説明

透明導電体及びその製造方法、入力デバイス

【課題】耐久性、導電性、透明性に優れ、透明基体に対する密着性にも優れた導電膜を有する透明導電体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の透明導電体は、透明基体11と、透明基体11の少なくとも片面に設けられた導電膜12とを有し、導電膜12が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素含有エポキシ化合物とを含有する導電性組成物の硬化物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極等に用いることができる透明導電体及びその製造方法、透明導電体を備える入力デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、携帯電話機、カムコーダ、PDA(Personal Digital Assistants)、電子ペーパー等の電子機器には、入力装置が備え付けられ、入力装置としては、例えば、キーボード、JOGダイヤル等の入力手段、タッチパネルなどが使用されている。
タッチパネルとしては、静電容量方式や抵抗膜方式が一般に広く使用されている。
静電容量方式のタッチパネルでは、入力操作面下に静電容量シートが設けられ、入力操作面において、指を触れた入力位置を検出して、指を触れた状態と、指で触れていない状態(非接触)とを判別するようになっている。
抵抗膜方式のタッチパネルでは、入力操作面下に抵抗調整膜が設けられ、入力操作面において、指を触れた入力位置を検出して、指を触れた状態と、指で触れていない状態(非接触)とを判別するようになっている。
通常、静電容量シートおよび抵抗調整膜には導電膜が用いられている。導電膜としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、アンチモンスズ酸化物(ATO)、亜鉛酸化物(ZnO)等の透明導電性酸化物(TCO)の膜が多く使用されていた。
【0003】
ところで、静電容量方式のタッチパネルに使用される静電容量シートにおいては、表1に示すように、他の用途に比べて高い表面抵抗を必要とする。
【0004】
【表1】

【0005】
そのため、TCO膜を静電容量シートに使用する場合には、表面抵抗を増加させるために、TCOの膜を薄くしていた。ITO膜において表面抵抗を20Ωにする場合にも、厚さを約500nmにしなければならず、350〜400Ωにするためには、約35〜30nmの厚さにする必要がある。したがって、1000Ω以上の表面抵抗を得るためには、さらに薄くしなければならないが、一般に、膜を薄くすると、均一性、耐久性(耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性)および物理的連続性が低下する傾向にある。
ATOは、ITOよりも厚い膜厚で高い表面抵抗値を得ることができる。例えば25〜30nmの厚さのATO膜の表面抵抗は約2000Ωである。しかしながら、ATO膜はITO膜に比べて透明性が低いという問題を有していた。
このようなことから、耐久性(耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性)、導電性、透明性に優れた導電膜が求められていた。さらに、導電膜は、ガラスやプラスチックス等の透明基体に対する密着性にも優れることが要求されていた。
それら要求に対し、特許文献1では、π共役系導電性高分子と水溶性エポキシモノマーを含む導電性塗料を用いて導電膜を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−146259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の導電膜は耐水性に優れるものの、耐エタノール性が充分ではなかった。また、導電膜の耐傷付き性が低いため、タッチパネル製造工程等で表面に傷が付き、製品率を大幅に低減させる要因となっていた。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、耐久性(耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性)、導電性、透明性に優れ、透明基体に対する密着性にも優れた導電膜を有する透明導電体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、このような透明導電体を備えた入力デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下構成を有する。
[1]透明基体と、該透明基体の少なくとも片面に設けられた導電膜とを有し、前記導電膜が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素含有エポキシ化合物とを含有する導電性組成物の硬化体からなることを特徴とする透明導電体。
[2]フッ素含有エポキシ化合物は、エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有する直鎖状化合物であることを特徴とする[1]に記載の透明導電体。
[3]導電性組成物が、オキセタン化合物及びエポキシ化合物の一方または両方を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の透明導電体。
[4]透明基体の少なくとも片面に、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、エポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素含有エポキシ化合物と、溶剤とを含有する導電性塗料を塗布し、硬化することを特徴とする透明導電体の製造方法。
[5]フッ素含有エポキシ化合物として、エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有する直鎖状化合物を用いることを特徴とする[4]に記載の透明導電体の製造方法。
[6]導電性塗料が、オキセタン化合物及びエポキシ化合物の一方または両方を含有することを特徴とする[4]または[5]に記載の透明導電体の製造方法。
[7][1]〜[3]のいずれか記載の透明導電体を備えることを特徴とする入力デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の透明導電体は、耐久性(耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性)、導電性、透明性に優れ、透明基体に対する密着性にも優れる導電膜を有する。
本発明の透明導電体の製造方法によれば、耐久性、導電性、透明性に優れ、透明基体に対する密着性にも優れた導電膜を有する透明導電体を製造できる。
本発明の入力デバイスは、耐久性、導電性、透明性に優れ、透明基体に対する密着性にも優れる導電膜を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の入力デバイスの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「透明導電体」
本発明の透明導電体は、透明基体と、該透明基体の少なくとも片面に設けられた導電膜とを有する。
【0012】
<透明基体>
透明基体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのフィルムまたはシートが挙げられる。また、ガラスなども使用できる。
【0013】
<導電膜>
導電膜は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとフッ素含有エポキシ化合物とを必須成分として含有し、バインダ、導電性向上剤、添加剤等を任意成分として含有する導電性組成物の硬化体からなる。
【0014】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。極性溶剤との相溶性及び透明性の面から、ポリチオフェン系がより好ましい。
【0015】
π共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0016】
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入してもよい。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0017】
(ポリアニオン)
ポリアニオンとしては、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
なお、ポリアニオンはπ共役系導電性高分子に対するドーパントとしても機能する。
