説明

透明容器内粉末中の異物検査方法及び異物検査装置

【課題】 本発明は、透明容器の内壁に付着してしまうような粉末や流動性が悪い粉末であっても検査することができ、粉末に対する比重に制限されることなく、透明容器内に充填された粉末中の異物を容易且つ確実に検査可能な透明容器内粉末中の異物検査方法及び異物検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の透明容器内粉末中の異物検査方法は、透明容器内に充填された粉末中への異物の混入の有無を検査する異物検査方法において、前記透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成した振動を与えて該透明容器内の粉末を循環流動させながら、内面に粉末が付着している透明容器壁面を通して粉末を撮像し、得られた画像を用いて異物の有無を検査することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明容器内に充填された粉末中への異物の混入を検査する異物検査方法及び異物検査装置に関し、詳しくは、バイアル壜等の透明容器内に充填された粉末注射薬等中へ混入した異物の検査に好適な異物検査方法及び異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末注射剤等が充填されたバイアル瓶等の透明容器内に混入した異物の異物検査方法や、該検査に用いる装置については、特許文献1、2等に開示されている。
特許文献1には、透明容器に振動を加えて、粉末より比重の重い異物や、軽い異物を粉末から頭部側へ分離させて、分離した異物を検知するという方法が開示されている。しかし、この方法は、粉末に対する比重差に基づいて異物を分離させることにより検出していたため、粉末と略等しい比重の異物に対しては、粉末表面に分離浮上させたり、粉末内から飛び出させて分離することができないという問題を有している。
【0003】
特許文献2には、容器の底部に当接させた押し当て部材を振動させて透明容器を加振させて、粉末を容器内で回転対流させて、異物が粉末表面に出現する頻度を増加させることにより、粉末と略等しい比重の異物であっても異物を粉末表面に出現させて検査する装置が開示されている。
【0004】
しかし、検査対象となる粉末は付着性が高いという特性を有し、粉末を容器内で回転対流させると粉末が容器の壁に付着して、内部が見え難くなり、検査ができなくなってしまうという問題がある。このような付着性粉末は、特許文献1や2の方法、装置では検査することが不可能である。
【0005】
特許文献2には、粉落とし棒で容器を叩いて容器の内面上部に付着した粉末を落下させることが開示されているが、付着性の強い粉末の場合には、棒で叩く程度では内面から落下させることはできない。更に、押し当て部材を振動させて透明容器を加振させる方法では、粉末が充分には回転しないので、粉体が粉末表面に出現する程度も不十分なことから、付着性のない粉末であっても検査ミスが起こりやすいという問題もある。更に、付着性がない粉末であっても、流動性が悪ければ、特許文献1や2の方法、装置では検査することができなくなってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開平2−187646号公報
【特許文献2】特開2000−298103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、透明容器の内壁に付着してしまうような粉末や流動性が悪い粉末であっても検査することができ、粉末に対する比重に制限されることなく、透明容器内に充填された粉末中の異物を容易且つ確実に検査可能な透明容器内粉末中の異物検査方法及び異物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者等は、付着性のある粉末を透明容器内で対流させると、容器の側面に粉体が付着して内部が見え難くなった場合であっても、内面に粉末が接触し、密着している透明容器壁面を通してであれば、容器内部の粉末を観察でき、更に撮像できることを発見し、更に透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成した振動を与えると、容器内の粉末と異物を共にを安定して循環流動させることができることを発見し、本発明に到達した。
本発明によれば、以下に示す透明容器内粉末中の異物検査方法及び異物検査装置が提供される。
[1] 透明容器内に充填された粉末中への異物の混入の有無を検査する異物検査方法において、前記透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成した振動を与えて該透明容器内の粉末を循環流動させながら、循環流動する粉末を撮像し、得られた画像を用いて異物の有無を検査することを特徴とする透明容器内粉末中の異物検査方法。
