説明

透明導電フィルム、その製造方法、フレキシブル有機電子デバイス、及び、有機薄膜太陽電池

【課題】安価なフイルム基板上にロール成膜可能とされた、高透明性、高導電性を両立した有機電子デバイス用の透明導電フイルムを得る。
【解決手段】プラスチック支持体12上に、マスク蒸着された、膜厚が50nm以上500nm以下であり、平面視における線幅が0.3mm以上1mm以下の金属もしくは合金からなる導電性ライン14aが複数、間隔3mm以上20mm以下で配置されてなる導電ストライプ14と、プラスチック支持体12と導電ストライプ14を覆うように設けられた、比抵抗が4×10−3Ω・cm以下であり、膜厚20nm以上500nm以下である透明導電材料層18とから透明導電フィルムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明導電フィルム及びその簡易な製造方法、該透明導電フィルムを用いた有機薄膜電子デバイス及び有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソフトマターとしてのフレキシブル電子デバイスが注目されている。なかでも軽量、低コスト化が期待できるフレキシブル有機電子デバイス、特に有機薄膜太陽電池、フレキシブル有機ELデバイス(有機エレクトロルミネッセンスデバイス)への期待が高まっている。
フレキシブル有機電子デバイスの構成としては、少なくとも一方が透明な2つの異種電極間に、電子伝導性および/またはホール伝導性の有機薄膜を配置してなるものが一般的である。このようなフレキシブル有機電子デバイスは、シリコン等を用いてなる無機デバイスに比べて製造が容易であり、低コストに製造しうるという利点があり、実用化が望まれている。
【0003】
フレキシブル有機電子デバイスを実現するには、高透明性と高導電性を両立した透明導電フィルムが求められる。インジウム錫酸化物(ITO)を蒸着したフイルムは、良好な性能を有する透明導電フイルムとして広く知られているが、コストが高いという問題がある。
【0004】
一方、特許文献1及び特許文献2には、導電性の金属メッシュと導電性ポリマーとを組み合わせた透明導電フィルムが開示されている。これらの先行例では金属メッシュを作製するのにマスク蒸着法やフォトエッチング法を用いている。
【0005】
また、非特許文献1には、スクリーン印刷した銀パターンと導電性ポリマーとを組み合わせた透明導電フィルム、およびこれを用いた有機薄膜太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−76668公報
【特許文献2】特開2010−157681公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Solar Energy Materials and Solar Cells 2011年 第95巻 1339−1343頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載のフィルムの作製方法は枚葉で作製するには適しているが、ロール・トゥ・ロールで作製するのには適しておらず、透明導電フイルムを安価に提供するという目的を十分に達成できない。
また、非特許文献1に記載のスクリーン印刷用の銀インクはバインダーを含むため、十分な導電性を得るには140℃、5分程度の加熱が必要である。このため、安価なプラスチック基板であるポリエチレンテレフタレート(PET)へ適用するには問題がある。
【0009】
このため、PETに代表される安価なフイルム基板上にロール成膜可能され、かつ、高透明性、高導電性を両立した有機電子デバイス用の透明導電フイルムの開発が望まれている。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、安価なフイルム基板上にロール成膜可能とされた、高透明性、高導電性を両立した有機電子デバイス用の透明導電フイルム、及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる課題は、前記透明導電フィルムを用いた有機電子デバイス及び有機薄膜太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が鋭意検討を行った結果、マスク蒸着された金属からなる導電ストライプと、比抵抗の小さい透明導電材料を有する透明導電フイルムによって、本発明の課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成は以下に示すとおりである。
【0012】
本発明の透明導電フィルムは、プラスチック支持体と、
該プラスチック支持体上にマスク蒸着された、膜厚が50nm以上500nm以下であり、平面視における線幅が0.3mm以上1mm以下の金属もしくは合金からなる導電性ラインが複数、間隔3mm以上20mm以下で配置されてなる導電ストライプと、
前記プラスチック支持体と前記導電ストライプを覆うように設けられた、比抵抗が4×10−3Ω・cm以下であり、膜厚20nm以上500nm以下である透明導電材料層と、を有してなることを特徴とする。
【0013】
前記導電性ラインは、銀または銀を含む合金からなるものであることが好ましい。
【0014】
あるいは、前記導電性ラインは、銅または銅を含む合金からなるものであることが好ましい。
【0015】
前記導電性ラインの膜厚が100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0016】
前記導電ストライプにおいて、前記ラインの平面視における間隔が3mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0017】
前記導電ストライプの開口率が80%以上95%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の透明導電フィルムは、前記導電ストライプと接触する線幅1mm以上5mm以下のバスラインを有していてもよい。
【0019】
特に、前記バスラインを複数有し、該バスライン同士の間隔が40mm以上200mm以下であり、前記複数のバスラインが前記導電ストライプと直交するように配置されていることが好ましい。
【0020】
前記透明導電材料層を構成する材料としては、透明導電ポリマーまたは銀ナノワイヤーが好ましい。
【0021】
前記透明導電ポリマーとしては、ドープされたポリエチレンジオキシチオフェンが好ましい。
【0022】
本発明のフレキシブル有機電子デバイスは、本発明の透明導電フィルムからなる第一電極、該第一電極上に順次設けられた機能性層、及び対向電極を有してなることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の有機薄膜太陽電池は、本発明の透明導電フィルムからなる第一電極、該第一電極上に順次設けられた光電変換層、及び対向電極を有したなることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の有機薄膜太陽電池は、前記光電変換層と前記対向電極との間に電子輸送層を備えることが好ましい。
【0025】
なお、電子輸送層が透明無機酸化物層からなるものであることが好ましい。
【0026】
その透明無機酸化物層は、酸化チタンもしくは酸化亜鉛を含有するものであることが好ましい。
【0027】
本発明の第1の透明導電フィルムの製造方法は、ロール状のプラスチック支持体上にロールの長手方向に平行な導電ストライプをマスク蒸着により設ける工程と、該プラスチック支持体と導電ストライプを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
【0028】
本発明の第2の透明導電フィルムの製造方法は、ロール状のプラスチック支持体上にロールの長手方向に平行な導電ストライプをマスク蒸着により設ける工程と、該導電ストライプに直交するバスラインを設ける工程と、これらを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
【0029】
本発明の第3の透明導電フィルムの製造方法は、ロール状のプラスチック支持体上にロールの幅方向に平行なバスラインを設ける工程と、該バスラインに直交する導電ストライプをマスク蒸着により設ける工程と、これらを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の透明導電フィルムは上記構成を有するために、透明性及び導電性が良好である。従って、本発明の透明導電フィルムを有機電子デバイスの電極として用いることで、良好なデバイスが形成される。
