説明

透明導電性シート

【課題】導電性酸化物微粒子を用いた塗布型の透明導電性シートにおいて、良好な導電性と透明性を兼ね備えた透明導電膜を提供することにある。
【解決手段】金属の薄膜でコートされた導電性酸化物微粒子と未被覆の導電性酸化物微粒子とが混合された導電膜形成用塗料を基材に塗布して導電性塗膜した透明導電性シートであって、該金属の薄膜でコートされた導電性酸化物粒子が全導電性酸化物粒子中に20〜70%の割合とすることで、全体的に透明導電塗布膜の抵抗を低下させ、かつ、金属による透明性の低下を極力抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板上に形成された塗布型の透明導電性シートに関し、その透明導電層の抵抗値の低減と光学的特性とを両立させた透明導電シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電膜や透明導電性インクの材料として、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子、スズ含有酸化インジウム粒子、アルミニウム含有酸化亜鉛、ガリウム含有酸化亜鉛などの導電性酸化微粒子が知られている。中でも、酸化インジウムにスズを含有させたスズ含有酸化インジウム粒子(ITO)を含有させたインクは、その可視光に対する高い透光性と、その高い導電性から、静電防止や電磁波遮蔽が要求されるCRT画面、LCD画面などに塗布して使用されている(特許文献1参照)。
しかし、現在、主に用いられている透明導電膜の成膜方法は、真空蒸着法やスパッタリング法などの物理的方法であるため、成膜する基板の大型化に伴って、製造装置が大掛かりとなり、コストが高くなってしまうという問題が生じており、簡便な製造工程である塗布による透明導電膜の成膜がコストの面からも検討されており、特に、スズ含有酸化インジウム粒子を含むインクを塗布して作製された透明導電膜は、タッチパネルなどの、より透光性と導電性を要求される用途への応用が期待されている。
ただ、タッチパネルなどに要求される物理特性は、スパッタITO膜をデフォルトとしているため、粒子を用いた塗布型ITO膜においては、抵抗値と透過率の両立が難しい。たとえば、特許文献2のように、粒子サイズの異なる粒子を混合することで接触点を増やし、低抵抗化を試みられているが、より低い抵抗値を達成することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−312136号公報
【特許文献2】特開2008-130290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導電性酸化物微粒子を用いた塗布型の透明導電性シートにおいて、良好な導電性と透明性を兼ね備えた透明導電膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、金属の薄膜でコートされた導電性酸化物微粒子と未被覆の導電性酸化物微粒子とを含み、該金属の薄膜でコートされた導電性酸化物微粒子が全導電性酸化物微粒子に20〜70%の割合で混合された導電膜形成用塗料を基材に塗布して導電性塗膜を形成した透明導電性シートとすることで、導電塗布膜の抵抗を低下させ、かつ、金属による透明性の低下を極力抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明の透明導電シートは、良好な導電性と透明性を兼ね備えているので、電子ペーパー、FPD、太陽電池等の透明電極に応用することができる。また、当該透明導電シートの作製方法であれば、プラスチックス、PETやポリイミド等のフレキシブルな基板にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の透明導電膜の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来の導電性酸化物粒子のみの塗布膜における導電機構は、粒子同士の物理的接触ならびに周りの有機物による固定によって、成立している。また、抵抗をできるだけ低くするためには、導電性酸化物粒子を極力多く含有させ、接触点を増やすことが必要である。しかし、粒子の含有率が高くなると塗膜の強度(有機物による固定)が著しく低下し、塗膜構造が崩壊しやすくなり、粒子間の接触が絶たれる箇所が生じることで、導電性向上の効果が小さくなる。ある程度の妥協点を見出して含有率が決定されていた。
