説明

透明基板用積層フィルム

【課題】透明性及び高温における熱寸法安定性に優れ簡易な製造工程を用いて製造することが可能な、透明積層フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの両面に硬化性樹脂組成物の硬化層を積層した構成の積層フィルムであって、温度200℃における積層フィルムの縦方向の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が、同条件における基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)よりも大きく、かつ積層フィルムの全光線透過率が80%以上であることを特徴とする、透明積層フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池、有機系太陽電池、フレキシブルディスプレイ、有機EL照明、タッチパネルなどの何れかの透明基板として使用される透明基板用積層フィルムに関する。詳しくは、高い透明性を備えると共に、例えば回路形成や各種素子を該フィルムに配置する際などに加熱を行った時の寸法安定性に優れた透明基板用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
照明や表示部材、太陽電池、有機系太陽電池、フレキシブルディスプレイ、有機EL照明などで使用される基板や、フロントシート、バックシートなどには、透明性、軽量性、フレキシブル性のほか、高い耐熱性などの様々な性質が求められる。
【0003】
従来、有機ELなどの各種表示素子や、太陽電池などの基板材料として、ガラスが用いられてきた。しかしながら、ガラスは、割れやすい、重い、薄型化困難などの欠点があったばかりか、近年のディスプレイの薄型化及び軽量化や、ディスプレイのフレキシブル化に関してガラスは十分な材質を有していなかった。そのため、ガラスに代わる代替材料として、薄型でかつ軽量の透明樹脂製のフィルム状基板が検討されている。
【0004】
このような用途において、フィルム状の樹脂製基板を用いる場合、フィルムには高い耐熱性が求められる。例えば、フィルム上にTFTなどの回路を形成する場合、回路形成時にパターンずれを起こさないために、TFTの熱処理温度である200℃前後での高い寸法安定性がフィルムには求められる。
しかし、従来の通常のポリエステルフィルムは、150℃以上(具体的には150℃〜200℃)の高温雰囲気下における熱寸法安定性が不十分であった。
そのため、近年、ガスバリア加工用フィルムや、フレキシブルディスプレイ基板用フィルムとして、高い熱寸法安定性を有する樹脂フィルムが求められている。
【0005】
高温下における寸法安定性を樹脂フィルムに付与する手段としては、例えば特許文献1において、フィルム製造工程の最終手段として熱弛緩処理(「アニール処理」「ヒートセット処理」とも称される)を付加する方法が開示されている。
また、特許文献2及び3には、通常の工程によって製造したフィルムの表面に各種塗膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、ポリマー基板及び平坦化コーティング層を含むフィルムであって、かかるコーティング層の表面上に形成されたバリア層を有する複合フィルムについて開示されている。かかる複合フィルムは、ポリマー基板がヒートセット及び熱安定化されているので、高い寸法安定性を有する。
【0007】
さらに特許文献5には、平均線膨張係数が50ppm/K以下である層(A層)と、引張弾性率が1GPa以下である層(B層)とを備えた透明多層シートについて開示されている。より具体的には、B層/A層/B層の3層からなる透明多層シートなどが開示され、かかる多層シートは、全光線透過率が91%及び平均線膨張係数が43ppm/Kであって、透明性と寸法安定性に優れることが開示されている。
【0008】
また、特許文献6には、高温時の寸法安定性が高く、透明性の高いポリイミドやポリアミドなどが開示されている。これらは流延法によって製膜していることから配向が殆ど存在しないため、加熱を行った際の収縮は発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−265318号公報
【特許文献2】特開2001−277455号公報
【特許文献3】特許第2952769号
【特許文献4】特表2011−518055号公報
【特許文献5】特開2007−298732号公報
【特許文献6】特開昭61−141738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載に記載されているように、従来タッチパネルなどの基材シートとして用いる透明樹脂フィルムは、高温(例えば200℃以上)での寸法安定性を高めるために、ヒートセット処理を施して製造するのが一般的であった。そのため、製造工程が複雑になり、フィルム自体の製造コストが高くなってしまうという課題を抱えていた。
【0011】
そこで本発明の目的は、このような従来技術の問題を鑑み、液晶表示素子基板、カラーフィルター基板、有機EL表示基板、太陽電池基板及びタッチパネル基板などの透明基板として好適に使用するために、透明性及び高温(例えば200℃以上)における熱寸法安定性に優れ、しかも簡易な製造工程によって製造することができる、新たな積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
液晶表示素子基板、カラーフィルター基板、有機EL表示基板、太陽電池基板及びタッチパネル基板などの透明基板として好適に使用するための積層フィルムを提供するべく、透明性及び高温(例えば200℃以上)における熱寸法安定性に優れ、しかも簡易な製造工程によって製造することができる新たな積層フィルムについて検討した結果、基材フィルムの表裏両側に硬化層を有する透明基板用積層フィルムであって、当該積層フィルムと硬化層とが特定の関係にあるように積層フィルムを構成することにより、上記の課題を解決し得る新たな積層フィルムを提供できることを見出したものである。
【0013】
すなわち本発明は、液晶表示素子基板、カラーフィルター基板、有機EL表示基板、太陽電池基板及びタッチパネル基板からなる群から選択されるいずれかの透明基板として使用される透明基板用積層フィルムであって、基材フィルムの表裏両側に硬化層を有する透明基板用積層フィルムであり、該積層フィルムは、以下の(1)又は(2)の構成を有し、かつ全光線透過率が80%以上であることを特徴とする、透明基板用積層フィルムを提案するものである。
(1)硬化層の厚み合計が基材フィルムの厚みを越える。
(2)基材フィルムが2軸延伸ポリエステルフィルムであり、硬化層が光硬化性樹脂を含み、硬化層の厚み合計が前記基材フィルムに対して10〜150%であり、且つ、温度200℃における積層フィルムの縦方向及び横方向の各々の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が0.35GPa以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する透明積層フィルムは、従来のようにヒートセット処理を行わなくても、透明性及び高温(例えば200℃以上)における熱寸法安定性に優れた透明積層フィルムを得ることができる。そのため、簡易な製造工程によって、透明性及び高温(例えば200℃以上)における熱寸法安定性に優れた透明積層フィルムを得ることができる。
また、このように本発明が提案する透明積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に設けられた硬化層が、高温時に基材フィルムが収縮しようとする応力に耐えることができるので、透明性を維持しつつ、加熱処理による寸法変化(熱寸法安定性)が少ないという利点がある。
よって、本発明が提案する透明積層フィルムは、例えば液晶表示素子基板、カラーフィルター基板、有機EL表示基板、太陽電池基板及びタッチパネル基板などの透明基板として特に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】後述する第3実施形態の一例に係る透明積層フィルムに関し、各層における貯蔵弾性率(E´)変化及び熱機械特性試験(TMA)による寸法変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<透明積層フィルム>
本発明の実施形態の一例に係る透明積層フィルム(以下、「本積層フィルム」と称する。)は、基材フィルムの表裏両側に硬化層を有する透明積層フィルムである。
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に所定の硬化層を有するため、高温領域における基材フィルムの収縮応力に当該硬化層が対抗して収縮を緩和することができる。そのため、高温時の収縮に対する本積層フィルムの寸法安定性を向上させることができる。
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両面に硬化層を直接重ねて積層してもよいし、また、基材フィルムと当該硬化層との間に他の層を介在させてもよい。例えば、基材フィルムと当該硬化層との間にアンカーコート層などを介在させることができる。
【0018】
<硬化層>
硬化層は、硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物によって形成された層であるから、硬化性樹脂組成物を含む層である。
かかる硬化層は、高温時(例えば200℃以上)における本積層フィルムの貯蔵弾性率(E´)を、同条件における基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)より大きくして、本積層フィルムに高い寸法安定性を付与する役割を持つように形成するのが好ましい。
なお、本積層フィルムの「硬化層」は、基材フィルムの表裏両側に、硬化性樹脂組成物を塗布し“硬化”させて形成するのが通常であるため、“硬化層”という名称とした。但し、硬化層の形成方法をそのような方法に限定するものではない。
【0019】
(硬化層の厚み)
前述した液晶表示素子基板などの透明基板として好適な積層フィルムとするためには、上記(1)に示す条件のように、表裏両側の硬化層の厚みの合計を基材フィルムの厚みよりも大きくするのが好ましい。
表裏両側の硬化層の厚みの合計を基材フィルムの厚みよりも大きくすることで、本積層フィルムの高温時の貯蔵弾性率を高く保持することができ、温度200℃における本積層フィルムの貯蔵弾性率(E´)を、基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)よりも大きくすることができ、高い寸法安定性を付与することができる。
かかる観点から、前記硬化層の厚み合計は、基材フィルムの厚みの100%より大きいことが好ましく、特に100%以上或いは400%以下であることがより一層好ましく、中でも特に150%以上或いは300%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
他方、表裏両側の硬化層の厚みの合計を基材フィルムの厚みよりも大きくしなくても、下記(2)の条件を満足するように積層フィルムを形成することにより、前述した液晶表示素子基板などの透明基板として好適な本積層フィルムとすることができる。
(2)基材フィルムが2軸延伸ポリエステルフィルムであり、硬化層が光硬化性樹脂を含み、硬化層の厚み合計が前記基材フィルムに対して10〜150%であり、且つ、温度200℃における積層フィルムの縦方向及び横方向の各々の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が0.35GPa以上である。
【0021】
さらに、上記いずれの本積層フィルムにおいても、次の(3)又は(4)に示すように、硬化層を形成するのがさらに好ましい。その中でも(3)及び(4)の両方を満足するように、硬化層を形成するのがより一層好ましい。
ちなみに、高い剛性を持つ粒子により基材の収縮応力を相殺する点からは、下記(4)の方法を採用して硬化層を形成するのが好ましい。
【0022】
(3)硬化性樹脂組成物を適宜選択することによって、高温時(例えば200℃以上)の貯蔵弾性率(E´)が基材フィルムよりも大きい硬化層を形成する。より具体的には、硬化層を形成する材料として、剛直な骨格を有する分子をもつ硬化性樹脂組成物を用いたり、3次元網目構造を形成できる硬化性樹脂組成物を用いたりすればよい。
(4)微粒子を充填した硬化層を形成する。
【0023】
(硬化性樹脂組成物)
