説明

透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物及びそれを用いた透明プラスチック基板素材

【課題】高分子としてフェノキシ樹脂を用いることによって、耐熱性、耐化学性、及び接着性に優れ、水分浸透性と線形熱膨張係数とが低く、従来のガラス基板を効果的に代替しうる透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物及びそれを用いた透明プラスチック基板素材を提供する。
【解決手段】本発明に係る透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物は、下記に示す化学式1の化学構造を有するフェノキシ樹脂を含み、フェノキシ樹脂を含む化学式1のnは、35以上400以下であることを特徴とする。
【化1】




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物及びそれを用いた透明プラスチック基板素材に関する。より詳細には、高分子としてフェノキシ樹脂を用いることによって、耐熱性、耐化学性、及び接着性に優れ、水分浸透性と線形熱膨張係数とが低い透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物及びそれを用いた透明プラスチック基板素材に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの発展は、事物をリアリティあるように表示する高性能化及び高機能化が中心で、携帯電話、PDAのような情報表示端末機に合わせて移動性(mobile)と便利性とに指向している。これにより、空間と形態との制約から自在になるように、軽くて可撓性を有したフレキシブルディスプレイ(Flexible Display、FD)の需要が急増している。
【0003】
フレキシブルディスプレイとは、折り曲げ可能な薄くて柔軟な基板を用いて製造されたディスプレイをいい、用途及び機能によって壊れない(rugged)ディスプレイ、折り曲げ可能な(bendable)ディスプレイ、巻き取りが可能な(rollable)ディスプレイに区別されている。フレキシブルディスプレイは、液晶表示装置(LCD)用や有機EL表示装置(OLED)用のTFT(thin film transistor)素子基板、カラーフィルタ(color filter)基板、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)用基板のような既存のフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display、FPD)及び太陽電池用基板のような光素子基板に用いられる重くて割れやすい板ガラスを、薄くて柔軟な基板に取り替えて、空間と形態との制約から多様な応用性を確保すべく開発しているディスプレイである。究極的なフレキシブルディスプレイは、紙のような(paper−like)ディスプレイの商用化を目標として持続的な研究開発がなされている。
【0004】
フレキシブルディスプレイを実現するための核心技術としては、フレキシブル基板素材、低温工程用の有機素材・無機素材、フレキシブルエレクトロニクス(flexible electronics)、封止(sealing)などが複合的に必要である。そのうち、ディスプレイの性能と信頼性及び価格を決定する最も核心部品としてフレキシブル基板素材は、非常に重要な技術として認識されている。
【0005】
フレキシブル基板素材に要求される核心特性は、薄型(tninner)、軽量(lighter)、コスト(cost)、工程性の確保などであり、これを実現するための基板素材として、これまでメタルホイル(metal foil)、薄型ガラス(very thin glass)、高分子(polymer)を用いたプラスチック(plastic)基板などに分けられて検討されている。その中でも産業的な商用化を実現するためには、連続工程(roll−to−roll process)を通じる量産性の確保が必須であるという側面でプラスチック基板が最も注目されている。
【0006】
基板素材として、まず、メタルホイルは、耐熱性と柔軟性とを有しているが、別途の絶縁コーティング層の導入が必要であり、また透明性が要求される分野では使用が制限される。次いで、薄型ガラスは、表面平坦度が良好であり、水分及び酸素の透過性が低いという長所がある一方、衝撃に弱く、他の基板素材とは異なって、連続工程への適用に問題があるという短所がある。一方、プラスチック基板は、メタルマスク、薄型ガラス二つの基板素材の短所が克服され、さらに軽いだけではなく、加工が容易であって、形態の制約がほとんどないという点で最も有望な基板素材として注目されている。
【0007】
前述したプラスチック基板に用いられる高分子の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)などがある。
【0008】
しかし、これら従来のプラスチック基板は、共通して熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)が大きいということが非常に大きな短所である。すなわち、高分子は、通常高分子のガラス転移温度(glass transition temperature、Tg)付近で局部的な分子鎖の挙動(segmental motion)によって物理的な変化が始まり、これにより、ガラス転移温度以上の高温工程では、急激な寸法変化率が発生するようになる。一般的にガラス(glass)の熱膨張係数は、数ppm/℃程度であり、一方、高分子の熱膨張係数は、数十ppm/℃で相対的に大きい。このような短所は、プラスチック基板上でTFTのような素子の製造工程時に寸法安定性を落とし、無機蒸着層の亀裂と剥離とを発生させる問題を起こしうる。
