説明

透明体ボトルの外観検査装置及び外観検査方法

【課題】 ペットボトルの開口部の欠陥の有無を高精度に判定することができる検査装置の外観検査装置を提供する。
【解決手段】 透明体ボトルの外観検査装置1は、開口部101を有する透明体ボトル100に対し、前記開口部101に交差する第1光路から第1の周波数の光を照射可能な第1光源部3と、前記第1光路とは反対方向かつ前記開口部に交差する第2光路から第2の周波数の光を照射可能な第2光源部4と、撮影光軸が前記開口部に直交するように配置され、前記第1光源部及び第2光源部から照射された光を判別してそれぞれ撮像可能なエリアカメラ2と、前記エリアカメラ2により撮像された前記第1光源部3からの光による第1画像及び第2光源部4からの光による第2画像に基づいて、前記開口部の欠陥の有無を判定する欠陥判定部6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルやペットボトルプリフォームなど、透明のボトルの天面部の欠陥を検査するための外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象物に存在する欠陥の有無を検査するために、検査対象物の特定領域を撮像し、この撮像画増に基づいてキズなどの有無を画像処理により判断する手法が行われている。この検査手法は、多種にわたる物品に用いられており、ペットボトルの外観検査にもこの方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2002−267611号公報)では、ペットボトルの天面検査において、ワークと該ワークの上方から撮像する周面用カメラとの間にワークの周面画像を投影する円筒状の周面投影手段を設け、天面画像を撮像する天面用カメラによって天面画像を側方から撮像可能に投影する天面投影手段を備えた検査装置が開示されている。
【0004】
この検査装置は、お椀形に構成された周面投影手段によってペットボトルの開口部の周面を投影し、開口部の上方に設けられた周面用カメラで撮影すると共に、開口部の上方に設けられた天面投影手段で開口部天面の画像を側方から天面用カメラで撮影するものである。これにより、天面及び周面を撮像し、当該画像に基づいて欠陥の有無について検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−267611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記検査装置では、天面部の欠陥を高精度に検査することは困難であった。一般に、画像解析による欠陥判定精度を上げるため、天面部の撮影は、撮像光軸が開口に対して直交するように光路設定を行い、天面部が円形となるように撮像する。すなわち、ペットボトル開口部の天面を撮像する場合、入射光に対して正反射する位置にカメラを配置することによって、開口部の周縁を高精細に撮像することが行われている。
【0007】
しかし、ペットボトル100の開口部101は、図9に示すように、需要者の口に直接触れる部分であり、飲用時に需要者に与える違和感を軽減するため、通常は天面102の外縁の角が面取りされて曲面に構成された面取り部103となっている。このため、天面102に照射された光は、当該面取り部103によって反射角度が異なり、カメラに到達できないため、当該面取り部103が鮮明に撮影できないという問題があった。このため、面取り部103の部分は、画像解析による欠陥判定精度が低いという問題があった。
【0008】
面取り部103は需要者の口に直接接する箇所であり、面取り部103に存在するキズ等の欠陥は、ペットボトルの評価を左右するものである。よって、当該面取り部分についての欠陥の有無を高精度に判定することができる検査装置が求められていた。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、ペットボトルの開口部の欠陥の有無を高精度に判定することができる検査装置及び外観検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の透明体ボトルの外観検査装置及び外観検査方法を提供する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、開口部を有する透明体ボトルに対し、前記開口部に交差する第1光路から第1の周波数の光を照射可能な第1光源部と、
前記第1光路とは反対方向かつ前記開口部に交差する第2光路から第2の周波数の光を照射可能な第2光源部と、
撮影光軸が前記開口部に直交するように配置され、前記第1光源部及び第2光源部から照射された光を判別してそれぞれ撮像可能なエリアカメラと、
