説明

透明圧電シート

【課題】高い光透過率を有する透明圧電シートを提供する。
【解決手段】透明圧電体膜10と、前記透明圧電体膜の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層20と、前記第1接着剤層の前記透明圧電体膜とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極30と、前記透明圧電体膜の第2主面に配置された第2透明平板電極40とを含む透明圧電シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明圧電シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ等の表示装置の前面に入力装置であるタッチパネルを設置した表示および入力装置が実用化され、携帯電話機等の携帯機器および家庭電化製品の操作パネル等に用いられている。タッチパネルを用いた表示および入力装置は、ユーザーが画面上の表示を押すことで直感的に機器を操作する事を可能にする。
これまでに実用化されているタッチパネルでは、ユーザーが押した位置(本明細書中、タッチ位置と称する場合がある)を検出できるのみであり、ユーザーが押した強さ(すなわち、押圧の高さ(強さ)。本明細書中、タッチ圧と称する場合がある)を検出する事はできなかった。一方、タッチパネルを用いた表示および入力装置において、タッチパネルは表示装置の前面に設置するので、表示装置の表示の視認性を高めるため、タッチパネルの透明性が高いことが求められる。
押圧の強さを検出可能であり、かつ透明性を有する入力装置またはこれに類するものとして、例えば、特許文献1には、電子ペーパの部材として用いられる、圧電体と、前記圧電体の一方の側に設けられた第1の電極と、前記圧電体の他方の側に設けられた第2の電極とを有するタッチパネル部が開示されている。
また、特許文献2には、タッチスクリーンに結合し、前記タッチスクリーンの各接触に対する位置座標の組を決定する第1センサシステムと、前記タッチスクリーンに結合し、第1タイプの物体により、前記タッチスクリーンの各接触を確認し、第2タイプの物体により、前記タッチスクリーンの各接触を無効にする、前記位置座標の組を決定する能力はない第2センサシステムとを含んでいるタッチスクリーンシステムが開示され、かつ第1センサシステムとして具体的には、LCDの視覚領域の外側に配置された力センサが開示されている。
また、特許文献3には、対向する一対の透明基板間に、圧電性を有する透明感圧層と、当該透明感圧層を介して対向配置される一対の透明導電膜層とが形成されていることを特徴とする透明圧電センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−163619号公報
【特許文献2】特開2004−534974号公報
【特許文献3】特開2004−125571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、より光透過率が高い透明圧電シートが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
通常、透明圧電シートの透明平板電極においては、蒸着などの方法により、透明圧電体層の表面に直接接触した電極を配置する。
これは、電極と透明圧電体層が接触していないと、タッチ圧を検出できないと考えられるからである。
しかし、本発明者らは、意外にも、透明圧電体膜の表面に、接着剤層を介して電極を配置しても、タッチ圧を検出することが可能であり、かつ透明圧電シートの光透過率を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の第1観点に係る透明圧電シートは、
透明圧電体膜と、
前記透明圧電体膜の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層と、
前記第1接着剤層の前記透明圧電体膜とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極と、
前記透明圧電体膜の第2主面に配置された第2透明平板電極と
を含む。
当該透明圧電シートは、第1接着剤層が存在することにより、高い光透過性を有する。
【0007】
本発明の第2観点に係る透明圧電シートは、第1観点に係る透明圧電シートにおいて、
前記第1接着剤層が、前記透明圧電体膜に沿って延長して、前記第2透明平板電極と接着している。
【0008】
本発明の第3観点に係る透明圧電シートは、第1観点に係るに透明圧電シートにおいて、
前記透明圧電体膜と前記第2透明平板電極との間に位置し、かつ当該透明圧電体膜と当該第2透明平板電極とに隣接している第2接着剤層を更に含む。
当該透明圧電シートは、第2接着剤層が存在することにより、更に高い光透過性を有する。
【0009】
本発明の第4観点に係る透明圧電シートは、第3観点に係る透明圧電シートにおいて、
前記第1接着剤層が、前記透明圧電体膜に沿って延長して、前記第2接着剤層と連結している。
【0010】
本発明の第5観点に係る透明圧電シートは、第1〜第4観点のいずれかに係る透明圧電シートにおいて、
前記第1透明平板電極の前記透明圧電体膜から遠い面に配置された第1基材層と、
