説明

透明フィルム、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】 偏光板の保護フィルムの面内のレターデーションRe、膜厚方向のレターデー
ションRthを低下させ、しかも温度、湿度などの環境変化によるRe、Rthの変化が少な
い透明フィルムを提供する。
【解決手段】 機械方向およい機械方向に垂直な方向の少なくともいずれかについて、動的粘弾性の0℃から120℃のtanδ値の単位温度あたりの変化量の最大値の絶対値(T1’)が、0〜0.005であり、フィルム面内のレターデーション値Re、及びフィルム膜厚方向のレターデーション値Rthが、以下の式(i)及び(ii)をみたすことを特徴とする透明フィルム。
(i)0≦Re≦20
(ii)|Rth|≦25

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルム、並びに透明フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、液晶セルおよび偏光板からなる。偏光板は保護フィルムおよび偏光膜を有し、例えば、ポリビニルアルコールからなる偏光膜をヨウ素にて染色して延伸を行い、その両面に保護フィルムを貼り付けて形成される。透過型液晶表示装置では、この偏光板が液晶セルの両側に配置されており、さらには1枚以上の光学補償フィルムを配置することもある。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、1枚以上の光学補償フィルム、偏光板の順に配置する。
液晶セルは、液晶性分子、それを封入するための2枚の基板、及び液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶性分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過型および反射型のいずれの液晶表示装置にも適用できる、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードが提案されている。
【0003】
この様なLCDの中でも、高い表示品位が必要な用途については、TNモードによる液晶表示装置(90度ねじれネマチック型液晶表示装置)が適している。このTNモードでは、正の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子を用い、薄膜トタンジスタにより駆動している。このTNモードは正面から見た場合には優れた表示特性を有するものの、斜め方向から見た場合にコントラストが低下したり、階調表示で明るさが逆転する階調反転が起こることにより、表示特性が悪くなるという視野角特性を有しており、この改良が強く要望されている。
【0004】
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるIPSモード(インプレーンスイッチング)による液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割したVA(垂直配向)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはパソコン等のモニター用途に留まらず、TV用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
【0005】
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいて検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示又は中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善する技術が開示されている(特許文献1参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコティック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献2、3、4参照)が提案されている。
【0006】
しかし、提案された上記方式の多くは、液晶セル中の液晶の複屈折の異方性を打ち消して視野角を改善する方式であるために、直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを十分に解決できないという問題がある。また、この光漏れを補償できるとされる方式でも、液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは
非常に難しい。なぜなら、ある波長において完全に光漏れを補償できたとしても、他の波長で補償できるとは限らないからである。たとえば、視感度が最も大きい緑の波長で光りぬけを補償したとしても、より小さな波長の青やより大きな波長の赤における光漏れは生じるという問題がある。上記の問題を解決するために、非特許文献1では2枚の2軸性フィルムを積層することを提案している。
【0007】
【特許文献1】特開平9−80424号公報
【特許文献2】特開平10−54982号公報
【特許文献3】特開平11−202323号公報
【特許文献4】特開平9−292522号公報
【非特許文献1】Jpn. J. Appl.Phys.,2002年,第41巻,第4553頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1に記載の方法は、2枚の2軸性フィルムを用いるため、2軸フィルムの軸ずれが発生しやすく、画面むらが発生しやすいという問題があった。また黒表示時の光漏れは、液晶セルと偏光子との間にある偏光板保護膜として従来用いられてきたトリアセチルセルロースフィルムに、面内のレターデーションReがおよそ5nm程度、膜
厚方向のレターデーションRthがおよそ50nmあることも原因となっていた。そのため、面内のレターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRthがともに小さい透明フィルムを開発し、偏光板の保護フィルムとして用いることが望まれている。
【0009】
また近年、液晶表示装置においては内部のバックライトで温度が上昇したり、高温高湿度の環境下にて用いられる場合があり、上記の偏光板保護膜であるトリアセチルセルロースフィルムが温度、湿度でそのRe、Rthが変化し、光学補償能が変わり、黒表示時に光
が漏れる、または画像にムラが生じる、という問題があった。特にこのような場合、表示装置の縦横の長さが異なること、部材がもともと縦横とで異なる物性を持つ場合があること、によって表示装置の枠の周囲から本来の黒表示時に光が漏れる現象や色味が変化する故障が問題となっていた。そのため、このような環境による光学補償機能の変化が少ない液晶表示装置が得られるフィルムの開発が要望されている。
【0010】
本発明の第1の目的は、偏光板の保護フィルムの面内のレターデーションRe、膜厚方
向のレターデーションRthを低下させ、しかも温度、湿度などの環境変化によるRe、Rthの変化が少ない透明フィルムを提供することである。
本発明の第2の目的は、上記の透明フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板を提供し、温度や湿度という環境の変化(特に温度)が起きても光漏れや色味変化を起こさない、優れた液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のとおりである。
1. 動的粘弾性を0℃から120℃の範囲で1Hzにて測定したときに得られるtanδ
値の単位温度あたりの変化量の最大値の絶対値(T1’)が0〜0.005であり、フィルム面内のレターデーション値Re、及びフィルム膜厚方向のレターデーション値Rthが、
以下の式(i)及び(ii)をみたすことを特徴とする透明フィルム。
(i)0≦Re≦20
(ii)|Rth|≦25
2. 動的粘弾性を120℃から200℃の範囲で1Hzにて測定したときに得られるtanδ値の単位温度あたりの変化量の最大値の絶対値(T2’)が、0.005〜0.05で
あることを特徴とする上記1に記載の透明フィルム。
3. T1’とT2’との比(T2’/T1’)が、2以上であることを特徴とする上記
1又は2に記載の透明フィルム。
4. 前記tanδ値が、機械方向または機械方向に垂直な方向における動的粘弾性測定に
よって得られた値であることを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載の透明フィルム。
5. 機械方向のtanδのピーク値tanδ(md)、および機械方向と垂直の方向のtanδのピーク値tanδ(td)がそれぞれ0.4〜0.8の範囲であり、かつ、0.7<tanδ(md)/tanδ(td)<1.4の関係をみたすことを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載の透明フイルム。
6. セルロースアシレートからなることを特徴とする上記1〜5のいずれか1項に記載の透明フィルム。
7. 表面にハードコート層、防眩層、及び反射防止層の少なくとも1層を設けた上記1〜6のいずれか1項に記載の透明フィルム。
8. 上記1〜7のいずれか1項に記載の透明フィルム上に、光学異方性層の面内のレターデーション値Re’及び光学異方性層の膜厚方向のレターデーション値Rth’が下記式
(iii)を満たす光学異方性層が設けられていることを特徴とする光学補償フィルム。
(iii)Re’=0〜200(nm)かつ|Rth’|=0〜300(nm)
