説明

透明バリアフィルムおよびその製造方法

【課題】 優れた透明性と高いバリア性を有する透明バリアフィルムを提供することを目的とするものである。
【解決手段】 可撓性プラスチック基材と、該可撓性プラスチック基材の少なくとも一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層、およびガスバリア性の保護層とからなり、該酸化アルミニウムの薄膜バリア層はその表面が酸素プラズマ処理を施されたものであることを特徴とする透明バリアフィルムおよびその製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明バリアフィルムおよびその製造方法に関し、更に詳しくは、優れた透明性を有し、かつ、酸素、水蒸気等に対するバリア性等に優れ、種々の物品の包装適性を有する透明バリアフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素、水蒸気等に対するバリア性を備えた包装用材料として、最も一般的なものとして、可撓性プラスチック基材の上にアルミニウム箔を積層してなる包装用積層材が使用されているが、酸素、水蒸気等に対し安定したバリア性を得られるという利点を有するものの、バリア層としてのアルミニウム箔が、焼却適性に劣り、使用後の廃棄処分が容易でない、透明性がない、電子レンジ適性にも欠けるという問題点があった。
また、ポリ塩化ビニリデンあるいはエチレン・ビニルアルコール共重合体からなるバリア層を有する積層材は、前者は使用後に焼却処理を行なうと塩素ガスが発生し、環境衛生上好ましくないという問題点があり、後者は酸素透過性が低く、かつ香味成分の吸着性が低いという長所を有するものの、水蒸気に接触すると、バリア性が著しく低下するという問題点を有していた。
【0003】
そこで、近年、高いバリア性を有し、かつ、安定した保香性を発揮し、更に、透明性に富むバリア性積層材として、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の蒸着膜を設けた構成からなる透明バリアフィルムを使用した積層材が提案されている。このものは、従来のアルミニウム箔等を使用したバリア性積層材と比較して、透明性に優れ、かつ、酸素、水蒸気等に対する高いバリア性を有し、更に、内容物に対する保香性等にも優れ、更に、廃棄時における環境上の問題もなく、包装用材料、その他等にその需要が期待されている。
特に、酸化アルミニウムの蒸着膜は、酸化ケイ素のそれと比較して、生産性やコストの面で優れ、透明性の面でもより優れている。
しかし、酸化アルミニウムの蒸着膜は、AlOx(x=0〜1.5)で表される酸化アルミニウムで形成されるが、xが小さくなると、すなわち、アルミニウムに近づくと、バリア性は向上し、膜も柔らかくなり、可撓性に富むという利点はあるが、膜が茶色に着色するという問題点がある。また、アルミニウムの割合が多くなることから、透明性が劣り、包装用材料等に使用すると、内容物を視認することが困難になり、電子レンジ適性も無くなり、従来のアルミニウムによる蒸着膜と同様の問題点を有する。逆に、xが大きくなると、透明性を増すが、蒸着膜が固くなり、可撓性、加工性等が低下し、更に、バリア性、特に、水蒸気バリア性が低下するという問題点がある。
現在、酸化アルミニウムの蒸着膜では、x≒1.5の酸化アルミニウムを使用してその膜を形成し、バリア性、加工適性等は若干劣るが、その透明性を重視することに主眼をおいて使用しているというのが実状である。
【0004】
バリア性と透明性を両立するための従来技術としては、ベースプラスチックフィルムの全光線透過率を100%としたとき、蒸着後の全光線透過率を90〜95%の範囲で形成した酸化アルミニウムの蒸着層上に、ガスバリア性樹脂の水溶液もしくは水分散液をコーティングした保護層を形成してなる透明ガスバリア性フィルムが知られている(特許文献1参照)。
また、高分子樹脂組成物からなる基材上に、無機化合物からなる蒸着層を第1層とし、水溶性高分子と、アルコキシド、その加水分解物または塩化錫を含む溶液でコーティングしたガスバリア性被膜を第2層として積層したガスバリア性積層フィルムも知られており(特許文献2参照)、高いガスバリア性を有し、かつ可撓性、ラミネート強度、耐水性、耐湿性が優れたものが得られている。
【特許文献1】特開2000−185364公報
【特許文献2】特許第2790054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蒸着後の全光線透過率を90〜95%の範囲で酸化アルミニウムの蒸着層形成した場合には、保護層形成後の全光線透過率には優れているものの、ガスバリア性、特に水蒸気に対するバリア性は十分なものではなく、90%未満で酸化アルミニウムの蒸着層形成した場合には、全光線透過率の低下が避けられないという問題点があった。
また、水溶性高分子とアルコキシドまたは塩化錫を含むコーティング層を積層したガスバリア性積層フィルムも、酸素バリア性は高いものの、水蒸気バリア性は十分ではなかった。
そこで本発明は、優れた透明性と同時に高いバリア性、特に水蒸気に対する高いバリア性を有する、包装用材料等に適する透明バリアフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とするものである