本発明の透明導電フィルムは、電気特性が良好な電子デバイス、特に、軽量フレキシブルな有機薄膜太陽電池や有機ELデバイスの製造に有用である。本発明の透明導電フィルムを用いた有機ELデバイスは発光効率にすぐれ、有機薄膜太陽電池は、発電効率に優れる。
【0031】
ここで、支持体として光透過性でフレキシブルな樹脂フィルムを用いることで、フレキシブルな透明導電フィルムが得られ、このようなフレキシブルな透明導電フィルムにより、軽量、且つ、フレキシブルな電子デバイスを簡易に製造しうる。
【0032】
さらに、本発明の透明導電フィルムの製造方法によれば、均一な組成を有する導電ストライプとバスラインとを同時に形成しうるために、透明性と導電性に優れた透明導電フィルムを簡易に製造しうる。
【0033】
本発明によれば、透明性および導電性が高い透明導電フィルム及びその簡易な製造方法が提供される。
このため、本発明の透明導電フィルムを用いることで、電気特性が良好な電子デバイス、たとえば発光効率の高い有機ELデバイスや変換効率が良好な有機薄膜太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の透明導電フィルムの第1の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す透明導電フィルムの概略平面図である。
【図3】本発明の透明導電フィルムの第2の実施形態を示す概略平面図である。
【図4】本発明の有機薄膜太陽電池の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0036】
<透明導電フィルム>
まず、本発明の透明導電フィルムについて説明する。
図1は、本発明の透明導電フィルムの第1の実施形態を示す概略断面図であり、図2は図1に記載の透明導電フィルムの概略平面図である。
図1、2に示すように、本実施形態の透明導電フィルム10は、プラスチック支持体12上に、少なくとも、複数の導電性ライン14aからなる導電ストライプ14、及び透明導電材料層18を備えている。
【0037】
図3は、本発明の透明導電フィルムの第2の実施形態を示す概略平面図である。
図3に示すように、本実施形態の透明導電フィルム10’は、プラスチック支持体12上に、少なくとも、複数の導電性ライン14aからなる導電ストライプ14、バスライン16及び透明導電材料層18を備えている。本実施形態の透明導電フィルム10’は、バスライン16を備えている点が第1の実施形態と異なる。なお、本実施形態では、バスライン16は、導電ストライプ14と交差するように設けられる。
【0038】
なお、上記構成を有し、本発明の効果を損なわない限り、本発明の透明導電フィルムは、所望により、易接着層、保護層などの公知の層をさらに設けたものであってもよい。
【0039】
本発明の透明導電フィルムは、有機薄膜太陽電池の部材として好適に使用される。本発明の透明導電フィルムを有機薄膜太陽電池に使用する場合、有機薄膜太陽電池は、少なくとも、前記本発明の透明導電フィルムと、光電変換層と、対向電極とを備える。このとき、本発明の透明導電フィルムは正極(カソード)としても、負極(アノード)としても用いることができるが、正極として用いることが好ましい。なお、当該分野の文献、特許においては有機薄膜太陽電池の電極に関して、ストックホルム規約とは反対の命名法が通用しているので注意を要する。本発明においてはストックホルム規約に従い、電池の正極をカソード、電池の負極をアノードと呼ぶ。
本発明の透明導電フィルムは、有機ELデバイスの部材として好適に使用される。本発明の透明導電フィルムを有機ELデバイスに使用する場合、有機ELデバイスは、少なくとも、前記本発明の透明導電フィルムと、発光層と、対向電極とを備える。このとき、本発明の透明導電フィルムは陽極(アノード)としても、陰極(カソード)としても用いることができるが、陽極として用いることが好ましい。
【0040】
以下、本発明の透明導電フィルムについて詳しく述べる。
〔プラスチック支持体〕
プラスチック支持体12は、後述する導電ストライプ、バスライン及び透明導電材料層等を保持できるものであれば、材質、厚み等に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。透明導電フィルム10に好適な支持体としては、400nm〜800nmの波長範囲の光に対し透過性である支持体が挙げられる。
【0041】
プラスチック支持体の素材としては、具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0042】
プラスチック支持体は、耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上、及び、線熱膨張係数が40ppm/℃以下のうち、少なくともいずれかの物性を満たす耐熱性を有し、さらに、前記したように露光波長に対し高い透明性を有する素材により成形された基板であることが好ましい。
なお、プラスチック支持体のTg及び線膨張係数は、JIS K 7121に記載のプラスチックの転移温度測定方法、及び、JIS K 7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法により測定され、本発明においては、プラスチック支持体のTg及び線膨張係数は、この方法により測定した値を用いている。
プラスチック支持体のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような耐熱性に優れる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:65℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)、ポリイミド等が挙げられる(以上、括弧内において、略称などと併記した数値は、当該樹脂のTgをそれぞれ示す)。ここに記載した樹脂はいずれも本発明における基材として好適である。なかでも、特に透明性が求められる用途には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0043】
本発明においてプラスチック支持体は、光に対して透明であることが求められる。より具体的には、400nm〜1000nmの波長範囲の光に対する光透過率は、通常80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
なお、光透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光透過率測定装置を用いて全光透過率及び散乱光量を測定し、全光透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。本明細書においては、光透過率は、この方法を用いた値を採用している。
プラスチック支持体の厚みに関して特に制限はないが、典型的には1μm〜800μmであり、好ましくは10μm〜300μmである。
プラスチック支持体の裏面(導電ストライプを設置しない側の面)には、公知の機能性層を設けてもよい。機能層の例としては、ガスバリア層、マット剤層、反射防止層、ハードコート層、防曇層、防汚層等が挙げられる。このほか、機能性層に関しては特開2006−289627号公報の段落番号〔0036〕〜〔0038〕に詳しく記載されている。
【0044】
(易接着層/下塗り層)
プラスチック支持体は、易接着層もしくは下塗り層を有していてもよい。
易接着層はバインダーポリマーを含有することが必須であるが、必要に応じてマット剤、界面活性剤、帯電防止剤、屈折率制御のための微粒子などを含有してもよい。
易接着層に用いうるバインダーポリマーには特に制限はなく、以下に記載のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ゴム系樹脂などから適宜選択して用いることができる。
【0045】
アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレートなどを主成分としてこれらと共重合可能なモノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンゼンなど)を共重合したポリマーである。
