説明

透明バリアフィルム

【課題】非常に単純な作業工程を実施するだけで得られるものであって、内容物を静電気からシールドするための静電気シールド性、酸素や水蒸気からシールドするためのガスバリア性、さらに内容物を容易に視認できる透明性、を同時に兼ね備えた、透明ガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】第1高分子樹脂フィルムと、少なくとも、金属を積層してなる金属層と、ガスバリア性物質を積層してなるガスバリア層と、金属酸化物を積層してなる金属酸化物層と、第2高分子樹脂フィルムよりなる第2高分子樹脂フィルム層と、を積層してなる積層フィルムと、第3高分子樹脂フィルムと、を、この記載順に積層してなり、前記積層フィルムには、少なくとも前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、及び前記第2高分子樹脂フィルム層、のそれぞれが少なくとも1層以上存在している、という構成を有する透明ガスバリアフィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明状のガスバリア性を持つフィルムに関するものであって、具体的には、例えば静電気等による変質を嫌う電子部品材料等を包装する包装材料として好適なガスバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりプラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着し薄膜状に積層してなるガスバリア性を有したガスバリアフィルムが知られている。また、プラスチックフィルム上に金属による蒸着膜を形成してなる静電気シールド性フィルムが知られている。
【0003】
ところで、昨今急激に普及しているIC関連機器を形成する電子部材(いわゆる「IC部品(部材)」と呼ばれているもの。)や、磁気ディスク等のような部材は、一般的に静電気障害を発生しやすく、また酸素や湿気(水蒸気)によってダメージを受ける場合も多い。そこでこのようなダメージ、即ち静電気と酸素や水蒸気とから内容物を保護できる包装材料として、静電気シールド性を備え、かつガスバリア性をも同時に備えたフィルムが望まれている。
【0004】
そこでこのような目的に応じたフィルムが提案されてきた。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と言う。)フィルムにアルミニウム層を積層し、さらにその表面にPETフィルムと直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」と言う。)フィルムと、を積層してなる構成を有するフィルムが提案されている。この構成を有するフィルムであれば、静電気に対するシールド性はあるので静電気シールド性を発揮することは出来るが、過去はともかく、現在広く流通している種々の電子部材を包装する際に要求されるガスバリア性のレベルに到達することは困難であり、またこの構成によれば視認性が低いので、このフィルムで包装用袋を製造しても内容物を確認するためにはいちいち開封しなければならず、必ずしも好適なものとはなっていない。
【0005】
そこで視認性及びガスバリア性を向上させるために、PETフィルムに酸化珪素層を積層し、さらにその表面にPETフィルムとLLDPEフィルムとを積層してなる構成を有するフィルムが提案されている。このように構成すると、アルミニウム層を積層する代わりに酸化珪素層を積層することで視認性も十分なものとなり、またガスバリア性についてもアルミニウム層の場合に比べて必要十分なレベルまで引き上げることが可能であるが、静電気をシールドする性質は先の構成のものに比べて低いものであり、即ちガスバリア性には優れているものの静電気シールド性は不十分なものであった。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に記載されたような積層シートが提案されている。即ち、プラスチックフィルムの片面にアルミニウム蒸着層を、また反対の面に酸化スズ、酸化アルミニウム、あるいは酸化珪素による蒸着層を設けたものを基材シートとし、その基材シートの片面にPETフィルムを、反対側の面にポリエチレン樹脂の押出しコート層を介して、カチオン系界面活性剤による静電防止剤を含有しているポリエチレンフィルムを積層した、という構成を有した積層シートである。
【0007】