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記のような問題点を解決すべく種々研究の結果、可撓性プラスチック基材と、該可撓性プラスチック基材の少なくとも一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層、およびガスバリア性の保護層とからなるバリアフィルムにおいて、該酸化アルミニウムの薄膜バリア層にその表面が酸素プラズマ処理を施されたものを使用した場合、優れた透明性と同時に高いバリア性を有することを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、可撓性プラスチック基材と、該可撓性プラスチック基材の少なくとも一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層、およびガスバリア性の保護層とからなり、該酸化アルミニウムの薄膜バリア層はその表面が酸素プラズマ処理を施されたものであることを特徴とする透明バリアフィルム、およびその製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、可撓性プラスチック基材と、該可撓性プラスチック基材の少なくとも一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層、およびガスバリア性の保護層とからなり、該酸化アルミニウムの薄膜バリア層はその表面が酸素プラズマ処理を施されたものとすることにより、優れた透明性と同時に高いバリア性、特に水蒸気に対する高いバリア性を有する透明バリアフィルムを得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
まず、本発明にかかる透明バリアフィルムについて図面を用いて説明すると、図1は、本発明にかかる透明バリアフィルムの層構成を示す断面図である。
本発明にかかる透明バリアフィルム1は、図1に示すように、可撓性プラスチック基材2と、該可撓性プラスチック基材2の少なくとも一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層3、およびガスバリア性の保護層4とからなり、該酸化アルミニウムの薄膜バリア層はその表面が酸素プラズマ処理を施されたものであることを特徴とするものである。
本発明にかかる透明バリアフィルムは、図示しないが、酸化アルミニウムの薄膜およびガスバリア性の保護層を、可撓性プラスチック基材層の一方の面のみならずその両方の面に設けたものでもよい。
【0010】
次に、本発明において、上記のような本発明にかかる透明バリアフィルムを構成する材料について説明する。
まず、可撓性プラスチック基材としては、酸化アルミニウムの薄膜を保持し得るプラスチックのフィルムないしシートであればいずれのものでも使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)は特に好ましい。
これらの樹脂のフィルムないしシートは、一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよく、また、その厚さとしては、10〜200μm位、特に10〜100μm位が好ましい。また、上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、必要ならば、その表面にアンカーコート剤等をコーティングして表面平滑化処理等を施すこともできる。
【0011】
次に、本発明にかかる透明バリアフィルムを構成する酸化アルミニウムの薄膜としては、式AlOx(式中、xは、0.5〜1.5の数を表す)で表される酸化アルミニウムの薄膜を使用することができる。上記の式AlOx(式中、xは、0.5〜1.5の数を表す)で表される酸化アルミニウムの薄膜として、膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってxの値が増加している酸化アルミニウムの薄膜を使用することもできる。上記において、xの値としては、基本的には、x=0.5以上のものを使用することができるが、x=1.0未満になると、着色し易く、かつ、透明性、電子レンジ適性に劣ることから、x=1.0以上のものを使用することが好ましい。上限としては、アルミニウムと酸素とが完全に酸化した状態のものであるx=1.5までのものを使用することができる。酸化アルミニウムの薄膜の膜厚としては、例えば、10〜3000Å位、特に、60〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが好ましい。
本発明にかかる透明バリアフィルムを構成する酸化アルミニウムの薄膜は、結晶質のものでも、非結晶質のものでもよい。
【0012】
本発明においては、ベースフィルムである可撓性プラスチック基材の全光線透過率を100%としたとき、蒸着後の全光線透過率が90%未満になるように酸化アルミニウムを蒸着したものが望ましく、ベースフィルムの全光線透過率を100%としたとき、蒸着後の全光線透過率が85%以上で90%未満になるように酸化アルミニウムを蒸着したものは、特に好ましい。
蒸着後の全光線透過率が蒸着後の全光線透過率が90%以上の場合には、透明度は十分であるものの、ガスバリア性、特に水蒸気に対するガスバリア性が十分に高くない場合がある。また、蒸着後の全光線透過率が85%未満の場合は、ガスバリア性には優れるものの最終的な透明度がベースフィルムの全光線透過率にまで達しない場合がある。
【0013】
次に、可撓性プラスチック基材の上に、酸化アルミニウムの薄膜を形成する方法について説明する。酸化アルミニウムの薄膜を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。なお、包装用材料に用いられる透明バリアフィルムを製造する場合には、主に、真空蒸着法を用い、一部、プラズマ化学気相成長法も用いられる。
