説明

透明体の処理工程における管理システム

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示パネルに使用されるガラス基板のような透明体を複数の処理工程にて処理する際に、各工程毎に透明体を管理するシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示パネルは、ガラス基板にTFT(薄膜トランジスタ)がマトリクス状に設けられたTFT基板と、ガラス基板にカラーフィルター(CF)が設けられたCF基板とを貼り合わせて、それらの間に液晶を封止することにより組み立てられている。TFT基板およびCF基板は、相互に貼り合わせるまでに、洗浄、配向膜形成、ラビング処理等の複数の処理工程にて処理する必要がある。
【0003】TFT基板およびCF基板の各処理工程では、TFT基板およびCF基板を1枚ずつしか処理できない枚葉処理工程と、TFT基板およびCF基板を複数をまとめて処理することができるバッチ処理工程とが混在している。また、TFT基板およびCF基板を1枚ずつ処理する工程において、TFT基板とCF基板とによって、あるいはTFT基板の種類によっては処理内容が異なることがある。このために、TFT基板およびCF基板の処理工程においては、各TFT基板およびCF基板をホストコンピュータによって、統括的に制御および管理することが行われている(CIM)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】CIMでは、TFT基板およびCF基板に対する各処理工程における処理の内容については、ホストコンピュータによって管理されている。このために、各処理工程において、それぞれの基板がどのような処理が必要かは、ホストコンピュータにアクセスすることにより明らかになる。しかし、各処理工程において、各基板に所定の処理が確実に実施されたかどうかは不明である。このために、所定の処理が実施されていない不良品であっても、その後の工程にて各処理が実施されることになる。その結果、不良品であるにもかかわらず、各処理工程にて処理が実施されることになり、処理工程において多大な作業ロスが発生するという問題がある。
【0005】
【0006】本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的は、ガラス基板等の透明体を複数の処理工程にて順次処理する際に、各処理工程にて透明体が確実に処理されていることを容易に認識することができる透明体の処理工程における管理システムを提供することにある。
【0007】
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の透明体の処理工程における管理システムは、透明体を複数の処理工程にて順次処理するに際し、処理を開始する前に、透明体に対して金属板を合わせた状態で透明体を介して金属板にレーザービームを照射し、金属板の金属成分を透明体に付着させることにより、各処理工程に関する情報を有するマーキングを形成する工程と、各処理を終えた後に、透明体に形成されたマーキングにレーザービームを照射して、その処理に関する情報を消去する工程と、を包含することを特徴とする。
【0009】前記透明体は、液晶表示パネルに使用されるガラス基板である。
【0010】前記マーキングは、情報を2次元的に表現された2次元コードである。
【0011】
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】図1は、本発明の透明体の処理工程における管理システムの実施の形態の一例として、液晶表示パネルに使用されるガラス基板の組立工程を示す模式図である。この液晶表示パネルに使用されるガラス基板の組立工程では、ガラス基板に多数のTFT(薄膜トランジスタ)がマトリクス状に設けられたTFT基板と、ガラス基板にカラーフィルターが設けられたCF(カラーフィルター)基板とが、順次、搬入される。そして、各ガラス基板10(TFT基板およびCF基板の両方を含む)が、順次、各処理工程へと移送されて、各処理工程にて所定の処理が実施される。
【0014】搬入された各ガラス基板10は、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に、金属板25を介して載置されて、レーザービーム照射装置20によって、端部にマーキングが形成されるようになっている。
【0015】図2は、レーザービーム照射装置20の概略構成図である。このレーザービーム照射装置20は、コントローラー22によって制御されるYAGレーザービーム発振器21と、YAGレーザービーム発振器21から発振されるレーザービームを集光状態で走査するヘッド部23とを有している。
【0016】YAGレーザービーム発振器21は、例えば、出力50Wのレーザービームを発振するようになっており、YAGレーザー発振器21から発振されたレーザービームは、ヘッド部23に照射されている。ヘッド部23は、カルバノメーターを内蔵しており、YAGレーザー発振器21から発振されたレーザービームを、ヘッド部23の下方に配置された受け台24上に集光して、2次元方向に走査するようになっている。