【特許文献1】特開平6−64085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された積層シートでは、確かに透明性もあり、静電気シールド性、及び防湿性もある程度のレベルまで実現できるが、その製造はこの構成を見ればわかるように、かなり複雑な工程を経ないと得られない物であるといえる。つまり、この発明にかかる積層シートを得るには、まずPETフィルムの片面にアルミニウム蒸着層を積層したら、次にPETフィルムの反対側に酸化スズを蒸着することで、初めてこれを基材シートとし、次に得られた基材シートの片面にポリウレタン系接着剤を用いてPETフィルムを積層すると、最後に基材シートの反対側にポリエチレン樹脂の押出しコート層を介してポリエチレンフィルムを積層する、という手順が必要であり、このことからもわかるように、常に基材となるフィルムの一面側に順次積層していくのではなく、常にフィルムの両側に視点を動かしながら積層作業を実施しなければならず、よってその工程を丁寧に管理することは煩雑であり、即ち作業性が好適なものではない、と言わざるを得ないのである。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、単純に一方の側から順次積層工程を繰り返していくだけで得られる、換言すれば、非常に単純な作業工程を実施するだけで得られるものであって、内容物を静電気からシールドするための静電気シールド性、酸素や水蒸気からシールドするためのガスバリア性、さらに内容物を容易に視認できる透明性、を同時に兼ね備えた、透明ガスバリアフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の発明は、第1高分子樹脂フィルムと、少なくとも、金属を積層してなる金属層と、ガスバリア性物質を積層してなるガスバリア層と、金属酸化物を積層してなる金属酸化物層と、第2高分子樹脂フィルムよりなる第2高分子樹脂フィルム層と、を積層してなる積層フィルムと、第3高分子樹脂フィルムと、を、この記載順に積層してなり、前記積層フィルムには、少なくとも前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、及び前記第2高分子樹脂フィルム層、のそれぞれが少なくとも1層以上存在していること、を特徴とする。
【0011】
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記第1高分子樹脂フィルムと、前記積層フィルムと、前記第3高分子樹脂フィルムと、を積層するときに、前記第1高分子樹脂フィルムと前記積層フィルムとの間、及び前記積層フィルムと前記第3高分子樹脂フィルムとの間、のいずれか一方もしくは双方において、接着剤層を介在させてなること、を特徴とする。
【0012】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記積層フィルムが、前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、前記第2高分子樹脂フィルム層、の順に積層されてなり、前記第1高分子樹脂フィルムの側に前記金属層が位置するように前記積層フィルムが配されてなること、を特徴とする。
【0013】
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記積層フィルムを構成する、前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、及び前記第2高分子樹脂フィルム層のいずれか若しくは複数の層が、前記積層フィルムの中で複数存在しており、かつ該複数存在する層を構成する物質が同一又は相違してなること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記金属層は、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、又はプラチナのいずれか若しくは複数により形成されてなり、前記ガスバリア層は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、又はこれらの樹脂にシランカップリング剤を配合してなる樹脂、のいずれか若しくは複数を積層すること、もしくはシランカップリング剤を直接積層すること、により形成されるものであり、前記金属酸化物層は、酸化珪素、又は酸化アルミニウムのいずれか若しくは双方により形成されてなり、前記第2高分子樹脂フィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、又はポリオレフィンフィルム、のいずれか若しくは複数により形成されてなること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記積層フィルムを形成するに際して予め前記第2高