[2] 縦方向の往復振動の位相に対して、前記横方向の往復振動の位相を30〜60°遅らせることにより、透明容器内の粉末を循環流動させることを特徴とする前記1の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[3] 前記循環流動する粉末が内面に接触している透明容器壁面を通して、粉末を撮像することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[4] 前記透明容器を垂直に立てて、縦方向の往復振動と横方向の往復振動を行わせることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[5] 透明容器の下方から、透明容器の底を通して粉末を撮像することを特徴とする前記4に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[6] 前記縦方向の往復振動と横方向の往復振動を同一周期で行わせることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[7] 前記透明容器の縦方向及び横方向の往復振動と、前記撮像とを同期させて複数回の撮像を行うことを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[8] 前記複数回の撮像により得られた複数の画像について、画像の濃淡情報に基づいて異物を検出することを特徴とする前記7に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[9] 前記複数回の撮像により得られた複数の画像をディスプレイの画面上に倍速表示することを特徴とする前記7又は8に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
[10] 透明容器内に充填された粉末中への異物の混入の有無を検査する異物検査装置において、前記透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動と行わせると共に、両者を合成して粉末を循環流動させる循環振動機構と、該透明容器の把持機構と、該透明容器内で循環流動する粉末を透明容器の壁面を通して撮像する撮像機構とを備えることを特徴とする透明容器内粉末中の異物検査装置。
[11] 縦方向の往復振動の位相に対して横方向の往復振動の位相を遅らせる位相調整機構を備えることを特徴とする前記10に記載の透明容器内粉末中の異物検査装置。
[12] 前記撮像機構を構成するカメラが、その光軸を上方に向けて、透明容器の下方に設けられていることを特徴とする前記9又は11に記載の透明容器内粉末中の異物検査装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成した振動を与えて該透明容器内の粉末を循環流動させながら、内面に粉末が接触し、密着している透明容器壁面を通して粉末を撮像し、得られた画像を用いて異物の有無を検査することにより、透明容器の内壁面に付着しやすい粉末であっても、粉末中の異物を容易に検査することができる。
本発明の異物検査装置は、透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動と行わせると共に、両者を合成して粉末を循環流動させる循環振動機構を備えているので、透明容器内の粉末を確実に循環流動させることができ、透明容器内で循環流動する粉末を、内面に粉末が接触し、密着している透明容器壁面を通して撮像する撮像機構を備えているので、該撮像機構で得られた画像を用いることにより、粉末中に異物が存在するか否かの検査を容易且つ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
先ず、本発明に係わる透明容器内に充填された粉末中に異物が混入しているか否かの検査方法について説明する。
【0011】
本発明の異物検査方法が適用される工程は、バイアル瓶等の透明容器中に粉末を充填し、栓で密封した後、不良品を排除する検査工程の一部を構成するものである。透明容器の検査工程全体は、例えば、粉末が充填されたバイアル瓶等の透明容器を密封しているゴム栓に異常が無いか否か等の他の検査工程を含むことができる。
【0012】
本発明の対象となる透明容器としては、バイアル瓶、アンプル瓶、ガラス瓶、樹脂瓶、シリンジ等が挙げられる。
透明容器中に充填される粉末としては、例えば注射用の粉末薬剤等が挙げられる。
また、本発明で検出しようとする異物としては、虫、毛髪、ガラス、繊維、金属等の粉末と色の区別がつく異物が挙げられる。
【0013】