ポリウレタン樹脂とは主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI(Tolylene Diisocyanate)、MDI(Methyl Diphenyl Isocyanate)、HDI(Hexylene diisocyanate)、IPDI(Isophoron diisocyanate)などがあり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがある。さらに、本発明のイソシアネートとしてはポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用できる。
【0046】
ポリエステル樹脂とは主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリカルボン酸とポリオールの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えば、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などがあり、ポリオールとしては例えば前述のものがある。
本発明のゴム系樹脂とは合成ゴムのうちジエン系合成ゴムをいう。具体例としてはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレンなどがある。
【0047】
易接着層もしくは下塗り層の乾燥後の塗布膜厚は、50nm〜2μmの範囲であることが好ましい。重層構成の場合、複数層の膜厚の合計が上記範囲にあることが好ましい。
なお、支持体を仮支持体として用いる場合には、支持体表面に易剥離性処理を施すことも可能である。
【0048】
〔導電ストライプ〕
本発明における導電ストライプ14は、マスク蒸着法によって形成され、導電性ライン14aの膜厚が50nm以上500nm以下であり、平面視による線幅が0.3mm以上1mm以下であり、ライン間隔が3mm以上20mm以下である。膜厚は100nm以上300nm以下であることが好ましく、ライン間隔は3mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0049】
ストライプのデザインは開口率(光透過率)と導電性が所望の値となるように調整される。導電ストライプによって規定される開口率(フイルム面積から導電ストライプの平面視による面積(平面視において導電性ラインが占める面積)を引いた面積/フイルム面積)は70%以上99%以下であり、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。光透過率と導電性はトレードオフの関係にあるため、開口率は大きいほど好ましいが、現実的には95%以下となる。
【0050】
導電ストライプを構成する導電性ラインの1本当たりの抵抗値は、50Ω/cm以下であり、好ましくは20Ω/cm以下であり、より好ましくは10Ω/cm以下である。このような導電性(低抵抗であること)を実現するには、金属材料の比抵抗の値が小さいことと導電ストライプの断面積が大きいことが必要である。開口率を大きくするには、断面の形状として、フイルム平面方向の長さ(線幅)が短く膜厚方向の長さ(膜厚)が大きいことが有利である。
ところが、このような断面を有する導電ストライプを設置すると大きな段差が生じる。有機電子デバイスでは活性層(有機層)の膜厚が50〜500nmと薄いため、導電ストライプにより生じた段差が大きいと、導電ストライプライン凸部の角で短絡(故障)しやすい。
このため、導電ストライプ起因の段差を小さくし、導電ストライプライン凸部の角を鈍角化することは、開口率を高めるよりも重要な課題であり、開口率をある程度犠牲にした設計を採らざるを得ない。すなわち、断面の形状として、線幅が長く膜厚が薄い設計が選択される。導電性ラインの線幅と膜厚の比率は20000:1〜200:1の範囲である。ここで、膜厚とは線幅の中で最も厚い部分の値を用いる。
【0051】
導電性ラインの断面の形状は、ストライプの設置方法によって、長方形、等脚台形、鈍角二等辺三角形、半円形、円弧と弦で囲まれる図形、これらを変形した図形などが可能である。このとき、長方形のようにライン凸部の角が直角である断面よりも、テーパのある等脚台形や鈍角二等辺三角形の方が、短絡が起きにくく好ましい。また、明確に角がある断面よりも、曲線やスロープによって段差を滑らかにしたような断面形状の方が、短絡が起きにくく好ましい。
【0052】
導電ストライプ14のライン14a同士の間隔(ピッチ)は細かい方がデバイス特性(電流電圧特性など)の上では有利である。しかしながらピッチが細かいと開口率が低下するので、妥協点が選ばれる。ピッチは金属細線の線幅に応じて、好ましい開口率を与えるように決定される。
本発明の透明導電フイルムは、有機電子デバイス用であるために、導電ストライプの膜厚と線幅の関係では開口率を犠牲にする設計を採る関係上、ピッチについては最大限の開口率が求められる。すなわち、導電ストライプの線幅が1mmとなっても開口率75%を確保するには3mm以上のピッチであることが求められる。
【0053】
本発明者らの検討では、少なくとも有機薄膜太陽電池用途に供するには、比抵抗の値が4×10−3Ω・cm以下である高導電性の透明導電材料が必要であった。これについては透明導電材料の項で述べる。
【0054】
導電ストライプ14を構成する材料は、比抵抗が1×10−5Ω・cm以下の金属または合金である。前記金属または合金の例としては、金、白金、鉄、銅、銀、アルミニウム、クロム、コバルト、銀、及びこれら金属を含む合金等が挙げられる。より好ましい例としては、銅、銀、及び金等の低抵抗金属、もしくはこれら低抵抗金属を含む合金が挙げられ、なかでも、銀、銀を含む合金、銅、銅を含む合金が特に好ましく用いられる。
【0055】
〔導電ストライプの形成〕
本発明の導電ストライプはマスク蒸着法によって作製される。マスク蒸着には公知の方法を利用できる。マスク蒸着法を採用する利点は、金属の持つ導電性を最も良く発現させる作製方法であること、作製後に加熱工程を必要としないこと、および、有機薄膜デバイスにおいて短絡の原因となるストライプライン断面凸部の角をなまらせることが容易である事、が挙げられる。
すなわち、マスク蒸着法によるストライプライン断面は、用いるマスクの厚みが厚いほど、また、マスクとフイルムの距離が遠いほど、前記凸部の角がなまって好ましい断面形状になる。さらに、フイルムをロール・トゥ・ロールで搬送しながらマスク蒸着する場合は、搬送による幅方向の揺らぎによって自然に角がなまった断面形状をとる。
マスクの開口形状についても工夫が可能である。例えば、マスクの開口形状が搬送方向に長い長方形である場合、前記長方形の長辺と搬送方向をわずかに非平行にすることで、前記凸部の角をなまらせることができる。
【0056】
〔バスライン〕
本発明の透明導電フィルムは、支持体上に、導電ストライプ14と交差するバスライン(太線導電層)16を有してもよい。
バスライン16は、動作面全体にとって必要な導電性を確保するといった観点から、平面視において線幅1mm以上5mm以下で形成される配線である。バスラインの好ましい線幅は、1mm以上3mm以下である。
バスライン16の線幅は、必ずしも均一である必要はない。バスラインと導電ストライプは同一材料であっても、異なる材料であってもよい。バスラインは通常、導電ストライプと直交するように設置されるが、90度以外の角度で交差するものであってもよい。バスラインの厚み、断面形状、材質については、導電ストライプと同様のプリファレンスが適用される。
【0057】
バスラインの間隔(ピッチ)は導電ストライプと同様に、大面積の導電性と光透過率の妥協点としての最適条件が選ばれる。具体的には、隣り合うバスラインを接続する導電ストライプの導電性で決定される。典型的には、隣り合う2本のバスラインを接続する導電ストライプの抵抗値が、一本につき50Ω以下となる間隔が選ばれる。前記抵抗値は20Ω以下が好ましく、10Ω以下が特に好ましい。
バスラインのピッチは、好ましくは40mm以上200mm以下である。
【0058】
〔バスラインの形成〕
本発明においては、バスライン16は蒸着法で形成してもよいし、印刷法、インクジェット法などの方法で形成しても良い。導電ストライプ14とバスライン16とを同一の組成の材料を用いて同時に形成することが、コストの観点で有利である。導電ストライプ14とバスライン16とをマスク蒸着法を用いてロール・トゥ・ロールで同時に作製する場合、ストライプを作製するための固定マスクと、バスラインを作製するための可動式マスクを有する設備が必要となる。
【0059】
〔透明導電材料層〕
本発明における透明導電材料層18は、本発明の透明導電フィルム10を適用しようとする有機電子デバイスの発光スペクトルもしくは作用スペクトル範囲において透明であることを要し、通常、可視光から近赤外光の光透過性に優れることを要する。具体的には、透明導電材料により膜厚0.1μmの層を形成したとき、波長400nm〜800nm領域における形成された層の平均光透過率が50%以上であり、75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0060】