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
該酸化アルミニウムの薄膜が、その膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってxの値が増加している酸化アルミニウムの薄膜を形成する場合は、本出願人による特開平10−226011号公報に開示された方法により製造することができる。
蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2〜10-8mbar位、特に10-3〜10-7mbar位が好ましく、酸素導入後においては、10-1〜10-6mbar位、特に10-2〜10-5mbar位が好ましい。なお、酸素導入量等は、蒸着機の大きさ等によって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。
可撓性プラスチック基材の搬送速度としては、10〜800m/分位、特に50〜600m/分位が好ましい。
【0014】
次に、本発明において、可撓性プラスチック基材の上に形成された酸化アルミニウムの薄膜の表面を酸素プラズマ処理する方法について説明する。
可撓性プラスチック基材の上に形成された酸化アルミニウムの薄膜の表面の酸素プラズマ処理は、蒸着工程中に酸化アルミニウムが積層されるコーティング室とは分離された室で行うことが好ましい。
具体例に基づいて説明すると、図2は、本発明に使用できる巻き取り式蒸着機の一例を示す概略的構成図である。図2に示すように、真空チャンバー11の中で、巻き出しロール12から繰り出した可撓性プラスチック基材13は、コーティングドラム14を通り、蒸着チャンバー15の中に入る。ここで、るつぼ16で蒸発源としての熱せられたアルミニウム、またはアルミニウムの酸化物を蒸発させ、更に、その際に、酸素吹き出し口17より酸素を噴出させながら、上記の冷却したコーティングドラム14上の可撓性プラスチック基材13の上に、マスク18を介して、酸化アルミニウムの薄膜を成膜化する。次いで該酸化アルミニウムの薄膜を形成した可撓性プラスチック基材13を巻き取りロール19に巻き取る。
真空チャンバーにおいて、巻き取りロール19と冷却ドラムの間には、マグネトロンスパッタリング装置20が設けられており、真空チャンバーに酸素吹き出し口21から酸素を導入してプラズマ処理を行うことにより、該可撓性プラスチック基材の一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層の表面に酸素プラズマ処理が施される。酸素プラズマ処理のために導入する酸素の量は、蒸着機の大きさ等によって異なるが、通常50sccm〜2000sccm程度であり、300sccm〜800sccm程度が特に好ましい。ここで、sccmは標準状態(STP:0℃、1atm.)での1分当りの酸素の平均導入量(cc)を意味する。 導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。
可撓性プラスチック基材の搬送速度としては、10〜800m/分位、特に50〜600m/分位が好ましい。
【0015】
以上に説明した可撓性プラスチック基材の上に形成された酸化アルミニウムの薄膜の表面を酸素プラズマ処理する方法は、図2に示した装置を使用した場合の具体例のひとつであって、本発明の方法はこれに限定されるものではない。
【0016】
次に、可撓性プラスチック基材に酸化アルミニウムの薄膜が設けられたフィルムに形成するガスバリア性の保護層について説明する。
本発明において、可撓性プラスチック基材に設けられた酸化アルミニウムの薄膜上に形成するガスバリア性の保護層としては、ガスバリア性の被膜が制限なく使用できるが、水溶性高分子と、アルコキシド、その加水分解物または塩化錫を含む溶液でコーティングした被膜が好ましい。
水溶性高分子としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、又はエチレン・ビニルアルコール共重合体などが挙げられ、特にポリビニルアルコール(以下、PVAと記載する)が好ましい。
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。被膜の厚さはコーティング剤の種類によって異なるが、乾燥後の厚さが約0.01〜100μmの範囲であればよいが、50μm以上では、膜にクラックが生じやすくなるため、0.01〜50μmとすることが好ましい。
【0017】
本発明において、可撓性プラスチック基材に設けられた酸化アルミニウムの薄膜上に形成するガスバリア性の保護層として、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けた構成からなるバリア性層は、特に好ましいものであり、酸化アルミニウムの蒸着膜の上に、上記のガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成することもできる。
【0018】
上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を使用することができる。MがSiであるアルコキシシランは、特に好ましい。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、その他等のアルキル基を挙げることができる。