【0018】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)が1個含まれる構成単位からなる高分子である。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0019】
上記ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶剤への溶解性、耐熱性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
【0020】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。
ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
【0021】
置換基を有するポリアルキレンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等を例示できる。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体を例示できる。
【0022】
ポリアニオンのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。
すなわち、ポリアニオンは、スルホ基及び/又はカルボキシ基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。
また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0023】
上記ポリアニオンの中でも、溶剤溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0024】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶剤溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0025】
ポリアニオンは、π共役系導電性高分子に配位している。そのため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとは複合体を形成している。導電性高分子溶液中のπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量は0.05〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜4.0質量%であることがより好ましい。π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計含有量が0.05質量%未満であると、十分な導電性が得られないことがあり、5.0質量%を超えると、均一な導電膜が得られないことがある。
【0026】
(フッ素含有エポキシ化合物)
フッ素含有エポキシ化合物は、エポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換された化合物である。
フッ素含有エポキシ化合物としては、例えば、下記一般式のものが挙げられる。
Gu−(OCH−{X}−(CHO)−Gu
ここで、Guはグリシジル基を表す。また、Xは(CF及び/又は(CF−O−CFである。また、pは0〜1、lは1〜8、mは1〜8である。
【0027】
フッ素含有エポキシ化合物のうち、不飽和結合(炭素−炭素二重結合および三重結合が有り)を含まない飽和エポキシ化合物は、π共役系導電性高分子との相溶性に優れるため好ましい。また、相溶性の面から、直鎖状の飽和エポキシ化合物が好ましい。さらに、相溶性の面から、飽和エポキシ化合物の炭素数が16未満であることが好ましく、炭素数12以下であることがより好ましい。
【0028】
また、直鎖状のフッ素含有エポキシ化合物としては、塗料の保存安定性がより向上する点から、エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有することが好ましい。
エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有するエポキシ化合物としては、米国のエクスフロー社より、フッ素化トリエチレングリコールジエポキシド(製品名:C6GDEP)、フッ素化テトラエチレングリコールジエポキシド(製品名:C8GDEP)、1H,1H,4H,4H−パーフルオロ−1,4−ブタンジオールジエポキシド(製品名:C4DEP)、1H,1H,5H,5H−パーフルオロ−1,5−ペンタンジオールジエポキシド(製品名:C5DEP)、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジエポキシド(製品名:C6DEP)、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジエポキシド(製品名:C8DEP)、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジエポキシド(製品名:C10DEP)が市販されている。
また、エーテル結合を有さないフッ素含有エポキシ化合物としては、ダイキン工業(株)より、1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−ヘキサン、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−ブタン、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−エタンが市販されている。
上記フッ素含有エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、必要に応じて他のエポキシ樹脂、又はアクリル樹脂等の混合物として用いてもよい。
【0029】
フッ素含有エポキシ化合物は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの固形分合計100質量%に対して、1〜100質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましい。フッ素含有エポキシ化合物の含有量が1質量%未満であると、導電性塗膜の耐傷付き性と耐エタノール性が不足することがあり、100質量%を超えると、導電性塗膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、充分な導電性が得られないことがある。また、50質量%以下であればより充分な導電性を得ることができる。
【0030】
(バインダ)
バインダは、耐久性および透明性の向上、基体との密着性向上を目的として含まれる。バインダは、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑樹脂であってもよい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリイミドシリコーン、ポリウレタン、ポリウレア、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、アクリル樹脂およびこれらの共重合体等が挙げられる。
バインダの中でも、フッ素含有エポキシ化合物との混合性、基体との密着性が高いことから、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0031】
[オキセタン化合物]
オキセタン樹脂を構成するオキセタン化合物の具体例としては、例えば、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’−(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ{1−エチル(3−オキセタニル)}メチルエーテル、1,6−ビス{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}ヘキサン、9,9−ビス{2−メチル−4−[2−(3−オキセタニル)]ブトキシフェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−{2−[2−(3−オキセタニル)]ブトキシ}エトキシフェニル}フルオレンなど2官能のオキセタン環を有する化合物、オキセタン化ノボラック樹脂などの多官能オキセタン化合物、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン等の1官能のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。
【0032】
