説明

透明タッチパネル

【課題】化学強化ガラス基板の配線領域に高密度に多数の引き出し線を配線しても、化学強化ガラス基板の強度が劣化しない透明タッチパネルを提供する。
【解決手段】複数の引き出し線が配線されるガラス基板の前記平面の配線領域に、合成樹脂からなる絶縁層を形成し、絶縁層上にスパッタリングで成膜させた導電性薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターンニングし、複数の引き出し線を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化されたガラス基板の平面に、透明センサー電極を外部に引き出す引き出し線が配線された透明タッチパネルに関し、更に詳しくは、引き出し線をスパッタリングにより成膜した薄膜からパターニングして形成する透明タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表示を指標として入力操作を行うタッチパネルは、機器の内方に配置される表示装置の表示が入力操作領域を通して目視できるように、入力操作領域に透明センサー電極を形成するとともに、入力操作領域に透明センサー電極を形成する絶縁基板としてガラス基板を使用している。また、このガラス基板は、入力操作領域が機器の表面に沿って露出し、外力を受けて破損する恐れがあることから、その表面と裏面をイオン交換し応力強化させた化学強化ガラス基板としている。
【0003】
図7と図8は、特許文献1に記載された投影型静電容量方式の従来の透明タッチパネル100を図示するものであり、化学強化ガラス基板101の表面に設定された入力操作領域102aに、複数のX方向に沿ったX側透明センサー電極103xと複数のY方向に沿ったY側透明センサー電極103yが互いに交差して形成されている。
【0004】
各透明センサー電極103x、103yは、透明導電性材料で菱形面が連続する帯状に形成され、両者が交差する部位では、絶縁コート104を介してX側透明センサー電極103xを乗り越える連結電極105が交差部で途切れたY側透明センサー電極103yの菱形面間を電気接続し、これにより、各透明センサー電極103x、103yは、入力操作領域102aにおいて、互いに絶縁されつつ直交方向に交差して配線される。
【0005】
各透明センサー電極103x、yの一側、若しくは両側は、入力操作領域102aの周囲の配線領域102bに配線される引き出し線106にそれぞれ接続し、配線領域102bの一部に設けられた外部接続部107まで引き出され、外部接続部107を介して入力操作位置を検出する検出回路に電気接続している。
【0006】
図7に示すように、透明センサー電極103x、103y、引き出し線106等が形成された化学強化ガラス基板101の表面側は、透明絶縁材料で形成された透明なトップコート層108でその全面が覆われ、また、配線領域102bが形成される背面側は、絶縁遮光層109が印刷形成されている。引き出し線106は、透明導電材料で形成するので、目視できないが、絶縁遮光層109を入力操作を行う表面側の引き出し線106上に形成し、引き出し線106を覆う透明タッチパネルも上記特許文献1の他の実施例として記載されている。
【0007】
指などの入力操作体が接近する透明センサー電極103x、103yでは、浮遊容量が増加するので、検出回路から各透明センサー電極103x、103yへ矩形パルス状の位置検出信号を出力し、浮遊容量の増加によって波形が歪んだ位置検出信号を出力した各透明センサー電極103x、103yの配置位置から、入力操作領域102aへの入力操作位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−192124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
透明タッチパネル100に使用される化学強化ガラス基板101は、上述したように外部からの衝撃により破損しないように、ガラス基板の表面層及び背面層のナトリウムイオンをイオン半径が大きいカリウムイオンにイオン交換したもので、これにより表面層と背面層に圧縮応力層を発生させている。ガラスの引っ張り強さは圧縮強さに比べてはるかに小さいので、化学強化ガラスでは、予めその表層に圧縮応力層を発生させておくことにより、外力に対して化学強化を行わないガラス基板に対して5倍程度の強度としている。
