説明

透明射出成形部品用基板材料

本発明は、基板材料に関し、対応する成形品の表面に、−1.5〜+1.5kVの電圧を有する帯電範囲が存在し、その総面積に対する割合は、95〜100%であり、−1.5〜−2.5kVの電圧を有する帯電範囲と+1.5〜+2.5kVの電圧を有する帯電範囲が存在し、それらの総面積に対する割合は0〜5%であり、<−2.5kVの電圧を有する帯電範囲と>+2.5kVの電圧を有する帯電範囲が存在し、それらのディスクの全表面に対する割合は、1%までであることを特徴とする基板材料であって、基板表面から3.5mmの距離でモンロープローブを用いて電位測定を行い、走査範囲は、X−方法及びY−方向の各々の場合に12cmであり、X−方向及びY−方向の各々の場合に2mmの間隔で電位を測定する基板材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明射出成形部品を製造するための、特に、本発明に基づくポリカーボネートから得られ、被覆すべき射出成形部品及び成形品を製造するための、基板材料(又は基板物質)としてのポリカーボネートを提供する。成形品は、例えば、透明シート、レンズ、光学記憶(光記憶又は光学式記憶)媒体若しくは光学記憶媒体用担体、又は例えば、拡散スクリーン等の自動車用ガラス分野の製品でありうる。本発明は、例えば、優れた被覆性及び濡れ性を有し、溶液からの、例えば、特に非極性媒体からの色素(又は染料)の塗工(又は塗布)に適する、例えば、書き込み可能光学データ記憶媒体等の、特に光学記憶媒体及び光学記憶媒体用担体を提供する。本発明に基づくポリカーボネートから作られた光学射出成形部品は更に、比較的汚れにくい傾向がある。
【背景技術】
【0002】
透明射出成形部品は、中でも、ガラス及び記憶媒体の分野において重要である。
【0003】
光学データ記録材料は、膨大な量のデータのための可変記録媒体及び/又は保管媒体としてますます用いられるようになっている。このタイプの光学データ記憶媒体の例としては、CD、スーパー・オーディオCD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW及びBDが挙げられる。
【0004】
例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及びその化学修飾物等の透明熱可塑性物質は、一般に光学記憶媒体に用いられる。基板材料としてのポリカーボネートは、特に1回書き込み可能かつ複数回読み込み可能な光学ディスク用に及び複数回書き込み可能な光学ディスク用にも適し、並びに例えば、拡散スクリーン等の自動車ガラス分野からの成形品を製造するために適する。この熱可塑性物質は、優れた機械的安定性を有し、寸法が変化しにくく、高い透明性と衝撃強度で区別される。
【0005】
DE−A−2119799によれば、ポリカーボネートは、フェノール性末端基が関与した状態で、相界面法により及び均一相中での方法によっても製造される。
【0006】
相界面法により製造されたポリカーボネートは、例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)等の上述の型式の光学データ記憶媒体を製造するために使用することができる。これらのディスクは、射出成形法でそれらを製造する間に高い電場を発生させる性質を有することが多い。この光学データ記憶媒体製造の間の基板上の高い電場強度は、例えば、周囲の埃を引き付けたり、また例えば、ディスク等の射出成形品を互いに密着させて、完成した射出成形品の質を低下させ、射出成形法を困難なものとする。
【0007】
更に、特にディスク(光学データ担体のための)の静電帯電は、とりわけ例えば、非極性色素等の非極性媒体に対する濡れ性(又は湿潤性)の低下、又は例えば、ジブチルエーテル、エチルシクロヘキサン、テトラフルオロプロパノール、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン若しくはオクタフルオロプロパノール等の溶媒からの色素塗工における濡れ性の低下をもたらすことが知られている。従って、書き込み可能データ記憶媒体の色素塗工の間の基板表面の電場が高いと、例えば、色素による被覆むらを引き起こし、このため情報層における欠陥をもたらす。
【0008】
基板材料の静電帯電の程度は、例えば、基板表面からの具体的な距離での、電場の測定により計る(又は定量)することができる。
【0009】
スピン・コーティング法で表面に書き込み可能な基板が塗工されている光学データ保存媒体の場合、書き込み可能な層の均一な塗工を保証し、トラブルの無い製造工程を確保するために、絶対的な電場強度が低いことが必要である。
【0010】
上述の事実のため、基板材料に関し、高い静電場が更に生産の低下をもたらす。このことは、特定の製造段階の停止につながる可能性があり、また高コストと関連する。
【0011】
