説明

透明導電性フィルム、積層体、タッチパネルおよび表示装置

【課題】光透過性、耐熱性および力学的強度に優れた透明導電性フィルムおよびそれを含むタッチパネルを提供すること。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に透明導電膜を有する透明導電性フィルムであって、該基材が、示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が230〜350℃である芳香族ポリエーテル系重合体を含む、透明導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム、積層体、タッチパネルおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性部材としては、ガラス上に透明導電膜を形成した、いわゆる導電性ガラスが用いられてきた。
しかしながら、導電性ガラスは基材がガラスであるために可撓性および加工性等に劣り、透明導電膜の成膜が困難であり、さらには、タッチパネルの軽量化が困難であった。
【0003】
そのため、近年では可撓性および加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であるなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリカーボネートをはじめとする各種のプラスチックフィルムを基材とした透明導電性フィルムが使用されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−20473号公報
【特許文献2】特開2007−308675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのプラスチックフィルムは、耐熱性に劣っていた。そのため、該フィルム上に透明導電膜を成膜することが困難であった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、光透過性、耐熱性および力学的強度に優れた透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のガラス転移温度を有する芳香族ポリエーテル系重合体を含む基材から得られる透明導電性フィルムが上記課題を解決することができることを見出し、さらに、該フィルムの位相差が小さいことを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[19]を提供するものである。
【0007】
[1] 基材の少なくとも一方の面に透明導電膜を有する透明導電性フィルムであって、該基材が、示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が230〜350℃である芳香族ポリエーテル系重合体を含む、透明導電性フィルム。
[2] 示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が230〜350℃である芳香族ポリエーテル系重合体を含む基材の少なくとも一方の面に、透明導電膜を形成した後、(基材のTgマイナス20℃)以下の温度でアニール処理してなる、透明導電性フィルム。
[3] 前記透明導電膜が、酸化インジウムおよび2〜18重量%の酸化スズ(但し、透明導電膜全体を100重量%とする。)を含んでなる、[1]または[2]に記載の透明導電性フィルム。
[4] 前記透明導電膜の膜厚が20〜50nmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[5] 基材の少なくとも一方の面に、無加熱または(基材のTgマイナス20℃)以下の温度でスパッタリングしてなる無機物層を少なくとも1層有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[6] 前記無機物層の屈折率が1.4〜2.5である、[1]〜[5]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[7] 前記無機物層の膜厚が3〜70nmである、[1]〜[6]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【0008】
[8] 前記芳香族ポリエーテル系重合体が、下記式(1)で表わされる構造単位および下記式(2)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(i)を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【0009】
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0010】
【化2】

(式(2)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。)
【0011】
[9] 前記芳香族ポリエーテル系重合体が、さらに、下記式(3)で表わされる構造単位および下記式(4)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(ii)を有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【0012】
【化3】

(式(3)中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0013】
【化4】

(式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。)
【0014】
[10] 前記芳香族ポリエーテル系重合体において、前記構造単位(i)と前記構造単位(ii)とのモル比が50:50〜100:0である、[1]〜[9]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[11] 前記芳香族ポリエーテル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000〜500,000である、[1]〜[10]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[12] 前記基材の厚み30μmにおけるJIS K7105透明度試験法による全光線透過率が85%以上である、[1]〜[11]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[13] 前記基材の厚み30μmにおけるYI値(イエローインデックス)が3.0以下である、[1]〜[12]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[14] 前記基材の厚み30μmにおける厚み方向の位相差(Rth)が200nm以下である、[1]〜[13]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
[15] 静電容量タッチパネル用である、[1]〜[14]のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【0015】
[16] [1]〜[15]のいずれかに記載の透明導電性フィルムの少なくとも一方の面に、偏光板、反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜および防汚膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の層を備えてなる積層体。
[17] [1]〜[15]のいずれかに記載の透明導電性フィルムまたは[16]に記載の積層体を含むタッチパネル。
[18] 静電容量タッチパネルである、[17]に記載のタッチパネル。
[19] [17]または[18]に記載のタッチパネルを含む、表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透明導電性フィルムは、光透過性、耐熱性、耐熱着色性および力学的強度に優れ、位相差が小さい。そのため、本発明の透明導電性フィルムは、容易に製造され、タッチパネル用、特に、低反射タッチパネル用、静電容量タッチパネル用として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪透明導電性フィルム≫
