説明

透明導電フィルム、透明導電フィルムの製造方法及び電子デバイス用透明電極

【課題】高い導電性と良好な透明性を併せ持ち、かつ、透明導電層上に設けられる電子デバイス層との導通を確保しながら、洗浄やパターン形成処理にも耐えることのできる膜強度を持った透明導電層を提供。
【解決手段】透明基材上に金属ナノワイヤを含有する透明導電層を有する透明導電性フィルムの製造方法において、基材上に少なくとも架橋剤を含有する層を形成し、前述の架橋剤を含有する層上に少なくとも金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布して乾燥させた後、該架橋剤を反応させる処理を施したことを特徴とする透明導電フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、電子ペーパー等の電子デバイスに用いることができる透明電極に好適な透明導電層を有する透明導電フィルムに関し、より詳しくは、こうした透明導電層を電極として用いる際の洗浄処理やパターン形成処理耐性を有する架橋処理された透明導電層を有する透明導電フィルムに関し、さらに、詳しくは、こうした架橋処理においても透明導電層の表面の導電性が阻害されることのない透明導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパー等の電子デバイスの透明電極、ならびに電磁波シールド材等に用いられている。
【0003】
一般に透明導電材料としては、例えば金属酸化物が用いられており、具体的には、錫や亜鉛をドープした酸化インジウム(ITO、IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)、フッ素やアンチモンをドープした酸化錫(FTO、ATO)等が挙げられる。一般に、金属酸化物透明導電層の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の気相製膜法が用いられる。しかしながら、これらの製膜方法は真空環境を必要とするため装置が大掛りかつ複雑なものとなり、また製膜に大量のエネルギーを消費するため、製造コストや環境負荷を軽減できる技術の開発が求められていた。また、一方で、液晶ディスプレイやタッチディスプレイに代表されるように、透明導電材料の大面積化が指向されており、それに伴い透明導電材料の軽量化や柔軟性に対する要請が高まっていた。さらに、大面積の透明電極においては、透明電極の電圧降下の影響が大きくなることから、さらなる低抵抗化が求められてきた。
【0004】
これに対して、バルク状態での導電率が1×10S/m以上の金属元素のナノワイヤを、液相法や気相法等の色々な方法で作製できることが報告されている。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては非特許文献1を参考にできる。さらに、具体的に低抵抗高透明導電性フィルムに用いられる透明導電材料技術として、金属ナノワイヤを導電体として用いる方法及び、更に金属ナノワイヤ層上にプレポリマーからなるオーバーコート層を塗布して硬化する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は塗布により低抵抗高透明導電性フィルムが得られることから好ましい技術である。
【0005】
ところで、透明導電フィルムを電子デバイスの電極に利用する場合は、パターン形成処理が必要であったり、電子デバイスの層を設ける際、微小なゴミなどによる欠陥等を防止するために洗浄処理がなされたりする。しかしながら、オーバーコート層が無いと、このようなパターン形成処理や洗浄処理により透明導電層が破壊される。一方、オーバーコート層を設けて、こうした処理に耐えるような加工をすると、金属ナノワイヤの表面がこうした加工によって覆われてしまい、透明導電層上に電子デバイスの層を設けた場合、通電がうまくいかないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2007/0074316A1号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Adv.Mater.,2002,14,833〜837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い導電性と良好な透明性を併せ持ち、かつ、透明導電層上に設けられる電子デバイス層との導通を確保しながら、洗浄やパターン形成処理にも耐えることのできる膜強度を持った透明導電フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に掛かる上記課題は以下の構成によって解決される。
【0010】
1.透明基材上に金属ナノワイヤを含有する透明導電層を有する透明導電性フィルムの製造方法において、基材上に少なくとも架橋剤を含有する層を形成し、該架橋剤を含有する層上に少なくとも金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布して乾燥させた後、該架橋剤を反応させる処理を施したことを特徴とする透明導電フィルムの製造方法。
【0011】
2.前記架橋剤を反応させる処理が加熱処理であることを特徴とする前記1に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【0012】
3.前記金属ナノワイヤを含有する塗布液が該架橋剤と反応可能な基を有するポリマーを含有することを特徴とする前記1又は2に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【0013】
4.前記架橋剤を含有する層が該架橋剤と反応可能な基を有するポリマーを含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【0014】