この高い静電場の問題を解決するために複数の方法が取られた。一般に、添加剤として基板材料に帯電防止剤を加える。帯電防止ポリカーボネート組成物は、例えば、JP62207358−Aに記載されている。この明細書では、とりわけリン酸誘導体が帯電防止剤としてポリカーボネートに添加される。EP0922728は、例えば、ポリアルキレングリコール誘導体、エトキシ化ソルビタンモノラウレート、ポリシロキサン誘導体、ホスフィン・オキシド及びジステアリルヒドロキシアミン等の種々の帯電防止剤を開示し、それらは個々に、又は混合物として使用される。日本の出願であるJP62207358は、添加剤として亜リン酸エステルを開示する。US Patent 5,668,202は、スルホン酸誘導体を開示する。US Patent 6,262,218及び6,022,943は、溶融ポリカーボネート中の末端基含有量を増加させるためにクロロギ酸フェニルの使用を開示する。この出願によれば、末端基含量が90%を超えると帯電防止性にプラスの効果を及ぼすといわれている。WO00/50488は、相界面法において連鎖停止剤として3,5−ジ−tert−ブチルフェノールを用いる。従来の連鎖停止剤と比較して、この連鎖停止剤は相当する基板材料の静電気を低下させる。JP62207358−Aは、ポリカーボネートのための添加剤としてポリエチレン誘導体及びポリプロピレン誘導体を開示する。EP−A1304358は、例えばエステル交換法由来のポリカーボネート中のビスフェノールA、ビス−(4−tert−ブチルフェニルカーボネート)等の短いオリゴマーの使用について記載する。
【0012】
しかし、上述の添加剤は材料から溶出する傾向があるので、基板材料の性質に負の影響を有し得る。実際には、これは帯電防止性のためには望ましい効果であるが、沈着物又は欠陥のある成形品の形成を引き起こし得る。ポリカーボネート中のオリゴマー含有量は更にまた、機械的性質をより低下させ、ガラス転移温度をより低くし得る。これらの添加剤は更に、副反応を生じさせ得る。エステル交換法から得られたポリカーボネートのその後の「エンドキャッピング」は、費用がかかり、得られる成果は最適なものではない。材料への新規の末端基の導入は、高いコストと関連する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って目的は、可能な限り低い電位(値)と、(基板表面から一定の距離で測定された)基板表面上の低い電位差との組み合わせの必要条件を満たし、上述の短所を回避する組成物又は基板材料を提供することである。
【0014】
添加剤を含まないか、できるだけ少量の添加剤を含む基板材料がとりわけ有利である。従って、例えば、EP−A922728に記載のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、及びポリオキシエチレンモノステアレート等の帯電防止剤は、帯電防止性に関しては、50〜200ppmの添加量で実際に有効であるが、上述のように射出成形品の全体的性能にとっては不利となる可能性もある。
【0015】
また材料は、芳香族ポリカーボネート用として既知の、例えば、防炎剤、離型剤、UV安定剤、及び熱安定剤等の追加の添加剤を更に含んで成ることもできる。いずれにせよ、上述の理由から、使用する添加剤の量は可能な限り少なくする。そのような添加剤の例として、ステアリン酸及び/又はステアリルアルコールに基づく離型剤、特に好ましくは、ペンタエリトリトールステアレート、トリメチロールプロパントリステアレート、ペンタエリトリトールジステアレート、ステアリルステアレート及びグリセロールモノステアレート、並びにホスファン、亜リン酸及びリン酸に基づく熱安定剤が挙げられる。
【0016】
本発明は、優れたライタビリティ(書き込み性又は書き込み可能性:writability)と濡れ性(又は湿潤性)を有し、かつ汚れる傾向が低い、特に書き換え可能な光学データ担体のために使用し得る基板材料を提供する。本発明の基板材料は、製造工程において不良品と判定される割合を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、被覆(又はコート)すべき透明成形品の製造のために適する基板材料は、特に、射出成形部品への加工後、射出成形部品の表面上の電位が特定の分布を示すものであることが見出された。この電位分布は、例えば評価に関していわゆる「モンロープローブ(Monroe probe)」を用いる、ある種の画像処理により可視化することが可能である。ここで、表面上の電位分布が可能な限り均一であることと関連して、電位の値が低い射出成形部品がとりわけ有利であることが見出された。これは今まで知られていなかったことであり、成形品の質に関する重要な基準である。従って、例えば、表面の電位分布が可能な限り均一であることとともに、低い電位の値を有するディスクが、書き換え可能な光学データ記憶媒体のために特に有利である。
【0018】
従って、射出成形部品の被覆、特に透明光学ディスク又は透明拡散スクリーンの被覆に関して決め手となる(又は重要な)質的特徴として、驚くべきことに、本発明において正の効果を有することが証明された基板材料は、射出成形工程後に、基板表面から規定された距離及び規定された温度と大気湿度で測定された、均一な電位分布とともに、可能な限り低い電位の値を有する透明成形品をもたらすことが見出された。
【0019】
従って、本発明は、被覆すべき透明射出成形部品を製造するための基板材料、好ましくはポリカーボネートであって、
射出成形法により得られる成形品の表面の、95〜100%までが、−1.5〜+1.5kVの間の電位範囲(電位領域又は電位区域)であり、表面の0〜5%が、−1.5〜−2.5kV又は+1.5〜+2.5kVの間の電荷範囲(電荷領域又は電荷区域)であり、並びに1%までが、−2.5kVより小さく、2.5kVを超える範囲(領域又は区域)である、基板材料を提供する。
【0020】
これらの特性を有する材料は、例えば、有機溶媒中に溶解させた色素等の非極性媒体を用いて特に良好に被覆することができる。被覆すべき射出成形品は、好ましくは、拡散スクリーン又は光学書き込み可能データ保存媒体用担体材料である。
【0021】