【0017】ヘッド部23の下方に配置された受け台24上には、金属板25を介して、所定の処理が実施される前のガラス基板10が載置される。受け台24上に設けられた金属板25は、化学的に安定なクロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、真鍮等の銅合金、あるいは、上記各種金属をガラス基板10上に薄膜形成した金属薄膜等によって構成されており、ヘッド部23は、レーザービームを、金属板25上に載置されたガラス基板10を通して、金属板25に集光した状態で、金属板25の表面を2次元方向に走査させるようになっている。
【0018】金属板25は、レーザービームが照射されることにより高温になり、金属板25の表面から金属成分が昇華する。昇華した金属成分は、ガラス基板10の表面(下面)に付着する。ヘッド部23は、金属板25の表面に2次元方向にレーザービームを走査しており、金属板25の表面の金属成分を、文字、パターン等の所定の形状に昇華させている。これにより、ガラス基板10の表面(下面)には、所定形状のマーキングが形成される。
【0019】ガラス基板10の表面に形成されるマーキングは、例えば、情報を線的に表現したバーコードのような1次元的なものであってもよく、また、情報を面的に表現した2次元コードであってもよい。形成されたマーキングには、ガラス基板10が、TFT基板であるかCF基板であるか、どのようなタイプであるか等のガラス基板10に関する情報と、1台のローカルコンピューター50が管理可能な処理工程の範囲内の各工程で実施されるそれの処理に関する情報とが含まれている。ローカルコンピューター50は、一定の処理工程の範囲毎に設置されている。各ローカルコンピューター50は、液晶表示パネルの製造工程を全て管理するホストコンピューター60と接続されており、ホストコンピューターとの間で、データの交換および処理を行う。
【0020】このようにして、連続して搬送される各ガラス基板10に、所定のマーキングが順次形成されると、各ガラス基板10は、順次、第1洗浄工程31へと搬送される。そして、各ガラス基板10は、第1洗浄工程31にて洗浄される。この工程の管理は、ローカルコンピューター50によって行われる。
【0021】第1洗浄工程31にて洗浄された各ガラス基板10は、図1に示すように、順次、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に搬送されて、レーザービーム照射装置20のヘッド部23の下方に位置される。この場合、受け台24上には金属板は載置されていない。ヘッド部23は、各ガラス基板10のマーキングに対向状態とされて、マーキングに書き込まれた第1洗浄工程31に関する情報に、レーザービームが照射される。これにより、マーキングにおける第1洗浄工程31に関する情報である金属成分は昇華して、ガラス基板10表面から遊離した状態になり、第1洗浄工程31に関する情報のみがガラス基板10のマーキングから消去される。
【0022】遊離した金属成分は、排気システムによってクリーンルームから排出されるようになっており、クリーンルームは、遊離した金属成分によって汚染されないようになっている。他の工程におけるレーザービームによりマーキングを消去する場合にも、排気システムによって、遊離した金属成分がクリーンルームから排出されるようになっている。
【0023】次に、ガラス基板10は、マーキングを読み取る読み取り装置41の下方に位置されて、マーキングに書き込まれたガラス基板10に関する情報を読み取り、ガラス基板10がTFT基板かCF基板かを確認する。そして、TFT基板かCF基板であるかを確認されたガラス基板10は、順次、配向膜形成工程32へと搬送される。このとき、配向膜形成工程32では、読み取り装置41にて読み取られた情報に基づいて、搬送されるガラス基板10がTFT基板かCF基板かを確認し、TFT基板およびCF基板によって、異なる配向膜のパターンを形成する。
【0024】このようにして、TFT基板およびCF基板に基づいて、所定のパターンの配向膜が形成されたガラス基板10は、順次、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に搬送されて、レーザービーム照射装置20のヘッド部23の下方に位置される。そして、ヘッド部23から照射されるレーザービームによって、各ガラス基板10のマーキングに書き込まれた配向膜形成工程32に関する情報のみが消去される。
【0025】配向膜形成工程に関する情報が消去された各ガラス基板10は、順次、カセット42内に収納される。カセット42内に収納される各ガラス基板10は、TFT基板およびCF基板が混在した状態になっている。そして、各ガラス基板10を収納したカセット42は、焼成工程33の炉内へと搬送されて、200℃程度の高温にて、一括して焼成される。