前記第2透明平板電極の前記透明圧電体膜から遠い面に配置された第2基材層と
を更に含む。
【0011】
本発明の第6観点に係る透明圧電シートは、第1〜第5観点のいずれかに係る透明圧電シートにおいて、
前記透明圧電体膜が有機重合体を含有する。
当該透明圧電シートは、有機重合体を含有することにより、大面積での生産が可能である。また、可撓性を有するので、表示装置やタッチ位置検出用タッチパネルに貼り付けて用いるときに、曲げながら、これらの表面に貼り付けることができる。これにより、容易かつ正確な貼り付けが可能である。
【0012】
本発明の第7観点に係る透明圧電シートは、第6観点に係る透明圧電シートにおいて、
前記有機重合体がフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、およびポリフッ化ビニリデン共重合体から選択される有機重合体である。
【0013】
本発明の第8観点に係る透明圧電シートは、第1〜第7観点のいずれかに係る透明圧電シートにおいて、
前記粘着材層が、基材層を有するアクリル系両面粘着シートからなる。
【0014】
本発明の第9観点に係る透明圧電シートは、第1〜第8観点のいずれか係る透明圧電シートにおいて、
タッチパネル用である。
【0015】
本発明の第10観点に係る透明圧電シートは、第1〜第9観点のいずれか1項に記載の透明圧電シートにおいて、
タッチ圧検出用である。
【0016】
本発明の第11観点に係る透明圧電シートは、第1〜第10観点のいずれかに係る透明圧電シートにおいて、
タッチ位置検出用タッチパネルと組み合わせて用いられる。
第1〜第10観点のいずれかに係る透明圧電シートはタッチ圧を検出できるので、タッチ位置検出用タッチパネルにタッチ圧検出機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の、透明圧電シートは、高い光透過率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の透明圧電シートの一実施形態の構成を示す側面断面図である。
【図2】本発明の透明圧電シートの一実施形態の構成を示す側面断面図である。
【図3】本発明の透明圧電シートの一実施形態の構成を示す側面断面図である。
【図4】本発明の透明圧電シートの一実施形態の構成を示す側面断面図である。
【図5】実施例および比較例の透明圧電シートの構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。理解し易さを優先するため、これらの図面は、各寸法の比を正確に表してはいない。また、以下で説明される構成要件が、全て、本発明に必須の構成要件であるということではない。なお、以下の図において同符号のものは同様の意味を表す。
本明細書中、「共重合体」なる用語は、特に限定の無い限り、ランダム共重合体、ブロック共重合体、およびグラフト共重合体等を包含することを意図して用いられる。
本明細書中、「透明」なる用語は、光透過性を有すること、より具体的には、ASTM D1003に記載の方法に準じた方法で測定した全光線透過率が40%以上であることを意味する。
【0020】
本発明の透明圧電シートは、
透明圧電体膜と、
前記透明圧電体膜の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層と、
前記第1接着剤層の前記透明圧電体膜とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極と、
前記透明圧電体膜の第2主面に配置された第2透明平板電極と
を含む。
【0021】
本発明の透明圧電シートは、
透明圧電体膜の一方の主面に、接着剤層を介して透明平板電極が配置されていればよく、他方の主面においては、透明圧電体膜に接触して、透明平板電極が直接配置されていればよい。
しかし、より高い光透過率を得る観点からは、透明圧電体膜の両方の主面において、接着剤層を介して透明平板電極が配置されていることが、好ましい。
一方、より高い圧電性を得る観点からは、透明圧電体膜の一方の主面のみにおいて、接着剤層を介して透明平板電極が配置されていることが、好ましい。
【0022】
透明圧電体膜の一方の主面に、接着剤層を介して透明平板電極が配置されている態様としては、例えば、次の実施形態1が挙げられる。
【0023】
<実施形態1>
実施形態1の透明圧電シートは、図1に示すように、
透明圧電体膜10と、
前記透明圧電体膜10の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層20と、
前記第1接着剤層20の前記透明圧電体膜10とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極30と、
前記透明圧電体膜10の第2主面に配置された第2透明平板電極40と
を含む。
前記第1接着剤層20は、前記透明圧電体膜10に沿って延長して、前記第2透明平板電極40と接着している。
【0024】
すなわち、透明圧電体膜10の第1主面においては、第1接着剤層20を介して、第1透明平板電極30が配置されている。
一方、透明圧電体膜10の第2主面においては、透明圧電体膜10に接触して、第2透明平板電極40が直接配置されている。
