説明

透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーブレンド、その製造方法及び物品

【課題】本願発明は、表面コーティング工程を要することなく、しかもベースポリマーの望ましい光学的性質を損なうことなく望ましい表面特性を示すポリマーブレンドを提供することを目的とする。
【解決手段】本願発明の目的は、1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーと、1以上のポリシロキサンセグメントを含む表面改質剤とを含んでなる組成物により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーブレンド、その製造方法及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
シロキサンを含有するポリマー及びコポリマーは、各種熱可塑性物品の表面特性を変えるために物品に被覆されている。例えば、Deppischらの米国特許第6500549号には、ポリジメチルシロキサンブロックを含む生体適合性フィルムを有するコーティング物品が記載されている。Wardらの米国特許第5589563号には、ベースポリマーの表面張力を変える表面活性末端基が共有結合した線状ベースポリマーを含む表面活性末端基含有ポリマーを有するコーティング物品が記載されている。Plunkettの米国特許第6395226号には、微小孔のある中空繊維膜血液人工心肺のためのコーティングであって、微小孔を通る血漿の通過に対する繊維の抵抗性を増大するコーティングが記載されており、このコーティングはアルコキシシラン/アルキルシランコポリマーを含む。この方法は、表面改質コポリマーで被覆するための別途の取扱い及びコーティング工程を要するという欠点がある。
また、シロキサン含有ポリマーをバルク熱可塑性樹脂とブレンドすることによって熱可塑性樹脂の表面特性を改質することも公知である。例えば、Gainesらの米国特許第3686355号には、ベースポリマーと、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーとし得る表面改質用添加剤とのブレンドが記載されている。しかし、所望の表面特性を得るのに必要とされる表面改質用添加剤の量は、ベースコポリマーの望ましい光学的性質を失わせることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6500549号明細書
【特許文献2】米国特許第5589563号明細書
【特許文献3】米国特許第6395226号明細書
【特許文献4】米国特許第3686355号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、表面コーティング工程を要することなく、しかもベースポリマーの望ましい光学的性質を損なうことなく望ましい表面特性を示すポリマーブレンドに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記その他の欠点は、1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーと、1以上のポリシロキサンセグメントを含む表面改質剤とを含んでなる本発明の組成物によって軽減される。ここで、ポリカーボネートブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0006】
【化1】

式中、R基の総数の約60〜100%は置換又は非置換の二価芳香族有機基であり、0〜約40%は二価脂肪族基又は二価脂環式基である。また、ポリシロキサンブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0007】
【化2】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルである。
【0008】
本発明の組成物の製造方法及び本組成物を含む物品を始めとする他の実施形態については以下に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマー、及び1以上のポリシロキサンセグメントを含む表面改質剤をブレンドすることによって、表面特性が改質され、特に血液適合性に優れたポリマーブレンドが得られることを発見した。本組成物は、血液適合性のために上市されている市販の熱可塑性材料と比較して衝撃強さが向上している。ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは、使用目的に応じて、不透明でも、半透明でも、透明でもよい。特定の透明ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは、その透明性と低いヘイズを損なわずに表面積改質剤のレベルを高めることができることが判明した。
【0010】
一実施形態は、1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーと、1以上のポリシロキサンセグメントを含む表面改質剤とからなる組成物である。ここで、ポリカーボネートブロックは次式の構造の繰返し単位を含んでなる。
【0011】
【化3】

式中、R基の総数の約60〜100%は置換又は非置換の二価芳香族有機基であり、0〜約40%は二価脂肪族基又は二価脂環式基である。また、ポリシロキサンブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0012】
【化4】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルである。
【0013】
上記ポリカーボネートブロック構造において、Rは好ましくは芳香族有機基でよく、さらに好ましくは次式の構造の基である。
【0014】
【化5】

式中、各AとAは単環式二価アリール基であり、YはAとAを1又は2原子で隔てる橋かけ基である。代表的な実施形態では、AとAは1原子で隔てられる。例えば、Yは−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−又はC〜C18ヒドロカルビレンである。代表的なC〜C18ヒドロカルビレン基としては、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンがある。本明細書で用いる「ヒドロカルビル」という用語は、単独で、或いは他の用語の接頭語、接尾語若しくは一部として用いるとき、炭素と水素のみを含有する残基を意味する。この残基は脂肪族又は芳香族、直鎖、環式、二環式、枝分れ、飽和又は不飽和でよい。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、枝分れ、飽和及び不飽和炭化水素部分の組合せを含んでいてもよい。ただし、ヒドロカルビル残基は、置換基残基の炭素と水素に加えてヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、特にかかるヘテロ原子を含有する場合、ヒドロカルビル又はヒドロカルビレン残基は、カルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含んでいてもよく、或いはヒドロカルビル残基の主骨格内にヘテロ原子を有していてもよい。
【0015】
基Rは芳香族ジヒドロキシ化合物の残基である。適当なジヒドロキシ化合物の幾つかの具体的な非限定例としては、名称又は式(一般的なもの又は個々のもの)で米国特許第4217438号に開示されているジヒドロキシ置換炭化水素がある。適当なジヒドロキシ化合物の具体例の包括的なリストとしては、レゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン及び2,7−ジヒドロキシカルバソール、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)フタリミジン(PPP)、4,4′−(ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−5−イリデン)ジフェノール(TCD又はトリシクロデカンビスフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、4−[1−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル]−1−メチルエチル]フェノール、4,4′−[1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル]ビスフェノール、フェノールフタレイン、2−メチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−ブチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2−オクチル−3,3−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジアルキルシクロヘキサン(ここで、アルキル基は炭素原子数1〜4のものである。例えば米国特許第5344999参照。)など、並びに上記ジヒドロキシ化合物を含む混合物がある。一実施形態では、R基の形成に用いる芳香族ジヒドロキシ化合物は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)からなる。
【0016】
ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは、次式の構造の繰返し単位を含むポリシロキサンブロックを含む。
【0017】
【化6】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルである。なお、本組成物は1以上のポリシロキサンセグメントを含む表面改質剤を含む。「ポリシロキサンセグメント」は、3以上の上記定義の繰返し単位を含む一価又は二価のポリシロキサン部分と定義される。ポリシロキサンセグメントは好ましくは5以上の繰返し単位、さらに好ましくは10以上の繰返し単位を含む。一実施形態では、各Rはメチルである。
【0018】
一実施形態では、ポリシロキサンブロックは次式の構造を有する。
【0019】
【化7】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルであり、各Rは独立にC〜C30ヒドロカルビレンであり、xは0又は1であり、Dは約5〜約120である。この範囲内で、Dの値は具体的に10以上である。同じくこの範囲内で、Dの値は具体的には約100以下、さらに具体的には約75以下、さらに一段と具体的には約60以下、なお一段と具体的には約30以下でよい。一実施形態では、xは0であり、各Rは独立に次式の構造を有する。
【0020】
【化8】