【0009】
最近、これらプラスチック基板素材の短所を補完する目的で熱硬化性エポキシ樹脂を用いるか、アクリルのような透明樹脂内にガラスフィラ(glass filler)などにより強化させた複合樹脂に対する検討がなされている。このような樹脂組成物としては、例えば、特許文献1〜5に開示されている。しかし、これら従来の複合樹脂を用いた基板において、熱硬化性エポキシ樹脂を用いた場合には、エポキシ樹脂の強い脆性によって、耐衝撃性が低下して柔軟なフィルムとして製造し難く、透明な高分子樹脂にガラスフィラを用いた場合には、屈折率の差によって、複屈折が発生する短所が問題になる。また、高寸法安定性を保持しにくいほど、依然として熱膨張係数が大きく、耐熱性が十分ではないという短所がある。
【0010】
また、前述した従来のプラスチック基板素材及び複合樹脂とは別途に、シロキサン(siloxane)の非加水分解反応を用いて、ガラスフィラが複合体を成す場合の屈折率の問題を解決した樹脂組成物が公開された。例えば、特許文献6には、ガラスフィラが非加水分解反応によって生成された透明シロキサン樹脂を用いることによって、高透明性と低熱膨張係数とを有した組成物が開示されている。しかし、特許文献6の透明シロキサン樹脂では、依然として剛性のような機械的強度が弱く、耐久性が低く、特に、無機蒸着層との接着力が弱く、製造過程で亀裂と剥離とを発生させる可能性がある。また、ガラスフィラを含浸して追加的な収率反応を通さなければならない回分式(batch)製造工程によって、シート(sheet)状以外に低価格化のための連続工程によるフィルム製造に限界があり、特に、20μm以下の薄型の厚さが要求される基板素材の製造には難しさがある。
【0011】
これにより、本発明では、プラスチック基板素材として使用可能な多様な高分子について検討している最中に前述したプラスチック基板素材の高分子以外に、使用可能な高分子及びその組成物を創案するのに至った。
【0012】
プラスチック基板素材として高分子が有さなければならない核心的な要求物性は、以下のように要約される。
1)寸法安定性(dimensional stability)
2)低熱膨張係数(CTE)
3)高バリア(barrier)特性
4)剛性(rigidity)
5)高可視光線透過度(transmittance)
6)耐久性(durability)
【0013】
上記1〜6のプラスチック基板素材の要求物性以外にも、薄型化、軽量化、連続工程の確保などが必要であり、多様なディスプレイ基板に適用可能な互換性が要求されている。
【0014】
プラスチック基板素材として高分子が備えなければならない核心的な要求物性のうちまず、基板の寸法安定性は、高分子基板が最大工程温度及び長時間にわたり露出された場合、膨張及び収縮する現象によって発生する変形を最小化するために要求される物性であって、主に各素材の耐熱性をその指標とする。通常、200℃以上の耐熱性が要求され、高温工程の種類によっては、300℃以上の耐熱性が要求される時もある。
【0015】
次いで、熱膨張係数の場合、通常、20ppm/℃以下の値が望ましいが、現在、この値を満足する高分子の基板がないのが実状である。これは、プラスチック基板上に無機物(特に、駆動部)が積層されるが、高温工程でプラスチック基板との熱膨張係数の差が大きい場合には、無機の蒸着層が亀裂されるか、剥離が起こりうる。したがって、熱膨張係数が低い素材がフレキシブルディスプレイの実現に適している。
【0016】
次いで、バリア性の場合、既存のガラスを代替するための基板素材として要求されるレベルは、非常に高い方である。これは、ディスプレイの外部から流入される酸素、水分、粒子などの汚染因子が、液晶表示装置の液晶や駆動素子を汚染させるか、有機EL表示装置の正極金属層(陰極金属層)を酸化させる等の汚染の要因となり、ディスプレイの寿命にまで影響を及ぼしうる。通常、高分子の透湿度は、1〜100g/m[day]の高値を有するが、液晶表示装置の場合、〜10−2g/m[day]、有機EL表示装置の場合には、10−6g/m[day]以下の透湿性が要求される。
【0017】
次いで、剛性の場合、基板の工程適合性を判断する重要な意味を有しているが、これは、young’s modulus(E)(ヤング率)、厚さ(t)、poisson’s ratio(v)(ボアソン比)の関数として以下の数式1で定義される。
(数1)
剛性=E×t/12(1−v)・・・(1)
【0018】
プラスチック基板の場合、一定範囲以上の剛性が要求されるが、上記数式1のように、剛性は厚さの変化に関係なく基板の変形率が低く、弾性率が高いほど良いといえる。
【0019】
次いで、透過度の場合、ディスプレイのイメージ特性と消費電力とに大きな影響を及ぼす重要な素材特性であって、高分子素材の結晶化度や表面変化による散乱、反射度の変化が起こらず、高透過度を保持しなければならない。現在、適用されるほとんどの光学基板は、550nmで85%以上の高透過度を示し、積層フィルムとの透過度率の差が大きくてはならない。
【0020】
最後に、耐久性の場合、フレキシブル基板の寿命と関連が非常に深い。すなわち、プラスチック基板は、ベース基板と、バリア、透明電極などの有機物と無機物とが積層された多層構造であって、撓みや曲げが与えられる場合、内部の基板側では内部応力が発生し、基板上に蒸着された薄膜では接着破壊(adhesive failure)が起こり、蒸着層の内部の粘着破壊(cohesive failure)が発生する。したがって、特に、フレキシブル基板が究極的に目標とする紙のようなディスプレイを実現するためには、必ずしも耐久性を確保されなければならない。
【0021】