本発明の異物検査方法の特徴は、透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成した振動を与えて容器内の粉末を循環流動させながら、循環流動する充填物を透明容器壁面を通して撮像し、得られた画像を用いて粉末中に混入している異物の有無を検査することにある。なお、本明細書において「縦方向」とは、重力が働く方向、すなわちz方向をいう。また「横方向」とは、重力が働く方向に対する直角を向く方向、すなわちx方向(透明容器を縦方向に載置した場合の、底面に平行な方向)をいう。
【0014】
縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成した振動を与えて透明容器内の粉末を循環流動させると、粉末中に異物が混入していた場合、異物の大きさ、比重を問わず、異物は粉末と共に循環流動するため、混入した異物を容易かつ確実に検出することが可能となる。
【0015】
本発明において、循環流動する粉末を撮影する場合、循環流動する内面に粉末が接触し密着している透明容器壁面を通して撮像することが好ましい。このようにすると、粉末が透明容器の内面に付着した場合であっても、透明容器内の粉末を容易に撮像することができる。即ち、内面に粉末が接触し、密着(以下、単に密着ともいう。)している透明容器壁面を通して容器内部を見る場合、容器内部側の粉末表面と壁面との距離が近いため粉末表面を良好に見ることができる。これに対し、粉末と密着していない壁面を通して容器内部を見る場合、粉末表面と壁面との距離が遠いため粉末表面をはっきりと見ることができず、混入した異物の確認が不十分となる。本発明で利用する前記現象は、レースカーテン越しに物を見る場合、離れた距離からは向こう側を見ることができないのに対し、カーテンに目を近づけると向こう側を見ることができるのと同じ現象である。
但し、本発明は、内面に粉末が接触し密着している透明容器壁面を通して撮像することに限定するものではなく、付着性の無い粉末を撮像する場合には、粉末が内面に接触していない透明容器壁面を通して撮像することができる。
【0016】
粉末と接触し、密着している壁面は、例えば透明容器を縦方向(垂直方向)に向けて把持した場合には、下方下部の壁面、好ましくは容器の底であり、この底の壁面を見るようにした場合、装置構成を簡素化できる利点がある。また、例えば透明容器を横方向(水平方向)に向けて把持した場合には、下方の壁面は、側壁面が粉末と密着している下部側壁面になる。更に、後述するように透明容器を0〜90°の範囲で傾けて保持することもでき、その場合には、適宜粉末と接触し、密着している壁面を選択することができる。
【0017】
以下の説明では、透明容器を縦方向(垂直方向)に把持して振動させて異物検査を行う場合を例に説明する。
【0018】
本発明においては、運動の基準となる位置を固定して縦方向の往復振動と横方向の往復振動を起こし、それを合成して循環振動を発生させ、その循環振動を透明容器に伝達し、透明容器内の粉末を循環流動させる。この場合、縦方向の往復振動と横方向の往復振動それぞれの周期は同じでも異なっていてもよい。例えば、縦方向と横方向を異なる周期で往復振動させると、∞や8の状の循環振動を起こすことができる。但し、装置を簡易且つ安価に製作できるという観点からは同一周期で行わせることが好ましい。
【0019】
更に、循環流動を安定して起こすには、縦方向の往復振動の位相に対して、横方向の往復振動の位相を30〜60°、より好ましくは35〜55°、更に好ましくは40〜50°遅らせるようにする。
【0020】
また、往復振動の周期は、例えば1500〜3600rpm、より好ましくは1800 〜2400rpmである。
往復振動の距離(振幅)は、縦方向に1〜10mmが好ましく、より好ましくは1〜5mmであり、横方向に1〜10mmが好ましく、より好ましくは2〜7mm、更に好ましくは3〜5mmである。この範囲内であれば、粉末の循環流動を安定して起こすことができる。
【0021】
なお、縦方向の往復振動のみを行わせた場合には、図3に示すように、透明容器を僅かに傾けると傾き側に寄った循環流動が起きるが、流動の中心に溜りができて小さな異物が溜りの中に閉じ込められたままになり、大きな異物は偏析効果により粉末表面に飛び出したままになる傾向がある。また、横方向の往復振動のみを行わせた場合には、図4に示すように、瓶の4隅をぐるぐる回る流動が始まり、透明容器を僅かに傾けると傾き側に寄った循環流動が起きて、大きな異物は流動の流れに乗って容器底部に現れるが、小さな異物は流動の中心にできる溜りの中に閉じ込められたままになる傾向がある。
【0022】
本発明においては、撮像は動画で行う。また、撮像は、前記の透明容器の縦方向及び横方向の往復振動と、前記撮像とを同期させて複数回の撮像を行うことが好ましい。このようにすると、循環流動する粉末が透明容器内の一定の位置にある撮像画像を連続して得ることができるので、目視による異物検査を容易に行うことができる。又、得られた撮像画像を画像処理する場合も、安定した処理を行うことができる。なお、縦及び横方向の往復振動と撮像の同期は、実回転数に対し、カメラのフレームレート(1秒間当りの撮像回数)を調整することで可能となる。