ディスク表面上の電荷分布の均一性のために役立つ指標は、例えば、電気的帯電の結果として生じる(あるディスク・セグメントの)電位の標準偏差である。電気的帯電の結果として生じる表面セグメントの電位の標準偏差は、好ましくは0.6kVを超えるべきではない。
【0022】
−1.5kV〜+1.5kVの範囲の電位を有する表面、即ち電位がないか、又は電位が低い表面が特に好ましい。この場合、射出成形品の表面のみが関係し、即ち、例えばCD又はDVDの場合、例えば、スタッキングリングまでの領域が関連し、内側の穴部は関係しない。
【0023】
相当する基板上の表面電荷により生じる電位は、実質的に射出成形品の形状及び寸法、並びに射出成形法の特徴に依存する。従って、例えば、光学データ担体のためのディスク等、被覆される射出成形品そのものの測定を行うことが重要である。
【0024】
上述の値及び測定された全ての値は、一定の大気湿度及び室温においてイオナイザー(イオン化装置又は電離装置)を使用しないで原則として既知の射出法を用いて製造された成形品に適用される。
【0025】
製造工程においてディスクの良好なライタビリティを確保するために、ディスク上にイオン化空気流を導く、いわゆるイオナイザーを使用することが多い。本発明の基板材料に関する上述の測定値は、イオナイザーを使用しないで得たものである。イオナイザーの使用は、製造工程にかかる費用を高くするため、このことは本発明のさらなる利点である。それでもなお、イオナイザーを追加で使用することができる。
【0026】
また本発明は、例えば、書き込み可能光学データ記憶媒体のためのディスク、又は例えば拡散スクリーン等の自動車用ガラス分野の材料等の、本発明の基板材料から製造される成形品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
被覆可能な透明射出成形部品、好ましくは光学データ記憶媒体の製造のために好適な材料は:
例えば、ビスフェノールA(BPA−PC)に基づくポリカーボネート、トリメチル−シクロヘキシル−ビスフェノールポリカーボネート(TMC−PC)に基づくポリカーボネート、フルオレニルポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、環状ポリオレフィンコポリマー、水素化ポリスチレン(HPS)並びに非晶質ポリオレフィン及びポリエステル等の熱可塑性物質である。
【0028】
本発明の基板材料及びそれから得られる特にディスク等の射出成形品(又は射出成形物品)は、好適な工程パラメーター(又はプロセスパラメーター)を選択することにより製造することができる。
【0029】
基板材料の加工後に得られる射出成形品上の電荷分布は、いくつかの因子(又はファクター)により影響されうる。例えば、抽出物(又は遊離物)の純度及び補助剤が重要である。更に、例えば、使用されるビスフェノールとホスゲンのモル比、反応中の温度、反応時間及び滞留時間等の工程パラメーターが決定的な影響を与えうる。当業者にとって目的は、射出成形品上に所望の電荷分布をもたらす基板材料を提供するように、工程を制御することである。電荷分布に関して記載された測定は、当業者にとって工程制御のための好適な手段である。
【0030】
所望の基板材料を得るための工程パラメーターの適切な選択は、以下のように示される:
本発明の基板材料を製造するひとつの可能性(又は実現性)は、連続相界面法での基板材料の製造の間の特定の工程パラメーターの選択である。従来の連続ポリカーボネート合成では、使用される過剰量のホスゲンは、使用されるビスフェノールの合計に基づいて3〜100モル%の間であり、好ましくは5〜50モル%の間であるが、本発明の基板材料は5〜20モル%、好ましくは、8〜17モル%のホスゲン過剰で製造される。これに関連して、水酸化ナトリウム溶液のその後1回若しくは数回の計量しながら供給により、又はビスフェノレート溶液の適切なその後の計量しながら供給により、ホスゲンの計量しながら供給中及び計量しながら供給後の水性相のpHは、好ましくは8.5〜12の間のアルカリ性の範囲に保たれ、一方、触媒添加後は10〜14に調整される。ホスゲン化の際の温度は0℃〜40℃、好ましくは、5℃〜36℃である。
【0031】
本発明のポリカーボネートは相界面法により製造される。このポリカーボネート合成法は、文献中に多くの例が記載されている;参考文献の例として、H. Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Polymer Reviews, vol 9, Interscience Publishers, New York 1964, p. 33 以下参照、 Paul W. Morgan, "Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods", Interscience Publishers, New York 1965, chap. VIII, p. 325、 Dres. U, Grigo, K. Kircher and P.R. Muller "Polycarbonate", in Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch, vol. 3/1, Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1992, p. 118-145 及び EP−A0517044号を例示できる。
【0032】