本発明の透明導電性フィルムは、基材の少なくとも一方の面に透明導電膜を有し、該基材は、示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が230〜350℃である芳香族ポリエーテル系重合体(以下「重合体(I)」ともいう。)を含む。
また、本発明の透明導電性フィルムは、前記重合体(I)を含む基材の少なくとも一方の面に、透明導電膜を形成した後、(基材のTgマイナス20℃)以下の温度でアニール処理することで得られる。
【0018】
<基材>
本発明で用いられる基材は、前記重合体(I)を含む。
上記重合体(I)のガラス転移温度は、好ましくは240〜330℃であり、さらに好ましくは250〜300℃である。
このような重合体(I)を含んでなる基材は、特に、優れた耐熱性および耐熱着色性を有するため、タッチパネルに好適に用いられる。また、透明導電膜を成膜する際に、該基材を加熱する際の加熱可能な温度範囲が広くなるため、成膜方法が限定されず、容易に透明導電性フィルムを製造することができる。
さらに、透明導電膜が形成された前記基材は、高温((基材のTgマイナス20℃)以下の温度)でアニール処理された場合であっても、着色がなく、高い光透過性を維持することができる。
なお、本発明において、「耐熱着色性」とは、大気中、高温(230℃)で1時間程度熱処理した際の着色のしにくさをいう。
【0019】
前記重合体(I)は、下記式(1)で表わされる構造単位(以下「構造単位(1)」ともいう。)および下記式(2)で表わされる構造単位(以下「構造単位(2)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(i)を有する重合体(以下「重合体(II)」ともいう。)であることが好ましい。重合体が構成単位(i)を有することで、ガラス転移温度が230〜350℃である芳香族ポリエーテル系重合体を得ることができる。このような重合体(II)は、透明性と耐熱着色性に優れるため、該重合体を含んでなる基材は、光透過性が高く、耐熱着色性に優れる。重合体(II)を含んでなる基材は、これらの優れた性質をバランスよく有するため、高温((基材のTgマイナス20℃)以下の温度)でアニール処理された場合であっても、着色がなく、高い光透過性を維持することができ、タッチパネル、特に静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
【0020】
【化5】

【0021】
前記式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示す。a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0または1である。
炭素数1〜12の1価の有機基としては、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の1価の有機基等を挙げることができる。
【0022】
炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0023】
前記炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0024】
前記直鎖または分岐鎖の炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基およびn−ヘプチル基等が挙げられる。
【0025】
前記炭素数3〜12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3または4の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0026】
炭素数3〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素でもよい。
【0027】
前記炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。当該芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香族環上のいずれの炭素でもよい。
【0028】
酸素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および酸素原子からなる有機基が挙げられ、中でも、エーテル結合、カルボニル基またはエステル結合と炭化水素基とからなる総炭素数1〜12の有機基等を好ましく挙げることができる。
【0029】
エーテル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12のアルキニルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基および炭素数1〜12のアルコキシアルキル基などを挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0030】
また、カルボニル基を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシル基等を挙げることができる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基およびベンゾイル基等が挙げられる。
エステル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシルオキシ基等が挙げられる。具体的には、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、シアノ基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンズイミダゾール基およびベンズトリアゾール基等が挙げられる。
【0032】
酸素原子および窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンズオキサゾール基およびベンズオキサジアゾール基等が挙げられる。
【0033】
前記式(1)におけるR1〜R4としては、炭素数1〜12の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0034】
【化6】

【0035】
前記式(2)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、mは、0または1を示す。但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1〜12の1価の有機基と同様の有機基等を挙げることができる。
【0036】
前記重合体(II)は、上記構造単位(1)と上記構造単位(2)とのモル比(但し、両者(構造単位(1)+構造単位(2))の合計は100である。)が、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から構造単位(1):構造単位(2)=50:50〜100:0であることが好ましく、構造単位(1):構造単位(2)=70:30〜100:0であることがより好ましく、構造単位(1):構造単位(2)=80:20〜100:0であることがさらに好ましい。
ここで、力学的特性とは、重合体の引張強度、破断伸びおよび引張弾性率等の性質のことをいう。
【0037】
また、前記重合体(II)は、さらに、下記式(3)で表わされる構造単位、および下記式(4)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(ii)を有してもよい。前記重合体(II)がこのような構造単位(ii)を有すると、該重合体(II)を有する基材の力学的特性が向上するため好ましい。
【0038】
【化7】

【0039】
前記式(3)中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、nは、0または1を示す。eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1〜12の1価の有機基と同様の有機基等を挙げることができる。