【0010】
一方、高分解能で入力操作位置を検出するために、入力操作領域102aに多数の透明センサー電極103x、103yを配置する必要があり、各透明センサー電極103x、103yに接続する多数の引き出し線106を、入力操作領域102a周囲の限られた配線領域102bに高密度で配線する必要があった。その為、従来の印刷による配線に限界があり、引き出し線106を形成する導電材料をスパッタリングで化学強化ガラス基板101の表面に成膜し、フォトリソグラフィ法を用いて不要部分を取り除くパターンニングにより各引き出し線106を形成している。
【0011】
スパッタリングによる化学強化ガラス基板101への成膜に際しては、引き出し線106の導電材料であるクラスタが高速でガラス基板101の表面の成膜に打ち込まれることにより膜の格子に余計な原子が押し込まれ、ガラス基板と導電材料との熱膨張係数の差を考慮したとしても、表面に沿って膜を膨張させようとする方向の内部応力が生じ、成膜から化学強化ガラス基板101の表面に対し引っ張り応力が作用する。その結果、化学強化ガラス基板101の表層に発生させた圧縮応力は、その表面に導電材料を成膜するスパッタリングの工程で相殺され、化学強化したにもかかわらず、その効果が充分に得られず、外力に対して破損しやすい構造となってしまうという問題が生じた。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、化学強化ガラス基板の配線領域にスパッタリングとフォリリソグラフィ法を用いて高密度に多数の引き出し線を配線しても、化学強化ガラス基板の強度が劣化しない透明タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、請求項1の透明タッチパネルは、平面側が化学強化されたガラス基板と、ガラス基板の前記平面の入力操作領域に互いに絶縁して形成される複数の透明センサー電極と、複数の各透明センサー電極をそれぞれ外部接続部へ引き出すように、ガラス基板の前記平面の入力操作領域周囲に配線される複数の引き出し線とを備え、外部接続部を介して各透明センサー電極から出力される電気信号から、入力操作領域への入力操作を検出する透明タッチパネルであって、複数の引き出し線が配線されるガラス基板の前記平面の配線領域に、合成樹脂からなる絶縁層を形成し、絶縁層上にスパッタリングで成膜させた導電性薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターンニングし、前記複数の引き出し線を形成することを特徴とする。
【0014】
絶縁層は、スパッタリング以外の方法で配線領域に形成でき、複数の引き出し線は、絶縁層上にスパッタリングして成膜させた導電性薄膜から形成するので、スパッタリングの際に導電性薄膜に発生する引っ張り応力は、絶縁層の表面に作用し、配線領域での化学強化ガラス基板の表面に伝達されない。
【0015】
ガラス基板は、その周囲がケース等に固定されるので、中央付近の入力操作領域で外力を受けると、固定端近傍の配線領域に大きな曲げ応力が発生する。しかしながら、配線領域のガラス基板の平面は、スパッタリングによる引っ張り応力を受けず、化学強化された状態にあるので、外力を受けてもガラス基板が破損しにくい。
【0016】
請求項2の透明タッチパネルは、絶縁層を、入力操作領域の周囲を遮光する絶縁遮光層で形成することを特徴とする。
【0017】
入力操作領域以外の部分を遮光する絶縁遮光層を、絶縁層とするので、別に絶縁層を形成する工程が加わらない。
【0018】
請求項3の透明タッチパネルは、複数の透明センサー電極が、入力操作領域で互いに直交する複数のX側透明センサー電極と複数のY側透明センサー電極とからなり、X側透明センサー電極とY側透明センサー電極の各交差部でX側透明センサー電極とY側透明センサー電極間を絶縁する絶縁コートと配線領域の絶縁層とを、絶縁インクを用いた同一印刷工程で形成することを特徴とする。
【0019】
交差部でX側透明センサー電極とY側透明センサー電極間を絶縁する絶縁コートの印刷工程で、同時に絶縁層を形成できる。