オキセタン化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの固形分合計100質量%に対して、1〜200質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましい。オキセタン化合物の含有量が1質量%未満であると、導電性塗膜の耐水性が不足することがあり、200質量%を超えると、導電性塗膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、充分な導電性が得られないことがある。
【0033】
[エポキシ化合物]
エポキシ樹脂を構成するエポキシ化合物としては、水溶性エポキシ樹脂、エポキシエマルジョンが挙げられる。透明性の点から水溶性エポキシ樹脂であることが好ましい。さらにモノマーであることがより好ましい。水溶性エポキシ樹脂は、エポキシ基を有し、25℃の水100gに対して1g以上溶解する樹脂である。
水溶性エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、アジピン酸グリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
水溶性エポキシ樹脂の中でも、2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。
【0034】
エポキシエマルジョンは、2個以上のエポキシ基を有する油溶性のエポキシ樹脂を含むエマルジョンである。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型等の2官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、3官能型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の多官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型、TRAD−D型、アミノフェノール型、アニリン型、トルイジン型等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、ポリブタジエンまたはポリアクリロニトリル−ブタジエンを含有するゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0035】
エポキシ化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの固形分合計100質量%に対して、1〜200質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましい。エポキシ化合物の含有量が1質量%未満であると、導電性塗膜の耐水性が不足することがあり、200質量%を超えると、導電性塗膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、充分な導電性が得られないことがある。
【0036】
[アクリル化合物]
アクリル樹脂を構成するアクリル化合物には単官能アクリル化合物と多官能アクリル化合物がある。
単官能アクリル化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド化合物の重合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体との相溶性が良い上に導電性をより向上させることもできる。
【0037】
多官能アクリル化合物は、不飽和二重結合を2つ以上有するアクリル化合物である。多官能アクリル化合物を含有すれば、塗膜形成時に成膜性が向上する。
多官能アクリル化合物の具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する。)400ジ(メタ)アクリレート、PEG300ジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等の2官能アクリル化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等の3官能アクリル化合物、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のアクリル化合物、ソルビトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の5官能以上のアクリル化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、アルキレンオキサイド変性ヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能以上のアクリル化合物、2官能以上のウレタンアクリレートが挙げられる。
【0038】
多官能アクリル化合物のうち、多官能アクリルモノマーは、分子量が3000以下であることが好ましい。分子量が3000を超える多官能アクリルモノマーでは、溶剤溶解性が低くなる。また、不飽和二重結合当量が少なくなるため、複合体を架橋させにくく、導電膜形成後に充分な強度が得られない傾向にある。
また、多官能アクリル化合物のうち、多官能ウレタンアクリレートは、溶剤溶解性、耐摩耗性、低収縮の点で、分子量1000以下であることが好ましい。分子量が1000を超える多官能ウレタンアクリレートでは、イソシアネート基とポリオール(水酸基)により形成されるウレタン基の導入率が減少して、溶剤に対する溶解性が低くなる傾向にある。
【0039】
成膜性がより向上する点では、(メタ)アクリルアミド化合物および多官能アクリル化合物の一方または両方をさらに含有することが好ましい。
【0040】
アクリル化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.05〜50質量%であることが好ましく、0.3〜30質量%であることがより好ましい。アクリル化合物の含有量が0.05質量%以上であれば、導電膜の成膜性が充分に高くなり、50質量%以下であれば、導電膜中にπ共役系導電性高分子が充分量含まれるため、充分な導電性が得られる。
【0041】
上記エポキシ化合物、オキセタン化合物およびアクリル化合物としては、導電性塗料の保存安定性の点から、フッ素を含まない化合物が好ましい。
【0042】
(導電性向上剤)
導電性向上剤は、導電性高分子溶液から形成される導電膜の導電性を向上させる成分である。
具体的に、導電性向上剤は、前記アクリル化合物、窒素含有芳香族性環式化合物、2 個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のカルボキシル基を有する化合物、1個以上のヒドロキシル基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物、水溶性有機溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0043】
・窒素含有芳香族性環式化合物
窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
【0044】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0045】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(N−ヒドロキシエチルイミダゾール)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0046】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0047】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0048】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0049】
窒素含有芳香族性環式化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜100モルの範囲であることが好ましく、0.5〜30モルの範囲であることがより好ましく、固体電解質層14の物性及び導電性の観点からは、1〜10モルの範囲が特に好ましい。窒素含有芳香族性環式化合物の含有率が0.1モルより少なくなると、窒素含有芳香族性環式化合物とポリアニオン及び共役系導電性高分子との相互作用が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。また、窒素含有芳香族性環式化合物が100モルを超えて含まれると共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、固体電解質層14の物性が変化することがある。