9. 前記光学異方性層がディスコティック液晶性化合物を用いて形成されることを特徴とする上記8に記載の光学補償フィルム。
10. 前記光学異方性層が棒状液晶性化合物を用いて形成されることを特徴とする上記8又は9に記載の光学補償フィルム。
11. 前記光学異方性層が複屈折を有するポリマーフィルムから形成されることを特徴とする上記8〜10のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
12. 前記光学異方性層を形成する前記ポリマーフィルムが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、及びポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー材料を含有することを特徴とする上記11に記載の光学補償フィルム。
13. 上記1〜7のいずれか1項に記載の透明フィルム、又は上記8〜12のいずれか1項に記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いて、偏光子の保護フィルムとした偏光板。
14. 上記1〜7のいずれかに記載の透明フィルム、上記8〜12のいずれかに記載の光学補償フィルム、及び上記13に記載の偏光板、のいずれかを用いた液晶表示装置。
15. 液晶表示装置がVAまたはIPS型であることを特徴とする上記14に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の課題は、偏光板の保護フィルムの面内のレターデーションRe、膜厚方
向のレターデーションRthを低下させ、ほぼゼロとすることができ、しかも温度、湿度などの環境変化によるRe、Rthの変化が少ない透明フィルムを提供できる。本発明の第2
の課題は、上記の透明フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板を提供し、温度や湿度という環境の変化(特に温度)が起きても光漏れや色味変化を起こさない、優れた液晶表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の透明フィルムは、液晶表示装置の基本的な構成部材である偏光板の透明保護フィルムとしてのぞましく用いることができる。以下に本発明の透明フィルムの詳細を説明する。
【0014】
[透明フィルムの物理特性]
以下に本発明の透明フィルムの物理特性について説明する。
(動的粘弾性)
本発明の透明フィルムは、0℃から120℃の範囲におけるtanδ値の単位温度あたり
の変化量の最大値の絶対値(T1’)が、0〜0.005である。好ましくは、T1’は、0〜0.003であり、より好ましくは、0〜0.002である。
このtanδ値は、損失正接とも呼ばれ、tanδ=G’/G”( G’:貯蔵弾性率、G”
:損失弾性率)として定義される値である。貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は、動的粘弾性測定装置DVA-225(アイティー計測制御(株)社製)で透明フィルムを測
定することによって得られる。なお、本発明におけるtanδ値は測定周波数1Hzでの値
である。
【0015】
T1’を得るには、上記測定装置によって得られた貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)からtanδ値の温度分散曲線を求め、これから、単位温度あたりの変化量を算出
する。T1’は、0℃から120℃の範囲におけるtanδ値の変化量の最大値の絶対値と
して求められる。
また、動的粘弾性の測定は機械方向または機械方向に垂直な方向で行うことが好ましく、T1’は、機械方向及び機械方向に垂直な方向のどちらも0〜0.005の範囲内であることが好ましい。本発明において「機械方向」とは、例えば、後述のソルベントキャスト法により透明フィルムを作製する場合においてはフィルムの流延方向と同じ方向を意味し、この場合、機械的方向は透明フィルムの長手方向に一致する。
【0016】
本発明の透明フィルムは、T1’が0〜0.005であることにより、フィルムの熱安定性が向上し、温度等の環境変化によるレターデーションの変化が少ないフィルムとすることができる。T1’を0〜0.005の範囲とするには、本発明の透明フィルムを構成するポリマー及び添加剤の種類や添加量等を適宜コントロールすることにより達成できる。
【0017】
また、本発明の透明フィルムは、120℃から200℃の範囲におけるtanδ値の単位
温度あたりの変化の最大値の絶対値(T2’)が、0.005〜0.05であることが好ましい。T2’は、より好ましくは0.007〜0.05であり、さらに好ましくは0.01〜0.05である。動的粘弾性の測定は機械方向または機械方向に垂直な方向で行うことが好ましく、T2’は、機械方向及び機械方向に垂直な方向のどちらも0.005〜0.05の範囲内であることが好ましい。
T2’が0.005〜0.05であることにより、フィルムのハンドリングのしやすさ及びフィルムの機械強度が向上するという利点がある。T2’を0.005〜0.05の範囲とするには、ポリマー種、添加剤の添加量等を適宜コントロールすることにより達成できる。
また、上記T1’とT2’との比(T2’/T1’)が2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましい。
【0018】
機械方向のtanδのピーク値をtanδ(md)、および機械方向と垂直の方向のtanδのピーク値をtanδ(td)とした時、tanδ(md)、tanδ(td)がそれぞれ0.4〜0.8となるように調整することが好ましい。ここでtanδのピーク値とは、tanδ−温度(℃)吸収曲線(温度範囲0〜200℃)における最も高いtanδ値をいう。フィルム処方、製造工程条件等を適宜調節することでtanδのピーク値を上記範囲内とすることができる。
さらに、tanδのピーク値が0.7<tanδ(md)/tanδ(td)<1.4の関係を満足する事が好ましい。tanδ(md)/tanδ(td)の範囲は 0.8〜1.3がより好ましく、0.9〜1.1がさらに好ましい。製造工程条件、特に製膜時に機械方向および機械方向と垂直な方向にフィルムにかかるテンションを調節することでtanδ(md)/tanδ(td)を上記範囲内に調節することができる。
tanδのピーク値がこれらの条件を満たすことで、湿熱下での寸法安定性向上に寄与し、ムラを低減する効果がある。
【0019】
(貯蔵弾性率(G’))
本発明の透明フィルムは、機械方向の貯蔵弾性率および機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率がともに15000〜80000kgf/cm2であることが好ましく、かつ、機械
方向の貯蔵弾性率/機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の比が0.80〜1.20であることが好ましい。
より好ましくは、機械方向、垂直方向ともに貯蔵弾性率が18000〜75000kgf/cm2であり、かつ、機械方向の貯蔵弾性率/機械方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の
比が0.82〜1.18である。さらに好ましくは、機械方向、垂直方向ともに貯蔵弾性率が20000〜70000kgf/cm2であり、かつ、機械方向の貯蔵弾性率/機械
方向に垂直な方向の貯蔵弾性率の比が0.84〜1.16である。
【0020】
(損失弾性率(G”))
本発明の透明フィルムは、機械方向の損失弾性率および機械方向に垂直な方向の損失弾性率がともに10〜1000kgf/cm2であることが好ましく、かつ、機械方向の損
失弾性率/機械方向に垂直な方向の損失弾性率の比が0.8〜1.2であることが好ましい。
より好ましくは、機械方向、垂直方向ともに損失弾性率が10〜500kgf/cm2
であり、さらに好ましくは、機械方向、垂直方向ともに損失弾性率が10〜200kgf/cm2である。
【0021】
(引張弾性率)
本発明の透明フィルムの機械方向の引張弾性率は、240〜500kgf/mm2であ
ることが好ましく、機械方向に垂直な方向の引張弾性率は、230〜480kgf/mm2であることが好ましい。また、機械方向の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾
性率の比は、0.80〜1.36であることが好ましい。
より好ましくは、機械方向の引張弾性率が250〜480kgf/mm2であり、機械
方向に垂直な方向の引張弾性率が240〜470kgf/mm2であり、かつ、機械方向
の引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.85〜1.30である。さらに好ましくは、機械方向の引張弾性率が260〜460kgf/mm2であり、機械方
向に垂直な方向の引張弾性率が250〜450kgf/mm2であり、かつ、機械方向の
引張弾性率/機械方向に垂直な方向の引張弾性率の比が0.88〜1.25である。引張弾性率は、東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、23℃・70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定することによって求めることができる。
【0022】
(光弾性係数)
本発明の透明フィルムは、機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに50×10-13cm2/dyne以下であることが好ましく、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.80〜1.20であることが好ましい。