硬化層を形成するための硬化性樹脂組成物としては、例えば、有機シロキサン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などの光透過性をもつ光硬化性樹脂を含む組成物や、透明ポリイミド前駆体ワニスなどを含む組成物を挙げることができる。これらの中でも、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する組成物や、透明ポリイミド前駆体ワニスを含む組成物を用いることが好ましい。
【0024】
かかる(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレートモノマーや、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、フルオレン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを例示することができる。
迅速に硬化反応を進行させる観点から、アクリレートモノマー、ウレタンアクリレート及びエポキシアクリレートを用いることが好ましい。
なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記の他にも、例えば、硬化層の硬化性、吸水性及び硬度などの物性を調整するために、(メタ)アクリレートモノマーや、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマーを、上記硬化性樹脂組成物に対して任意で添加することができる。これらは、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
前述の条件(3)、すなわち高温時(例えば200℃以上)の貯蔵弾性率(E´)が基材フィルムよりも大きい硬化層を形成するための硬化性樹脂組成物として、分子中に剛直な骨格を有する光硬化性樹脂を含む組成物と多官能光硬化性樹脂を含む組成物を挙げることができる。
【0027】
分子中に剛直な骨格を有する上記光硬化性樹脂としては、例えば環状脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、環状アセタール、環状ケトン、シロキサン、シルセスキオキサンなどの骨格を分子中に有し、且つガラス転移温度(Tg)が200℃よりも高い光硬化性樹脂を挙げることができる。
【0028】
他方、上記多官能光硬化性樹脂としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等のアクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートをモノマー成分とする樹脂を挙げることができる。
このような多官能光硬化性樹脂を用いることで、3次元網目構造を有する硬化層を形成することができ、硬化層が高い貯蔵弾性率(E´)を保持することができる。
【0029】
以上の中でも、芳香族炭化水素であるフルオレン骨格を分子中に有する硬化性樹脂や、シルセスキオキサン骨格を有する硬化性樹脂は、耐熱性が非常に高く、さらに硬化反応が迅速である面から好ましい。
なお、光硬化性樹脂は、必要に応じて上記に挙げた樹脂の中の1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
これらの光硬化性樹脂は、硬化層中に30〜100質量%含まれることが好ましく、中でも30質量%以上或いは70質量%以下、その中でも35質量%以上或いは50質量%以下であるのがより一層好ましい。
【0031】
上記の硬化性樹脂組成物には、上記光硬化性樹脂以外の成分として、他の光硬化性のオリゴマー・モノマーや光開始剤、増感剤、架橋剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、充填材、熱可塑性樹脂等を、硬化や透明性、吸水性等の物性に支障とならない範囲で含有することができる。
【0032】
特に、活性エネルギー線として紫外線照射を応用する場合は、光開始剤は必須である。該光開始剤としては、例えばベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系及びパーオキシド系等を使用することができる。
上記の光開始剤の具体例としては、例えばベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等を例示することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記光開始剤の量は、組成物の硬化性等に応じて適宜調整される。典型的な光開始剤の量としては、上記硬化性樹脂組成物100質量部に対して1〜10質量部である。
【0033】
また、上記硬化性樹脂組成物は、必要によって溶剤を添加して使用することができる。溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、さらにシクロヘキサノン、イソプロパノール等が例示される。
これら溶剤の使用量は、特に制限されるものではない。通常、硬化性樹脂組成物の固形分全体量100質量部に対して0〜300質量部である。
【0034】
(微粒子)
前述の条件(4)のように、基材フィルムの表裏両側に、微粒子(「フィラー」とも称する)を充填した硬化層を形成することによっても、温度200℃における本積層フィルムの貯蔵弾性率(E´)を、基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)よりも大きくすることができる。
【0035】
硬化層に含有する微粒子としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ソーダガラス、ダイヤモンド等の透明性を有する無機微粒子を挙げることができる。これらの中でも、硬化層の貯蔵弾性率を向上させることができる点、比重や価格等の点から、酸化ケイ素微粒子が好ましい。
【0036】
酸化ケイ素微粒子は、表面修飾されたものが多数開発されており、光硬化性樹脂への分散性が高く、均一な硬化膜を形成することができる。酸化ケイ素微粒子の具体例としては、乾燥された粉末状の酸化ケイ素微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)等を挙げることができる。これらの中でも、分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いるのが好ましい。
分散性を向上させる目的であれば、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等によって表面処理された酸化ケイ素微粒子や、表面に対して易分散処理をされた酸化ケイ素微粒子であってもよい。
【0037】
上記微粒子は、平均粒子径が1nm〜1000nmの範囲にある微粒子が好適に用いられる。中でも、透明性を確保する観点から、平均粒子径が200nm以下の微粒子がより好適に用いられる。平均粒子径が、かかる範囲にある微粒子を使用することで、ミー散乱現象によって入射する光に対して散乱現象を起こすことがなく、透明性を確保することができる。なお、上記微粒子の形状が球状でない場合においては、短径と長径の算術平均値をもって平均粒子径とする。
【0038】
硬化層に入射する屈折光の量を低減させるためには、微粒子の屈折率が1.6未満であることが好ましい。
中でも、透明性向上の観点から、硬化性樹脂組成物中の樹脂、特に硬化性樹脂組成物の主成分をなす樹脂と微粒子(フィラー)との屈折率差が0.2未満である微粒子を用いるのが好ましい。
【0039】
さらに上記微粒子としては、粒子径の相対標準偏差が50%以下であるものが特に好適である。
微粒子を硬化層中に高い密度で充填させるには、例えば50体積%以上となるように充填させるには、隣接する粒子の粒子間距離を小さくし、硬化層中の微粒子を最密充填構造に近い充填状態とすることが効果的である。そのためには、粒子径の相対標準偏差が50%以下であるような粒径の揃った微粒子を用いることが好ましい。このような微粒子を用いることにより、高温時の基材フィルムの配向に由来し発生する収縮による寸法変化を低減することができる。
【0040】
硬化層全体における上記微粒子の含有率としては、50体積%以上であることが好ましく、中でも55体積%以上或いは90体積%以下であることがより好ましく、さらにその中でも65体積%以上或いは80体積%以下、その中でも特に72体積%以上であることがさらに好ましい。
上記微粒子を50体積%以上硬化層に含ませると、当該微粒子は最密充填により近い状態で充填されることになり、72体積%以上となると理論的に最密充填となる。
このような範囲で微粒子を含有することにより、加熱時に基材フィルムの配向などに由来し発生する収縮による寸法変化を硬化層の弾性率によって低減させることが可能となる。
【0041】
<基材フィルム>
本積層フィルムに用いる基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、透明ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィンホモポリマー、環状オレフィンコポリマー等の環状オレフィン系樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。
【0042】
これらの中でも、透明であり且つ融点が220℃以上であるか、又はガラス転移温度(Tg)が200℃以上であるという観点から、該基材フィルムには、ポリエーテルイミド樹脂(Tg234℃、融点275℃)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(Tg223℃、融点280℃)、ポリエーテルサルフォン樹脂(Tg225℃)、ポリエチレンナフタレート樹脂(Tg155℃、融点270℃)、透明ポリイミド樹脂(Tg250℃以上)などの樹脂からなるフィルムを使用するのが好ましい。
これらは一種類又は二種類以上の樹脂を組み合わせて含有するフィルムを使用することができる。
【0043】
なお、上記透明ポリイミド樹脂としては、ポリイミド樹脂の主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン結合を導入したものや、ポリイミド中の水素をフッ素に置換したフッ素化ポリイミドの他、ポリイミド樹脂の構造中に含まれる環状不飽和有機化合物を水添した脂環式ポリイミドなどを挙げることができる。例えば特開昭61−141738号公報、特開2000−292635号公報等に記載されたものを使用することもできる。
【0044】
ところで、表裏両側の硬化層の厚みの合計が基材フィルムの厚みよりも小さい場合には、上記(2)の条件のように、基材フィルムとして2軸延伸ポリエステルフィルムを採用するのが好ましい。
【0045】
(ヒートセット処理)
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に所定の硬化層を設けたことにより、基材フィルムに対してヒートセット処理を行わなくても、透明性及び高温(例えば200℃以上)における熱寸法安定性に優れた透明積層フィルムを得ることができる。しかしながら、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされたフィルムを使用することも可能である。
基材フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布する前に、予め基材フィルムにヒートセット処理を施すことにより、基材フィルム及び本積層フィルムの寸法安定性をさらに向上させることができる。
中でも、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされた2軸延伸ポリエステルフィルムは、基材フィルムとして好ましい一例である。
【0046】
基材フィルムのヒートセット処理は、該基材フィルムのガラス転移温度をTgとした際、Tg〜Tg+100℃の温度で0.1〜180分間、該基材フィルムを加熱処理するのが好ましい。
【0047】
ヒートセット処理の具体的手法は、必要な温度、時間を維持できる方法であれば特に限定されない。例えば、必要な温度に設定したオーブンや恒温室で保管する方法、熱風を吹き付ける方法、赤外線ヒーターで加熱する方法、ランプで光を照射する方法、熱ロールや熱板と接触させて直接的に熱を付与する方法、マイクロ波を照射する方法などが使用できる。また、取扱が容易な大きさにフィルムを切断してから加熱処理しても、フィルムロールのままで加熱処理してもよい。さらに、必要な時間と温度を得ることができる限りにおいては、コーター、スリッター等のフィルム製造装置の一部分に加熱装置を組み込み、製造過程で加熱を行うこともできる。