【0026】焼成工程33にて焼成された各ガラス基板10は、順次、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に搬送されて、レーザービーム照射装置20のヘッド部23の下方に位置される。そして、ヘッド部23から照射されるレーザービームによって、各ガラス基板10のマーキングに書き込まれた焼成工程33に関する情報のみが消去される。
【0027】次いで、各ガラス基板10は、マーキングを読み取る読み取り装置41の下方に位置されて、マーキングに書き込まれたガラス基板10に関する情報を読み取り、ガラス基板10がTFT基板かCF基板かを確認する。そして、TFT基板かCF基板かを確認されたガラス基板10は、順次、ラビング工程34へと搬送される。ラビング工程34では、読み取り装置41にて読み取られた情報に基づいて、搬送されるガラス基板10がTFT基板かCF基板かを確認し、TFT基板およびCF基板によって配向膜を異なる角度でラビングする。
【0028】TFT基板およびCF基板に基づいて所定角度に配向膜がラビングされたガラス基板10は、順次、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に搬送されて、レーザービーム照射装置20におけるヘッド部23の下方に位置される。そして、ヘッド部23から照射されるレーザービームによって、各ガラス基板10のマーキングに書き込まれたラビング工程34に関する情報のみが消去される。
【0029】ラビング工程34に関する情報が消去された各ガラス基板10は、順次、カセット42内に収納される。カセット42内に収納される各ガラス基板10は、TFT基板およびCF基板が混在した状態になっている。そして、各ガラス基板10を収納したカセット42は、第2洗浄工程35へと搬送されて、第2洗浄工程にて、各ガラス基板10は、ラビング工程34にて付着した塵埃を、一括して除去される。
【0030】第2洗浄工程35にて洗浄された各ガラス基板10は、カセット42から順次取り出されて、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に搬送され、レーザービーム照射装置20のヘッド部23の下方に位置される。そして、ヘッド部23から照射されるレーザービームによって、各ガラス基板10のマーキングに書き込まれた第2洗浄工程35に関する情報のみが消去される。
【0031】次いで、各ガラス基板10は、マーキングを読み取る読み取り装置41の下方に配置されて、マーキングに書き込まれたガラス基板10に関する情報を読み取り、ガラス基板10がTFT基板かCF基板かを確認する。そして、TFT基板かCF基板かを確認されたガラス基板10は、TFT基板の場合には、コモン電極形成工程36へ搬送されて、コモン転移塗布装置にてコモン電極が形成され、CF基板の場合には、シール剤印刷工程37へと搬送されて、コモン転移塗布装置にてシール剤が印刷される。
【0032】TFT基板およびCF基板に基づいてコモン電極形成工程36またはシール剤印刷工程37にて処理されたガラス基板10は、順次、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に搬送されて、レーザービーム照射装置20のヘッド部23の下方に位置される。そして、ヘッド部23から照射されるレーザービームによって、各ガラス基板10のマーキングに書き込まれたコモン電極形成工程36またはシール剤印刷工程37に関する情報のみが消去される。
【0033】次に、ガラス基板10は、マーキングを読み取る読み取り装置41の下方に位置されて、マーキングに書き込まれたガラス基板10に関する情報を読み取り、ガラス基板10がTFT基板かCF基板であるかの情報を読み取る。そして、TFT基板かCF基板かを確認されたガラス基板10は、TFT基板の場合には、スペーサー塗布工程38へと搬送され、CF基板の場合にはシール仮焼き工程39へと搬送される。スペーサー塗布工程38へ搬送されたTFT基板は、数ミクロンのスペーサーが塗布され、シール仮焼き工程39へ搬送されたCF基板は、加熱装置等によってシール剤が仮焼きされる。
【0034】TFT基板およびCF基板に基づいてスペーサー塗布工程38またはシール仮焼き工程39にて処理されたガラス基板10は、順次、レーザービーム照射装置20が配置された受け台24上に搬送されて、レーザービーム照射装置20のヘッド部23の下方に位置される。そして、ヘッド部23から照射されるレーザービームによって、各ガラス基板10のマーキングに書き込まれたスペーサー塗布工程38またはシール仮焼き工程39に関する情報のみが消去される。
【0035】次いで、各ガラス基板10は、マーキングを読み取る読み取り装置41の下方に位置されて、マーキングに書き込まれた情報を読み取る。このとき、各ガラス基板10が、全ての処理工程にて処理されていることを、各処理工程に関する情報が消去されていることによって確認するとともに、各ガラス基板10がTFT基板かCF基板かも確認される。そして、いずれかの処理工程に関する情報が消去されていない場合には、そのガラス基板10を不良品として排除し、全ての処理工程にて処理が実施されているガラス基板10が、順次、貼り合わせ工程40へと搬送される。貼り合わせ工程40では、読み取り装置41にて読み取られた情報に基づいて、搬送されるガラス基板10がTFT基板かCF基板かを判定し、TFT基板とCF基板とが相互に貼り合わされる。以上の各工程を含む組立工程は、別のローカルコンピューターによって管理されるようになっている。
