説明

透明フィルム

【課題】光学特性、耐熱性に優れた液晶ディスプレイ等のフラットディスプレイ用基板に用いられる光学フィルムを提供する。
【解決手段】フマル酸ジエステル系樹脂および平均粒子径が200nm以下であるコロイダルシリカ等の球状無機粒子からなることを特徴とする透明フィルムであり、該球状無機粒子は、有機シラン化合物、もしくは(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基等の重合性基を含む有機化合物によって表面処理されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な透明性、耐熱性に優れた透明フィルムに関するものであり、より詳細には、線膨張係数の小さな透明フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの基板には一般にガラス基板が用いられているが、割れやすい、比重が大きい、柔軟性および加工性に乏しい等の課題がある。透明樹脂からなるプラスチックフィルムが使用できれば、薄肉軽量化、耐衝撃性向上、フレキシブル性付与など様々なメリットが考えられる。しかしながら、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示素子用プラスチックフィルムには、高い耐熱性や優れた光学特性など厳しい特性が要求される。
【0003】
これは液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの製造工程において、薄膜トランジスタ(以下、TFT)の形成工程、パネルの張り合わせ工程、配向膜形成工程、透明電極形成工程などで、150℃から200℃以上の高いプロセス温度が必要なためである。またディスプレイの表示特性に対する要求も年々厳しくなっている事から、表示素子用プラスチックフィルムに対しても光線透過率、色調などに対して厳しい要求がある。特に液晶ディスプレイでは、プラスチックフィルムの位相差が表示むらや色調などの表示品質に大きな影響を与えることからフィルムの位相差が特に厳しい項目となっている。ポリエーテルサルフォン(PES)はガラス転移温度が220℃と耐熱性に優れる透明樹脂であるが、表示素子用プラスチックフィルムとしては耐熱性が十分ではなく、薄黄色から茶色に着色していること、光弾性定数が大きくわずかな応力や歪により位相差を生じること、位相差の波長依存性が大きいなど光学的な特性にも多くの課題がある。
【0004】
我々はフマル酸ジエステル樹脂からなるディスプレイ用プラスチック基板が優れた耐熱性および良好な光学特性を有することを開示している(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、当該プラスチック基板では熱線膨張係数の改善が課題であった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−97544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光学特性および耐熱性に優れ、かつ熱線膨張係数が小さい透明フィルム、特に表示素子用プラスチック基板用フィルムを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フマル酸ジエステル系樹脂および特定の球状無機粒子からなる透明フィルムが上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、フマル酸ジエステル系樹脂および平均粒子径が200nm以下である球状無機粒子からなることを特徴とする透明フィルムに関するものである。
【0009】
以下、本発明の透明フィルムについて詳細に説明する。
【0010】
本発明におけるフマル酸ジエステル系樹脂は、例えば下記一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位を有するフマル酸ジエステル系樹脂;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜18の直鎖状アルキル基を有するフマル酸ジエステル系樹脂等が挙げられ、その中でも下記一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位を有するフマル酸ジエステル系樹脂が好ましい。
【0011】
【化1】

(式中、RおよびRは炭素数3〜12である分岐アルキル基又は環状アルキル基を示す。)
ここで、一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位のエステル置換基であるR、Rは、それぞれ独立して、炭素数3〜12の分岐アルキル基又は環状アルキル基であり、フッ素,塩素などのハロゲン基;エーテル基、エステル基若しくはアミノ基で置換されていても良く、炭素数3〜12の分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜12の環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、特に耐熱性、機械特性に優れた透明フィルムとなることからイソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、特に耐熱性、機械特性のバランスに優れた透明フィルムとなることからイソプロピル基が好ましい。
【0012】
