説明

透明キシログルカン/キトサンゲル及びその製造方法

本発明は、透明キシログルカン/キトサンゲル及びその製造方法を提供し、当該製造方法は、高温で好適な溶媒によってタマリンド種子粉末からキシログルカンを抽出し、アルコールによってそれを沈殿させて、次いで、キシログルカンを変換してジアルデヒドを形成し、キトサンとコポリマーにして、-20〜90℃で安定である熱安定性の水晶のような澄み切った無色ゲルを形成することを含む。透明チタンゲル及びその製造方法は、pH3.0〜7.0で、平均分子量 4730 KDa及び28±2℃での4100センチポイズの粘度を有し、ヒトの消化酵素によって消化されず、カロリー摂取の一因となりえず、食品成分及び補助機能食品(栄養管理)として使用できる。このキシログルカン/キトサンゲルは、化粧品及び個人ケア製品の分野で応用され、紫外線保護剤又は組織接着剤として使用可能であり、例えば、止血、切傷密封、組織工学に、又は、カプセル及びタブレットとして局所薬物送達に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規の透明チタム(Chitam)ゲル及びその製造方法に関する。本発明は、特に、キシログルカン及びキトサンコポリマーから得られる水晶のような澄み切った無色の、非毒性、生分解性、生体適合性であるゲル(本明細書において以下チタム(chitam)ゲルとして表される)に関する。本発明はまた、変換されたキシログルカンとキトサンのコポリマーを用いる非熱可逆性ゲルの改良された製造方法に関する。当該方法は、単純で、費用効率が良く、スケールアップされうる。ゲルは、様々な応用法、例えば、メーキャップ化粧品又はフェイスウォッシュ、乳液、クリーム又はファンデーションのような基礎化粧品に使用されうるもので、優れた弾力性及び老化安定性を有し、さわやかな感覚をもたらし、粘性を自由に変更でき、優れた有用性を有し、紫外線保護剤又は組織接着剤として使用可能であり、例えば、止血、切傷密封、組織工学で、又は、カプセル及びタブレットとして局所薬物送達に使用でき、また、食品成分として、そして、ヒト消化酵素によって消化されず、ゼロカロリーでダイエットにつながるので、代謝異常のためのサプリメントとしても使用されうる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
化粧品、食品及び飲料市場における今日の消費者は、健康な生活スタイル、健康路線の製品へのどんどん高くなる需要を作り出すトレンドに益々関心を持っている。化粧品及び個人ケア製品メーカーは、透明製品、例えば、それらのゲル及びエマルジョンで透明形成技術を利用する透明製品に関するトレンドが急速に成長していると主張する。タマリンド種子から抽出された純粋なキシログルカン自体は、ゲルを形成しない;しかしながら、それは大量のアルコール又は糖類の存在下で、又は、エピガロカテキン没食子酸塩のようなポリフェノールの添加によって、熱可逆性のゲルを形成すると報告されている。ガラクトースの一部を除くと、キシログルカン単独でゲルを形成しうることも報告されている。キシログルカンからガラクトースを除去する比を増加させるにつれて、ゲル強度は高くなる。キシログルカンとキサンタン又はジェラン(gellan)又はカードランとを合わせると、低温で相乗的相互作用を有すると報告されており、弾性係数の増加が起こる。
【0003】
ゲル化スキームは、より高い温度でゲルを形成する酵素的に分解されたキシログルカンの水溶液で見られるゲル化スキームとは異なる。酵素的に分解されたキシログルカンの場合には、架橋ドメインは、平板状に整列したキシログルカン鎖から構成されるが、低温ではキシログルカン/エタノール系中の架橋ドメインに規則構造(ordered structure)は見られない。キシログルカンは、エタノールの存在下で熱可逆性のゲル化を生じる。架橋ドメインは、エタノール中での低い溶解度によってキシログルカン鎖のランダムな凝集で形成されるようである。時間分割小角X線散乱による分析により、凝集の完全溶解がゲル-ゾル転移に対応することが明らかになっている。ここで、架橋ドメインはランダムな凝集で構成されるようであり、規則構造を有しない。従って、水晶のように澄み切った無色、非熱可逆性、非毒性、生分解性、生体適合性であって、規則構造を有し、再生可能資源由来なので費用効率が良いゲルは、全世界で高い需要がある。
【0004】
Y. Nitta, Y. Fang, M. Takemasa, and K. Nishinar Nishinari, Biomacromolecules, 5, (2004), 1206-1213を参照すると、この文献では、熱可逆性のゲル化を誘導するタマリンド種子キシログルカン及びエピガロカテキン没食子酸塩の相互作用が研究されており、形成されたゲルが熱可逆性であり、かつ、透明ではないことが欠点である。