【0050】
・2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類;
セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール;
1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0051】
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜50モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して50モルより多くなると、固体電解質層14中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、固体電解質層14の物性が変化することがある。
【0052】
・2個以上のカルボキシ基を有する化合物
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物;
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物;ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸(チオジ酢酸)、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
【0053】
2個以上のカルボキシ基を有する化合物は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜30モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して30モルより多くなると、固体電解質層14中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、固体電解質層14の物性が変化することがある。
【0054】
・1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0055】
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量は、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が1質量部より少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が5,000質量部より多くなると、固体電解質層14中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得ることが難しい。
【0056】
・アミド化合物
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素及び尿素誘導体などが挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0057】
また、アミド化合物として、アクリルアミドを使用することもできる。アクリルアミドとしては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0058】
アミド化合物の分子量は46〜10,000であることが好ましく、46〜5,000であることがより好ましく、46〜1,000であることが特に好ましい。
【0059】
アミド化合物の含有量は、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。アミド化合物の含有量が1質量部より少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、アミド化合物の含有量が5,000質量部より多くなると、固体電解質層14中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得ることが難しい。
【0060】
・イミド化合物
アミド化合物としては、導電性がより高くなることから、イミド結合を有する単分子化合物(以下、イミド化合物という。)が好ましい。イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0061】
また、イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。
飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。
不飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの一方又は両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。具体例は、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0062】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0063】
イミド化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10,000質量部であることが好ましく、50〜5,000質量部であることがより好ましい。アミド化合物及びイミド化合物の添加量が前記下限値未満であると、アミド化合物及びイミド化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0064】
・ラクタム化合物
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素又は任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。
ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
【0065】
ラクタム化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、50〜5000質量部であることがより好ましい。ラクタム化合物の添加量が前記下限値未満であると、ラクタム化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0066】
・グリシジル基を有する化合物
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
【0067】
グリシジル基を有する化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、50〜5000質量部であることがより好ましい。グリシジル基を有する化合物の添加量が前記下限値未満であると、グリシジル基を有する化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0068】
・水溶性有機溶媒
水溶性有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4ブチレングリコール、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。
【0069】
(添加剤)
導電性組成物には、必要に応じて、添加剤が含まれてもよい。添加剤としてはπ共役系導電性高分子及びポリアニオンと混合しうるものであれば特に制限されず、例えば、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
無機導電剤としては、金属イオン(金属塩を水に溶解させて形成する)類、導電性カーボン等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。酸化防止剤と紫外線吸収剤とは併用することが好ましい。
【0070】
(導電膜の厚さ)
導電膜の厚さは0.001〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましい。導電膜の厚みが0.001μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、10μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0071】
(導電膜の表面抵抗値)
導電膜の表面抵抗値としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5,000Ω以下であるが、2,500Ω以下であることが好ましく、500Ω以下であることがより好ましい。
【0072】
<透明導電体の製造方法>