より好ましくは、機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに40×10-13cm2/dyne以下であり、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.82〜1.18である。
さらに好ましくは、機械方向の光弾性係数および機械方向に垂直な方向の光弾性係数がともに30×10-13cm2/dyne以下であり、かつ、機械方向の光弾性係数/機械方向に垂直な方向の光弾性係数の比が0.84〜1.16である。
光弾性係数は、本発明の透明フィルム試料12mm×120mmの長軸方向に対して引
っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から算出できる。
【0023】
(寸度変化率)
本発明の透明フィルムの60℃90%RH24時間後での寸法変化率および90℃dry24時間後での寸法変化率がいずれも機械方向、機械方向に垂直な方向ともに±0.5%以下であることが好ましく、かつ、いずれの場合も(機械方向の寸法変化率)/(機械方向に垂直な方向の寸法変化率)の比が0.3〜2.5であることが好ましい。
より好ましくは、60℃90%RH24時間後での寸法変化率および90℃dry24時間後での寸法変化率がいずれも機械方向、機械方向に垂直な方向ともに±0.4%以下であり、かつ、いずれの場合も(機械方向の寸法変化率)/(機械方向に垂直な方向の寸法変化率)の比が0.4〜2.2である。
寸度変化率は、以下のようにして算出することができる。まず、透明フィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、パンチ間隔の原寸(L0)とする。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L1)を測定し、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定する。なお、本発明における寸度変化率は、すべての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定した値とする。下記式によりそれぞれの条件における寸度変化率を求めることができる。
60℃、90%RHの寸度変化率={(L0−L1)/L0}×100
90℃、5%RHの寸度変化率={(L0−L2)/L0}×100
【0024】
(吸湿膨張係数)
本発明の透明フィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。また機械方向と垂直方向とで吸湿膨張係数がほぼ同等になることが好ましい。
吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、透明フィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0025】
(フィルム面内のレターデーションRe)
本発明の透明フィルムは、フィルム面内のレターデーションReが0≦Re≦20である。好ましくは、0≦Re≦15であり、0≦Re≦10であることがより好ましい。
また、フィルム面内のレターデーションReを0≦Re≦20とするには、フィルム中のポリマー及び添加剤の種類や添加量を適宜調整したり、フィルムの製造過程における温度条件や時間等を適宜設定することにより達成できる。
【0026】
(フィルム膜厚方向のレターデーションRth)
本発明の透明フィルムは、フィルム膜厚方向のレターデーションRthが|Rth|≦25である。好ましくは、|Rth|≦23であり、|Rth|≦20であることがより好ましい。
また、フィルム膜厚方向のレターデーションRthを|Rth|≦25とするには、ポリマーおよび添加剤等を最適化することにより達成できる。
【0027】
本明細書において、透明フィルムの面内のレターデーション値Reは、試料70mm×100mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、自動複屈折計、王子計測機器(株)
製KOBRA21ADHを用いて、測定波長を589nmとし、フィルム面に対して垂直な方向(以下、フィルム法線方向ともいう。)から測定した値である。
また、透明フィルムの膜厚方向のレターデーション値Rthは、上記のRe、遅相軸(自動複屈折計KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び、遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、自動複屈折計KOBRA 21ADHによって算出した値である。
【0028】
なお、自動複屈折率計KOBRA 21ADHにおいて、平均屈折率(セルロースアシレートであれば、1.48)および膜厚dを入力することで、nx、ny、nz、そして、Re及びRthが算出される。ここで、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルム膜厚方向の屈折率である。
平均屈折率は「ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)」、各種光学フィルムのカタログ値を使用することができる。主な光学フィルムの平均屈折率は、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。平均屈折率が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。
【0029】
(偏光板の湿度変化、温度変化に対するパネル上での光漏れ、色味変化)
本発明の透明フィルムは、液晶表示装置用の偏光子の透明保護フィルムとして好ましく用いることができる。本発明の透明フィルムを液晶表示装置に実装することで、装置内部のバックライトで温度が上昇したり、高温高湿度の環境下にて用いる場合であっても、特に黒表示時に本来ならば画面全体が黒く表示されるべき時に、表示装置の枠の周囲から光が漏れるムラ故障や色味が変化する故障を、これまでに用いられてきた偏光板の保護膜と比較して低減することができる。このような故障は、ゼロであることがより好ましい。
【0030】
(厚さ)
本発明の透明フィルムの厚さは、20〜200μmであることが好ましく、40〜180μmであることがさらに好ましい。
【0031】
[透明フィルムの作製方法]
本発明の透明フィルムは、熱可塑性のポリマー樹脂を熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜してもよいが、ソルベントキャスト法によってフィルムを作製することが好ましい。以下、ソルベントキャスト法について説明する。
(ソルベントキャスト法によるフィルム作製方法)
ソルベントキャスト法を用いて透明フィルムを製造するには、まず、フィルム原料のポリマーを適当な有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を調製し、このドープを適当な支持体(好ましくは金属の支持体)の上に流延する。その後溶剤を乾燥させ、フィルムがゲル化したところで支持体から剥ぎ取り、さらにフィルムから溶剤を十分に乾燥させて、透明フィルムを形成する。
(金属支持体)
本発明の透明フィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。表面が平滑な支持体を得るには、不純物の少ない材料を異物等が極力除外された清浄な環境下で充分に研磨して鏡面とする。例えば、特開2000−84960号に記載されているように支持体表面
の中心線平均粗さRaを1〜3nmとすることで、フィルム表面の荒れやフィルム曇り度(ヘイズ値)が上がらないようにしている。これらの溶液流延製膜法にて成形したフィルムの平滑性は、支持体表面の異物や凹凸が少ないほど良好となる。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、米国特許2367603号、米国特許2492078号、米国特許2492977号、米国特許2492978号、米国特許2607704号、米国特許2739069号、米国特許2739070号、英国特許640731号、英国特許736892号の各明細書、特公昭45−4554号、特公昭49−5614号、特開昭60−176834号、特開昭60−203430号、特開昭62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−40〜40℃の金属支持体温度であることが好ましい。また、製膜速度が上げられる点でドラムを用いた方法が好ましく、その場合には金属支持体の温度は0からー40℃とすることが好ましい。
【0032】
(剥ぎ取り時の残留溶剤量)
フィルムを剥ぎ取るためにはフィルム中の残留溶剤量が60〜300%であることがのぞましい。なお、残留溶剤量の次式で表される。なお、残存揮発分質量はフィルムを120℃で2時間加熱処理したときに、加熱処理前のフィルム質量から加熱処理後のフィルム質量を引いた値である。
残留溶剤量=残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量×100(%)
【0033】
(フィルム搬送時にかかるテンション)