更にまた、Bo-Sook Kim, Makoto Takemasa, and Katsuyoshi Nishina, 'Synergistic Interaction of Xyloglucan and Xanthan Investigated by Rheology, Differential Scanning Calorimetry, and NMR', Biomacromolecules, 7, (2006), 1223-1230を参照すると、この文献では、タマリンド種子キシログルカン及びキサンタンの相乗的相互作用が低温で確認されたが、ゲルが熱可逆性であることが欠点である。
【0005】
更にまた、S. Yamanaka, Y. Yuguchi, H. Urakawa, K. Kajiwara, M. Shirakawa, K. Yamatoya, 'gelation of tamarind seed polysaccharide xyloglucan in the presence of ethanol', Food hydrocolloids, 14, (2000), 125-128を参照すると、この文献では、キシログルカンが低温でエタノールの存在下で熱可逆性ゲル化を起こしており、ゲルが熱可逆性であることが欠点である。
更にまた、Yoko Nitta, Bo S. Kim, Katsuyoshi Nishinari, Mayumi Shirakawa, Kazuhiko Yamatoya, Toshio Oomoto, and Iwao Asai, Synergistic Gel Formation of Xyloglucan/Gellan 'Mixtures as Studied by Rheology, DSC, and Circular Dichroism', Biomacromolecules, 4, (2003), 1654-1660を参照すると、この文献では、タマリンド種子キシログルカン及びナトリウム形成ジェランの混合物のゲル化挙動が研究されている。ヘリックス形成ポリサッカライドの相乗的相互作用及び混合物の保存性と剛性率G'及びG''の低下から、それは熱可逆性のゲルであることが示されており、そしてゲルが熱可逆性であることが欠点である。
【0006】
更にまた、Mayumi Shirakawa, Kazuhiko Yamatoya, Katsuyoshi Nishinari, 'Tailoring of xyloglucan properties using an enzyme', Food Hydrocolloids, 12, (1998), 25-28を参照すると、この文献においては、菌性のβ−ガラクトシダーゼを用いてタマリンド種子のキシログルカンから35%のガラクトース残基を除くことによって、それは、加熱するとゲルを形成し、冷却するとゾル状態に戻るという独特の特性を持った。高温でのゲル強度は、低温でのそれよりも高かった。ゾル及びゲルの間の相転移は可逆的だった。ゲル化は、疎水性結合による主鎖の会合によって誘導されると考えられており、そしてこのタイプのゲルの欠点は、それらが温度依存であることである。
更にまた、Vipul Dave, Mihir Sheth, Stephen P. McCarthy, Jo Ann Ratto, David L. Kaplan, 'Liquid crystalline, rheological and thermal properties of konjac glucomannan Galactomannan', Polymer, 39, (1998), 1139 - 1148を参照すると、この文献では、脱アセチル化を介する凝固剤を添加し、ゲル化を比較的低温又は高温の加熱温度でカードランと共に加熱して、熱可逆性ゲル又は熱不可逆性ゲルのいずれかを形成することによって促進しており、そして欠点は双方ともキシログルカンではないことである。
【0007】
更にまた、K Nishinari, H Zhang, S Ikeda, 'Hydrocolloid gels of polysaccharides and proteins', Current Opinion in Colloid & Interface Science, 5, (2000), 195-201を参照すると、この文献において、ローカストビーンガム(LBG)が、凍結/融解サイクルによってゲルを形成し、ゲル化速度は-5℃で最大になり、LBGゲルは真のゲル-様特性を示し、そして欠点は双方ともキシログルカンではないことである。
更にまた、Yano yoshihiro, Shimada kunio, Fukuda nobuo, 'Aroma-keeping agent containing polysaccharide having hydrophobic group'、特開2001-064668A2号公報(2001)を参照すると、この文献では、保香剤として疎水基を有するポリサッカライド誘導体から構成される化粧品のゲルが記載されており、そして欠点はそれらがキシログルカンではないことである。
【0008】