上記のアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン Si(OCH34 、テトラエトキシシラン Si(OC254 、テトラプロポキシシラン Si(0C374 、テトラブトキシシラン Si(OC494 、その他等を使用することができる。
【0019】
上記のガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤を添加することができ、これにより得られるガスバリア性組成物は特に好ましいものである。上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。
本発明においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。
上記のようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。本発明において、上記のようなシランカップリング剤の使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して1〜20重量部位の範囲内で使用することができる。
【0020】
上記のガスバリア性組成物において用いられる、ゾル−ゲル法触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンが用いられる。具体的には、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。特に、N,N−ジメチルべンジルアミンが好適であり、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100重量部当り、通常0.01〜1.0重量部程度が使用され、例えば、約0.03重量部程度が好ましく使用される。
また、上記ゾル−ゲル法の触媒として、酸を使用することもでき、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他を使用することができる。
酸の使用量としては、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モル位が使用され、例えば、約0.01モル程度が好ましく使用される。
【0021】
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは0.8〜2モルの割合の水を用いることができる。
【0022】
上記のガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。
上記のガスバリア性組成物において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択されるものである。
【0023】
本発明において使用されるガスバリア性塗布膜は、具体的には、例えば、以下のようにして製造される。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性組成物(塗工液)を調製する。ガスバリア性組成物(塗工液)中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物(塗工液)を通常の方法で塗布し、乾燥する。
更に、上記の塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗工膜を積層することもできる。
このようにして得られたバリア性層は、ガスバリア性に優れているものである。
【0024】
酸化アルミニウムの蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成し、蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
上記のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μm位の塗工膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0025】
本発明に係るバリア性層を構成するガスバリア性塗布膜を形成するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、重量比で、ポリビニルアルコール系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましく、更には、約10:1位の配合割合で使用することが更に好ましいものである。
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体との含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であり、例えば約20〜200重量部位の配合割合でガスバリア性組成物を調製することが好ましいものである。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
エチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0027】
本発明の透明バリアフィルムは、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他等の物品の充填包装のための包装用容器に使用される。