式中、各Rは独立にハロゲン、C〜Cヒドロカルビル又はC〜Cヒドロカルビルオキシであり、mは0〜4であり、nは2〜約12である。Rで置換されていないフェニレン環位置はいずれも水素原子が占める。別の実施形態では、各Rは独立に、ジフェノールの残基であるC〜C30アリーレン基である。適当なポリシロキサンブロックとしては、Kressらの米国特許第4746701号及びOkamotoらの同第5502134号に記載されているものがある。具体的には、ポリシロキサンブロックは、Kressらの米国特許第4746701号第2欄29〜48行に定義されている次式の構造のポリジオルガノシロキサンから誘導し得る。
【0021】
【化9】

式中、基Arは、好ましくは炭素原子数6〜30のジフェノールに由来する同一又は異なるアリーレン基であり、RとRは同一又は異なるもので、線状アルキル、枝分れアルキル、ハロゲン化線状アルキル、ハロゲン化枝分れアルキル、アリール又はハロゲン化アリールを表すが、好ましくはメチルであり、ジオルガノシロキシ単位の数(和o+p+q)は約5〜約120である。また、ポリシロキサンブロックはOkamotoらの米国特許第5502134号第4欄1〜9行に定義されている次式のポリジメチルシロキサンから誘導し得る。
【0022】
【化10】

式中、mは約5〜約120である。
【0023】
一実施形態では、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは実質的にポリカーボネートブロックとポリシロキサンブロックからなる。この用語「実質的に…からなる」とは、フェノール、tert−ブチルフェノール、パラ−クミルフェノールなどの連鎖停止剤から誘導される末端基を排除するものではない。
【0024】
ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは約70〜約99重量%のポリカーボネートブロックを含む。この範囲内で、ポリカーボネートブロックの含有量は具体的には75重量%以上、さらに具体的には85重量%以上、さらに一段と具体的には90重量%以上である。ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは約1〜約30重量%のポリシロキサンブロックを含む。この範囲内で、ポリシロキサンブロックの含有量は具体的には約2重量%以上、さらに具体的には約3重量%以上である。同じくこの範囲内で、ポリシロキサンブロックの含有量は具体的には約25重量%以下、さらに具体的には約15重量%以下、さらに一段と具体的には約10重量%以下である。
【0025】
本組成物は、約1〜約99.9重量%のポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーを含有する。この範囲内で、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーの量は具体的には約3重量%以上、さらに具体的には約5重量%以上、さらに一段と具体的には約10重量%以上である。同じくこの範囲内で、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーの量は具体的には約99重量%以下、さらに具体的には約90重量%以下、さらに一段と具体的には約50重量%以下である。
【0026】
組成物は、1以上のポリシロキサンセグメントを含む表面改質剤を含む。このポリシロキサンセグメントは3以上の繰返しジアルキルシロキサンセグメントからなる。好ましくは、表面改質剤は、1以上のポリシロキサンセグメントに加えて、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル及びポリアリーレートから選択される1以上のセグメントを含む。適当なポリオレフィンセグメントとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(ビニルアルカノエート)(例えば、ポリ(ビニルアセテート))、ハロゲン化ポリオレフィン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)など、各オレフィンモノマーのコポリマー及び上記ポリオレフィンの混合物がある。適当なポリエステルセグメントとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート)など、並びにこれらの混合物がある。適当なポリエステルカーボネートとしては、(a)ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーのポリカーボネートセグメントについて上記したカーボネート繰返し単位、及び(b)ポリエステルセグメントについて上記したエステル繰返し単位を有するものがある。適当なポリエーテルとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドなど、並びに各アルキレンオキシドモノマーのコポリマーがある。適当なポリアリーレートとしては、(a)レゾルシノールやビスフェノールAのような1種以上の芳香族ジオール、及び(b)イソフタル酸、テレフタル酸又はナフタレン−2,6−ジカルボン酸などの1種以上の芳香族ジカルボン酸から誘導される構造単位を含んでなるものがある。ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル及びポリアリーレートの製造方法は当技術分野で公知である。ポリシロキサンセグメントを上記ポリマーセグメントと連結する方法も当技術分野で公知である。例えば、オイゲノール末端基を有するポリシロキサンを製造し、エステル形成又はカーボネート形成反応によってポリエステル、ポリエステルカーボネート又はポリアリーレートセグメントと連結することができる。ポリシロキサン及びポリオレフィンブロックを含有する表面改質剤は、ビニル−又はアリル含有シロキサンの存在下でオレフィンを重合することによって製造することができる。別の例として、Austinらの米国特許第4857583号及びBurkhartらの同第5321051号に見られるもののような金属触媒ヒドロシリル化反応を使用して、ペンダントポリエーテル基を有するポリシロキサンを製造することもできる。