支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶剤の蒸発によってフィルムは一般的に巾方向(機械方向に垂直な方向)に収縮しようとする。本発明の透明フィルムの作製においては、機械方向とそれに垂直な方向のどちらの方向にもフィルムが強く延伸されることのないよう制御することが好ましい。具体的には、機械方向へのフィルム搬送時においてはフィルム搬送用ロールからフィルムの機械方向にかかるテンションの強さを10〜50kgf/mとすることが好ましい。一方、機械方向と垂直な方向にかかるテンションの強さも同様の強さとすることが好ましい。この場合垂直方向でフィルムを保持し、かつテンションを調整するためにテンタークリップを用いたテンター方式も好ましく用いることができる。例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)を好ましく用いることができる。
【0034】
[透明フィルムの材質]
本発明の透明フィルムを形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述し
た式(i)及び(ii)を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポ
リカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマーも例として挙げられる。また本発明の透明フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0035】
また、本発明の透明フィルムを形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の透明フィルムを形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきたセルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることができる。セルロースアシレートの代表例としては、トリアセチルセルロースが挙げられる。以下にセルロースアシレートについて詳細を説明する。
【0037】
(セルロースアシレート原料綿)
本発明の透明フィルムに用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載があり、これらに記載されているセルロースを用いることができる。
【0038】
(セルロースアシレート置換度)
セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたものであり、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度は、特に限定されないが、2.50〜3.00であることが好ましく、2.75〜3.00であることがより好ましく、2.85〜3.00であることがさらに好ましい。
セルロースの水酸基への置換度は、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。結合度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
【0039】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、特に限定されず、脂肪族基でもアリル基でもよく、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等であり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0040】
上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基が、実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基から選ばれる少なくとも2種類である場合において、その全置換度が2.50〜3.00であるとセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できるため、好ましい。この場合のより好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
【0041】
(セルロースアシレートの重合度)
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートを用いる場合は、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になることがある。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまうことがある。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0042】
本発明の透明フィルムとして特に好ましいセルロースアシレートは、アシル置換基が、実質的にアセチル基のみからなり、平均重合度が180〜550であるセルロースアシレートであり、このようなセルロースアシレートを用いることによって、光学異方性をより低下できる。
【0043】
セルロースアシレートの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価することができ、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、2.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましく、2.3〜3.3であることが最も好ましい。
【0044】
低分子成分の少ないセルロースアシレートは、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。この低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
【0045】
セルロースアシレートの含水率は2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましい。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており、その含水率は2.5〜5質量%であることが知られている。上記のようにセルロースアシレートの含水率を小さくするために、セルロースアシレートを乾燥させることが好ましく、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
【0046】
以上のセルロースアシレートの調製方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
また、セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0047】
〔透明フィルムへの添加剤〕
本発明の透明フィルムの製造段階においては種々の添加剤を添加することができる。この添加剤としては、例えば、光学的異方性を低下させる化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤等が挙げられる。その添加する時期は特に限定されないが、熱可塑性樹脂を熱溶融して透明フィルムを製膜する場合は、熱溶融時に加えることができる。また、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソル
ベントキャスト法)によって製膜する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープという)の調製工程に添加することができる。この場合、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0048】
(透明フィルムの光学的異方性を低下させる化合物)
本発明の透明フィルムに用いる添加剤として、光学的異方性を低下させる化合物を用いることができる。
この光学的異方性を低下させる化合物を含有することにより、フィルム中のポリマーが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、Reをゼロに近くしかつRthをゼロに近くすることができる。光学的異方性を低下さ
せる化合物は、ポリマーに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
【0049】
本発明の透明フィルムは、光学的異方性を低下させる化合物として、下記式(a)、(b)を満たす範囲で少なくとも1種含有することが好ましい。
(a)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(b)0.01≦A≦30
上記式(a)、(b)は
(a1)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(b1)0.05≦A≦25
であることがより好ましく、
(a2)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(b2)0.1≦A≦20
であることがさらに好ましい。
【0050】
式中、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)、Aはフィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【0051】
以下に、本発明で好ましく用いられる光学的異方性を低下させる化合物の具体例として下記一般式(1)〜(4)で表される化合物を示すが、これら化合物に限定されない。
まず、一般式(1)および(2)の化合物について説明する。
【0052】
【化1】