【0040】
炭素数1〜12の2価の有機基としては、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基等を挙げることができる。
【0041】
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基、炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0042】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基およびヘプタメチレン基等が挙げられる。
【0043】
炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基およびシクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基などが挙げられる。
【0044】
炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基およびビフェニレン基等が挙げられる。
【0045】
炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基、炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0046】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基としては、ジフロオロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、テトラクロロエチレン基、ヘキサフルオロトリメチレン基、ヘキサクロロトリメチレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基およびヘキサクロロイソプロピリデン基等が挙げられる。
【0047】
炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基としては、前記炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0048】
炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基としては、前記炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0049】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子および炭素原子と、酸素原子および/または窒素原子とからなる有機基が挙げられ、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合またはアミド結合と炭化水素基とを有する総炭素数1〜12の2価の有機基等が挙げられる。
【0050】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基としては、具体的には、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0051】
前記式(3)におけるZとしては、単結合、−O−、−SO2−、>C=Oまたは炭素数1〜12の2価の有機基が好ましく、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基または炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0052】
【化8】

【0053】
前記式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。なお、mが0の時、R7はシアノ基ではない。
【0054】
前記重合体(II)は、前記構造単位(i)と前記構造単位(ii)とのモル比(但し、両者((i)+(ii))の合計は100である。)が、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から(i):(ii)=50:50〜100:0であることが好ましく、(i):(ii)=70:30〜100:0であることがより好ましく、(i):(ii)=80:20〜100:0であることがさらに好ましい。
ここで、力学的特性とは、重合体の引張強度、破断伸びおよび引張弾性率等の性質のことをいう。
【0055】
前記重合体(II)は、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から前記構造単位(i)および前記構造単位(ii)を全構造単位中70モル%以上含むことが好ましく、全構造単位中95モル%以上含むことがより好ましい。
前記重合体(II)は、例えば、下記式(5)で表わされる化合物(以下「化合物(5)」ともいう。)および下記式(7)で表わされる化合物(以下「化合物(7)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物を含む成分(以下「(A)成分」ともいう。)と下記式(6)で表わされる化合物を含む成分(以下「(B)成分」ともいう。)とを、反応させることにより得ることができる。
【0056】
【化9】

【0057】
前記式(5)中、Xは独立してハロゲン原子を示し、フッ素原子が好ましい。
【0058】
【化10】

【0059】
前記式(7)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、Xは、独立に前記式(5)中のXと同義である。但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。
【0060】
【化11】

【0061】
前記式(6)中、Raは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、この中でも水素原子が好ましい。なお、式(6)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義である。
【0062】
上記化合物(5)としては、具体的には、2,6−ジフルオロベンゾニトリル(DFBN)、2,5−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,5−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリルおよびその反応性誘導体を挙げることができる。特に、反応性および経済性等の観点から、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、および2,6−ジクロロベンゾニトリルが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0063】
上記式(6)で表わされる化合物(以下「化合物(6)」ともいう。)としては、具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL)、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、および、その反応性誘導体等が挙げられる。上述の化合物の中でも、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0064】
上記化合物(7)としては、具体的には、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン(DFDS)、2,4'−ジフルオロベンゾフェノン、2,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、2,2'−ジフルオロベンゾフェノン、2,2'−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、2,4'−ジクロロベンゾフェノン、2,4'−ジクロロジフェニルスルホン、2,2'−ジクロロベンゾフェノン、2,2'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジクロロベンゾフェノンおよび3,3'−ジニトロ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン等を挙げることができる。これらの中でも、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホンが好ましい。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0065】