【0027】
一実施形態では、表面改質剤はポリエステル−ポリシロキサンブロックコポリマーからなる。このブロックコポリマーはジブロック、トリブロック、テトラブロック、ラジアルテレブロックその他同様の構造を有する。好ましい実施形態では、表面改質剤はポリエステル−ポリシロキサン−ポリエステルトリブロックコポリマーからなる。適当なポリエステル−ポリシロキサン−ポリエステルトリブロックコポリマーとして、ポリカプロラクトン−ポリジメチルシロキサン−ポリカプロラクトントリブロックコポリマーがある。かかるコポリマーは当技術分野で公知の方法に従って製造することができ、また例えばGoldschmidtからTEGOMER(登録商標)H−Si 6440Pとして市販されている。
【0028】
本組成物は約0.1〜約50重量%の表面改質剤を含有する。この範囲内で、表面改質剤の量は、具体的には0.25重量%以上、さらに具体的には0.5重量%以上でよい。同じくこの範囲内で、表面改質剤の量は、具体的には約30重量%以下、さらに具体的には約10重量%以下、さらに一段と具体的には約5重量%以下でよい。
【0029】
少なくともポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー及び表面改質剤は、組成物の総シロキサン含有量に寄与する。本組成物の総シロキサン含有量は約0.1〜約30重量%である。同じくこの範囲内で、総シロキサン含有量は具体的には約1重量%以上、さらに具体的には約3重量%以上でよい。同じくこの範囲内で、総シロキサン含有量は具体的には約20重量%以下、さらに具体的には約15重量%以下、さらに一段と具体的には約8重量%以下でよい。
【0030】
本組成物は、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーに加えて、例えば、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステル、ポリアリーレートなど、並びにこれらの混合物のような追加のポリマーを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、本組成物はポリカーボネートを含む。適当なポリカーボネートは、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーのポリカーボネートセグメントに関連して記載したものである。存在する場合、追加のポリマーは、組成物の総重量を基準にして約0.1〜約95重量%の量で使用し得る。この範囲内で、ポリマーの量は具体的には約1重量%以上、さらに具体的には約20%以上、さらに一段と具体的には約50重量%以上、なお一段と具体的には約70重量%以上、なお一段と具体的には約75重量%以上でよい。同じくこの範囲内で、ポリマーの量は具体的には約90重量%以下、さらに具体的には約85重量%以下でよい。
【0031】
本組成物はさらに耐衝撃性改良剤を適宜含んでいてもよい。適当な耐衝撃性改良剤としては、(i)Tgが0℃未満、さらに具体的には−40〜−80℃のエラストマー性(すなわち、ゴム状)ポリマー幹、及び(ii)そのエラストマー性ポリマー幹にグラフトした硬質ポリマー枝からなるエラストマー改質グラフトコポリマーがある。公知のように、エラストマー改質グラフトコポリマーを製造するには、まず、エラストマー性ポリマー主骨格を調製する。次いで、ポリマー主骨格の存在下で1種以上具体的には2種のグラフト化用モノマーを重合して、グラフトコポリマーを得る。
【0032】
存在するエラストマー改質ポリマーの量に応じて、未グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーの別個のマトリックスすなわち連続相は、エラストマー改質グラフトコポリマーと共に同時に得ることができる。一般に、かかる耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして40〜95重量%のエラストマー改質グラフトコポリマーと、5〜60重量%のグラフト(コ)ポリマーとからなる。別の実施形態では、かかる耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして50〜85重量%又は75〜85重量%のゴム改質グラフトコポリマーを、15〜50重量%、さらに具体的には15〜25重量%のグラフト(コ)ポリマーと共に含んでいることができる。また、未グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーは、例えばラジカル重合、特に乳化、懸濁、溶液又は塊状重合で別途製造し、耐衝撃性改良剤組成物又はポリカーボネート組成物に添加することもできる。かかる未グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーは20000〜200000原子質量単位の数平均分子量を有することができる。
【0033】
エラストマー性ポリマー主骨格としての使用に適した材料としては、例えば、共役ジエンゴム、共役ジエンと50重量%未満の共重合可能なモノマーとのコポリマー、C〜Cアルキル(メタ)アクリレートエラストマー、エチレンプロピレンコポリマー(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)のようなオレフィンゴム、シリコーンゴム、エラストマー性C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、C〜Cアルキル(メタ)アクリレートとブタジエン及び/又はスチレンとのエラストマー性コポリマー又は上記エラストマーを1種以上含む組合せがある。
【0034】
ポリマー主骨格の製造に適した共役ジエンモノマーは次式を有する。
【0035】
【化11】