【0048】
(基材フィルムの厚み)
基材フィルムの厚みは、1μm〜200μmであることが好ましく、5μm以上或いは100μm以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることで、光線透過率の向上、ハンドリング性能が高いなどの利点を得ることができる。
【0049】
<本積層フィルムの物性>
次に、本積層フィルムが備えることができる各種物性について説明する。
【0050】
(全光線透過率)
本積層フィルムは、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。本積層フィルムがかかる範囲の全光線透過率を有することで、照明やディスプレイ等では光の減衰を抑えることができ、より明るくなる。また、太陽電池部材としてはより多くの光を取り込めるなどの利点を得ることができる。
【0051】
(貯蔵弾性率(E´))
本積層フィルムは、温度200℃における少なくとも一方向、例えば縦方向の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が、同条件における基材フィルムの少なくとも一方向、例えば縦方向の貯蔵弾性率(E´)よりも大きいという特徴を有している。
中でも、温度200℃における積層フィルムの少なくとも一方向、例えば縦方向(MD方向)の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が、同条件における基材フィルムの少なくとも一方向、例えば縦方向の貯蔵弾性率(E´)の1.0倍を越えることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましい。かかる範囲であれば、高温での熱処理をフィルムに施した際、基材の収縮応力に対して縮まず、フィルムとしての形態を保つことができる。
【0052】
また、本積層フィルムは、温度200℃において、少なくとも一方向、例えば縦方向、好ましくは縦方向及び横方向の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が、0.35GPa以上、特に1GPa以上であることが好ましい。かかる範囲であれば、高温時での寸法安定性が高く、実用特性上問題となることがないため好ましい。なお、上記貯蔵弾性率(E´)値の上限値は、後加工適正の観点から、100GPa以下であることが好ましい。
【0053】
(加熱収縮率)
本積層フィルムは、JIS−C23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて測定される220℃で10分間加熱した際の縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の収縮率がいずれも1.0%未満であることが好ましい。本積層フィルムがかかる範囲の収縮率を有することで、回路や素子を形成する際の寸法ズレを少なくし、また無機バリア層を積層させる際にもより高いバリア性を得られる利点を有する。
また、同条件で測定される250℃での本積層フィルムの縦方向及び横方向の収縮率がいずれも、0.5%未満であることが好ましく、特に0.1%未満であることが好ましい。かかる範囲の収縮率を有することで、上記利点をより向上することが可能となる。
【0054】
<本積層フィルムの製造方法>
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に、硬化性樹脂組成物などを塗布して硬化させて硬化層を形成することにより製造することができる。
【0055】
硬化性樹脂組成物などを塗工する方法としては、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ディップコートなどによって、上記硬化性樹脂組成物を基材フィルムに塗工する方法を挙げることができる。また、ガラスやポリエステルフィルム上で硬化層を成型した後、成型した硬化層を基材フィルムに転写させる方法も有効である。
【0056】
以上のように硬化性樹脂組成物を基材フィルムに塗工した後、該硬化性樹脂組成物を硬化(架橋)させる方法としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化等の方法を単独又は組み合わせて用いることができる。中でも、短時間かつ比較的容易に硬化達成可能なことから、紫外線硬化による方法を用いることが好ましい。
紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整される。
また高圧水銀灯を使用する場合、80〜160W/cmの光量を有したランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。
一方、電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置の使用が好ましい。
【0057】
<用途>
本積層フィルムは、上述のように、透明性を維持しつつ、加熱処理による寸法変化(熱寸法安定性)が少ないという利点を有するため、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板や、太陽電池の基板のほか、光電素子基板などに好適に使用することができる。中でも、液晶表示素子基板、カラーフィルター基板、有機EL表示基板、太陽電池基板及びタッチパネル基板などの透明基板として特に好適に使用することができる。
【0058】
また、本積層フィルムは、ガスバリアフィルムの基材として使用することもでき、ガスバリア加工を施してバリアフィルム(「本バリアフィルム」と称する)として使用することができる。有機ELなどの有機半導体デバイスや、液晶表示素子、太陽電池などガスバリア性が求められる用途に好適に用いられる。
従来、ポリエステルフィルムをガスバアリア加工用フィルムとして用いた場合、ガスバリア層にひびが入ったり、シワが生じたりして、ガスバリア性を含む機能を十分に発現することができないなどの問題があった。これに対し、本バリアフィルムはこのような問題が無い点で優れている。
【0059】
ガスバリア加工は、金属酸化物などの無機物質や有機物などのガスバリア性の高い材料からなるガスバリア層を、本積層フィルムの少なくとも片面に形成する加工方法である。
この際、ガスバリア性の高い材料としては、例えば珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、或いはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、ダイヤモンドライクカーボン又はこれらの混合物等が挙げられるが、太陽電池等に使用した場合に電流がリークする等の恐れがない点から、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム及び酸化窒化アルミニウム等の無機酸化物、窒化珪素及び窒化アルミニウム等の窒化物、ダイヤモンドライクカーボン並びにこれらの混合物が好ましい。特に、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム及びこれらの混合物は、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
【0060】
上記材料を用いて本積層フィルムにガスバリア層を形成する手法としては、蒸着法、コーティング法などの方法をいずれも採用可能である。ガスバリア性の高い均一な薄膜を得ることができるという点で蒸着法が好ましい。
この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、或いは化学気相蒸着(CVD)等の方法が含まれる。
物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
【0061】
ガスバリア層の厚さは、安定なガスバリア性の発現と透明性の点から、10〜1000nmであることが好ましく、40〜800nmがより好ましく、50〜600nmがさらに好ましい。
また、ガスバリア層は単層であっても多層であってもよい。ガスバリア層が多層の場合、各層は同じ材料からなっていても、異なる材料からなっていてもよい。
【0062】
本バリアフィルムの40℃90%における水蒸気透過率は、好ましくは0.1[g/(m・日)]未満、より好ましくは0.06[g/(m・日)]以下、さらに好ましくは、0.03[g/(m・日)]以下である。
水蒸気透過率の測定方法は、JISZ0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、具体的には実施例に記載の方法で測定される。
【0063】
<より具体的な実施形態例>
以下、本発明の好ましい具体的な実施形態の例についてさらに説明する。但し、本発明はこれら実施形態に制限されるものではない。
【0064】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る透明積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に硬化層を積層してなる構成を備えた透明積層フィルムであり、該硬化層は、硬化性樹脂組成物及び平均粒子径が200nm以下の微粒子を含有する組成物を塗布し硬化させることによって形成された層(「塗布層」と称する)であり、以下の(a)及び(b)の性質を有する透明積層フィルムである。
(a)JIS−C23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて測定される、220℃で10分間加熱した際の縦方向及び横方向の収縮率が1%未満
(b)全光線透過率が80%以上
【0065】
第1実施形態に係る透明積層フィルムは、極めて優れた透明性と、高温時の高い寸法安定性とを備えた透明積層フィルムである。
従来から、基材フィルムの寸法安定性を高めるために、基材フィルムに無機微粒子を含有せしめ、加熱時の収縮による寸法変化を改善する図る試みがなされてきた。しかし、無機微粒子を基材フィルムに高密度で充填させると、基材フィルムが脆くなったり、使用する無機微粒子によっては基材フィルムの透明性を低下させたりするなどの問題があった。
これに対し、上記第1実施形態のように、基材フィルムに、硬化性樹脂組成物及び平均粒子径が200nm以下の微粒子を含有する硬化層(塗布層)を形成することによって、このような問題が生じることなく、透明性と加熱時の収縮に対する寸法安定性を向上することができる。
【0066】
なお、第1実施形態において、基材フィルム、硬化性樹脂組成物及び微粒子の構成材料や配合量など、各種好ましい態様は上述したものと同様である。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る透明積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に硬化層を積層してなる構成を備えた透明積層フィルムであり、表裏両側の硬化層の厚み合計が基材フィルムの厚みの150%以上400%以下となるように、硬化層が積層されたものであり、以下の(c)及び(d)の性質を有する、透明積層フィルムである。
(c)0〜50℃、50〜100℃、100〜150℃及び150〜200℃の各温度領域において、縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の線膨張係数の平均値が、−30ppm/℃以上30ppm/℃以下
(d)全光線透過率が80%以上
【0068】
第2実施形態に係る透明積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側の硬化層の厚みの合計が基材フィルムの厚みの150%以上400%以下であることにより、加熱による基材フィルムの収縮応力に対して硬化層が低収縮性を発揮し、加熱による基材フィルムの膨張応力に対しては硬化層が低膨張性を発揮する。そればかりか、硬化層全体の厚みが基材フィルムの厚みに対して十分に大きいため、フィルム全体としての寸法変化が非常に少なくなる。
この結果、従来使用されてきたポリエチレンテレフタレートなどの二軸延伸ポリエステルフィルムや透明ポリイミド樹脂等の基材フィルム単体と比べて、第2実施形態に係る透明積層フィルムは、フィルムの収縮、膨張等の問題が生じることなく、低線膨張性を有するフィルムとすることができる。
【0069】