【0020】
請求項4の透明タッチパネルは、透明センサー電極が酸化インジウムで形成され、引き出し線がモリブデンを含む導電材料で形成されることを特徴とする。
【0021】
硬い金属であるモリブデンをスパッタリングで成膜しても、引っ張り応力がガラス基板の表面に作用しない。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、ガラス基板の平面上の配線領域に配線される引き出し線をスパッタ法を用いて高密度で配線しても、化学強化したガラス基板の強度が劣化しない。
【0023】
請求項2の発明によれば、絶縁遮光層を絶縁層とするので、絶縁遮光層の形成工程で、引き出し線とガラス基板間に介在させる絶縁層を形成できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、X側透明センサー電極とY側透明センサー電極間を絶縁する絶縁コートの印刷工程で、引き出し線とガラス基板間に介在させる絶縁層を形成できる。
【0025】
請求項4の発明によれば、硬い金属であるモリブデンを含む導電材料で引き出し線を形成しても、ガラス基板の強度が劣化しない。透明センサー電極を構成する酸化インジウムに対して電気的接触特性に優れたモリブデンを含む導電材料で引き出し線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る透明タッチパネル1の平面図、(b)は、(a)の図中A−A線に沿った断面図である。
【図2】絶縁遮光層8を形成した第1工程を示す(a)は、平面図、(b)は、A−A線に沿った位置で切断した断面図である。
【図3】入力操作領域2aに連結電極6を形成した第2工程を示す(a)は、平面図、(b)は、A−A線に沿った位置で切断した断面図である。
【図4】連結電極6と絶縁遮光層8を絶縁コート7で覆う第3工程を示す(a)は、平面図、(b)は、A−A線に沿った位置で切断した断面図である。
【図5】配線領域2bに引き出し線5を配線する第4工程を示す(a)は、平面図、(b)は、図1(a)の図中A−A線に沿った位置で切断した断面図である。
【図6】入力操作領域2aに透明センサー電極3、4を形成する第5工程を示すA−A線に沿った位置で切断した断面図である。
【図7】従来の透明タッチパネル100の平面図である。
【図8】透明タッチパネル100の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第1実施の形態に係る透明タッチパネル1を、図1乃至図6を用いて説明する。この透明タッチパネル1は、携帯電話機などの電子機器の入力装置として、図1(b)の上方を、電子機器の内方に向けてケースに取り付けられ、図中の下方側をケースの外方に臨ませて入力操作するものであるが、以下、同図に示すガラス基板の上面を平面として説明する。
【0028】
透明タッチパネル1は、機器の内方に配置される表示装置を目視しながら入力操作を可能とするため、センサー電極を形成する絶縁基板としての透明なガラス基板2を用いている。ガラス基板2は、ケースの表面に沿って配置されるので、外力を受けても破損しないように、380℃程度の硝酸カリウム溶融液に浸漬し、その表裏層のナトリウムイオン(Na+)に代えてカリウムイオン(K+)を取り込む化学強化を行っている。カリウムイオン(K+)のイオン半径は、ナトリウムイオン(Na+)より大きいので、化学強化したガラス基板2の表裏層には圧縮応力が発生している。一般に、ガラス基板2は、圧縮強さに比べて引っ張り強さがはるかに小さく、表裏面に引っ張り応力が発生して破断するので、予めその表裏層に圧縮応力を発生させておくことで、化学強化前の強度に対して5倍程度の強度としている。
【0029】
ガラス基板2の平面は、図1に示すように、多数のX側透明センサー電極3、3・・とY側透明センサー電極4、4、・・とが直交するXY方向に沿ってマトリックス状に形成される入力操作領域2aと、その周囲の多数の引き出し線5、5・・が配線される配線領域2bとに分けられる。
【0030】