本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、そのフィルムの一方の面に、前述の図2に示す蒸着機(PVD装置)を使用し、ライン速度600m/minで搬送し、酸化アルミニウムを膜厚20nmに積層させ、さらに酸化アルミニウムを積層するコーティング室と分離した部屋でマグネトロンスパッタリング装置を使用し、酸素ガスを300sccm導入し、処理出力10kWで酸化アルミニウム上に処理を行った。蒸着後の全光線透過率は89%であった。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入後):2×10-4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度(酸素導入後):2×10-2mbar
電子ビーム電力:25kW
【0029】
(2)他方、下記の組成に従って調製した組成a.のポリビニルアルコール(クラレRS−110)水溶液、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、イソプロピルアルコール、0.5N塩酸水溶液、イオン交換水からなる加水分解液を加え、充分に攪拌し、無色透明のバリア塗工液を得た。
a ポリビニルアルコール 2.33(wt%)
イソプロピルアルコール 2.70
2O 51.75
b エチルシリケート 16.60
シランカップリング剤 1.66
イソプロピルアルコール 3.90
0.5N塩酸水溶液 0.53
2O 20.53
合 計 100.00(wt%)
【0030】
次に、上記(1)で形成した酸化アルミニウムの蒸着膜のプラズマ処理面に、上記(2)で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して巻き取った。コーティング後の全光線透過率の透明性は100%であった。
【0031】
実施例2
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、そのフィルムの一方の面に、前述の 図2に示す蒸着機(PVD装置)を使用し、ライン速度600m/minで搬送し、酸化アルミニウムを膜厚20nmに積層させ、さらに酸化アルミニウムを積層するコーティング室と分離した部屋でマグネトロンスパッタリング装置を使用し、酸素ガスを800sccm導入し、処理出力10kWで酸化アルミニウム上に処理を行った。蒸着後の全光線透過率は85%であった。
(2)次に、実施例1と同様な処理により厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性布膜を形成して巻き取った。コーティング後の全光線透過率の透明性は100%であった。
【0032】
比較例1
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、そのフィルムの一方の面に、前述の図2に示す蒸着機(PVD装置)を使用し、ライン速度600m/minで搬送し、酸化アルミニウムを膜厚20nmに積層させ、マグネトロンスパッタリング装置による酸素プラズマ処理を行わずに巻き取った。蒸着後の全光線透過率は89%であった。
(2)次に、実施例1と同様な処理により厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して巻き取った。コーティング後の全光線透過率の透明性は96%であった。
【0033】
比較例2
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、そのフィルムの一方の面に、前述の図2に示す蒸着機(PVD装置)を使用し、ライン速度600m/minで搬送し、酸化アルミニウムを膜厚20nmに積層させ、マグネトロンスパッタリング装置による酸素プラズマ処理を行わずに巻き取った。蒸着後の全光線透過率は85%であった。
(2)次に、実施例1と同様な処理により厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して巻き取った。コーティング後の全光線透過率の透明性は93%であった。
【0034】
比較例3
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、そのフィルムの一方の面に、前述の図2に示す蒸着機(PVD装置)を使用し、ライン速度600m/minで搬送し、酸化アルミニウムを膜厚20nmに積層させ、マグネトロンスパッタリング装置による酸素プラズマ処理を行わずに巻き取った。蒸着後の全光線透過率は94%であった。
(2)次に、実施例1と同様な処理により厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して巻き取った。コーティング後の全光線透過率の透明性は100%であった。
【0035】
ガスバリア性および透明性の測定
1)酸素透過度
米国、モコン社(MOCON社)製の酸素透過度測定装(OX-TRAN2/20)を用い、23℃、90%RHの条件で測定した。
2)水蒸気透過度
米国、モコン社(MOCON社)製の透湿度測定装置(PERMATRAN3/31)を用い、40℃、100%RHの条件で測定した。
3)全光線透過率
全光線透過率をJISK−7613の方法を用いて測定した。
【0036】
結果
上記の評価テストについて、その結果を下記の表1に示す。
【表1】

【0037】