なお、上記(c)の線膨張係数は、主に延伸温度や延伸倍率などの延伸条件や、熱処理温度や熱処理時間などの熱処理条件を変化させることにより所望の範囲に調整することができる。但し、この手法のみで熱寸法変化を低減すると、熱処理時間が膨大になってしまうため、製造コストの面から好ましくない。そこで、第2実施形態では、基材フィルムの表裏両側に所定の硬化層を配することにより、加熱時に基材フィルムに由来して発生する収縮或いは膨張による寸法変化を、硬化層の熱安定性と弾性率によって低減させることを可能としている。
【0070】
第2実施形態に係る透明積層フィルムは、温度200〜220℃の温度領域での縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の線膨張係数の平均値が、−60ppm/℃以上60ppm/℃以下であることが好ましい。該線膨張係数の平均値がかかる範囲内であれば、透明積層フィルムが高温環境下に置かれた場合の寸法変化分が少なく、反りが発生するなどの問題が無いため好ましい。
例えば、第2実施形態に係る透明積層フィルムをガスバリア加工用フィルムとして用いた場合、熱寸法変化によるガスバリア層の破壊が緩和されることになる。また、該透明積層フィルムをフレキシブルディスプレイ基板用フィルムとして用いた場合、反りや配線の断線などの問題を改善することが可能となる。
【0071】
なお、透明積層フィルムの線膨張係数は、以下のいずれかの方法により測定することができる。
i)熱応力ひずみ測定装置(セイコーインスルメンツ社製、TMA/SS6100)を用い、熱機械分析(TMA法)により測定することができる。この際、試験片幅:45mm、チャック間距離:15mm、荷重:0.1gとし、室温(25℃)〜250℃まで、昇温速度:3℃/分で加熱する際に測定される試験片の寸法変化から、線膨張係数を求めることができる。
ii)熱機械分析装置(セイコーインスルメンツ社製、TMA−120)を用いて測定することができる。測定条件は、試験片幅:3mm、チャック間距離:10mm、荷重:0.1mNとして、25℃〜250℃まで、昇温速度:2℃/分で加熱する際に、150℃から200℃の間で測定される試験片の寸法変化量割合:[(150℃から200℃の間の寸法変化/150℃における寸法値)/温度変化量]×10(ppm/℃)として、線膨張係数を求めることができる。
【0072】
なお、第1実施形態と同様に、第2実施形態において、基材フィルム、硬化性樹脂組成物及び微粒子の構成材料や配合量など、各種好ましい態様は上述したものと同様である。
【0073】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る透明積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に硬化層を積層してなる構成を備えた透明積層フィルムであり、以下の(d)及び(e)の関係を有する硬化層及び基材フィルムを備えた構成からなり、フィルム全体として、以下の(f)の性質を有する透明積層フィルムである。
(d)硬化層は、基材フィルムのガラス転移温度よりも20℃低い温度以下での貯蔵弾性率(E’)aが、同条件下での基材フィルムの貯蔵弾性率より小さい。
(e)硬化層は、基材フィルムのガラス転移温度よりも20℃高い温度以上での貯蔵弾性率(E’)bが、同条件下での基材フィルムの貯蔵弾性率よりも大きい。
(f)JIS−C23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて測定される、220℃で10分間加熱した際の縦方向及び横方向の収縮率が1%未満。
【0074】
基材フィルムのみの場合、高温に晒す処理を施すと、成型時に与えられた応力や延伸工程によって引き伸ばされた部位が縮もうとする力が働くため、基材フィルムに収縮が発生してしまうという問題があった。
これに対し、第3実施形態に係る透明積層フィルムは、基材フィルムに特定の性質を有する硬化層が積層された構成であるため、基材フィルムが収縮する高温領域において、基材フィルムの収縮応力に対抗して、該硬化層が収縮を緩和するため、加熱処理時の収縮に対する寸法安定性を向上させることができる。
【0075】
次に、上記(d)及び(e)の条件を満足する硬化層を備えた第3実施形態に係る透明積層フィルムについて、ポリエチレンナフタレート樹脂からなる二軸延伸した基材フィルムに、透明ポリイミド樹脂(具体的には、ポリイミド樹脂に環状不飽和有機化合物が含まれない脂環式ポリイミド樹脂)からなる硬化層を積層させたフィルムを一例とし、具体的に説明する。
【0076】
なお、上記(d)及び(e)におけるフィルムの貯蔵弾性率は、(E’)は、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−500」を用い、フィルムの長手方向である縦方向と、当該方向と直交する横方向について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度3℃/分で0℃〜220℃までの粘弾性挙動を測定することで得られる値である。
また、上記(d)及び(e)におけるガラス転移温度は、同装置により、同条件で測定される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比(E’/E’’)で示されるtanδのピーク値より算出される値である。
【0077】
図1は、第3実施形態に係る透明積層フィルムに関し、各層における貯蔵弾性率(E´)変化及び熱機械特性試験(TMA)による寸法変化を示した図である。
この図1に示されるように、二軸延伸したポリエチレンナフタレートフィルム(基材フィルム)は、ガラス転移温度(155℃)より少なくとも20℃以上低い温度以下では、充分に高い貯蔵弾性率(E’)を有していることが確認できる(例えば25℃では7.3GPa)。他方、ガラス転移温度より少なくとも20℃高い温度以上では、貯蔵弾性率(E’)が低下することが確認でき、熱機械特性試験(TMA)の結果からも、この温度では寸法安定性が低いことが確認できる。また、前記ガラス転移温度より少なくとも20℃高い温度以上では、貯蔵弾性率(E’)が低下することが確認でき、TMAの結果からも収縮が発生することが確認できる。
これに対し、第3実施形態に係る透明積層フィルムの硬化層(透明ポリイミド樹脂層)は、基材フィルムのガラス転移温度より少なくとも20℃低い温度以下では、基材フィルムに比べて貯蔵弾性率(E’)が低いが、基材フィルムのガラス転移温度より少なくとも20℃高い温度以上では、基材フィルムに比べて貯蔵弾性率(E’)が高く、TMAの結果からも膨張することが確認できる。
【0078】
このように第3実施形態に係る透明積層フィルムに関しては、基材フィルムと硬化層とが相反する貯蔵弾性率の挙動を有しており、これにより、低温領域(室温から基材フィルムのガラス転移温度未満)では基材フィルムの寸法安定性が支配的となり、高温領域(基材フィルムのガラス転移温度以上)では硬化層が適度に膨張して基材フィルムの収縮を抑え込むため、室温から高温時までの幅広い範囲で寸法安定性の高いフィルムを得ることができる。
【0079】
なお、第1及び第2実施形態と同様に、第3実施形態についても、基材フィルム、硬化性樹脂組成物及び微粒子の構成材料や配合量など、各種好ましい態様は上述したものと同様である。
【0080】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る透明積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に硬化層を積層してなる構成を備えた透明積層フィルムであり、該基材フィルムが2軸延伸ポリエステルフィルムであって、前記硬化層が、光硬化性樹脂組成物を含み、該硬化層の厚み合計が基材フィルムに対して10〜150%となるよう基材フィルムに積層されたものであり、以下の(g)及び(h)の性質を有する、透明積層フィルムである。
(g)200℃における積層フィルムの縦方向及び横方向の各々の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が0.35GPa以上
(h)150〜200℃の範囲における縦方向及び横方向の各々の線膨張係数が−85〜85ppm/℃
【0081】
第4実施形態において、2軸延伸ポリエステルフィルムの原料としては、特に制限なく用いることができる。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど各種ポリエステル樹脂を挙げることができる。上記の内、耐熱性の面から、ポリエチレンナフタレートを用いるのが好ましい。該2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さは、用途により異なる。例えば10μm〜50μmであるのが好ましく、より好ましくは10μm以上或いは38μm以下であり、中でも10μm以上或いは30μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上或いは25μm以下である。
【0082】
第4実施形態において、2軸延伸ポリエステルフィルムは、50〜100℃の範囲の線膨張係数が−60ppm/℃〜60ppm/℃であることが好ましい。かかる寸法安定性を有する基材フィルムを用いることにより、熱寸法安定性を高温領域まで持たせることが容易となる。好ましくは、50〜150℃の範囲の寸法安定性が−60ppm/℃〜60ppm/℃であることだが、2軸延伸ポリエステルフィルムの熱寸法安定性をかかる温度範囲まで向上させることは、製造コストの上昇を伴うため、通常は50〜100℃の範囲の寸法安定性が−60ppm/℃〜60ppm/℃である。なお第4実施形態における線膨張係数とは、熱機械分析装置を用い、引っ張り加重0.1mNで固定し、室温から2℃/分の割合で昇温させた場合の所定の温度範囲の寸法変化値から算出した値である。
【0083】
第4実施形態において、2軸延伸ポリエステルフィルムは、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされたものであることが好ましい。
この際、ヒートセット処理は、2軸延伸ポリエステルフィルムのガラス転移温度をTgとした際、Tg〜Tg+100℃の温度で0.1〜180分処理されたものであることが好ましい。
【0084】
第4実施形態の透明積層フィルムは、150〜200℃の範囲における、積層フィルムの縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の各々の線膨張係数が−85〜85ppm/℃であり、好ましくは−70〜70ppm/℃、特に好ましくは−65〜65ppm/℃、より好ましくは−50〜50ppm/℃、より好ましくは−40〜40ppm/℃、さらに好ましくは−20〜20ppm/℃である。かかる範囲内であれば高温環境下に置かれた場合の透明積層フィルムの寸法変化が少なく、実用特性上問題となることが無いため好ましい。例えば、ガスバリア加工用フィルムとして用いた場合は、熱寸法変化によるガスバリア層の破壊が緩和され、フレキシブルディスプレイ基板用フィルムとして用いた場合は、反りや配線の断線などの問題を改善することが可能となる。
【0085】
第4実施形態においては、かかる熱寸法安定性を持たせるべく、低温時に線膨張係数が低い基材フィルムに対し、高温時にも同等の強度を維持せしめる構造を配することによって、高温時にも十分な寸法安定性を保持している。
すなわち、高温時にフィルムが膨張及び収縮せんとする応力に対し、十分に寸法を維持できる高い弾性率を有することで、寸法変化を大きく低減させることが可能となる。一般的にポリエステルフィルムの熱寸法安定性を向上させる加工法としては、主に延伸温度や延伸倍率などの延伸条件や、熱処理温度や熱処理時間などの熱処理条件を変化させることなどを挙げることができるが、この手法のみで200℃付近の熱寸法変化を低減させるためには、熱処理時間が膨大になってしまうため、製造コストの面から好ましくない。
そこで第4実施形態では、フィルムの表裏両側に光硬化性樹脂組成物の硬化層を配することにより、高温時にフィルムの弾性率を保持させ、熱寸法変化を低減させることを可能としている。
【0086】
第4実施形態における透明積層フィルムの縦方向及び横方向の各々の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率(E´)値は、200℃において0.35GPa以上であるのが好ましく、より好ましくは0.45GPa以上、更に好ましくは0.6Pa以上、特に好ましくは0.7GPa以上である。かかる物性を有するべく、所定の光硬化性樹脂組成物を塗布することにより、高温における寸法安定性に優れたフィルムを得ることが可能となる。なお、上記貯蔵弾性率(E´)値の上限値については特に制限はないが、後加工適性の観点から、その値は10GPa以下であることが好ましい。