この工程によれば、最初に水性アルカリ溶液(又は懸濁液)中に入れられたビスフェノールのジナトリウム塩(又はさまざまなビスフェノール混合物)のホスゲン化は、第二相を形成する不活性な有機溶媒又は溶媒混合物の存在下で行われる。形成されたオリゴカーボネートは主として有機相中に存在し、好適な触媒を用いて更に縮合され、有機相中に溶解した高分子量ポリカーボネートが得られる。最終的に有機相は分離され、さまざまな加工段階によりポリカーボネートが単離される。
【0033】
ポリカーボネートを製造するために好適なジヒドロキシアリール化合物は、式(2)
HO−Z−OH (2)
[式中、
Zは6個〜30個の炭素原子を有する芳香族基であり、1又はそれ以上の芳香核を含むことができ、置換可能で、及び架橋要素としてヘテロ原子又はアルキルアリール又は脂環式基又は脂肪族基を含むことができる]
で表される。
【0034】
好ましくは、式(2)のZは、式(3)の基
【化1】

[式中、
及びRは、互いに独立して、H、C〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、Cl又はBr等のハロゲン、又は各々の場合に所望により置換されているアリール又はアラルキル、好ましくはH又はC〜C12−アルキル、特に好ましくはH又はC〜Cアルキル、及び極めて特に好ましくはH又はメチルを表し、かつ、
Xは、単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C〜C−アルキレン、C〜Cアルキリデン又はC〜C−シクロアルキリデンを表し、これはC〜C−アルキル、好ましくはメチル又はエチル、及び更にC〜C12−アリーレンにより置換することが可能であり、所望によりヘテロ原子を含む更なる芳香環と縮合させることができる]
を表す。
【0035】
好ましくは、Xは、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、
又は式(3a)若しくは(3b)の基
【化2】

【化3】

[式中、
とRは、各々のXに対して個々に選択することができ、互いに独立して、水素又はC〜C−アルキル、好ましくは水素、メチル又はエチルを示し、かつ、
は炭素を示し、かつ、
nは、4〜7の整数を示し、好ましくは4又は5である、ただし少なくとも一つの原子Xにて、R及びRは同時にアルキルであるという条件である]
を表す。
【0036】
ジヒドロキシアリール化合物の例として:ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、並びにその核アルキル化及び核ハロゲン化化合物を例示できる。
【0037】
本発明で使用される、ポリカーボネートの製造に好適なジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル) ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン及びそのアルキル化、核アルキル化及び核ハロゲン化化合物である。
【0038】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニル−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、及び1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0039】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルエタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン及び1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0040】
これらのジフェノール及び更に好適なジフェノールは、例えば、US−A2999835、3148172、2991273、3271367、4982014、及び2999846、ドイツ公開特許公報1570703、2063050、2036052、2211956、及び3832396、フランス特許明細書1561518、学術論文「H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964, p. 28 以下参照; p. 102 以下参照」及び「D.G. Legrand, J.T. Bendler, Handbook of Polycarbonate Science and Technology, Marcel Dekker New York 2000, p. 72 以下参照」に記載されている。
【0041】
ホモポリカーボネートの場合、ただ1種類のジフェノールが使用され、コポリカーボネートの場合、2種類以上のジフェノールが使用される。使用されるジフェノールは、合成の際に添加される他の全ての化学物質及び補助剤と同様に、それら自体の合成、取り扱い、及び保存に由来する不純物で汚染されている可能性がある。しかし、可能な限り純粋な原料を使用することが望ましい。
【0042】
分子量の調節に必要な単官能性の連鎖停止剤、例えば、フェノール又はアルキルフェノール、特にフェノール、p−tert−ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロ炭酸エステル、若しくはモノカルボン酸の酸塩化物又はこれらの連鎖停止剤の混合物等は、ビスフェノレート若しくはビスフェノレートと一緒に、反応物に入れられるか、又はホスゲン若しくはクロロ炭酸末端基がまだ反応混合物中に存在する限り、任意の所望の時点で合成に添加され、また連鎖停止剤が酸塩化物及びクロロ炭酸エステルの場合、形成されているポリマーのフェノール末端基が十分利用できる限り、任意の所望の時点で合成に添加される。しかし、ホスゲン化後、ホスゲンはもはや存在しないが触媒はいまだ計量して供給されない箇所にて若しくは時点で、連鎖停止剤又は停止剤を添加するか、又は触媒の添加前、触媒と共に、若しくは並行して、それらを計量して供給することが好ましい。