【0023】
撮像して得られた画像を用いる異物検査においては、画像を例えばディスプレイの画面上に表示して目視により検査することができる。この場合、撮像した複数の画像をディスプレイの画面上倍速表示させることにより、検査効率を向上させることが好ましい。
また、コンピュータ等を用いた画像処理による自動検査をすることもできる。即ち、複数回撮像を行って得られた複数の画像の各々について、得られた濃淡情報に基づいて異物を検出することができる。更に、目視による検査と自動検査を併用することもできる。例えば、異物を自動検査し、ガラス等を目視検査することができる。
【0024】
次に、カメラによる撮像画像から異物を画像処理により自動検出する手順を説明する。
(1)カメラにて撮像した画像(静止画)を画像処理装置内のメモリに格納する。(処理時間を短縮するために粉末エリア部を切り取った画像等小さい画像が好ましい)
例えば320×480の画素サイズで256階調の濃淡データに変換される。
(2)画像処理装置には、取込んだ画像中の異物出現範囲に検査領域を予め設定しておく。
(3)この領域を予め設定したしきい値に基づいて2値化処理を行い、異物の有無を判定する。
(3)判定は2値化処理した画像に対し、検査ウィンドウ内の異物に相当する画素数を計数し、予め設定された感度レベルと比較する。計数された画素数が設定感度レベル以上である場合には、異物が存在していると判断して不良検知信号を出力する。
(4)また、設定感度レベルより少なかった場合には、異物の存在しない良品と判断する。
(5)画像処理は画像1枚毎に都度処理しても良いが、合成画像を作成しまとめて処理しても良い。
【0025】
次に、本発明に係わる透明容器内に充填された粉末中に混入した異物の検査装置について説明する。図1に本発明による異物検査装置の一構造例を正面図で、図2に平面図で示す。
図1において、2は固定台、2aは固定ブロック、2bはモーター固定板、2cは変換・合成機構固定板、3はモーター、3aはモーター3の回転軸、3bはホイール、4は縦方向振動変換機構、41は縦方向偏芯円板カム部、411は縦方向カム軸、412はプーリー、413は縦方向偏芯円板カム、414は玉軸受け、42は縦方向リンクアーム、5は横方向振動変換機構、51は横方向偏芯円板カム部、511は横方向カム軸、512はプーリー、513は横方向偏芯円板カム、52は横方向リンクアーム、6は縦横振動合成機構、61はL型部材、61aは連結部材、62は横方向スライダー、63は縦方向スライダー、64は縦方向L型リンクアーム、64aは連結部材、8は透明容器把持機構、81は透明容器保持板、81aは開口部、82はクランピングユニット、821は断面コ字状の把持部材、822は把持アーム、822aは半円状の把持部、823は可動板、824はスプリング、825は固定棒、826は抑え板、827は第一貫通孔、828は第二貫通孔、9は回転運動伝達機構、91は無端の駆動ベルト、92a、92bはガイドローラ、10は透明容器、11はカメラ、12aはドーム型照明装置、12bはバー照明装置をそれぞれ示す。
【0026】
この異物検査装置は、固定台2に対して垂直方向に配置された固定ブロック2aの上に設けられた循環振動機構と、カメラ11と照明装置12(12a、12b)からなる撮像機構とを備えるものである。
【0027】
循環振動機構は、モーター3と、モーター3の回転を縦方向の往復振動に変換する縦方向振動変換機構4と、モーター3の回転を横方向の往復振動に変換する横方向振動変換機構5と、縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成して循環振動に変換する縦横振動合成機構6と、透明容器7を把持して循環振動を行う透明容器把持機構8と、モーター3の回転を縦方向振動変換機構4と横方向振動変換機構5に伝える回転運動伝達機構9とを備えるものである。

【0028】
この異物検査装置においては、縦方向振動変換機構4及び回転運動伝達機構9は固定ブロック2a上に設けられ、横方向振動変換機構5及び縦横振動合成機構6は固定ブロック2aに固定されると共に正面図上で奥側に伸びる変換・合成機構固定板2c上に設けられ、透明容器把持機構8は、縦横振動合成機構6を構成する連結部材64aの上に設けられている。
なお、以下の説明において、図1における固定ブロック2aの手前側を表側、奥側を裏側といい、表側を基準として左右を定める。
【0029】
モーター3は、モーター固定板2cを介して固定ブロック2aに固定されている(正面図上で固定ブロック2aの右下方向)。
