説明

透明プラスチックフィルム

【課題】光学特性、耐熱性、ハンドリング性に優れた透明プラスチックフィルム、特に表示素子用プラスチック基板用フィルムを提供する。
【解決手段】フィルムの端部の少なくとも1辺が90ppm/℃以下の熱線膨張係数を有する粘着テープで被覆されている透明プラスチックフィルム。粘着テープが100〜400℃の耐熱性を有することが好ましい。該フィルムがフマル酸ジエステル残基単位50モル%以上からなる重合体よりからなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの端部が粘着テープで被覆されたことによりハンドリング性及び耐熱性に優れる新規な透明プラスチックフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの基板には一般にガラス基板が用いられているが、割れやすい、比重が大きい、柔軟性および加工性に乏しい等の課題がある。透明樹脂からなる透明プラスチックフィルムが使用できれば、薄膜化、軽量化、フレキシブル性付与など様々なメリットが考えられる。しかしながら、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示素子用プラスチックフィルムには、高い耐熱性や優れた光学特性など厳しい特性が要求される。さらに、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの製造では、薄膜トランジスタ(以下、TFT)の形成工程、パネルの張り合わせ工程、透明電極形成工程など様々な工程を経て作製されるため、各工程中あるいは各工程間の搬送時においてプラスチックフィルムの端部にクラックや欠けが発生して割れや裂けなどが起こりやすいといったハンドリング性に課題があった。
【0003】
また、架橋フマル酸ジエステル系樹脂よりなるディスプレイ用光学フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、得られるフィルムのハンドリング性については、記載されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−249318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光学特性および耐熱性に優れ、かつハンドリング性に優れた透明プラスチックフィルム、特に表示素子用プラスチック基板用フィルムを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フィルムの端部の少なくとも1辺が、特定の粘着テープで被覆されている透明プラスチックフィルムにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、フィルムの端部の少なくとも1辺が、90ppm/℃以下の熱線膨張係数を有する粘着テープで被覆されていることを特徴とする透明プラスチックフィルムに関するものである。
【0008】
以下、本発明における透明プラスチックフィルムについて詳細に説明する。
【0009】
本発明の透明プラスチックフィルムにおけるフィルムは、フマル酸ジエステル重合体よりなるフィルムが好ましく、特に下記一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位50モル%以上、さらに80モル%以上、特に90モル%以上よりなるフィルムであることが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(ここで、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状あるいは分岐状アルキル基、炭素数3〜6の環状アルキル基を示す。)
ここで、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状あるいは分岐状アルキル基、炭素数3〜6の環状アルキル基であり、これらはフッ素、塩素などのハロゲン基;エーテル基;エステル基もしくはアミノ基で置換されていてもよい。
【0012】
、Rにおける炭素数1〜12の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜12の分岐状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜6の環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でもイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、特にイソプロピル基が好ましい。
【0013】
また、該フマル酸ジエステル重合体は、他の単量体残基を含有していてもよく、他の単量体の残基としては、例えばスチレン残基、α−メチルスチレン残基等のスチレン類残基;(メタ)アクリル酸残基;(メタ)アクリル酸メチル残基、(メタ)アクリル酸エチル残基、(メタ)アクリル酸ブチル残基、下記一般式(2)で表されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基、下記一般式(3)で表されるテトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基等の(メタ)アクリル酸エステル類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基等のビニルエステル類残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;メチルビニルエーテル残基、エチルビニルエーテル残基、ブチルビニルエーテル残基等のビニルエーテル類残基;N−メチルマレイミド残基、N−シクロヘキシルマレイミド残基、N−フェニルマレイミド残基等のN−置換マレイミド類残基;エチレン残基、プロピレン残基等のオレフィン類残基、より選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。これらの中でも他の単量体残基としては、下記一般式(2)で表されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基、下記一般式(3)で表されるテトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基であることが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
(ここで、Rは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基を示す。nは1または2を示す。)
【0016】