更にまた、Abe koji, Miyahara reiji, Nanba tomiyuki; Uehara keiichi, 'Cosmetics - contains xyloglucan and viscous polysaccharide'、特開平10-259118A2号公報(1998)を参照すると、この文献では、化粧品がキシログルカン、及び、増粘ポリサッカライド及び糖ベースの界面活性剤を合わせて調合することによって製造されており、そして欠点はそれらがキシログルカンゲルではないことである。
更にまた、Abe koji, Miyahara reiji, Nanba tomiyuki; Uehara keiichi, 'Cosmetic for skin - contains xyloglucan and ultraviolet ray shielding agent'、特開平10-259142A2号公報(1998)を参照すると、この文献では、化粧品がキシログルカン及び紫外線保護剤を含んでおり、そして欠点はそれらが熱安定性透明ゲルではないことである。
【0009】
更にまた、Mori satoru, Asahi kasei corp, cosmetics, an aqueous solution of which with a solid content of 10% has a pH of 5-8, comprises n-acyl glutamic acid salt and xylo glucan、特開2001-278727A2号公報(2001)を参照すると、この文献では、化粧品がn-アシグルタミン酸塩及びキシログルカンを含み、pH5〜8に調整され、低刺激性であり、使用後に弱粘性であり、適度に粘性を有し、沈殿や混濁などを起こさず、たとえ低温でも優れた低温安定性を有する化粧品が得られており、そして欠点はそれらが透明安定性ゲルではないことである。
更にまた、Shibata saori, Nippon shikizai inc, 'Gel-form cosmetics useful as make-up cosmetic or basic cosmetic such as face wash, milky lotion, cream or foundation, contain xyloglucan, lower alcohol and powder-form component'、特開2006-069952A2号公報(2006)を参照すると、この文献中では、ゲルがキシログルカンと低級アルコールと粉末とを混合することで製造されており、そして欠点はそれらが透明で強いゲルではないことである。
【0010】
更にまた、Walker, Greg WO/08065388A2(2008)を参照すると、この文献では、組織接着剤であるバイオゲルの形成方法が記載されており、そして欠点はそれらがキシログルカンゲルではないことである。
更にまた、Bucevschi mircea dan, Caloianu maria, Musteata bogdan, Alupei cornel,Coltmonica, Iordachel radu, Moldovan lucia, Iordachel catalin, Topolniceanu florin, 'Permeable biogel based on collagen fiber, comprises a brain disease pharmaceutical based on modification by ethyl acrylate and maleic anhydride'、RO0119951B1を参照すると、この文献では、コラーゲン繊維をベースとした透過性のバイオゲルが、何らかの脳及び内分泌の疾患の治療において、生体液及び腺分泌物の流れを調整するために作られるが、それらは透明安定性のキシログルカンゲルではない。
【0011】
更にまた、Knapp, Barry Disalvo, Ronald, 'Gel-based cosmetic and wound-healing formulation and method'、米国特許番号7217417号明細書(2007)を参照すると、この文献では、ゲル-ベースの化粧品及び創傷治癒用の調合物が、生酵母細胞抽出物、顔料及びゲルを含み、そして欠点はそれが透明で安定なキシログルカンゲルではないことである。
従って、従来知られている先行技術の欠点を鑑みて、本発明者は非毒性の無色透明ゲルの開発に切迫したニーズが存在することを理解した。また、ゲルは、簡単かつ豊富に得られる天然で再生可能である原材料から製造されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の目的
従って、本発明の主な目的は、変換されたキシログルカン及びキトサンのコポリマーである新規の透明チタムゲルを提供することである。
本発明の別の目的は、非毒性かつ無色で再生可能資源由来であり、かつ、豊富に得られるゲルの製造方法を提供することである。