入力操作領域2aに形成される複数の各X側透明センサー電極3は、Y側透明センサー電極4と交差する交差領域で隔てられる菱形のXパターン本体間が、細幅帯状の連結電極6で電気接続され、Y方向に沿って帯状に配線されている。また、入力操作領域2aに形成される複数の各Y側透明センサー電極4は、Xパターン本体とほぼ同一の菱形のYパターン本体が、X側透明センサー電極3と交差する交差領域で細幅となった連結パターンを介してX方向に沿って連続して配線されている。Y側透明センサー電極4の連結パターンは、連結電極6上に形成される絶縁コート7を介して連結電極6を跨ぎ、これにより各交差領域で交差するX側透明センサー電極3とY側透明センサー電極4間は相互に絶縁して配線される。
【0031】
X側透明センサー電極3とY側透明センサー電極4は、薄膜からパターニングしてガラス基板2上に形成可能な能な任意の透明導電材料で形成できるが、ここでは、連結電極6とともに、ITO(Indium Tin Oxide)で形成している。また、絶縁コート7は、シリカ(SiO2)等の絶縁材料を用いている。
【0032】
入力操作領域2aの周囲の配線領域2bには、遮光性の絶縁樹脂からなる絶縁遮光層8が領域全体に印刷形成されている。絶縁遮光層8は、入力操作領域2aの周囲を遮光することにより、操作者に入力操作領域2aを際立たせると共に、その内方の表示画面以外の部分が目立たないようにするもので、遮光性であれば任意に着色することができるが、ここでは黒色としている。更に、本発明では、スパッタリング工程を経て配線領域2bに形成される引き出し線5の下地として、後述するように、ガラス基板2の配線領域2bの強度劣化を防止するようにも作用している。
【0033】
本実施の形態では、絶縁遮光層8を光硬化性の絶縁樹脂にカーボンやクロム等を含有させた材料から形成しているので、絶縁遮光層8上に複数の引き出し線5を配線すると、引き出し線5間の充分な絶縁性が得られず、上記交差領域に絶縁コート7を印刷形成する同じ工程で、配線領域2bの絶縁遮光層8上へも絶縁コート7を形成している。
【0034】
配線領域2aの絶縁コート7上に配線される複数の引き出し線5は、それぞれ各X側透明センサー電極3と各Y側透明センサー電極4の両側に接続し、互いに絶縁して配線領域2aの外部接続部9まで引き出される。
【0035】
全ての引き出し線5は、外部接続部9において整列して配線され、異方性導電接着剤等を介してフレキシブル配線基板の対応する電極に接続され、外部接続部9を介して各X側透明センサー電極3と各Y側透明センサー電極4の両側が、入力操作領域2aへの入力操作を検出する図示しない検出回路へ接続している。
【0036】
従って、引き出し線5の総本数は、入力操作領域2aに形成されるセンサー電極3、4の2倍となり、全ての引き出し線5を限られた配線領域2aに互いに絶縁して配線する必要があることから、スパッタリングで絶縁コート7上に成膜した後、フォトリソグラフィ法でパターンニングして高密度で配線される。
【0037】
引き出し線5には、接続する透明センサー電極3、4を構成するITOと、物理的、化学的、電気的接触特性に優れ、かつ電気抵抗率が低いことから、MAM(Mo(モリブデン)・Al(アルミニウム)・Mo)を積層させた三層構造の複合材料を用いている。従って、スパッタリングによる成膜の工程は、Mo・Al・Moの三層に分けて薄膜が形成されるが、このスパッタリング工程では、クラスタ(スパッタ材料)が高速で被膜に打ち込まれることにより、膜の格子に余分な原子が押し込まれ、被膜が基材表面に沿って膨張する。その結果、基材は、表面に沿って形成される被膜から引っ張り応力を受ける。
【0038】
特に基材表面に直接形成されるMoは、硬い金属であるので、スパッタリングによるMoの成膜工程では、基材表面に大きな引っ張り応力が発生する。ここで、従来のように、ガラス基板2の平面上に直接引き出し線5を形成する場合には、化学強化し圧縮応力を発生させたガラス基板2の平面が引っ張り応力を受けて相殺され、破損しやすいものとなる。一方、本実施の形態では、絶縁合成樹脂で形成された絶縁遮光層8と絶縁コート7を介してガラス基板2の平面上にMAMの薄膜が形成されるので、スパッタリング工程でもガラス基板2の平面は引っ張り応力を受けず、化学強化した強度が維持される。
【0039】