前記エリアカメラにより撮像された前記第1光源部からの光による第1画像及び第2光源部からの光による第2画像に基づいて、前記開口部の欠陥の有無を判定する欠陥判定部と、を備えることを特徴とする、透明体ボトルの外観検査装置を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記第2光路は、透明体ボトルの壁内を通って前記開口部天面から前記エリアカメラに到達することを特徴とする、第1態様の透明体ボトルの外観検査装置を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記欠陥判定部は、第1画像に基づいて検査エリアの特定を行ったあと、前記第1画像及び第2画像に基づいて欠陥判定処理を行うことを特徴とする、第1又は第2態様の透明体ボトルの外観検査装置を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記欠陥判定部は、前記第1画像を用いて開口部の内周縁に沿った内側縁円を特定し、前記内側縁円により中心合わせを行ったあと、前記内側縁円及び中心位置から外側縁円及び中間円を特定し、前記特定された内側縁円及び外側縁円については第2画像の円上に存在する画素の輝度値に基づいて、中間円上については第1画像の円上に存在する画素の輝度値に基づいて欠陥判定を行うことを特徴とする、第3態様の透明体ボトルの外観検査装置を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、さらに、透明体ボトル開口部の下側に設けられ、前記開口部の外周領域に存在する第2光源部からの光を遮光する遮光部を有することを特徴とする、第1から第4態様のいずれか1つの透明体ボトルの外観検査装置を提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、開口部を有する透明体ボトルに対し、第1の周波数の光を前記開口部上方から前記開口部に交差する第1光路で、第2の周波数の光を前記透明体ボトル底面側から前記第1光路とは反対方向かつ前記開口部に交差する第2光路で照射し、
撮影光軸が前記開口部に直交するように配置されたエリアカメラによって、前記第1光源部及び第2光源部から照射された光を判別して、前記第1光源部からの光による第1画像及び第2光源部からの光による第2画像をそれぞれ撮像し、
前記第1画像に基づいて検査エリアの特定を行ったあと、前記第1画像及び第2画像に基づいて欠陥判定処理を行うことを特徴とする、透明体ボトルの外観検査方法を提供する。
【0017】
本発明の第7態様によれば、前記欠陥判定処理は、前記第1画像を用いて開口部の内周縁に沿った内側縁円を特定し、前記内側縁円により中心合わせを行ったあと、前記内側縁円及び中心位置から外側縁円を特定し、前記内側縁円及び外側縁円に囲まれた領域を検査領域とすることを特徴とする、第6態様の透明体ボトルの外観検査方法を提供する。
【0018】
本発明の第8態様によれば、前記欠陥判定処理は、内側縁円及び外側縁円の中間位置に中間円を特定し、前記中間円については第1画像を、前記内側縁円及び外側縁円については第2画像を用いて、それぞれ円上に存在する画素の輝度値に基づいて欠陥判定を行うことを特徴とする、第7態様の透明体ボトルの外観検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ペットボトル及びプリフォームなどの透明体ボトルの開口部に対して直接光を照射する第1の光源部と、開口部に対して反対側から光を照射する第2光源部とをそれぞれ有するため、性質の異なった画像を撮像することができる。すなわち、第1の光源部による第1画像は天面の輪郭がはっきりとした画像である一方、天面部周縁の面取り部については、はっきりと撮像されない。一方で、第2画像は、エリアカメラに対して直接光を照射する方向から撮像されるため、天面部の境界、特に天面部の内側境界ははっきりと撮像されないが、天面部及び面取り部の双方について明るく撮像することができる。したがって、これらの特徴ある2つの画像を用いることにより、透明体ボトルの開口部の欠陥検査を高精度に行うことができる。
【0020】
上記構成において、第2光路は、透明体ボトルの壁内を通って伝播し、天面部からボトル外へ出るため、天面方向から透明体ボトルを撮像するカメラから天面部を鮮明に撮像することができる。
【0021】
また、第1画像は、天面の輪郭をはっきりと撮像することができるため、当該画像を用いて検査エリアの特定を行ない、広い領域を鮮明に撮像することができる第2画像を用いて欠陥判定を行うことが好ましい。特に、欠陥判定において、第1画像に基づいて特定された内側縁円及び外側縁円については第2画像の円上に存在する画素の輝度値に基づいて、中間円上については第1画像の円上に存在する画素の輝度値に基づいて欠陥判定を行うことにより、検査範囲を少なくすることができ、処理の高速化を図ることができる。
【0022】