分子樹脂フィルムに対して表面処理を施しておくこと、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記表面処理は、コロナ放電、プラズマ処理、又はグロー放電処理のいずれか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記第1高分子樹脂フィルムが、帯電防止処理済ポリエチレンテレフタレートフィルムであること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項9に記載の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記第3高分子樹脂フィルムが、帯電防止処理済直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
例えば昨今急激に流通している、静電気や酸素、水蒸気によるダメージに対して繊細な電子部品材料等のようなものを保護する包装材料として、従来のものでは静電気シールド性とガスバリア性とを好適なレベルで両立させたものはなかったところ、本願発明にかかる透明ガスバリアフィルムであれば、金属層とガスバリア層と透明蒸着薄膜層と高分子樹脂フィルム層と、よりなる積層フィルムをその構成中に設けたことにより、静電気シールド性を備えているので静電気のダメージから内容物を保護できると同時にガスバリア性も備えているので酸素や水蒸気のダメージから内容物を保護でき、さらにフィルムそのものも透明性が十分あるので、内容物を容易に視認できる、静電気シールド性透明ガスバリアフィルムを得ることができるので、これを上述したような、例えば各種ダメージに対して脆弱な電子部品材料を包装する包装材料として用いれば、電子部品材料を各種ダメージにさらされることなく安全に梱包出来るので、昨今著しく進歩を遂げている電子産業にかかる流通に広く用いることが出来るようになり、即ち大変好適な包装材料とすることが出来るようになるのである。また電子部品材料の包装以外の目的であっても、透明性、ガスバリア性、静電気シールド性、が同時に必要とされる箇所であれば適用することが可能となるので、それらの箇所に用いるのにやはり好適な部材とすることが出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
本願発明に係る透明ガスバリアフィルムについて第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態にかかる透明ガスバリアフィルムは、第1高分子樹脂フィルム(A)と、少なくとも、金属を積層してなる金属層(a)と、ガスバリア性物質を積層してなるガスバリア層(b)と、金属酸化物を積層してなる金属酸化物層(c)と、第2高分子樹脂フィルムよりなる第2高分子樹脂フィルム層(d)と、を積層してなる積層フィルム(B)と、第3高分子樹脂フィルム(C)と、を、この記載順に積層してなり、積層フィルム(B)には、少なくとも金属層(a)、ガスバリア層(b)、金属酸化物層(c)、及び第2高分子樹脂フィルム層(d)、のそれぞれが少なくとも1層以上存在してなるものである。そして第1高分子樹脂フィルム(A)と、積層フィルム(B)と、第3高分子樹脂フィルム(C)と、を積層するときに、第1高分子樹脂フィルム(A)と積層フィルム(B)との間、及び積層フィルム(B)と第3高分子樹脂フィルム(C)との間、のいずれか一方もしくは双方において、接着剤層を介在させている。
【0022】
尚、詳しくは後述するが、(A)/(B)/(C)という構成とした時に、(A)と(B)、(B)と(C)、いずれか若しくは双方の間の層間密着力が不十分であればそれぞれの層の間に接着剤層を介在させればよく、またそのようにした方が得られる透明ガスバリアフィルムの層間密着力を十分なものとすることが容易に出来るので、本実施の形態ではそれぞれの間に接着剤層を介在させているものとする。
【0023】
しかしここでは詳述しないが、例えば接着剤を用いずとも(A)と(B)との間の層間密着力が十分であれば接着剤層を設ける必要もなく、(B)と(C)との間においても同様であることを予め断っておく。またそれぞれの間において接着剤層を介在させる、という以外の手段、例えば第1高分子樹脂フィルムの表面に対してプラズマ処理などの何らかの公知な手法による表面処理を施すことにより十分な層間密着力を得たり、同様に第3高分子樹脂フィルムの表面に対して何らかの公知な手法による表面処理を施すことにより十分な層間密着力を得たりすることも考えられる。このように表面処理を施した場合は必ずしも接着剤層を介在させる必要はないが、当然、表面処理を施すと共に接着剤層を介在させる、ということが行われても良い、ということも考えられる。いずれにせよ本実施の形態ではそれぞれの間に接着剤層が存在しているものとして、以下説明を行う。