【0036】その後、このようにして貼り合わされたTFT基板とCF基板との間に、液晶が封入されて封止され、液晶表示パネルとされる。
【0037】なお、上記実施例では、液晶表示パネルの組立工程におけるガラス板の管理システムについて説明したが、本発明は、液晶表示パネルのTFT基板の製造工程に限らず、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)液晶表示パネルの製造工程、プラズマ表示装置の製造工程、ガラス管ランプの製造工程、CRTの製造工程のようにガラス板等の透明体の処理工程において適用することができる。また、上記実施例では、マーキングにレーザービームを照射して、情報を消去する構成であったが、必要であれば、処理が完了したガラス板を金属板上に載置してレーザービームを照射することにより、新たな処理内容を情報として書き込むようにしてもよい。
【0038】また、このようにレーザービームによって情報を書き込んで消去する技術によれば、例えば小さなガラス板によってIDタグを作ることにより、焼付工程、塗装工程、食品の熱処理工程等の高温や薬品が使用される条件のきびしい工程の管理システムにも適用できる。
【0039】
【発明の効果】本発明の透明体の処理工程における管理システムは、このように、レーザービームの照射によって書き込まれた情報を、レーザービームの照射によって消去することができるために、各処理工程における処理の情報を確実に捉えることができ、不良品等の排除等が容易に行える
【0040】また、各処理工程における処理の内容等が、ローカルコンピューターによって管理することができるために、CIMにおけるホストコンピューターが巨大化することを防止できるとともに、ローカルコンピューターによって、各処理工程をより精細に管理することができる。さらに、ホストコンピューターと各ローカルコンピューターとの間にて通信確認することにより、総合的にCIMが小型化されてローコストで構成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明体の処理工程における管理システムの実施の形態の一例として、液晶表示パネルの組立工程における管理システムの概略を示す模式図である。
【図2】その管理システムに使用されるレーザービーム照射装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 ガラス基板
20 レーザービーム照射装置
21 レーザービーム発振器
23 ヘッド部
24 受け台
25 金属板
41 読み取り装置
50 ローカルコンピューター
60 ホストコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明体を複数の処理工程にて順次処理するに際し、処理を開始する前に、透明体に対して金属板を合わせた状態で透明体を介して金属板にレーザービームを照射し、金属板の金属成分を透明体に付着させることにより、各処理工程に関する情報を有するマーキングを形成する工程と、各処理を終えた後に、透明体に形成されたマーキングにレーザービームを照射して、その処理に関する情報を消去する工程と、を包含することを特徴とする透明体の処理工程における管理システム。
【請求項2】 前記透明体は、液晶表示パネルに使用されるガラス基板である請求項1に記載の透明体の処理工程における管理システム。
【請求項3】 前記マーキングは、情報を2次元的に表現された2次元コードである請求項1に記載の透明体の処理工程における管理システム。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【特許番号】特許第3188158号(P3188158)
【登録日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【発行日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−225490
【出願日】平成7年9月1日(1995.9.1)
【公開番号】特開平9−68682
【公開日】平成9年3月11日(1997.3.11)
【審査請求日】平成11年2月9日(1999.2.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(591072569)シャープマニファクチャリングシステム株式会社 (17)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−224588(JP,A)
【文献】特開 平7−191292(JP,A)
【文献】特開 平5−309552(JP,A)
【文献】実開 平7−36130(JP,U)