説明

透明プラスチック成形品の製造方法

【課題】透明プラスチック成形品を表面から視認したとき裏面たる凹凸面状の被転写面に塗膜が形成されていることにより光の乱反射によって立体的な色彩模様が透明プラスチックシートを介して視認され、立体的な深み感のある模様を感得することができる。
【解決手段】モデル型作製工程1と、モデル型Mから反転型Rを作製する反転型作製工程2と、反転型から基本母型Sを製作する母型製作工程3と、基本母型の表面に転写F1面となる織布Cを貼付してなる転写型Fを製作する転写型製作工程4と、転写型を用いて透明プラスチックシートTを成形すると共に転写型の転写面を透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に転写する転写プラスチック成形工程5と、被転写面に塗膜Kを施す塗装工程6とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車、家庭電化製品、ゲーム機等の各種の外装部品等に用いられる透明プラスチック成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の透明プラスチック成形品の製造方法として、フィルムの一面に転写用インキによる印刷を施してなる転写フィルムを成形型の表面に貼付して転写型を作製し、この転写型により透明プラスチックシートを成形すると共に該転写型の転写面を透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面に転写し、この被転写面に塗膜を設けてなる成形方法が知られている。
【特許文献1】特開平10−128840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来構造の場合、フィルムの一面に転写用インキによる印刷を施してなる転写フィルムを用いているので、透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面は実質的に平面的な面となり、このため、透明プラスチック成形品を表面から視認したとき被転写面に転写された模様が透明プラスチックシートを介して視認され、深み感を感得することができるものの模様は平面的に感得され、意匠感に乏しいことがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、モデル型を作製するモデル型作製工程と、該モデル型から反転型を作製する反転型作製工程と、該反転型から基本母型を製作する母型製作工程と、該基本母型の表面に転写面となる織布を貼付してなる転写型を製作する転写型製作工程と、該転写型を用いて透明プラスチックシートを成形すると共に該転写型の転写面を該透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面に転写する転写プラスチック成形工程と、該透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面に塗膜を施す塗装工程とからなることを特徴とする透明プラスチック成形品の製造方法にある。
【0005】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記織布は炭素繊維からなる織布であることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記反転型はFRP材を積層成形して形成されていることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の発明は、上記基本母型は砂利、砂等の粒状物を結合して形成された通気性を有する担体の表面にFRP材を積層成形して形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
又、請求項5記載の発明は、上記転写プラスチック成形は上記転写型の転写面に軟化状態の上記透明プラスチックシートを真空圧力により密着させる真空成形であることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記転写プラスチック成形は上記転写型の転写面に軟化状態の上記透明プラスチックシートを正圧圧力により密着させる圧空成形であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、モデル型作製工程において、モデル型を作製し、次いで、反転型作製工程において、モデル型から反転型を作製し、次いで、母型製作工程において、反転型から基本母型を製作し、次いで、転写型製作工程において、基本母型の表面に転写面となる織布を貼付してなる転写型を製作し、次いで、転写プラスチック成形工程において、転写型を用いて透明プラスチックシートを成形すると共に転写型の転写面を透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面に転写し、次いで、塗装工程において、透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面に塗膜を施すことになり、従って、透明プラスチック成形品の裏面たる被転写面は織布により凹凸面状に転写成形され、透明プラスチック成形品を表面から視認したとき裏面たる凹凸面状の被転写面に塗膜が形成されていることにより光の乱反射によって立体的な色彩模様が透明プラスチックシートを介して視認され、立体的な深み感のある模様を感得することができ、それだけ、印象的な奇抜な意匠感を得ることができ、高級感に溢れた透明プラスチック品を得ることができる。
【0008】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記織布は炭素繊維からなる織布であるから、斬新性に富んだカーボン模様を得ることができ、一層高級感を得ることができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記反転型はFRP材を積層成形して形成されているから、反転型の製作が容易となり、又、請求項4記載の発明にあっては、上記基本母型は砂利、砂等の粒状物を結合して形成された通気性を有する担体の表面にFRP材を積層成形して形成されているから、転写プラスチック成形工程において、上記転写型の転写面に軟化状態の透明プラスチックシートを確実に密着させることができ、転写成形を良好に行うことができる。