式中、各Xは独立に水素、C〜Cアルキル、塩素、臭素などである。使用し得る共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエン、クロロ−及びブロモ−置換ブタジエン(例えば、ジクロロブタジエン、ブロモブタジエン、ジブロモブタジエンなど)、並びに上記共役ジエンモノマーを1種以上含む混合物である。共役ジエンホモポリマーの具体例としては、ポリブタジエン及びポリイソプレンがある。
【0036】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば共役ジエン及びこれと共重合可能な1種以上のモノマーの水性ラジカル乳化重合で製造されるものも使用し得る。共役ジエンとの共重合に適したモノマーとしては、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの縮合芳香環構造を含有するモノビニル芳香族モノマー又は次式のモノマーがある。
【0037】
【化12】

式中、各Xは独立に水素、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであり、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ又はクロロである。使用し得る適当なモノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラクロロスチレンなど、並びにこれらの組合せがある。スチレン及び/又はα−メチルスチレンが、一般に、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして使用されている。上記モノビニルモノマー及びモノビニル芳香族モノマーの混合物も使用し得る。
【0038】
適当な耐衝撃性改良剤は当技術分野で公知である。非限定例は、Hoefflinの米国特許第5859119号及びFreitagらの同第5126428号、並びにGaggarらの米国特許出願公開第20020111428号に記載されている。耐衝撃性改良剤は、グラフト若しくはコア−シェルゴムのような幾つかの異なるゴム状改良剤の1種又はこれらの改良剤2種以上の組合せからなることが多い。例としては、アクリルゴム、ASAゴム、ジエンゴム、オルガノシロキサンゴム、シリコーンゴム、EPDMゴム、SBS又はSEBSゴム、ABSゴム、MBSゴム、並びにグリシジルエステル系物質として公知の群の改良剤がある。
【0039】
用語「アクリルゴム改良剤」は、架橋又は部分的に架橋した(メタ)アクリレートゴム状コア相、好ましくはブチルアクリレートを有する多段コア−シェル共重合体改良剤を指すことができる。この架橋アクリル酸エステルコアに、アクリル系又はスチレン系樹脂、好ましくはメチルメタクリレート又はスチレンの外側シェルが結合しており、このシェルはゴム状コア相に相互侵入している。アクリロニトリル又は(メタ)アクリロニトリルのような少量の他のモノマーを樹脂シェル中に配合しても、適当な耐衝撃性改良剤が得られる。この相互侵入型網目構造は、樹脂相を構成するモノマーを、先に重合し架橋した(メタ)アクリレートゴムの存在下で重合し架橋するときに形成される。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態で、好ましいゴムは、ゴム状成分が約0℃未満、好ましくは約−40〜約−80℃のTを有するグラフト又はコア−シェル構造のものである。これらの物質は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)又はSAN(スチレン−アクリロニトリル)がグラフト化したポリオレフィン又はポリ(アルキルアクリレート)からなる。好ましくは、ゴム含有量は約40重量%以上、最も好ましくは約60〜約90重量%である。殊に、適当なゴムは、例えばParaloid(登録商標)EXL2600としてRohm & Haasから入手可能なタイプのブタジエンコア−シェルポリマーである。
【0041】
幾つかの実施形態では、耐衝撃性改良剤は、ブタジエン系ゴム状コアと、メチルメタクリレート単独又はこれとスチレンとの組合せから重合された第2段を有する2段ポリマーからなる。他の適当なゴムは、GE Specialty Chemicalsから入手可能なABSタイプのBlendex(登録商標)336及び415である。どちらのゴムもSBRゴムの耐衝撃性改良剤樹脂に基づくものである。
【0042】
これらの上記耐衝撃性改良剤は極めて好適であるようであるが、使用できる改良剤はその他多数存在し、ポリマー分野の当業者には公知である。一般に、個々の耐衝撃性改良剤の選択は様々な要因に依存する。例えば、コスト、入手容易性、室温〜低温衝撃特性、屈折率、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマー及び表面改質剤との適合性、並びにそのポリマー系に所望の全体的な光学的及び物理的性質である。約1.51〜約1.58の屈折率を有する耐衝撃性改良剤は、適度な透明性を有する場合使用し得る。使用する耐衝撃性改良剤の量はこれらの同じ要因の多くに依存し得る。必要とされる耐衝撃性の量は通常主要な要因である。幾つかの場合において、耐衝撃性改良剤は、組成物中に存在するとき、組成物の総重量を基準にして約1〜約30重量%の量で使用できる。
【0043】
本組成物はさらに添加剤を適宜含んでいてもよい。かかる添加剤としては、充填材、強化材、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤(殊に紫外光吸収剤)、γ−照射安定剤、可塑剤、着色剤、増量剤、帯電防止剤、触媒奪活剤、潤滑剤、離型剤、加工助剤、発泡剤、難燃剤、ドリップ抑制剤など、並びにこれらの混合物が挙げられる。かかる添加剤は当技術分野で公知であり、市販されている。組成物の使用目的に応じてかかる添加剤を選択し、その量を決定する方法は当業者には明らかである。
【0044】
組成物が多数の成分からなるものとして定義される場合、特に単一の化学物質が2以上の成分の定義を満たし得るとき、各成分は化学的に区別される。
【0045】
一実施形態では、本組成物(又はそれから製造される物品)は1種以上の以下の望ましい性質を示し得る。すなわち、3.2mmの厚さでASTM D1003に準拠して測定して70%以上、さらに具体的には80%以上の%透過率、3.2mmの厚さでASTM D1003に準拠して測定して10%以下、さらに具体的には6%以下の%ヘイズ、23℃でASTM D256に準拠して測定して約500〜約1000J/m、さらに具体的には600J/m以上〜約900J/mのノッチ付アイゾット衝撃強さ、ASTM D4812に準拠して23℃で測定して約1000〜約3000J/m、さらに具体的には約1500〜約2400J/m、さらに一段と具体的には約2000〜約2200J/mのノッチなしアイゾット衝撃強さ、ISO 10993−4:2002(E)並びに後記実施例10及び11の手順で測定して組成物に曝露された血液の血小板保持率(%)、すなわち、重量平均分子量約20000〜約30000原子質量単位のビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーからなる組成物に曝露された血液の血小板保持率(%)と比べて5%以上高く、さらに具体的には10%以上高く、さらに一段と具体的には20%以上高い血小板保持率である。血液適合性の客観的な指標である最後の性質に関して、「5%高い」、「10%高い」及び「20%高い」という用語は、30分間本発明の組成物に曝露された血液の血小板保持率%と、30分間上記ポリカーボネートホモポリマーに曝露された血液の血小板保持率%との絶対差をいう。例えば、比較例15と実施例10の実際のデータを用いて、本発明の組成物に曝露された血液の血小板保持率%が93.5%であり、ポリカーボネートホモポリマーに曝露された血液の血小板保持率%が73.4%である場合、本発明の組成物に曝露された血液の血小板保持率%はポリカーボネートホモポリマーに曝露された血液の血小板保持率%よりも20.1%高い(93.5−73.4)。
【0046】
一実施形態は、芳香族ポリカーボネート、ポリエステル−ポリシロキサンブロックコポリマー及び1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーからなる組成物であり、ここで、ポリカーボネートブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0047】
【化13】

式中、各A及びAは独立に単環式二価アリール基であり、Yは−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−及びC〜C18ヒドロカルビレンから選択される。また、ポリシロキサンブロックは次式の構造を有する。
【0048】
【化14】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルであり、各Rは独立にC〜C30ヒドロカルビレンであり、xは0又は1であり、Dは5〜約120である。
【0049】
もう1つ別の実施形態は、ビスフェノールAポリカーボネート約60〜約95重量%、ポリカプロラクトン−ポリ(ジメチルシロキサン)−ポリカプロラクトントリブロックコポリマー約0.1〜約10重量%、及び1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマー約5〜約40重量%からなる組成物であり、ここで、ポリカーボネートブロックは次式の構造の繰返し単位を含んでなる。
【0050】
【化15】

また、ポリシロキサンブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0051】
【化16】

式中、Dは約5〜約100である。
【0052】
別の実施形態は、ビスフェノールAポリカーボネート約70〜約90重量%、ポリカプロラクトン−ポリ(ジメチルシロキサン)−ポリカプロラクトントリブロックコポリマー約0.2〜約5重量%、及び1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマー約10〜約25重量%からなる組成物であり、ここで、ポリカーボネートブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0053】
【化17】