【0087】
第4実施形態における透明積層フィルムの貯蔵弾性率(E´)値は、高弾性率を有する材料の積層、添加及び充填等の方法により調整しうる。
また、かかる透明積層フィルムの前記線膨張係数と貯蔵弾性率(E´)は、高温環境下での反りの発生という観点から、いずれも縦方向及び横方向の両方が前記範囲内にあることが好ましい。
【0088】
第4実施形態において、硬化層に充填材として微粒子を用いることは、弾性率を向上させる目的で好ましく、特に無機微粒子は耐熱性が高いため好ましい。
また微粒子の粒子径は小さすぎると粒子同士の凝集をまねき、大きすぎると硬化膜から剥がれ落ちてしまうため、通常、平均粒子径は1〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは10nm以上或いは500nm以下である。これらの粒子は、光硬化性樹脂組成物中の固形分全体量を100質量部としたとき、平均粒子径が1nm〜1000nmの無機微粒子を前記組成物中に20〜80質量部含有するのが好ましい。含有量が少なすぎると、弾性率向上への寄与が少なく、多すぎると硬化膜から剥がれ落ちてしまうおそれがある。
【0089】
上記光硬化性樹脂組成物の硬化層は、基材である2軸延伸ポリエステルフィルムの厚みに対して、合計で10〜150%の厚みで配する。かかる範囲の厚みより薄いと、高温時において積層フィルムの貯蔵弾性率が保持できず、結果として熱寸法安定性が不十分になってしまう。また、硬化層の厚みがかかる範囲を越えると、積層フィルムが割れやすくなってしまう。
上記観点から、硬化層の厚みは、2軸延伸ポリエステルフィルムの厚みに対し、合計で25%以上或いは150%以下であるのがより好ましく、中でも30%以上或いは120%であることがさらに好ましく、その中でも40%以上或いは110%以下であることがさらに好ましい。しかしながら、光硬化性樹脂組成物中に無機微粒子を含む場合はこの限りでなく、10〜100%の程度の範囲でも十分に熱寸法安定性を有することが可能になる。
【0090】
第4実施形態の透明積層フィルムは、光硬化性樹脂組成物の硬化層を、基材フィルムである2軸延伸ポリエステルフィルムの表裏両側に有する。硬化層を片面のみに有すると、カールが発生してしまうため実用上好ましくない。硬化層を表裏両側に有することで、カールの発生を抑えることが可能となる。
表裏両側に配置される硬化層は、各々の厚みについては特に制限はないが、弾性率に対称性を持たせてカールを軽減させる観点から、その厚み比は、一方の硬化層と他方の硬化層の厚み比(一方の硬化層の厚み/他方の硬化層の厚み)として、0.5〜1.5が好ましく、中でも0.75以上或いは1.25以下であるのがより好ましい。
【0091】
上記光硬化性樹脂組成物は、フルオレン骨格を有する光硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0092】
上記光硬化性樹脂組成物は、10〜1000mJ/cmの積算紫外線光量で実質的に硬化されるものであることが好ましい。ここで、「実質的に」とは、フィルムを巻取る際に、硬化層が他の面に張り付かない程度に硬化していることの意である。積算紫外線光量がかかる範囲内であれば、基材への熱の影響を無視することができ、また、フィルムへの熱ジワの発生を防止できる。さらに、生産速度の面から効率が良好であり好ましい。
【0093】
第4実施形態の透明積層フィルムは、JIS−C23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて測定される、温度200℃で10分間加熱した後、室温(25℃)にて測定した縦方向及び横方向の収縮率が1.0%未満であることが好ましい。
【0094】
このような第4実施形態の透明積層フィルムは、高温での寸法安定性が要求される用途、特に包装用フィルム、電子部品用フィルムに用いることができるほか、ガスバリア加工を行うことで、有機ELなどの半導体デバイスや、液晶表示素子、太陽電池用途にも好適に用いることができる。
【0095】
第1〜第3実施形態と同様に、第4実施形態についても、基材フィルム、光硬化性樹脂組成物及び微粒子の構成材料や配合量などの好ましい態様は上述したものと同様である。
【0096】
<用語の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら制限を受けるものではない。
【0098】
[実施例1]
(硬化性樹脂組成物の調製)
剛直な骨格であるトリシクロデカン構造を有する光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)14.4質量部、透明微粒子A(株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C−SM1」、コロイダルシリカ)51.1質量部、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.44質量部、及び、溶媒(荒川化学工業株式会社製 、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物を得た(以下、「塗料A」と称する。)。
硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
また、上記微粒子混合物の平均粒子径は10nmであり、粒子径の相対標準偏差は40.3%であった。
【0099】
(透明積層フィルム1の作製)
厚さ12μmの二軸延伸フィルム(帝人株式会社製、商品名「テオネックスQ51」、ポリエチレンナフタレートフィルム、以下「フィルムA」と称する)の片面に、上記で調製した塗料Aを、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Aを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム1を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム1の特性を評価した。
【0100】
[実施例2]
(透明積層フィルム2の作製)
実施例1と同様の手順にて、厚さ7μmの基材フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「スペリオUT−Fフィルム」、ポリエーテルイミドフィルム、以下「フィルムB」と称する)の両面に、硬化後の厚みが5μmになるように、ワイヤーバーコーターを用いて上記塗料Aを塗布して硬化させて、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム2を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム2の特性を評価した。
【0101】
[実施例3]
(透明積層フィルム3の作製)
実施例2と同様の手順にて、フィルムBの両面に、硬化後の厚みが10μmになるように、ワイヤーバーコーターを用いて上記塗料Aを塗布し、硬化させて、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム3を得た。後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム4の特性を評価した。
【0102】
[実施例4]
(塗布層の調製)
剛直な骨格であるトリシクロデカン構造を有する光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)97質量部、及び光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)3質量部を均一に混合し、透明微粒子を含有しない、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料B」と称する。)を得た。
【0103】
(透明積層フィルム4の作製)
フィルムBの片面に、上記で調製した塗料Bを硬化後の厚みが5μmになるように、ワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、120℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Bを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム4を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム4の特性を評価した。
【0104】
[比較例1]
硬化層を有しないフィルムA単体を実施例1と同様に評価した。
【0105】
[比較例2]
硬化層を有しないフィルムB単体を実施例1と同様に評価した。
【0106】
[比較例3]
フィルムAの片面に、硬化層としてアクリル系樹脂(第一工業製薬株式会社製、商品名「GX−8801A」、光硬化性ウレタンアクリレート・オリゴマー)を、硬化後の厚みが3μmになるように、ワイヤーバーコーターを用いて塗布したあと、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に前記アクリル系樹脂を塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを実施例1と同様に評価した。
【0107】
[比較例4]
(硬化性樹脂組成物の調製)
剛直な骨格であるトリシクロデカン構造を有する光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)14.4質量部、透明微粒子A(株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C−SM1」、コロイダルシリカ)25.5質量部、透明微粒子B(株式会社アドマテックス製、商品名「SO−C2」、コロイダルシリカ)25.5質量部、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.44質量部、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料C」と称する。)を得た。
硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
なお、上記微粒子混合物の平均粒子径は255.2nmであり、粒子径の相対標準偏差は72.9%であった。
【0108】
(積層フィルムの作製)
実施例1と同様の手順にて、フィルムAの両面に上記塗料Cを塗布し乾燥、硬化させて、両面に硬化層が形成された透明積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムについて、後述する測定方法に準拠して、収縮率及び全光線透過率を測定した。
【0109】
[比較例5]
(硬化性樹脂組成物の調製)
剛直な骨格であるトリシクロデカン構造を有する光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)11.6質量部、透明微粒子C(トピー工業株式会社製、商品名「PDM−5B」、鱗片状マイカ)52.8質量部、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.36質量部、及び、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料D」と称する。)を得た。
硬化層における透明微粒子の体積割合は63.4体積%であった。
なお、上記微粒子Cの形状は鱗片状であり、微粒子Cの短径は7nm及び長径は8000nmであって、微粒子Cの平均粒子径(算術平均値)は403nmであった。
【0110】
実施例1と同様の手順にて、フィルムAの両面に、上記塗料Dを塗布したが、塗膜の乾燥と同時に塗膜が白化、割れて剥離してしまった。これは粒子同士の立体的な相互作用が大きすぎるため、塗膜が脆化したこと及び平坦面が光を反射したため、白化してしまったと考えられる。なお、後述する測定方法に準拠して、全光線透過率を測定した。
【0111】
[参考例1]
(硬化性樹脂組成物の調製)
剛直な骨格であるトリシクロデカン構造を有する光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)14.4質量部、透明微粒子B(株式会社アドマテックス製、商品名「SO−C2」、コロイダルシリカ)50.1質量部、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.44質量部、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料E」と称する。)を得た。
硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
なお、上記微粒子混合物の平均粒子径は512nmであり、粒子径の相対標準偏差は30.2%であった。
【0112】
(透明積層フィルム5の作製)
フィルムAの両面に、実施例1と同様の方法を用いて、塗料Eを塗布し乾燥、硬化させて、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム5を得た。
得られた透明積層フィルム5について、後述する測定方法に準拠して、収縮率及び全光線透過率を測定した。
【0113】
<特性評価及び測定条件1>
上記実施例1〜4、参考例1及び比較例1〜5において作製したフィルムについて、以下に記載の方法に準拠し、貯蔵弾性率(E´)、全光線透過率及び収縮率を測定した。それぞれの結果を表1に示した。
また、使用した微粒子についても、以下に記載の方法に準拠し、平均粒子径及び相対標準偏差を測定した。それぞれの結果を表1に示した。
比較例4で作製したフィルムについては、以下に記載の方法に準拠して、収縮率、平均粒子径、相対標準偏差及び全光線透過率を測定した。それぞれの結果を表1に示した。
なお、比較例5については、フィルムの作製が困難であったため、平均粒子径、相対標準偏差及び全光線透過率のみ測定した。
【0114】
(貯蔵弾性率(E´)の測定方法)
フィルムの貯蔵弾性率(E´)は、JIS K−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの長手方向である縦方向(MD方向)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度3℃/分で25℃〜250℃までの粘弾性挙動を測定し、得られたデータから温度200℃での貯蔵弾性率(E’)を求めた。
【0115】
(収縮率の測定方法)
フィルムの収縮率は、JISC23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて、恒温槽の温度を120℃から200℃又は220℃にそれぞれ変更し、標線を記した短冊の加熱前後の寸法変化率を測定し求めた。なお、収縮率は、フィルムの長手方向である縦方向(MD方向)と、これに直交する横方向(TD方向)の両方について測定した。
【0116】
具体的には、以下の方法によりフィルムの収縮率を測定した。
フィルム流れ方向を長辺とし、幅10mm、長さ100mmの短冊形試験片を3個用意し、各々の試験片の中央部を中心として、間隔100mmの標線を記した。標線間の間隔を0.01mmの精度でノギスを用いて読み取った。この試験片を、所定温度の恒温槽に10分間無荷重の状態で懸垂し、取り出した後、室温で、15分以上放冷し、先に読んだ標線間の間隔を測定した。加熱前後の標線間の間隔の変化率を求め、加熱前後の寸法変化率とした。
【0117】
(全光線透過率の測定)
フィルムの全光線透過率は、以下の装置を用い、JIS K7105に準拠する方法にて測定した。
反射・透過率計:株式会社村上色彩技術研究所「HR−100」
【0118】
(平均粒子径)
微粒子の平均粒子径は、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)S−4500を用いて測定した。具体的には、試料の傾斜角を30度、加速電圧5kV、ソーキングディスタンス15mm、直接倍率を30,000倍に設定し、デジタル画像を取得後、得られた画像からランダムに200個の粒子の粒径を実測し、その平均を求めることで微粒子の平均粒子径とした。
【0119】
(相対標準偏差)
微粒子の粒子径の相対標準偏差は、上記平均粒子径の計測にて計測した平均粒径及び標準偏差から下記式にて算出した。
相対標準偏差=標準偏差σ/平均粒径d
【0120】
【表1】

【0121】
(考察1)
実施例1〜4、比較例1〜5及び参考例1の結果から、以下のことa)〜d)が明らかとなった。そして、これらの考察から、温度200℃における透明積層フィルムの貯蔵弾性率(E´)が、同条件での基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)よりも大きくなるような構成の積層フィルムとすることによって、高温条件下でも高い寸法安定性を維持できることが分かった。
【0122】
a)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層の厚み合計を基材フィルムよりも大きくして熱寸法安定性に関しての硬化層の寄与を増大させることで、高温時(例えば200℃以上)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
b)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層中に熱寸法安定性の高い微粒子を含有することで、高温時(例えば200℃以上)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
c)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層中に、粒子径の相対標準偏差が50%以下の微粒子を含有することで、粒子間の距離が短くなり、基材の収縮応力に対してより強い硬化層となり、高温時(例えば200℃以上)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
d)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層を形成する材料として、剛直な骨格を有する樹脂を用い、温度200℃における透明積層フィルムの貯蔵弾性率(E´)が、同条件での基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)よりも大きくなるような構成とすることで、高温時(例えば200℃以上)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
【0123】
[実施例5]
(硬化性樹脂組成物の調製)
剛直な骨格であるトリシクロデカン構造を有する、光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)7.8質量部、平均粒子径が13nmの透明微粒子E(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK−AC−2101」、有機溶媒分散コロイダルシリカ分散液、屈折率1.46)92.0質量部、及び、光硬化剤((1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(BASF製)))0.2質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料F」と称する)を得た。
本実施例の硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は70体積%であった。
【0124】
(透明積層フィルム6の作製)
フィルムBの片面に、上記で調製した塗料Fを、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、120℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Fを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム6を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム6の特性を評価した。
【0125】
[実施例6]
(透明積層フィルム7の作製)
フィルムAの片面に、上記で調製した塗料Fを、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、120℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Fを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム7を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム7の特性を評価した。
【0126】
[実施例7]
(透明積層フィルム8の作製)
実施例4と同様の手順にて、フィルムBの片面に、硬化後の厚みが5μmになるように、上記で調製した塗料Bを、塗布して硬化させることにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム8を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム8の物性を評価した。
【0127】
[比較例6]
硬化層を有しないフィルムB単体を実施例5と同様に評価した。
【0128】
[比較例7]
硬化層を有しないフィルムA単体を実施例5と同様に評価した。
【0129】
<特性評価及び測定条件2>
上記実施例5〜7並びに比較例6及び7において作製したフィルムについて、貯蔵弾性率(E´)、全光線透過率、収縮率及び線膨張係数を測定した。
【0130】
線膨張係数については、以下に示す方法に準拠して測定した。
貯蔵弾性率(E´)及び全光線透過率は、上記実施例1と同様の方法に準拠して測定した。
収縮率については、恒温槽の温度を120℃から200℃、220℃及び250℃にそれぞれ変更した点を除き、上記実施例1と同様の方法に準拠して測定した。
また、上記実施例で使用した微粒子についても、上記実施例1と同様の方法に準拠して測定した。
それぞれの測定結果を表2に示した。
【0131】
(線膨張係数)
上記実施例5〜7並びに比較例6及び7において作製したフィルムの線膨張係数は、熱応力ひずみ測定装置(セイコーインスルメンツ社製、TMA/SS6100)を用い、熱機械分析(TMA法)により測定した。
測定条件は、試験片幅:45mm、チャック間距離:15mm、荷重:0.1gとし、室温〜250℃まで、昇温速度:3℃/分で加熱する際に測定される試験片の寸法変化から求めた。
【0132】
【表2】

【0133】
(考察2)
上記実施例5〜7並びに比較例6及び7の結果から、以下のことe)、f)が明らかとなった。
e)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層の厚み合計を基材フィルムの150%以上とすることで、熱寸法安定性に関しての硬化層の寄与が顕著となり、高温時(例えば200℃以上)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
f)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層中に微粒子を含有し、熱寸法安定性の高い微粒子含有率を硬化層全体で50体積%以上とすることで、熱寸法安定性に関しての硬化層の寄与が顕著となり、高温時(例えば200℃以上)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
【0134】
[実施例8]
(硬化性樹脂組成物の調製)
透明樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名「HBSQ1004−2」チオール系シルセスキオキサン)66.6質量部及び光硬化剤(荒川化学工業株式会社製、商品名「HBSQ2001−3」、多官能アリレート)33.3質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(温度220℃での貯蔵弾性率(E’)a:1.1GPa、温度25℃での貯蔵弾性率(E’)b:1.3GPa、以下「塗料G」と称する。)を得た。
【0135】
(透明積層フィルム9の作製)
フィルムA(Tg:155℃、温度220℃での貯蔵弾性率(E’)a:0.27GPa、温度25℃での貯蔵弾性率(E’)b:7.3GPa))の片面に、上記で調製した塗料Gを、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(250mJ/cm)を照射し、更に硬化膜を120℃で15分程度アニールすることで、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に、塗料Gを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム9を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム9の特性を評価した。