5.架橋剤が金属ナノワイヤを含有する塗布液の溶媒に可溶であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【0015】
6.前記金属ナノワイヤを含有する透明導電層がパターン形成処理によりパターン形成されていることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【0016】
7.前記金属ナノワイヤを含有する透明導電層が洗浄処理を施されることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【0017】
8.透明基材上に架橋剤を含有する層及び金属ナノワイヤを含有する層が順に積層された透明導電フィルム。
【0018】
9.前記1〜7のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする透明導電フィルム。
【0019】
10.前記8又は9に記載の透明導電フィルムを電子デバイス用にパターン形成することにより製造されたことを特徴とする透明電極。
【発明の効果】
【0020】
高い導電性と良好な透明性を併せ持ち、かつ、透明導電層上に設けられる電子デバイス層との導通を確保しながら、洗浄やパターン形成処理にも耐えることのできる膜強度を持った透明導電層を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明においては、金属ナノワイヤを含有する透明導電層と基材の間に設けられた、補助層(架橋剤を含有する層)、から透明導電層へ架橋剤が拡散して架橋膜が形成されると推定される。この時、透明導電膜層において、架橋剤を含有する層に近い側では架橋剤が多く存在し、強い架橋膜を形成されるのに対し、電子デバイス層を設ける側に近い表面側(架橋剤を含有する層に遠い側)では架橋剤の拡散が少なく、金属ナノワイヤを覆ってしまう架橋膜が形成されにくいために、通電が阻害されないことで、膜強度と導通性が両立できていると考えている。
【0022】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態等について詳細な説明をするが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0023】
〔金属ナノワイヤ〕
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0024】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
【0025】
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤが二種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0026】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0027】
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、高い導電性と高い透過率を両立できる。
【0028】
〔金属ナノワイヤを含有する塗布液〕
金属ナノワイヤを含有する塗布液は、金属ナノワイヤの分散性を確保するために、また、塗布乾燥後の膜において金属ナノワイヤを保持するために何らかの透明樹脂と併用することが好ましく、こうした樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を単独あるいは複数併用して用いることができる。また、後述する基材上に形成する架橋剤含有層の架橋剤と反応しうる基を有するポリマーであれば、拡散してきた架橋剤との反応によって、より強固な膜を形成できるので、より好ましい。架橋剤と反応する基としては架橋剤によって異なるが、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などをあげることができる。架橋剤と反応しうる基を有するポリマーの具体的な化合物としては、ポリビニルアルコールPVA−203、PVA−224、PVA−420(クレハ社製)、ポリビニルアセタールエスレックBM−1、BM−S、BL−1、BL−10、BL−S、KS−5(積水化学社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−06、60SH−50、60SH−4000、90SH−100(信越化学工業社製)、メチルセルロースSM−100(信越化学工業社製)、酢酸セルロースL−20、L−40、L−70(ダイセル化学工業社製)、カルボキシメチルセルロースCMC−1160(ダイセル化学工業社製)、ヒドロキシエチルセルロースSP−200、SP−600(ダイセル化学工業社製)、アクリル酸アルキル共重合体ジュリマーAT−210、AT−510(東亞合成社製)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどをあげることができる。
【0029】
〔溶媒〕
金属ナノワイヤを含有する塗布液に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0030】
〔塗布〕
塗布法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等を用いることができる。印刷法としては、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等公知の方法を用いることができる。
【0031】
〔架橋剤〕
架橋剤は金属ナノワイヤを含有する透明導電層と基材の間に設けられた補助層に含有される。架橋剤としては、特に制限はなく、公知の架橋剤を使用できるが、金属ナノワイヤ層へ拡散可能な架橋剤であることが好ましい。架橋剤は、金属ナノワイヤ層へ拡散しながら架橋できることから、熱架橋性の架橋剤をより好ましく利用できる。加熱処理としては支持体の耐熱性にもよるが100℃から150℃で1から60分程度の処理で反応する材を好ましく用いることができる。こうした架橋剤としては、エポキシ系、カルボジイミド系、メラミン系、イソシアネート系、シクロカーボネート系、ヒドラジン系、ホルマリン系等の公知の架橋剤をあげることができる。また、反応促進するために触媒を併用することも好ましい。
