤外線遮光パターンを印刷するものであってもよい。
【0026】
第2実施形態の透明カードの平面図は、図5のようになる。カードの光透過性測定領域は、前記のようにJISX6305が規定する、カードの上部端縁から21.0mmの領域A1と、下部端縁から10.0mmの領域A2となる。
領域A1と領域A2に挟まれた中間域は光透過度規制区域外であるが、エンボス情報が打刻されたり、ICモジュールが実装されたり、シグネチュアパネルが形成される領域であるため、これらの要素が全部取り入れられた場合、透明領域が浸食されてしまう。
領域A1と領域A2は、かなり、広い面積なので、当該域の全体を白インキ等で印刷すると透明カードとは言えなくなってしまう問題がある。
【0027】
したがって、赤外線吸収剤入りインキの「Aインキ」と「Bインキ」の表裏重ね刷りによる透明赤外線遮光パターン3は、主として上記領域A1または領域A2に印刷されるが、領域A1または領域A2からカード中央領域にわたるものであってもよい。転写紙7による絵柄8や背景パターン9も設けられるが、透明領域を多く残すようにする。
帯状に斜線を付した部分は表面側の磁気テープ5が埋設される部分であり、埋設位置が規定されている。図1のように、カードの裏面にも磁気テープ6を入れる場合がある。
透明カード1は磁気カードにかぎらず、ICモジュール接触端子4を有するICカードであってもよい。また、カード基体内に埋設したアンテナコイルをさらに有する接触・非接触両用ICカードであってもよい。
【0028】
第1実施形態の場合も同様であるが、「Aインキ」と「Bインキ」はいずれをカードの表面側にしても、カードの裏面側に用いても構わない。「Aインキ」と「Bインキ」の双方の塗工層を透過した光が所定の透過率になれば良いからである。
第1実施形態のように、カードの全面に塗工する場合の利点は、カードの印刷デザインにとらわれず、あらかじめ塗工済みの透明カード基体を準備しておけることである。逆にやや問題となる点は、カードの裏面から観察した場合に赤外遮光層(「Aインキ」、「Bインキ」の層)を透過または反射した光が淡い黄緑色に着色して見えることである。
第2実施形態のように、部分的に塗工する場合は、黄緑色の着色問題は目立たないが、品目毎に異なる塗工工程が行うことが必要になる。
【0029】
前記のように、JISX6305はカードの光透過性測定領域を規定しているが、実際にセンサーが測定する域は必ずしも統一されていないで、ユーザーによって測定位置が変えられることが多い。従って、視覚外観ではどこも透明であって、センサーで測定した場合はカードのどの部位も赤外線吸収特性を有するカードが望ましいことになる。
【0030】
本発明の透明カードの第3、第4実施形態は、それぞれ第1、第2実施形態の変形ともいうべき形態である。
すなわち第3実施形態は、図3のように透明コアシート11のオーバーシート積層側の1の面に「Aインキ」と「Bインキ」とが、全面に重ねて塗工されている。「Aインキ」と「Bインキ」は、いずれが、透明コアシート11側であっても構わない。
また、第4実施形態は、図4のように、透明コアシート11のオーバーシート積層側の1の面に「Aインキ」と「Bインキ」とが、部分的に重ねて塗工されている。この塗工域は前記のようにJISX6305が規定するカードの光透過性測定領域である。「Aインキ」と「Bインキ」は、いずれが、透明コアシート11側であっても構わない。
【0031】
以上のように、本発明の透明カード1の各実施形態では、赤外線吸収剤含有印刷インキの塗工層がオーバーシートまたはオーバーコートで被覆されているので、カードの使用途上において、塗工層が磨滅して赤外線遮光効果が低減するという問題がない。
また、赤外線吸収剤を基材に練り込むのは、一般に基材を大量に準備する必要があるが、本発明の透明カードでは、受注量に応じて任意の基材に必要に応じて必要な量を塗工して使用できる利便性がある。
【0032】
ここで、「Aインキ」と「Bインキ」の内容について、図6を参照して説明する。
図6には、「Aインキ」と「Bインキ」の分光透過率曲線が示されているが、参考のため、従来使用している「Cインキ」の分光透過率曲線も図示されている。いずれも、後述の実施例と同一の条件で、シルクスクリーン印刷用インキにインキ化し、コアシートに印刷後、コアシート、オーバーシートを熱圧プレスして一体化し、透明カード化した後の状態での測定である。測定は、株式会社島津製作所製の分光光度計によるものである。なお、カード基材による吸収はないものと考えてよい。
【0033】