【0136】
[実施例9]
(透明積層フィルム10の作製)
フィルムB(Tg:234.4℃、温度260℃での貯蔵弾性率(E’)a:7.5MPa、温度25℃での貯蔵弾性率(E’)b:2.8GPa)の片面に、上記で調製した塗料G(温度260℃での貯蔵弾性率(E’)a:1.0GPa、温度25℃での貯蔵弾性率(E’)b:1.3GPa)を、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(250mJcm−1)を照射し、更に硬化膜を120℃で15分程度アニールすることで、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に、塗料Gを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム10を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム10の特性を評価した。
【0137】
[比較例8]
硬化層を有しないフィルムB単体を実施例8と同様に評価した。
【0138】
[比較例9]
硬化層を有しないフィルムA単体を実施例8と同様に評価した。
【0139】
<特性評価及び測定条件3>
上記実施例8〜9及び比較例8〜9において作製したフィルムについて、上記実施例1と同様の方法に準拠して、貯蔵弾性率(E´)、光線透過率及び収縮率を測定した。それぞれの測定結果を表3に示した。
【0140】
【表3】

【0141】
(考察3)
上記実施例8〜9及び比較例8〜9の結果から、以下のことg)、h)が明らかとなった。
g)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層を形成する材料として、剛直な骨格を有する樹脂を用いることで、熱寸法安定性に関しての硬化層の寄与が大きくなり、高温時(例えば200℃以上)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
h)基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、硬化層を形成する材料として、剛直な骨格を有する樹脂を用い、硬化層は、基材フィルムのガラス転移温度よりも20℃低い温度以下での貯蔵弾性率(E’)aが、同条件下での基材フィルムの貯蔵弾性率より小さく、基材フィルムのガラス転移温度よりも20℃高い温度以上での貯蔵弾性率(E’)bが、同条件下での基材フィルムの貯蔵弾性率よりも大きいことで、熱寸法安定性に関しての硬化層の寄与が大きくなり、高温時(200℃)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができる。
【0142】
[実施例10]
(光硬化性樹脂組成物の調製)
フルオレンアクリレートを40〜60質量%含む組成物EA−HG001(大阪ガスケミカル(株)製)100質量部、2−ブタノン(ナカライテスク(株)製)50質量部、及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(BASF製)3質量部を均一に混合し、光硬化性樹脂組成物を得た(以下、「塗料H」と称する。)。
【0143】
(透明積層フィルム11の作製)
フィルムA(200℃における貯蔵弾性率:縦方向0.332GPa、横方向0.305GPa、150〜200℃における線膨張係数:縦方向−719ppm/℃、横方向−809ppm/℃)の片面に、上記で調製した塗料Hを、硬化後の厚みが1μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、80℃に設定したオーブン中に2分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、高圧水銀ランプ(160W/cm)を用いて、塗布面を335mJ/cmの紫外線積算光量で照射し、片面に光硬化性樹脂組成物の硬化層を有するフィルムを得た。
紫外線積算光量は、紫外線積算光量計(ウシオ電機製、UNIMETER UIT−250、UVD−C365)を用い、硬化時と同様にベルトコンベア装置に通し、センサー部に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し測定した。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に、塗料Hを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム11を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム11の特性を評価した。
【0144】
[実施例11]
(透明積層フィルム12の作製)
硬化後の厚みが3μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗料Hを塗布した以外は実施例10と同様に行い、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム12を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム12の特性を評価した。
【0145】
[実施例12]
(透明積層フィルム13の作製)
ウレタンアクリレートを60〜70質量%含む組成物U−6LPA(新中村化学(株)製)100質量部、2−ブタノン(ナカライテスク(株)製)100質量部、及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(BASF製)3質量部を均一に混合し、光硬化性樹脂組成物(以下、「塗料I」と称する。)を得た。そして、実施例10において、塗料Hの代わりに塗料Iを用いた以外は実施例10と同様にして、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム13を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム13の特性を評価した。
【0146】
[実施例13]
(透明積層フィルム14の作製)
フィルムAに代えて、厚さ12μmのダイヤホイルT100(三菱樹脂(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、200℃における貯蔵弾性率:縦方向0.234GPa、横方向0.201GPa、150〜200℃における線膨張係数:縦方向−864ppm/℃、横方向−153ppm/℃、以下、「フィルムC」と称する)を用い、実施例10で用いた塗料Hを硬化後の厚みが6μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した以外は実施例11と同様に行い、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム14を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム14の特性を評価した。
【0147】
[実施例14]
(透明積層フィルム15の作製)
フルオレンアクリレートを40〜60%質量%含む組成物EA−HG001(大阪ガスケミカル(株)製)100質量部、コロダイルシリカMEK−ST−L(日産化学工業(株)製MEK分散シリカ、平均粒子径約50nm、固形分約30%)500質量部及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(BASF製イルガキュア184)3質量部を均一に混合し、光硬化性樹脂組成物(以下、「塗料J」と称する。)を得た。そして、実施例10において、塗料Hの代わりに塗料Jを用いた以外は実施例10と同様に行い、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム15を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルム15の特性を評価した。
【0148】
得られたフィルムは、基材フィルム厚みに対する硬化層厚みの比が実施例10と同等であるにもかかわらず、硬化層中に耐熱性の高い無機微粒子を含むため、高温時の寸法安定性に非常に優れたフィルムとなった。
【0149】
[実施例15]
(透明積層フィルム16の作製)
フィルムAに代えて、厚さ25μmのテオネックスQ51(帝人(株)製ポリエチレンナフタレートフィルム、200℃における貯蔵弾性率:縦方向0.266GPa、横方向0.270GPa、150〜200℃における線膨張係数:縦方向−491ppm/℃、横方向−201ppm/℃、以下、「フィルムD」と称する。)を用い、実施例14で用いた塗料Jを硬化後の厚みが4μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した以外は実施例10と同様に行い、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム16を得た。
得られた透明積層フィルム16の特性を評価した。
【0150】
[実施例16]
実施例11で得られた透明積層フィルム12を、縦方向100mm×横方向10mmの大きさに切り取り、200℃に設定したオーブンに10分間入れ、オーブンから取り出して室温に戻した後、ノギスを用いて縦方向の収縮量を0.1mmの精度で測定した。
同様に積層フィルムを縦方向10mm×横方向100mmの大きさに切り取り、200℃に設定したオーブンに10分間入れ、オーブンから取り出して室温に戻した後、ノギスを用いて横方向の収縮量を0.1mmの精度で測定した。
熱収縮率は、縦方向及び横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
得られたフィルムの熱収縮率を表4に示す。
【0151】
[実施例17]
(透明積層フィルム17の作製)
塗料Jを硬化後の厚みが3μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した以外は実施例14と同様に行い、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム17を得た。
得られた透明積層フィルム17を実施例16と同様に評価を実施した結果を表4に示す。
【0152】
[実施例18]
(透明積層フィルム18の作製)
A4サイズに切り出した厚さフィルムAの4辺端部を金属枠に固定し、200℃に設定したオーブンに60分入れ、ヒートセット処理を行った。取り出したフィルムを基材として用いた以外は実施例17と同様に行い、両面に硬化層が形成された透明積層フィルム18を得た。
得られた透明積層フィルム18を、実施例16と同様に評価を実施した結果を表4に示す。得られたフィルムは基材の収縮が緩和されているため、熱収縮率の非常に低いフィルムとなった。
【0153】
[実施例19]
実施例11で得られた透明積層フィルム12上にガスバリア加工を実施した。真空蒸着装置を使用して1×10−5Torrの真空下でSiOを加熱方式で蒸発させ、積層フィルム上に厚さ約50nmSiOxの無機層を形成し、ガスバリアフィルムを得た。
【0154】
得られたガスバリアフィルムは、JISZ0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JISZ0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、次の手法で水蒸気透過率を評価した。
【0155】
(水蒸気透過率)
厚さ60μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製 P1146)の表面に、ウレタン系接着剤(東洋モートン(株)製AD900とCAT−RT85を10:1.5の割合で配合したもの)を塗布し、乾燥し、厚さ約3μmの接着剤層を形成し、この接着剤層上に、上記で形成したガスバリアフィルムの無機層面側をラミネートし、ガスバリア性積層フィルムを得た。
次に、透湿面積10.0cm×10.0cm角のガスバリア性積層フィルム各2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れて四辺を封じた袋を作製した。その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、72時間以上の間隔でおよそ200日目まで質量測定し、4日目以降の経過時間と袋質量との回帰直線の傾きから水蒸気透過率[g/(m・日)]を算出した。得られた水蒸気透過率は0.055[g/(m・日)]であった。