【0009】
また、光学的特性においても、導電性粒子を多く含有させることで、導電性粒子そのものによる透過光の遮蔽のみならず、バインダ成分の減少により表面に直接導電性粒子が現れることにより表面平滑性が低下し散乱光が増え、透明性が低下する。その点においても、ある程度の妥協点を見出して含有率が決定する必要があった。
これに対して、本発明の透明導電性シートのように、導電性の高い金属でコートされた導電性酸化物粒子を塗膜層中にある特定の割合で混合することより、金属接触による化学的結合による通電網が形勢されることで、適度な導電性粒子の含有率で塗膜の導電率を下げることが可能であり、また、塗膜強度および透明性が低下することもない。
【0010】
通常、導電性酸化物粒子のみの塗布型透明導電性塗膜は、導電性粒子の含有量が85 〜95 重量% 、厚さは、0.5 〜 3.0 μ m で構成されており、シートの全光透過率>80%、かつ、抵抗値>10Ω/□の透明導電性シートを実現できる。
【0011】
それに対し、本発明の塗布型の透明導電性シートにおいて、これまで不可能と考えられてきた、抵抗値≦10Ω/□と透過率>80%の両立を実現し、その特性は、スパッタ膜などの透明導電膜の特性に匹敵する。
【0012】
次に、本発明の透明導電性シートの製造方法について説明する。
【0013】
本発明の透明導電膜の製造方法は、金属でコートされた導電性酸化物粒子を作製する工程と、上記導電性酸化物粒子と樹脂成分とを含むコーティング組成物を作製する工程と、透明基材の上に、上記コーティング組成物を塗布して塗膜を形成する工程とを含む。図1は、本発明の製造方法により得られる透明導電膜の一例を示す概略断面図である。図1において、透明導電膜12は、透明基材11の一方の主面に設けられている。
(金属でコートされた導電性酸化物粒子の作製)
本発明で用いるコアの透明導電性粒子は、透明性と導電性を兼ね備えた粒子であればよく、窒化物インジウム、スズ、亜鉛、カドミウム、インジウムの金属酸化物のいずれか1種類以上を主成分として、スズ、アンチモン、アルミニウム、ガリウムがドープされた導電性酸化物粒子で、たとえば、アンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)、スズ含有酸化インジウム粒子(ITO)、アルミニウム含有酸化亜鉛粒子(AZO)、ガリウム含有酸化亜鉛粒子(GZO)等が挙げられるが、とくに、ITOが、透明性、導電性や化学特性に優れていて好ましい。ただ、透明導電性粒子は、透明性と導電性を兼ね備えた粒子であればよい。
【0014】
コア粒子表面にコートする方法としては、CVDや真空蒸着などの真空系の物理的手法、攪拌エネルギーによるメカノケミカル法、さらには、有機溶媒中で、コア粒子表面に有機金属材料を分解析出させる化学的手法などが考えられる。
大型の設備を必要としないメカノケミカル法の一例としては、ボールミルやヘンシェルタイプの攪拌ミキサーなどによる表面改質法が挙げられ、コアの透明導電性粒子と該当する金属とを密閉容器の中にいれ、高速回転させることで、コア粒子表面が金属コートされた導電性酸化物微粒子が合成できる。
また、コート時、コア粒子ならびに金属粒子が酸化することを防ぐため、チッソ、アルゴン、水素などの不活性ガスにて封入しておくほうが好ましい。もしくは、コート処理後に、水素ガス気流下、100〜500℃の加熱還元処理を行っても良い。
【0015】
用いる金属としては、融点が低く、低エネルギーにより化学的に結合する材料が好ましく、ガリウム、インジウム、スズなどが挙げられる。
コートする重量比としては、コア粒子重量に対し、1〜20重量%が好ましく、均一コートの観点より、2〜10重量%がさらに好ましい。1重量%以下の場合は、コア粒子の表面をコートすることができず、また、20重量%以上の場合は、コア粒子間の結合凝集が激しく、未被覆導電性酸化物粒子と混合させることが困難となる。
【0016】
上記コア粒子の1次粒子径は5〜150nmであることが好ましい。一次粒子径が5nm未満であると、結晶性の良い粒子を得ることが難しく、一方、150nmよりも一次粒子径が大きいと、透明性が低下してしまうため、好ましくない。一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測したときに、粒界で区切られた1つ1つの粒子100個の粒子径を平均した平均粒子径と定義する。
(透明導電性塗膜層用塗料の作製)