【0032】
これらの架橋剤のうち、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤を特に好ましく用いることができる。
【0033】
本発明に用いられるエポキシ系架橋剤とは、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ系架橋剤の例としては、例えばデナコールEX313、EX614B、EX521、EX512、EX1310、EX1410、EX610U、EX212、EX622、EX721(ナガセケムテックス製)等がある。
【0034】
本発明に用いられるカルボジイミド系架橋剤とは、分子内に2つ以上のカルボジイミド基を有する化合物である。カルボジイミド化合物は、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。ここで分子内にカルボジイミド化合物の合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能であるが、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。
【0035】
本発明に用いうるカルボジイミド系架橋剤としては、例えば、カルボジライトV−02−L2(日清紡製)等の市販品としても入手可能である。
【0036】
本発明に用いられるメラミン系架橋剤とは、分子内に2つ以上のメチロール基を有する化合物であり、メラミン架橋剤の例としては、ヘキサメチロールメラミンが挙げられる。また、市販のメラミン系架橋剤の例としては、ベッカミンM−3、ベッカミンFM−180、ベッカミンNS−19(大日本インキ化学工業製)が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられるイソシアネート系架橋剤とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート系架橋剤の例としては、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等がある。市販のイソシアネートはスミジュールNN3300(住化バイエルウレタン製)、コロネートL、ミリオネートMR−400(日本ポリウレタン工業製)等があり、これらを利用することも可能である。
【0038】
本発明の架橋剤は金属ナノワイヤを含有する塗布液の溶媒に可溶であることが好ましい。ここで、可溶とは20℃において溶媒100gに対し0.5g以上溶解することを表す。前記架橋剤と溶剤の組み合わせで、より好ましくは20℃において溶媒100gに対し1g以上の組み合わせである。
【0039】
基材上に形成する架橋剤を含有する層は何らかのポリマーを含有しても良く、特に該架橋剤と反応しうる基を有するポリマーが好ましい。こうした樹脂としては、透明導電層に用いる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0040】
〔透明基材〕
本発明の透明導電フィルムに用いられる透明基材としては、高い光透過性を有していればそれ以外に特に制限はない。例えば、基材としての硬度に優れ、またその表面への導電層の形成のし易さ等の点で、ガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルムなどが好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0041】
本発明で透明基材として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0042】
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0043】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0044】
〔パターン形成〕
本発明の透明導電フィルムを電子デバイスの電極に用いるには、何らかのパターン形成が必要となる。パターン形成は印刷法やインクジェット法によって直接パターン形成してもよいが、均一な透明導電フィルムを作成した後、必要に合わせたパターン形成処理を施す方がより効率的に生産できることから、より好ましい。
【0045】
パターン形成処理としては、一般的なフォトリソプロセスを用いてパターン形成する方法や基板上に予めフォトレジストで形成したネガパターン上に本発明に係る金属ナノワイヤを含む層を一様に形成し、リフトオフ法を用いてパターン形成する方法、金属ナノワイヤからなる導電層の上に、金属ナノワイヤ除去剤を含有する組成物をパターン印刷し、その後水洗を行う方法などを利用できる。このうち、金属ナノワイヤ除去剤を含有する組成物をパターン印刷し、その後水洗を行う方法は工程が簡便であることから最も好ましいパターン形成方法である。
【0046】
金属ナノワイヤ除去剤の組成としては、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理に使用する漂白定着剤を好ましく用いることができる。
【0047】
漂白定着剤において用いられる漂白剤としては、公知の漂白剤も用いることができるが、特に鉄(III)の有機錯塩(例えばアミノポリカルボン酸類の錯塩)もしくはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸、過硫酸塩、過酸化水素などが好ましい。
【0048】