【0025】
透明圧電体膜10の両方の主面に、接着剤層を介して透明平板電極が配置されている態様としては、例えば、次の実施形態2が挙げられる。
【0026】
<実施形態2>
実施形態2の透明圧電シートは、図2に示すように、
透明圧電体膜10と、
前記透明圧電体膜10の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層20と、
前記第1接着剤層20の前記透明圧電体膜10とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極30と、
前記透明圧電体膜10の第2主面に隣接して配置された第2接着剤層50と、
前記第2接着剤層50の前記透明圧電体膜10とは反対側の面に隣接して配置された第2透明平板電極40と
を含む。
【0027】
すなわち、透明圧電体膜10の第1主面においては、第1接着剤層20を介して、第1透明平板電極30が配置されている。一方、透明圧電体膜10の第2主面においては、第2接着剤層50を介して、第2透明平板電極40が配置されている。
【0028】
この実施態様2においては、第1接着剤層20と第2接着剤層50とは、分離しているが、透明圧電体膜10の両方の主面に、接着剤層を介して透明平板電極が配置されている態様においては、透明圧電体膜10と、第1透明平板電極30および第2透明平板電極40との間の空間を充填している限り、どのような形態であってもよい。
別の形態としては、例えば、次の実施態様3が挙げられる。
【0029】
<実施形態3>
実施形態3の透明圧電シートは、図3に示すように、
透明圧電体膜10と、
前記透明圧電体膜10の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層20と、
前記第1接着剤層20の前記透明圧電体膜10とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極30と、
前記透明圧電体膜10の第2主面に隣接して配置された第2接着剤層50と、
前記第2接着剤層50の前記透明圧電体膜10とは反対側の面に隣接して配置された第2透明平板電極40と
を含み、
ここで、前記第1接着剤層20が、前記透明圧電体膜10に沿って延長して、前記第2接着剤層50と連結して一体となり、第3接着剤層60を構成している。
【0030】
本発明の透明圧電シートは、透明圧電体膜、接着剤層、および透明平板電極に加えて、その他の層を有していてもよい。このような層としては、例えば、基材層が挙げられる。
基材層を有する透明圧電シートとしては、例えば、次の実施形態4が挙げられる。
【0031】
<実施形態4>
図4に示すように、実施形態4の透明圧電シートは、
透明圧電体膜10と、
前記透明圧電体膜10の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層20と、
前記第1接着剤層20の前記透明圧電体膜10とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極30と、
前記透明圧電体膜10の第2主面に隣接して配置された第2接着剤層50と、
前記第2接着剤層50の前記透明圧電体膜10とは反対側の面に隣接して配置された第2透明平板電極40と
を含む。
また、実施形態4の透明圧電シートは、
前記第1透明平板電極30の前記透明圧電体膜10から遠い面に配置された第1基材層70と、
前記第2透明平板電極40の前記透明圧電体膜10から遠い面に配置された第2基材層80と
を更に含む。
図4では、第1基材層70は、第1透明平板電極30に隣接して配置され、第2基材層80は、第2透明平板電極40に隣接して配置されている。
【0032】
本発明の透明圧電シートにおける透明圧電体膜としては、圧電性および透明性を有するものであれば、特に限定されないが、有機重合体を含有するものが好ましい。
当該有機重合体としては、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
本発明で用いられる透明圧電体膜として、より好ましくは、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーから形成される透明圧電体膜である。
なかでも、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体から形成される透明圧電体膜が特に好ましい。
【0033】
当該透明圧電体膜の厚さは、通常、1μm〜200μmであり、透明性の観点から好ましくは、50μm以下であり、タッチ圧の検出感度の観点から好ましくは、20μm〜100μmである。
【0034】
本発明の透明圧電シートにおける接着剤層(第1接着剤層、第2接着剤層)としては、透明であり、透明圧電体膜と透明平板電極とを接着でき、かつ透明圧電体膜と透明平板電極との間の空間を充填できるものであれば、特に限定されず、均一な層であっても、不均一な層であってもよい。本発明の透明圧電シートにおける接着剤層は、好ましくは例えば、基材層を有するアクリル系両面粘着シートからなる。
アクリル系両面粘着シートは、市販品にて入手することができる。