また、透明体ボトル開口部の下側に遮光部を設けることにより、透明体ボトルの開口部の外周領域を遮光することができる。このため、第2画像において、透明体ボトルの外側に第2光源部の光が写り込むのを防止する。したがって、開口部の外周領域を遮光することで、開口部のコントラストを大きくすることができ、欠陥判定部による欠陥の判別を高精度とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる透明体ボトルの外観検査装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の透明体ボトルの外観検査装置の第1照明装置から照射された光路を示す模式図である。
【図3】第1画像の例を示す図である。
【図4】図1の透明体ボトルの外観検査装置の第2照明装置から照射された光路を示す模式図である。
【図5】第2画像の例を示す図である。
【図6】図1の透明体ボトルの外観検査装置の画像解析部の機能ブロック図である。
【図7】画像解析部が行う欠陥判定処理のフローチャートである。
【図8】画像解析部が行う欠陥判定処理の処理手順例を示す図である。
【図9】ペットボトルの開口部の構成を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態にかかる透明体ボトルの外観検査装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる透明体ボトルの外観検査装置の構成を示す模式図である。
【0025】
本実施形態にかかる透明体ボトルの外観検査装置1は、ペットボトルあるいは、ペットボトルにブロー成形される前のプリフォーム等に例示される透明体ボトル100の開口部の天面にキズ、汚れなどが存在するかどうかをカメラ2によって撮像された画像を用いて良否判定を行うものである。本実施形態の外観検査装置1において検査可能な透明体ボトルは、全体が無色透明又は有色透明に構成されたものであり、例えば、開口部付近が白色に結晶化したペットボトルなど、部分的に不透明部分があるものは検査することができない。なお、本発明においては、開口部101は、天面部102、面取り部103及び開口104を含むものとする。
【0026】
本実施形態にかかる外見検査装置1では、本発明の第1光源部及び第2光源部の一例として、異なる場所に配置された2つの照明装置3,4が設けられている。また外見検査装置1には、それぞれ第1照明装置3,第2照明装置4から照射された光を用いて検査対象である透明体ボトル100を撮像するカメラ2が設けられている。カメラ2及び各照明装置3,4には、それぞれの装置を駆動制御するための制御部5が接続されており、また、カメラ2によって撮像された画像に基づいて、欠陥の有無を判別する画像解析部6が設けられている。駆動装置5及び画像解析部6は、例えば、汎用のコンピュータを使用可能であり、本実施形態では、これらの機能を発揮するドライバプログラム及び画像解析プログラムがインストールされたコンピュータが用いられている。
【0027】
透明体ボトル100は、ペットボトルあるいはペットボトルにブロー成形される前のプリフォームであり、開口部101の下部にサポートリング部110が設けられている。サポートリング部110は、ペットボトルの成形などにおいてその位置基準となる基準面であり、本実施形態にかかる外見検査装置1では、透明体ボトル100の搬送、位置決めに当該サポートリング部110を支持するクランプ7を用いる。クランプ7は、左右に開閉可能に構成されており、対向面にサポートリング部110を収容する溝が設けられている。開いた状態のクランプ7を透明体ボトル100の側方からサポートリング部110近傍に配置し、その後、クランプ7を閉じることによって、クランプ7に対する透明体ボトル100の上下左右方向の位置を一定に保持することができる。また、サポートリング部110は肉厚が厚く強度があるため、クランプ7での固定時にしっかり固定することができ、また、ボトルの位置基準として用いられているため、カメラから口天面までの距離を一定にすることができる。
【0028】
カメラ2は、検査対象である透明体ボトル100の上部に設けられたエリアカメラであり、その光軸が透明体ボトル100の開口104面に対して直交するように配置されている。カメラ2には、それぞれのピクセルに例えばRGBフィルタなどのフィルタが設けられたカラーCCDが搭載されている。カメラ2は、特定の周波数の光を透過するフィルタが設けられているピクセルのみをアクティブとすることにより、当該特定の光により照射された透明体ボトル100の画像を撮像することができる。
【0029】
第1照明装置3は、透明体ボトル100の上部に設けられカメラの光軸と同軸に設けられており、特定の周波数の光を発光する同軸面光源である。本実施形態では、第1照明装置3は、概ね620〜750nmの赤色光を発光する面光源であり、カメラ2と透明体ボトル100との間に配置される。
【0030】
第2照明装置4は、透明体ボトル100の下部に設けられカメラの光軸と同軸に特定の周波数の光を発光する面光源である。本実施形態では、第2照明装置4は、概ね450〜490nmの青色光を発光する面光源が用いられる。第2照明装置4は、第1照明装置3に対して透明体ボトル100を挟んで対向位置に設けられる。