また、別の目的は、変換されたキシログルカンをペルヨーダート酸化によって製造して、キシログルカンジアルデヒドを形成する方法を提供することである。
【0013】
また、別の目的は、透明チタムゲルが高温かつ中性から酸性条件下で安定である方法を提供することである。
また、別の目的は、透明チタムゲルがヒトの消化酵素によって消化されず、カロリー摂取の一因となりえない方法を提供することである。
また、別の目的は、化粧品、薬剤、及び、機能性食品のための使用を提供することである。
また、別の目的は、天然又は合成の製剤、香料、香味料、栄養素、染料、UV抑制剤の基材としてチタムゲルを提供することである。
上述したような本発明の様々な目的は、再生可能な原材料を用いることによって満たされ、費用は、ゲルの調製が簡単であることにより必然的に安くなる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明は、新規の透明チタムゲル及びその製造方法を提供し、当該製造方法は、酸性pHかつ高温で好適な溶媒によってタマリンド種子粉末からキシログルカンを抽出し、アルコールによってそれを沈殿させて、次いで、キシログルカンを変換してジアルデヒドを形成し、キトサンとコポリマーにして、熱安定性の水晶のような澄み切った無色ゲルを形成することを含む。
従って、本発明は、式1で表される透明チタムゲルを提供し、ここでこのゲルは、
[a] キシログルカン、及び
[b] キトサン
を含み、[a]:[b]の比はポリマーの質量で1〜6:1〜8の範囲内である。
従って、本発明は、式1で表される透明チタムゲルを提供し、ここでこのゲルは、
[a] キシログルカン、及び
[b] キトサン
を含み、[a]:[b]の比はポリマーの質量で1〜6:1〜8の範囲内である。
【0015】
【化1】

【0016】
本発明は更に、前記チタムゲルの製造方法を提供し、当該製造方法は、
[a] 粗く粉末化されたタマリンドを水に溶解させることで、タマリンドスラリーを作製し、ここで、pH2〜10、好ましくはpH4〜8で、タマリンド粉末対水の比は1〜10:10〜20の範囲内である工程;
[b] 工程[a]で得られたスラリーを10〜100℃、好ましくは40〜80℃で加熱し、次いで25〜33℃の温度に冷却し、アルコール溶媒、例えばベンジルアルコール、イソプロパノール、イソブタノール、エタノール、メタノール、ブタノールなどでそれを沈殿させて、キシログルカンを得る工程;
[c] 工程[b]で得られた沈殿キシログルカンを真空乾燥又は凍結乾燥で乾燥させて、粉末を得る工程;
[d] 工程[c]で得られた粉末キシログルカンをpH7〜14の範囲内で水中に、又は、DMSO、DMF、THF、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、アセトン、酢酸、ギ酸などから選択されるいずれかの他の溶媒中に分散させて、混合物を得る工程;
[e] 工程[d]で形成された混合物を、硝酸、一酸化二窒素、セリウム化合物、ペルクロラート、ペルヨーダート、ペルマンガナートなどから選択される酸化試薬と、2〜10℃の温度で1〜15時間攪拌する工程;
[f] 工程[e]の反応を1〜10 mlのプロピレングリコール、エチレングリコールのようなジオール、又は何れかの他のジオールを添加することにより終了させて、液体生成物を透析又はカラムクロマトグラフィーのような方法によって精製して、キシログルカンジアルデヒドを得る工程;
[g] 工程[f]で得られたキシログルカンジアルデヒドを、pH1〜7の範囲内で1〜10%のキトサンと混合する工程;
[h] 工程[g]で得られた混合物を1〜5分間攪拌して、所望の透明チタムゲルを得る工程、を含む。
【0017】
本発明の態様において、キシログルカンは天然素材であるか、又は、合成により調製される。
本発明の別の態様において、キシログルカンは、タマリンド(タマリンダス・インディカ)(tamarind(tamarindus indica))、ジャトバ(ヒメアエナ・クールバリル)(jaloba(hymenacea courbaril))、デタリウムガム(detarium gum)、又は、アフゼリア・アフリカーナ(atzelia Africana)の種子粉末から、好ましくはタマリンドから抽出される。
本発明の別の態様において、ゲルは化粧品、ヘルスケア及び衛生用品、食品加工品、ダイエット飲料、及び、薬物応用に有用である。
本発明の別の態様において、ゲルはごくわずかなカロリー値しか有しないので、ダイエット飲料、ジャム、ジェリー、マーマレイド、アイスクリーム、ソースの調合で使用されうる。
【0018】
本発明の別の態様において、製造されたゲルは、以下の特徴を示す:
i. 分子量 4730 KDa
ii. pH 3.0〜8.0での安定性
iii. 無色透明ゲル
iv. 28±2℃で4100センチポイズの粘度
v. -20〜90℃の温度における非常に良好な保存安定性