本発明の透明導電体の製造方法は、透明基体の少なくとも片面に導電性塗料を塗布し、硬化する方法である。ここで、導電性塗料とは、π共役系導電性高分子とポリアニオンとフッ素含有エポキシ化合物と溶剤とを必須成分として含有し、バインダと硬化剤と導電性向上剤と添加剤を任意成分として含有する。
【0073】
導電性塗料がバインダとしてオキセタン化合物やエポキシ化合物を含む場合には、得られる導電膜の耐水性と強度がより高くなることから、オキセタン/エポキシ用の硬化剤を含有することが好ましい。
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸または酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、イミダゾール類、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン、直鎖状ジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノール、アミン、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン等の2級アミン類または、3級アミン類、ダイマー酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させて得たポリアミドアミンなどが挙げられる。
酸または、酸無水物系硬化剤として、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、デカンジカルボン酸等のポリカルボン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等の芳香族無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の環状脂肪族酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ポリ(エチル)オクタデカン二酸)無水物等の脂肪族酸無水物などが挙げられる。
活性水素化合物としては、例えば、有機酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
イミダゾールとしては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタンデシルイミダゾールなどが挙げられる。
ポリメルカプタン系硬化剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラチオグリコーレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレート等のチオグリコール酸のエステルなどが挙げられる。
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、イソシアネート基をフェノール、アルコール、カプロラクトン等と反応させてブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0074】
また、オキセタン化合物やエポキシ化合物を迅速にかつ充分に硬化させることから、導電性塗料は、カチオン発生化合物を含有することが好ましい。
カチオン発生化合物は、ルイス酸を発生させる化合物である。ここで、カチオン発生化合物の具体例としては、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤等が挙げられる。光カチオン開始剤と熱カチオン開始剤は併用しても構わない。
【0075】
光カチオン開始剤としては、例えば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられる。これらは、カチオン部分が、芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウム等であり、アニオン部分が、(四フッ化ホウ素(BF)、六フッ化リン(PF)、六フッ化アンチモン(SbF)、[BX(ただし、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である。)等に構成されたオニウム塩である。
具体例としては、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジニウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体が挙げられる。
光カチオン開始剤の市販品としては、CD−1012(サートマー社製)。PCI−019、PCI−021(日本化薬社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(ADEKA社製)、UVI−6990(ダウケミカル社製)、CPI−100P、CPI100A(サンアプロ社製)、TEPBI−S(日本触媒社製)、WPI031、WPI−054、WPI−113、WPI−116、WPI−170(和光純薬工業社製)、イルガキュア250(チバ・スペシャルティ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0076】
熱カチオン開始剤としては、芳香族オニウム塩、トリフル酸塩、三フッ化ホウ素エーテル錯体化合物および三フッ化ホウ素等のようなカチオン系またはプロトン酸触媒が挙げられる。そのなかでも、芳香族オニウム塩が好ましい。芳香族オニウム塩は熱によりカチオン種を発生するものがあり、熱カチオン重合開始剤として用いることもできる。例えば、三新化学社から入手できるサンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−180Lなどの芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
三新化学社製以外の熱カチオン開始剤としては、例えば、アデカオプトンCP−66、CP−77(ADEKA社製)、CI−2920、CI2921、CI2946、CI−2639、CI−2624、CI−2064(日本曹達社製)、FC−520(スリーエム社製)等が挙げられる。
上記カチオン発生化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
硬化剤とカチオン発生剤の合計の含有量は、オキセタン化合物やエポキシ化合物を100質量%とした際の0.1〜100質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることがより好ましい。硬化剤とカチオン発生剤の合計の含有量が0.1質量%以上であれば、オキセタン化合物やエポキシ化合物を充分に硬化でき、100質量%以下であれば、導電性塗料から形成される導電膜においてバインダの特性を充分に発揮できる。
【0078】
導電性塗料がバインダとしてアクリル化合物を含有する場合、アクリル化合物の重合では、ラジカル重合法、熱重合法、光ラジカル重合法、カチオン重合法、プラズマ重合法を適用できる。
ラジカル重合法では、重合開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ヒドロペルオキシド類等の過酸化物などを用いて重合する。
光ラジカル重合法では、重合開始剤として、カルボニル化合物、イオウ化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などを用いて重合する。具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、キサントン、チオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、テトラメチルチウラム、ジチオカーバメート、過酸化ベンゾイル、N−ラウリルピリジウムアジド、ポリメチルフェニルシランなどが挙げられる。さらに、光ラジカル重合法光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる。
また、カチオン重合法では、カチオン重合開始剤として、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、シラノール/アルミニウムキレート、α−スルホニルオキシケトン類等を用いることができる。
プラズマ重合では、プラズマを短時間照射し、プラズマの電子衝撃によるエネルギーを受けて、フラグメンテーションとリアレンジメントをしたのち、ラジカルの再結合により重合体を生成する。
【0079】
溶剤としては特に制限されないが、前記のポリアニオンを溶解しやすいことから水系溶剤が好ましい。