「Aインキ」は、山本化成株式会社製の赤外線吸収剤「YKR−5010」(フタロシアニン系化合物)をビニル系樹脂と溶剤中に、4.0%(質量比)添加してシルクスクリーン印刷用インキにインキ化したものである。図6中、「Aインキ」は、曲線Aの分光透過率曲線を示し、最大吸収波長域は、800nm〜900nmの範囲に認められる。
「Bインキ」は、日本カーリット株式会社製の赤外線吸収剤「CIR−1085」(インモニウム(immonium)塩)をビニル系樹脂と溶剤中に、3.0%(質量比)添加してシルクスクリーン印刷用インキにインキ化したものである。「Bインキ」は、曲線Bの分光透過率曲線を示し、最大吸収波長域は、1000nm以上の波長領域に認められるが、どの点が最大吸収波長であるかは明瞭ではない。
「Cインキ」は、山本化成株式会社製の赤外線吸収剤「YKR−3080」(フタロシアニン系化合物)をビニル系樹脂と溶剤中に、8.0%(質量比)添加してシルクスクリーン印刷用インキにインキ化したものである。「Cインキ」は、曲線Cの分光透過率曲線を示し、最大吸収波長域は、1000nm〜1050nmの範囲に認められる。
【0034】
「Aインキ」、「Bインキ」、「Cインキ」ともに可視波長領域(概略400〜760nm)では、かなりの透過率を示していることが認められる。「Bインキ」の透過率が特に優れている。また、いずれのインキも800nm〜1000nmの近赤外では透過率が低下するが、「Aインキ」と「Cインキ」は、1050nmを超えると顕著に透過率が高くなる傾向が認められる。
前記した特許文献3の出願では、「Aインキ」と「Cインキ」を混合使用していたが、やはり1050nmを超えると透過率が高くなり、この領域に検知波長を有する赤外線センサには対応できない問題がある。
【0035】
そこで、本発明においては、「Cインキ」に代えて「Bインキ」を用いることとした。 本発明においても、「Aインキ」と「Bインキ」はあらかじめ混合し、1色の印刷インキにインキ化することもできるが、相互干渉により、各「Aインキ」、「Bインキ」毎に印刷する場合と比較して、赤外線吸収効果が低下する傾向が認められた。そこで、本発明では、混合しないで印刷することを発明の要旨としている。
【0036】
上記において、インモニウム塩とは、具体的には化学式が、C66928 128 4 であって、化学名は、N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−ビス(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)インモニウム塩、なるものである。人体に危険有害成分を含有せず、環境への影響は少ない、とされている。
【0037】
透明コアシートや透明オーバーシートの材料としては、ポリ塩化ビニルやPET−G(ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の一部をシクロヘキサンジメタノールで置換した共重合ポリエステル樹脂)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリプロピレン、トリアセテートなどの透明性の高い樹脂が使用可能である。
透明コアシートの厚みは単層の場合は、0.54〜0.65mm程度、2層の場合は、0.27〜0.30mm程度となる。ただし、透明カードの全体厚みをISOが規定する0.76〜0.80mm程度とするため、用いるオーバーシートの厚みによっても変わるので、適宜なものを選択して使用する。
【0038】
赤外線吸収剤をシルクスクリーン印刷用インキにインキ化するためのバインダ(樹脂)としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体や塩化ビニル・酢酸ビニル・マレイン酸共重合体、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル・アクリレート共重合体、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、等各種の樹脂が使用できる。赤外線吸収剤の添加量は多ければ多いほど赤外線の吸収に効果するので、特に上限を定めることはできないが、経済性やインキ化の困難性を考慮すれば、15〜20%程度が限界と考えられる。シルクスクリーン印刷の場合は、厚み5〜15μm程度に塗工する。
【0039】
図8は、赤外線吸収剤添加量の変化による「Aインキ」の分光透過率を測定したチャート、図9は、同「Bインキ」の分光透過率を測定したチャート、図10は、「Aインキ」と「Bインキ」重ね刷りの分光透過率を測定したチャート、である。