【0031】
各照明装置3,4から照射されるそれぞれ異なる周波数を有する光は、カメラ2によって判別され、これらの光で照射された透明体ボトル100の画像がそれぞれ撮像される。すなわち、カメラ2は、それぞれの照明装置3,4により照射された2種類の透明体ボトル100の画像(第1画像、第2画像)を出力することができる。
【0032】
第1画像及び第2画像は、1つのカメラで撮像された画像であるため、撮影位置、画角、焦点距離などを等しくする画像であり、画像中の各画素はそれぞれ被写体である透明体ボトル100の同じ位置を撮像している。このため、後述する画像解析において、両画像の比較を行なう場合には、各画素の座標に基づいて処理を行うことで容易に両画像間の対応を取ることができる。
【0033】
図2に、本実施形態にかかる外観検査装置の第1照明装置から照射された光路を示す。透明体ボトル100の上部に設けられた第1照明装置3から照射された光は、図2に示すように、透明体ボトルの開口101面に対して直交するように照射され、天面部102、面取り部103,ネジ部105の表面で反射する。
【0034】
このうち、光路L1を通り、天面部102に到達した光は、天面部102の表面で反射してカメラ2に到達する。一方、光路L2を通り、面取り部103に到達した光は、面取り部103の表面でカメラの光軸方向とは異なる方向へ反射する。また、ネジ部105の部分に照射された光は、一部は光路L3を通りカメラ2の方向に反射するが、大部分はネジ部105の表面でカメラ方向には反射しない(L4)。また、天面に到達することなく、開口102に照射された光は、図示しない透明体ボトル100の底面に到達する。
【0035】
図3に第1照明装置を用いた第1画像の例を示す。図3に示すように、天面部102の部分が明るく撮影され、開口部101の内周縁の境界が鮮明に撮像されている。一方、面取り部103の部分は暗く、その境界もはっきりしない。また、ネジ部105の一部分のみが明るく撮像されている。
【0036】
また、図3に示す第1画像は、予めナイフなどを用いて天面部102と面取り部103に切れ込みキズ51及び52をそれぞれ設けた透明体ボトル100を撮像したものである。図3から明らかなように、天面部102に設けられたキズ51は視認することができるが、面取り部103に設けられたキズ52については、天面部102に到達する傷の深さ分が視認されるのみであり、画像にはごく小さい欠陥にすぎないため、画像解析において判定の精度が劣りやすい。
【0037】
図4に本実施形態にかかる外観検査装置の第2照明装置4から照射された光路を示す。透明体ボトル100の底部に設けられた第2照明装置4から照射された光は、図4に示すように、透明体ボトルの開口101面に対して直交する方向に照射され、底壁106及び底面に存在するゲート跡106aを通過してカメラ2に到達する。また、第2照明装置4から照射された光の一部は、透明体ボトル100の側壁107内を通って開口部101の側壁に到達し、天面部102,面取り部103からボトル外に出てカメラ2に到達する。
【0038】
ボトル内を透過する光は、光路L11、L12を通って、天面部102,面取り部103から外部に伝播する。また、第2照明装置4から射出される光は、拡散光であり、光路L13に示すように、側壁107の壁で反射しながら側壁107内を伝播する。
【0039】
図5に第2照明装置を用いた第2画像の例を示す。図4に示すように、天面部102、面取り部103の部分が明るく撮影され、面取り部103に付されたキズなどが鮮明に撮像されている。一方、開口部101内部は、第2照明装置4からの光が透過して撮像されており、天面部102の内側が明るく撮像され、天面部102との境界やゲート跡106aがはっきりしない。
【0040】
また、図5に示す第2画像は、上記第1画像と同じ天面部102と面取り部103に切れ込みキズ51及び52をそれぞれ設けた透明体ボトル100を撮像したものである。図5から明らかなように、天面部102に設けられたキズ51及び面取り部103に設けられたキズ52共に視認しやすく、画像解析において判定の精度を高くすることができる。
【0041】
一方、第2画像においては、開口部101内部は、第2照明装置4からの光が透過して撮像されており、天面部102の内側の境界がはっきりしない。このため、後述する画像解析においては、検査領域の特定の精度が低くなる可能性がある。
【0042】
なお、上記のようにクランプ7により透明体ボトル100のサポートリング部110を保持することにより透明体ボトル100の開口部101のみがクランプ7の上方に位置することとなる。これにより、図5に示すようにクランプ7は、開口部101の外周領域を遮光することで、第2画像において、透明体ボトル100の外側に第2照明装置4の光が写り込むのを防止することができる。クランプ7によって、開口部101の外周領域を遮光することで、天面部102、面取り部103のコントラストを大きくすることができ、後述する画像解析部6による欠陥の判別を高精度とすることができる。