【0024】
また本実施の形態に限らず、本願発明においてはその透明性もある程度のものが確保されている必要があるが、これは後述するように、例えば包装用袋とした場合であっても内容物が容易に視認可能であることが望まれる状況に応じるためである。透明性の程度についてはここでは詳述しないが、要は内容物が視認できる、または得られるフィルムの透視性が一般的に良好である、つまりはフィルムの反対側がある程度視認できる、というレベルであればよい。この透明性に関しては一般的なものであってよく、その詳細な説明はここでは省略する。
【0025】
以下、本実施の形態に係る透明ガスバリアフィルムにつき、順次説明をしていく。
【0026】
まず第1高分子樹脂フィルム(A)について説明する。
この第1高分子樹脂フィルムは、例えばPETフィルムや、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルムなどの従来公知のガスバリアフィルムに用いられてる一般的な高分子樹脂フィルムであってよいが、予め帯電防止処理を施されたものであると、本実施の形態の目的の一つである帯電防止性付与という性能を向上させることができるので、これらの条件を満たすフィルムを用いると好適である。例えば帯電防止処理済みPETフィルム(以下「AS−PETフィルム」という。)や帯電防止処理済みのポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルムなどであれば、上述した条件に適合するものであると言える。そして以下本実施の形態においてはAS−PETフィルムを利用するものとする。
【0027】
尚、このAS−PETフィルムの厚みは5μm以上50μm以下であることが好ましいが、これは5μm未満の厚みであると後述の各種積層工程を実施するに際して生じる種々の処理に耐えられない可能性が高く、また50μmよりも厚くすると今度は最終的に得られるフィルム全体の厚みが増えてしまい、ひいてはフィルムとしての可撓性に欠ける、等の問題が生じてしまうことが考えられるので、上記範囲内とするのが好適であるといえる。そして本実施の形態では25μmであるものとする。
【0028】
次に積層フィルム(B)について説明する。
本実施の形態における積層フィルムは上述の通り、金属層(a)、ガスバリア層(b)、金属酸化物層(c)、第2高分子樹脂フィルム層(d)、の4つの層から構成されている。
【0029】
説明の都合上、まず最初に第2高分子樹脂フィルム層(d)から説明する。
ここで用いる第2高分子樹脂フィルム層(d)に用いられる高分子樹脂フィルムは、例えばPETフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、又はポリオレフィンフィルム、のいずれか若しくは複数を用いればよいが、本実施の形態においてはPETフィルムを用いることとする。そしてここで用いるPETフィルムの厚みは5μm以上50μm以下であることが好ましいが、これは5μm未満の厚みであると後述の各種積層工程を実施するに際して生じる種々の処理に耐えられない可能性が高く、また50μmよりも厚くすると今度は最終的に得られるフィルム全体の厚みが増えてしまうからである。そして本実施の形態では厚みが12μmのPETフィルムであるものとする。
【0030】
次にこの第2高分子樹脂フィルム(d)の表面に積層される金属酸化物層につき説明する。
金属酸化物層を形成するのに用いる金属酸化物としては、例えば酸化珪素や酸化アルミニウムのいずれか若しくは双方を用いること、などが考えられるが、本実施の形態では酸化珪素を用いることとする。これはガスバリア性を備え、また透明性も確保するのに好適な周知の物質であるからである。そして酸化珪素による金属酸化物層の厚みは100Å以上1000Å以下であることが好ましいが、これは100Å以下であると十分なガスバリア性を確保することができなくなり、また1000Å以上であると透明性及び耐屈曲性が劣るからである。そして本実施の形態では、その厚みは400Åであるものとする。尚、酸化珪素の積層方法としては、やはり従来公知のものであってよ、例えば真空蒸着法などの手法を用いればよい。金属酸化物による金属酸化物層を第2高分子樹脂フィルム層に積層することにより、ガスバリア性を確保することが出来る。
【0031】
次に、この金属酸化物層(c)の表面に積層されるガスバリア層(b)につき説明する。