上記のような要求物性を確保するために、プラスチック基板素材に関する多様で多くの研究開発がなされているが、上記のあらゆる物性を満足するプラスチック基板素材として用いるための適した高分子は、まだ開発できないのが実状である。
【0022】
前述した高分子の材料のうち、まず、PCは機械的であり、光学的な特性に優れるが、耐化学性が脆弱であると知られている。したがって、PCは使用溶媒(PR developer、PR remover、metal etchant、洗浄(cleaning)溶媒)に多くの制約が伴う。このような問題を解決するために、PCの場合、基板の両面に耐化学性を確保するために、別途の耐化学層(chemical resistancelayer)を形成する必要性があり、紫外線に対する抵抗性を有していて、基板工程に制約があり、またアウトガス(out−gas)が多く、熱膨張係数が無機物に比べて、約10倍程度大きいという点と、既存のガラスに比べて、低温工程(最大使用温度範囲、150℃〜180℃)で進行しなければならないという短所がある。
【0023】
次いで、PETは、吸湿度が低く、溶融温度が低くて比較的に低い温度で安価の工程・製造コストで高分子の基板の成形が容易であって、従来から基板適用が検討されたが、低いTgに起因した脆弱な熱的安定性と光学的に異方性とを示すので、LCDのような偏光板を用いるディスプレイの基板としては、適用が不可能である。特に、150℃以上の熱処理によってPET分子鎖の再結晶化が起こって、局所的に基板がぼやけているようになる白濁(whitening)現象が起こって、基板の光学透過度が低下する問題がある。
【0024】
次いで、PENは、前述したPETと類似した挙動を示す光学的異方性を有したプラスチックであって、熱的安定性の側面では、PETと類似した問題があるが、最近の研究開発の結果では、基板素材への適用可能性がある素材として追加的な研究開発が必要になっている。
【0025】
次いで、住友ベークライト社によって最初に商業化されたPESは、耐熱性が良く、他のプラスチック基板とは異なり、最も活発に適用が検討されている。PESは、PCと同様に耐化学性が脆弱であり、熱膨張係数が高く、最大工程温度(180℃)が低いという短所以外にも、吸湿性が大きな高分子として水と接触するか、空気中に長期間放置した場合には、脱水(dehydration)工程がさらに必要であるという難しさがある。また、価格がガラスに比べて高いという短所もある。
【0026】
次いで、PIは、優れた耐化学性、耐熱性によって、電気、電子部品などに幅広く応用されている高分子フィルムである。PIは、前述したPESよりもさらに大きな吸湿性(約3倍)を示す素材として工程中に適切な脱水工程の導入が必ず要求される。PIの分子鎖内のイミド(imide)基は、耐熱性を付与する基であると同時に、素材の黄変現象を発生させる原因となる。特に、PIの光透過度は、550nmの可視光線に対して30%〜50%程度であり、このような低い光学的特性は、ディスプレイ用の基板素材としてPIの応用性に大きな障害物となっている。最近、PIの分子鎖の変化を用いて光学的に透明(可視光線透過率80%以上)でありながら、高いTg(>300℃)を有したPI基板が、三菱ガス化学株式会社によって開発され、Neopulim(登録商標)Lという商品名で販売されている。
【0027】
高分子の光学基板として、AryLite(登録商標)基板は、イタリアのFerrania Image System社が開発したものであり、他のプラスチック基板素材に比べて、優れた耐熱性、光学的、化学的特性を示しているが、同様に熱膨張係数が大きく、紫外線(UV)に対する抵抗性を有し、基板工程に制約があり、また、価格が既存のガラスより高いという短所がある。
【0028】
したがって、本発明では、ガラス基板を代替しうるフレキシブルディスプレイ用プラスチック基板素材として、従来のプラスチック基板素材より要求物性に優れた新たなプラスチック基板用の高分子組成物を創案するのに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開平6−337408号公報
【特許文献2】特開2001−59015号公報
【特許文献3】特開昭54−24993号公報
【特許文献4】特開平6−94523号公報
【特許文献5】特開平5−140376号公報
【特許文献6】韓国公開特許第10−2010−0083697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、耐熱性、耐化学性、及び接着性に優れ、水分浸透性と線形熱膨張係数とが低い透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物及びそれを用いた透明プラスチック基板素材を提供することである。
【0031】
本発明の目的及び他の目的と利点は、望ましい実施形態を説明した下記の説明からより明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物は、透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物において、下記化学式1に示す化学構造を有するフェノキシ樹脂を含むことを特徴とする。
【0033】
【化1】

【0034】
前記フェノキシ樹脂を含む前記化学式1のnは、35以上400以下であってもよい。
【0035】
前記フェノキシ樹脂の化学構造に加えて、ビスフェノールA型フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールF型フェノキシ、ブローム系フェノキシ、リン系フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールS型フェノキシ、及びカプロラクトン変性フェノキシ、シロキサン変性フェノキシをさらに含んでもよい。