化合物(5)および化合物(7)からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物は、(A)成分100モル%中に、80モル%〜100モル%含まれていることが好ましく、90モル%〜100モル%含まれていることがより好ましい。
また、(B)成分は、必要に応じて下記式(8)で表わされる化合物を含むことが好ましい。化合物(6)は、(B)成分100モル%中に、50モル%〜100モル%含まれていることが好ましく、80モル%〜100モル%含まれていることがより好ましく、90モル%〜100モル%含まれていることがさらに好ましい。
【0066】
【化12】

【0067】
前記式(8)中、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義であり、Raは、それぞれ独立に前記式(6)中のRaと同義である。
【0068】
前記式(8)で表わされる化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2−フェニルヒドロキノン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1’−ビ−2−ナフトール、1,1’−ビ−4−ナフトール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよびその反応性誘導体等が挙げられる。上述の化合物の中でも、レゾルシノール、4,4'−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましく、反応性および力学的特性の観点から、4,4'−ビフェノールが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0069】
前記重合体(II)は、より具体的には、以下に示す方法(I')で合成することができる。
方法(I'):
(B)成分を有機溶媒中でアルカリ金属化合物と反応させて、(B)成分(化合物(6)および/または化合物(8)等)のアルカリ金属塩を得た後に、得られたアルカリ金属塩と、(A)成分とを反応させる。なお、(B)成分とアルカリ金属化合物との反応を(A)成分の存在下で行うことで、(B)成分のアルカリ金属塩と(A)成分とを反応させることもできる。
【0070】
反応に使用するアルカリ金属化合物としては、リチウム、カリウムおよびナトリウム等のアルカリ金属;水素化リチウム、水素化カリウムおよび水素化ナトリウム等の水素化アルカリ金属;水酸化リチウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ金属;炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩などを挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0071】
アルカリ金属化合物は、前記(B)成分中の全ての−O−Raに対し、アルカリ金属化合物中の金属原子の量が通常1〜3倍当量、好ましくは1.1〜2倍当量、さらに好ましくは1.2〜1.5倍当量となる量で使用される。
【0072】
また、反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチルラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)およびトリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)などを使用することができる。これらの溶媒の中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびジメチルスルホキシド等の誘電率の高い極性有機溶媒が特に好適に用いられる。
【0073】
さらに、前記反応の際には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールなどの水と共沸する溶媒をさらに用いることもできる。
【0074】
(A)成分と(B)成分の使用割合は、(A)成分と(B)成分の合計を100モル%とした場合に、(A)成分が好ましくは45モル%以上55モル%以下、より好ましくは50モル%以上52モル%以下、さらに好ましくは50モル%を超えて52モル%以下であり、(B)成分が好ましくは45モル%以上55モル%以下、より好ましくは48モル%以上50モル%以下であり、さらに好ましくは48モル%以上50モル%未満である。
【0075】
また、反応温度は、好ましくは60℃〜250℃であり、より好ましくは80℃〜200℃の範囲である。反応時間は、好ましくは15分〜100時間、より好ましくは1時間〜24時間の範囲である。
【0076】
前記重合体(I)は、ポリイミド系重合体の合成に必要なイミド化のための高温処理が不要であるため、重合体の製造プロセス負荷が低く、容易に重合体を製造することができる。
【0077】
前記重合体(I)は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(カラム:TSKgelα―M、展開溶剤:テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう。)で測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは15,000〜400,000、さらに好ましくは30,000〜300,000である。
【0078】
前記重合体(I)は、熱重量分析法(TGA)で測定した熱分解温度が、好ましくは450℃以上、より好ましくは475℃以上、さらに好ましくは490℃以上である。
【0079】
前記基材の製造方法としては、特に制限されないが、前記重合体(I)を含む樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜から有機溶媒を除去することで基材を製造する方法が挙げられる。
【0080】
前記樹脂組成物としては、前記の方法(I')で得られた、重合体(II)と有機溶媒との混合物をそのまま使用することができる。このような樹脂組成物を用いることで、容易に、安価に基材を製造することができる。
【0081】
また、前記樹脂組成物は、前記の方法(I')で得られた重合体(II)と有機溶媒との混合物から、重合体(II)を固体分として単離(精製)した後、有機溶媒に再溶解して樹脂組成物を調製することもできる。
前記重合体(II)を固体分として単離(精製)する方法は、例えば、メタノール等の重合体(II)の貧溶媒に重合体を再沈殿させ、その後ろ過し、次いで減圧乾燥すること等により行うことができる。
【0082】
また、前記重合体(II)を溶解する有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびγ−ブチロラクトンが好適に用いられ、塗工性、経済性の観点から、好ましくは、塩化メチレン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンが好適に使用される。これらの溶媒は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0083】
前記樹脂組成物中の重合体(I)の濃度は、重合体の分子量にもよるが、通常、5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%である。組成物中の重合体(I)の濃度が前記範囲にあると、厚膜化可能で、ピンホールが生じにくく、表面平滑性に優れる基材を形成することができる。
【0084】
