説明

透明体の検出方法及び検出装置

【課題】 透明なプラスチックフィルムに封入された無色のコンタクトレンズや透明体の有無を確実に検出する方法と装置を提供する。
【解決手段】 コンタクトレンズは、眼を有害な紫外線から保護するために、紫外線吸収剤を含むものが多いので、紫外線を発する照明ユニット2を用いて、コンタクトレンズのパッケージ1に照明をあて、紫外線を検知するカメラ3で撮像してパーソナルコンピュータ4で画像処理を行う。コンタクトレンズは紫外線を吸収し、コンタクトレンズが収納されていないパッケージとは、画像に明確な差が生じるので、コンタクトレンズの有無の検出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズに代表される透明体の検出方法及びそれに用いられる検出装置に関わり、特に高分子材料からなる透明フィルムに、保存液とともに封入された形態のコンタクトレンズの検出方法及び検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近視、遠視、乱視などの視力の矯正においては、眼鏡が用いられている一方で、コンタクトレンズも多用されている。コンタクトレンズは、眼鏡に比較すると、眼球の角膜の上に直接装着することから、像の歪みや大きさの変化が少ないという特長がある。
【003】
また、左右の視力が極端に異なる場合などでは、眼鏡を用いた矯正では、個人差はあるものの、頭痛や眼精疲労が起こるため、長時間使用できないが、このような場合はコンタクトレンズの使用が効果的である。さらに、コンタクトレンズでは、前記のように角膜に直接装着するため、裸眼と変わらない視界が得られ、レンズ自体が小さいことから、度数に関わらず、厚さが変わらない他、眼鏡のようにずり落ちたり、結露で曇ったりすることがない。
【0004】
その他に、眼鏡を装着した場合のような容姿の変化がなく、殊に女性においては、美容・美観上の利点から利用することもある。また、美観上の効果から、カラーコンタクトレンズも用いられている。
【0005】
コンタクトレンズには、大別してハードレンズとソフトレンズがあり、ソフトレンズは、材料としてポリヒドロキシエチルメタアクリレートやポリビニルピロリドンが用いられ、字義通り柔軟で可撓性を有するので、装着時の違和感がハードレンズよりも少ない。その反面、細菌が繁殖し易いので、定期的な洗浄や消毒が必要となる。
【0006】
このため、1日ないし1週間使用して破棄する、使い捨てタイプのコンタクトレンズが多用されている。このようなレンズの流通における包装形態は、ポリオレフィンのような透明な高分子材料のフィルムからなり、生理食塩水のような保護液を充填したパッケージに封入するのが一般的である。
【0007】
ここで問題になるのは、コンタクトレンズが確実にパッケージに封入されているかを確認する方法である。一般に透明な液体中に透明な物体が存在し、当該液体と当該物体の屈折率に大きな差がない場合では、界面における光の反射や散乱が起こり難いので、目視では存在の判別が困難であるのが理由の一つである。
【0008】
ケースに収納されたコンタクトレンズの存在の有無、存在枚数、レンズの種類を検知する方法として特許文献1には、可視光を照射して反射光の色度座標を算出し、予め準備されたデータと照合することによって、レンズの有無などを検知する方法が開示されている。
この方法によれば、前記事項の検知を高精度で行うことが可能とされているが、対象となるコンタクトレンズが着色されたものに限定され、通常の無色のコンタクトレンズには適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特許第4091778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、透明なプラスチックフィルムに封入された無色のコンタクトレンズの有無を確実に検知する方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
近年の視力矯正用のレンズは、通常の眼鏡に用いられるもの、コンタクトレンズの双方とも、眼を有害な紫外線から保護するために、紫外線吸収剤を含む材料で成形されたレンズを用いたり、レンズ表面に紫外線吸収剤をコーティングしたりする場合が多い。本発明者らは、この点に着目し、紫外線ランプと紫外線カメラを用い、さらに照射用のランプの最適な配置を検討した結果、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
即ち、本発明は、高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体に、照明光を照射して、反射光を検知することにより、前記透明体の有無を検出する検出方法において、前記照明光は、紫外線であることを特徴とする検出方法である。
【0013】
また、本発明は、前記照明光の波長帯域が380nm以下であることを特徴とする、前記の検出方法である。
【0014】
また、本発明は、前記照明光のピーク波長が320〜380nmであることを特徴とする、前記の検出方法である。
【0015】
また、本発明は、前記照明光を、複数の光源を異なる方向から、前記透明体に照射することを特徴とする、前記の検出方法である。
【0016】
また、本発明は、前記透明体が、コンタクトレンズであることを特徴とする、前記の検出方法である。
【0017】
また、本発明は、紫外線を発する光源を少なくとも一つ有する照明装置と、紫外線を検知し得るカメラを有することを特徴とする、高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置である。
【0018】
また、本発明は、前記紫外線を発する光源の照明光の波長帯域が380nm以下あることを特徴とする、前記の高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置である。
【0019】