また、ポリシロキサンブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0054】
【化18】

式中、Dは約30〜約70である。
【0055】
別の実施形態は、ビスフェノールAポリカーボネート約75〜約85重量%、ポリカプロラクトン−ポリ(ジメチルシロキサン)−ポリカプロラクトントリブロックコポリマー約0.5〜約2重量%、及び1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマー約15〜約20重量%からなる組成物であり、ここで、ポリカーボネートブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0056】
【化19】

また、ポリシロキサンブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0057】
【化20】

式中、Dは約40〜約60である。
【0058】
別の実施形態は、1以上のポリシロキサンセグメントを含む表面改質剤を、1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーとブレンドして、均質ブレンドを形成することを含んでなる熱可塑性組成物の製造方法であり、ここで、ポリカーボネートブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0059】
【化21】

式中、R基の総数の約60〜100%は置換又は非置換の二価芳香族有機基であり、0〜約40%は二価脂肪族基又は二価脂環式基である。また、ポリシロキサンブロックは次式の構造の繰返し単位を含む。
【0060】
【化22】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルである。
【0061】
他の実施形態には、上記組成物のいずれかを含んでなる物品がある。例えば、この物品は、本組成物を含んでなる1以上の層を有するフィルム、シート、成形品、膜又は複合材からなり得る。本発明の組成物は、フィルム及びシート押出、射出成形、ガス支援射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形などの一般的な熱可塑性プロセスを用いて物品に変換することができる。フィルム及びシート押出プロセスとしては、溶融キャスティング、インフレーションフィルム押出及びカレンダリングを挙げることができる。共押出及び積層プロセスを用いて複合多層フィルム又はシートを形成してもよい。単層又は多層基材にさらに単層又は多層コーティングを設けて、耐擦過性、紫外光抵抗性、審美的魅力などの追加の性質を付与することができる。コーティングは、ロール塗り、スプレー、浸漬、刷毛塗り又は流し塗りのような標準的な塗工法で設けることができる。また、本発明のフィルム及びシートは、適当な溶媒中の本組成物の溶液又は懸濁液を基材、ベルト又はロール上にキャストした後、その溶媒を除去することによって製造することができる。
【0062】
配向フィルムは、インフレーションフィルム押出又は慣用の延伸技術を用いてキャスト又はカレンダーフィルムを熱変形温度の付近で延伸することによって製造することができる。例えば、多軸同時延伸には半径方向延伸パンタグラフを使用してもよいし、x−y方向延伸パンタグラフを用いて同時に又は順次二次元x−y方向に延伸できる。また、逐次一軸延伸セクションを有する装置、例えば、機械方向に延伸するための差動スピードロールのセクションと、横断方向に延伸するためのテンターフレームセクションとを備えた機械を使用して、一軸及び二軸延伸を達成することもできる。
【0063】
本発明の組成物は、熱可塑性ポリマーからなり第一の面と第二の面を有する第一のシートと、熱可塑性ポリマーからなり第一の面と第二の面を有する第二のシートとを含む多層シートに変換することができ、第一のシートの第一の面は複数のリブの第一の面上に配置されており、第二のシートの第一の面は複数のリブの第二の面上に配置されており、複数のリブの第一の面は複数のリブの第二の面に対向している。
【0064】
上記フィルム及びシートはさらに、限定されることはないが熱成形、真空成形、加圧成形、射出成形及び圧縮成形を始めとする成形及び成形プロセスで熱可塑的に加工処理して成形品にすることができる。また、多層成形品は、以下に記載するように、熱可塑性樹脂を単層又は多層のフィルム又はシート基材上に射出成形することによって成形することもできる。
1.適宜例えばスクリーン印刷又はトランスファー染料を用いて表面上に1以上の色を付けた単層又は多層の熱可塑性基材を準備する。
2.例えば基材を三次元形状に成形及びトリミングすることによって基材を金型の構造に合わせ、その基材の三次元形状に合致する表面を有する金型に基材を嵌め込むる
3.金型キャビティー中の基材の後ろに熱可塑性樹脂を注入して、(i)永久に結合した一体の三次元製品を生成させるか、又は(ii)パターン又は審美的効果をプリントされた基材から注入された樹脂に移行させ、プリント基材を取り出し、こうして審美的効果を成形樹脂に付与する。
【0065】
当業者には了解されるように、限定されることはないがヒートセット、テキスチャー化、エンボス加工、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理及び真空蒸着を始めとする一般的な硬化及び表面改質プロセスを上記物品にさらに適用して、表面外観を変え、また物品に追加の機能性を付与してもよい。
【0066】
本明細書に開示する範囲は全て両端を含み、それらの両端は互いに組み合わせることができる。
【実施例】
【0067】
以下の非限定例によって本発明をさらに例証する。
【0068】
比較例1〜5
これらの比較例では、比較的低レベルの表面改質剤を添加したときに、ポリカーボネート樹脂の望ましい高い透過率と低いヘイズが損なわれることを例証する。表面改質剤の量を変えて5種類の組成物を調製した。各組成物は、約30000AMUの重量平均分子量を有する第一のビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)と、約21800AMUの重量平均分子量を有する第二のビスフェノールAポリカーボネートとを含有していた。比較例1は表面改質剤を含有していなかった。比較例2〜4は、約22000AMUの総重量平均分子量と約44重量%のポリジメチルシロキサン含有量を有するポリカプロラクトン−ポリジメチルシロキサン−ポリカプロラクトントリブロックコポリマー(「LSLコポリマー」)を0.10〜1.0重量%含有していた。このLSLコポリマーはGoldschmidtからTEGOMER(登録商標)H−Si 6440Pとして入手した。全ての成分をブレンドし、押出機で溶融加工処理することによって組成物を調製した。ポリカーボネートの溶融加工処理のバレル温度は280℃であったが、260〜310℃の範囲とすることができる。射出成形で寸法8cm×10cm×0.32cmの試験片を製造した。%透過率及びヘイズはASTM D1003に準拠して厚さ3.2mm測定した。表面のケイ素含有量は化学分析用電子分光法(ESCA)で取込み角15°で測定した。結果は、試験片の表面から約2nmの深さのケイ素含有量で代表される。MPa単位で表す引張弾性率の値は、ASTM D638に準拠して23℃で測定した。J/m単位で表すノッチ付アイゾット衝撃強さ値は、ASTM D256に準拠して23℃で測定した。組成及び結果を表1に示す。成分量は全て重量部で示す。結果にみられる通り、少量のLSLをビスフェノールAポリカーボネートに添加すると、成形物品の表面上のケイ素含有量を増大させるという望ましい効果を有するが、%透過率が低下し、%ヘイズが増すという不都合な効果を有する。
【0069】
【表1】