なお、樹脂組成物の粘度は、重合体の分子量や濃度にもよるが、好ましくは50〜100,000mPa・s、より好ましくは500〜50,000mPa・s、さらに好ましくは1000〜20,000mPa・sである。組成物の粘度が前記範囲にあると、成膜中の組成物の滞留性に優れ、支持体から流れ落ちることが少なく、厚みの調整が容易であるため、基材の成形が容易である。
【0085】
また、前記基材は、本質的に前記重合体(I)のみからなることが好ましいが、必要によりさらに老化防止剤を配合させることができ、老化防止剤を配合することで、得られる基材の耐久性をより向上させることができる。
老化防止剤としては、好ましくはヒンダードフェノール系化合物を挙げることができる。
【0086】
本発明で使用することのできるヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス[2−メチル−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−5−tert−ブチルフェニル]ブタン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、および、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどを挙げることができる。
本発明において、老化防止剤は、重合体(I)100重量部に対して0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
【0087】
前記樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法およびドクターブレードを用いる方法等が挙げられる。
【0088】
塗膜の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜250μmであり、好ましくは2〜150μmであり、より好ましくは5〜125μmである。
前記支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよびSUS板などが挙げられる。
【0089】
また、塗膜から前記有機溶媒を除去する方法としては、特に制限されないが、例えば、塗膜を加熱する方法が挙げられる。塗膜を加熱することにより、該塗膜中の有機溶媒を蒸発させて除去することができる。前記加熱の条件は、有機溶媒が蒸発すればよく、基板や重合体に応じて適宜決めればよいが、例えば加熱温度は30℃〜300℃であることが好ましく、40℃〜250℃であることがより好ましく、50℃〜230℃であることがさらに好ましい。
【0090】
また、加熱時間としては、10分〜5時間であることが好ましい。なお、加熱は二段階以上で行ってもよい。具体的には、30〜80℃の温度で10分〜2時間乾燥後、100℃〜250℃でさらに10分〜2時間加熱するなどである。また、必要に応じて、窒素雰囲気下、もしくは減圧下にて乾燥を行ってもよい。
【0091】
得られた基材は、支持体から剥離して用いることが好ましいが、透明な支持体を用いる場合には、剥離せずにそのまま用いることもできる。
【0092】
前記基材の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜250μm、より好ましくは2〜150μm、さらに好ましくは、10〜125μmである。
前記基材を用いてタッチパネルを製造する場合には、該基材の位相差、得られるタッチパネルの軽量化および低背化等を考慮すると、基材の膜厚は薄いことが好ましい。
【0093】
また、前記基材は、Rigaku社製8230型DSC測定装置(昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が、230〜350℃であることが好ましく、240〜330℃であることがより好ましく、250〜300℃であることがさらに好ましい。
前記基材が、このようなガラス転移温度を有すると、透明導電膜を成膜する際に、該基材を加熱する際の加熱可能な温度範囲が広くなるため、成膜方法が限定されず、容易に透明導電性フィルムを製造することができる。
【0094】
また、前記基材は、厚みが30μmである場合に、JIS K7105透明度試験法における全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、ヘイズメーターSC−3H(スガ試験機社製)を用いて測定することができる。
前記基材は、厚みが30μmである場合に、波長400nmにおける光線透過率が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。波長400nmにおける光線透過率は、紫外・可視分光光度計V−570(JASCO社製)を用いて測定することができる。
前記基材の透過率がこのような範囲にあることで、該基材から得られる透明導電性フィルムは光透過性に優れ、タッチパネル等に好適に用いることができる。
【0095】
前記基材は、厚みが30μmである場合に、YI値(イエローインデックス)が、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。YI値は、スガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定することができる。YI値がこのような範囲にあることで、着色のしにくい基材を得ることができ、透明導電性フィルムとして好適に用いることができる。
【0096】
また、前記基材は、厚みが30μmである場合に、熱風乾燥機にて大気中230℃で1時間の加熱を行った後のYI値が3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。YI値がこのような範囲にあることで、高温でも着色のしにくい基材を得ることができ、光学特性に優れ、かつ高い導電性を有する透明導電性フィルムを得ることができる。
【0097】
前記基材は、波長633nmの光に対して、好ましくは1.55〜1.75、より好ましくは1.60〜1.70の屈折率を有する。屈折率は、ヘイズメーターSC−3H(スガ試験機社製)を用いて測定することができる。
【0098】
前記基材は、引張強度が、50〜200MPaであることが好ましく、80〜150MPaであることがより好ましい。引張強度は、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
前記基材は、破断伸びが、5〜100%であることが好ましく15〜100%であることがより好ましい。破断伸びは、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
前記基材は、引張弾性率が、2.5〜4.0GPaであることが好ましく、2.7〜3.7GPaであることがより好ましい。引張弾性率は、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
【0099】
前記基材は、厚みが30μmである場合に、厚み方向の位相差(Rth)が、200nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。位相差は、大塚電子社製RETS分光器を用いて測定することができる。
前記基材が、このような低い位相差を有すると、光学等方性の透明導電性フィルムを得ることができ、該基材をタッチパネル等に用いる場合、表示面に着色や干渉縞が表れて、表示品位が低下することを好適に防ぐことができる。そのため、前記基材は、タッチパネルに用いる透明導電性フィルムの基材として好適に使用することができる。
【0100】
前記基材は、Seiko Instruments社製SSC−5200型TMA測定装置を用いて測定した線膨張係数が、好ましくは80ppm/K以下、より好ましくは75ppm/K以下である。
前記基材は、湿度膨張係数が、15ppm/%RH以下であることが好ましく、12ppm/%RH以下であることがより好ましい。湿度膨張係数は、MA(SIIナノテクノロジー社製、TMA−SS6100)湿度制御オプションを用いて測定することができる。基材の膨張係数が前記範囲にあると、基材の寸法安定性(環境信頼性)が高いことを示すため、タッチパネルとしてより好適に用いることができる。特に、高環境信頼性が要求される車載用カーナビゲーションなどに好適に用いることができる。
【0101】
<透明導電膜>