透明導電材料層18は、導電ストライプ14(バスライン16を有するときは導電ストライプ14とバスライン16)に接触し、これらの表面を覆うように配置される。透明導電材料層18の厚みは、20〜500nmであり、30〜300nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。
【0061】
本発明に用いる透明導電材料は、成膜後の比抵抗が4×10−3Ω・cm以下である。透明導電材料を20〜500nm、好ましくは50〜200nmの膜厚で使用し、導電ストライプのピッチを3mm以上としたい場合、上記の比抵抗の実現が要請される。
【0062】
このような比抵抗を実現する透明導電材料としては、導電性ナノ材料(例えば、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、グラフェンなど)のアクリルポリマー等への分散物、導電性ポリマー(例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジアゾール等や、これら導電骨格を複数種有するポリマー等)が挙げられる。
これらのなかではポリチオフェンが好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンが特に好ましい。これらのポリチオフェンは導電性を得るために、通常、部分酸化されている。導電性ポリマーの導電性は部分酸化の程度(ドープ量)で調節することができ、ドープ量が多いほど導電性が高くなる。部分酸化によりポリチオフェンはカチオン性となるので、電荷を中和するための対アニオンを有する。そのようなポリチオフェンの例としては、ポリスチレンスルホン酸を対イオンとするポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)が挙げられる。PEDOT−PSSは導電性を高める目的で高沸点の有機溶媒を含有しても良い。高沸点有機溶媒の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0063】
前記比抵抗を実現する具体的な商品例としては、アグファ社製、Orgacon(オルガコン)S−305が挙げられる。
【0064】
透明導電材料層18には、所望の導電性を損なわない範囲であれば、他のポリマーが添加されてもよい。他のポリマーは塗布性を向上させる目的や膜強度を高める目的で添加される。
他のポリマーの例としては、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂や、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール等の親水性ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは膜強度を高めるために架橋構造を形成したものであってもよい。
【0065】
透明導電材料は多くの場合、水溶液もしくは水分散物であるため、層の形成には、通常の水系塗布法が用いられる。塗布液には、塗布助剤として、各種の溶剤、界面活性剤、増粘剤等を添加してもよい。
本発明において導電ストライプ14と透明導電材料層18とを含む第1の電極は、有機ELデバイスにおける陽極(アノード)、有機薄膜太陽電池の正極(カソード)として機能しうる。
【0066】
<透明導電フィルムの製造方法>
図1に示す透明導電フィルム10の製造方法は、ロール状のプラスチック支持体上にロールの長手方向に平行な導電ストライプをマスク蒸着により設ける(導電ストライプ形成)工程と、プラスチック支持体と導電ストライプを覆うように透明導電材料層を形成する工程とを順次有する。
【0067】
図3に示す透明導電フィルム10’の製造方法は、ロール状のプラスチック支持体上にロールの長手方向に平行な導電ストライプをマスク蒸着により設ける(導電ストライプ形成)工程と、導電ストライプに直交するバスラインを設ける(バスライン形成)工程と、これらを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有する。
【0068】
なお、図3に示す透明導電フィルム10’の製造方法は、ロール状のプラスチック支持体上にロールの幅方向に平行なバスラインを設ける(バスライン形成)工程と、該バスラインに直交する導電ストライプをマスク蒸着により設ける(導電ストライプ形成)工程と、これらを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有するものであってもよい。
【0069】
このようにして作製された本発明の透明導電性フィルムは、フレキシブル有機電子デバイスに好適である。特に、有機薄膜太陽電池は、透明導電フィルムの導電性が発電効率に直結するため、本発明の効果が顕著に表れる。そこで、以下本発明の透明導電フィルムを用いた有機薄膜太陽電池(以下、本発明の有機薄膜太陽電池と呼ぶ事がある)について詳しく説明する。
【0070】
<有機薄膜太陽電池>
図4は、本発明の有機薄膜太陽電池20の一実施形態の概略構成を示す断面図である。
図4に示すように、本発明の有機薄膜太陽電池20は、前記本発明の透明導電フィルム10を一方の電極とし、その上に少なくとも光電変換層24、及び対向電極(第2の電極)26を積層した構成を有する。
本発明の有機薄膜太陽電池20において、透明導電フィルム10は、正極として用いられてもよく、負極として用いられてもよい。対向電極26は、透明導電フィルム10と反対の極性である。即ち、透明導電フィルム10が正極として用いられる場合、対向電極26は負極であり、透明導電フィルム10が負極として用いられる場合、対向電極26は正極となる。
【0071】
本発明の有機薄膜太陽電池の好ましい層構成としては、本発明の透明導電フィルム10を正極として、この上に、電子ブロック層28、光電変換層24、電子捕集層(図示せず。)、対向電極26を積層した構成が例示される。
【0072】
〔電子ブロック層〕
透明導電材料層を有する透明導電フィルム(正極)10と光電変換層(例えば、バルクヘテロ層)24の間に電子ブロック層28を有することが好ましい。電子ブロック層28は光電変換層(例えば、バルクヘテロ層)24から正極10へ電子が移動するのをブロックする機能を有する。電子が移動するのをブロックする機能を有する材料としては、p型半導体と呼ばれる無機半導体や、正孔輸送材料と呼ばれる有機化合物が用いられる。より具体的には、電子が移動するのをブロックする機能を有する材料として、価電子帯準位が5.5eV以下で、かつ、伝導体準位が3.3eV以下である金属酸化物、またはHOMO準位が5.5eV以下で、かつ、LUMO準位が3.3eV以下である有機化合物が例示される。
【0073】
(電子ブロック層に用いる金属酸化物)
電子ブロック層に用いることができる金属酸化物の具体例としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム等が挙げられる。
金属酸化物により電子ブロック層28を形成する場合には、一般的には、蒸着法などの気相法が適用される。
【0074】
(電子ブロック層に用いる有機化合物)
電子ブロック層に用いることができる有機化合物の具体例としては、芳香族アミン誘導体、チオフェン誘導体、縮合芳香環化合物、カルバゾール誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等が挙げられる。このほか、Chem.Rev.2007年,第107巻,953−1010頁にHole Transport materialとして記載されている化合物群も適用可能である。
なかでもポリチオフェンが好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンは体積抵抗率が10Ωcmを下回らない程度にドープ(部分酸化)されていてもよい。このとき、電荷中和のために過塩素酸、ポリスチレンスルホン酸などに由来する対アニオンを有してもよい。
【0075】
電子ブロック層に用いる材料としては、酸化モリブデンもしくはポリチオフェンが好ましく、酸化モリブデンもしくはポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。