【化3】

【0017】
(ここで、Rは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基を示す。)
ここで一般式(2)のRは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基であり、nは1または2である。Rにおける炭素数1〜4の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の分岐状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。そして、具体的な一般式(2)で表されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基としては、例えば(メタ)アクリル酸3−メチル−3−オキセタニルメチル残基、(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルエチル残基等が挙げられる。
【0018】
また、一般式(3)のRは水素、メチル基であり、Rは水素、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基である。Rにおける炭素数1〜4の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の分岐状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。そして、具体的な一般式(3)で表されるテトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル残基としては、例えばアクリル酸テトラヒドロフルフリル残基、アクリル酸2−メチルテトラヒドロフルフリル残基、アクリル酸2−エチルテトラヒドロフルフリル残基等が挙げられる。
【0019】
具体的な一般式(1)で示されるフマル酸ジエステル残基としては、例えばフマル酸ジメチル残基、フマル酸ジエチル残基、フマル酸ジプロピル残基、フマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−n−ブチル残基、フマル酸ジイソブチル残基、フマル酸ジ−sec−ブチル残基、フマル酸ジ−tert−ブチル残基、フマル酸ジ−n−ペンチル残基、フマル酸ジ−イソペンチル残基、フマル酸ジ−sec−ペンチル残基、フマル酸ジ−tert−ペンチル残基、フマル酸ジ−n−ヘキシル残基、フマル酸ビス−(2−エチルヘキシル)残基、フマル酸ジシクロプロピル残基、フマル酸ジシクロブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/(メタ)アクリル酸3−メチル−3−オキセタニルメチル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルエチル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/アクリル酸テトラヒドロフルフリル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/アクリル酸2−メチルテトラヒドロフルフリル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/アクリル酸2−エチルテトラヒドロフルフリル残基等が挙げられ、その中でもフマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−tert−ブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/(メタ)アクリル酸3−メチル−3−オキセタニルメチル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルエチル残基が好ましく、特にフマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジイソプロピル残基/(メタ)アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基が好ましい。また、これらは1種または2種以上含まれていてもよい。
【0020】
本発明で使用されるフマル酸ジエステル重合体は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下、GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量が50,000〜250,000であることが好ましい。
【0021】
また、本発明で使用されるフマル酸ジエステル重合体は、例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジ−tert−ブチル、フマル酸ジ−n−ペンチル、フマル酸ジイソペンチル、フマル酸ジ−sec−ペンチル、フマル酸ジ−tert−ペンチル、フマル酸ジ−n−ヘキシル、フマル酸ビス−(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジシクロプロピル、フマル酸ジシクロブチル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル等のフマル酸ジエステル類のラジカル重合によって製造することができる。
【0022】
また、該フマル酸ジエステル重合体が、他の単量体残基を含有している場合には、前記フマル酸ジエステル類と、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、テトラヒドロフルフリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類等をラジカル重合することにより得ることができる。
【0023】
前記ラジカル重合は公知の重合方法、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれも採用可能である。
【0024】
本発明の透明プラスチックフィルムにおけるフィルムの製造方法としては、フィルムの製造が可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば溶液キャスティング法、溶融キャスティング法等の方法によってフィルム化して製造できる。
【0025】
該フィルムは、フィルムの表面性、耐傷付き性、耐薬品性、大気雰囲気下での湿気や酸化による劣化を保護するために少なくとも一層以上のハードコート層及び/又はガスバリア層を積層してなる積層体であることが好ましい。
【0026】