前記透明導電膜は、前記基材の少なくとも一方の面に形成される。本発明において、「基材の少なくとも一方の面に形成される」とは、基材の少なくとも一方の面上に他の層を介せず形成される場合、および/または、基材の少なくとも一方の面に他の層を介して形成される場合のことをいう。つまり、前記透明導電膜は、前記基材上に直接形成されてもよいし、後述する無機物層を介して形成されてもよいが、後述する無機物層等を介して形成されることが、結晶化度の高い透明導電膜を得る、光透過性の高い透明導電性フィルムを得る、などの点から好ましい。
【0102】
前記透明導電膜としては、透明であって、導電性を示す膜であれば特に制限されないが、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化インジウムスズ(ITO)および酸化インジウム亜鉛(IZO)などの金属酸化物膜や、これらの金属酸化物を主体とする複合膜、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウムおよびパラジウムなどの金属膜が挙げられる。
【0103】
前記透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)からなる膜を用いる場合には、機械強度を高めるため、得られる薄膜を結晶化させるため、薄膜を低抵抗にする等のために、透明導電膜形成用材料として、好ましくは酸化インジウムおよび2〜18重量%の酸化スズを含む材料、より好ましくは82〜98重量%酸化インジウムおよび2〜18重量%の酸化スズを含む材料、さらに好ましくは85〜96重量%酸化インジウムおよび4〜15重量%の酸化スズを含む材料を用いることが望ましい。但し、透明導電膜形成用材料全体を100重量%とする。
【0104】
前記透明導電膜の形成方法としては、特に制限されないが真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、化学蒸着(CVD)法などの公知の方法を挙げることができるが、膜の均一性や基材への薄膜の密着性の観点から、スパッタリング法で透明導電膜を形成することが好ましい。
【0105】
前記透明導電膜を形成する際には、本発明の効果を損なわない限り、予め前記基材の表面に周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、易接着剤などを塗布しておいてもよい。また、前記基材と透明導電膜との密着性を向上させるため、本発明の効果を損なわない限り、前記基材表面を予めコロナ処理、プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理などしてもよい。
【0106】
また、本発明の透明導電性フィルムは、前記基材の少なくとも一方の面に形成した透明導電膜を、(基材のTgマイナス20℃)以下、好ましくは(基材のTgマイナス130℃)〜(基材のTgマイナス30℃)でアニール処理することで得ることができる。このアニール処理により、低抵抗の透明導電膜を有する透明導電性フィルムを得ることができる。
前記基材は、重合体(I)を含んでなるため、前記アニール処理を高温で行うことができる。このため、より抵抗の小さい透明導電膜を有する透明導電性フィルムを得ることができる。
前記アニール処理は、大気中で行えばよいが、必要により、所望のガス雰囲気下、加圧下で行ってもよい。
【0107】
本発明の透明導電性フィルムを静電容量方式のタッチパネルに用いる場合には、前記透明導電膜をパターニングすることが好ましい。
パターニングする方法としては、前記透明導電膜上にレジストを塗布し、パターンを露光・現像により形成した後に透明導電膜を化学的に溶解させる方法、真空中で化学反応により気化させる方法、レーザーにより透明導電膜を昇華させる方法などが挙げられるが、パターンの形状、精度等により、適宜選択できる。
【0108】
前記透明導電膜の厚さは、好ましくは20〜50nmであり、より好ましくは20〜40nmである。透明導電膜の厚みが、前記範囲にあることで、低抵抗と高い透明性とのバランス等に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0109】
前記基材は、前記重合体(I)を含むため、ガラス転移温度が高い。そのため、高温加熱が必要な方法であっても、基材上に透明導電膜を形成することができる。
【0110】
また、ポリチオフェン系やポリアニリン系の導電性ポリマーを前記基材上に塗布し、成膜することで透明導電膜を形成しても良い。
前記透明導電膜は1層でもよいし、多層からなっていてもよい。多層の場合には、合計膜厚が前記範囲となるように調整することが好ましい。前記透明導電膜が多層からなる場合には、同一の材料からなる多層膜であってもよいし、異なる材料からなる多層膜であってもよい。
【0111】
本発明の透明導電性フィルムは、三菱化学(株)製の低抵抗率計「ロレスタ−GP」を用いて測定した比抵抗値(体積抵抗値)が好ましくは2×10-3Ω・cm以下であり、さらに好ましくは5×10-4Ω・cm以下である。比抵抗値が前記範囲にあることで、導電性に優れるフィルムとなり、このようなフィルムを含むタッチパネルは、細かい動きにも正確に素早く反応できるため好ましい。また、表面抵抗値としては、好ましくは300Ω/□以下、さらに好ましくは150Ω/□以下、特に好ましくは100Ω/□以下である。このようなフィルムを含むタッチパネルは、細かい動きにも正確に素早く反応できるため好ましい。
【0112】
<無機物層>
本発明の透明導電性フィルムは、結晶化度の高く、光透過性の高い透明導電性フィルムを得るなどの点から前記基材の少なくとも一方の面に、無機物層を少なくとも1層有することが好ましく、前記基材上に直接形成されることがより好ましい。
なお、前記無機物層は、前記透明導電膜と異なる材料からなる層のことをいう。
【0113】
前記無機物層は、屈折率が1.4〜2.5の範囲にある層であることが好ましく、このような無機物層としては、酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物等の無機物を含んでなる層が挙げられる。
前記無機物としては、酸化マグネシウム(1.6)、二酸化珪素(1.5)、フッ化マグネシウム(1.4)、フッ化カルシウム(1.3〜1.4)、フッ化セリウム(1.6)、フッ化アルミニウム(1.3)、酸化チタン(2.4)、酸化ジルコニウム(2.4)、硫化亜鉛(2.3)、酸化タンタル(2.1)、酸化亜鉛(2.1)、酸化インジウム(2.0)、酸化ニオブ(2.3)、酸化タンタル(2.2)等が挙げられる。なお、上記括弧内の数値は屈折率を表す。
【0114】
前記無機物層の形成方法としては、特に制限されないが真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、化学蒸着(CVD)法などの公知の方法を挙げることができるが、得られる層(膜)の均一性や基材への薄膜の密着性の観点から、スパッタリング法で無機物層を形成することが好ましい。
スパッタリング法で無機物層を形成する際の条件としては、無加熱、または、(基材のTgマイナス20℃)以下の温度が好ましく、必要により、アルゴンガス、酸素等の雰囲気下、減圧下で行ってもよい。
加熱下でスパッタする場合には、40℃〜(基材のTgマイナス30℃)がより好ましい。
【0115】
前記無機物層を形成する際には、本発明の効果を損なわない限り、予め前記基材の表面に周知の種々の添加剤や安定剤などを塗布しておいてもよいし、前記基材表面等を予めコロナ処理、プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理などしてもよい。
【0116】
前記無機物層の厚さは、好ましくは3〜70nmであり、より好ましくは5〜65nmである。無機物層の厚みが、前記範囲にあることで、光透過性の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0117】
≪積層体≫
前記積層体は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記透明導電性フィルムの少なくとも一方の面に、偏光板、反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜および防汚膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の層を備える。