透明センサー電極3、4と引き出し線5が形成されたガラス基板2の平面側全体は、図1に示すように、透明な絶縁樹脂からなるトップコート10で覆われ、透明センサー電極3、4や引き出し線5が保護される。
【0040】
このように構成された透明タッチパネル1は、入力操作領域2aに図1(b)の下方から指等の入力操作体が接近すると、ガラス基板2を介して入力操作体が接近する透明センサー電極3、4の静電容量が増加するので、静電容量が変化するX側透明センサー電極3とY側透明センサー電極4をそれぞれで検出し、その検出電極3、4の入力操作領域2a上の配設位置から入力操作位置をXY方向で検出する。
【0041】
以下、上述の透明タッチパネル1の製造工程を説明する。始めに、化学強化したガラス基板2の平面上の配線領域2bの全体に、図2(a)に示すように、絶縁遮光層8を印刷形成する。この絶縁遮光層8の形成は、スパッタリングでの成膜工程を用いないので、配線領域2bの強度は劣化しない。
【0042】
続いて、絶縁遮光層8を含むガラス基板2の平面全体にスパッタリングによりITOの薄膜を成膜する。このスパッタリング工程において、ガラス基板2の平面の入力操作領域2aに、直接ITOの薄膜が成膜されるが、ITOは、MAMを構成するMoに比べて柔らかいので、その成膜過程で大きな引っ張り応力を受けない。
【0043】
また、ガラス基板2は、その周囲がケースに固定されて取り付けられ、外方に臨む入力操作領域2aが意図しない外力を受けると、固定端に近い配線領域2bにより大きい曲げモーメントが発生するので、入力操作領域2aの平面には、ガラス基板2を破断させるような大きな引っ張り応力は作用しない。従って、入力操作領域2aにスパッタリングで成膜しても、ガラス基板2全体の強度は損なわれない。
【0044】
ガラス基板2の平面全体に成膜したITOの薄膜は、フォトリソグラフィ法を用いて、各交差領域の連結電極6となる部位を残してエッチングにより取り除かれ、図3(a)(b)に示すように、入力操作領域2aの各交差領域にY方向に沿って細長の連結電極6が形成される。
【0045】
続いて、図4(a)(b)に示すように、入力操作領域2aでは、各連結電極6上を交差し、配線領域2bでは、絶縁遮光層8の全体を覆うように、SiO2からなる絶縁コート7が印刷により形成される。
【0046】
この後、スパッタ材料を、Mo、Al、Moとしたスパッタリングを繰り返し、図4(a)(b)に示すガラス基板2の平面全体に、MAMからなる三層構造の薄膜を形成し、図5(a)(b)に示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、X側透明センサー電極3とY側透明センサー電極4の各両側の部位から外部接続部9までの引き出し線5のパターンを残して、取り除かれる。配線領域2bにMAMの薄膜を成膜するスパッタリング工程では、絶縁遮光層8と絶縁コート7を介したガラス基板2の平面上に成膜されるので、ガラス基板2の平面に引っ張り応力が作用しない。また、同じスパッタリング工程で入力操作領域2aは一時的に引っ張り応力を受けるが、入力操作領域2a上のMAMの薄膜は全て取り除かれるので、同様に引っ張り応力は作用しない。
【0047】
続いて、再び、ガラス基板2の平面全体に、スパッタリングによりITOの薄膜を成膜し、図6に示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、X側透明センサー電極3、Y側透明センサー電極4及び引き出し線5の部位を残してITOの薄膜が取り除かれる。このフォトリソグラフィ法を用いたパターニングによって、入力操作領域2aに形成される菱形のXパターン本体間は連結電極6により電気接続され、Y方向に沿って帯状のX側透明センサー電極3が配線される。また、Y側透明センサー電極4は、細幅の連結パターンが連結電極6を跨いで交差領域に形成された絶縁コート7上に形成され、各交差領域で交差するX側透明センサー電極3とY側透明センサー電極4間が相互に絶縁して配線される。各X側透明センサー電極3と各Y側透明センサー電極4を形成するITOの薄膜は、その両側で引き出し線5上にも残されることにより、引き出し線5に電気接続する。
【0048】