それぞれ、「Aインキ」は、山本化成株式会社製の赤外線吸収剤「YKR−5010」(フタロシアニン系化合物)をビニル系樹脂と溶剤中に添加してシルクスクリーン印刷用インキにインキ化したものであり、「Bインキ」は、日本カーリット株式会社製の赤外線吸収剤「CIR−1085」(インモニウム(immonium)塩)をビニル系樹脂と溶剤中に添加してシルクスクリーン印刷用インキにインキ化したものである。
【0040】
いずれも、後述の実施例と略同一の条件で、シルクスクリーン印刷用インキにインキ化した後、図8、図9は、コアシートに印刷後、図10は、コアシート、オーバーシートを熱圧プレスして一体化し、透明カード化した後の状態で測定したものである。測定は、株式会社島津製作所製の分光光度計によるものである。なお、カード基材による吸収はないものと考えてよい。
【0041】
図8も図9も、赤外線吸収剤添加量を2.0%、2.5%、3.0%、3.5%としたものの200メッシュのシルクスクリーン刷による単色印刷であり、印刷厚みは9〜10μmのものである。図10は、同一組成の同一条件による重ね刷りである。
「Aインキ」の最大吸収波長域は、800nm〜900nmの範囲と認められ、「Bインキ」の最大吸収波長域は、1000nm〜1150nmの範囲と認められるが、どの点が最大吸収波長であるかは明瞭ではない。
【0042】
図10の重ね刷りでは、2.0%の添加量の重ね刷り(T1)では、波長550nm〜600nmに60%を超える透過率域を連続して有し、2.5%の重ね刷り(T2)も当該領域の一部が60%を超えている。3.5%の重ね刷り(T4)で、波長550nm〜600nmの範囲でおおむね50%以上の透過率が得られている。また、波長800nm〜1150nmの範囲で、いずれも5%以下の透過率となる。
従って、2.0%から3.5%の添加量がほぼ最適な添加量であることが認められる。ただし、後述する実施例の結果からは、この範囲を多少超えるか、少ない添加量であっても実用的な透明カードが得られることが確認できる。
【0043】
図1、図7、図11を参照して本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【実施例1】
【0044】
(赤外線吸収剤含有印刷インキ「Aインキ」の準備)
赤外線吸収剤Aとして、山本化成株式会社製のフタロシアニン系化合物「YKR−5010」を使用し、昭和インク株式会社製の透明インキ「VAHSメジューム」に、「早口溶剤」とともに混合して撹拌し、シルクスクリーン印刷用インキにインキ化した。その組成は以下のとおりである。
<赤外線吸収剤含有印刷インキ「Aインキ」組成>
赤外線吸収剤A 1 質量部
VAHSメジューム 54.2質量部
早口溶剤 7.2質量部
(なお、スクリーンインキの状態で、赤外線吸収剤Aの割合は1.6質量%となる。)
【0045】
なお、「VAHSメジューム」は、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体:20〜25質量%、塩化ビニル・酢酸ビニル・マレイン酸共重合体:5質量%以下、シクロヘキサノン:40〜45質量%、芳香族炭化水素混合物:30〜35質量%、からなるものである。この「VAHSメジューム」の組成は、熱プレス時の融着性を考慮したものである。また、「早口溶剤」は、キシレン(エチルベンゼンを含む):55〜65質量%、シクロヘキサノン:35〜45質量%、からなるものである。
【0046】
(赤外線吸収剤含有印刷インキ「Bインキ」の準備)
赤外線吸収剤Bとして、日本カーリット株式会社製のインモニウム塩化合物「CIR−1085」を使用し、昭和インク株式会社製の透明インキ「VAHSメジューム」に、溶剤メチルエチルケトンとともに混合して撹拌し、シルクスクリーン印刷用インキにインキ化した。その組成は以下のとおりである。
<赤外線吸収剤含有印刷インキ「Bインキ」組成>
赤外線吸収剤B 1 質量部
VAHSメジューム 30 質量部
メチルエチルケトン(MEK) 10 質量部
(なお、スクリーンインキの状態で、赤外線吸収剤Bの割合は2.4質量%となる。)
【0047】
(コアシートへの赤外線吸収剤含有印刷インキの印刷)
透明コアシート11,12として、厚み0.28mmの透明PETG(非結晶PETコポリマー)基材(三菱樹脂株式会社製「ディアフィクスPG−SK2」)2枚を使用し、透明オーバーシート13,14として、厚み0.10mmのポリカーボネート(PC)と共重合ポリエステルからなるアロイシート(三菱樹脂株式会社製「ディアフィクスPG−MCT」)を使用した(図1(A)参照)。なお、オーバーシート13,14には磁気テープ5,6を仮貼り転写済みのものである。
【0048】