【0053】
【化2】

【0054】
上記一般式(1)において、R1aはアルキル基またはアリール基を表し、R2aおよびR3aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R1a、R2aおよびR3aの炭素原子数の総和が10以上であることが好ましい。R1a、R2aおよびR3aにおいて、各々のアルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよい。
また、一般式(2)中、R4aおよびR5aはそれぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、R4aおよびR5aの炭素原子数の総和は10以上であることが好ましく、各々のアルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよい。
【0055】
上記アルキル基又はアリール基の置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基がより好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。
【0056】
一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されない。以下におけるPriは、イソプロピル基の意である。
【0057】
【化3】

【0058】
【化4】

【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

【0061】
【化7】

【0062】
次に、一般式(3)の化合物について説明する。
【0063】
【化8】

【0064】
式中、R1dはアルキル基またはアリール基を表し、R2dおよびR3dはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。
一般式(3)の化合物のうち、好ましい化合物は下記一般式(4)で表される化合物である。
【0065】
【化9】

【0066】
上記一般式(4)において、R4d、R5dおよびR6dはそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
【0067】
上記のアルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
【0068】
以下に、一般式(3)または一般式(4)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されない。
【0069】
【化10】

【0070】
【化11】

【0071】
【化12】

【0072】
【化13】

【0073】
【化14】

【0074】
【化15】

【0075】
【化16】

【0076】
【化17】

【0077】
(波長分散調整剤)
本発明の透明フィルムは、ReおよびRthの波長による依存性、すなわち波長分散が小
さいことが望ましい。この、波長分散を低下させる手段として、本発明においては透明フィルムに対して波長分散を調整する化合物(以下波長分散調整剤ともいう)を添加することが有効である。
波長分散調整剤としては、下記式(c)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物であることが好ましく、本発明の透明フィルムは、この化合物を下記式(d)、(e)をみたす範囲で少なくとも1種含有することが好ましい。
(c)ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)
(d)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−2.0
(e)0.01≦B≦30
上記式(c)、(d)は
(c1)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
(d1)0.05≦B≦25
であることがより好ましく、
(c2)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
(d2)0.1≦B≦20
であることがさらに好ましい。
【0078】
式中、Rth(400)およびRth(700)は、それぞれ測定波長を400nm及び700nmとしたときのRth(nm)である。
ΔRth(B)は、波長分散調整剤としての化合物をB質量%含有したフィルムのΔRth(nm)、ΔRth(0)は、該化合物を含有しないフィルムのΔRth(nm)、Bは、フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの該化合物の質量(%)である。
【0079】
波長分散調整剤としてはフィルムを構成する原料ポリマーの波長分散と逆の波長分散を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートのように、長波長側が大きい波長分散を有するポリマーを用いる場合には、波長分散調整剤としては200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムのΔRe=|Re(400)−Re(700)|およびΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物であることがより好ましく、このような化合物を少なくとも1種含むことによって、光学フィルムのRe、Rthの波長分散をより効果的に調整することができる。なお、Re(400)及びRe(700)は、それぞれ測定波長を400nm及び700nmとしたときのRe(nm)である。
【0080】
透明フィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性
となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長
分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身が透明フィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0081】
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、透
明フィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調
整する化合物はポリマー固形分に十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0082】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。よって、波長分散調整剤を透明フィルムに添加する場合、分光透過率が優れたものを用いることが好ましい。波長分散調整剤の分光透過率としては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であることが好ましく、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがより好ましい。
【0083】
波長分散調整剤は、透明フィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましいため、分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0084】
波長分散調整剤の添加量は、透明の0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0085】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0086】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(101)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(101): Q1−Q2−OH
(式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環、Q2は芳香族環を表す。)
【0087】
1は、含窒素方向芳香族へテロ環を表し、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテ
ロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環である。例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後
述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0088】
2で表される芳香族環は、特に限定されず、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環で
もよいが、芳香族炭化水素環であることが好ましい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であることが好ましく、炭素数6〜20の芳香族炭化水素環であることがより好ましく、炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であることがさらに好ましく、ナフタレン環、ベンゼン環であることが特に好ましく、ベンゼン環であることが最も好ましい。
【0089】
芳香族ヘテロ環としては、特に限定されないが、好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。この芳香族ヘテロ環の具体例としては、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられる。中でも、ピリジン、トリアジン、キノリンが好ましい。
【0090】
2は、更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる)等が挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0091】
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
【0092】
【化18】

【0093】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0094】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
1およびR3として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0095】
2、およびR4として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0096】
5およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキ
シ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0097】
6およびR7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0098】
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
【0099】
【化19】

【0100】
(式中、R1、R3、R6およびR7は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0101】
以下に、一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
【0102】
【化20】

【0103】
【化21】

【0104】
以上のベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずに透明フィルムフィルムを作製した場合、保留性の点で有利である。
【0105】
また、波長分散調整剤として用いられるベンゾフェノン系化合物としては、下記一般式(102)で示されるものが好ましい。
【0106】
【化22】

【0107】
(式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。Xは、NR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。)
【0108】
1およびQ2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
1およびQ2で表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
1およびQ2で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
1およびQ2は更に置換基を有してもよく、前述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0109】
XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては前述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表す。XがNRである場合、Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。Xとして好ましくは、NRまたは酸素原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0110】
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニ
ル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0111】
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
【0112】
【化23】

【0113】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に水素原
子または置換基を表す。)
【0114】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に水素原子また
は置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0115】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9として好ましくは水素原子、アル
キル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原
子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0116】
2として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール
基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0117】
7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール
基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数
1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0118】
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
【0119】
【化24】

【0120】
(式中、R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
【0121】
10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
10として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0122】
一般式(102)で表される化合物は特開平11−12219号公報記載の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
【0123】
【化25】

【0124】
【化26】

【0125】
【化27】

【0126】
また、波長分散調整剤として用いられるシアノ基を含む化合物としては、下記一般式(103)で示されるものが好ましい。
【0127】
【化28】

【0128】
(式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。)Q1およびQ2であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0129】
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭
化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
【0130】
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0131】
1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
1およびQ2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0132】
1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X1およびX2で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、X1およびX2はで表される置換基は更に他
の置換基によって置換されてもよく、X1およびX2はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0133】
1およびX2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの))である。
【0134】
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
【0135】
【化29】

【0136】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立に
水素原子または置換基を表す。X1およびX2は一般式(20)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0137】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子
または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0138】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10として好ましくは水素原子
、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0139】
3およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0140】
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
【0141】
【化30】

【0142】
(式中、R3およびR8は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X3は水素原子または置換基を表す。)
【0143】
3は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、ま
た、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X3として好ましくは水素原子、
アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
【0144】
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
【0145】
【化31】

【0146】
(式中、R3およびR8は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R21は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0147】
21として好ましくは、R3およびR8が両方とも水素原子である場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0148】
21として好ましくは、R3およびR8が水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0149】
一般式(103)で表される化合物は、Journal of American Chemical Society, 第63巻 第3452頁(1941)に記載の方法によって合成できる。
【0150】
以下に、一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
【0151】
【化32】