vi. 太陽光への長期暴露で分解しない;及び
vii. 紫外線への暴露で分解しない。
本発明の別の態様において、ゲルは、2〜4時間の範囲内での紫外線への暴露、及び、5〜8日間の太陽光への暴露に対して安定している。
【0019】
本発明の別の態様において、チタムゲルの製造方法を提供する。
本発明の別の態様において、タマリンドスラリーが作製されるpHは、2〜6.5、6.5〜7.5、及び、7.5〜10のいずれかである。
本発明の別の態様において、タマリンド種子からキシログルカンを抽出するための温度は、好ましくは80〜100℃である。
本発明の別の態様において、溶液をクエン酸、酒石酸、又は、乳酸によってpH2〜5に酸性化する。
本発明の別の態様において、沈殿キシログルカンを、酸化、還元、又は、誘導体化によって、好ましくは、2〜10℃の範囲内の温度で4〜10時間の滞留時間で、過酸化水素、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウムから選択される試薬を用いた酸化によって変換してジアルデヒドを形成する。
本発明の別の態様において、キシログルカンを、4℃の温度で6〜10時間、過ヨウ素酸ナトリウムを用いた酸化によってジアルデヒドに変換する。
【0020】
また、本発明の別の形態において、キシログルカンは、水である溶媒によってタマリンド種子から抽出される。
また、別の態様において、溶媒は、pH3.0で、温度10〜50℃の水であり、キシログルカンの抽出物が調製される。
また、本発明の別の態様において、酸はシュウ酸及びクエン酸からなる群から選択される。
また、本発明の別の態様において、酸はクエン酸を含む。
本発明の別の態様において、酸化は、過酸化物又はペルヨーダートによってなされる。
本発明の別の態様において、ジアルデヒドキシログルカンを、他の天然素材ポリマー、特にキトサンと、1:1、1:2、1:3、1:4、2:1の質量比で、好ましくは1:3の質量比で、25〜33℃の温度範囲で共重合化して図1の式のチタムゲルを形成し、90〜98%の範囲の収量が得られ、最小限の廃棄物を生じる。
本発明のもう一つの態様において、架橋コポリマーの成果物は、優れた熱特性及びレオロジー特性を有する、水晶のような澄み切った透明無色のゲルを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】キシログルカンの構造を示す。
【図2】キシログルカンジアルデヒドの斜視図である。
【図3】キトサンの構造を示す。
【図4】コポリマーチタムゲルの基本構造を示す。
【図5】15 KVで走査型電子顕微鏡(SEM)のもとで観察された金で被覆されたゲルの表面モルホロジーである。
【図6】100 KVでの透過電子顕微鏡法(TEM)によるゲルの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明の方法で提供される生成物は、2種の天然素材ポリサッカライドのコポリマーである水晶のような澄み切ったチタムゲルである。粗く粉末化されたタマリンド粉末を、酸性又はアルカリ性のpHの水とスラリーにして、10〜100℃、好ましくは40〜80℃に加熱し、冷却し、10〜100%(v/v)の濃度の好適な溶媒、例えば、エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、イソプロパノール、イソブタノール、n-ブタノールなどで沈殿させる。沈殿キシログルカンを真空又は透明乾燥により乾燥させる。粉末化されたキシログルカンを、水中、又は、いずれかのほかの溶媒中、例えばDMSO、DMF、THF、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、アセトン、酢酸、ギ酸などの中にアルカリ性条件下でけん濁させる。上述の反応混合物を、酸化試薬、例えば過酸化水素、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウムのいずれかと、温度2〜10℃で1〜15時間攪拌する。反応を1 mlのエチレングリコールを添加することによって終了させる。形成された生成物を、透析又はカラムクロマトグラフィーのようないずれかの方法で精製する。純粋な酸化サンプルを酸性媒体中で1〜10%のキトサンと混合し、1〜5分間攪拌して、架橋を形成する。次いで、澄み切ったチタムゲルを得る。約1グラムの乾燥質量原材料から100グラムの湿潤し、澄み切った強いゲルが得られる。
以下の実施例は、例示の目的で与えられるので、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0023】
以下の実施例でタマリンド粉末からキシログルカンを製造する方法を説明する。
[実施例1]
粗引きのタマリンド種子粉末と水を1:5の比にて28℃でスラリーにした。このスラリーを弱アルカリ性の沸騰水に添加した。それを沸騰させてしばらく維持し、キシログルカンを可溶性にした。キシログルカンを70%エタノールで沈殿させた。この沈殿物を遠心分離で分けて、純粋なキシログルカンを得た。