【0036】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、1,000以上100,000以下であってもよい。
【0037】
前記フェノキシ樹脂は、その末端にエポキシ基(epoxy group)、ヒドロキシル基(hydroxyl group)、アミン基(amine group)、フッ素基(fluorine group)、シロキサン基(siloxane group)、またはアミド基(amide group)のうち少なくとも一つを含有してもよい。
【0038】
前記フェノキシ樹脂組成物は、エネルギー線硬化型アクリルオリゴマーまたはアクリル高分子樹脂をさらに含有してもよい。
【0039】
前記フェノキシ樹脂組成物は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ジベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、またはアゾビスイソブチロニトリルのうち少なくとも一つの光開始剤をさらに含有してもよい。
【0040】
前記フェノキシ樹脂組成物は、フェノキシ樹脂の架橋剤として、メラミン、ウレア−ホルムアルデヒド、イソシアネート官能性予備重合体、フェノール硬化剤、またはアミノ系硬化剤のうち少なくとも一つの架橋剤をさらに含有してもよい。
【0041】
本発明の透明プラスチック基板素材は、前記透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物を用いた透明プラスチック基板素材であって、前記フェノキシ樹脂組成物を用いて、溶媒キャスティングまたは溶融押出法により厚さ25μm以上1,000μm以下のフィルムまたはシート状に形成されることを特徴とする。
【0042】
本発明の透明プラスチック基板素材は、前記透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物を用いた透明プラスチック基板素材であって、前記フェノキシ樹脂組成物が、高分子基材上に厚さ0.1μm以上500μm以下に塗布されることを特徴とする。
【0043】
前記透明プラスチック基板素材は、液晶表示装置用または有機EL表示装置用のTFT素子基板、カラーフィルタ基板、タッチスクリーンパネル用基板のフラットパネルディスプレイ及び太陽電池用基板の光素子基板に用いられるフレキシブル基板として用いられてもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、耐熱性、耐化学性、及び接着性に優れ、水分浸透性と線形熱膨張係数とが低く、従来のガラス基板を代替するための透明プラスチック基板素材として効果的に用いられる。また、液晶表示装置用や有機EL表示装置用のTFT素子基板、カラーフィルタ基板、タッチスクリーンパネル用基板のフラットパネルディスプレイ及び太陽電池用基板の光素子基板に用いられるフレキシブル基板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態により、本発明を詳しく説明する。これら実施形態は、単に本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものであって、本発明の範囲が、これら実施形態によって制限されないということは当業者に自明である。
【0046】
本発明の実施形態は、フレキシブルディスプレイ用透明プラスチック基板素材としてフェノキシ樹脂を用いることを特徴とする。フェノキシ樹脂は、耐熱性、耐化学性、及び接着性に優れ、水分浸透性と線形熱膨張係数とが低く、従来のガラス基板を代替するための透明プラスチック基板素材として効果的に用いることができる。
【0047】
また、フェノキシ樹脂は、基本的に熱可塑性(thermoplastic)高分子でありながら、溶融点が低い溶媒を用いた溶媒キャスティング(solvent casting)法、溶媒を使わずに直接溶融押出(extrusion)法を用いて基板を形成することができる。これにより、シートやフィルム状の多様な厚さを有する高分子基板を形成することができる。
【0048】
また、フェノキシ樹脂は、分子鎖内に位置した水酸基(hydroxyl group)によって分子間架橋(cross−linking)が可能な構造を有していて、シートやフィルムの形成以後に追加的な硬化(curing)を進行し、これにより、さらに優れた熱的物性を有した高分子基板を形成することができる。
【0049】
また、フェノキシ樹脂は、透明性に優れて透明性が要求されるフレキシブル基板の高分子基板素材として用いられ、特に、紫外線に対する抵抗性がなくて、フレキシブル基板上の素子製作時に基板工程に制限がないフレキシブル高分子基板を形成することができる。
【0050】
また、フェノキシ樹脂は、プラスチック基板に要求される機能をさらに優れるように充足させるため、多様な組成物を複合体で図ることができ、このようなフェノキシ樹脂組成物を単独で形成するか、他の高分子基材上に塗布して形成する方法を用いることができる。
【0051】
本発明の実施形態に用いられるフェノキシ樹脂は、一般的な固体型エポキシ樹脂とは異なって、分子鎖が線形で大きな分子量を有することを特徴とし、ビスフェノールA(Bisphenol−A)型のような固体型エポキシ樹脂から付加反応を通じて形成される。一般的に、固体型エポキシ樹脂は、分子鎖の反復個数nが、通常1以上の常温で固体状態である樹脂を意味し、現在販売されている固体型エポキシ樹脂は、水平均分子量が900(n=1.97)から10,000(n=34)までに多様であり、これより大きな分子量のものは、線形として存在し、これをフェノキシ(Phenoxy)樹脂に分類する。通常、線形に分子量が大きくなれば、熱可塑性(thermoplastic)性質を有し、フェノキシ樹脂も基本的に熱可塑性を有することを特徴とする。また、同時にフェノキシ樹脂は、分子鎖の反復単位に架橋反応が可能な官能基を含有し、反応触媒下では、熱硬化を通じて熱硬化性(thermosetting)性質を有することが特徴である。