本発明の透明圧電シートにおける接着剤層は、アクリル系両面粘着シートのような粘着シートの積層体(ラミネート)であってもよい。
【0035】
本発明の透明圧電シートにおける透明平板電極(第1透明平板電極、第2透明平板電極)としては、例えば、ITO(酸化インジウム・スズ)、および酸化スズ等の無機電極、ならびにチオフェン系導電性ポリマー、ポリアニリン、およびポリピロール等の導電性ポリマーから選択される電極を用いることができる。
【0036】
本発明の透明圧電シートにおける基材層(第1基材層、第2基材層)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート(PETシート)等の樹脂シートを用いることができる。
【0037】
<製造方法>
本発明の透明圧電シートは、例えば、下記の工程を含む方法によって、製造することができる。
(1)透明圧電体膜を用意する工程
(2)透明圧電体膜の主面に接着剤層を配置する工程
(3)接着剤層の、透明圧電体膜側とは反対側の主面に、透明平板電極を配置する工程
【0038】
工程(1)においては、上記のようなポリマーから慣用の用法で、透明膜を形成される。このような膜は、市販品にて入手してもよい。
当該膜は、所望により、圧電性向上の観点から、延伸処理を行ってもよい。ここで、延伸は、一軸方向の3〜10倍延伸が好ましい。当該延伸処理は、慣用の方法によって行えばよい。
当該膜への圧電性の付与の方法は、膜を構成するポリマーによっても異なるが、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、またはポリフッ化ビニリデン等から形成されるに圧電性を付与するには、分極処理(ポーリング処理とも称される。)を行えばよい。
当該分極処理は、コロナ放電処理、または慣用の方法によって行うことができる。例えば、フィルムの両面から金属電極等で挟み込み、30〜400MV/mの直流電界、0.1秒〜60分間、の印加を実施する。
工程(2)においては、透明圧電体膜の主面に、液状の接着剤を塗布すること、または両面粘着シート(例、アクリル系両面粘着シート)を貼り付けることによって、接着剤層が形成される。
工程(3)は、接着剤層の上に、膜状またはシート状の透明平板電極を載置することによって、透明平板電極を配置できる。当該透明平板電極は、透明平板電極を備えた樹脂シート(例、ポリエチレンテレフタレートシート(PETシート))における透明平板電極であってもよい。この場合、透明平板電極側を接着剤層に向けて載置する。
【0039】
<使用方法>
本発明の透明圧電シートは、その表面に圧を加えることで、その圧の大きさに応じた電圧を生じる。第1透明平板電極および第2透明平板電極によって、この電圧信号を検出回路に伝達することによって、上記の圧の大きさを検出または測定することができ、タッチ圧検出用に使用することができる。
本発明の透明圧電シートは、タッチ圧を検出できるので、タッチ位置検出用タッチパネルと組み合わせて使用することにより、タッチ圧とタッチ位置を同時に検出または測定することができる。
特に、本発明の透明圧電シートは、高い透明性を有するので、タッチ位置検出用タッチパネルに組み合わせて使用した場合でも、表示装置によって表示される画像の鮮明さを損なわない。
【0040】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の更なる変形例が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
(樹脂膜の製造)
下記の製造法により、膜厚100μmのポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体膜(モル比 80:20)を製造した。
膜厚100μmの膜は、ポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(モル比 80:20)のメチルエチルケトン溶液をPET基材上に流延し、150℃で溶媒を気化させて成形した。このものを一軸延伸機により110℃で延伸した。得られた延伸膜は約4.5倍延伸されており、厚さは約25μmであった。
(接着力試験)
ITO蒸着PETフィルム(膜厚125μm;株式会社トービ社製)のITO蒸着面と前記延伸膜を、接着剤層として用いるコア付きアクリル系両面粘着シート:NeoFix20(20μm)(日栄化工(株)製)を用いて張り合わせ、接着力試験(JIS Z152
8準拠:180°剥離)を行った。その結果、4.6N/20mmと十分な接着力を示した。
【0042】
(分極操作)
金属電極を用いて上記延伸膜を上下から挟み、室温で1,200kV/cmの直流電界を5分間印加して分極し、透明圧電体膜として用いる圧電膜を得た。
(圧電膜と電極の張り合わせ)
基材層(コア)付きアクリル系両面粘着シート:NeoFix20(20μm)(日栄化工(株)製)を用いて、上記分極処理膜とITO蒸着PETフィルムのITO蒸着面を内側
にした状態で、圧電膜とITO蒸着PETフィルムの張り合わせを行い、下記の比較例1、実施例1、および実施例2のサンプルを作成した。
比較例1:図5(a)に概略図を示すように、圧電膜には粘着シートがかからない状態で、ITO蒸着PETフィルムのITO面で圧電膜を挟み込んだもの(ITO電極と圧電膜は直接接触している)。