コアシート11の面に磁気ストライプの位置決め用のトンボを印刷した後、先に準備した赤外線吸収剤含有印刷インキ「Aインキ」を前記早口溶剤を用いて、シルクスクリーン印刷により印刷した(以下、この面を「表面」ともいう。)。乾燥後の赤外遮蔽Aインキ層の厚みは、9μmであった。
コアシート12の片面に文字を印刷し、先に準備した赤外線吸収剤含有印刷インキ「Bインキ」を溶剤MEKを用いて、シルクスクリーン印刷により印刷した(以下、この面を「裏面」ともいう。)。乾燥後の赤外遮蔽Bインキ層の厚みは、9μmであった。
コアシートの非印刷面間同士は後に融着する面とした。
なお、試験カードであるため、「Aインキ」と「Bインキ」を単層で測定できる部分を透明カードの一部に残した。
【0049】
オーバーシート13,14を、コアシートのトンボを基準に位置合わせして、カードの表裏面に重ね、さらに、スクリーン印刷による隠蔽層とオフセット印刷絵柄8を印刷済みの転写紙7をオーバーシート13面側に載置してから、全体をクロムメッキ鋼板からなる鏡面板間に挟んで熱圧プレス(120°C、38.4kgf/cm2 、120秒)して、一体のカード基体にした(図1(B)参照)。転写紙の基材フィルム7fはその後、剥離除去した。
【0050】
完成した実施例1の透明カードについて、前記分光光度計を使用して分光透過率を測定した。その結果は、図7のようになった。
「Aインキ」と「Bインキ」の双方を塗工した本発明の透明カードの分光透過率曲線は、図7中、破線T1で示されている。また、「Aインキ」単層の部分は実線Aで、「Bインキ」単層の部分は実線Bで示されている。この結果からは、スクリーンインキの状態で、赤外線吸収剤Aの割合は1.6質量%でもよいことになる。
破線T1のように、波長800nm以上の領域では、ほぼ、5.0%以下の透過率となり良好な赤外線遮光特性を示している。また、可視光線領域の波長550nm〜600nmの領域の特定波長において一部60%を超える透過率を示し、50%を超える透過率が波長550nm〜600nmの領域に連続して認められる。
【実施例2】
【0051】
(赤外線吸収剤含有印刷インキ「Aインキ」の準備)
赤外線吸収剤Aとして、山本化成株式会社製のフタロシアニン系化合物「YKR−5010」を昭和インク株式会社製の「VAHSメジューム」に混合したインキと、同じく昭和インク株式会社製の透明インキ「VAHSメジューム」を、「遅口溶剤」とともに混合して撹拌し、シルクスクリーン印刷用インキにインキ化した。その組成は以下のとおりである。
【0052】
<赤外線吸収剤含有印刷インキ「Aインキ」組成>
VAHS(赤外線吸収剤A(20%入り)) 95.4g
VAHSメジューム 359.6g
遅口溶剤 45.5g
インキ+溶剤の総量 500.5g
(なお、スクリーンインキの状態で、赤外線吸収剤Aの割合は3.8質量%となる。)
【0053】
なお、「VAHSメジューム」の組成は実施例1と同一のものである。また、「遅口溶剤」は、キシレン(エチルベンゼンを含む):35〜45質量%、シクロヘキサノン:55〜65質量%、からなるものである。
【0054】
(赤外線吸収剤含有印刷インキ「Bインキ」の準備)
赤外線吸収剤Bとして、日本カーリット株式会社製のインモニウム塩化合物「CIR−1085」を昭和インク株式会社製の「VAHSメジューム」に混合したインキと、同じく昭和インク株式会社製の透明インキ「VAHSメジューム」に、溶剤メチルエチルケトンとともに混合して撹拌し、シルクスクリーン印刷用インキにインキ化した。その組成は以下のとおりである。
【0055】
<赤外線吸収剤含有印刷インキ「Bインキ」組成>
VAHS(赤外線吸収剤B(5%入り)) 350.0g
VAHSメジューム 112.5g
メチルエチルケトン(MEK) 37.5g
インキ+溶剤の総量 500.0g
(なお、スクリーンインキの状態で、赤外線吸収剤Bの割合は3.5質量%となる。)
【0056】
(コアシートへの赤外線吸収剤含有印刷インキの印刷)
透明コアシート11,12として、厚み0.28mmの透明PETG(非結晶PETコポリマー)基材(三菱樹脂株式会社製「ディアフィクスPG−SK2」)2枚を使用し、透明オーバーシート13,14として、厚み0.10mmのポリカーボネート(PC)と共重合ポリエステルからなるアロイシート(三菱樹脂株式会社製「ディアフィクスPG−MCT」)を使用した(図1(A)参照)。なお、オーバーシート13,14には磁気テープ5,6を仮貼り転写済みのものである。
【0057】