また、本発明は、前記紫外線を発する光源の照明光のピーク波長が320〜380nmであることを特徴とする、前記の高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置である。
【0020】
また、本発明は、前記透明体がコンタクトレンズであることを特徴とする、前記の高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置である。
【発明の効果】
【0021】
例えば、特開平06−172742号公報などの多くの特許文献には、コンタクトレンズに用いる紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系の化合物が適していることが開示されている。この化合物は、UVA波と称される波長が290〜320nmの紫外線や、UVB波と称される波長が320〜380nmの紫外線を、ほぼ100%吸収して、紫外線よりも害が少ない熱エネルギーに変換する特性を有する。
【0022】
従って、これらの紫外線を輻射するランプを用いて、パッケージ内のコンタクトレンズの有無を検出することにより、可視光による場合よりも検出の確度の大きな向上が期待できる。
【0023】
また、紫外線を輻射するランプとしてLEDを用いて、本発明者らが行った検討結果によれば、1箇のLEDでもコンタクトレンズの検出は可能であるが、市販されている汎用のLEDを用いて、検出に十分な光量を得るには、複数のLEDが必要であった。そして、1箇のコンタクトレンズパッケージの場合は、複数のLEDの配置を円形とした場合が、最も検出の確度が高く、複数箇のコンタクトレンズパッケージの場合は、複数のLEDをほぼ直線上の配置した照明ユニットを複数箇用いることが、確実に検出するために必要であるという知見を得た。つまり検出対象の形状により、最適な配置を適宜検討することが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明に係る検出装置の一例を示す概略図。
【図2】 透明フィルムのパッケージに封入されたコンタクトレンズの例を示す図。
【図3】 コンタクトレンズの有無による反射率の周波数特性の差異を示す図。
【図4】 本発明に使用可能な紫外線を発するLEDの周波数特性の一例を示す図。
【図5】 本発明に係る照明ユニットの一例を示す斜視図、図4(a)は複数の光源を円環状に配列した例、図4(b)は複数の光源を直線状に配列した例。
【図6】 本発明に係る検出装置を用いたコンタクトレンズパッケージ個片の検査例を示す斜視図。
【図7】 本発明に係る検出装置を用いた複数のコンタクトレンズパッケージが繋がった連続体の検査例を示す斜視図。
【図8】 本発明に係る検出装置を用いた検査と不良品除外方法の一例を示す斜視図。
【図9】 光源の数とエラー回数の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施の形態について、具体的な図を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る検出装置の一例を示す概略図である。図1において、1はコンタクトレンズのパッケージ、2は照明ユニット、3はカメラ、4は画像処理及び装置制御用パーソナルコンピュータ、5はワーク搭載台である。
【0027】
ここで、照明ユニット2は、後述するように円環状の基板に一定間隔で紫外線を発するLEDを配置した構成としている。カメラ3は、紫外線を検知可能な、いわゆるUVカメラである。パーソナルコンピュータ4は、一定以上の処理能力があれば市販の汎用のものが使用可能であり、ワーク搭載台5としては、通常はベルトコンベアのような搬送手段を用いる。
【0028】
図2は、透明フィルムのパッケージに封入されたコンタクトレンズの例を示す図である。図2において、6はコンタクトレンズ、7a、7bは高分子フィルムからなるパッケージ材料、8は保護液である。ここで用いるパッケージ材料7a、7bの材質としては、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを用いることができ、図における下側のパッケージ材料7bには、アルミニウム箔などをラミネートしたものを用いることができる。
【0029】
図3は、本発明に用いる光源の周波数の適合性を検証するために行った、反射率の周波数特性の差異を示す図である。ここでは、保護液とコンタクトレンズを封入したパッケージと、保護液のみ充填したパッケージに対して照明を照射する際の周波数を掃引し、反射率の変化を計測した。実線で示したのが、コンタクトレンズを封入したパッケージ、破線で示したのが、保護液のみの結果である。図3から、照明の波長が380nm以下の領域で、顕著な差が認められ、コンタクトレンズの検出に有用であると判断できる。
【0030】
図4は、本発明に使用する紫外線を発するLEDの周波数特性の一例を示す図である。請求項に記載し、図3に示した結果から明らかなように、本発明には、波長が380nm以下の紫外線を発する光源を用いるのが望ましく、この例では、波長帯域が320〜380nm、ピーク波長が、340〜345nmである。
【0031】
図5は、本発明に係る照明ユニットの一例を示す斜視図で、図5(a)は複数の光源を円環状に配列した例、図5(b)は複数の光源を直線状に配列した例である。図5において、9a、9bは照明ユニット、10a、10bはLED、11a、11bは基板である。
【0032】
図6は、本発明に係る検出装置を用いた、コンタクトレンズパッケージ個片の検査例を示す斜視図である。図5(a)に示した照明ユニット9aを用いて検査を行う場合は、図6に示したように、コンタクトレンズパッケージ個片1aを、カメラ3の視野の中心軸上に配し、照明ユニット9aの中心にカメラの視野の中心軸を配置するのが望ましい。
【0033】