通常の透明導電性塗膜層用塗料は、上記透明導電性粒子を、透明導電膜層中の含有量が80〜99重量%の範囲になるようにバインダ溶液中に添加して、分散させる。上記含有量が80重量%より小さい場合には、透明性は良好であるが導電性粒子の充填率が低く、バインダ成分の割合が大きいために導電性粒子が高密度になりにくく、高い導電性を得にくい。また含有量が99重量%より多い場合には、バインダが少ないため、導電性粒子を均一に分散することが困難になるため好ましくない。したがって上記無機粒子の含有率は、80〜99重量%が好ましく、より好ましくは90〜98重量%の範囲である。
【0017】
本発明の金属コートした導電性酸化物粒子の場合は、全体の導電性酸化物粒子中の割合として20〜70%となるように金属コートした導電性酸化物粒子を添加し、通常の透明導電性塗膜層用塗料と同様に均一となるようにバインダ溶液中で混合・分散させる。該割合が20%よりも小さいと、シート抵抗を10Ωとすることが困難になるため好ましくない。また70%より大きいと、シート抵抗は10Ωとすることが可能であるが、透明性が低下し、80%以上とすることが困難になるため好ましくない。
【0018】
上記導電性酸化物粒子を分散させるバインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル− 酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル− ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などがあり、これらの中から、1 種または2 種以上が組み合わせて用いられる。とくに、アクリル樹脂は、光学特性と分散性の良好な樹脂として好ましく使用される。ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどが挙げられる。
【0019】
また、無機粒子および導電性酸化物粒子の分散性を向上するための分散剤を添加することもできる。このような分散剤としては、従来から公知のものをいずれも使用することができる。
【0020】
さらに、混合・分散させる手段としては、特に限定されるものではないが、たとえば、ボールミル、サンドミル、ジェットミル、超音波分散機、ペンイントジェーカなどが挙げられる。
【0021】
本発明において、透明導電性塗膜を形成するための透明基板としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されている基板あるいは基材をすべて使用できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどからなる、厚さが通常3〜300μmのフィルムまたはシートが用いられる。また基板は、特にフレキシブルである必要はなく、ガラス板のような硬質の基板も使用できる。
【0022】
なお、これらの基板には、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。さらに、膜の密着性を向上させるために、基板表面に易接着層( プライマー)を設けたり、またはコロナ処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を行っても良い。
【0023】
導電性塗膜層用塗料の調製に用いる有機溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶剤、エタノール、イソプロパノールなどのアルコ― ル系溶剤のほか、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0024】
(透明導電性塗膜層の作製)
まず、上記の方法により作製した透明塗膜層用塗料を、基板上に塗布する。塗布方法は、特に限定されるものではないが、例えばダイコーター、バーコーター、アプリケータ、スクリーン塗布、グラビア塗布、マイクログラビア塗布、スライド塗布、カーテン塗布、スプレー塗布などにより塗布される。
【0025】