水系溶剤としては、溶解度パラメータが10以上の溶剤が挙げられ、例えば、水の他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、ポリグリセリン、1,2-ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げられる。これら溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
導電性塗料における溶剤の含有量は、フッ素含有のエポキシ化合物およびバインダを充分に溶解させるために、40〜99質量%が好ましく、50〜98質量%がより好ましい。溶剤の含有量が40質量%未満であると、フッ素含有の飽和エポキシ化合物とバインダの溶解性に支障をきたし、得られる導電性塗料の安定性が不充分になることがあり、99質量%を超えると、π共役系導電性高分子の分散性が不充分になることがある。
【0081】
導電性塗料は、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを化学酸化重合した後、溶剤、フッ素含有エポキシ化合物を添加することで調製できる。化学酸化重合後、水は除去しても構わない。
【0082】
導電性高分子溶液の塗布方法として、例えば、バーコーティング、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、スプレーコーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷などが適用される。導電性高分子溶液塗布後には、硬化処理を施すことが好ましい。 硬化方法としては、加熱または光照射が適用される。加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光照射により硬化する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。
紫外線照射における照度は100mW/cm以上が好ましい。還元剤がアクリル化合物の重合を阻害することがあるため、照度が100mW/cm未満であると、充分に架橋せず、導電性塗膜の耐摺動性(耐久性)が低くなる傾向にある。なお、本発明における照度は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300〜390nm、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
以上のような手法で、本発明の透明導電体を得ることができる。
【0083】
本発明における透明導電体の導電膜は、フッ素含有エポキシ化合物の添加により、耐エタノール性が著しく向上した。耐エタノール性が高いと、製造工程中で導電膜の汚れを拭く場合、エタノール洗浄により容易に汚れを除去することができる。また、フッ素含有エポキシ化合物の添加により、表面の滑り性が向上するため、導電膜の耐傷付き性が高くなる。耐傷付き性が高いと、工程中の取り扱いで導電膜の表面に傷を付けて抵抗値の均一性を損なうといった重大欠陥を防止でき、製品率が向上するといった効果を有する。さらに、導電膜がフッ素含有エポキシ化合物を含有しても、耐水性、導電性、透明性、透明基体に対する密着性は損なわれない。
本発明の透明導電体は、表示デバイスの透明電極として用いることができる。表示デバイスとしては、例えば、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0084】
「入力デバイス」
本発明の入力デバイスは、上記本発明の透明導電体を透明電極として備えるものである。入力デバイスの中でも、本発明の効果がとりわけ発揮されることから、抵抗膜式タッチパネルが好適である。
以下、上記本発明の透明導電体を透明電極として備えた抵抗膜式タッチパネルの例について説明する。
本例の抵抗膜式タッチパネルは、図1に示すように、透明基体11表面に導電膜12が形成され、入力者側に配置された可動電極シート10と、透明基体21表面に導電膜22が形成され、画像表示装置側に配置された固定電極シート20とが、導電膜12と導電膜22が対向するように設けられたものである。また、可動電極シート10と固定電極シート20との間には、透明なドットスペーサ24が配置されて、隙間が形成されている。
【0085】
可動電極シート10または固定電極シート20の透明基体11,21としては、例えば、単層または2層以上のプラスチックフィルム、ガラス板、フィルムとガラス板との積層体が挙げられる。ただし、可動電極シート10の透明基体11としては、可撓性を有することから、プラスチックフィルムが好ましく、固定電極シート20の透明基体21としては、固定しやすいことから、ガラス板を用いたものが好ましい。
【0086】
可動電極シート10の透明基体11の厚さは100〜250μmであることが好ましい。透明基体11の厚さが100μm以上であれば、充分な強度を確保でき、250μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。可動電極シート10の導電膜12の厚さは50〜700μmであることが好ましい。透明基体11の厚さが50μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、700μm以下であれば、充分な可撓性及び透明性を確保できる。 固定電極シート20の透明基体21の厚さは0.8〜2.5mmであることが好ましい。透明基体11の厚さが0.8mm以上であれば、充分な強度を確保でき、2.5mm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。固定電極シート20の同導電膜22の厚さは0.01〜1.0μmであることが好ましい。導電膜22の厚さが0.01μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、1.0μm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20〜100μmであることが好ましい。可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20μm以上であれば、非押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させないようにすることができ、100μm以下であれば、押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させることができる。前記間隔になるようにするためには、ドットスペーサ24の大きさを適宜選択すればよい。
【0087】
この抵抗膜式タッチパネルでは、指またはスタイラスにより可動電極シート10を押した際に、可動電極シート10の導電膜12と、固定電極シート20の同導電膜22とを接触させて導通させ、その際の電圧を取り込んで、位置を検出するようになっている。
【0088】
また、入力デバイスは静電容量式タッチパネルであってもよい。前記導電膜を用いた静電容量式タッチパネルとしては、例えば、前記導電膜からなる一対の透明電極が透明基体の両面に設けられ、透明電極全体に低圧の電界を形成し、指で触れることで表面電荷の変化を捉え、位置を検出するものが挙げられる。
【0089】
このような入力デバイスは、例えば、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、PHS、現金自動預け払い機(ATM)、自動販売機、販売時点情報管理(POS)用レジスタなどに備え付けられる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の調製
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0091】
(製造例2)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水溶液の調製14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得たポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水溶液を得た。
【0092】
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液100gに、フッ素含有の、エーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)を0.015g(1質量%)を添加し、超音波振動機(アレックス・コーポレーション社製ハイパワー超音波洗浄機ネオネニック)を用いて撹拌して、エーテル結合を含む飽和エポキシ化合物を含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)3g、サンエイドSI−110L(三新化学社製)0.03g、ジメチルスルホキシド3.3g、エタノール133gを混合し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記エーテル結合を含む飽和エポキシ化合物を含有したPEDOT−PSS水溶液を添加して、超音波振動機にて攪拌し、導電性塗料Aを得た。