図7は、本発明に係る検出装置を用いた、複数のコンタクトレンズパッケージが繋がった連続体の検査例を示す斜視図である。図5(b)に示した照明ユニット9bを用いて検査を行う場合は、図7に示したように、2個の照明ユニット9bを、コンタクトレンズパッケージ連続体1bが置かれた部分の照度が最大となるように配置し、カメラ3の視野の中心軸が、コンタクトレンズパッケージ連続体1bの長手方向の中心軸とほぼ一致するように配置するのが望ましい。
【0034】
図8は、本発明に係る検出装置を用いた、検査と不良品除外方法の一例を示す斜視図である。この例では、ワークを搬送するためのベルトコンベア12に、コンタクトレンズパッケージ連続体1bを搭載し、カメラ3の撮像結果を、図示しないパーソナルコンピュータで画像処理し、内部にコンタクトレンズが確認できないパッケージを、エアシリンダーなどを構成要素とするプッシャー13により、シュート14に突き出す構成となっている。
【0035】
次に、照明ユニットに取り付ける光源の数と、検査の精度の関係を確認するために、保護液とコンタクトレンズを封入したパッケージと、保護液のみを封入したパッケージの個片を、それぞれ1000箇調製し、図6に示したカメラ3と照明ユニット9aの構成で、光源の数を1〜10箇として、1000箇のパッケージの検査を行い、検出エラーが発生する回数を求めた。なお、用いたコンタクトレンズは、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を含むものである。
【0036】
そして、ここで、エラーとは、コンタクトレンズが封入されたパッケージについては、コンタクトレンズが存在しないと判断したもの、逆に保護液のみが封入さされたパッケージについては、コンタクトレンズが存在すると判断したものである。
【0037】
図9は、その結果をプロットした図で、円で示したのが、コンタクトレンズを封入したもの、三角形で示したのが、保護液のみのものである。この結果から、照明ユニットに取り付ける光源の数は、複数個とするのが望ましいことが明らかである。
【0038】
以上に説明したように、本発明によれば、パッケージに保護液とともに封入されたコンタクトレンズの有無を確実に検出できる、検出方法及び検出装置を提供でき、検査工程の省力化、ひいては、製造コストの低減、品質向上に寄与することができる。
【0039】
また、ここでは、具体的な例を示さなかったが、コンタクトレンズ以外であっても、紫外線吸収剤を含む透明体からなるワークの検出にも、本発明を適用できる。さらには、本発明を、通常の眼鏡用のレンズやその他の透明体に紫外線吸収剤をコーティングしたものに適用して、コーティングの欠陥の検出することも可能である。
【0040】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 コンタクトレンズのパッケージ
1a コンタクトレンズパッケージ個片
1b コンタクトレンズパッケージ連続体
2 照明ユニット
3 カメラ
4 パーソナルコンピュータ
5 ワーク搭載台
6 コンタクトレンズ
7a,7b パッケージ材料
8 保護液
9a,9b 照明ユニット
10a,10b LED
11a,11b 基板
12 ベルトコンベア
13 プッシャー
14 シューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体に、照明光を照射して、反射光を検知することにより、前記透明体の有無を検出する検出方法において、前記照明光は、紫外線であることを特徴とする検出方法。
【請求項2】
前記照明光は、波長帯域が380nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記照明光は、ピーク波長が320〜380nmであることを特徴とする、請求項1または、請求項2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記照明光は、複数の光源を異なる方向から、前記透明体に照射することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の検出方法。
【請求項5】
前記透明体は、コンタクトレンズであることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の検出方法。
【請求項6】
紫外線を発する光源を少なくとも一つ有する照明装置と、紫外線を検知し得るカメラを有することを特徴とする、高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置。
【請求項7】
前記紫外線を発する光源の照明光の波長帯域が380nm以下あることを特徴とする、請求項6に記載の、高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置。
【請求項8】
前記紫外線を発する光源の照明光のピーク波長が320〜380nmであることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の、高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置。
【請求項9】
前記透明体はコンタクトレンズであることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の、高分子材料の透明フィルムからなるパッケージに収納された透明体の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−54021(P2013−54021A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206601(P2011−206601)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(591074736)宮城県 (60)
【出願人】(000250753)凌和電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】