【0052】
したがって、本発明の実施形態では、フェノキシ樹脂が二つの性質、すなわち、熱可塑性と熱硬化性とを同時に有する点に着眼して、プラスチック基板素材として創案するのに至った。
【0053】
本発明では、下記の化学式1の化学構造を有するフェノキシ樹脂を含み、フェノキシ樹脂の化学構造のnは、35以上400以下であることを特徴とする。
【0054】
【化1】



【0055】
本発明の実施形態に用いられるフェノキシ樹脂は、熱硬化性エポキシ樹脂の最終硬化構造を単位構造で含む分子量が高い熱可塑性樹脂の特性を有する。これにより、固形状態の樹脂溶融による直接的な押出(melt extrusion)である溶融押出法や溶媒を用いたコーティング(coating)のような溶媒キャスティング(solvent casting)法で容易に加工が可能である。
【0056】
フェノキシ樹脂の種類としては、ビスフェノールA型フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールF型フェノキシ、ブローム系フェノキシ、リン系フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールS型フェノキシ、及びカプロラクトン変性フェノキシ、シロキサン変性フェノキシなどがあるが、その中でも、特に、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂が、耐熱性、親環境性、硬化剤相溶性、硬化速度の側面で優れているため、さらに望ましい。また、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、1,000以上500,000以下であることが望ましく、さらに望ましくは、1,000以上100,000以下、最も望ましくは、30,000以上70,000以下である。重量平均分子量が1,000未満である場合には、エポキシ樹脂と同様に硬化反応構造が優先的に形成されて脆性が増加し、このような場合には、単独でフィルム状に形成することが難しい。また、重量平均分子量が100,000超過である場合には、熱可塑性樹脂の形態を有するが、凝集力が高くコーティングのような方法によるフィルム状に形成した場合、コーティング後が良くなく、また組成物を図る場合、相溶性に問題が発生する。
【0057】
また、フェノキシ樹脂を溶解することができる有機溶媒の種類には、ケトン系、アルコール系、グリコールエーテル系、エステル系がある。その中から幾つかの例としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールアルキルエテル、フェノキシプロパノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンなどを単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒100重量部に対してフェノキシ樹脂5重量部〜40重量部が適当であり、20重量部〜35重量部がさらに望ましい。
【0058】
また、フェノキシ樹脂は、適当な架橋剤を添加しても使用が可能であるが、架橋剤あるいは硬化剤としては、水酸基を機能基として有している樹脂を硬化させることができるものであれば、いずれも使用可能である。フェノキシ樹脂の架橋剤として、メラミン、ウレア−ホルムアルデヒド、イソシアネート官能性予備重合体、フェノール硬化剤、またはアミノ系硬化剤のうち少なくとも一つの架橋剤をさらに含有することができる。熱硬化剤量は、フェノキシ樹脂100重量部に比べて0.1重量部〜40重量部が望ましく、5重量部〜20重量部がさらに望ましい。
【0059】
本発明の実施形態に用いられるフェノキシ樹脂は、熱硬化性エポキシ樹脂の最終硬化構造を単位構造で含む分子量が高い熱可塑性樹脂の特性を有する。これにより、固形状態の樹脂溶融による直接的な押出(melt extrusion)方法や溶媒を利用したコーティング(coating)のような溶媒キャスティング(solvent casting)方法で容易に加工が可能である。押出方式は、従来のフィルム押出方式の種類に関係なく用いることが可能であり、コーティング方式としては、ナイフコータ(knife coater)、グラビアコータ(gravure coater)のように公知の方法によって、離型基材上に溶液状で塗布した後に乾燥させて、固形のフェノキシ樹脂からなるフィルム層を形成して得られる。
【0060】
また、本発明の実施形態におけるフェノキシ樹脂の構造は、分子主鎖にベンゼン(benzene)核を含有するビスフェノール(bis−phenol)構造を含み、この構造によって高耐熱性と耐久性、そして、高引張強度とを有する。
【0061】
本発明の実施形態におけるフェノキシ樹脂の構造は、水酸基(hydroxyl group)を有し、優れた接着性を付与し、これにより、別途の硬化工程が不要であり、同時に分子単位が反復されてポリオール(polyol)特性を有すれば、高ガス遮断性を付与し、フレキシブル基板素材としての機能を得ることができる。
【0062】
また、本発明の実施形態に係るフェノキシ樹脂の構造は、エーテル基(ether group)を含み、これにより、高耐化学性を有し、また、低溶融粘度と鎖の柔軟性とを付与して良い加工特性を有することができる。
【0063】