回転運動伝達機構9は、無端の駆動ベルト91と、ガイドローラ92a、92bとを備えている。縦方向振動変換機構4は、縦方向偏芯円板カム部41と、この縦方向偏芯円板カム部41とリンクし、縦方向の往復振動を行う縦方向リンクアーム42とを備える。縦方向偏芯円板カム部41は、固定ブロック2aに対し回転可能に水平方向に軸支された縦方向カム軸411と、この縦方向カム軸411と共に回転し、駆動ベルト91からの回転が直接伝達されるプーリー412と、円運動を縦方向の直線運動(直線振動)に変換する縦方向偏芯円板カム413とからなる。縦方向リンクアーム42の下部には、円形孔が形成され、縦方向偏芯円板カム413は玉軸受け414(図2)を介して固定されることにより、円形孔の内周に沿って偏芯回転可能に構成されている。なお、縦方向リンクアーム42の上端は、後述する縦横振動合成機構6を構成する縦方向L型リンクアーム64の下部の水平方向に伸びる部分に、軸の回りに回転可能な連結部材64aで連結されている。
【0030】
横方向振動変換機構5は、横方向偏芯円板カム部51と、この横方向偏芯円板カム部51とリンクし、左水平方向を向いて横方向の往復振動を行う横方向リンクアーム52とを備える。横方向偏芯円板カム部51は、固定ブロック2aに対し回転可能に水平方向に軸支された横方向カム軸511と、この横方向カム軸511と共に回転し、駆動ベルト91からの回転が直接伝達されるプーリー512と、円運動を横方向の直線運動(直線振動)に変換する横方向偏芯円板カム513とからなる。横方向リンクアーム52の右端側には円形孔が形成され、横方向偏芯円板カム513は玉軸受け514(図2)を介して円形孔に固定されることにより、円形孔の内周に沿って偏芯回転可能に構成されている。なお、横方向リンクアーム52の左端は、縦横振動合成機構6を構成するL型部材61の垂直部に、軸の回りに回転可能な連結部材61aで連結されている。
【0031】
なお、図2に示すように、モーター3のホイール3bは、固定ブロック2aの右側下部から右方向に伸びるモーター固定板2bの表側に、回転運動伝達機構9は固定ブロック2aの表側に取り付けられており、縦方向振動変換機構4と横方向振動変換機構5と縦横振動合成機構6とは固定ブロック2aの裏側に取り付けられている。縦方向カム軸411に固定されているプーリー412と横方向カム軸511に固定されているプーリー512とは固定ブロック2aの表側に設けられている。

【0032】
モーター3はモーター固定板2bの裏側に固定され、その回転軸3aは水平方向を向いてモーター固定板2bに軸支され、ホイール3bは固定ブロック2aの表側で回転する。横方向カム軸411は、モーター3の回転軸3aに対して水平左方向の位置で表側を向いて固定ブロック2aに軸支されており、横方向カム軸511は縦方向カム軸411とモーター3の回転軸3aを結ぶ線の上方の位置で表側を向いて固定ブロック2aに軸支されている。駆動ベルト91は、モーター3の回転軸3aのプーリーから縦方向偏心円板カム軸411に向かって左方向に進み、縦方向振動変換機構4のプーリー412及び縦方向カム軸411を回転させてから右方向に進み、横方向カム軸511の下方左寄りの位置で固定ブロック2aに取り付けられているガイドローラ92aで進行方向を上向きに変えられ、上方の横方向振動変換機構5のプーリー512及び横方向偏芯円板カム軸511を回転させてから、下方に進み、横方向偏芯円板カム部51の下方右寄りの位置で固定ブロック2aに取り付けられている回転ローラ92bで進行方向を右方向に変えられてモーター3の回転軸3aのプーリーに戻るように構成されている。従って、モーター3を作動させると、縦方向カム軸411と横方向カム軸511とが同時に回転を始める。
【0033】
縦方向カム軸411が回転すると、その回転運動は縦方向偏芯円板カム413に伝達され、縦方向偏芯円板カム413の偏芯回転運動は縦方向リンクアーム42の縦方向の往復振動に変換される。縦方向リンクアーム42の先端は、縦横振動合成機構6を構成する縦方向L型リンクアーム64に前記の通り連結されているので、縦方向リンクアーム42の縦方向の往復振動は縦方向L型リンクアーム64に伝達される。
【0034】
横方向カム軸511が回転すると、その回転運動は横方向偏芯円板カム512に伝達され、横方向偏芯円板カム512の回転運動は横方向リンクアーム52の横方向の往復振動に変換され、更にL型部材61が横方向の往復振動を行う。
なお、往復振動の距離は、縦方向及び横方向共に、偏芯円板カムの揚程の寸法L1、L2により定められる。
【0035】