[実施例2]
タマリンド種子粉末と水を28℃でスラリーにした。このスラリーを中性の沸騰水に1:5の比で添加した。それを沸騰させてしばらく維持した。アルコールでキシログルカンを沈殿させた。
【0024】
[実施例3]
タマリンド種子粉末と水を1:10の比にて28℃でスラリーにした。このスラリーを酸性の沸騰水に添加した。それを沸騰させてしばらく維持した。
以下の実施例では、ジアルデヒドキシログルカンの製造方法について説明する。
[実施例4]
0.5 gのキシログルカンを水にけん濁させた。5 mlの水に溶解させた1 gの過酸化水素をゆっくり添加した。反応を6時間2℃で継続させた。反応を1 mlのエチレングリコールを添加することによって終了させた。生成物を蒸留水で12時間透析した。
【0025】
[実施例5]
0.5 gのキシログルカンを水にけん濁させた。5 mlの水に溶解させた1 gの過ヨウ素酸ナトリウムをゆっくり添加した。反応を6時間2℃で継続させた。反応を1 mlのエチレングリコールを添加することで終了させた。生成物を蒸留水で12時間透析した。
[実施例6]
0.5 gのキシログルカンを水にけん濁させた。5 mlの水に溶解させた1 gの過ヨウ素酸カリウムをゆっくり添加した。反応を6時間2℃で継続させた。反応を1 mlのエチレングリコールを添加することによって終了させた。生成物を蒸留水で12時間透析した。
【0026】
[実施例7]
1 gのキシログルカンを水にけん濁させた。5 mlの水に溶解させた1 gの過ヨウ素酸カリウムをゆっくり添加した。反応を10時間2℃で継続させた。反応を1 mlのエチレングリコールを添加することによって終了させた。生成物を蒸留水で12時間透析した。
[実施例8]
1 gのキシログルカンを水にけん濁させた。5 mlの水に溶解させた1 gの過ヨウ素酸カリウムをゆっくり添加した。反応を12時間2℃で継続させた。反応を1 mlのエチレングリコールを添加することによって終了させた。生成物を蒸留水で12時間透析した。
以下の実施例では、チタムゲルの製造方法を説明する。
【0027】
[実施例9]
1%の酢酸中の1%のキトサンを調製し、30 mlと10mlの好適な割合のジアルデヒドキシログルカンとを混合し、架橋させた。40グラムの透明ゲルを得た。
[実施例10]
1%の酢酸中の2%のキトサンを調製し、等しい体積割合で1%のジアルデヒドキシログルカンと混合した。透明ゲルを室温で得た。10 gの原材料から1 kgの透明ゲルを製造した。
【0028】
[実施例11]
ホモサラート(homosalate)を用いたサンスクリーンチタムゲルとしてのチタムゲルの製造品は、サンスクリーンとして製造され、256 nmのUV光下で4時間、安定していることが分かった。
[実施例12]
50グラムのチタムゲルに対して、紫色にするための食品等級アントシアニンを添加し、アスパルテーム、グレープフレーバー及びクエン酸を加えてゼロカロリーのグレープジェリーを得て、また別に、食用のオレンジ色染料をクエン酸、オレンジフレーバー、人工甘味料、及び、薄くスライスしたオレンジピールと共に加えて、ゼロカロリーのオレンジマーマレイドを得た。
【産業上の利用可能性】
【0029】
発明の有利性
1. 再生可能資源から水晶のような澄み切った非毒性チタムゲルが得られる。
2. 10グラムの原材料から1Kgのゲルを生成できるので、チタムゲルが高収率で得られ、100倍の収率であるため費用効率が高い。
3. チタムゲルを試験すると、-20〜90℃で熱安定である。
4. ダイエット代替品として、特に糖尿病患者のために有用なゼロカロリーのゲルは、飲料、ジャム、ジェリー、マーマレイドに混ぜることができ、所望の粘度及びゲル特性をもたらし、食用の染料、風味剤、及び、人口甘味料との食感の相性がよい。
5. 酸性から中性であるpH3.0〜7.0で非常に安定しているので、経口、局所、又は創傷治癒パッチで薬剤の賦形剤として使用できる。
6. チタムゲルは、扱いが簡単で、衛生的で非毒性である。
7. ゲルは室温及び大気圧下で形成されるから、ゲルの製造のための加熱も長時間の攪拌も必要ない;従って、高価な製造装置が必要ない。
8. 所望の最終製品の粘度は、キシログルカン、キトサン比の割合を加減するか、好適な媒体で希釈したチタムゲルで適宜調整されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される透明チタム(chitam)ゲルであって、
[a] キシログルカン、及び
[b] キトサン
を含み、[a]:[b]の比はポリマーの質量で1〜6:1〜8の範囲内である、ゲル。
【請求項2】
キシログルカンが、天然素材であるか、又は、合成により調製される、請求項1に記載のゲル。
【請求項3】
キシログルカンが、タマリンド(タマリンダス・インディカ)、ジャトバ(ヒメアエナ・クールバリル)、デタリウムガム、又は、アフゼリア・アフリカーナの種子粉末から、好ましくはタマリンドから抽出される、請求項1に記載のゲル。