一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位としては、具体的にはフマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−s−ブチル残基、フマル酸ジ−t−ブチル残基、フマル酸ジ−s−ペンチル残基、フマル酸ジ−t−ペンチル残基、フマル酸ジ−s−ヘキシル残基、フマル酸ジ−t−ヘキシル残基、フマル酸ジシクロプロピル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基等が挙げられ、その中でもフマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−s−ブチル残基、フマル酸ジ−t−ブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基が好ましく、特にフマル酸ジイソプロピル残基が好ましい。
【0013】
本発明に好ましく用いられる一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基を有するフマル酸ジエステル系樹脂は、他の単量体からなる残基単位を含有していても良く、該他の単量体からなる残基単位としては、例えばスチレン残基、α−メチルスチレン残基等のスチレン類残基;アクリル酸残基;アクリル酸メチル残基、アクリル酸エチル残基、アクリル酸ブチル残基、アクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、アクリル酸テトラヒドロフルフリル残基等のアクリル酸エステル類残基;メタクリル酸残基;メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸エチル残基、メタクリル酸ブチル残基、メタクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル残基等のメタクリル酸エステル類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基等のビニルエステル類残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;エチレン残基、プロピレン残基等のオレフィン類残基等の1種又は2種以上を挙げることができ、その中でもアクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、メタクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基が好ましく、特にアクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基が好ましい。また、エポキシ基、オキセタン基等の重合性基を有するアクリレート類残基などで、変性することも可能である。
【0014】
本発明におけるフマル酸ジステル系樹脂としては、一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位が好ましく、耐熱性及び機械特性に優れた透明フィルムとなることから、特に一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位50モル%以上、70モル%以上であることが好ましく、さらに80モル%以上、90モル%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明におけるフマル酸ジエステル系樹脂は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10以上のものが好ましく、特に機械特性に優れ、製膜時の加工性に優れた透明フィルムとなることから2×10以上5×10以下であることが好ましい。
【0016】
本発明におけるフマル酸ジエステル系樹脂の製造方法としては、該フマル酸ジエステル系樹脂が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、例えばフマル酸ジエステル類、場合によっては他の単量体を併用しラジカル重合を行うことにより製造することができる。この際のフマル酸ジエステル類としては、例えばフマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−s−ブチル、フマル酸ジ−t−ブチル、フマル酸ジ−s−ペンチル、フマル酸ジ−t−ペンチル、フマル酸ジ−s−ヘキシル、フマル酸ジ−t−ヘキシル、フマル酸ジシクロプロピル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル等が挙げられ、他の単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;エチレン、プロピレンのオレフィン類等の1種又は2種以上を挙げることができ、その中でもアクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル、メタクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチルが好ましく、特にアクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチルが好ましい。また、他の単量体がエポキシ基、オキセタン基などの重合性基を有するものであっても良い。
【0017】
また、ラジカル重合法を行う際の重合法としては、公知の重合法で行うことが可能であり、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれもが採用可能である。
【0018】
ラジカル重合法を行う際の重合開始剤としては、tert−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物やアゾ系開始剤が挙げられる。
【0019】
そして、溶液重合法又は沈殿重合法において使用可能な溶媒として特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;シクロヘキサン;ジオキサン;テトラヒドロフラン;アセトン;メチルエチルケトン;ジメチルホルムアミド;酢酸イソプロピル;水等が挙げられ、これらの混合溶媒も挙げられる。