これらのうち、鉄(III)の有機錯塩は迅速処理と環境汚染防止の観点から特に好ましく、特にアミノポリカルボン酸鉄錯体が好ましい。鉄(III)の有機錯塩を形成するために有用なアミノポリカルボン酸、またはそれらの塩を列挙すると、生分解性のあるエチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、ベータアラニンジ酢酸、メチルイミノジ酢酸をはじめ、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸などのほか、欧州特許0789275号の一般式(I)又は(II)で表される化合物を挙げることができる。これらの化合物はナトリウム、カリウム、リチウム又はアンモニウム塩のいずれでもよい。これらの化合物の中で、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、ベータアラニンジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、メチルイミノ二酢酸はその鉄(III)錯塩が好ましい。これらの第2鉄イオン錯塩は錯塩の形で使用しても良いし、第2鉄塩、例えば硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄、硫酸第2鉄アンモニウム、燐酸第2鉄などとアミノポリカルボン酸などのキレート剤とを用いて溶液中で第2鉄イオン錯塩を形成させてもよい。また、キレート剤を第2鉄イオンが錯塩を形成する以上に過剰に用いてもよい。鉄(III)のアミノポリカルボン酸鉄錯体の添加量は0.01〜1.0モル/リットル、好ましくは0.05〜0.50モル/リットル、更に好ましくは0.10〜0.50モル/リットル、更に好ましくは0.15〜0.40モル/リットルである。
【0049】
漂白定着剤に使用される定着剤は、公知の定着剤、即ちチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどのチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸塩、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールなどのチオエーテル化合物およびチオ尿素類などの水溶性のハロゲン化銀溶解剤であり、これらを1種あるいは2種以上混合して使用することができる。また、特開昭55−155354号公報に記載された定着剤と多量の沃化カリウムの如きハロゲン化物などの組み合わせからなる特殊な漂白定着剤等も用いることができる。本発明においては、チオ硫酸塩特にチオ硫酸アンモニウム塩の使用が好ましい。1リットルあたりの定着剤の量は、0.3〜2モルが好ましく、更に好ましくは0.5〜1.0モルの範囲である。
【0050】
本発明に使用される漂白定着剤のpH領域は、3〜8が好ましく、更には4〜7が特に好ましい。pHを調整するためには、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を添加することができる。
【0051】
また、漂白定着剤には、その他各種の消泡剤或いは界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶媒を含有させることができる。漂白定着剤は、保恒剤として亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、など)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、など)、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム、など)等の亜硫酸イオン放出化合物や、p−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸などのアリールスルフィン酸などを含有するのが好ましい。これらの化合物は亜硫酸イオンやスルフィン酸イオンに換算して約0.02〜1.0モル/リットル含有させることが好ましい。
【0052】
保恒剤としては、上記のほか、アスコルビン酸やカルボニル重亜硫酸付加物、あるいはカルボニル化合物等を添加しても良い。更には緩衝剤、キレート剤、消泡剤、防カビ剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0053】
金属ナノワイヤ除去剤はさらに水溶性バインダーを含有することが好ましい。水溶性バインダーは、具体的にはエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムや、炭水化物及びその誘導体が好ましく用いられる。炭水化物及びその誘導体としては、水溶性セルロース誘導体と水溶性天然高分子が挙げられる。水溶性セルロース誘導体とは、メチル、ヒドロキシエチル、ソジウムカルボキシメチル〔ナトリウム塩であって、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)〕、カルボキシメチル等のセルロース誘導体をいう。また、水溶性天然高分子とは、でんぷん、でんぷん糊料、可溶性でんぷん、デキストリン等をいう。これらのうち、CMCが水に溶解しやすいことから好ましい。本発明における水溶性バインダーの分子量は必要粘度に応じ任意に選択することができる。
【0054】
金属ナノワイヤ除去剤を含有する組成物をパターン印刷する方法としては、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法を用いることができるが、特にグラビア印刷法又はスクリーン印刷法で行うのが好ましい。本発明の金属ナノワイヤ除去剤を含有する組成物を、本発明における導電層の非パターン部となる部分にパターン印刷し、次いで水洗処理を行い非パターン部の金属ナノワイヤを除去することによって、パターン電極を形成することができる。
【0055】
〔パターン電極〕
本発明のパターン電極におけるパターン部の全光線透過率は、60%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であることが望ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0056】