前記偏光板は、基材の透明導電膜が積層された面と反対側の面に、積層されていることが好ましい。
【0118】
前記偏光板は、円偏光板であってもよく、直線偏光板であってもよいが、本発明の積層体をタッチパネルに用いる場合には、その視認性の向上のため、円偏光板を用いることが好ましい。
前記円偏光板は、1枚の直線偏光板と1枚または2枚以上の位相差板を含んでなることが好ましい。偏光板と透明導電性フィルムとを積層する方法は特に制限されないが、本発明の効果およびタッチパネルとしての性質等を損なわない接着剤を用いて積層することができる。
【0119】
また、透明導電性フィルムの表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止、傷消しおよび指紋等の汚れの防止などの目的で、反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜や防汚膜などの機能膜を適宜設けることができる。さらに、アンチニュートンリング処理を行ってもよい。
本発明の透明導電性フィルムをタッチパネルに用いる場合、前記反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜および防汚膜は、指やペンの触れる面に形成されることが好ましく、前記透明導電膜の基材が積層された面と反対側の面に形成されることが好ましい。
【0120】
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤を含む溶液を透明導電性フィルム上に、前記と同様に溶融成形およびキャスティング等することによって製造することができ、また、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をバーコーター等で透明導電性フィルム上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによって製造することができる。
【0121】
前記反射防止膜としては、特に制限されず、蒸着にて形成する誘電体多層膜、ウェットコーティングによりフッ素化合物または中空シリカ等からなる単一の反射防止膜、屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層を積層してなる膜等が挙げられる。
【0122】
ハードコート剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。市販品としては東洋インキ製造株式会社製LCH、LAS、荒川化学工業株式会社製ビームセット、ダイセル・サイテック株式会社製EBECRYL、UVACURE、JSR株式会社製オプスター等が挙げられる。
【0123】
これらハードコート剤等のコーティング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらコーティング剤は透明導電性フィルムの片面のみにコートしてもよいし、両面にコートしてもよい。両面にコートする場合、両面それぞれに異なるものをコートしてもよいし、両面とも同じものをコートしてもよい。
【0124】
前記防汚膜は、撥水性および/または撥油性であることにより、表面を保護し、さらに防汚性を高めることができ、本発明の効果を損なわない限り、いかなる材料からなる膜であっても制限されるものではないが、有機化合物、好ましくはフッ素含有有機化合物からなる層が適している。
撥水性を示すものとして、例えば、疎水基を有する化合物がよく、フルオロカーボンやパーフルオロシラン等の高分子化合物等が適している。なお、UV硬化性樹脂中に防汚性能を持たせることも可能である。
【0125】
前記防汚膜は、その材料に応じて真空蒸着法、プラズマCVD法などの真空成膜プロセスや、マイクログラビア、スクリーン印刷等のウェットプロセスの各種コーティング方法を用いて形成することができる。
【0126】
本発明の透明導電性フィルムに機能膜を形成する場合には、透明導電性フィルムと機能膜との密着性を上げる目的で、透明導電性フィルムの表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0127】
≪タッチパネル≫
前記タッチパネルは、前記透明導電性フィルムまたは前記積層体を含む。前記タッチパネルは、前記透明導電性フィルムを含むため、光透過性が高く、無色であり、耐久性、耐水性が高く、動作可能温度範囲が広い。このため、様々な表示装置に使用することができる。
本発明によれば、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等、何れの方式のタッチパネルも製造することができる。
前記タッチパネルとしては、光透過性、耐熱性および耐熱着色性等に優れる前記透明導電性フィルムを含むため、抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルが好ましく、静電容量方式のタッチパネルがより好ましい。
【0128】
前記抵抗膜方式のタッチパネルとしては、例えば、指やペンなどが接触される側(外部)から、前記本発明の透明導電性フィルムまたは前記本発明の積層体と、該フィルムまたは積層体の透明導電膜と空隙を保って対向する透明導電膜を含むタッチパネルが挙げられる。
タッチパネルが、前記積層体を含むと、日光や蛍光灯等の外部からの光の反射光量が抑えられた低反射タッチパネルとなるため好ましい。
低反射タッチパネルは本質的にはこれらの要素で成り立つが、実際にタッチパネルの動作を実現するために、透明導電膜を支持する部材やコート材、空隙を形成するスペーサーなどが用いられる。透明導電膜を支持する部材には制御された光学特性が必要であり、前記重合体(I)などが好適である。
【0129】
また、前記静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、前記基材の四隅に電極が設けられた、前記透明導電性フィルムまたは前記積層体、からなる表面型静電容量方式のタッチパネルや、前記基材にICが搭載され、前記透明導電膜がパターニングされた透明導電膜であって、該パターンの延在方向が互いに直交するように積層された、前記本発明の透明導電性フィルムまたは前記本発明の積層体、からなる投影型静電容量方式のタッチパネルが挙げられる。
【0130】
≪表示装置≫
前記表示装置は、前記タッチパネルを含む。
前記表示装置は、前記優れた特性を有するタッチパネルを含むため、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、カーナビ、タブレットPC、販売機器、ATM、FA機器等に制限なく使用することができる。
【実施例】
【0131】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0132】
(1)構造分析
下記実施例および比較例で得られた重合体の構造分析は、IR(ATR法、FT−IR,6700、NICOLET社製)およびNMR(ADVANCE500型,BRUKAR社製)により行った。
【0133】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
下記実施例および比較例で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(カラム:TSKgelα―M、展開溶剤:THF)を用いて測定した。
【0134】
(3)ガラス転移温度(Tg)
下記実施例および比較例で得られた重合体または評価用フィルムのガラス転移温度は、Rigaku社製8230型DSC測定装置を用いて、昇温速度20℃/minとして測定した。
【0135】
(3')熱分解温度
下記実施例および比較例で得られた重合体の熱分解温度を熱重量分析法(TGA:窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、5%重量減少温度)により測定した。
【0136】
(4)機械的強度