上述の工程においても、スパッタリングによりITOをガラス基板2の入力操作領域2aに直接成膜するので、引っ張り応力を受けるが、連結電極6を形成するためにスパッタリングで成膜する工程と同様の理由で、ガラス基板2全体の外力に対する強度は損なわれない。
【0049】
続いて、外部接続部9にフレキシブル配線基板を接続した後、ガラス基板2の平面全体をロールコータなどを用いてトップコート10で覆い、透明タッチパネル1が製造される。
【0050】
上述の実施の形態では、X側透明センサー電極3、Y側透明センサー電極4や引き出し線5を形成する平面とガラス基板2を挟む逆側から入力操作を行う透明タッチパネル1で説明したが、トップコート層を形成した上方から入力操作するものであってもよい。
【0051】
また、ガラス基板2の配線領域2bに、絶縁層を介して引き出し線5が形成される透明タッチパネルであれば、センサー電極3、4の形状やその形成工程は任意であり、更に、静電容量方式に限らず、センサー電極を単位長さあたりの抵抗値を均一とした抵抗被膜とした抵抗方式で入力操作を検出する透明タッチパネルであってもよい。
【0052】
また、配線領域2bのガラス基板2の平面と引き出し線5の間に形成する絶縁層は、スパッタリングで成膜するものでなければ、上述の絶縁コート7や絶縁遮光層8に限らず、別の工程で形成するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
ガラス基板の入力操作領域の周囲に、高密度で引き出し線を配線する透明タッチパネルに適している。
【符号の説明】
【0054】
1 透明タッチパネル
2 ガラス基板
2a 入力操作領域
2b 配線領域
3 X側透明センサー電極(透明センサー電極)
4 Y側透明センサー電極(透明センサー電極)
5 引き出し線
7 絶縁コート(絶縁層)
8 絶縁遮光層(絶縁層)
9 外部接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面側が化学強化されたガラス基板と、
ガラス基板の前記平面の入力操作領域に互いに絶縁して形成される複数の透明センサー電極と、
複数の各透明センサー電極をそれぞれ外部接続部へ引き出すように、ガラス基板の前記平面の入力操作領域周囲に配線される複数の引き出し線とを備え、
外部接続部を介して各透明センサー電極から出力される電気信号から、入力操作領域への入力操作を検出する透明タッチパネルであって、
複数の引き出し線が配線されるガラス基板の前記平面の配線領域に、合成樹脂からなる絶縁層を形成し、
絶縁層上にスパッタリングで成膜させた導電性薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターンニングし、前記複数の引き出し線を形成することを特徴とする透明タッチパネル。
【請求項2】
絶縁層を、入力操作領域の周囲を遮光する絶縁遮光層で形成することを特徴とする請求項1に記載の透明タッチパネル。
【請求項3】
複数の透明センサー電極は、入力操作領域で互いに直交する複数のX側透明センサー電極と複数のY側透明センサー電極とからなり、
X側透明センサー電極とY側透明センサー電極の各交差部でX側透明センサー電極とY側透明センサー電極間を絶縁する絶縁コートと配線領域の絶縁層とを、絶縁インクを用いた同一印刷工程で形成することを特徴とする請求項1に記載の透明タッチパネル。
【請求項4】
透明センサー電極が酸化インジウムで形成され、引き出し線がモリブデンを含む導電材料で形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の透明タッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−97739(P2013−97739A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242810(P2011−242810)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【特許番号】特許第5133449号(P5133449)
【特許公報発行日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】