実施例1〜6、比較例6
これらの実施例では、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーとシロキサン含有表面改質剤を含む組成物が、高い表面濃度のケイ素を呈しながら良好な光学的性質を維持することを例証する。主として表面改質剤の量とポリカーボネートホモポリマーの存否を変えて7種類の組成物を調製した。ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは、DeRudderらの米国特許出願第10/797418号の実施例2の手順に類似した手順で調製した。重量平均分子量は約23500AMU、総ポリジメチルシロキサン含有量は6重量%、ポリジメチルシロキサンセグメントの平均鎖長は約50の繰返し単位であった。組成及び性質をまとめて表2に示す。結果にみられる通り、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーとLSLトリブロックコポリマーからなる実施例1〜5は、LSLを含まない比較例6と類似の光学的性質を示した。実施例5〜6は、ポリカーボネートホモポリマーとLSLのブレンドと比較して、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー、カーボネートホモポリマー及びLSLからなる組成物が、光学的性質を損なわずにLSLを格段に高い濃度にできることを例証している。
【0070】
【表2】

実施例7、比較例7〜8
これらの実施例では、表面改質剤LSLが、不透明ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサンコポリマーから調製された組成物中で光学的透明性を引き起こすことができないことを例証する。主としてポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーのタイプと量及び表面改質剤の量を変えて3種類の組成物を調製した。表3に「透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー」として示す物質は上記実施例で使用したコポリマーと同じである。すなわち、重量平均分子量約23500AMU、総ポリジメチルシロキサン含有量6重量%、ポリジメチルシロキサンセグメントの鎖長が約50単位であった。表3に「不透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー」として示す物質は、重量平均分子量約30000、総ポリジメチルシロキサン含有量20重量%、ポリジメチルシロキサンセグメントの鎖長が約50単位のものである。組成及び光学的性質を表3に示す。結果にみられる通り、不透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを含む組成物に1%のLSLを添加しても光学的性質は改良されなかった(比較例8対比較例7)。これらの結果は、ポリカーボネートホモポリマー、透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー及び1%のLSLのブレンドが優れた光学的性質を有していたことも示している。
【0071】
【表3】

実施例8、比較例9〜11
2通りの血液適合性応答、つまり組成物と1時間インキュベートした後の血小板数の変化及び白血球活性の強度の変化を4種類の熱可塑性組成物で試験した。装置及び試験手順は、C.H.Gemmellら、J.Lab.Clin.Med.1995,125(2),276〜287に詳細に記載されている。試験手順の概略は以下の通りである。各熱可塑性組成物を、長さ25cm×内径1.57mmの試料管で試験した。Silasticチューブを用いて試験物質を装置に取り付けた。以下の工程で試料を調製した。
1.試験に先立って試料管を37℃で30分間暖める。
2.最初の1mLを捨てた後、予め5単位/mLのヘパリン加えておいた注射器にボランティアからの血液を採取する。
3.低剪断装置の1つのアームに物質を取り付ける。
4.1mLの注射器を用い、ルーズ端を介して、450μLの血液をSilastic継ぎ手を通して管に注入する。ルーズ端を低剪断装置に取り付け、37℃で1時間穏やかに振動させる。
5.実験の間、37℃で静止全血液試料(400μL)を密封した遠心管内に保持する。
6.実験の終わりに、ろ過空気を用いて血液を微小遠心管中に排出させる。
7.30μLの血液を各試料から微小遠心管に移し、3μLの血小板アゴニスト、すなわちトロンビンペプチド(セリン−フェニルアラニン−ロイシン−ロイシン−アルギニン−アスパラギン、SFLLRN)を加える。管を37℃のインキュベーターに20分間入れて血小板を活性化する。
8.即座に血液試料をフローサイトメトリー用に処理する(後述)。
9.注射器を用いて、全ての血液が洗い落とされるまで試験セグメントをリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)でフラッシングする。
【0072】
フローサイトメトリーは以下の工程を用いて実施した。
1.カルシウムとマグネシウムを含有するPBSを用いて、フローサイトメトリー管を調製して血液試料を受容する。
【0073】
血小板分析には2組のチューブが必要である。
(チューブA)50μLのPBS+2μLのヒトCD41aに対するフルオレセインイソチオシアネート結合モノクローナル抗体(FITC−CD41a、αIIb/IIIa)+3μLのヒトCD62Pに対するフィコエリスリン結合モノクローナル抗体(PE−CD62P)溶液(希釈率1:10、PBS中)(α P−セレクチン)。
(チューブA′)SF−活性化試料からの血液の5μLのアリコートを受容する以外はチューブAと同じ。
【0074】
白血球CD11b分析には2組のチューブが必要である。
(チューブB)50μLのPBS+5μLのヒトCD11bに対するフルオレセインイソチオシアネート結合モノクローナル抗体(FITC−CD11b)+1μLのヒトCD45に対するフィコエリスリン結合モノクローナル抗体(PE−CD45)。
(チューブB′)Bプラス6μLのホルバール(phorbal)12−ミリステート13−アセテート(PMA)溶液(希釈率1:10、PBS中)。
2.白血球分析用チューブ(すなわち、B及びB′)の各々に20μLの血液を加え、血小板分析用チューブ(すなわち、A)に5μLの血液を加える。SF−活性化試料からの5μLの血液をチューブA′に加える。残りの血液試料約300μLに、細胞計数に使用する200mMのEDTAを6μL加える。
3.チューブを20分間室温でインキュベートする。
4.チューブA及びA′だけに、各200μlのPBS及び2%のパラホルムアルデヒドを加え、即座に、分析するまで4℃で保存する。
5.白血球分析のために(チューブB及びB′)、100μLのOptilyse C RBC溶解用溶液(溶解する血液の量の5倍)を加える。溶解用緩衝液を各チューブに加えた直後軽くボルテックス混合する。
6.溶解が完了する(すなわち、曇りのない透明な赤い溶液が得られる)まで室温で10分間インキュベートする。
7.2分間1300rpm、室温で遠心する。
8.素早くチューブを逆さにして溶解用溶液を捨てる。
9.赤いペレットが観察される場合には、工程5〜7を繰り返す。
10.各100μLのPBS及び2%パラホルムアルデヒドを加える。
11.分析まで4℃で保存する。
【0075】
各血液試料について、血小板及び白血球の計数を多パラメーターの自動Coulter AcT diff 2血液分析機に記録した。
【0076】
比較例9及び実施例8で用いた透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーは、ポリジメチルシロキサンセグメントとして鎖長約50単位のポリシロキサンを6重量%含有していた。これは、DeRudderらの米国特許出願第10/797418号の実施例2の手順に類似の手順で調製した。比較例10の組成物は、改良された血液適合性を示すものとして上市されている代表的な市販の物質である。これは、BASFからTERLUX 2802として得られるメチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(MABS)を99重量部と、Degussa Goldschmidt CompositionsのTEGOMER(登録商標)HSi 6440Pを1%含んでいた。その性質をまとめて表4に示す。平均と標準偏差で表す血小板計数値は、組成物当たり5つの試料に基づいている。試料を熱可塑性組成物と共にインキュベートしなかった対照は、血小板計数値が(204±29)×10/mLであった。熱可塑性組成物の場合、血小板数の値が高い方が望ましい。結果にみられる通り、比較例9、実施例8及び比較例11は、統計的に区別が付かない血小板数を有しており、比較例10の血小板数よりも低かった(劣っていた)。血小板計数値は熱可塑性組成物の総シロキサン含有量と関連付けて説明することができなかった。白血球活性化の結果は任意の蛍光強度単位で表されている。値が低い方が望ましい。この試験で、対照(熱可塑性物質なし)は13±6の値を有していた。結果にみられる通り、各々ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーを含有する比較例9及び実施例8は、比較例10及び11よりも低い(優れた)白血球活性化値を示していた。
【0077】
【表4】