【0020】
また、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0021】
本発明における球状無機粒子としては、例えばコロイダルシリカ微粒子等のシリカ系粒子、炭酸カルシウム等の炭酸塩、酸化チタン等の金属酸化物系粒子などが挙げられる。特に表面修飾の容易さや入手しやすさからシリカ系粒子が好ましく、特に粒子径の制御が容易であることからコロイダルシリカ微粒子が好ましい。球状無機粒子の平均粒子径は200nm以下であり、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。球状無機粒子の平均粒子径が200nmを超える場合には得られる透明フィルムの透明性が低下する。
【0022】
球状無機粒子として好ましく用いるコロイダルシリカ微粒子は、平均粒子径が1〜200nmの範囲の無水ケイ酸の超微粒子を、水または有機溶媒に分散させた状態のものである。このようなコロイダルシリカ微粒子は、公知の方法で製造することもできる。さらに、市販品も用いることができる。
【0023】
球状無機粒子としては、分散性や強度に優れる透明フィルムが得られることから有機化合物によって表面処理されていることが好ましく、特に重合性基を含む有機化合物によって表面処理されていることが好ましい。該有機化合物としては有機シラン化合物が挙げられ、該重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基などが挙げられ、特に反応性が高く、生産性に優れることから(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0024】
球状無機粒子を表面処理する際に用いる有機シラン化合物としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。この具体例としては、例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリス(3−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を併用して用いることができる。また、これらの化合物のエポキシ基やグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加したシラン化合物、アミノ基に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する化合物をマイケル付加したシラン化合物、アミノ基やメルカプト基に(メタ)アクリロイルオキシ基およびイソシアネート基を有する化合物を付加したシラン化合物、イソシアネート基に(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する化合物を付加したシラン化合物等も用いることができる。これらの中でも3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランから選択されるシラン化合物は反応性が優れる点で特に好ましい。これらは、一種、または二種以上を併用して用いることができる。
【0025】
球状無機粒子を有機化合物により表面処理する方法は特に制限はなく、例えば球状無機粒子と有機化合物を混合した後、加水分解触媒を加え、常温または加熱下で攪拌する方法などで行われる。ここで球状無機粒子中の分解触媒と縮合反応で生じる水を常圧または減圧下で共沸留出させ縮合反応を行う。この際、反応を促進させる目的で、水、酸、塩基、塩等の触媒を用いてもよい。このようにして、表面修飾した球状無機粒子を得ることができる。この際、反応を促進させる目的で、水、酸、塩基、塩等の触媒を用いてもよい。
【0026】
本発明の透明フィルムにおけるフマル酸ジエステル系樹脂と球状無機粒子の割合は、フマル酸ジエステル系樹脂30〜99重量%、球状無機粒子1〜70重量%が好ましく、特に好ましくはフマル酸ジエステル系樹脂40〜90重量%、球状無機粒子60〜10重量%であり、さらに好ましくはフマル酸ジエステル系樹脂50〜80重量%、球状無機粒子20〜50重量%である。
【0027】
本発明の透明性フィルムの製造方法は特に制限はなく、例えば前記フマル酸ジエステル系樹脂および球状無機粒子を含む溶液をキャストする溶液キャスト法より製造出来る。溶液キャスト法は、フマル酸ジエステル系樹脂および球状無機粒子をトルエン、テトラヒドロフラン等の溶媒に溶解した溶液(以下、ドープと称する。)を支持基板上に流延した後、加熱等により溶媒を除去しフィルムを得る方法である。
【0028】
本発明の透明性フィルムは、強度に優れた透明フィルムとなることから架橋透明フィルムとすることができる。その際の架橋透明フィルムの製造方法としては、例えば透明性フィルムに光照射することにより架橋透明フィルムとすることができる。架橋透明性フィルムとする際に用いる光としては、特に制限はなく、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ等が挙げられる。
【0029】
本発明の透明フィルムの厚みは、10〜400μmであることが好ましく、より好ましくは20〜200μmであり、更に好ましくは30〜150μmの範囲である。
【0030】
透明フィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、特に好ましくは90%以上である。
【0031】
透明フィルムのヘーズは、2.0以下が好ましく、特に好ましくは1.0以下である。
【0032】
透明フィルムの熱線膨張係数は、80ppm/℃以下が好ましく、特に70ppm/℃以下、更に60ppm以下が好ましい。
【0033】