【0152】
【化33】

【0153】
【化34】

【0154】
(剥離剤)
本発明の透明フィルムには、剥離時の荷重を小さくするために剥離剤を添加することが好ましい。
剥離剤としては、公知の界面活性剤を用いることが有効である。この界面活性剤としては、リン酸系、スルホン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等の界面活性剤を用いることができ、特に限定されない。ここで用いることができる界面活性剤の例としては、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。
【0155】
なお、剥離剤に関しては、特開2003−055501号公報に、セルロースアシレート溶液の白濁を防止し、フィルム製造剥離性とフィルム面状を改良するため、非塩素系溶剤に溶解したセルロースアシレート溶液で、酸解離指数pKAが1.93〜4.5の多塩基酸部分
エステル体、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれる添加剤を含有するセルロースアシレート溶液について記載がある。
なお、添加剤に関しては特開2003−128838号公報には、剥ぎ取り性、面状、
膜強度を良化させるために、少なくとも一種類の活性水素と反応する基を2個以上有する
架橋剤をセルロースアシレートに対して0.1〜10質量%含有するセルロースアシレートドープ溶液についての記載がある。
また、特開2003−165868号公報には、添加剤を添加し、良好な透湿度を有し、寸法安定性に優れたフィルムを提案している。
本発明では、上記公報に記載されている剥離剤を用いることができる。
【0156】
[用途]
本発明の透明フィルムは、光学用途、写真感光材料等に適用される。光学用途としては液晶表示装置であることが好ましく、本発明の透明フィルムを偏光素子の透明保護フィルムとして用いることができる。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも1枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
【0157】
[機能層]
上記のような光学用途に本発明の透明フィルムを用いる場合、透明フィルムには各種の機能層を設けることが可能である。機能層としては、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層等が挙げられ、これらの機能層には、界面活性剤、滑り剤、マット剤等を添加することができる。本発明の透明フィルムに適用できる機能層としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に記載のものが挙げられる。
また、その他の用途として用いる場合にも、下塗層、バック層等の機能層を透明フィルムに設けてもよい。
【0158】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の透明フィルムは、LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の透明フィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを形成して、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムとして用いることが好ましい。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の透明フィルムに適用することができる。
【0159】
[表面処理]
本発明の透明フィルムは、必要に応じて表面処理を行うことができる。表面処理を行うことにより、透明フィルムと機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着性を向上させることができる。
表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明においては、記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0160】
(アルカリ鹸化処理によるフィルム表面の接触角)
本発明の透明フィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる場合、アルカリ鹸化処理による表面処理が有効である。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることが好ましく、50°以下であることがより好ましく、45°以下であることがさらに好ましい。
接触角は、親疎水性を評価する指標の1つとして用いられる。接触角の測定には、通常の手法を用いることができ、具体的には、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角を求める手法を用いることができる。
【0161】
[用途(偏光板)]
本発明の透明フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。具体的には、本発明の透明フィルムをアルカリ処理してけん化し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に、けん化した透明フィルムを完全けん化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
透明フィルムの処理面と偏光子とを貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0162】
偏光板は、一般に偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されているが、更に偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の透明フィルムを適用した偏光板保護フィルムは、どの部位に配置されても優れた表示性が得られる。特に、液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、この部分に本発明の透明フィルムを用いた偏光板保護フィルムを配置することが好ましい。
【0163】
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の透明フィルムは、様々な用途で用いることができるが、透明フィルムに光学異方性層を設けることによって、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
【0164】
本発明の透明フィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学異方性層でも設けることができる。
本発明の光学補償フィルムの光学異方性層は、下記式(iii)をみたす光学異方性層で
あることが好ましい。
(iii) Re’=0〜200(nm)かつ|Rth’|=0〜300(nm)
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物から形成してもよいし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成してもよい。液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性
化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
【0165】
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0166】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。重合性基を有するディスコティック液晶性化合物としては、例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられる。但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になることがある。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられる。
【0167】
(棒状液晶性化合物)
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の化合物が挙げられる。棒状液晶性化合物としては、上記で例示したような低分子液晶性化合物以外にも、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0168】
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用できる重合性棒状液晶性化合物の例としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、国際公開(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報などに記載の化合物が挙げられる。
【0169】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
【0170】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0171】
また、光学異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを延伸して光学異方性を発現させて光学異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の透明フィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに本発明の透明フィルムと貼合し、あわせて光学異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0172】
[用途(液晶表示装置)]
本発明の液晶表示装置は、2枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された2枚の偏光子が配置されたものであり、液晶セルと偏光子との間には少なくとも1枚の光学補償フィルムが配置されていることが望ましい。
本発明の透明フィルムは、偏光子の保護フィルムとして液晶表示装置に用いることができる。また、上記のように透明フィルム上に光学異方性層を設けて光学補償フィルムとし、この光学補償フィルムを液晶セルと偏光子との間に配置することによって液晶表示装置に利用することもできる。本発明の透明フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光子の透過軸と、透明フィルムを備えた光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。
なお、本発明の液晶表示装置に用いられる液晶セルの液晶層は、通常は、2枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
【0173】
(液晶表示装置の種類)
本発明の透明フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の透明フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0174】
(TN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、従来より知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.
J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0175】
(STN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0176】