本実施の形態におけるガスバリア層(b)を構成するには、ガスバリア性を有した物質を用いればよく、例えばそれに用いられるのに好ましい樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、またはこれらの樹脂にシランカップリング剤を配合してなる樹脂、のいずれかもしくは複数であることが好適である。この樹脂は、積層フィルムにあってはガスバリア性を補完すると同時に、層間密着力を向上させる作用も有したものであることが望ましい。またシランカップリング剤を例えば直接塗布することによりガスバリア層(b)を形成する、という手法とすることも考えられる。
【0032】
ガスバリア層がガスバリア性を発揮するために、その厚みは0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。これは10μmを超えた厚みとすると積層物にクラックが生じてしまいやすくなり、そのためにガスバリア性の低下、層間密着力の低下、という現象が生じてしまうからである。そして本実施の形態ではシランカップリング剤を含有させたエポキシ系樹脂であり、またその厚みは0.5μmであるものとし、またこのガスバリア層の積層方法は従来公知のコーティング法、即ちグラビアコーティング法、リバースコーティング法、スプレイコーティング法、またはロールコーティング法、等であって、好適な手法を随時用いればよい。
【0033】
次にこのガスバリア層(b)の表面に積層される金属層(a)について説明する。
この金属層(a)は、例えばアルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、又はプラチナのいずれか若しくは複数によるものであって、例えば従来公知である真空蒸着法などの手法によりガスバリア層の表面に積層される。金属層を設けることにより、この積層フィルムに静電気シールド性が付与されることとなる。そしてその厚みは30Å以上150Å以下であることが好ましいが、これは150Å以上であると透明性に劣るようになってしまい、また30Å未満であると十分な静電気シールド性が得られない、即ち十分な帯電防止性が得られないからである。そして本実施の形態ではアルミニウムによる金属層であり、その厚みは90Åであるものとする。尚、本実施の形態においてこの金属層はアルミニウムにより形成されてなるものとするが、必ずしもこれに限定されるものではないことを断っておく。
【0034】
以上のようにして、PETフィルム/酸化珪素/シランカップリング剤を含有させたエポキシ系樹脂/アルミニウム、という構成を有する積層フィルムが得られる。
【0035】
尚、本実施の形態ではこのような構成としているが、これ以外の積層順、例えば金属酸化物層(c)/第2高分子フィルム層(d)/樹脂層(b)/金属層(a)といった構成とすることも考えられるが、ここではさらなる詳述についてはこれを省略する。
【0036】
次に第3高分子樹脂フィルム(C)について説明する。
ここで用いる第3高分子樹脂フィルムとしては、例えばLLPDEフィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、等が考えられるが、本実施の形態ではLLPDEフィルムを用いることとする。この第3高分子樹脂フィルムは、本実施の形態においては、後述のようにいわゆるヒートシール性を付与するために用いられるのであるが、その目的のために、また後述のように本実施の形態にかかるフィルムには帯電防止性も必要であるので、これを補完するためにも帯電防止処理の施された厚みが40μmのAS−LLPDEフィルムを用いることとする。
【0037】
以上のようにして、第1高分子樹脂フィルム(A)、積層フィルム(B)、第3高分子樹脂フィルム(C)が用意されると、これらを積層するのであるが、そのために本実施の形態では、第1高分子樹脂フィルム(A)と積層フィルム(B)との間、及び積層フィルム(B)と第3高分子樹脂フィルム(C)との間のそれぞれに接着剤層を設ける。
【0038】
この接着剤層を設ける理由は前述の通り、各フィルム間が容易にはがれてしまわないように、換言するならば、得られる本実施の形態に係る透明ガスバリアフィルムの層間密着力が十分なものとなるように、接着剤層を設けるのである。
【0039】
この接着剤層については従来公知のものを用いればよいが、例えばポリエステル系、ポリエーテル系、又はポリウレタン系のものを用いることが好適であり、本実施の形態では2カ所に設ける接着剤層のいずれにもポリエステル系のものを用いることとする。尚、これも前述の通りであるが、必ずしも2カ所に接着剤層を設けなければならないのではなく、また接着剤層以外の手法による層間密着力向上を試みてもよい。つまり、第1高分子樹脂フィルム(A)と積層フィルム(B)とは接着剤層を介して積層されている一方、積層フィルム(B)と第3高分子樹脂フィルム(C)とは接着剤層を介さずに直接積層されている、という構成であっても構わない、ということである。