【0009】
又、請求項5記載の発明にあっては、上記転写プラスチック成形は上記転写型の転写面に軟化状態の上記透明プラスチックシートを真空圧力により密着させる真空成形であるから、転写プラスチック成形を良好に行うことができ、又、請求項6記載の発明にあっては、上記転写プラスチック成形は上記転写型の転写面に軟化状態の上記透明プラスチックシートを正圧圧力により密着させる圧空成形であるから、転写プラスチック成形を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図13は本発明の実施の形態例を示し、図1乃至図11は第一形態例、図12、図13は第二形態例である。
【0011】
図1乃至図11の第一形態例にあっては、モデル型Mを作製するモデル型作製工程1と、モデル型Mから反転型Rを作製する反転型作製工程2と、反転型Rから基本母型Sを製作する母型製作工程3と、基本母型Sの表面に転写面F1となる織布Cを貼付してなる転写型Fを製作する転写型製作工程4と、転写型Fを用いて透明プラスチックシートTを成形すると共に転写型Fの転写面F1を透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に転写する転写プラスチック成形工程5と、透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に塗膜Kを施す塗装工程6と、透明プラスチック成形品Wを所定形状にトリミング加工する仕上工程7からなる。
【0012】
この場合、モデル型作製工程1においては、図2の如く、木材、FRP材、合成樹脂材等の形状保形可能な材質により所定形状のモデル型Mを作製することになる。
【0013】
又、この場合、反転型作製工程2においては、図3の如く、モデル型Mを容器2a内に載置し、このモデル型Mの表面及び容器2a内面にビニルエステル樹脂からなるゲルコート層2bを形成し、その後、ゲルコート層2bの上面にガラス繊維にポリエステル樹脂を含浸させてなるマット状のFRP材2cを積層成形し、図4の如く、容器2aを取り去って凹状の反転型Rを作製することになる。
【0014】
又、この場合、母型製作工程3においては、図5の如く、上記反転型Rの凹状内面にエポキシ樹脂からなるゲルコート層3aを形成し、その後、ゲルコート層3aの上面にガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させてなるマット状のFRP材3bを積層成形し、更に、その上に例えば粒径3〜4mm程度の砂利、砂等の粒状物を合成樹脂等の結合剤3cにより結合して通気性を有する担体3dを形成し、図6の如く、反転型Rを取り外し、基本母型Sを製作することになる。しかして、基本母型Sは砂利、砂等の粒状物を結合して形成された通気性を有する担体3dの表面にFRP材3bを積層成形して形成されていることになる。
【0015】
又、この場合、転写型製作工程4においては、図7の如く、上記基本母型Sの表面に転写面F1となる、例えば、図8のような平織組織の織布Cを貼付し、転写型Fを製作することになり、この場合、上記織布Cは炭素繊維からなる織布が用いられている。
【0016】
又、この場合、転写プラスチック成形工程5においては、所謂、真空成形が用いられ、図9の如く、透明プラスチックシートTを図示省略のヒータにより軟化状態に加熱し、この軟化状態の透明プラスチックシートTに上記転写型Fを突き上げると共に図10の如く、真空圧力Gを用いて上記転写型Fの転写面F1に軟化状態の透明プラスチックシートTを密着させ、しかして、転写型Fを用いて透明プラスチックシートTを所定形状に成形すると共に転写型Fの転写面F1を透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に転写するようにしている。
【0017】
又、この場合、塗装工程6においては、図11の如く、脱型した透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に各種色のメタリック塗料、ウレタン塗料、ラッカー塗料を用いて吹き付けにより塗膜Kを施すことになる。
【0018】
又、この場合、仕上工程7においては、上記透明プラスチック成形品WをNC機械等により所定形状にトリミング加工することになる。
【0019】
この実施の第一形態例にあっては、モデル型作製工程1において、モデル型Mを作製し、次いで、反転型作製工程2において、モデル型Mから反転型Rを作製し、次いで、母型製作工程2において、反転型Rから基本母型Sを製作し、次いで、転写型製作工程4において、基本母型Sの表面に転写面F1となる織布Cを貼付してなる転写型Fを製作し、次いで、転写プラスチック成形工程5において、転写型Fを用いて透明プラスチックシートTを成形すると共に転写型Fの転写面F1を透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に転写し、次いで、塗装工程6において、透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に塗膜Kを施すことになり、従って、透明プラスチック成形品Wの裏面たる被転写面W1は織布Cにより凹凸面状に転写成形され、透明プラスチック成形品Wを表面から視認したとき裏面たる凹凸面状の被転写面W1に塗膜Kが形成されていることにより光の乱反射によって立体的な色彩模様が透明プラスチックシートTを介して視認され、立体的な深み感のある模様を感得することができ、それだけ、印象的な奇抜な意匠感を得ることができ、高級感に溢れた透明プラスチック品Wを得ることができる。
【0020】