(VA型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムのReレターデーション値を0〜150nmとし、Rthレターデーション値を7
0〜400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20〜70nmであ
ることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に2枚の光学補償フィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学補償フィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0177】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体、または偏光板の保護フィルムとしても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明の透明フィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、前記偏光板の保護膜と保護膜と液晶セルの間に配置された光学異方性層のリターデーションの値は、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。またRth値の絶対値|Rth|は、25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下に設定するのが好ましいため、本発明の透明フィルムが有利に用いられる。
【0178】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはH
AN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0179】
(反射型液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償フィルムとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、WO00−65384号に記載がある。
【0180】
(その他の液晶表示装置)
本発明の透明フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))に記載がある。
【実施例】
【0181】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の技術思想から逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0182】
[実施例1]
1.透明フィルムの作製
透明フィルムの素材としてセルロースアシレートを用いて、本発明の透明フィルム試料及び比較例の透明フィルムを作製した。
セルロースアシレートとしてはアシル化度が異なる2種類 Ce-1(Ac:OH=2.96:0.04)、Ce-2(Ac:Pro:OH=1.7:1.0:0.3)を用いた(カッコ内A
cはアセチル置換基、Proはプロピオニル置換基、OHは置換されていない水酸基を表し、比率はアシル化度の比率である。)。
【0183】
(透明フィルム試料101の作製)
下記組成のセルロースアシレート溶液をバンド流延機を用いて流延し、残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離して140℃で40分間乾燥させ、透明フィルム試料101を製造した。透明フィルム試料101の残留溶剤量は0.1%であり、膜厚は80μmであった。
・セルロースアシレート溶液組成
セルロースアシレート(Ce-2) 100.0 質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 480.0 質量部
メタノール(第2溶媒) 71.7 質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 0.15 質量部
光学的異方性を低下する化合物(KI) 11.7 質量部
波長分散調整剤(HB) 1.2 質量部
エステル混合物(モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチルエステル混合
物、混合比率20:80:1) 0.1 質量部
使用したセルロースアシレート(Ce)、光学的異方性を低下する化合物(KI)、波長分散調整剤(HB)は表1に示す。
【0184】
(透明フィルム試料102〜104及び比較試料001〜004の作製)
使用したセルロースアシレート(Ce)、光学的異方性を低下する化合物(KI)、波長分散調整剤(HB)および添加量を、表1に示したように変更した以外は試料101と同様にして透明フィルム試料102〜104及び比較試料001〜004を作製した。
【0185】
(透明フィルム試料105)
使用したセルロースアシレート(Ce)、光学的異方性を低下する化合物(KI)、波長分散調整剤(HB)および添加量を、表1に示したように変更し、さらに、セルロースアセテート溶液Aをー10℃に冷却したドラムを用いて流延し、残留溶剤量250%でフイルムをドラムから剥離しテンターにより搬送した。乾燥ゾーンの平均温度は140℃とし、速度は70m/min.で製膜した。
【0186】
(透明フィルム比較試料005)
使用したセルロースアシレート(Ce)、光学的異方性を低下する化合物(KI)、波長分散調整剤(HB)および添加量を、表1に示したように変更し、さらに、セルロースアセテート溶液Aをー10℃に冷却したドラムを用いて流延し、残留溶剤量290%でフイルムをドラムから剥離しテンターにより搬送した。乾燥ゾーンの平均温度は140℃とし、速度は90m/min.で製膜した。
【0187】
作製した本発明の透明フィルム試料および比較試料について、0℃〜200℃の範囲で機械方向(流延方向)(MD)および機械方向に垂直な方向(TD)の動的粘弾性を測定してtanδ値を求め、それぞれの方向におけるT1’、T2’、及びT2’/T1’を算出した。また、それぞれの方向におけるtanδ値のピーク値であるtanδ(md)およびtanδ(td)を測定し、tanδ(md)/tanδ(td)を求めた。動的粘弾性の測定は、動的粘弾性測定装置DVA-225(アイティー計測制御(株)社製)を用いた。測定周波数は、1Hzとした。
また、透明フィルム試料および比較試料のフィルム面内のレターデーションRe及びフ
ィルム膜厚方向のレターデーションRthを、25℃、60%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測機器(株)を用いて測定した。なお、測定波長を589nmとした。以上の測定結果を表1に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
2.IPSモードの液晶表装置の作製
上記1で製造した透明フィルムを偏光板加工し、図1に示す構成のIPSモードの液晶表示装置10を作製した。図1に示す液晶表示装置10は、一対の基板16と18との間に液晶性分子17aを含む液晶層17が挟まれた液晶セル30を有している。
液晶セル30の基板16の上側には、第1光学補償フィルム15と、第2光学補償フィルム13と、上側偏光膜11aとがこの順に上側に向かって積層された上側偏光板20が設けられている。
また、基板18の下側には、下側偏光膜11bが2枚の透明フィルム19で挟まれた下側偏光板40が設けられている。透明フィルム19としては、上記で作製した透明フィルム試料101を用いた。
なお、上側偏光膜11a及び下側偏光膜11bの透過軸12a、12bと、第1光学補償フィルムの遅相軸15aとの関係は、以下の各部材の説明中に記載する。
また、図1中、各部材は便宜上、独立の部材として描かれているが、各部材は他の部材と一体化された後、例えば、透明フィルム19は保護フィルムとして偏光膜11bと一体化された後、装置中に組み込まれている場合もある。
【0190】
以下、各部材の作製方法について詳細に説明する。
(IPSモード用の液晶セル30の作製)
1枚のガラス板上に、電極間の距離が20μmとなるように2本の電極を間隔を空けて配設した。この2本の電極の上に、ポリイミド膜を設けてラビング処理を行って配向膜を形成し、基板18を作製した。別に用意した1枚のガラス板の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行って配向膜を形成し、基板16を作製した。
2枚の基板16,18のラビング方向が平行となるように配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmに保持した。次いで、屈折率異方性(Δn)が0.0769で誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を配向膜同士の間に封入し、液晶層17を形成して、液晶セル30を作製した。液晶層17のd・Δnの値は300nmであった。
【0191】
(下側偏光板40の作製)
本発明の透明フィルム試料101を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。この表面をけん化した透明フィルム試料101を図1の透明フィルム19として用いた。
また、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの下側偏光膜11bを作製した。
上記の透明フィルム試料101からなる透明フィルム19を2枚用意し、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、下側偏光膜11bを間にして貼り合わせ、両面が透明フィルム101によって保護された下側偏光板40を作製した。この際、両側の透明フィルム試料101の遅相軸が下側偏光膜11bの透過軸12bと平行になるように貼り付けた。
同様にして透明フィルム試料102〜105および比較試料001〜005を用いて、下側偏光板40を作製した。透明フィルム試料101〜105、比較試料001〜005で作製した下側偏光板40はいずれも十分な偏光度を持っていた。
【0192】
(第2光学補償フィルム13の作製)
フジタックTD80UF(富士写真フィルム(株)製)を150℃で15%縦一軸延伸することにより光学補償フィルム13を作製した。このフィルムの光学特性は、Re=5
nm、Rth=70nmであった。
【0193】
(第1光学補償フィルム15の作製)
上記で作製した第2光学補償フィルム13の表面を、前記透明フィルムのけん化と同様の方法でけん化した後、このフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。この塗布膜を60度の温風で60秒、さらに100度の
温風で120秒乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施して配向膜を形成した。
・配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
テトラメチルアンモニウムフルオライド 0.3質量部
【0194】
次に、配向膜上に、下記のディスコティック液晶性化合物1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、下記のフッ素系ポリマー(空気界面側垂直配向剤)0.01gを3.9gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を、#5のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、125度の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。
次に、100度で120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射しディスコティック液晶化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、第2光学補償フィルム13上に、第1光学補償フィルム15が形成された位相差膜21を作製した。
【0195】
【化35】