電子ブロック層28の膜厚は、バルクヘテロ型光電変換層中に存在する電子輸送材料から、第1の電極を構成する透明導電材料層18への電子の漏出を抑制するに十分な厚みを選択する必要があり、そのような観点からは厚みは0.1nm以上であることが好ましく、厚みの上限には特に制限はないが、製造効率の観点からは50nm以下であることが好ましい。より好ましい厚みは1nm〜20nmの範囲である。
本発明の透明導電フイルムに用いられる透明導電材料がポリチオフェン類であるとき、電子ブロック層は省略することが可能である。
【0076】
〔光電変換層〕
光電変換層24はホール輸送層(正孔輸送層)と電子輸送層からなる平面ヘテロ構造でもよいし、ホール輸送材料と電子輸送材料を混合したバルクヘテロ構造でもよい。平面ヘテロ構造をとる場合、正極側がホール輸送層、負極側が電子輸送層である。また、平面ヘテロ構造の中間層としてバルクヘテロ層を有するハイブリッド構造であってもよい。
【0077】
正孔輸送層は正孔輸送材料を含有する。
正孔輸送材料は、HOMO準位が4.5eV〜6.0eVのπ電子共役化合物であり、具体的には、各種のアレーン(例えば、チオフェン、カルバゾール、フルオレン、シラフルオレン、チエノピラジン、チエノベンゾチオフェン、ジチエノシロール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェンなど)をカップリングさせた共役ポリマー、フェニレンビニレン系ポリマー、ポルフィリン類、フタロシアニン類等が例示される。このほか、Chem.Rev.2007,107,953−1010にHole Transport materialとして記載されている化合物群やジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第131巻、16048頁(2009年)に記載のポルフィリン誘導体も適用可能である。
これらの中では、チオフェン、カルバゾール、フルオレン、シラフルオレン、チエノピラジン、チエノベンゾチオフェン、ジチエノシロール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェンからなる群より選ばれた構成単位をカップリングさせた共役ポリマーが特に好ましい。具体例としてはポリ3−ヘキシルチオフェン、ポリ3−オクチルチオフェン、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第130巻、3020頁(2008年)に記載の各種ポリチオフェン誘導体、アドバンスト マテリアルズ第19巻、2295頁(2007年)に記載のPCDTBT、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第130巻、732頁(2008年)に記載のPCDTQx、PCDTPP、PCDTPT、PCDTBX、PCDTPX、ネイチャー フォトニクス第3巻、649頁(2009年)に記載のPBDTTT−E、PBDTTT−C、PBDTTT−CF、アドバンスト マテリアルズ第22巻1−4頁(2010年)に記載のPTB7等が挙げられる。
正孔輸送層の膜厚は5〜500nmが好ましく、10〜200nmが特に好ましい。
【0078】
電子輸送層は電子輸送材料からなる。電子輸送材料は、LUMO準位が3.5eV〜4.5eVであるようなπ電子共役化合物であり、具体的にはフラーレンおよびその誘導体、フェニレンビニレン系ポリマー、ナフタレンテトラカルボン酸イミド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸イミド誘導体等が挙げられる。これらの中では、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体の具体例としてはC60、フェニル−C61−酪酸メチル(文献等でPCBM、[60]PCBM、あるいはPC61BMと称されるフラーレン誘導体)、C70、フェニル−C71−酪酸メチル(多くの文献等でPCBM、[70]PCBM、あるいはPC71BMと称されるフラーレン誘導体)、およびアドバンスト ファンクショナル マテリアルズ第19巻、779−788頁(2009年)に記載のフラーレン誘導体、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第131巻、16048頁(2009年)に記載のフラーレン誘導体SIMEF等が挙げられる。
電子輸送層の膜厚は5〜500nmが好ましく、10〜200nmが特に好ましい。
【0079】
バルクヘテロ型の光電変換層(以下、適宜、バルクヘテロ層と称する)24は正孔輸送材料と電子輸送材料が混合された有機の光電変換層である。バルクヘテロ層24に含まれる、正孔輸送材料と電子輸送材料の混合比は、変換効率が最も高くなるように調整される。正孔輸送材料と電子輸送材料の混合比は、通常は、質量比で、10:90〜90:10の範囲から選ばれる。このような混合有機層の形成方法としては、例えば、真空蒸着による共蒸着方法が挙げられる。あるいは、正孔輸送材料と電子輸送材料、両方の有機材料が溶解する溶媒を用いて溶剤塗布することによって混合有機層を作製することも可能である。溶剤塗布法の具体例については後述する。
【0080】
バルクヘテロ層24の膜厚は10nm〜500nmが好ましく、20nm〜300nmが特に好ましい。
バルクヘテロ層における正孔輸送材料と電子輸送材料は完全に均一に混合していてもよいし、1nm乃至1μmのドメインサイズとなるように相分離していてもよい。相分離構造は、不規則構造でも規則構造でもよい。規則構造を形成する場合、ナノインプリント法等のトップダウンによる規則構造でもよいし、自己組織化等のボトムアップによるものでもよい。ここで用いられる正孔輸送材料と電子輸送材料としては、既述の正孔輸送層、電子輸送層において説明したものが同様に挙げられる。
【0081】
〔電子捕集層〕
本発明の有機薄膜太陽電池は、必要に応じて、電子輸送材料からなる電子捕集層を設置してもよい。電子捕集層に用いることのできる電子輸送材料としては、前記の光電変換層の項の電子輸送層を構成する材料および、Chem.Rev.2007,107,953−1010にElectron Transport Materialsとして記載されているものや、電子輸送性を有するn型透明無機酸化物(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン等)が挙げられる。これらの中では、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。
【0082】
電子捕集層の膜厚は1nm〜30nmであり、好ましくは2nm〜15nmである。電子捕集層は、各種の湿式製膜法、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法など、いずれによっても好適に形成することができる。とりわけ、ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー C 第114巻、6849〜6853頁(2010年)に記載の酸化亜鉛層の形成方法や、シン ソリッド フィルム 第517巻、3766〜3769頁(2007)、アドバンスト マテリアルズ第19巻、2445〜2449頁(2007年)に記載の酸化チタン層の形成方法が特に好適である。
【0083】
〔負極(第2の電極)〕
負極26は、通常、電子輸送層あるいは電子捕集層から電子を受け取る機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、太陽電池素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。負極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、不純物でドープされた無機酸化物、無機窒化物、その他電気伝導性化合物(グラファイト、カーボンナノチューブ等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
負極に用いられる金属、合金の具体例としては銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、銀−マグネシウム合金などが挙げられる。
【0084】
不純物でドープされた無機酸化物の例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが例示される。不純物ドープは、酸化物内のキャリア密度を高めることで導電性を向上させる目的で行なわれる。ドープする元素は、その無機酸化物の金属元素に対して周期表上一つ右の族の金属元素、またはハロゲン元素である。例えば、酸化チタンに対しては、5族元素であるニオブ、タンタルをドープするかハロゲン(フッ素、塩素など)をドープする。酸化亜鉛には、13族元素であるホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムをドープするか、ハロゲンをドープする。酸化スズの場合は、通常フッ素をドープする。不純物でドープされた無機酸化物は結晶であってもアモルファス状であってもよい。