【0040】
また第1高分子樹脂フィルムと積層フィルムとは、第1高分子樹脂フィルムと第2高分子樹脂フィルムとが接するように積層されていても構わないし、第1高分子樹脂フィルムと金属層とが接するように積層されていても構わないが、ここでは第1高分子樹脂フィルムと金属層とが接するように積層されているものとする。
【0041】
このようにして得られた本実施の形態に係る透明ガスバリアフィルムは、AS−PETフィルム/Al/シランカップリング剤を配合してなるエポキシ系樹脂/酸化珪素/PETフィルム/AS−LLPDEフィルム、という構成を有したものとなるが、このように構成することで全体として見るとアルミニウム(金属層)が積層されていることにより、また両側にAS−PETフィルム、AS−LLPDEフィルム、といった帯電防止性を予め付与したものを用いていることにより、全体として良好な静電気シールド性を得ることができる。さらにガスバリア層としてシランカップリング剤を配合してなるエポキシ系樹脂による層が設けられているだけではなく、酸化珪素(金属酸化物層)をも積層フィルムの構成中に用いていることにより、全体として良好なガスバリア性を得ることが出来る。即ち、本実施の形態に係る透明ガスバリアフィルムであればこれら両方の性質を同時に確立することができ、また実際の製造に際しては、第1高分子樹脂フィルムと第3高分子樹脂フィルムとを用意し、また積層フィルムを製造してこれを用意したら、これらを単純に接着剤を用いて積層することにより1つの透明ガスバリアフィルムとすればよいので、即ち非常に簡潔、簡単な作業工程により、静電気シールド性とガスバリア性とを同時に高レベルなものとすることが可能な透明ガスバリアフィルムを得ることが出来るのである。そして得られた透明ガスバリアフィルムは上述の通り静電気シールド性とガスバリア性とを同時に備えてなるので、この透明ガスバリアフィルムを用いて、例えば細密であるが故に水蒸気や酸素、静電気のダメージを受けやすい電子部材の包装材料とすれば、内包される電子部材は、静電気や水蒸気、酸素などによるダメージを受けることなく保存、輸送することが出来るようになるのである。またここでは詳述しないが、かような利用方法の他であっても、静電気と水蒸気、酸素などによるダメージを受けることを嫌う部材として、袋状にして用いてもよいし、フィルムを裁断した状態で用いても構わない。
【0042】
(実施の形態2)
次に第1の実施の形態で説明したのとは異なる構成を有する透明ガスバリアフィルムに関し、第2の実施の形態として説明する。尚、第1の実施の形態と同一のものに関しては説明を省略する。
【0043】
先に説明した第1の実施の形態における積層フィルムは、金属層/ガスバリア層/金属酸化物/第2高分子樹脂フィルム、という構成であるものとしたが、例えば静電気シールド性をさらに向上させたい場合やガスバリア性をさらに向上させたい場合、積層フィルムを構成する4種類の層のいずれか若しくは全ての層を複数層にわたり積層することが考えられる。そのような構成の積層フィルムを有しているのが、第2の実施の形態における特徴である。
【0044】
さらにこの点につき詳しく説明すると、例えばガスバリア性をさらに向上させたい場合であれば、例えば酸化珪素による金属酸化物層を2回積層し、金属層/金属酸化物層/ガスバリア層/金属酸化物層/第2高分子樹脂フィルム層、という構成の積層フィルムとすることが考えられる。同様にガスバリア層/金属層/ガスバリア層/金属酸化物層/第2高分子樹脂フィルム層、という構成とすることも考えられる。
【0045】
さらに、本実施の形態における積層フィルムであれば、例えばガスバリア層を2回積層するにあたり、それぞれの原材料となる樹脂を異なるものとすることも考えられる。例えば2つのガスバリア層を設ける場合であって、1つはシランカップリング剤を配合させたエポキシ系樹脂によるガスバリア層とし、もう1つをアクリル系樹脂によるガスバリア層とする、というようなことである。つまり複数種類の原材料を併用することにより、それぞれの原材料が元々備えている特徴を全て活かすことができる積層フィルムとすることが出来るのであり、換言すれば、目的に応じてバリエーションに富んだ性質を備えた積層フィルムとすることが非常に簡単に実行出来るのである。
【0046】
尚、本実施の形態における積層フィルムを構成する4つの層の原材料は第1の実施の形態で説明したものと同様であって構わないし、それぞれの厚みについても同様であって構わないが、厚みに関して言えば、本実施の形態に係る透明ガスバリアフィルムを構成する層の数が増えるため、各層の厚みを第1の実施の形態にかかるものに比して薄いものとしておけば、全体の厚みもさほど増加することもなく、即ち、可撓性を維持することも可能なのである。