上記の表1に示す評価テストの結果から明らかなように、本発明の実施例のものは、酸素透過度、水蒸気透過度において優れ、また、バリア材塗工後の全光線透過率は100%にまで回復し、透明性においても優れていた。すなわち、優れた透明性と高いバリア性、特に水蒸気に対する高いバリア性を両立することができている。一方、比較例のものは、酸素透過度、水蒸気透過度を本発明と遜色ないレベルにした場合は、バリア材塗工後にも全光線透過率は100%にまで回復しないため透明度が十分でなく(比較例1および2)、バリア材塗工後の透明度を本発明と同等レベルにまで高めようとすると、バリア性、特に水蒸気透過度の点で劣ったものとなった(比較例3)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる透明バリアフィルムの層構成を示す断面図である。
【図2】本発明に製造に使用するPDV装置(蒸着機)の一具体例の構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1 透明バリアフィルム
2 可撓性プラスチック基材
3 酸化アルミニウムの薄膜のバリア層
4 バリア性保護層
11 真空チャンバー
12 巻き出しロール
13 可撓性プラスチック基材
14 コーティングドラム
15 蒸着チャンバー
16 るつぼ
17 酸素吹き出し口
18 マスク
19 巻き取りロール
20 マグネトロンスパッタリング装置
21 酸素吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性プラスチック基材と、該可撓性プラスチック基材の少なくとも一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層、およびガスバリア性の保護層とからなり、該酸化アルミニウムの薄膜バリア層はその表面が酸素プラズマ処理を施されたものであることを特徴とする透明バリアフィルム。
【請求項2】
可撓性プラスチック基材がPETフィルムである請求項1に記載の透明バリアフィルム。
【請求項3】
ガスバリア性の保護層が水溶性高分子とアルコキシドから得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜である請求項1または2に記載の透明バリアフィルム。
【請求項4】
ガスバリア性の保護層が一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明バリアフィルム。
【請求項5】
酸化アルミニウムの薄膜バリア層がベースフィルムである可撓性プラスチック基材の全光線透過率を100%としたとき、蒸着後の全光線透過率が90%未満になるように酸化アルミニウムを蒸着したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明バリアフィルム。
【請求項6】
酸化アルミニウムの薄膜バリア層がベースフィルムである可撓性プラスチック基材の全光線透過率を100%としたとき、蒸着後の全光線透過率が85%以上90%未満になるように酸化アルミニウムを蒸着したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明バリアフィルム。
【請求項7】
可撓性プラスチック基材と、該可撓性プラスチック基材の少なくとも一方の面に設けた酸化アルミニウムの薄膜バリア層、およびガスバリア性の保護層とからなり、該酸化アルミニウムの薄膜バリア層はその表面が酸素プラズマ処理を施されたものであることを特徴とする透明バリアフィルムの製造方法において、可撓性プラスチック基材フィルムに酸化アルミニウムを積層し、酸素プラズマ処理を酸化アルミニウム上に施し、さらにその酸化アルミニウム蒸着層の上に保護層を積層させることを特徴とする透明バリア性フィルムの製造方法。
【請求項8】
酸化アルミニウム積層工程中に酸化アルミニウムを積層するコーティング室と分離された別の室で酸素プラズマ処理を酸化アルミニウム上に施す請求項7に記載の透明バリア性フィルムの製造方法。
【請求項9】
可撓性プラスチック基材フィルムの全光線透過率を100%としたとき、蒸着後の全光線透過率が90%未満になるように酸化アルミニウムを積層する請求項7または8に記載の透明バリア性フィルムの製造方法。
【請求項10】
蒸着後の全光線透過率が85%以上90%未満になるように酸化アルミニウムを積層する請求項7〜9のいずれか1項に記載の透明バリア性フィルムの製造方法。
【請求項11】
可撓性プラスチック基材がPETフィルムである請求項7〜10のいずれか1項に記載の透明バリアフィルムの製造方法。
【請求項12】
ガスバリア性の保護層が水溶性高分子とアルコキシドから得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜である請求項7〜11いずれか1項に記載の透明バリアフィルムの製造方法。
【請求項13】
ガスバリア性の保護層が一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜である請求項7〜12のいずれか1項に記載の透明バリアフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法により製造された透明バリアフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−210261(P2007−210261A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34701(P2006−34701)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】