本発明の実施形態に係るフェノキシ樹脂の末端には、必要に応じて官能基が存在することもできる。官能基として、例えば、エポキシ基(epoxy group)、ヒドロキシル基(hydroxylgroup)、アミン基(amine group)、フッ素基(fluorine group)などがあり、フェノキシ樹脂の屈折率を調節するか、接着性の調節に利用される。また、本発明の実施形態に係るフェノキシ樹脂内の水酸基は、必要に応じて他の特性を有した分子鎖に置換が可能であり、主にシロキサン(siloxane)基、アミド(amide)基、その他の水素結合や脱水素化反応が可能な分子鎖の置換が可能である。これも、フェノキシ樹脂の耐熱性、屈折率、接着性、引張強度、水分浸透性などを収得する目的で多様に容易に改質(modification)が可能である。
【0064】
本発明の実施形態では、ケトン類(ketone)を含んだ溶媒に対する耐化学性を高める目的でエネルギー線硬化が可能な不飽和基を有したアクリレート系の低分子化合物またはアクリル高分子樹脂などの使用が可能である。但し、必ずしもアクリレート化合物またはアクリル高分子樹脂は、フェノキシ樹脂と相互熱力学的によく混合されて透過率の低下が発生してはいけないため、屈折率値の差が大きくてはいけない。混合量は、フェノキシ樹脂100重量に対して5重量〜95重量が用いられ、望ましくは、10重量〜70重量、さらに望ましくは、30重量〜50重量が望ましい。エネルギー線硬化型アクリル樹脂は、二重結合を有したアクリル高分子、アクリルオリゴマー、アクリルモノマーなどがあり、エネルギー線によって硬化が可能なものであれば、特別に限定せずに使用が可能である。エネルギー線硬化型アクリル樹脂は、少なくとも一つの二重結合を分子内に有しており、その例としては、特開昭60−196956号公報と特開昭60−223139号公報とで公開された低分子量化合物が広く用いられる。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレートのようなアクリレート化合物を含む。
【0065】
また、本発明の実施形態に係る透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物は、紫外線硬化型低分子化合物の硬化を開始するため、光開始剤を用いることができる。このような光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ジベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、アゾビスイソブチロニトリルなどがある。このような光開始剤は、エネルギー線硬化型低分子化合物の合計100重量部に対して通常0.5重量部〜10重量部、望ましくは、1重量部〜5重量部の比率で用いられる。
【0066】
本発明の実施形態に係る透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物をフィルムとして単独で形成する場合には、フィルムの厚さを1μm以上1,000μm以下で形成することが望ましく、さらに望ましくは、25μm以上100μm以下、最も望ましくは、30μm以上70μm以下が適切である。厚さが1μm未満であれば、フィルムの引張性が低下し、1,000μmを超過すれば、コーティングの性能が低下するからである。500μm以上に製造が必要な場合には、スロットダイを用したコーティング方法や押出によるシートへの製作が望ましい。
【0067】
本発明の実施形態では、フェノキシ樹脂を主成分として簡単に高分子基板を製造することができる。これは、通常のコーティング(coating)や押出(extrusion)のような従来の広く用いられている生産工程で容易に大量製造が可能であり、また、フェノキシ樹脂組成物単独で形成するか、または透明な他の高分子基材上に薄膜または厚膜にコーティングすることも可能である。ここで、他の高分子基材とは、前述したPC、PES、PI、PET、PENなどの従来の高分子基板素材を含み、特別に限定しない。これは、従来の高分子基板素材の短所を克服するために、フェノキシ樹脂組成物を薄膜または厚膜にコーティングすることも有用に考慮される。例えば、耐化学性が低いPCフィルム上に塗布するか、水分浸透性に脆弱なPES、PIなどのフィルム上に塗布して、基板としての機能物性を顕著に向上させることも可能である。フェノキシ樹脂組成物を他の基材上にコーティングする場合には、コーティング層の厚さを0.1μm以上500μm以下で形成することが望ましく、さらに望ましくは、0.5μm以上100μm以下、最も望ましくは、1μm以上50μm以下が適切である。厚さが0.1μm未満になれば、コーティング層の基材に対する接着性が低下し、500μm超過になれば、基材に対するコーティングの性能が低下するからである。
【0068】
本発明の実施形態に係るフェノキシ樹脂組成物は、ガラス基板が用いられるTFT素子、ディスプレイまたは光素子の全般に用いられ、これにより、特別に限定されない。
【0069】
本発明の実施形態に係るフェノキシ樹脂組成物を液晶表示装置(LCD)用基板、タッチスクリーンパネル用基板、カラーフィルタ用基板、有機EL表示装置用基板などのディスプレイまたは太陽電池用基板などの光素子の用途として用いる場合、フェノキシ樹脂組成物の形態は、シート(sheet)状が望ましく、その厚さは15μm以上500μm以下であるが、より望ましくは、30μm以上80μm以下が良い。また、用途で上述した様々な素子を製作する場合、25℃〜250℃の温度範囲において、熱膨張係数は30ppm/℃以下が好ましく、さらに好ましくは、1ppm/℃〜20ppm/℃である。透明性と関連して、様々な表示装置用基板の用途として用いる場合、550nm波長において、透過率が85%以上であることが必要であり、90%以上であれば、最も望ましい。波長550nmにおいて、透過率が80%未満であることは、表示性能において、可視能力が低くて十分ではないからである。
【実施例】
【0070】