コアシート11の面に磁気ストライプの位置決め用のトンボを印刷した後、先に準備した赤外線吸収剤含有印刷インキ「Aインキ」を前記遅口溶剤を用いて、200メッシュのシルクスクリーン印刷により全面印刷した。乾燥後の赤外遮蔽Aインキ層の厚みは、10μmであった。続いて、コアシート11の「Aインキ」印刷済面に先に準備した赤外線吸収剤含有印刷インキ「Bインキ」を溶剤MEKを用いて、200メッシュのシルクスクリーン印刷により印刷した。乾燥後の赤外遮蔽Bインキ層の厚みは、9μmであった。
【0058】
コアシート12、およびオーバーシート13,14を、コアシートのトンボを基準に位置合わせして、カードの表裏面に重ね、さらに、スクリーン印刷による隠蔽層とオフセット印刷絵柄8を印刷済みの転写紙7をオーバーシート13面側に載置してから、全体をクロムメッキ鋼板からなる鏡面板間に挟んで熱圧プレス(120°C、38.4kgf/cm2 、120秒)して、一体のカード基体にした(図3参照)。転写紙の基材フィルム7fはその後、剥離除去した。
【0059】
完成した実施例の透明カードについて、前記分光光度計を使用して分光透過率を測定した。その結果は、ほぼ、図10の曲線T4のようになった。
【0060】
(比較例)
(赤外線吸収剤含有印刷インキの準備)
前記の「VAHSメジューム」に対して、赤外線吸収剤Aと赤外線吸収剤C、および「早口溶剤」を混合して撹拌し、シルクスクリーン印刷用インキにインキ化した。その組成は以下のとおりである。なお、赤外線吸収剤Cとは、山本化成株式会社製の赤外線吸収剤「YKR−3080」(フタロシアニン系化合物)をいうものである。
【0061】
<赤外線吸収剤含有印刷インキ組成>
赤外線吸収剤A 15 質量部
赤外線吸収剤C 50 質量部
VAHSメジューム 570 質量部
早口溶剤 15 質量部
【0062】
なお、「VAHSメジューム」と「早口溶剤」の内容は、実施例の場合と同一である。 上記の配合組成で、赤外線吸収剤Aの割合は、2.3質量%、赤外線吸収剤Cの割合は、7.7質量%となる。
【0063】
カード基材も実施例と同一のものを使用し、上記の赤外線吸収剤含有印刷インキを用いて、コアシート11の表面側の全面に印刷した。乾燥後の赤外線吸収剤(A+C混合)インキ層の厚みは、16μmであった。その後、実施例と同一の条件で、コアシート12、オーバーシート13,14、および転写紙7を一体にし、実施例と同一の条件で熱圧プレスして比較例の透明カードを完成した。
完成した比較例の透明カードについて、前記分光光度計を使用して分光透過率を測定した。その結果は、図11のようになる。
【0064】
「赤外線吸収剤A」と「赤外線吸収剤C」を混合使用した比較例の透明カードの分光透過率曲線は、図11中、破線T2で示されている。
破線T2のように、波長800nm〜1000nmの領域では、ほぼ、5%以下の透過率となるが、1000nm以上では透過率が高くなる。また、可視光線領域は波長550nm〜600nmの領域の一部において、40%を僅かに超える透過率になるが、50%を超える透過率になることはない。これが原因で、カードを視覚で視認した場合は半透明な状態となる。
【0065】
「赤外線吸収剤A」の単独インキによる印刷域と「赤外線吸収剤C」の単独インキによる印刷域は、比較例の透明カードでは得られないが、参考のため、それぞれの単独インキによる分光透過率曲線を、図11中、それぞれ実線Aと一点鎖線Cで図示している。
「赤外線吸収剤A」の単独インキは、実施例と同一の「VAHSメジューム」と「早口溶剤」を使用して、印刷インキ中における赤外線吸収剤Aの割合が、3.0質量%となるように調整したもの、「赤外線吸収剤C」の単独インキは、同様に赤外線吸収剤Cの割合が、10.0質量%となるように調整したものである。
【0066】
以上の実施例と比較例から明らかなように、実施例では、可視光領域での光線透過率が従来例である比較例の透明カードより優れていて、これにより視覚透明感の優れた透明カードを実現することができる。また、赤外線領域では、波長800nm〜1150nmの領域で赤外線透過率の5.0%以上の上昇は認められず、どのような赤外線センサにも対応できることが明らかである。
【符号の説明】
【0067】
1 透明カード
2a,2b 赤外線吸収材料含有印刷インキによる全面印刷
3 透明赤外線遮光パターン
3a,3b 赤外線吸収材料含有印刷インキによるパターン印刷
4 ICモジュール接触端子
5,6 磁気テープ
7 転写紙
8 絵柄
9 背景パターン
11,12 透明コアシート
13,14 透明オーバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキを全面に塗工し、透明コアシートの他の表面に、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを全面に塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード。