【0156】
以上の測定において、測定4日目における水蒸気透過率は、0.055g/m・dayであった。
【0157】
[参考例2]
フィルムAに代えて、フィルムDを用いた以外は実施例10と同様に行い、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの特性を評価した結果を表4に示す。
得られたフィルムは、基材層に対して硬化物層の厚みが薄いため、200℃における貯蔵弾性率の値が低く、結果として高温時の寸法安定性に劣るフィルムとなった。
【0158】
<特性評価及び測定条件4>
上記実施例10〜18及び参考例2において作製したフィルムについては、以下に記載の方法に準拠して、貯蔵弾性率(E´)及び線膨張係数を測定した。それぞれの結果を表4に示した。
また、上記実施例14、15、17及び18で使用した微粒子については、実施例1と同様にして、平均粒子径を測定した。
さらに、全光線透過率についても、実施例1と同様にして測定した。
【0159】
(貯蔵弾性率(E´)の測定方法)
フィルムの貯蔵弾性率(E´)は、JIS K−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの長手方向である縦方向(MD方向)と、当該方向と直交する横方向(TD方向)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度3℃/分で25℃〜250℃までの粘弾性挙動を測定し、得られたデータから温度200℃での貯蔵弾性率(E´)を求めた。
【0160】
(線膨張係数の測定方法)
フィルムの線膨張係数は、熱機械分析装置(セイコーインスルメンツ社製、TMA−120)を用い測定した。測定条件は、試験片幅:3mm、チャック間距離:10mm、荷重:0.1mNとして、25℃〜250℃まで、昇温速度:2℃/分で加熱する際に、150℃から200℃の間で測定される試験片の寸法変化量割合:[(150℃から200℃の間の寸法変化/150℃における寸法値)/温度変化量]×10(ppm/℃)として求めた。
【0161】
【表4】

【0162】
(考察4)
上記実施例10〜18及び参考例2の結果から、以下のことi)、j)及びk)が明らかとなった。
i)基材厚みに対する硬化層合計厚みが大きくなるにつれ、熱寸法安定性に対する硬化層の寄与が大きくなり、結果として線膨張係数を抑えることが可能となる。
j)また硬化層中に熱寸法安定性の高い無機粒子を含有することにより、硬化層自体の熱寸法安定性が高くなり、線膨張係数を更に抑えることが可能となる。
k)基材自体を熱処理によって熱寸法安定性を高くすることにより、積層フィルム全体としての熱寸法安定性を更に向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の透明積層フィルムは、高温での寸法安定性が要求される用途、特に、包装用フィルム、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板や、太陽電池の基板のような電子部品用フィルム等として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示素子基板、カラーフィルター基板、有機EL表示基板、太陽電池基板及びタッチパネル基板からなる群から選択される何れかの透明基板として使用される透明基板用積層フィルムであって、
基材フィルムの表裏両側に硬化層を有する透明基板用積層フィルムであり、該積層フィルムは、以下の(1)又は(2)の構成を有し、かつ全光線透過率が80%以上であることを特徴とする、透明基板用積層フィルム。
(1)硬化層の厚み合計が基材フィルムの厚みを越える。
(2)基材フィルムが2軸延伸ポリエステルフィルムであり、硬化層が光硬化性樹脂を含み、硬化層の厚み合計が前記基材フィルムに対して10〜150%であり、且つ、温度200℃における積層フィルムの縦方向及び横方向の各々の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が0.35GPa以上である。
【請求項2】
温度200℃における積層フィルムの少なくとも一方向の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が、同条件における基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)よりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項3】
温度200℃における積層フィルムの少なくとも一方向の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が、同条件における基材フィルムの貯蔵弾性率(E´)の1.0倍を越えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項4】
温度200℃における積層フィルムの少なくとも一方向の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E´)が、1GPa以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項5】
前記(1)の構成において、硬化層の厚み合計が、基材フィルムの厚みの150%以上であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項6】
前記(1)の構成において、硬化層が、フルオレン骨格を有する光硬化性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項7】
前記(1)の構成において、前記硬化層が、硬化性樹脂及び平均粒子径が200nm以下の微粒子を含有することを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項8】
前記微粒子の含有率が、硬化層全体の50体積%以上であることを特徴とする、請求項7記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項9】
前記微粒子と硬化層に含まれる樹脂との屈折率差が0.2未満であることを特徴とする、請求項7又は8記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項10】
前記微粒子の屈性率が1.6未満である、請求項7〜9の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項11】
前記微粒子は、粒子径の相対標準偏差が50%以下であることを特徴とする、請求項7〜10の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項12】
前記微粒子が、コロイダルシリカであることを特徴とする、請求項7〜11の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項13】
前記硬化層が、光硬化性アクリル樹脂を含むことを特徴とする、請求項7〜12の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項14】
前記(2)の構成において、積層フィルムの縦方向及び横方向の各々の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率(E´)値が、温度200℃において0.45GPa以上であり、かつ温度150〜200℃の範囲における縦方向及び横方向の各々の線膨張係数が−65〜65ppm/℃であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項15】
前記(2)の構成において、2軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが、10μm〜30μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1、2、3、4及び14のうちの何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項16】
前記(2)の構成において、前記硬化層が、フルオレン骨格を有する光硬化性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1、2、3、4、14及び15のうちの何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項17】
前記(2)の構成において、前記硬化層が、硬化層中の固形分全体量を100質量部としたとき、硬化層中に平均粒子径が1nm〜1000nmの無機微粒子を20〜80質量部含むことを特徴とする、請求項1、2、3、4、14、15及び16のうちのの何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項18】
基材フィルムが、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂及び透明ポリイミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上の樹脂を含有することを特徴とする、請求項1〜17の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項19】
基材フィルムが、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされたフィルムであることを特徴とする、請求項1〜18の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項20】
前記ヒートセット処理が、基材フィルムのガラス転移温度をTgとした際、Tg〜Tg+100℃の温度で0.1〜180分間、該基材フィルムを加熱する処理であることを特徴とする、請求項19に記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項21】
前記硬化層が、10〜1000mJ/cmの紫外線積算光量で実質的に硬化する光硬化性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜20の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項22】
前記基材フィルムが、2軸延伸ポリエチレンナフタレートからなるものであることを特徴とする、請求項1〜21の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項23】
温度150〜200℃の範囲における、積層フィルムの縦方向及び横方向の線膨張係数が−40〜40ppm/℃であることを特徴とする、請求項1〜22の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項24】
JIS−C23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて測定される、温度200℃で10分間加熱した後、室温(25℃)にて測定した縦方向及び横方向の収縮率が1.0%未満であることを特徴とする、請求項1〜23の何れかに記載の透明基板用積層フィルム。
【請求項25】
請求項1〜25の何れかに記載の透明基板用積層フィルムを、液晶表示素子基板、カラーフィルター基板、有機EL表示基板、太陽電池基板及びタッチパネル基板のいずれかの透明基板として用いたディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2013−60005(P2013−60005A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175535(P2012−175535)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22〜24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発/太陽光発電システム次世代高性能技術の開発/超ハイガスバリア太陽電池部材の研究開発」に係る共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】