該ハードコート層としては、例えばシリコン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、紫外線硬化型樹脂、ウレタン系ハードコート剤等からなる層が挙げられ、これらは一種類以上で用いることができる。その中でも透明性、耐傷付き性、耐薬品性の点から、紫外線硬化型樹脂が好ましい。ハードコート層の厚みは、0.1〜50μmが好ましく、特に好ましくは1〜20μmである。
【0027】
また、該ガスバリア層としては、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化タンタル、アルミなどの無機物よりなる層;ポリビニルアルコール、ポリオレフィンなどの有機膜よりなる層が挙げられ、特に、光学特性、ガスバリア性能、寸法安定性に優れることから酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素などの無機物よりなる層が好ましい。ガスバリア層の厚みは無機膜の場合は1〜1000nmが好ましく、特に好ましくは10〜300nmであり、有機層の場合には0.1〜100μmが好ましく、特に好ましくは1〜50μmである。
【0028】
本発明の透明プラスチックにおけるフィルムの膜厚は特に制限なく、10〜500μmが好ましく、特に好ましくは30〜200μmの範囲がハンドリング性の点でよい。
【0029】
本発明の透明プラスチックフィルムにおけるフィルムは透明性に優れるものであり、全光線透過率は85%以上が好ましく、特に好ましく90%以上であり、またヘーズは2.0%以下が好ましく、特に好ましくは1.0%以下である。
【0030】
本発明の透明プラスチックフィルムの端部を被覆するのに使用される粘着テープは、熱線膨張係数が90ppm/℃以下を示すものであり、さらに好ましくは70ppm/℃以下、特に好ましくは60ppm/℃以下である。粘着テープの熱線膨張係数が90ppm/℃を超えると、粘着テープを被覆した透明プラスチックフィルムを熱処理した場合、粘着テープが変形して該フィルムから剥離する、あるいは剥離しない場合でも粘着テープの変形に追従してフィルムが変形するため、そのような粘着テープの使用は困難である。特に、使用される粘着テープは、被覆するフィルムの熱線膨張係数との差が30ppm/℃以内となるものが好ましい。
【0031】
また、本発明において使用される粘着テープは、100〜400℃の耐熱性を有するものであることが好ましく、透明プラスチックフィルムを高温で熱処理が可能となることから、さらに好ましくは150〜400℃、特に好ましくは200〜400℃の耐熱性を有するものがよい。ここで、耐熱性100〜400℃とは、100〜400℃の温度域で変形・変色しないことを意味する。
【0032】
用いる粘着テープとしては、90ppm/℃以下の熱線膨張係数を有するものであれば特に限定はなく、具体例として、例えばフッ素樹脂テープ、ガラスクロスフッ素樹脂テープ、ポリイミドテープ、ガラスクロステープ、ポリエステルテープ、アルミテープなどが挙げられ、好ましくはガラスクロスフッ素樹脂テープ、ガラスクロステープ、ポリエステルテープである。また、これら粘着テープは任意に市販品を使用することができる。
【0033】
本発明で使用される粘着テープは耐薬品性が良好であることが好ましく、薬品として、酸、アルカリ、有機溶剤などに対して変形等起こさないものがよい。
【0034】
本発明の透明プラスチックフィルムはフィルムの端部の少なくとも1辺が粘着テープで被覆されているものである。ここで、用いられる該フィルムの形状については特に制限なく、枚葉状やロール状で使用することができ、例えば四角形にカットされた枚葉状フィルムの場合、フィルム面の4辺のうち少なくとも1辺に粘着テープが被覆されていることを表す。透明プラスチックフィルムのハンドリング性を上げるためには、好ましくは相対する2辺以上、さらに全ての辺に被覆することが好ましい。
【0035】
その被覆方法について特に制限はなく、例えばフィルムの端部(厚み面)を覆うようにフィルムの両面が粘着テープにより被覆する方法、フィルムの端部(厚み面)を粘着テープで被覆せずにフィルム面の片側あるいは両側を粘着テープにより被覆する方法などが挙げられ、その中でもフィルム端部のクラックや欠けの発生を抑制し、ハンドリング性が良いことからフィルムの端部を覆うようにフィルムの両面が粘着テープにより被覆する方法が好ましい。
【0036】
本発明の透明プラスチックフィルムは、カラーフィルター用プラスチック基板、フラットパネルディスプレイ用TFTアレイフィルム基板、タッチパネル用導電性プラスチック基板、太陽電池用フィルム基板として使用可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の透明プラスチックフィルムは、透明性、耐熱性に優れるものであり、さらにハンドリング性も良好であり、特に液晶表示素子用ディスプレイ用フィルム基板として適したものである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
【0040】
〜透明性の評価方法〜
ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名NDH5000)を使用して、フィルムの全光線透過率およびヘーズを測定した。
【0041】
〜熱線膨張係数の測定〜
無加重条件において、10℃から240℃まで、5℃/min.で昇降温させ、測定2回目の昇降温から求められる膨張係数の平均値を熱線膨張係数とした。
【0042】
〜フマル酸ジエステル重合体の組成〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)スペクトル分析より求めた。
【0043】
〜数平均分子量の測定〜
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名C0−8011(カラムGMHHRーHを装着))を用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0044】
合成例1(フマル酸ジエステル重合体の合成)
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた50Lのオートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)40g、蒸留水26000g、フマル酸ジイソプロピル13750g、アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル250gおよび重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート80gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマー粒子を蒸留水で2回およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:81%)。