実施例9、比較例13〜14
これらの実施例では、低下したポリシロキサンセグメントの長さを有するポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーを使用することによって、血液適合性を改良することができ、その結果、血液適合性として上市されている市販組成物に匹敵する血液適合性を示す組成物が得られることを例証する。これらの実験では、上記した血小板保持率及び白血球活性化の手順を使用した。比較例13は上記比較例10と同じであり、改良された血液適合性を示すものとして上市されている代表的な市販材料である。比較例14及び実施例9は、主として、総ポリシロキサン含有量が3重量%で、ポリジメチルシロキサンセグメントの鎖長が約10単位であるポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーからなっていた。比較例14は全体がこのコポリマーからなっており、一方実施例9はさらに1重量%のポリカプロラクトン−ポリシロキサン−ポリカプロラクトントリブロックコポリマーを含んでいた。組成及び性質をまとめて表5に示す。血小板数対照(熱可塑性物質なし)は(225±50)×10/mLの血小板計数値を示した。血小板数の結果にみられる通り、3種の組成物は全て統計的に区別が付かない性能を示した。言い換えると、短いシロキサン−セグメントのポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーを有する組成物は、血液適合性として上市されている代表的な市販熱可塑性ブレンドである比較例13の組成物と同様に機能した。白血球活性化試験で、対照は12±3の値を示した。白血球活性化の結果にみられる通り、各々短いシロキサン−セグメントのポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーを有する比較例14と実施例9の組成物は、比較例13の組成物よりも良好に機能した。総シロキサンが血液適合性性能の予測指標でないということは予想外のことであった。
【0078】
【表5】

実施例10〜11、比較例15〜16
これらの実験では、表面改質剤をポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーに添加することによって、組成物の血液適合性を改良することができるということを示す。上記と異なる手順を用いて4種の組成物の血小板数に及ぼす効果を試験した。この手順は、最初に血液を試験物質に曝露し、次に血小板数を測定するという2つの工程で実施した。血液を試験物質に曝露するために、ヒトボランティアの血液を抗凝血剤のクエン酸リン酸デキストロース中に採取した。クエン酸リン酸デキストロース溶液は、0.299gのクエン酸無水物USP、2.63gのクエン酸ナトリウム無水物USP、0.222gの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物USP、2.90gのデキストロース、0.027gのアデニンUSP及び100mLの水を含有する。49mLのこの緩衝液を使用して350mLの血液を採取した。50.8mm×76.2mm×3.175mm(2インチ×3インチ×0.125インチ)の寸法を有する成形物品としての試験物質をポリスチレン製シャーレのウェルに入れ、リン酸塩緩衝化生理食塩水(これは試験物質を血液に曝露する前に除去した)中に浸漬した。各ウェルに25mLの血液を加え、即座に細胞計数用に0.5mLの試料を採取した。残りの24.5mLの血液を、35±2℃にサーモスタット制御されたEnvironシェーカーを用いて75±5回転/分で撹拌しながら30分間試験物質に曝露した。各物質に対して3つの試料を試験した。参照用に3つの空のポリスチレン製フラスコを血液に曝露した。Roche Diagnostics、France製のCOBAS MINOS Vet Automated Haematology Analyzerを用いて初期及び30分の試料の計数を検出することによって計数低下を分析した。この装置は、測定前に追跡可能な標準的な基準対照、Liquichek 16、トリレベル(trilevel)対照(Bio−Rad、USA)を用いて校正した。血小板保持率(%)は次式を用いて計算した。
血小板保持率(%)=(血小板の最終濃度×100)/(血小板の初期濃度)。
【0079】
比較例15は、ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、少量の離型剤及びホスファイト系安定剤とからなっていた。比較例16は、約50単位の鎖長を有するセグメントとして17.5%の総シロキサンを含有するポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー、ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマー、ホスファイト系安定剤及び水を含んでいた。実施例10と11は同じであり、各々が主要量のビスフェノールAポリカーボネートを含有し、加えて透明ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー、ホスファイト系安定剤及びGoldschmidtからTEGOMER(登録商標)H−Si 6440Pとして入手した1重量%のポリカプロラクトン−ポリシロキサン−ポリカプロラクトントリブロックコポリマーを含有していた。組成及び性質をまとめて表6に示す。結果にみられる通り、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーとポリカプロラクトン−ポリシロキサン−ポリカプロラクトントリブロックコポリマーとを有する実施例10と11の血小板保持率は、比較例15及び16よりも大きかった(優れていた)。これらの結果は、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを含む組成物に、ポリカプロラクトン−ポリシロキサン−ポリカプロラクトントリブロックコポリマーのような表面改質剤を添加することによって、組成物の血液適合性を改良できることを示している。
【0080】
【表6】