【請求項4】
キシログルカン:キトサンの比が1:3である、請求項1に記載のゲル。
【請求項5】
化粧品、ヘルスケア及び衛生用品、食品加工品、ダイエット飲料、及び、薬物応用に有用である、請求項1に記載のゲル。
【請求項6】
ごくわずかなカロリー値しか有さないので、ダイエット飲料、ジャム、ジェリー、マーマレイド、アイスクリーム、ソースの調合で使用されうる、請求項1に記載のゲル。
【請求項7】
以下の特徴を示す、請求項1に記載のゲル:
[a] 分子量 4730 KDa
[b] pH 3.0〜8.0での安定性
[c] 無色透明ゲル
[d] 28±2℃で4100センチポイズの粘度
[e] -20〜90℃の温度における非常に良好な保存安定性
[f] 太陽光への長期暴露で分解しない;及び
[g] 紫外線への暴露で分解しない。
【請求項8】
2〜4時間の範囲内での紫外線への暴露、及び、5〜8日間の太陽光への暴露に対して安定している、請求項1に記載のゲル。
【請求項9】
請求項1に記載のゲルの製造方法であって、
[a] 粗く粉末化されたタマリンドを水に溶解させることで、タマリンドスラリーを作製し、ここで、pH2〜10、好ましくはpH4〜8で、タマリンド粉末対水の比は1〜10:10〜20の範囲内である工程;
[b] 工程[a]で得られたスラリーを10〜100℃、好ましくは40〜80℃で加熱し、次いで25〜33℃の温度に冷却し、アルコール溶媒、例えばベンジルアルコール、イソプロパノール、イソブタノール、エタノール、メタノール、n-ブタノールなどでそれを沈殿させて、キシログルカンを得る工程;
[c] 工程[b]で得られた沈殿キシログルカンを真空乾燥又は凍結乾燥で乾燥させて、粉末を得る工程;
[d] 工程[c]で得られた粉末キシログルカンをpH7〜14の範囲内で水中、又は、DMSO、DMF、THF、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、アセトン、酢酸、ギ酸などから選択されるいずれかの他の溶媒中に分散させて、混合物を得る工程;
[e] 工程[d]で形成された混合物を、硝酸、一酸化二窒素、セリウム化合物、ペルクロラート、ペルヨーダート、ペルマンガナートなどから選択される酸化試薬と、2〜10℃の温度で1〜15時間攪拌する工程;
[f] 工程[e]の反応を1〜10 mlのプロピレングリコール、エチレングリコールから選択されるジオール、又は何れかの他のジオールを添加することにより終了させて、液体生成物を透析又はカラムクロマトグラフィーのような方法によって精製して、純粋な酸化サンプルを得る工程;
[g] 工程[f]で得られた純粋な酸化サンプルを、pH1〜7の範囲内で1〜10%のキトサンと混合する工程;
[h] 工程[g]で得られた混合物を1〜5分間攪拌して、所望の透明チタムゲルを得る工程、
を含む、方法。
【請求項10】
工程[a]において、pHが2〜6.5、6.5〜7.5、及び、7.5〜10のいずれかである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
タマリンド種子からキシログルカンを抽出するための温度が、好ましくは80〜100℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
溶液をクエン酸、酒石酸、又は、乳酸によってpH2〜5に酸性化する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
沈殿キシログルカンを、酸化、還元、又は、誘導体化によって、好ましくは、2〜10℃の範囲内の温度で4〜10時間の滞留時間で、過酸化水素、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウムから選択される試薬を用いた酸化によって変換してジアルデヒドを形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
キシログルカンを、4℃の温度で6〜10時間、過ヨウ素酸ナトリウムを用いた酸化によってジアルデヒドに変換する、請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−512268(P2012−512268A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540326(P2011−540326)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000217
【国際公開番号】WO2010/070655
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508176500)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (27)
【Fターム(参考)】