【0043】
次に、画像解析部による画像解析について説明する。図6は、外観検査装置の画像解析部の機能ブロック図である。図7は、画像解析部が行う欠陥判定処理のフローチャートである。本発明の欠陥判定部の一例としての画像解析部6は、中心特定部10、検査領域特定部11、微分処理部12、輝度値判定部13とを備え、カメラにより撮像された2種類の第1画像及び第2画像を用いて両画像中の検査エリアの特定を行い、検査エリア内の輝度値の変化量に基づいて欠陥の有無を判定する。
【0044】
画像解析部6は、図7に示すフローチャートに基づいて画像解析処理を行なう。画像解析部6は、まず、中心・半径を算出する(#1)。中心・半径の算出では、まず、図8に示すように、第1画像を用いて天面部102に対応する天面領域102aの各画素の輝度値を参照して、内側縁円20を特定する。次いで、予め定めておいた仮想円21,22の間を放射状に伸びる複数の仮想線23のうち、内側仮想円22と内側縁円20とで区切られる区間の長さが等しくなるように、第1画像(第2画像)を移動させ、第1画像(第2画像)の被写体中心位置を特定する。この処理は、中心特定部10が司る。
【0045】
第1画像(第2画像)の被写体中心位置が特定されると、既知の透明体ボトル100の開口部の肉厚の情報に基づいて外側縁円24及び中間円25とを作成する。外側縁円24は、開口部の肉厚に基づいて内側縁円20の中心位置から内側縁円20に対して外側へ拡径した円を作成することで特定される。また、中間円25は、内側縁円20と外側縁円24の中間に内側縁円20と同心に特定された円を作成することで特定される。これらの処理は、検査領域特定部11が処理を司る。
【0046】
次いで、検査領域特定部11は、内側縁円20と外側縁円24とで囲まれた領域を検査領域として特定する。検査領域には、天面領域102aの他、面取り部103に対応する面取り領域103aが含まれ、当該検査領域内の画像(第2画像)の輝度を測定することで、透明体ボトル100の天面部102及び面取り部103の欠陥を判定する。
【0047】
微分処理部12は、上記の通り作成された内側縁円20、外側縁円24及び中間円25の円周に沿って、それぞれ円周方向に画像を微分処理し、円形を有する3つの微分画像を作成する。微分処理は、内側縁円20、外側縁円24及び中間円25の円周に沿って隣接して存在する各画素の輝度値の差分を求める処理である。比較する画素は例えば、基準となる画素に対して所定の距離を有する位置に存在する画素であり、例えば、基準画素から所定の角度(例えば5度)離れた位置に存在する画素などとすることができる。このように比較画素を特定することで、緩やかなキズなどの欠陥を発見しやすくすることができる。基準画素と比較される画素の位置は、画像の大きさ、画素数などに応じて適宜決定すればよい。
【0048】
本実施形態において微分処理は、中間円25については、天面部102が鮮明に撮像されている第1画像を用いる。一方、天面部102の内縁及び面取り部103が鮮明に撮像された第2画像を用いて作成される。微分処理により、各基準画素に対する差分値の情報を含む、内側縁円20、外側縁円24及び中間円25に対応した3つの微分画像が作成される。
【0049】
輝度値判定部13は、微分処理部12により作成された微分画像を二値化処理し、画素の値を比較する。その上で、輝度の変化量について、所定の閾値を超えて高い値を示す部分を欠陥として判定する。なお、所定の閾値は、内側縁円20、外側縁円24及び中間円25に基づく画像ごとに異なる値を採用してもよい。
【0050】
本実施形態によれば、2つの照明装置を用い、異なる光路を通ってカメラに到達した光を識別して撮影することにより、各光路の光に特有の画像を撮像することができる。このため、透明体ボトル100の天面部102、面取り部103などの撮影を鮮明に行うことができ、当該画像に基づいて高精度に欠陥判定を行うことができる。
【0051】
すなわち、第1照明装置による第1画像は天面の輪郭がはっきりとした画像である一方、天面部周縁の面取り部については、はっきりと撮像されない。一方で、第2画像は、エリアカメラに対して直接光を照射する方向から撮像されるため、天面部の境界、特に天面部の内側境界ははっきりと撮像されないが、天面部及び面取り部の双方について明るく撮像することができることから、欠陥検査を高精度にすることができる。
【0052】
また、2種類の画像を1つのカメラで同時に撮像することができるため、検査時間を短くすることができる。