本発明の透明フィルムは、傷つき性、耐溶剤性、大気雰囲気下における湿気や酸化によるディスプレイの劣化を保護するために、少なくとも一層以上のハードコート層やガスバリア層を積層することも可能である。該ガスバリア層としては、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化タンタル、アルミ膜などの無機膜層;ポリビニルアルコール、ポリオレフィンなどの有機膜層が挙げられる。ガスバリア層の厚みは無機膜層の場合は1〜1000nmが好ましく、特に好ましくは10〜300nmであり、有機膜層の場合には0.1〜100μmが好ましく、特に好ましくは1〜50μmである。これらガスバリア層は有機膜層と無機膜層を積層化、多層化する事も出来る。ガスバリア層は、蒸着、スパッタ、PECVD、CatCVD、コーティングやラミネーティングなど公知の手法により形成することができる。透明フィルムとガスバリア層の間にプライマー処理をすることもできる。
【0034】
本発明の透明フィルムは、熱安定性あるいは光安定性を向上させる目的で酸化防止剤あるいは光安定剤を含んでいてもよい。該酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられる。また、該光安定剤としては、例えばヒンダートアミン系光安定剤等が挙げられる。これら酸化防止剤あるいは光安定剤はそれぞれ単独で用いてもよく、それぞれを併用して用いても良い。
【0035】
また、本発明の透明フィルムは、液晶化合物の劣化防止などの目的で、紫外線吸収剤を含んでいてもよく、該紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を必要に応じて添加することもできる。これら紫外線吸収剤は一種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0036】
さらに、本発明の透明フィルムは、発明の主旨を越えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等が加えられていてもよい。
【0037】
本発明の透明フィルムは、偏向板保護フィルム、位相差フィルム、タッチパネルフィルム、フラットパネルディスプレイ用フィルム基板、太陽電池用フィルム基板、カラーフィルター用プラスチック基板、薄膜トランジスタアレイ用プラスチック基板、タッチパネル用透明導電性プラスチック基板、太陽電池用透明プラスチック基板として使用でき、その中でも特にカラーフィルター用プラスチック基板、薄膜トランジスタアレイ用プラスチック基板、タッチパネル用透明導電性プラスチック基板、太陽電池用透明プラスチック基板として使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の透明フィルムは、透明性、耐熱性に優れるものであり、各種光学フィルム用途に適し、特に液晶表示素子用ディスプレイ用フィルム基板として適したものである。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。断りのない限り用いた試薬は市販品を用いた。
【0040】
なお、実施例により用いた分析・評価方法を以下に示す。
【0041】
〜フマル酸ジエステル系樹脂の組成〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)スペクトル分析より求めた。
【0042】
〜数平均分子量の測定〜
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、HLC−802A)を用い、クロロホルムを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算から求めた。
【0043】
〜透明性の評価方法〜
作製したフィルムの全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名NDH2000)を使用して測定した。また、400nm光線透過率は、可視紫外分光光度計(日本分光製、UVIDEC−650)を使用して測定した。
【0044】
〜熱線膨張係数の測定〜
フィルムを無加重下10℃から220℃まで、5℃/min.で昇降温させた時の2回目の昇降温での膨張係数の測定値の平均を線膨張係数とした。
【0045】
合成例1(フマル酸ジエステル系樹脂の製造例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた30Lのオートクレーブに、ポリビニルアルコール(分子量2,000、けん化度80%)24g、蒸留水15.6kg、フマル酸ジイソプロピル7.4kgおよび重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート50gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、300rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル重合を行なった。重合反応の終了後、フラスコ中の重合物を濾別し、蒸留水およびメタノールで洗浄することによりフマル酸ジエステル系樹脂を得た(収率:68%)。H−NMR測定により、得られたフマル酸ジエステル系樹脂は、フマル酸ジイソプロピル残基単位100(モル%)であった。なお、フマル酸ジエステル系樹脂の数平均分子量は152、000であった。
【0046】
合成例2(フマル酸ジエステル系樹脂の製造例2)