本発明の縦横振動合成機構6は、L型部材61と、横方向スライダー62と、縦方向スライダー63と、縦方向L型リンクアーム64とを備えている。横方向スライダー62は、固定ブロック2aから裏側に伸びる変換・合成機構固定板2cの上に固定されていると共に、L型部材61の横方向に伸びる部分を支えつつ滑動させる機能を有し、L型部材61の縦方向に伸びる部分は、横方向リンクアーム52の先端に連結されているので、横方向リンクアーム52の横方向の往復振動に連動して、L型部材61は安定した横方向の往復振動を行う。また、L型部材61の縦方向に伸びる部分の左端縁は縦方向スライダー63を介して縦方向L型リンクアーム64に連結されているので、縦方向L型リンクアーム64はL型部材61に対して滑らかに滑動して縦方向の往復振動を行うと同時に、横方向リンクアーム52の横方向の往復振動が縦方向L型リンクアーム64に伝達される。その結果、縦方向L型リンクアーム64は循環振動を行い、その循環振動は縦方向L型リンクアーム64の先端に連結された透明容器把持機構8に伝達され、更に透明容器10内の粉末を循環流動させる。
【0036】
本発明の異物検査装置は、縦方向の往復振動の位相に対して横方向の往復振動の位相を遅らせたり、進ませたりすることができる位相調整機構を備えている。図1に示す装置における位相の調整は、例えば、図5(a)に示すように、縦方向偏芯円板カム413の円の中心と縦方向カム軸411の円の中心とを結ぶ直線αを垂直方向に設定し、これに対し、図5(b)に示すように、横方向偏芯円板カム513の円の中心と横方向カム軸511の円の中心とを結ぶ直線βを、直線αに対し傾けることにより行うことができる。この場合、直線αに対し偏芯回転の逆方向に直線βをθ°傾けると、横方向の往復振動の位相は縦方向の往復振動の位相に対してθ°遅らせることができる、直線αに対し偏芯回転の正方向に直線βをθ°傾けると、横方向の往復振動の位相は縦方向の往復振動の位相に対してθ°進ませることができる。
【0037】
なお、XとZが同じ偏芯量の場合、θ°を0°または180°に設定すると、円運動(XとZの偏芯量が異なる場合は楕円運動)をし、θ°を90°または−90°に設定すると直線運動(XとZの偏芯量が異なる場合は直線運動)をし、θ°を0°と90°と−90°さらに180°以外に設定すると楕円運動をする。この楕円運動は90°から0°もしくは90°から180°方向に角度を変化させていくと、楕円の幅が太くなっていき、最大幅が0°となる。また、±90°を超える設定にすると±90°未満時設定に対し、逆回転の動きとなる。
【0038】
具体的には、XとZが同じ偏芯量の場合、θ°を0°または180°に設定すると、図5(c)に示すように、円運動をし、図5(d)に示すようθ°を90°または−90°に設定すると直線運動をし、θ°を0°と90°と−90°さらに180°以外の設定すると楕円運動をする(図5(e)にθ°を45°、−45°に設定した場合を示す。) 。この楕円運動は90°から0°もしくは90°から180°方向に角度を変化させていくと、楕円の幅が太くなっていき、最大幅が0°となる。また、±90°を超える設定にすると±90°未満時設定に対し、逆回転の動きとなる。
なお、位相の調整は、モーターを2台使用し、電気的に位相を可変することによっても行うことができる。

【0039】
図1に示す装置においては、1台のモーターで縦方向カム軸と横方向カム軸とを回転させているので、縦方向の往復振動と横方向の往復振動は同一の周期で行われる。但し、本発明においては、モーターを2台以上使用し、電気的に位相を可変することにより、縦方向の往復振動と横方向の往復振動を同一、更には異なる周期で行わせたり、往復振動の位相をずらすこともできる。また、図1に示す装置においては、偏芯カムを使用して往復振動を行わせているが、リニア式のモーターを使用することにより往復振動を行わせることもできる。
【0040】
なお、2台のモーターを使用する場合、上記リンク機構同様にモーター原点(モーター回転の停止位置)の段階で偏芯カムの位相をずらしておき、同時回転させることで、縦方向の往復振動と横方向の往復振動の位相をずらすことが可能となる。
また、同期が合っているか否かは、各々のモーターの回転検出センサーの周期を監視することで可能となる。
また、ZもしくはX軸モーターの1回転センサーの周期間において、任意の時間遅らせ、もう一方のモーターを駆動することにより、位相を可変することもできる。
なお、モーターは必ず同じ位置で回転を停止し(モーター原点)、クランプユニットも必ず同じ位置で停止する。
【0041】
透明容器把持機構8は、縦方向L型リンクアーム64の上端側に取り付けられた透明容器保持板81と、クランピングユニット82とを備えている。クランピングユニット82は、断面コ字状の把持枠821と、先端側が透明容器10の外周壁の形状にならって半円状に湾曲し(半円状の把持部822a)、且つ後端側には可動板823が設けられた把持アーム822と、スプリング824と、スプリングの固定棒825と抑え板826とを備えている。
【0042】
コ字状把持枠821は、コの字の開放側が固定ブロック2aとは反対側を向くように透明容器保持板81に固定されている。このコ字状把持枠821の縦棒に相当する部分の略中央部には右方向に伸びる固定棒825が取付けられ、固定棒825の右端には抑え板826が設けられている。