導電性塗料Aをポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製A4300、厚さ:188μm)にバーコーターで塗布し、120℃、2分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。
得られた透明導電体の塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を以下の方法により測定した。それらの結果を表2に示す。
【0093】
[表面抵抗]
三菱化学社製ロレスタMCP−T600を用い、JIS K 7194に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
【0094】
[全光線透過率およびヘイズ]
日本電色工業社製ヘイズメータ測定器(NDH5000)を用い、JIS K7136に準じて全光線透過率およびヘイズを測定した。測定結果を表2に示す。
【0095】
[摺動試験(耐水性、耐エタノール性の評価)]
導電膜の塗膜強度を測定するため、水もしくはエタノールで湿らせたキムワイプ(日本製紙クレシア社製)を、100gf/cmの荷重をかけて50往復擦った後、導電膜の剥がれを目視により以下の評価基準に基づいて評価した。また、表面抵抗と接触抵抗を測定した。それらの結果を表2に示す。
◎ :剥離なし、○:わずかに剥離、△:一部剥離、×:完全剥離
【0096】
[耐傷付き性の評価]
導電膜の塗膜強度を測定するため、キムワイプ(日本製紙クレシア社製)に、100gf/cmの荷重をかけて50往復擦って傷付け試験を行った後、導電膜の傷を目視により以下の評価基準に基づいて評価した。また、表面抵抗と接触抵抗を測定した。それらの結果を表2に示す。これらの結果は導電膜の膜強度の指標になる。
◎ :傷なし、○:数本傷があり、△:数10本の傷があり、×:無数の傷があり
【0097】
[密着性の評価]
形成した導電膜の表面を、透明基体(ポリエチレンテレフタレート、またはガラス)まで到達するようにして、カッターナイフで格子状の切り込みを入れた。その切り込みを入れた導電膜にセロハンテープを接着した後、剥離した。その際の導電膜の剥離状況を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。それらの結果を表2に示す。
◎ :剥離なし、○:わずかに剥離、△:一部剥離、×:完全剥離
【0098】
【表2】

【0099】
(実施例2)
フッ素含有のエーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の添加量を0.075g(5質量%)に変更し、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)の添加量を2.625gに変更し、サンエイドSI−110L(三新化学社製)の添加量を0.02625gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Bを得た。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Bを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0100】
(実施例3)
フッ素含有のエーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の添加量を0.225g(15質量%)に変更し、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)の添加量を2.25gに変更し、サンエイドSI−110L(三新化学社製)の添加量を0.0225gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Cを作製した。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Cを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0101】
(実施例4)
フッ素含有のエーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)0.015g(1質量%)を、炭化水素がエーテル化していないエポキシ化合物(ダイキン社製、製品名E−7432(1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−ヘキサン)0.45g(30質量%)に変更し、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)の添加量を1.875gに変更し、サンエイドSI−110L(三新化学社製)の添加量を0.01875gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Dを得た。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Dを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0102】
(実施例5)
フッ素含有のエーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)0.015g(1質量%)を、炭化水素がエーテル化していないエポキシ化合物(エクスフロー社製C5DEP、1H,1H,5H,5H−パーフルオロ−1,5−ペンタンジオールジエポキシド)0.675g(45質量部)に変更し、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)の添加量を1.5gに変更し、サンエイドSI−110L(三新化学社製)の添加量を0.015gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Eを得た。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Eを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0103】
(実施例6)
フッ素含有のエーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の添加量を0.9g(60質量%)に変更し、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)3gを、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亞合成社製OXT221)1.125gに変更し、サンエイドSI−110L(三新化学社製)の添加量を0.01125gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Fを得た。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Fを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0104】
(実施例7)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液100gに、フッ素含有の、エーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)を1.125g(75質量%)を添加し、超音波振動機(アレックス・コーポレーション社製ハイパワー超音波洗浄機ネオネニック)を用いて撹拌して、エーテル結合を含む飽和エポキシ化合物を含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ペンタエリスリトールトリアクリレート0.75g、イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.0075g、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート3.3g、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン0.45g、エタノール133gを混合し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記エーテル結合を含む飽和エポキシ化合物を含有したPEDOT−PSS水溶液を添加して、超音波振動機にて攪拌し、導電性塗料Gを得た。