又、この場合、上記織布Cは炭素繊維からなる織布であるから、メタリック塗装からなる塗膜Kと相俟って、斬新性に富んだカーボン模様を得ることができ、一層高級感を得ることができ、又、この場合、上記反転型RはFRP材2cを積層成形して形成されているから、反転型Rの製作が容易となり、又、この場合、上記基本母型Sは砂利、砂等の粒状物を結合して形成された通気性を有する担体3dの表面にFRP材3bを積層成形して形成されているから、転写プラスチック成形工程5において、上記転写型Fの転写面F1に軟化状態の透明プラスチックシートTを確実に密着させることができ、転写成形を良好に行うことができ、又、上記転写プラスチック成形は上記転写型Fの転写面F1に軟化状態の上記透明プラスチックシートTを真空圧力により密着させる真空成形であるから、転写プラスチック成形を良好に行うことができる。
【0021】
図12、図13の第二形態例は転写プラスチック成形工程5の別例を示し、この場合、所謂、圧空成形が用いられ、図12の如く、上記転写型Fの転写面F1に軟化状態の上記透明プラスチックシートTを押接すると共に図13の如く、正圧圧力Pを用いて密着させ、しかして、転写型Fを用いて透明プラスチックシートTを所定形状に成形すると共に転写型Fの転写面F1を透明プラスチック成形品Wの裏面となる被転写面W1に転写するようにしている。
【0022】
この第二形態例にあっても、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0023】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、例えば、各工程の具体的内容やプラスチック成形品の形態、材質、大きさ等は適宜設計して変更されるものである。
【0024】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の第一形態例のモデル型の斜視図である。
【図2】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図3】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図4】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図5】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図6】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図7】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図8】本発明の実施の第二形態例の工程説明図である。
【図9】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図10】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図11】本発明の実施の第一形態例の工程説明図である。
【図12】本発明の実施の第二形態例の工程説明図である。
【図13】本発明の実施の第二形態例の工程説明図である。
【符号の説明】
【0026】
M モデル型
R 反転型
S 基本母型
F 転写型
1 転写面
C 織布
T 透明プラスチックシート
W 透明プラスチック成形品
1 被転写面
K 塗膜
G 真空圧力
P 正圧圧力
1 モデル型作製工程
2 反転型作製工程
2c FRP材
3 母型製作工程
3b FRP材
3d 担体
4 転写型製作工程
5 転写プラスチック成形工程
6 塗装工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデル型を作製するモデル型作製工程と、該モデル型から反転型を作製する反転型作製工程と、該反転型から基本母型を製作する母型製作工程と、該基本母型の表面に転写面となる織布を貼付してなる転写型を製作する転写型製作工程と、該転写型を用いて透明プラスチックシートを成形すると共に該転写型の転写面を該透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面に転写する転写プラスチック成形工程と、該透明プラスチック成形品の裏面となる被転写面に塗膜を施す塗装工程とからなることを特徴とする透明プラスチック成形品の製造方法。
【請求項2】
上記織布は炭素繊維からなる織布であることを特徴とする請求項2記載の透明プラスチック成形品の製造方法。
【請求項3】
上記反転型はFRP材を積層成形して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の透明プラスチック成形品の製造方法。
【請求項4】
上記基本母型は砂利、砂等の粒状物を結合して形成された通気性を有する担体の表面にFRP材を積層成形して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明プラスチック成形品の製造方法。
【請求項5】
上記転写プラスチック成形は上記転写型の転写面に軟化状態の上記透明プラスチックシートを真空圧力により密着させる真空成形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明プラスチック成形品の製造方法。
【請求項6】
上記転写プラスチック成形は上記転写型の転写面に軟化状態の上記透明プラスチックシートを正圧圧力により密着させる圧空成形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明プラスチック成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−15690(P2006−15690A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197989(P2004−197989)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(591288137)株式会社東京島津 (1)
【Fターム(参考)】