実施例1:図5(b)に概略図を示すように、圧電膜の片面のみ、その全体を粘着シートで覆い、ITO蒸着PETフィルムのITO面で圧電膜を挟み込んだもの(ITO電極と圧電膜は直接接触している)。
実施例2:図5(c)に概略図を示すように、圧電膜の両面および側面を粘着シートで覆い、ITO蒸着PETフィルムのITO面で圧電膜を挟み込んだもの(ITO電極と圧電膜は直接接触していない)。
なお、図5中の符号は、図1〜図4における符号と同様の意味を示す。
【0043】
(光学特性の測定)
(1)光透過性試験:TL
(株)東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用し、ASTM D1003に記載の方法に基づいて光透過率を測定した。
(2)HAZE試験
(株)東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用し、ASTM D1003に記載の方法に基づいてHAZE値(ヘイズ値)を測定した。
測定の結果を次表に示す。これから明らかなように、接着剤層を透明平板電極と透明圧電体膜の間に配置することによって、光透過率の改善が確認された。これは、空気層が無くなったことによると推測される。
【表1】

*については張り合わせ前の部材の値
1)ヘイズ値については、張り合わせの際に気泡が入り込んだことにより上昇した。
【0044】
(電圧信号の検出)
重さ50gの金属棒を比較例1、実施例1、および実施例2のサンプルに高さ3mmから自由落下させ、そこから得られる信号電圧を、ポケットサイズUSBデジタルストレージオシロスコープ(UDS−5252;日本データ株式会社製)を用いて、上下のITO蒸着PETフィルムから取り出した端子線と接続して測定した。結果を表2に示す。これから明らかなように、いずれのサンプルにおいても電圧信号を検出することができた。
【表2】

【0045】
以上から、粘着シートを用いて圧電膜と透明平板電極面を直接貼り合わせることにより透明性を向上させ、かつ電圧信号を取り出すことができる事が確認された。
【符号の説明】
【0046】
10 透明圧電体膜
20 第1接着剤層
30 第1透明平板電極
40 第2透明平板電極
50 第2接着剤層
60 第3接着剤層
70 第1基材層
80 第2基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明圧電体膜と、
前記透明圧電体膜の第1主面に隣接して配置された第1接着剤層と、
前記第1接着剤層の前記透明圧電体膜とは反対側の面に隣接して配置された第1透明平板電極と、
前記透明圧電体膜の第2主面に配置された第2透明平板電極と
を含む
透明圧電シート。
【請求項2】
前記第1接着剤層が、前記透明圧電体膜に沿って延長して、前記第2透明平板電極と接着している
請求項1に透明圧電シート。
【請求項3】
前記透明圧電体膜と前記第2透明平板電極との間に位置し、かつ当該透明圧電体膜と当該第2透明平板電極とに隣接している第2接着剤層を更に含む
請求項1に透明圧電シート。
【請求項4】
前記第1接着剤層が、前記透明圧電体膜に沿って延長して、前記第2接着剤層と連結している
請求項3に記載の透明圧電シート。
【請求項5】
前記第1透明平板電極の前記透明圧電体膜から遠い面に配置された第1基材層と、
前記第2透明平板電極の前記透明圧電体膜から遠い面に配置された第2基材層と
を更に含む
請求項1〜4のいずれか1項に透明圧電シート。
【請求項6】
前記透明圧電体膜が有機重合体を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明圧電シート。
【請求項7】
前記有機重合体がフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、およびポリフッ化ビニリデン共重合体から選択される有機重合体である、請求項6に記載の透明圧電シート。
【請求項8】
前記接着剤層が、基材層を有するアクリル系両面粘着シートからなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明圧電シート。
【請求項9】
タッチパネル用である請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明圧電シート。
【請求項10】
タッチ圧検出用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明圧電シート。
【請求項11】
タッチ位置検出用タッチパネルと組み合わせて用いられる請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明圧電シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−222679(P2011−222679A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89066(P2010−89066)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】