以下、実施例と比較例とを通じて、本発明の構成及びそれによる効果をより詳しく説明する。しかし、本実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が、これら実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
フェノキシ樹脂(国都化学、YP50)100gをメチルエチルケトン300gに溶解し、これにイソシアネート系熱硬化剤(ダウコーニング、CE138)15gを混合して1時間撹拌した。撹拌済のフェノキシ樹脂組成物を離型フィルム(東レ先端素材株式会社、商品名XD5BR)上に塗布し、150℃乾燥器で約3分間乾燥した。その厚さは、約30μmと確認された。乾燥器を通過したフェノキシ樹脂組成物は、離型フィルムを除去して、最終的にフェノキシ樹脂組成物単独で構成されたフィルムを得た。
【0072】
[実施例2]
フェノキシ樹脂(国都化学、YP50)100gをメチルエチルケトン300gに溶解し、これにイソシアネート系熱硬化剤(ダウコーニング、CE138)15g、エネルギー線硬化型オリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成、UV7600B80)20g、及びアクリルホスフィン系光開始剤(CYTEC、DAROCUR TPO)2gを混合して1時間撹拌した。撹拌済のフェノキシ樹脂組成物を離型フィルム(東レ先端素材株式会社、商品名XD5BR)上に塗布し、150℃乾燥器で約3分間乾燥した。その厚さは、約30μmと確認された。乾燥器を通過した乾燥されたテープは、紫外線を照射して追加的な架橋構造を形成するためのエネルギー線硬化段階を経て、離型フィルムを除去して、最終的にフェノキシ樹脂組成物単独で構成されたフィルムを得た。
【0073】
[実施例3]
フェノキシ樹脂(国都化学、YP50)100gをメチルエチルケトン300gに溶解し、これにイソシアネート系熱硬化剤(ダウコーニング、CE138)15g、エネルギー線硬化型オリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成、UV7600B80)20g、及びアクリルホスフィン系光開始剤(CYTEC、DAROCUR TPO)2gを混合して1時間撹拌した。撹拌済のフェノキシ樹脂組成物を25μm厚さのポリイミドフィルム(LN100、SKCコーロン)に塗布し、150℃乾燥器で約3分間乾燥した。その厚さは、約5μmと確認された。乾燥器を通過した乾燥されたテープは、紫外線を照射して追加的な架橋構造を形成するためのエネルギー線硬化段階を経て、最終的にフェノキシ樹脂組成物が塗布されたポリイミド−フェノキシ樹脂組成物の複合体フィルムを得た。
【0074】
[実施例4]
フェノキシ樹脂(国都化学、YP50)100gをメチルエチルケトン300gに溶解し、これにイソシアネート系熱硬化剤(ダウコーニング、CE138)15g、エネルギー線硬化型オリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成、UV7600B80)20g、及びアクリルホスフィン系光開始剤(CYTEC、DAROCUR TPO)2gを混合して1時間撹拌した。撹拌済のフェノキシ樹脂組成物を25μm厚さのPENフィルム(NX10、SKCコーロン)に塗布し、150℃乾燥器で約3分間乾燥した。その厚さは、約5μmと確認された。乾燥器を通過した乾燥されたテープは、紫外線を照射して追加的な架橋構造を形成するためのエネルギー線硬化段階を経て、最終的にフェノキシ樹脂組成物が塗布されたポリエチレンナフタレート−フェノキシ樹脂組成物の複合体フィルムを得た。
【0075】
[比較例1]
市販されている25μm厚さのPIフィルム(LN100、SKCコーロン)を比較例1とした。
【0076】
[比較例2]
市販されている25μm厚さのPENフィルム(NX10、SKCコーロン)を比較例2とした。
【0077】
実施例1〜4及び比較例1〜2に係る透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物を利用したフィルムを用いて、次のような実験例を通じて物性を測定し、その結果を以下の表2に示す。
【0078】
[実験例]
1.透過率
Shimadzu CorporationのUV/VIS/NIRスペクトル分析器UV−3101PCを用いて、550nm波長で測定した。
【0079】
2.耐熱性
TA Instrument社の熱重量分析器(Thermogravimetricanalyzer)Q−600を用いて、試料を窒素雰囲気下で5℃/分の昇温率で600℃まで加熱しながら、最初重量の5%減少が起こった温度を測定した。
【0080】
3.熱膨張係数
TA Instrument社の熱応力分析器(Thermomechanical analyzer)Q−400を用いて、窒素雰囲気下で5℃/分の昇温率で300℃まで加熱しながら、70℃〜200℃の温度範囲での値を測定した。100mNの荷重と20Hzの周波数とを利用した。
【0081】
4.高温弾性率
Perkin Elmer社の熱物性分析器(Dynamic MechanicalAnalyzer)DMA−8000を用いて、窒素雰囲気下で5℃/分の昇温率で300℃まで加熱しながら、200℃の温度での値を測定した。100mNの荷重と1Hzの周波数とを利用した。
【0082】
5.ガス遮断性
MOCON社の酸素透過度試験機(OX−TRAN)Model 2/61を用いて、ASTM F 1927:2007の規格によって23+/−で1日間放置して測定した。
【0083】
6.吸湿性
PCT(Pressure Cooker Test)装備を用いて、2 atm、21℃、24時間条件にして、吸湿率を測定した。
【0084】
7.耐化学性
以下に示す表1の条件で耐化学性を評価した。
【0085】
【表1】

【0086】
8.接着性