【0043】
使用される分枝剤(branching agent)又は分枝剤混合物はいずれも同様にして合成系に添加されるが、通常は連鎖停止剤の前に添加される。トリスフェノール、第4級(quaternary)フェノール、酸塩化物、トリ−若しくはテトラカルボン酸、又はポリフェノールの混合物若しくは酸塩化物の混合物もまた、通常使用される。
【0044】
3又はそれ以上のフェノール性水酸基を有する使用可能な化合物は、例えば、
フロログルシノール、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタ−2−エン、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、
1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、
1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、
トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、
2,2−ビス−[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、
2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)−フェノール、
テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)メタン
である。
【0045】
他の3官能性化合物としては、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、及び3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールがある。
【0046】
好ましい分枝剤は、3,3−ビス−(3−メチル−1,4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール及び1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0047】
相界面合成で用いられる触媒は、特に、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、及びN−i/n−プロピルピペリジン等の第3級アミン;例えば、テトラブチルアンモニウム/トリブチルベンジルアンモニウム/テトラエチル水酸化アンモニウム/塩化物/臭化物/硫酸水素塩/テトラフルオロホウ酸等の第4級アンモニウム塩;及びアンモニウム化合物に対応するホスホニウム化合物である。これらの化合物は、典型的な相界面触媒として文献に記載され、商業的に入手可能であり、当業者によく知られている。触媒は、個々に、混合物として、又は並行して及び連続して合成に添加することができ、所望によりホスゲン化の前に加えることもできるが、ホスゲンを計量する(又は計量しながら供給する)前に添加することが好ましいオニウム化合物又はオニウム化合物の混合物を触媒として使用する場合を除き、ホスゲンを入れた後で計量することが好ましい。触媒又は複数の触媒は、バルクで、不活性な溶媒、好ましくはポリカーボネート合成の不活性な溶媒中で、また、水溶液として、計量することができるが、第3級アミンの場合、酸、好ましくは無機酸、特に塩酸等とそれらのアンモニウム塩として計量することができる。数種類の触媒を使用する場合、又は触媒の合計量のうちの一部を計量する場合、当然、種々の場所又は種々の時点で、種々の計量法を行うことができる。使用される触媒総量は、使用されるビスフェノールのモル数を基準として0.001〜10モル%の間であり、好ましくは0.01〜8モル%、特に好ましくは0.05〜5モル%の間である。
【0048】
また、ポリカーボネート用の通常の添加剤を、本発明のポリカーボネートに通常量で添加することもできる。添加剤の添加は、耐用年数又は彩色の寿命を延長し(安定剤)、加工を単純化し(例えば、離型剤、流動助剤(flow auxiliary)、帯電防止剤)、又は特定のストレスに対してポリマーの性質を適応させる(例えば、ゴム等の衝撃改質剤;防炎剤、着色剤、ガラス繊維)ために役立つ。
【0049】
これらの添加剤は、個々に、又は任意の所望の混合物若しくは数種類の混合物として、ポリマー溶融物に添加することができ、また、ポリマーの単離の間に又は粒状物を溶融後に、いわゆる調合工程において特に直接的に添加することができる。これに関連して、添加剤又はその混合物は、固体、即ち粉体として、又は溶融物としてポリマー溶融物に添加することができる。もうひとつの計量法は、マスターバッチ又は添加剤のマスターバッチの混合物又は添加剤混合物の使用である。
【0050】
好適な添加剤は、例えば「Additives for Plastics Handbook, John Murphy, Elsevier, Oxford 1999」及び「Plastics Additives Handbook, Hans Zweifel, Hanser, Munich 2001」に記載されている。
【0051】