【0085】
負極の膜厚は10nm〜500nmであり、好ましくは50nm〜300nmである。酸化物半導体層は、各種の湿式製膜法、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法など、いずれによっても形成することができる。これらの中で、蒸着法もしくはスパッタ法が好ましい。
【0086】
負極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等を行ってもよい。
本発明において、負極形成位置は特に制限はなく、有機層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。また、負極が透明材料のとき、負極に接して上下に、負極バスラインが設置されていてもよい。
【0087】
〔負極バスライン〕
負極バスラインは太陽電池全面にわたって負極の導電性を高めるように設計される。
【0088】
〔その他有機層〕
本発明では、必要に応じて、ホールブロック層、励起子拡散防止層等の補助層を有していてもよい。なお、本発明においてバルクヘテロ層、正孔輸送層、電子輸送層、電子ブロック層、ホールブロック層、励起子拡散防止層など、有機化合物を用いる層の総称として、「有機層」の言葉を用いる。
【0089】
〔アニール〕
本発明の有機薄膜太陽電池は、有機層の結晶化やバルクヘテロ層の相分離促進を目的として、種々の方法でアニールしてもよい。アニールの方法としては、蒸着中の基板温度を50℃〜150℃に加熱する方法や、塗布後の乾燥温度を50℃〜150℃とする方法などがある。また、第二電極の形成が終了したのちに50℃〜150℃に加熱してアニールしてもよい。
【0090】
〔保護層〕
本発明の有機薄膜太陽電池は、保護層によって保護されていてもよい。特に、負極および所望によりバスラインを配した負極上に保護層を形成することは、負極の腐食防止の観点で好ましい。保護層に含まれる材料としては、MgO、SiO、SiO、Al、Y、TiO等の金属酸化物、SiN等の金属窒化物、SiN等の金属窒化酸化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリパラキシリレン等のポリマー等が挙げられる。これらのうち、金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物が好ましく、珪素、アルミニウムの酸化物、窒化物、窒化酸化物が特に好ましい。保護層は単層でも多層構成であってもよい。
【0091】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、真空紫外CVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0092】
〔ガスバリア層〕
本発明の有機薄膜太陽電池はガスバリア層を有してもよい。ガスバリア層は、ガスバリア性を有する層であれば、特に制限はない。通常、ガスバリア層は無機物の層(無機層と称することがある)である。無機層に含まれる無機物としては、典型的には、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、亜鉛、スズの酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、水素化物等が挙げられる。これらは純物質でもよいし、複数組成からなる混合物や傾斜材料層でもよい。これらのうち、アルミニウムの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物、又は珪素の酸化物、窒化物若しくは酸窒化物が好ましい。
【0093】
ガスバリア層としての無機層は単層でも、複数層の積層でもよい。ガスバリア層が積層構造を有する場合、ガスバリア性を損なわない限り無機層と有機層との積層でもよく、複数の無機層と複数の有機層の交互積層でもよい。積層構造を有するガスバリア層に含まれうる有機層は平滑性の層であれば特に制限はないが、(メタ)アクリレートの重合物からなる層などが好ましく例示される。
ガスバリア層としての無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように、無機層とそれに隣接する有機ポリマー層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0094】
本発明の有機薄層太陽電池の厚さは、50μm〜1mmであることが好ましく、100μm〜500μmであることがより好ましい。
【0095】
本発明の有機薄層太陽電池を用いて太陽電池モジュールを作製する場合、濱川圭弘著、太陽光発電、最新の技術とシステム(出版:株式会社 シーエムシー)等の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0097】
<実施例1〜3、比較例1、2>
〔透明導電フィルムの作製〕
厚み180μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフイルムと略す)の上に、導電ストライプを設置し、その上に導電性ポリマー層を積層することにより、透明導電フィルム(F1〜F5)を作製した。
【0098】
(導電ストライプの形成)
それぞれ25mm角に裁断したPETフイルムと25mm角基板用のマスクを真空蒸着装置にセットし、抵抗加熱法によって銀を表1に示す膜厚に蒸着した。蒸着はデポアップで、蒸着パターンは、線幅0.5mm、線の長さ20mm、線の間隔はそれぞれ表1に示す通りの平行ストライプである。前記パターンを形成するために、厚さ0.2mmのステンレスマスクを、PETフイルムの下方に1mmのクリアランスでセットした。
次に、導電ストライプの末端同士を、銀ペーストを使って互いに接触させて銀ストライプフィルムとした。
【0099】
(導電性ポリマー層の形成)
上記で作製したフィルムの表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(アグファ社製、オルガコンS−305をスピンコートした。次に、このフィルムを110℃で20分間加熱乾燥して、導電性ポリマー層を形成した。このとき、導電性ポリマー層の膜厚は100nmであった。
【0100】
このようにして表1に示す膜厚、線幅および間隔を有する導電ストライプをそれぞれ有する透明導電フィルム(F−1〜F−5)を得た。ここで、F1〜F3は本発明の実施例1〜3であり、F4およびF5はそれぞれ比較例1、2である。
【0101】
<実施例1の2>
(導電ストライプの形成)
上記実施例1(透明導電フィルムF―1)についての導電ストライプの形成において、金属材料を銀から銅に変更した以外は同様の方法で銅ストライプフィルムを作製した。
【0102】
(導電性ポリマー層の形成)
上記で作製したフィルムの表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(アグファ社製、オルガコンS−305をスピンコートした。次に、このフィルムを110℃で20分間加熱乾燥して、導電性ポリマー層を形成した。このとき、導電性ポリマー層の膜厚は100nmであった。
【0103】
このようにして表1に示す実施例1の2の透明導電フィルム(F−6)を得た。
【0104】
別途、全く同様の方法で、導電ストライプを蒸着していない25mm角のPETフイルム上に導電性ポリマー層を形成したところ、表面抵抗値は220Ω/□であった。この結果、F−1における透明導電材料層18の比抵抗は、2.2×10−3Ωcmと計算される。なお、表面抵抗の測定は、三菱化学(株)抵抗率計ロレスターGP/ASPプローブを用いて、JIS7194に従い測定した。
【0105】
〔有機薄膜太陽電池の作製〕
上記で作製した透明導電フィルム(F−1〜F−5)の上に光電変換層24および対向電極(負極)26を形成して有機薄膜太陽電池(P−1〜P−5)を作製した。また、上記で作製した透明導電フィルム(F−6)については、光電変換層24形成前に電子ブロック層28を形成した。
【0106】
(電子ブロック層の形成)
上記透明導電フィルム(F−6)の導電性ポリマー層の上にポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(H.C.Starck社製、P.VP.AI4083をスピンコートした。次に、このフィルムを100℃で20分間加熱乾燥して、電子ブロック層を形成した。このとき、電子ブロック層の膜厚は40nmであった。