【請求項2】
透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキを、透明コアシートの他の表面に、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを、それぞれJISX6305が規定するカードの光透過性測定領域の少なくとも一部に双方の塗工位置が重なるように塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード。
【請求項3】
透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキと、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキと、が重ねて全面に塗工され、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード。
【請求項4】
透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキと、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを、それぞれJISX6305が規定するカードの光透過性測定領域の少なくとも一部に双方の塗工位置が重なるように塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層した透明カードであって、双方の赤外線吸収剤含有印刷インキ塗工部分の分光透過率を測定した場合に、波長550nm〜600nmの領域に60%以上の分光透過率を示す部分を有し、かつ当該波長領域において50%以上の分光透過率を示す部分を連続して有することを特徴とする透明カード。
【請求項5】
JISX6305が規定するカードの光透過性測定領域において、波長800nm〜1150nmの領域にわたる分光光度計による分光透過率が5.0%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の透明カード。
【請求項6】
透明コアシートの外面に透明オーバーシートを積層するかオーバーコートを塗工したカードからなり、透明コアシートの1の表面に、金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキを全面または一部に塗工し、透明コアシートの他の1の表面に、波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキを全面または一部に塗工し、当該塗工面側に前記透明オーバーシートを積層するかオーバーコートを塗工したしたことを特徴とする透明カード。
【請求項7】
波長800nm〜900nmに最大吸収域を有する赤外線吸収剤含有印刷インキが、フタロシアニン系化合物を、2.0質量%〜3.5質量%の範囲で含有するシルクスクリーン印刷用インキであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1の請求項記載の透明カード。
【請求項8】
金属原子を含まないインモニウム塩からなる赤外線吸収剤を含有し波長1000nm以上の域に最大吸収域を有する印刷インキが、該インモニウム塩系化合物を、2.0質量%〜3.5質量%の範囲で含有するシルクスクリーン印刷用インキであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1の請求項記載の透明カード。
【請求項9】
金属原子を含まないインモニウム塩が、化学式[C66928 128 4]で示されるものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、6、8のいずれか1の請求項記載の透明カード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−206519(P2012−206519A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157939(P2012−157939)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2007−322810(P2007−322810)の分割
【原出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】