【0043】
コ字状把持枠821の縦棒部の固定ブロック2aの反対側には第一貫通孔827が形成されており、この第一貫通孔を把持アーム823が挿通しており、可動板822の中央部にも第二貫通孔828が形成されており、この第二貫通孔を固定棒825が挿通しており、固定棒825の右端には抑え板87が固定され、可動板83がコ字状把持枠821の縦棒部と抑え板826との間を可動できるようになっている。更に、コ字状把持枠821の縦棒部と可動板822の間の固定棒825の周囲にはスプリング824が配され、透明容器10をクランプして把持するためのクランピングユニット82が形成されている。具体的には、図示しないエアシリンダーで可動板823を押すことにより、把持アーム822の半円状の把持部822aとコ字状把持枠821との間が拡がり透明容器10をその間に入れた後、エアシリンダーを後退させることにより透明容器10の把持を行うことができ、透明容器10の把持の解除は、エアシリンダーを前進させることにより行うことができるようになっている。
【0044】
なお、透明容器把持機構はこの構成に限定されるものではなく、透明容器10を把持することさえできれば、例えば、チャック等で透明容器の首部や胴体を掴むようにしてもよい。
【0045】
検査のための透明容器10の把持は、透明容器10を前工程からベルトコンベヤ等で搬送させ、ロボットアームなどを用いて、透明容器10を縦方向(垂直)に向けて透明容器保持板81の上に載置した後、上記の操作により行う。この状態で、モーター3を作動させると、前記循環振動機構により透明容器10は循環振動を開始し、透明容器10内の粉末は循環流動を開始する。循環流動による検査が終了した透明容器10は、ロボットアームなどを用いて次工程に搬送される。
【0046】
本発明の異物検査装置は、透明容器10内で循環流動する粉末を下方から撮像する撮像機構を備えている。
この例では、撮像機構は、カメラ11と、ドーム型照明12aと2個のバー照明12bとを備えている。なお、カメラ11及びドーム型照明12aと2個のバー照明12bは固定台2に設けられたスタンド(図示せず)に固定される。
【0047】
カメラ11による撮像のために、透明容器保持板81の透明容器10が載置される場所には、透明容器10の底面部よりは小面積の開口部81aが形成され、またドーム型照明12aの中央も開口部(図示せず)が形成されている。カメラ11は、図示のごとくドーム型照明12aの下方に、その光軸を上に向けて、固定配置されている。そしてカメラ11はこれらの開口部を通して、循環振動する透明容器10内で循環流動する粉末を下方から撮像する。カメラ11の撮像範囲は検査が確実に行うことができる範囲に設定する。
【0048】
カメラ11は動画を撮像できるものであれば、CCDカメラ等のデジタル方式のものでも、TVカメラ等のアナログ方式のものでも構わない。もちろん、照明の配置構成、照明の条件等はこの例に限定されず、検査をより正確にするため種々の設定を行うことができる。
【0049】
本発明の異物検査装置は、付着性の粉体を含め、付着性の無い粉体や、流動性の悪い粉体等の各種性状の粉体の検査に適用することができる。
【実施例】
【0050】
本実施形態の異物検査装置を用い、粉末中の遺物を下記条件にて異物検査を行った。
(1)容器:透明ガラスバイアル壜(φ24mm、高さ54mm、容量14ml、ゴム栓(材質:ブチルゴム)
(2)粉末:平均粒子径15μmの針状結晶の白色粒子250mg
(3)異物:黒色の異物:1〜0.01mm、毛髪:1〜10mm、センイ:5mm
(4)縦方向振動距離4mm、横方向振動距離4mm、振動周期1940rpm、振動時間3.4sec
(5)モニタ目視は3.4秒の映像を2倍速で再生して検査した。
【0051】
上記条件で、異物検査装置を140本/分の処理速度で連続運転した結果、いずれの異物に対しても良好な検出結果が得られ、安定した異物検査が行えた。
なお、特許文献1、2に記載の検査装置では、透明容器の壁面に粉末が付着するため、検査は不可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明装置の構造を示す正面図である。
【図2】図2は、本発明装置の構造を示す側面図である。
【図3】図3は、粉体に縦方向振動を与えた場合の循環流動の説明図である。
【図4】図4は、粉体に横方向振動を与えた場合の循環流動の説明図である。
【図5】図5(a)は、縦方向偏芯円板カムと縦方向カム軸の関係を示す説明図である。図5(b)は、横方向偏芯円板カムと横方向カム軸の関係を示す説明図である。図5(c)は、縦方向振動と横方向振動が合成された運動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
2 固定台
2a 固定ブロック
2b モーター固定板
2c 変換・合成機構固定板
3 モーター
3a 回転軸
3b ホイール