【0047】
尚、ここではこれ以上詳述しないが、積層フィルムを構成する各層の積層順は必ずしもここで説明したものに従わなくともよく、効果的な積層順であればそれでよいことを加えておく。
【0048】
(実施の形態3)
前述した2つの実施の形態とは異なる特徴を有する本願発明に係る透明ガスバリアフィルムについて、第3の実施の形態として以下説明する。
【0049】
先に説明した第1及び第2の実施の形態において積層フィルムを製造する際に用いられる第2高分子樹脂フィルムに対しては特に何ら前処理を行わなかったが、第2高分子樹脂フィルムと、これに接する積層フィルムを構成するその他の層との間の層間密着力が組み合わせによっては不十分である場合も考えられる。即ち、積層できたとしても容易にその部分が剥離してしまえば、そもそも全体をひとまとまりとした透明ガスバリアフィルムとして作用しなくなってしまうことが考えられる。
【0050】
そこで、第2高分子樹脂フィルムと、これに接する積層フィルムを構成するその他の層との層間密着力が不十分である、と考えられる場合は、第2高分子樹脂フィルムの表面に予め何らかの処理を施しておくことが考えられる。この表面処理としては、例えばプラズマ処理を施すことにより第2高分子樹脂フィルム表面をいわばささくれだった状態としておけば、その後その表面に何らかの物質を積層しても層間密着力の低下を防止することができるし、また第2高分子樹脂フィルムの表面に何らかの素材による接着層を積層しておくことで層間密着力の低下を防止することも可能である。
【0051】
このプラズマ処理の条件については従来公知のレベルであってよく、要は層間密着力が発揮出来る程度に処理されていればよいのであって、同様に接着層を積層する場合は、第2高分子樹脂フィルムと積層フィルムを構成するその他の物質と、双方との物性を考慮する必要はあるものの、従来公知の範囲でこれを実施すればよい。
【0052】
それぞれの処置についてここではこれ以上の詳述を行わないが、要は層間密着力の発揮が期待出来ない場合は、なんらかの表面処理を第2高分子樹脂フィルムに施すことによって対処可能である、ということが重要なのである。
【0053】
以上の3つの実施の形態にて説明したように、積層フィルムを、金属層、ガスバリア層、金属酸化物層、第2高分子樹脂フィルム層、の4種類の層からなる構成とすることにより、従来に比して、静電気シールド性を備え、またガスバリア性をも備えた透明ガスバリアフィルムを得ることが出来るのであり、またこれを例えば包装材料として用いれば、静電気や酸素、水蒸気等のダメージから内包物を防護する包装用袋を得る、という利用方法も考えられ、またこれ以外にも同様のダメージから防護したい場所にフィルムとして用いても、またフィルムを裁断・縫製等することにより何らかの保護材とすることも好適な利用方法と言えるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1高分子樹脂フィルムと、
少なくとも、
金属を積層してなる金属層と、ガスバリア性物質を積層してなるガスバリア層と、金属酸化物を積層してなる金属酸化物層と、第2高分子樹脂フィルムよりなる第2高分子樹脂フィルム層と、を積層してなる積層フィルムと、
第3高分子樹脂フィルムと、
を、この記載順に積層してなり、
前記積層フィルムには、少なくとも前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、及び前記第2高分子樹脂フィルム層、のそれぞれが少なくとも1層以上存在していること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記第1高分子樹脂フィルムと、前記積層フィルムと、前記第3高分子樹脂フィルムと、を積層するときに、前記第1高分子樹脂フィルムと前記積層フィルムとの間、及び前記積層フィルムと前記第3高分子樹脂フィルムとの間、のいずれか一方もしくは双方において、接着剤層を介在させてなること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記積層フィルムが、
前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、前記第2高分子樹脂フィルム層、の順に積層されてなり、