【0045】
得られたポリマーの数平均分子量は150,000であった。H−NMR測定により、フマル酸ジイソプロピル残基単位/アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル残基単位=97/3(モル%)であるフマル酸ジイソプロピル共重合体であることを確認した。
【0046】
フィルム製造例1
合成例1により得られたフマル酸ジイソプロピル共重合体100重量部を400重量部のテトラヒドロフランに溶解し20重量%溶液とし、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.5重量部とビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト1.0重量部を添加し、支持基板上に流延した。50℃で5分乾燥後、更に120℃で10分乾燥することにより、厚み100μm、厚みむらが2μmのフィルムを作製した。
【0047】
得られたフィルムには、さらに両面にハードコートを塗工した。ここで使用したハードコート剤は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート15重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート10重量部、表面処理シリカ粒子100重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3重量部からなる混合溶液であり、コーターで塗工し、60℃/80℃で5分間乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射し(照射量300mJ/cm)、厚さ5μmのハードコート層を形成した。フィルム裏面にも同様に5μmのハードコート層を形成し、ハードコート積層フィルムを作製した。得られたハードコート積層フィルムの全光線透過率は92%、ヘーズは0.6%と透明性が高く、また熱線膨張係数は50ppm/℃であった。
【0048】
実施例1
フィルム製造例1で作製したハードコート積層フィルムから30cm角の枚葉状フィルムをカットして、その枚葉状フィルムの4辺すべてに熱線膨張係数20ppm/℃の粘着テープ(日東電工(株)製ガラスクロスフッ素樹脂テープ)を被覆し、透明プラスチックフィルムを得た。粘着テープで被覆された透明プラスチックフィルムは端部にクラックや欠けが発生することなく取扱いでき、さらに220℃、1hrの熱処理後も透明プラスチックフィルムの透明性が変化することなく、粘着テープの剥離や透明プラスチックフィルムの変形は認められず(220℃において粘着テープに変形・変色が見られず粘着テープは220℃の耐熱性を有するものであった)、ハンドリング性が良好であった。また、酸やアルカリに対して良好な耐性を示した。
【0049】
実施例2
フィルム製造例1で作製したハードコート積層フィルムから30cm角の枚葉状フィルムをカットして、その枚葉状フィルムの4辺すべてに熱線膨張係数60ppm/℃の粘着テープ(住友スリーエム(株)製ポリエステルテープ)を被覆し、透明プラスチックフィルムを得た。粘着テープで被覆された透明プラスチックフィルムは端部にクラックや欠けが発生することなく取扱いでき、さらに150℃、1hrの熱処理後も透明プラスチックフィルムの透明性が変化することなく、粘着テープの剥離や透明プラスチックフィルムの変形は認められず(150℃において粘着テープに変形・変色が見られず粘着テープは150℃の耐熱性を有するものであった)、ハンドリング性が良好であった。
【0050】
比較例1
フィルム製造例1で作製したハードコート積層フィルムから30cm角の枚葉状フィルムをカットしたフィルム(粘着テープ被覆なし)は、取扱い中にフィルムの端部にクラックや欠けが発生した。よって、粘着テープを用いなかったことから、ハンドリング性に劣るものであった。
【0051】
比較例2
フィルム製造例1で作製したハードコート積層フィルムから30cm角の枚葉状フィルムをカットし、その枚葉状フィルムの相対する2辺に熱線膨張係数100ppm/℃の粘接着テープ(日東電工(株)製フッ素樹脂テープ)を被覆し、フィルムを得た。粘着テープで被覆されたフィルムは端部にクラックや欠けが発生することなく取扱いできたが、220℃、1hrの熱処理後にフィルムの変形が認められた。よって、線膨張係数が90ppm/℃以上粘着テープを用いたことから、耐熱性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの端部の少なくとも1辺が90ppm/℃以下の熱線膨張係数を有する粘着テープで被覆されていることを特徴とする透明プラスチックフィルム。
【請求項2】
粘着テープが100〜400℃の耐熱性を有する粘着テープであることを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項3】
フィルムの端部を覆うようにしてフィルムの両面が粘着テープにより被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項4】
フィルムが下記一般式(1)で表されるフマル酸ジエステル残基単位50モル%以上からなる重合体よりなるフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明プラスチックフィルム。
【化1】

(ここで、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状あるいは分岐状アルキル基、炭素数3〜6の環状アルキル基を示す。)
【請求項5】
フィルムが一層以上のハードコート層及び/又はガスバリア層を積層してなる積層体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明プラスチックフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の透明プラスチックフィルムからなることを特徴とするカラーフィルター用プラスチック基板、TFTアレイ用プラスチック基板、タッチパネル用透明導電性プラスチック基板、太陽電池用透明プラスチック基板。

【公開番号】特開2009−255435(P2009−255435A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108741(P2008−108741)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】