基板工程を考慮して、無機物薄膜層との接着力を判断するために、基材をcoppercladを使い、基材上に試料をそれぞれ長さ150mm、幅50mmに切断した後、常温でそれぞれ0.2MPaで合紙し、300mm/minの速度で180°剥離接着力を測定した。
【0087】
【表2】

【0088】
表2の結果から分かるように、本発明の実施例1〜4に係るフェノキシ樹脂組成物の場合、高耐熱性と低熱膨張係数とを有し、比較試料が比較例1、2であるPIフィルムとPENフィルムとに比べて、ガス遮断性と吸湿性とで非常に優れた特性を示すことを確認した。特に、接着性において、従来のプラスチック基板素材が全く示していない強い接着力を表わすことによって、本発明のフェノキシ樹脂組成物をプラスチック基板素材として使用する場合、優れた耐久性の確保を期待することができる。
【0089】
本明細書では、本発明者が行った多様な実施例のうち幾つかの例のみを挙げて説明しているが、本発明の技術的思想は、これに限定または制限されず、当業者によって変形されて多様に実施可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物及びそれを用いた透明プラスチック基板素材関連の技術分野に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物において、
下記の化学式1の化学構造を有するフェノキシ樹脂を含むことを特徴とする透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【化1】



【請求項2】
前記フェノキシ樹脂を含む前記化学式1のnは、35以上400以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノキシ樹脂の化学構造に加えて、ビスフェノールA型フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールF型フェノキシ、ブローム系フェノキシ、リン系フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールS型フェノキシ、及びカプロラクトン変性フェノキシ、シロキサン変性フェノキシをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、1,000以上100,000以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記フェノキシ樹脂は、その末端にエポキシ基、ヒドロキシル基、アミン基、フッ素基、シロキサン基、またはアミド基のうち少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記フェノキシ樹脂組成物は、エネルギー線硬化型アクリルオリゴマーまたはアクリル高分子樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記フェノキシ樹脂組成物は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ジベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、またはアゾビスイソブチロニトリルのうち少なくとも一つの光開始剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記フェノキシ樹脂組成物は、フェノキシ樹脂の架橋剤として、メラミン、ウレア−ホルムアルデヒド、イソシアネート官能性予備重合体、フェノール硬化剤、またはアミノ系硬化剤のうち少なくとも一つの架橋剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載された前記透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物を用いた透明プラスチック基板素材であって、
前記フェノキシ樹脂組成物を用いて、溶媒キャスティングまたは溶融押出法により厚さが25μm以上1,000μm以下のフィルムまたはシート状に形成されることを特徴とする透明プラスチック基板素材。
【請求項10】
前記透明プラスチック基板素材は、液晶表示装置または有機EL表示装置用のTFT素子基板、カラーフィルタ基板、タッチスクリーンパネル用基板のフラットパネルディスプレイ及び太陽電池用基板の光素子基板に用いられるフレキシブル基板として用いられることを特徴とする請求項9に記載の透明プラスチック基板素材。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のうち何れか一項による前記透明プラスチック基板用フェノキシ樹脂組成物を用いた透明プラスチック基板素材であって、
前記フェノキシ樹脂組成物が、高分子基材上に厚さ0.1μm以上500μm以下に塗布されることを特徴とする透明プラスチック基板素材。
【請求項12】
前記透明プラスチック基板素材は、液晶表示装置や有機EL表示装置用のTFT素子基板、カラーフィルタ基板、タッチスクリーンパネル用基板のフラットパネルディスプレイ及び太陽電池用基板の光素子基板に用いられるフレキシブル基板として用いられることを特徴とする請求項11に記載の透明プラスチック基板素材。

【公開番号】特開2012−229399(P2012−229399A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2318(P2012−2318)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(504092127)トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【Fターム(参考)】