本発明のパターン電極におけるパターン部の電気抵抗値としては、表面比抵抗として10Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることが特に好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0057】
〔洗浄処理〕
電子デバイス用透明電極においては、ゴミや異物がトラブルの原因となることから、洗浄処理を行うことが好ましい。特に、有機ELや有機太陽電池などにおいては数十nm程度の異物もリークの原因となるために洗浄処理が必須である。
【0058】
洗浄材料としては、濾過処理により微小粒子を除去した超純水やイソプロピルアルコール、アセトンなどの溶剤を利用できる。また、市販の洗浄剤、例えば、クリンスルーKS−3030、KS−3053(花王ケミカル社製)なども好ましく利用できる。
【0059】
洗浄方法は、浸漬する方法、超音波洗浄する方法を好ましく利用できる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。なお、本実施例では、金属ナノワイヤとして銀ナノワイヤを用いた。
【0061】
実施例1
(透明導電フィルムTC−10の作製)(本発明)
易接着加工を施された二軸延伸PETフィルムA4100(東洋紡社製)の易接着加工を施された面に下記補助層塗布液H−01を架橋剤の目付け量が40mg/mとなるように押出しコート塗布し、90℃20秒の乾燥処理をした。引き続いて、金属ナノワイヤを含有する塗布液として、下記銀ナノワイヤ含有液AGW−1を銀の目付け量が80mg/mとなるように押出しコートし、引き続いて、115℃10分の熱処理を施し、本発明の透明導電フィルムTC−10を得た。
【0062】
(H−01)
ベッカミンM−3(メラミン系架橋剤;大日本インキ化学工業製) 2.5g
ベッカミンACX(触媒;大日本インキ化学工業製) 0.25g
純水 497.25g
イソプロピルアルコール 500g。
【0063】
(AGW−1の作製)
金属微粒子として、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、還元剤としてEG(エチレングリコール;関東化学社製)を、形態制御剤兼保護コロイド剤としてPVP(ポリビニルピロリドン K30、分子量5万;ISP社製)を使用し、かつ核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ分散液を調製した。以下に各工程について記載する。
【0064】
(核形成工程)
反応容器内で160℃に保持した100mlのEGを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:0.1モル/L)2.0mlを一定の流量で1分間かけて添加した後、160℃で10分間保持し銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する薄黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことが確認できた。続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.24g/L)10.0mlを一定の流量で10分間かけて添加した。
【0065】
(粒子成長工程)
上記核形成工程終了後の核粒子を含む反応液を攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10−1モル/L)100mlと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.24g/L)100mlを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。最終的に得られた銀ナノワイヤについて、電子顕微鏡写真を撮影し、300個の銀ナノワイヤ粒子像の長軸方向及び短軸方向の粒径を測定して算術平均を求めた。短軸方向の平均粒径は75nm、長軸方向の平均粒径は35μmであった。
【0066】
(脱塩水洗工程)
上記粒子形成工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施した。これを更に水洗処理し、乾燥して銀ナノワイヤを得た。
【0067】
(分散液の調整)
その後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ分散液AGW−1(銀ナノワイヤ含有量0.8質量%)を調製した。
【0068】
以下に、透明導電フィルムTC−11〜TC−21の作製について記載する。
【0069】
(透明導電フィルムTC−11の作製)(本発明)
補助層塗布液H−01の塗布厚みを変え、架橋剤の目付け量を15mg/mとし、金属ナノワイヤを含有する塗布液として、前記AGW−1の作製で脱塩水洗工程まで終了した銀ナノワイヤをヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)0.6質量%の水溶液に再分散して銀ナノワイヤ分散液AGW−2(銀ナノワイヤ含有量0.8質量%)を調製し、AGW−1に代えて使用した以外はTC−10と同様にして本発明の透明導電フィルムTC−11を得た。
【0070】
(透明導電フィルムTC−12の作製)(本発明)
補助層塗布液を下記H−02とし、架橋剤の目付け量を15mg/mとした以外はTC−11と同様にして本発明の透明導電フィルムTC−12を得た。
【0071】
(H−02)
デナコールEX521(架橋剤;ナガセケムテックス製) 1.5g
硫酸アンモニウム 0.05g
純水 798.45g
イソプロピルアルコール 200g。
【0072】
(透明導電フィルムTC−13の作製)(本発明)