塗布により形成される透明塗膜層の厚さは、特に限定されるものではないが、なるべく高い透明性を示し、カレンダ処理あるいはプレス処理( 以下、「プレス処理等」あるいは単に「プレス処理」ともいう) 前の乾燥後の厚さが0.5 〜 1 0 μ m になるように設定する。塗膜層の厚さが0.5 μ m 以下では、透明性の面では問題ないが、透明導電性層の導電性粒子が均一に高密度化されにくくなる。塗膜厚さが1 0 μ m 以上でも特に問題はないが、高い透明性を示すことが難しくなり、また、塗料を多量に使用することとなり、メリットがない。したがって無機粒子を含む下層透明塗膜層は、プレス処理等を施す前の段階において、0.5 〜 2 0 μ m が好ましく、1 〜 1 0 μ m がより好ましい。プレス処理等を施した後の下層透明塗膜層の厚さは0.5 〜 1 0 μ m が好ましく、1 〜 5 μ m がより好ましい。
【0026】
透明塗膜層上に他の保護液役割を持たせた膜を、二層以上の多層膜であっても良い。例えば、屈折率や紫外線透過率、赤外線透過率等において、異なる光学特性を持つ層を何層かに塗り分け、最上層に透明導電性塗膜層を形成しても良い。この場合でも、透明導電性塗膜層のプレス後の総膜厚が0.5 〜 1 0 μ m になるように設定することが好ましいが、特に透明性が損なわれなければ、光学特性等の効果を高めるために、1 0μ m 以上であってもかまわない。
このような塗布により形成される透明導電性塗膜層の厚さは、プレス処理等の効果が現れる範囲とし、かつ高い導電性を得るために、プレス処理前の乾燥後の厚さが0.5〜20μmになるように設定する。塗膜の厚さが0.5μm 以下でも、プレス処理等の効果は透明導電性塗膜層全体に及び、かつ透明性の面でも問題はないが、高い導電性が得られにくくなる。また塗膜厚さが20μmを超えると、塗膜全体にプレス処理等の効果が現われにくく、含有されている導電性酸化物粒子全てが高密度化されにくく、かつ高い透明性が得られにくくなるため好ましくない。したがって導電性酸化物粒子を含む透明導電性塗膜層は、プレス処理等を施す前の段階において、0.5〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。プレス処理等を施した後の透明導電性塗膜層の厚さは0.5〜6μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0027】
作製した透明導電性塗膜に対してプレス加工処理やカレンダ処理をすることにより、導電性酸化物粒子が高充填化され、その結果、透明導電性塗膜層中の平均空孔率が減少し、膜の導電性、光学特性が向上する。光学特性においては、特に粒子間空隙による散乱光が減少することにより、光散乱強度を表す値であるヘイズ値が著しく減少し、透明性の高いものとなる。
【0028】
カレンダ処理する場合、処理速度は1〜30m/分、熱処理温度は、上記バインダを構成している樹脂のガラス転移温度(Tg)に対し、Tg±50℃の範囲内、加圧条件は面圧力9.8×10〜 9.8×10Pa(1〜100kg/cm2 ) の範囲内が有効である。また、プレス処理する場合、熱処理温度は、上記バインダを構成している樹脂のガラス転移温度( T g ) に対し、T g ± 5 0 ℃ の範囲内、加圧条件は面圧力9.8×10〜 9.8×10Pa ( 1 〜 1 0 0 k g/ c m 2 ) の範囲内が有効である。
【実施例】
【0029】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に詳細に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
<金属コート導電性酸化物粒子の調製>
一次粒子径25nmの導電性酸化物粒子としてITOを10gと所定量の一次粒子径300μmの金属粒子としてガリウムを100ccのテフロン(登録商標)瓶にいれ密閉する。そのテフロン(登録商標)瓶を150℃の恒温槽に4時間入れた後、ペイントシェーカーにて30分混合攪拌する。その後、再度、同様の作業を2回繰り返し、導電性酸化物粒子上に金属をコートした。その結果、粒子径30nmの金属コート導電性酸化物粒子を調整した。
<導電性塗料の調製>
所定量の上記金属コート導電性酸化物粒子と元となる未被覆導電性酸化物粒子を合計で2gとなるように秤量し、密閉可能なテフロン(登録商標)容器に入れる。その後、エチレングリコール18gを混合し、さらに0.1mm径のジルコニアビースを150g入れて、ペイントコンディショナーにより、分散処理を施して、実施例および比較例の透明導電膜形成用塗料を調製した。
【0031】
次に、以下のようにしてコーティング組成物を調製した。
【0032】
<コーティング組成物>