【0196】
上記作製した位相差膜21のReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した第2光学
補償フィルム13の寄与分を差し引くことによって、第1光学補償フィルム15(ディスコティック液晶位相差層)のみの光学特性を算出したところ、Reが110nm、Rthが
−55nm、液晶の平均傾斜角は89.9°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることが確認できた。なお遅相軸の方向は配向膜のラビング方向と平行であった。
【0197】
(上側偏光板20の作製)
次に、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。これに、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、セルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をこの偏光子の一方の表面に貼り付け、上側偏光膜11aを作製した。この上側偏光膜11aのもう一方の表面に、第2光学補償フィルム13が上側偏光膜11a側になるように、位相差膜21を貼り合わせて、光学補償層と一体化した上側偏光板20を作製した。なお、第1光学補償フィルム15の遅相軸15aは、偏光膜11aの透過軸12aと平行になるようにした。
【0198】
(液晶表示装置10の作製)
さらに、第1光学補償フィルム15側が液晶セル30側になるように、上記で作製したIPSモード用の液晶セル30に、上側偏光板20を貼り合わせた。ここで、液晶セル30の液晶層17の遅相軸(図示されていない)は、上側偏光膜11aの透過軸12aと平行になるようにした。
次に、液晶セル30の下側に、下側偏光膜11bの透過軸12bが上側偏光膜11aの透過軸12aと直交するように、下側偏光板40を貼り合わせて、図1に示す液晶表示装置10を作製した。
【0199】
3.VAモードの液晶表示装置の作製
上記1で製造した透明フィルムを加工し、図2に示す構成のVAモードの液晶表示装置50を作製した。図2に示す液晶表示装置50は、一対の基板56と58との間に液晶性分子57aが挟まれた液晶セル60を有している。
液晶セル60の基板56の上側には、光学補償フィルム55と、偏光子51と、セルロースアセテートフィルム54がこの順に上側に向かって積層された上側偏光板70が設けられている。
また、基板58の下側には、偏光子51が2枚のセルロースアセテートフィルム54で挟まれた下側偏光板80が設けられている。
【0200】
(光学補償フィルム55の作製)
本発明の透明フィルム試料を用いて、特開2003−315541号公報の実施例1に記載の方法に準じて光学補償フィルム試料を作製した。まず、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)から合成された、質量平均分子量(Mw)7万、△nが約0.04のポリイミドを、溶媒にシクロヘキサノンを用い25wt%に調製した溶液を、上記1で作製した透明フィルム試料101〜104、001〜002上に塗布した。
その後100℃で10分熱処理後、160℃で15%縦一軸延伸することにより厚さ6μmのポリイミドフィルムが本発明の透明フィルムに塗布された光学補償フィルム55を得た。この光学補償フィルム55の光学特性は、Re=72nm、Rth=220nm、配向軸のズレ角度は±0.3度以内で、nx>ny>nzの複屈折層を持つものであった。
【0201】
(VA型液晶表示装置50への実装)
上記で得られた光学補償フィルム55のポリイミドフィルムを塗布していない側を、アルカリ鹸化処理しポリビニルアルコール系接着剤で偏光子51に接着することにより、光学補償フィルム55と偏光子51とを直接貼り合せ、偏光子51の反対側にはセルロースアセテートフィルム54(フジタックTD80UF、富士写真フィルム(株)製)を貼り合わせて、光学補償フィルム付きの上側偏光板70を作製した。この際、光学補償フィルムのnx方向55aと偏光板の吸収軸51aが直交するように貼り合せた。なお、偏光子
51は上記偏光板20(図1)で使用した偏光子と同様のものを用いた。
光学補償フィルム55が液晶セル60側となるように、この上側偏光板70を粘着剤で液晶セル60に貼り合わせた。なお、液晶セル60の反対側には、上下の偏光板の吸収軸51a同士が直交するように、偏光子51の両面にセルロースアセテートフィルム54(フジタックTD80UF、富士写真フィルム(株)製)が貼り合わされた偏光板を、粘着剤を介して液晶セル60に貼り合せ、VA型液晶表示装置50を作製した。
【0202】
4.位相差膜の評価および液晶表示装置の漏れ光の測定
上記2及び3で作製した液晶表示装置の透過率の視野角依存性を測定した。抑角は正面から斜め方向へ10°毎に80°まで、方位角は水平右方向(0°)を基準として10°毎に360°まで測定した。黒表示時の輝度は正面方向から抑角が増すにつれ、漏れ光透
過率も上昇し、抑角70°近傍で最大値をとることがわかった。また黒表示透過率が増すことで、コントラストが悪化することもわかった。そこで、正面の黒表示透過率と抑角60°の漏れ光透過率の最大値で、視野角特性を評価することにした。
また、耐久性試験として、60℃、90%RHで500時間放置後の表示ムラ、および80℃、0%RHで500時間放置後の表示ムラの観察を行った。ムラはパネルの四隅に主に発生していた。得られた結果を表2に示す。
(表示特性の評価)
・コーナー漏れ光
◎:視野角特性差が極めてわずかであり良好
○:視野角特性差が少ない
×:視野角特性差が大きい
・視野角特性
◎:ムラが極めてわずかであり良好
○:ムラが少ない
×:ムラが大きい
【0203】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】本発明の透明フィルムを配置したIPSモードの液晶表示装置の模式図である。
【図2】本発明の透明フィルムを配置したVAモードの液晶表示装置の模式図である。
【符号の説明】
【0205】
10,50 液晶表示装置
11a 上側偏光膜
11b 下側偏光膜
12a 上側偏光膜の透過軸
12b 下側偏光膜の透過軸
13 第2光学補償フィルム
15 第1光学補償フィルム
15a 第1光学補償フィルムの遅相軸
17 液晶層
17a 液晶性分子
19 透明フィルム
20,70 上側偏光板
30,60 液晶セル
40,80 下側偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的粘弾性を0℃から120℃の範囲で1Hzにて測定したときに得られるtanδ値の
単位温度あたりの変化量の最大値の絶対値(T1’)が0〜0.005であり、フィルム面内のレターデーション値Re及びフィルム膜厚方向のレターデーション値Rthが、以下の
式(i)及び(ii)をみたすことを特徴とする透明フィルム。
(i)0≦Re≦20
(ii)|Rth|≦25
【請求項2】
動的粘弾性を120℃から200℃の範囲で1Hzにて測定したときに得られるtanδ
値の単位温度あたりの変化量の最大値の絶対値(T2’)が、0.005〜0.05であることを特徴とする請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項3】
T1’とT2’との比(T2’/T1’)が、2以上であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の透明フィルム。
【請求項4】
前記tanδ値が、機械方向または機械方向に垂直な方向における動的粘弾性測定によっ
て得られた値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明フィルム。
【請求項5】
機械方向のtanδのピーク値tanδ(md)、および機械方向と垂直の方向のtanδのピーク値tanδ(td)がそれぞれ0.4〜0.8の範囲であり、かつ、0.7<tanδ(md)/tanδ(td)<1.4の関係をみたすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明フイルム。
【請求項6】
セルロースアシレートからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明フィルム。
【請求項7】
表面にハードコート層、防眩層、及び反射防止層の少なくとも1層を設けた請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明フィルム上に、光学異方性層の面内のレターデーション値Re’及び光学異方性層の膜厚方向のレターデーション値Rth’が下記式(iii)を満たす光学異方性層が設けられていることを特徴とする光学補償フィルム。
(iii)Re’=0〜200(nm)かつ|Rth’|=0〜300(nm)
【請求項9】
前記光学異方性層がディスコティック液晶性化合物を用いて形成されることを特徴とする請求項8に記載の光学補償フィルム。
【請求項10】
前記光学異方性層が棒状液晶性化合物を用いて形成されることを特徴とする請求項8又は9に記載の光学補償フィルム。
【請求項11】
前記光学異方性層が複屈折を有するポリマーフィルムから形成されることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
【請求項12】
前記光学異方性層を形成する前記ポリマーフィルムが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド及びポリアリールエーテルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー材料を含有することを特徴とする請求項11に記載の光学補償フィルム。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明フィルム、又は請求項8〜12のいずれか1項に記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いて、偏光子の保護フィルムとした偏光板。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルム、請求項8〜12のいずれかに記載の光学補償フィルム、及び請求項13に記載の偏光板、のいずれかを用いた液晶表示装置。
【請求項15】
液晶表示装置がVAまたはIPS型であることを特徴とする請求項14に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−117908(P2006−117908A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185271(P2005−185271)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】