補助層塗布液を下記H−03とし、架橋剤の目付け量を15mg/mとした以外はTC−11と同様にして本発明の透明導電フィルムTC−13を得た。
【0073】
(H−03)
デナコールEX1410(架橋剤;ナガセケムテックス製) 1.5g
硫酸アンモニウム 0.05g
純水 798.45g
イソプロピルアルコール 200g。
【0074】
(透明導電フィルムTC−14の作製)(本発明)
補助層塗布液を下記H−04とし、架橋剤の目付け量を15mg/mとした以外はTC−11と同様にして本発明の透明導電フィルムTC−14を得た。
【0075】
(H−04)
スミジュールNN3300(架橋剤;住化バイエルウレタン製) 1.5g
メチルエチルケトン 98.5g。
【0076】
(透明導電フィルムTC−15の作製)(本発明)
補助層塗布液を下記H−05とし、架橋剤の目付け量を15mg/mとした以外はTC−11と同様にして本発明の透明導電フィルムTC−15を得た。なお、デナコールEX212(ナガセケムテックス製)は、銀ナノワイヤ層の溶媒(水)には不溶である。
【0077】
(H−05)
デナコールEX212(架橋剤;ナガセケムテックス製) 1.5g
メチルエチルケトン 998.5g。
【0078】
(透明導電フィルムTC−16の作製)(本発明)
補助層塗布液を下記H−06とし、架橋剤の目付け量を15mg/mとした以外はTC−11と同様にして本発明の透明導電フィルムTC−16を得た。
【0079】
(H−06)
グリオキサール(架橋剤)40質量%水溶液 3.75g
硫酸アンモニウム 0.05g
純水 796.2g
イソプロピルアルコール 200g。
【0080】
(透明導電フィルムTC−17の作製)(本発明)
補助層塗布液を下記H−07とし、架橋剤の目付け量を30mg/mとした以外はTC−11と同様にして本発明の透明導電フィルムTC−17を得た。
【0081】
(H−07)
デナコールEX521(架橋剤;ナガセケムテックス製) 1.5g
硫酸アンモニウム 0.05g
PVA−224(架橋剤と反応する基を有するポリマー;クレハ社製) 1.5g
純水 996.95g。
【0082】
(透明導電フィルムTC−20の作製)(比較例)
補助層塗布液を下記のA−10とし、ポリマーの目付け量を15mg/mとした以外はTC−11と同様にして比較例の透明導電フィルムTC−20を得た。
【0083】
(A−10)
PVA−224(クレハ社製) 1.5g
純水 998.5g。
【0084】
(透明導電フィルムTC−21の作製)(比較例)
TC−11において、補助層塗布液H−01を塗布せずに、易接着加工を施された二軸延伸PETフィルムA4100(東洋紡社製)の易接着加工を施された面に、直接、銀ナノワイヤ層を塗布して90℃20秒の乾燥処理をした後に、銀ナノワイヤ層上に補助層塗布液H−01を架橋剤の目付け量が15mg/mとなるように塗布し、引き続いて、115℃10分の熱処理を施した以外はTC−11と同様にして比較例の透明導電フィルムTC−21を得た。
【0085】
(洗浄耐性評価)
各透明導電性フィルムの表面抵抗率をダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPにより測定した。引き続き、洗浄処理として、セミコクリーン56(フルイチ化学社製)にフィルムを浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により10分間の超音波洗浄処理を施した。乾燥後に再び表面低効率を測定し、洗浄前の表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値の値からで洗浄耐性を評価した。0.5以上であることが必要で、好ましくは0.7以上、0.8以上であることが最も好ましい。
【0086】
(導通性評価)
各透明導電性フィルムを電流測定可能なAFMとして、エスアイアイナノテクノロジー社製S−Imageを用いて、銀ペーストにより試料と試料台との導通を確保し、感知レバー側にマイナス5Vの電圧を印加し、80μm四方の範囲をスキャンして、その領域の電流像と形状像とを同時に測定した。
【0087】
○;少なくとも一部の金属ナノワイヤに対応した電流像が見られる
×;ほとんど電流が流れず、金属ナノワイヤに対応した電流像が見られない。
【0088】
結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1より本発明の透明導電性フィルムは、優れた導通性と洗浄耐性を有し、更に金属ナノワイヤを含有する塗布液がヒドロキシプロピルメチルセルロース(架橋剤と反応する基を有するポリマー)を有すること、架橋剤が金属ナノワイヤを含有する塗布液の溶媒に可溶こと、又は架橋剤含有液がPVA(架橋剤と反応する基を有するポリマー)を含有することにより洗浄耐性が向上することが分かる。
【0091】
実施例2
(有機EL素子の作製)
以下、クリーン環境下で作業した。
【0092】
10mmのストライプ状パターンと逆の印刷パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュ(ミタニマイクロニクス株式会社製;255T)を用いて、実施例1と同様にして作製した各透明導電フィルムに金属ナノワイヤ除去剤BF−1の粘度をカルボキシメチルセルロースNa(SIGMA−ALDRICH社製;C5013 以下、CMCと略記する)で10000cpに調整し、銀ナノワイヤ塗布層の上に塗布膜厚30μmとなるようスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行い、パターン電極を作製した。
【0093】
〈金属ナノワイヤ除去剤BF−1の作製〉
エチレンジアミン4酢酸第2鉄アンモニウム 60g
エチレンジアミン4酢酸 2g
メタ重亜硫酸ナトリウム 15g
チオ硫酸アンモニウム 70g
マレイン酸 5g
純水で1Lに仕上げ、硫酸またはアンモニア水でpHを5.5に調整し金属ナノワイヤ除去剤BF−1を作製した。