好ましい熱安定剤は、例えば、有機亜リン酸、ホスホネート及びホスファンであり、通常それらは有機基が全て又は部分的に、所望により置換芳香族基で構成される。使用される紫外線安定剤は、例えば、置換ベンゾトリアゾールである。これら及び他の安定剤は、個々に又は組み合わせて使用することができ、記載した形態でポリマーに添加される。
【0052】
例えば、離型剤等の加工助剤は、通常は長鎖脂肪酸の誘導体であり、更に添加することができる。例えばペンタエリトリトールテトラステアレート及びグリセロールモノステアレートが好ましい。それらは、それらだけで、又は混合物で使用され、好ましくは、組成物の重量を基準として0.02〜1重量%の量で使用される。
【0053】
好適な難燃性添加剤は、リン酸エステル即ちリン酸トリフェニル、レゾルシノール−二リン酸エステル、臭素−含有化合物、例えば、臭素化リン酸エステル及び臭素化オリゴカーボネート及びポリカーボネート、並びに、好ましくは、フッ素化された有機スルホン酸の塩である。
【0054】
好適な衝撃改質剤は、例えば、少なくとも1つのポリブタジエンゴム、アクリレートゴム(好ましくは、エチル又はブチルアクリレートゴム)及びエチレン/プロピレンゴムから選択される1又はそれ以上のグラフトベースを含んで成るグラフトポリマー、並びにスチレン、アクリロニトリル及びアルキルメタクリレート(好ましくは、メチルメタクリレート)から構成される群からの少なくとも1つのモノマーから選択されるグラフトモノマー、又はシロキサンとアクリレートの相互貫入網目構造上にメチルメタクリレート若しくはスチレン/アクリロニトリルがグラフトされたものである。
【0055】
有機色素若しくは顔料、又は無機顔料等の着色剤、IR吸収剤は、個々に、混合物として、又は安定剤、ガラス繊維、ガラス(中空)ビーズ及び無機充填剤(又は増量剤)と組み合わせて、更に添加することができる。
【0056】
更に本願は、本発明の基板材料から得られる押出品及び成形品(又は押出成型品及び射出成形品)を提供し、具体的には透明製品の分野、とりわけ光学的な用途の分野における使用のための、例えば、シート、多層シート、ガラス、拡散スクリーン及びランプカバー等、又は例えば、読み込みのみ可能、若しくは一度書き込み可能、及び所望により繰り返し書き込み可能等の種々の形態のオーディオ−CD、CD−R(W)、DVD、DVD−R(W)及びミニディスク等の光学データ記憶媒体を提供する。
【0057】
更に本発明は、押出品及び成形品の製造のための本発明のポリカーボネートの使用を提供する。
【0058】
本発明の基板材料、好ましくはポリカーボネートは、公知の方法により射出成形によって加工することができる。このようにして製造されるディスクは、例えばオーディオ−CD又はスーパーオーディオ−CD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW又はBRであり得る。
【0059】
従って、CD−R(1回書き込み、何回でも読み込み)は、射出成形法においてニッケル型板(又は鋳型)から転写された同心円状に形成された案内溝(プリグルーブ:pregroove)を有する基板から成る。射出成形法では、サブミクロンのスケールの溝を有する型板を介して、これらは基板表面上に正確に転写される。CD−Rは前記の基板、色素記録層、反射層及び保護層を含んで成り、それらはこの順序で基板上に塗工されるか積層されている。1回の書き込みが可能で数回の読み込みが可能な光学ディスクのもう1つの例はDVD−Rであり、これは基板、色素記録層、反射層、及び所望により保護層を含んで成り、前記と同様にこの順序で基板に塗工され、第2のディスク(「ダミーディスク」)と接着されている。
【0060】
色素層は、「スピン・コーティング」法で塗工されている。この製造段階において、有機溶媒に溶解させた特定の色素が基板の情報層に塗工され、ディスクを回転させることにより基板の溝中に半径方向に均一に導入される。この段階の後に、色素層を乾燥させる。
【0061】
前記の用途に用いられる色素は、使用されるレーザーの範囲(300〜850nm)の吸収範囲を有する。色素の種類の例としては、例えば、シアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム色素、ポリメチン系、ピリリウム及びチオピリリウム色素、インドアニリン系、ナフトキノン系、アントラキノン系及び例えばアゾ配位化合物、シアニン系又はフタロシアニン系等の種々の金属キレート複合体が挙げられる。これらの色素はシグナル感受性が良好であり、また有機溶媒中の溶解度が高く、光堅牢性が高く、このため前記の用途のための色素として好ましい。
【0062】
溶媒の例としては、例えば、酢酸ブチル等のエステル類、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン及び2,4−ジメチル−4−ヘプタノン(DMH)等のケトン類、例えば、1,2−ジクロロエタン及びクロロホルム等の塩素化炭化水素類、例えば、ジメチルホルムアミド等のアミド類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン又はエチルシクロヘキサン等の炭化水素類、例えば、THF及びジオキサン等のエーテル類、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びジアセトンアルコール等のアルコール類、例えば、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶媒、及び例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらは、個々に、又は混合物として使用することができる。好ましい溶媒は、例えば、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のフッ素系溶媒及びジブチルエーテルである。