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ポリビニルアルコール(分子量2,000、けん化度80%)0.4g、蒸留水260g、フマル酸ジイソプロピル137.5g(0.687モル)、アクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル2.5g(0.015モル)および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.8g(0.005モル)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、550rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル共重合を行なった。共重合反応の終了後、フラスコ中の重合物をろ別し、蒸留水およびメタノールで洗浄することにより共重合体を得た(収率:82%)。H−NMR測定により、得られた共重合体は、フマル酸ジイソプロピル残基単位/アクリル酸−3−エチル−3−オキセタニルメチル残基単位=96/4(モル%)であるフマル酸ジエステル系樹脂であった。なお、フマル酸ジエステル系樹脂の数平均分子量は47,000であった。
【0047】
合成例3(球状無機粒子の表面処理1)
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた5リットルの4ツ口フラスコに、球状無機粒子としてイソプロパノールシリカゾル(コロイダルシリカ微粒子)(SiO濃度;30重量%、粒子径;20nm、日産化学工業(株))2,000重量部と、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東芝シリコン(株))160重量部を計量し、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に純水100重量部を徐々に滴下させ、滴下終了後、還流下で2時間攪拌しながら加水分解を行った。反応後トルエン500重量部を追加し、アルコール、水等をトルエンと一緒に共沸留出させた。次に、トルエン1,000重量部を追加し、トルエンを留出させながら110℃で4時間反応を行なった。得られた分散液は固形分濃度65重量%であった。
【0048】
合成例4(球状無機粒子の表面処理2)
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた5リットルの4ツ口フラスコに、球状無機粒子としてイソプロパノールシリカゾル(コロイダルシリカ微粒子)(SiO濃度;30重量%、粒子径;180nm、日産化学工業(株))2,000重量部と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成製)200重量部を計量し、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に純水100重量部を徐々に滴下させ、滴下終了後、還流下で2時間攪拌しながら加水分解を行った。反応後トルエン500重量部を追加し、アルコール、水等をトルエンと一緒に共沸留出させた。次に、トルエン1,000重量部を追加し、トルエンを留出させながら110℃で4時間反応を行なった。得られた分散液は固形分濃度70重量%であった。
【0049】
合成例5(球状無機粒子の表面処理3)
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた5リットルの4ツ口フラスコに、球状無機粒子としてイソプロパノールシリカゾル(コロイダルシリカ微粒子)(SiO濃度;30重量%、粒子径;350nm、日産化学工業(株))2,000重量部と、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(東芝シリコン(株))160重量部を計量し、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に純水100重量部を徐々に滴下させ、滴下終了後、還流下で2時間攪拌しながら加水分解を行った。反応後トルエン500重量部を追加し、アルコール、水等をトルエンと一緒に共沸留出させた。次に、トルエン1,000重量部を追加し、トルエンを留出させながら110℃で4時間反応を行なった。得られた分散液は固形分濃度65重量%であった。
【0050】
実施例1
合成例1により得られたフマル酸ジエステル系樹脂80重量部を、合成例3で得られた球状無機粒子のトルエン分散液(固形分:65重量%)31重量部とテトラヒドロフラン389重量部からなる溶液に溶解し、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部とビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.9重量部を添加し、支持基板上に流延し、50℃で5分乾燥後、更に120℃で10分乾燥した。得られたフィルムの組成はフマル酸ジエステル系樹脂80重量%、球状無機粒子20重量%であった。得られたフィルムの厚みは80μmであり、全光線透過率は91%、ヘーズ0.7であったことから、透明性に優れるフィルムであった。また、200℃で1時間加熱した後に、劣化や着色は見られず耐熱性に優れていた。線膨張係数は74ppm/℃であった。
【0051】
実施例2
合成例1により得られたフマル酸ジエステル系樹脂70重量部を、合成例3で得られた球状無機粒子のトルエン分散液(固形分:65重量%)46重量部とテトラヒドロフラン384重量部からなる溶液に溶解し、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部とビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.9重量部を添加し、支持基板上に流延し、50℃で5分乾燥後、更に120℃で10分乾燥した。得られたフィルムの組成はフマル酸ジエステル系樹脂70重量%、球状無機粒子30重量%であった。得られたフィルムの厚みは75μmであり、全光線透過率は91%、ヘーズ0.7であったことから、透明性に優れるフィルムであった。また、200℃で1時間加熱した後に、劣化や着色は見られず耐熱性に優れていた。線膨張係数は65ppm/℃であった。
【0052】