実施例12〜14、比較例17〜18
これらの実験では表面改質剤の変化を例証する。対照はポリカーボネートホモポリマー(比較例17)及びポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー(比較例18)であった。ポリカーボネートホモポリマーは21800AMUの重量平均分子量を有するビスフェノールAポリカーボネートであった。ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーは、シロキサンセグメントとして約50単位の鎖長を有するシロキサンを6重量%有していた。実施例12〜14は各々99重量%のポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーと1重量%の表面改質剤を含有していた。実施例12で、表面改質剤は、GoldschmidtからTEGOMER(登録商標)H−Si 6440Pとして入手したポリカプロラクトン−ポリシロキサン−ポリカプロラクトントリブロックコポリマーであった。実施例13で、表面改質剤は、総シロキサン含有量が11重量%で、ポリエチレンオキシドセグメントの数平均分子量が900AMUの水溶性ポリエチレンオキシド−ポリジメチルシロキサン−ポリエチレンオキシドトリブロックコポリマーであった。これはGE SiliconesからSF1388として入手した。実施例14で、表面改質剤は次式の構造を有していた。
【0081】
【化23】

式中、7.5は1分子当たりのエチレンオキシド単位の数の統計的平均を表す。これはGE SiliconesからSilwet L−77(登録商標)界面活性剤として入手した。%血小板数保持率は実施例10及び11の手順で決定した。組成及び結果をまとめて表7に示す。結果は、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーと表面改質剤を含有する各組成物が、ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマー単独又はポリカーボネートホモポリマーよりも高い平均%血小板保持率を示すことを示している。
【0082】
【表7】

好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者には理解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であり、その要素の代わりに均等物を使用し得る。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく個々の状況又は材料を本発明の教示に合わせるべく多くの修正を施すことができる。そのため、本発明は、本発明を実施する上での最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されることはなく、本発明は特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を包含するものである。
【0083】
引用した特許、特許出願その他の文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0084】
(特に特許請求の範囲で)本発明を説明する上で使用した単数形態は、特に断らない限り、単数形態と複数形態の両方を包含するものとする。さらに、本明細書で用いる「第一」、「第二」などの用語は順序、量又は重要性を意味するものではなく、ある要素を他の要素と区別するためのものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のポリカーボネートブロックと1以上のポリシロキサンブロックを含んでなるポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマー、及び
1以上のポリシロキサンセグメントを含んでなる表面改質剤
を含んでなる組成物であって、
ポリカーボネートブロックが次式の構造の繰返し単位を含んでなり、
【化1】

ポリシロキサンブロックが次式の構造の繰返し単位を含んでなる、組成物。
【化2】

式中、R基の総数の約60〜100%は置換又は非置換の二価芳香族有機基であり、0〜約40%は二価脂肪族基又は二価脂環式基であり、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルである。
【請求項2】
ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーが実質的にポリカーボネートブロックとポリシロキサンブロックからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーのポリシロキサンブロックが次式の構造を有する、請求項1記載の組成物。
【化3】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルであり、各Rは独立にC〜C30ヒドロカルビレンであり、xは0又は1であり、Dは約5〜約120である。
【請求項4】
各xが0であり、各Rが独立に次式の構造を有する、請求項3記載の組成物。
【化4】

式中、各Rは独立にハロゲン、C〜Cヒドロカルビル又はC〜Cヒドロカルビルオキシであり、mは0〜4であり、nは2〜約12である。
【請求項5】
表面改質剤が、1以上のポリシロキサンセグメントに加えて、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル及びポリアリーレートから選択される1以上のセグメントを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
表面改質剤がポリエステル−ポリシロキサンブロックコポリマーからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
さらに、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステル、ポリアリーレート及びこれらの混合物から選択されるポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーのポリシロキサンブロックが以下の式の構造を有しており、表面改質剤がポリエステル−ポリシロキサンブロックコポリマーからなり、当該組成物がさらに芳香族ポリカーボネートを含む、請求項1記載の組成物。
【化5】

式中、各Rは独立にC〜C12ヒドロカルビルであり、各Rは独立にC〜C30ヒドロカルビレンであり、xは0又は1であり、Dは5〜約120である。
【請求項9】
ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーのポリカーボネートブロックが次式の構造の繰返し単位を含んでおり、
【化6】

ポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーのポリシロキサンブロックが次式の構造の繰返し単位を含んでおり(式中、Dは約5〜約100である)、
【化7】

当該組成物が約5〜約99重量%のポリカーボネート−ポリシロキサンブロックコポリマーを含んでおり、
表面改質剤がポリカプロラクトン−ポリ(ジメチルシロキサン)−ポリカプロラクトントリブロックコポリマーからなり、
当該組成物が約0.1〜約10重量%の表面改質剤を含んでおり、
当該組成物がさらに約1〜約95重量%のビスフェノールAポリカーボネートを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の組成物を含んでなる物品。

【公開番号】特開2013−49872(P2013−49872A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−268394(P2012−268394)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2006−539525(P2006−539525)の分割
【原出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】