【0094】
引き続き、クリンスルーKS−3030(花王ケミカル社製)にフィルムを浸漬し、10分間の超音波洗浄処理を施した後、流水により3分間水洗処理により洗浄を行った。
【0095】
この洗浄処理を行った透明導電フィルム上に下記層を形成して有機EL素子を作製した。
【0096】
〈面電極化兼正孔注入層の形成〉
正孔注入材料としてCLEVIOS P AI4083(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸;H.C.Starck社製)をスピンコート装置で塗布した後、80℃、60分間乾燥して、厚さ300nmの正孔注入層を形成した。なお、この正孔注入層は銀ナノワイヤの窓部にも電気を運ぶ面電極化層としても働く。
【0097】
〈正孔輸送層の形成〉
正孔注入層上に、1,2−ジクロロエタン中に1質量%となるように正孔輸送材料の4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)を溶解させた正孔輸送層形成用塗布液をスピンコート装置で塗布した後、80℃、60分間乾燥して、厚さ40nmの正孔輸送層を形成した。
【0098】
〈発光層の形成〉
正孔輸送層が形成された各フィルム上に、ホスト材のポリビニルカルバゾール(PVK)に対して、以下に示す赤ドーパント材BtpIr(acac)が1質量%、緑ドーパント材Ir(ppy)が2質量%、青ドーパント材FIr(pic)が3質量%にそれぞれなるように混合し、PVKと3種ドーパントの全固形分濃度が1質量%となるように1,2−ジクロロエタン中に溶解させた発光層形成用塗布液をスピンコート装置で塗布した後、100℃、10分間乾燥して、厚さ60nmの発光層を形成した。
【0099】
【化1】

【0100】
〈電子輸送層の形成〉
形成した発光層上に、電子輸送層形成用材料としてLiFを5×10−4Paの真空下にて蒸着し、厚さ0.5nmの電子輸送層を形成した。
【0101】
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、Alを5×10−4Paの真空下にて蒸着し、厚さ100nmのカソード電極を形成した。
【0102】
〈封止膜の形成〉
ポリエチレンテレフタレートを基材とし、Alを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を作製した。
【0103】
アノード電極及びカソード電極の外部取り出し端子が形成できるように端部を除きカソード電極の周囲に接着剤を塗り、前記可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させた。
【0104】
なお、比較例TC−20では、パターン形成処理の水洗で銀ナノワイヤ層がはがれてしまい、素子化できなかった。
【0105】
各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して発光させたところ、TC−10〜TC−17(本発明の透明導電フィルム)を使用した場合は10V以下の電圧で発光したが、TC−21(比較例の透明導電フィルム)を使用した場合は10V印加しても発光しなかった。
【0106】
上記結果より、本発明によれば、製造コストや環境負荷が低減された透明導電性フィルムを用いた有機EL素子を発光できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に金属ナノワイヤを含有する透明導電層を有する透明導電性フィルムの製造方法において、基材上に少なくとも架橋剤を含有する層を形成し、該架橋剤を含有する層上に少なくとも金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布して乾燥させた後、該架橋剤を反応させる処理を施したことを特徴とする透明導電フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記架橋剤を反応させる処理が加熱処理であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤを含有する塗布液が該架橋剤と反応可能な基を有するポリマーを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記架橋剤を含有する層が該架橋剤と反応可能な基を有するポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【請求項5】
架橋剤が金属ナノワイヤを含有する塗布液の溶媒に可溶であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記金属ナノワイヤを含有する透明導電層がパターン形成処理によりパターン形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤを含有する透明導電層が洗浄処理を施されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【請求項8】
透明基材上に架橋剤を含有する層及び金属ナノワイヤを含有する層が順に積層されたことを特徴とする透明導電フィルム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする透明導電フィルム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の透明導電フィルムを電子デバイス用にパターン形成することにより製造されたことを特徴とする透明電極。

【公開番号】特開2010−267395(P2010−267395A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115334(P2009−115334)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】