導電性塗料Gをポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製A4300、厚さ;188μm)に、バーコーターで塗布し、100℃、2分間、赤外線照射により乾燥した。その後、紫外線(高圧水銀灯120W、360mJ/cm、178mW/cm)照射し、硬化させて、導電性塗膜を形成し、透明導電体を得た。得られた透明導電体は、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0105】
(実施例8)
フッ素含有のエーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の添加量を1.35g(90質量%)に変更し、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)3gを、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−4GLS)0.375gに変更し、サンエイドSI−110L(三新化学社製)の添加量を0.00375gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Hを得た。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Hを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0106】
(実施例9)
フッ素含有のエーテル結合を含む飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の添加量を1.5g(100質量%)に変更し、ジグリセリンポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−DGE)3gを、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−SEP)0.015gに変更し、サンエイドSI−110L(三新化学社製)の添加量を0.00015gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Iを得た。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Iを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0107】
(実施例10)
導電性塗料Aを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0108】
(実施例11)
導電性塗料Bを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0109】
(実施例12)
導電性塗料Cを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0110】
(実施例13)
導電性塗料Dを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0111】
(実施例14)
導電性塗料Eを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0112】
(実施例15)
導電性塗料Fを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0113】
(実施例16)
導電性塗料Gを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、100℃、2分間、赤外線照射により乾燥した後、紫外線(高圧水銀灯120W、360mJ/cm、178mW/cm)照射し、硬化させて、導電性塗膜を形成し、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0114】
(実施例17)
導電性塗料Hを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0115】
(実施例18)
導電性塗料Iを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0116】
(比較例1)
フッ素を含有の飽和エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)を添加しない以外は、実施例1と同様にして導電性塗料Jを得た。そして、導電性塗料Aの代わりに導電性塗料Jを用いたこと以外は実施例1と同様に導電性塗膜を形成し、透明導電体を評価した。評価結果を表2に示す。
【0117】
(比較例2)
導電性塗料Jを、ガラス(厚さ:0.8mm×210mm×150mm)にバーコーターで塗布し、120℃、30分間、赤外線加熱により乾燥し、導電性塗膜を形成して、透明導電体を得た。そして、実施例1と同様に塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性、密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0118】
フッ素含有エポキシ化合物を含有する導電性塗料をポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターで塗布して得た実施例1〜9の透明導電体は、表面抵抗、透明性(全光線透過率とヘイズ)、耐水性、耐エタノール性、密着性、および耐傷付き性のいずれにも優れていた。
フッ素含有エポキシ化合物を含有する導電性塗料をガラスにバーコーターで塗布して得た実施例10〜18の透明導電体も、表面抵抗、透明性(全光線透過率とヘイズ)、耐水性、耐エタノール性、密着性、および耐傷付き性のいずれにも優れていた。
これに対し、フッ素含有エポキシ化合物を含まない導電性塗料を用いた比較例1,2では、表面抵抗、透明性(全光線透過率、ヘイズ)、耐水性は良好な結果であったものの、耐エタノール性、耐傷付き性および密着性が低かった。
【符号の説明】
【0119】
10 可動電極シート
11 透明基体
12 導電膜
20 固定電極シート
21 透明基体
22 導電膜
24 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基体と、該透明基体の少なくとも片面に設けられた導電膜とを有し、前記導電膜が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素含有エポキシ化合物とを含有する導電性組成物の硬化体からなることを特徴とする透明導電体。
【請求項2】
フッ素含有エポキシ化合物は、エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有する直鎖状化合物であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電体。
【請求項3】
導電性組成物が、オキセタン化合物及びエポキシ化合物の一方または両方を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電体。
【請求項4】
透明基体の少なくとも片面に、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、エポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素含有エポキシ化合物と、溶剤とを含有する導電性塗料を塗布し、硬化することを特徴とする透明導電体の製造方法。
【請求項5】
フッ素含有エポキシ化合物として、エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有する直鎖状化合物を用いることを特徴とする請求項4に記載の透明導電体の製造方法。
【請求項6】
導電性塗料が、オキセタン化合物及びエポキシ化合物の一方または両方を含有することを特徴とする請求項4または5に記載の透明導電体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか記載の透明導電体を備えることを特徴とする入力デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2011−198698(P2011−198698A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66519(P2010−66519)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】