4 縦方向振動変換機構
41 縦方向扁芯円板カム部
411 縦方向カム軸
412 プーリー
413 縦方向扁芯円板カム
414 玉軸受け
42 縦方向リンクアーム
5 横方向振動変換機構
51 横方向扁芯円板カム部
511 横方向カム軸
512 プーリー
513 横方向扁芯円板カム
514 玉軸受け
52 横方向リンクアーム
6 縦横振動合成機構
61 L型部材
61a 連結部材
62 横方向スライダー
63 縦方向スライダー
64 縦方向L型リンクアーム
64a 連結部材
8 透明容器把持機構
81 透明容器保持板
81a 開口部
82 クランピングユニット
821 断面コ字状の把持枠
822 把持アーム
822a 半円状の把持部
823 可動板
824 スプリング
825 固定棒
826 抑え板
827 第一貫通孔
828 第二貫通孔
9 回転運動伝達機構
10 透明容器
11 カメラ
12a ドーム型照明装置
12b バー照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明容器内に充填された粉末中への異物の混入の有無を検査する異物検査方法において、前記透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動を合成した振動を与えて該透明容器内の粉末を循環流動させながら、循環流動する粉末を撮像し、得られた画像を用いて異物の有無を検査することを特徴とする透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項2】
縦方向の往復振動の位相に対して、前記横方向の往復振動の位相を30〜60°遅らせることにより、透明容器内の粉末を循環流動させることを特徴とする請求項1の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項3】
前記循環流動する粉末が内面に接触している透明容器壁面を通して、粉末を撮像することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項4】
前記透明容器を垂直に立てて、縦方向の往復振動と横方向の往復振動を行わせることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項5】
透明容器の下方から、透明容器の底を通して粉末を撮像することを特徴とする請求項4に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項6】
前記縦方向の往復振動と横方向の往復振動を同一周期で行わせることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項7】
前記透明容器の縦方向及び横方向の往復振動と、前記撮像とを同期させて複数回の撮像を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項8】
前記複数回の撮像により得られた画像について、画像の濃淡情報に基づいて異物を検出することを特徴とする請求項7に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項9】
前記複数回の撮像により得られた複数の画像をディスプレイの画面上に倍速表示することを特徴とする請求項7又は8に記載の透明容器内粉末中の異物検査方法。
【請求項10】
透明容器内に充填された粉末中への異物の混入の有無を検査する異物検査装置において、前記透明容器に縦方向の往復振動と横方向の往復振動と行わせると共に、両者を合成して粉末を循環流動させる循環振動機構と、該透明容器の把持機構と、該透明容器内で循環流動する粉末を透明容器の壁面を通して撮像する撮像機構とを備えることを特徴とする透明容器内粉末の異物検査装置。
【請求項11】
縦方向の往復振動の位相に対して横方向の往復振動の位相を遅らせる位相調整機構を備えることを特徴とする請求項10に記載の透明容器内粉末の異物検査装置。
【請求項12】
前記撮像機構を構成するカメラが、その光軸を上方に向けて、透明容器の下方に設けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の透明容器内粉末の異物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−8339(P2010−8339A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170522(P2008−170522)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(599066148)株式会社 デクシス (3)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】