【0053】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。たとえば、上記実施形態では、カラーCCDを搭載したカメラを用い、カメラのドライバにより各波長の光を識別するように構成しているが、例えば、モノクロCCDを用いたカメラを用い、カメラの光軸上に透過波長を切り替え可能に構成されたカラーフィルタ装置を配置してもよい。この場合、同時に各波長に基づく撮像は不可能であるが、CCDのすべてのピクセルを用いて撮像可能であるため、比較的高精細の画像を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ペットボトルの製造業、ペットボトルを用いた飲料の製造業等において、ペットボトルの品質管理に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 外観検査装置
2 カメラ
3 第1照明装置
4 第2照明装置
5 制御部
6 画像解析部
7 クランプ
10 中心特定部
11 検査領域特定部
12 微分処理部
13 輝度値判定部
20 内側縁円
21,22 仮想円
23 仮想線
24 外側縁円
25 中間円
100 透明体ボトル
101 開口部
102 天面部
103 面取り部
104 ネジ部
106 底壁
106a ゲート跡
107 側壁
110 サポートリング部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する透明体ボトルに対し、前記開口部に交差する第1光路から第1の周波数の光を照射可能な第1光源部と、
前記第1光路とは反対方向かつ前記開口部に交差する第2光路から第2の周波数の光を照射可能な第2光源部と、
撮影光軸が前記開口部に直交するように配置され、前記第1光源部及び第2光源部から照射された光を判別してそれぞれ撮像可能なエリアカメラと、
前記エリアカメラにより撮像された前記第1光源部からの光による第1画像及び第2光源部からの光による第2画像に基づいて、前記開口部の欠陥の有無を判定する欠陥判定部と、を備えることを特徴とする、透明体ボトルの外観検査装置。
【請求項2】
前記第2光路は、透明体ボトルの壁内を通って前記開口部天面から前記エリアカメラに到達することを特徴とする、請求項1に記載の透明体ボトルの外観検査装置。
【請求項3】
前記欠陥判定部は、第1画像に基づいて検査エリアの特定を行ったあと、前記第1画像及び第2画像に基づいて欠陥判定処理を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明体ボトルの外観検査装置。
【請求項4】
前記欠陥判定部は、前記第1画像を用いて開口部の内周縁に沿った内側縁円を特定し、前記内側縁円により中心合わせを行ったあと、前記内側縁円及び中心位置から外側縁円及び中間円を特定し、
前記特定された内側縁円及び外側縁円については第2画像の円上に存在する画素の輝度値に基づいて、中間円上については第1画像の円上に存在する画素の輝度値に基づいて欠陥判定を行うことを特徴とする、請求項3に記載の透明体ボトルの外観検査装置。
【請求項5】
さらに、透明体ボトル開口部の下側に設けられ、前記開口部の外周領域に存在する第2光源部からの光を遮光する遮光部を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の透明体ボトルの外観検査装置。
【請求項6】
開口部を有する透明体ボトルに対し、第1の周波数の光を前記開口部上方から前記開口部に交差する第1光路で、第2の周波数の光を前記透明体ボトル底面側から前記第1光路とは反対方向かつ前記開口部に交差する第2光路で照射し、
撮影光軸が前記開口部に直交するように配置されたエリアカメラによって、前記第1光源部及び第2光源部から照射された光を判別して、前記第1光源部からの光による第1画像及び第2光源部からの光による第2画像をそれぞれ撮像し、
前記第1画像に基づいて検査エリアの特定を行ったあと、前記第1画像及び第2画像に基づいて欠陥判定処理を行うことを特徴とする、透明体ボトルの外観検査方法。
【請求項7】
前記欠陥判定処理は、前記第1画像を用いて開口部の内周縁に沿った内側縁円を特定し、前記内側縁円により中心合わせを行ったあと、前記内側縁円及び中心位置から外側縁円を特定し、前記内側縁円及び外側縁円に囲まれた領域を検査領域とすることを特徴とする、請求項6に記載の透明体ボトルの外観検査方法。
【請求項8】
前記欠陥判定処理は、内側縁円及び外側縁円の中間位置に中間円を特定し、前記中間円については第1画像を、前記内側縁円及び外側縁円については第2画像を用いて、それぞれ円上に存在する画素の輝度値に基づいて欠陥判定を行うことを特徴とする、請求項7に記載の透明体ボトルの外観検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−237632(P2012−237632A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106366(P2011−106366)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】