実施例3
合成例2により得られたフマル酸ジエステル系樹脂50重量部に対し、合成例4で得られた球状無機粒子のトルエン分散液(固形分:70重量%)71重量部とテトラヒドロフラン379重量部からなる溶液に溶解し、光カチオン開始剤であるジフェニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸0.5重量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部とビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.9重量部を添加し、支持基板上に流延し、50℃で5分乾燥後、更に120℃で10分乾燥した。
【0053】
得られた溶液を、バーコーターを用いて支持基板上に流延し、次いで100℃で加熱して溶媒を除去し、水銀ランプにて光を10分間照射した。得られたフィルムの組成はフマル酸ジエステル系樹脂50重量%、球状無機粒子50重量%であった。得られたフィルムの厚みは120μmであった。このフィルムはテトラヒドロフランに浸漬しても溶解しなかったことから、架橋フィルムであることが確認できた。得られたフィルムの全光線透過率は90%、ヘーズ0.9であったことから、透明性に優れるフィルムであった。また、200℃で1時間加熱した後に、劣化や着色は見られず耐熱性に優れていた。線膨張係数は54ppm/℃であった。
【0054】
これら実施例1〜3で得られた透明性フィルムは、カラーフィルター用プラスチック基板、TFTアレイ用プラスチック基板、タッチパネル用透明導電性プラスチック基板、太陽電池用透明プラスチック基板に適したものであった。
【0055】
比較例1
合成例1により得られたフマル酸ジエステル系樹脂100重量部をテトラヒドロフラン400重量部に溶解し、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部とビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.9重量部を添加し、支持基板上に流延し、50℃で5分乾燥後、更に120℃で10分乾燥した。得られたフィルムの組成はフマル酸ジエステル系樹脂100重量%であった。得られたフィルムの厚みは80μmであり、全光線透過率は93%、ヘーズ0.3であったことから、透明性に優れるフィルムであった。
【0056】
また、200℃で1時間加熱した後に、劣化や着色は見られず耐熱性に優れていたが、球状無機粒子を用いなかったことから線膨張係数は95ppm/℃と大きいものであった。
【0057】
比較例2
合成例1により得られたフマル酸ジエステル系樹脂80重量部を合成例5で得られた球状無機粒子のトルエン分散液(固形分:65重量%)31重量部とテトラヒドロフラン389重量部からなる溶液に溶解し、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部とビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.9重量部を添加し、支持基板上に流延し、50℃で5分乾燥後、更に120℃で10分乾燥した。得られたフィルムの組成はフマル酸ジエステル系樹脂80重量%、球状無機粒子20重量%であった。得られたフィルムの厚みは85μmであり、全光線透過率は85%、ヘーズ22.7であった。
【0058】
用いた球状無機粒子の粒径が200nmより大きいことから、透明性に劣るフィルムであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸ジエステル系樹脂および平均粒子径が200nm以下である球状無機粒子からなることを特徴とする透明フィルム。
【請求項2】
フマル酸ジエステル系樹脂30〜99重量%および球状無機粒子70〜1重量%からなることを特徴とする請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項3】
フマル酸ジエステル系樹脂が、下記一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位50モル%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明フィルム。
【化1】

(式中、RおよびRは炭素数3〜12である分岐アルキル基又は環状アルキル基を示す。)
【請求項4】
球状無機粒子が有機化合物によって表面処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項5】
球状無機粒子がシリカ系粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の透明フィルムからなる架橋透明フィルム。
【請求項7】
フィルム厚みが10〜400μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項8】
全光線透過率が85%以上、ヘーズが2.0以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項9】
熱線膨張係数が80ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の透明フィルムからなることを特徴とするカラーフィルター用プラスチック基板、薄膜トランジスタアレイ用プラスチック基板、タッチパネル用透明導電性プラスチック基板、太陽電池用透明プラスチック基板。

【公開番号】特開2009−46594(P2009−46594A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214293(P2007−214293)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】