【0063】
例えば、金又は銀を含んで成る反射層を、スパッタリング法により色素層に塗工することができる。保護層は、所望により反射層に塗工することができる。
【0064】
本発明のディスク基板及び本発明の光学ディスクは、明らかに改良された帯電防止性及び改良された被覆性を示す。
【0065】
射出成形部品は、従来の射出成形法により得られる。本願の実施例の欄において、射出成形部品は以下のようにして製造される:
【0066】
本発明の成形品の製造のために光学ディスクが選択される;以下に示す射出成形パラメーター及び条件が設定される:
機械:ネットスタル・ディスクジェット(Netstal Discjet)
型板:オーディオ・スタンパー(Audio stamper)
サイクル時間:4.2〜4.6秒(例では:4.4秒)
溶融温度:310〜330℃
基板寸法:オーディオ−CD
型板側のモールド(又は金型)温度:60℃。
【0067】
射出成形法を開始する前に、機械に新しいオーディオ・スタンパーを挿入する。新しいスタンパーを挿入する前に、誤った測定値が出ないように、射出成形設備全体を前回用いた材料が残らない様に掃除しなくてはならない。
【0068】
表面電位の測定のための方法は、電位の測定に好適なモンロー・エレクトロニクス・インク、リンドンヴィル、ニューヨーク州14098、米国(MONROE ELECTRONICS, INC., Lyndonville, NY 14098, USA)製のモンロープローブ(Monroe probe)を用いて行う。測定は、基板表面から3.5mmの距離で行う。走査範囲はX−方向及びY−方向にいずれの場合も12cmである。表面電位は、X−方向及びY−方向にいずれの場合も2mmずつの間隔で測定する。電位値は、モンロープローブの計測増幅器のアナログ出力において、実効電圧値に変換される。これらの電位値は、最初はBurrBrown製のターボパスカル・ルーチンを用いる社内開発ソフトウェア(ターボパスカル)によって、BurrBrown製のPCインターフェース・カードのアナログ入力からPCに保管され、走査終了後、全データはディスケットにテキストファイルとして保管される。測定値を視覚的にわかりやすい説明図とするために、それらの値はオリジナルソフトウェアによって、着色像に変換される。−3,500V〜+3,500Vの電位の範囲は、ここで32色の範囲に分けられる。色は、青から緑及び黄色を通り赤へと移行する。例えば、−3,500V〜−3,281Vの最もマイナスの電位範囲は、暗青色の色に割り当てられ、+3,281V〜+3,500Vの最もプラスの電位範囲は、暗赤色の色に割り当てられる。
【0069】
電荷セグメント(又は電荷区分)を計算するために、測定値(生データ)は、−30〜+30の値の範囲のデカルト座標に変換される。次に、これらの値は平面極座標に変換される。関連領域のみを記録するために、rが12mmより小さいか、又はrが29mmより大きいすべての値(内側の穴の領域)は除外される。次に、得られた値は相当する電荷範囲に分類され、計数される。
【0070】
ディスクは、製造後最初の24時間以内に電位分布に関し測定する。電位測定が損なわれるので、この手順の間にディスクが金属と接触することがあってはならない。更に、イオナイザーがある場合は電源を切らなければならない。
【0071】
測定を行う際には必ず、測定時大気湿度を30〜60%、好ましくは35〜50%とし、室温を25〜28℃としなくてはならない。
【0072】
色素塗工は、前記のように「スピン・コーティング」により行うことができる。色素として好ましく使用されるのはフタロシアニンであり、溶媒として好ましく使用されるのはジブチルエーテルである。色素塗工時の回転速度は200rpmである。溶液がディスク全体に行き渡るようにするためには、速度を5,000rpmに上げる。
【0073】
色素の被覆性は、例えば、色素で被覆されたディスクの内部領域の光学顕微鏡検査、カメラスキャナー又は目視検査により測定することができる。0.5mm又はそれより高い色のエッジの逸脱が外側の色素エッジに認められた場合、このディスクの濡れ性は不十分である。
【0074】
被覆性を測定するためのさらなる間接的な可能性は、例えば、色素で被覆されたディスクを、カメラ又はレーザーシステムを用いて調べることである。この場合、記録された情報は画像処理ソフトウェアを介して評価され、発生する濡れ性エラーが認識される(「インライン」検出)。欠陥のあるディスクは自動的に廃棄される。
【実施例】
【0075】
例1:
ポリカーボネートは、公知の相界面法で製造される。連続法を用いる。
ビスフェノレート溶液(ビスフェノールA;アルカリ含量2.12モルNaOH/モルBPA)を750kg/h(14.93重量%)、溶媒(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1)を646kg/h、及びホスゲンを56.4kg/hで反応装置に入れ、成分を反応させる。反応装置内の温度は35℃である。水酸化ナトリウム溶液(32重量%)を、更にまた9.97kg/hで計量しながら供給する。縮合反応の過程中に、第2の量の水酸化ナトリウム溶液(32重量%)を29.27kg/hで、更に連鎖停止剤溶液(塩化メチレン/クロロベンゼン 1:1中 11.7重量%のtert−ブチルフェノール)を34.18kg/hで計量しながら供給する。その後、塩化メチレン/クロロベンゼン中に溶解させたN−エチルピペリジン(1:1;2.95重量% N−エチルピペリジン)を触媒として33.0kg/hで入れる。相が分離し、有機相を希塩酸で1回、水で5回洗浄する。次にポリカーボネート溶液を濃縮し、濃縮物を蒸発槽中で濃縮し、溶融ポリマーを液化押出成型機でスピンオフし(又は紡いで)、粒状化する。