【0107】
(光電変換層(バルクヘテロ層)24の塗布)
P3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン、Lisicon SP−001(商品名)、メルク社製)20mg、及び、PCBM([6,6]−phenyl C61−butyric acid methyl ester、ナノムスペクトラE−100H(商品名)、フロンティアカーボン社製)14mgをクロロベンゼン1mlに溶解させ、バルクヘテロ層塗布液とした。これを透明導電フィルムの表面もしくは電子ブロック層上にスピンコートし、バルクヘテロ層を形成した。スピンコーターの回転速度は500rpm、乾燥膜厚は180nmであった。
【0108】
(アニール)
その後、この試料をホットプレートを用いて130℃で15分間加熱した。
【0109】
(電子捕集層の塗布)
チタンテトライソプロポキシド20μl、脱水エタノール4mlを混合した塗布液をバルクヘテロ層上にスピンコート塗布した。スピンコーターの回転速度は2000rpmであった。この膜を大気中1時間乾燥させることで、膜厚7nmのアモルファス酸化チタンからなる電子捕集層が得られた。
【0110】
(負極の蒸着)
電子捕集層の上にアルミニウムを100nmの厚さとなるように蒸着し、負極26を形成した。
【0111】
(上部封止部材の設置)
負極を形成した試料の上にリンテック製太陽電池封止用バックシート(EVAを接着層とするバリアフイルム)を重ね合わせ、140℃で真空ラミネートした。
【0112】
このようにして、有機薄膜太陽電池(P−1〜P−6)を作製した。各太陽電池(P−1〜P−6)はそれぞれ同一条件で10個ずつ作製した。有機薄膜太陽電池(P−1〜P−3およびP−6)が実施例1〜3および実施例1の2、有機薄膜太陽電池(P−4、P−5)は比較例1、2である。
【0113】
〔発電効率の測定〕
有機薄膜太陽電池(P−1〜P−6,各10個ずつ)を、(株)三永電機製作所製XES−502S+ELS−100型ソーラシミュレーターを用いて、AM1.5G、100mW/cmの模擬太陽光を照射しながら、ソースメジャーユニット(SMU2400型、KEITHLEY社製)を用いて電圧範囲−0.1Vから1.0Vにて、発生する電流値を測定した。模擬太陽光は、1cm×1cmの正方形の透過孔を有するマスクを通して素子に照射した。得られた電流電圧特性をペクセルテクノロジーズ社I−Vカーブアナライザーを用いて評価し、特性パラメーターを算出し、発電効率を求めた。測定結果を下記表1に示す。なお、発電効率は、短絡による不良品を除外し、良品の平均値として算出した。また、短絡による不良品の発生率を表1中に示した。
【0114】
【表1】

【0115】
表1の結果より、蒸着した導電ストライプの膜厚が厚くなるに従い不良率が上昇し、膜厚600nmの有機薄膜太陽電池(P−4)では全素子が短絡した。ストライプの間隔が2mmの素子(P−5)は、開口率の低下に伴い発電効率が低下したことが分かる。また、導電ストライプの材料として銅を用いた場合(実施例1の2)にも、銀を用いた場合(実施例1)と同等の効果が得られた。
【0116】
<実施例4〜6>
〔透明導電フィルムの作製〕
銀を蒸着する際、マスクを摺動させる以外は実施例1の透明導電フィルム(F−1)と同様にして透明導電フイルム(F−11〜F−13)を作製した。このとき、マスクのホルダーを可動なものとし、真空チャンバー用のステッピングモーターを用いて摺動させた。摺動の方向は、マスクの面内でストライプと垂直方向である。摺動の幅は0.05mmとした。作製された導電ストライプの膜厚、線幅は表2に示すとおりである。線幅は摺動の幅だけ太くなり、ストライプの垂直方向の断面は、末端ほど膜厚が薄い等脚台形様の形状であった。
【0117】
〔有機薄膜太陽電池の作製〕
前記の透明導電フイルム(F−11〜F−13)を用いて、実施例1と同様にして実施例4〜6の有機薄膜太陽電池(P−11〜P−13)を作製した。
【0118】
〔発電効率の測定〕
実施例4〜6の有機薄膜太陽電池について、実施例1の有機薄膜太陽電池と同様にして不良率、発電効率を測定した。結果を表2に示す。
【表2】

【0119】
実施例4〜6の有機薄膜太陽電池は、導電ストライプの膜厚が400nmであっても不良素子(短絡)が発生しなかった。これは、導電ストライプ凸部の角が摺動によりなまったためであると推定される。この結果は、蒸着の際に被蒸着体であるフイルムが動いているロール・トゥ・ロール成膜の方が、静止成膜よりも短絡不良を起こし難い導電ストライプを作製できることを示すものである。
【0120】
<比較例3〜5>
〔透明導電フィルムの作製〕
実施例1から6とは異なる方法で導電ストライプを形成して比較例3〜5の透明導電フィルム(F−21〜F−23)を作製した。
それぞれPETフイルムに全面に、表3に示す膜厚で銀を蒸着した。この上にネガ型フォトレジストを塗布、パターン露光、現像することで、ストライプ状のレジストパターンを形成した。希硝酸でエッチング後、レジストを除去し導電ストライプを形成した。
続いて、実施例1と同様に透明導電層を形成し、比較例3〜5の透明導電フイルム(F−21〜F−23)を作製した。ストライプの垂直方向の断面は、角の尖った長方形であった。
【0121】
〔有機薄膜太陽電池の作製〕
前記の透明導電フイルム(F−21〜F−23)を用いて、実施例1の有機薄膜太陽電池と同様にして比較例3〜5の有機薄膜太陽電池(P−21〜P−23)を作製した。
【0122】
〔発電効率の測定〕
比較例3〜5の有機薄膜太陽電池について、実施例1の有機薄膜太陽電池と同様にして不良率、発電効率を測定した。結果を表3に示す。
【表3】

【0123】
比較例3〜5の有機薄膜太陽電池は、導電ストライプの膜厚が100nmであっても不良素子(短絡)が発生した。さらに膜厚400nmでは全サンプルが不良となった。これは、導電ストライプ凸部の角が尖っているためであると推定される。この結果は、同じ蒸着法でもエッチングで導電ストライプを作製するのは短絡不良を起こし易く、好ましくないことを示すものである。
【0124】
<実施例7、比較例6、7>
〔透明導電フィルムの作製〕
厚み180μmのPETフイルム上に、導電ストライプを設置し、その上に導電性ポリマー層を積層することにより透明導電フィルム(F−31〜F−33)を作製した。
【0125】
(導電ストライプの形成)
それぞれ50mm角に裁断したPETフイルムと50mm角基板用のマスクを真空蒸着装置にセットし、抵抗加熱法によって銀を100nmの膜厚に蒸着した。蒸着はデポアップで、蒸着パターンは、線幅0.5mm、線の長さ30mm、線の間隔は8mmの平行ストライプである。前記パターンを形成するために、厚さ0.3mmのステンレスマスクを、PETフイルムの下方に密着させてセットした。
次に、導電ストライプの末端同士を、銀ペーストを使って互いに接触させた。
【0126】
(導電性ポリマー層の形成)
上記で作製したフィルムの表面に、それぞれ表4に示す比抵抗の異なるPEDOT−PSSの水分散物をスピンコートした。次に、このフィルムを110℃で20分間加熱乾燥して、導電性ポリマー層を形成した。このとき、導電性ポリマー層の膜厚は100nmであった。このようにして実施例7(F−31)および比較例6、7(F−32、33)を得た。
【0127】
別途、実施例1の透明導電フィルムの導電性ポリマー層についてと同様にしてPEDOT−PSSの比抵抗を測定した。その結果、アグファ社オルガコンS−305は2.2×10−3Ωcm、H.C.シュタルク社クレビオスPH−500は1.0×10−2Ωcm、H.C.シュタルク社クレビオスPH−500に1質量%のジメチルスルホキシド(DMSO)を添加した透明導電ポリマーは6.0×10−3Ωcmであった。
【0128】
〔有機薄膜太陽電池の作製〕
上記で作製した透明導電フイルム(F−31〜F−33)を用いて、実施例1の有機薄膜太陽電池と同様にして有機薄膜太陽電池(P−31〜P−33)を作製した。
【0129】
〔発電効率の測定〕
実施例7、比較例6、7の有機薄膜太陽電池について、光の照射面積を4cm(2cm×2cmの正方形)とする以外は実施例1の有機薄膜太陽電池と同様にして、発電効率を測定した。結果を表4に示す。
【表4】

【0130】
比抵抗が2.2×10−3Ωcmの透明導電材料を用いたP−31(実施例7)は、比抵抗1.0×10−2Ωcmの材料を用いたP−32(比較例6)や、比抵抗6.0×10−3Ωcmの材料を用いたP−33(比較例7)に比べて、発電効率が高く、好ましい結果を与えている。