前記第1高分子樹脂フィルムの側に前記金属層が位置するように前記積層フィルムが配されてなること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記積層フィルムを構成する、前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、及び前記第2高分子樹脂フィルム層のいずれか若しくは複数の層が、前記積層フィルムの中で複数存在しており、かつ該複数存在する層を構成する物質が同一又は相違してなること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記金属層は、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、又はプラチナのいずれか若しくは複数により形成されてなり、
前記ガスバリア層は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、又はこれらの樹脂にシランカップリング剤を配合してなる樹脂、のいずれか若しくは複数を積層すること、もしくはシランカップリング剤を直接積層すること、により形成されるものであり、
前記金属酸化物層は、酸化珪素、又は酸化アルミニウムのいずれか若しくは双方により形成されてなり、
前記第2高分子樹脂フィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、又はポリオレフィンフィルム、のいずれか若しくは複数により形成されてなること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記積層フィルムを形成するに際して予め前記第2高分子樹脂フィルムに対して表面処理を施しておくこと、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記表面処理は、コロナ放電、プラズマ処理、又はグロー放電処理のいずれか若しくは複数であること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記第1高分子樹脂フィルムが、帯電防止処理済ポリエチレンテレフタレートフィルムであること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記第3高分子樹脂フィルムが、帯電防止処理済直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを積層してなる金属層と、
ガスバリア性物質としてシランカップリング剤を含有させたエポキシ系樹脂を積層してなるガスバリア層と、
酸化珪素を積層してなる金属酸化物層と、
第2高分子樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いてなる第2高分子樹脂フィルム層と、を積層してなる積層フィルムを得る第1工程と、
第1高分子樹脂フィルムである帯電防止処理済みポリエチレンテレフタレートフィルムと、前記第1工程により得られた積層フィルムと、第3高分子樹脂フィルムである帯電防止処理済み直鎖状低密度ポリエチレンフィルムと、を、この記載順に積層してなる第2工程と、
を、この順に実施して得られるものであり、
かつ、前記積層フィルムには、少なくとも前記金属層、前記ガスバリア層、前記金属酸化物層、及び前記第2高分子樹脂フィルム層、のそれぞれが少なくとも1層以上存在していること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記第1高分子樹脂フィルムと、前記積層フィルムと、前記第3高分子樹脂フィルムと、を積層するときに、前記第1高分子樹脂フィルムと前記積層フィルムとの間、及び前記積層フィルムと前記第3高分子樹脂フィルムとの間、のいずれか一方もしくは双方において、接着剤層を介在させてなること、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。
【請求項3】
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記積層フィルムを形成するに際して予め前記第2高分子樹脂フィルムに対して、コロナ放電、プラズマ処理、又はグロー放電処理のいずれか若しくは複数表面処理を施しておくこと、
を特徴とする、透明ガスバリアフィルム。

【公開番号】特開2006−272604(P2006−272604A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91363(P2005−91363)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【特許番号】特許第3705804号(P3705804)
【特許公報発行日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】