【0076】
次に、得られた粒状物をネットスタル・ディスクジェット射出成形機(前記参照)を介して、上述のパラメーターのもとでサイクル時間4.4秒でディスクへと加工する。型板としてオーディオ・スタンパーを使用する。
【0077】
連続射出成形から2時間後のディスクの、電位測定の結果を図1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
電荷分布は非常に均一であることが認められる。
【0080】
ディスクを、ブチルエーテル中に溶解させたフタロシアニンを用いて、上述のようにスピン・コーティング法により被覆する。色素塗工時の回転速度は200rpmである。溶液がディスク全体に行き渡るようにするためには、速度を5,000rpmに上げる。視覚的評価は、色素層に欠陥が無いことを示す。
【0081】
例2(比較例):
ポリカーボネートを実施例1に記載のとおりに製造する。しかし、ビスフェノレート溶液(ビスフェノールA)は750kg/h(14.93重量%)、溶媒(塩化メチレン/クロロベンゼン1:1)は646kg/h、及びホスゲンは58.25kg/hで反応装置に入れる。更に、水酸化ナトリウム溶液(32重量%)を、同様にして12.34kg/hで計量しながら供給する。第2の量の水酸化ナトリウム溶液を36.20kg/hで;連鎖停止剤の量は34.18kg/hで、例1で述べた濃度で計量しながら供給する。触媒の量は33kg/hである。例1に記載の通り、後処理を行う。
【0082】
次に、得られた粒状物をネットスタル・ディスクジェット射出成形機(前記参照)を介して、前記のパラメーターのもとでサイクル時間4.4秒でディスクへと加工する。型板としてオーディオ・スタンパーを使用する。
【0083】
色素で被覆されたディスク上の色素層中に明らかな欠陥が見られる。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
標準偏差は個々の電荷セグメントの分散である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、ディスクの電荷分布を示す(着色像の白黒コピー)。
【図2】図2は、ディスクの電荷分布を示す(着色像の白黒コピー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する成形品の表面に、
−1.5〜+1.5kVの電荷を有する電位範囲が存在し、その総面積に対する割合は、95〜100%であり、
−1.5〜−2.5kVの電荷を有する電位範囲と、+1.5〜+2.5kVの電荷を有する電位範囲が存在し、その総面積に対する割合は、0〜5%であり、
<−2.5kVの電荷を有する電位範囲と、>+2.5kVの電荷を有する電位範囲が存在し、その割合は、ディスクの全表面の1%までである
基板材料であって、
基板表面から3.5mmの距離でモンロープローブを用いて電位測定を行い、走査範囲は、X−方法及びY−方向の各々の場合に12cmであり、X−方向及びY−方向の各々の場合に2mmの間隔で電位を測定する
ことを特徴とする基板材料。
【請求項2】
対応する成形品の表面の電位は、−1.5kVと+1,5kVの間の電位範囲を超えない又は下回らない(その際に、内側の穴の領域を考慮にいれない)ことを特徴とする請求項1に記載の基板材料。
【請求項3】
対応する成形品の電荷セグメント中の帯電に起因する電位の標準偏差は、0.6kVを超えないことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板材料。
【請求項4】
電位範囲を測定するための成形品は、ディスクであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板材料。
【請求項5】
被覆すべき透明成形品のための請求項1〜4のいずれかに記載の基板材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の基板材料としてのポリカーボネート。
【請求項7】
成形品及び押出品を製造するための請求項1〜6のいずれかに記載の基板材料の使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の基板材料から得られる成形品及び押出品。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の基板材料から得られる拡散スクリーン又は光学データ保存媒体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−524775(P2008−524775A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547248(P2007−547248)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013222
【国際公開番号】WO2006/072352
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】