【0131】
<実施例8、9>
〔透明導電フィルムの作製〕
厚み180μmのPETフイルム上に、導電ストライプとバスラインを設置し、その上に導電性ポリマー層を積層することにより透明導電フィルム(F−41)を作製した。また、比較のため、同様の作製方法で、バスラインを備えない透明導電フィルム(F−42)を作製した。
【0132】
(導電ストライプの形成)
100mm角に裁断したPETフイルムと100mm角基板用のマスクを真空蒸着装置にセットし、抵抗加熱法によって銀を100nmの膜厚に蒸着した。蒸着はデポアップで、蒸着パターンは、線幅0.3mm、線の長さ90mm、線の間隔は4mmの平行ストライプである。前記パターンを形成するために、厚さ0.3mmのステンレスマスクを、PETフイルムの下方に密着させてセットした。
次に、導電ストライプの末端同士を、銀ペーストを使って互いに接触させた。
【0133】
(バスラインの形成)
導電ストライプの上に、導電ストライプと直交する線幅2mm、線の間隔40mmバスラインを2本設置した。この隣り合うバスラインの末端同士と上記導電ストライプの末端を銀ペーストを使って互いに接触させた(F−41)。他方、実施例9(F−42)はバスラインを設置しなかった。
【0134】
(導電性ポリマー層の形成)
上記で作製したフィルムの表面に、実施例1等同様にして導電性ポリマー層を形成し、実施例8(F−41)、実施例9(F−42)の透明導電フィルムを得た。
【0135】
〔有機薄膜太陽電池の作製〕
前記の透明導電フイルム(F−41〜F−42)を用いて、実施例1と同様にして実施例8、9の有機薄膜太陽電池(P−41〜P−42)を作製した。
【0136】
[発電効率の測定]
実施例8、9の有機薄膜太陽電池について、光の照射面積を64cm(8cm×8cmの正方形)とする以外は実施例1の有機薄膜太陽電池と同様にして、発電効率を測定した。結果を表5に示す。
【表5】

【0137】
<実施例10:有機EL素子>
実施例1で作製した本発明の透明導電フイルム上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を以下に示す膜厚で順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン 膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン 膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム 膜厚60nm
(電子注入層
フッ化リチウム 膜厚1nm
(陰極)
アルミニウム 膜厚100nm
【0138】
この上に厚さ5μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作製した。作製した素子は大気に晒さずに、窒素置換されたグローブボックス(露点マイナス60℃)に移した。
【0139】
〔有機EL素子の評価〕
グローブボックス中にある作製直後の有機EL素子を、Keithley社製SMU2400型ソースメジャーユニットを用いて7Vの電圧を印加して発光させた。発光面状を観察したところ、この素子はストライプ開口部において発光ムラの無い良好な発光を与えることが確認された。
【符号の説明】
【0140】
10、10’ 透明導電フィルム
12 支持体
14 導電ストライプ
16 バスライン
18 透明導電材料層
20 有機薄膜太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック支持体と、
該プラスチック支持体上にマスク蒸着された、膜厚が50nm以上500nm以下であり、平面視における線幅が0.3mm以上1mm以下の金属もしくは合金からなる導電性ラインが複数、間隔3mm以上20mm以下で配置されてなる導電ストライプと、
前記プラスチック支持体と前記導電ストライプを覆うように設けられた、比抵抗が4×10−3Ω・cm以下であり、膜厚20nm以上500nm以下である透明導電材料層と、を有してなることを特徴とする透明導電フィルム。
【請求項2】
前記導電性ラインが、銀または銀を含む合金からなることを特徴とする請求項1記載の透明導電フィルム。
【請求項3】
前記導電性ラインが、銅または銅を含む合金からなることを特徴とする請求項1記載の透明導電フィルム。
【請求項4】
前記導電性ラインの膜厚が100nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の透明導電フィルム。
【請求項5】
前記導電ストライプにおいて、前記導電性ラインの平面視における間隔が3mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の透明導電フィルム。
【請求項6】
前記導電ストライプの開口率が80%以上95%以下であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の透明導電フィルム。
【請求項7】
前記導電ストライプと接触する線幅1mm以上5mm以下のバスラインを有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の透明導電フィルム。
【請求項8】
前記バスラインを複数有し、該バスライン同士の間隔が40mm以上200mm以下であり、前記複数のバスラインが前記導電ストライプと直交するように配置されていることを特徴とする請求項7記載の透明導電フィルム。
【請求項9】
前記透明導電材料層を構成する材料が透明導電ポリマーまたは銀ナノワイヤー含有ポリマーであることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の透明導電フィルム。
【請求項10】
前記透明導電材料層を構成する材料が、ドープされたポリエチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項9記載の透明導電フィルム。
【請求項11】
請求項1から10いずれか1項記載の透明導電フィルムからなる第1電極、該第一電極上に順次設けられた機能性層、及び対向電極を有してなることを特徴とするフレキシブル有機電子デバイス。
【請求項12】
請求項1から10いずれか1項記載の透明導電フィルムからなる第1電極、該第一電極上に順次設けられた光電変換層、及び対向電極を有してなることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項13】
前記光電変換層と前記対向電極との間に電子捕集層を備えたことを特徴とする請求項12記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項14】
前記電子捕集層が透明無機酸化物層からなるものであることを特徴とする請求項13記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項15】
前記透明無機酸化物層が、酸化チタンもしくは酸化亜鉛を含有するものであることを特徴とする請求項14記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項16】
ロール状のプラスチック支持体上にロールの長手方向に平行な導電ストライプをマスク蒸着により設ける工程と、該プラスチック支持体と導電ストライプを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有する透明導電フィルムの製造方法。
【請求項17】
ロール状のプラスチック支持体上にロールの長手方向に平行な導電ストライプをマスク蒸着により設ける工程と、該導電ストライプに直交するバスラインを設ける工程と、これらを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有する透明導電フィルムの製造方法。
【請求項18】
ロール状のプラスチック支持体上にロールの幅方向に平行なバスラインを設ける工程と、該バスラインに直交する導電ストライプをマスク蒸着により設ける工程と、これらを覆うように透明導電材料層を形成する工程と、を順次有する透明導電フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69663(P2013−69663A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69123(P2012−69123)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】