紫外線を遮蔽したプラスチック製ビンに、ガリウムをコートとしたITO分散体組成物を下記の成分を計り取り・攪拌して、30gのコーティング組成物1を調製した。
(1)ITO分散体組成物 20.3g
(2)ライトアクリレート1,6−HX(共栄社化学製) 1.02g
(3)イルガキュア907 0.10g
(チバスペシャルティケミカルズ社製)
(4)メチルエチルケトン(和光純薬社製) 1.50g
(5)トルエン(和光純薬社製) 1.50g
(6)シクロヘキサノン(和光純薬社製) 5.63g
コーティング組成物1の不揮発固形成分中のITO粒子の重量含有率は81.0%であり、ITOの比重を7.1、アクリル樹脂の比重を1.1として計算すると、体積含有率は39.5%であった。
<透明導電膜形成および膜特性評価>
上記の透明導電膜形成用塗料を用いて、50mm×50mm×青板ガラス上にスピンコートしたところ、良好にベタ膜を形成することができ、60℃で減圧乾燥後、大気雰囲気中で30分間200℃加熱処理を施すことにより、透明導電膜を形成することができた。形成した透明導電膜の膜特性を評価するために、シート抵抗測定、透過率測定、膜厚測定を行なった。その測定結果を表1に示す。
[実施例2〜5]
金属コート導電性酸化物粒子と未被覆導電性粒子の混合割合を変化させた透明導電膜を、実施例1と同様にスピンコートによる成膜を行ない、膜特性の比較を行なった。それらの透明導電膜形成用塗料を用いて、50mm×50mm×青板ガラス上に、2000rpmで10秒間回転する条件で、スピンコートを行ない、60℃で減圧乾燥後、大気雰囲気中で30分間200℃加熱処理を施すことにより、透明導電膜を形成し、透明導電膜の膜特性を評価した。その測定結果を表1に示す。
<シート抵抗測定>
抵抗率測定装置ロレスタAP MCP−T400(三菱化学(株))により、シート抵抗を測定した。
<透過率測定>
紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光(株))により、透過率を測定した。ガラス基板の透過率を100%として、ガラス基板上に形成した透明導電膜の透過率を概算し、550nmにおける透過率を透過率とする。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
金属コートした導電性酸化物粒子を特定の割合で混合することで、塗布型の透明導電性シートにおいて、良好な導電性と透明性を兼ね備えた透明導電膜を提供することができ、タッチパネルや電子ペーパーなどのフレキシブルデバイスの性能向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0035】
11 透明基材
12 透明導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の薄膜でコートされた導電性酸化物微粒子と未被覆の導電性酸化物微粒子とを含み、該金属の薄膜でコートされた導電性酸化物微粒子が全導電性酸化物微粒子に20〜70%の割合で混合された導電膜形成用塗料を基材に塗布して導電性塗膜を形成したことを特徴とする透明導電性シート。
【請求項2】
前記金属の薄膜として、インジウム、ガリウム、スズのうち少なくとも1種類を含有したことを特徴とする請求項1の導電性シート。
【請求項3】
前記導電性酸化物微粒子として、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)、アルミニウム含有酸化亜鉛粒子(AZO)、ガリウム含有酸化亜鉛粒子(GZO)、スズ含有酸化インジウム粒子(ITO)、またはスズ含有酸化インジウムをアルミニウム置換したものからなる導電性酸化物粒子を含有したことを特徴とする請求項1ないし2の透明導電性シート。
【請求項4】
前記導電性酸化物微粒子は、アルミニウム、スズ、インジウム、亜鉛、フッ素、ガリウム、アンチモンまたは珪素から選ばれる一種または二種以上の元素を含有したことを特徴とする請求項1ないし3に記載の透明導電性シート。

【図1】
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【公開番号】特開2011−34708(P2011−34708A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177540(P2009−177540)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】