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの室温における引張強度、破断伸び、引張弾性率を、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて、JIS K7127に準じて測定した。
【0137】
(5)環境安定性
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの線膨張係数をSeiko Instruments社製SSC−5200型TMA測定装置を用いて測定した。得られた評価用フィルムを一度Tgマイナス20℃まで昇温した後、3℃/minで降温した際の200〜100℃でのTMA曲線の勾配から線膨張係数を算出した。
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの湿度膨張係数をMA(SIIナノテクノロジー社製、TMA−SS6100)湿度制御オプションを用いて下記条件にて測定を実施した。
湿度条件:40%RHから70%RHに加湿した(引張法:加重5g) 温度:23℃
【0138】
(6)光学特性
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムについて、全光線透過率およびイエローインデックス(YI値)をJIS K7105透明度試験法に準じて測定した。具体的には、全光線透過率、スガ試験機社製ヘイズメーターSC−3Hを用いて測定し、YI値を、スガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定した(加熱前YI)。
また、下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムを熱風乾燥機にて大気中230℃で1時間の加熱を行った後、YI値をスガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定した(加熱後YI)。なお、測定は、JIS K 7105条件に準じて行った。
【0139】
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの波長400nmにおける光線透過率は、紫外・可視分光光度計V−570(JASCO社製)を用いて測定し、得られた評価用フィルムの屈折率は、プリズムカプラ モデル2010(Metricon社製)を用いて測定した。なお、屈折率は、波長633nmを用いて測定した。
【0140】
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの位相差(Rth)は、大塚電子社製RETS分光器を用いて測定した。なお、測定の際の基準波長は589nmであり、位相差の評価膜厚は30μmに規格化した値で示した。
【0141】
(7)比抵抗値
三菱化学(株)製の低抵抗率計「ロレスタ−GP」を用い、下記実施例および比較例で得られた透明導電性フィルムの透明導電膜の比抵抗値(Ω・cm)を測定した。
【0142】
[実施例1]
3Lの4つ口フラスコに(A)成分:2,6−ジフルオロベンゾニトリル(以下「DFBN」ともいう。)35.12g(0.253mol)、(B)成分:9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下「BPFL」ともいう。)70.08g(0.200mol)およびレゾルシノール(以下「RES」ともいう。)5.51g(0.050mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gならびにトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、Dean−Stark管および冷却管を取り付けた。
【0143】
次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をDean−Stark管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(重合体)を得た(収量95.67g、収率95%)。
【0144】
得られた重合体の物性を表1に示す。得られた重合体の構造分析および重量平均分子量の測定を行った。結果は、赤外吸収スペクトルの特性吸収が、3035(C−H伸縮)、2229cm-1(CN)、1574cm-1、1499cm-1(芳香環骨格吸収)、1240cm-1(−O−)であり、重量平均分子量が130,000であった。得られた重合体は前記構造単位(1)および(3)を有していた。
【0145】
次いで、得られた重合体をDMAcに再溶解し、重合体濃度20質量%の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタラート(PET)からなる基板上にドクターブレードを用いて塗布し、70℃で30分乾燥させ、ついで100℃で30分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムを金枠に固定し、さらに230℃、2時間乾燥して、膜厚30μmの評価用フィルムを得た。
得られた評価用フィルムの物性を表1に示す。
さらに、スパッタリング装置を用いて、得られた評価用フィルムの片面にアルゴン雰囲気下230℃、5分間の成膜条件下で透明導電膜を形成した。なお、ターゲット材料としてはITOを用いた。得られた透明導電性フィルムの比抵抗値は、2×10-4(Ω・cm)であった。
【0146】
[実施例2]
RESの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン11.41g(0.050mol)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0147】
[実施例3]
(B)成分として、BPFL70.08gおよびRES5.51gの代わりに、BPFL78.84g(0.225mol)および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン8.41g(0.025mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0148】
[実施例4]
(B)成分として、BPFL70.08gおよびRES5.51gの代わりに、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン125.65g(0.250mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0149】
[実施例5]
(B)成分として、BPFL70.08gおよびRES5.51gの代わりに、BPFL87.60g(0.250mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0150】
[実施例6]
(B)成分として、BPFL70.08gおよびRES5.51gの代わりに、BPFL78.84g(0.225mol)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン6.71g(0.025mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0151】
[実施例7]
(A)成分として、DFBN35.12gの代わりに、DFBN28.10g(0.202mol)および4,4−ジフルオロベンゾフェノン11.02g(0.051mol)を用いた以外は実施例5と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0152】
[実施例8]
(A)成分の配合量を、DFBN17.56g(0.126mol)および4,4−ジフルオロベンゾフェノン27.55g(0.126mol)に変更した以外は実施例7と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0153】
[実施例9]
(A)成分として、DFBN35.12gの代わりに、4,4−ジフルオロジフェニルスルホン(DFDS)78.84g(0.250mol)を使用した以外は実施例5と同様に行った。得られた重合体、評価用フィルムおよび透明導電性フィルムの物性を表1に示す。
【0154】
[実施例10]
前記実施例5で得られた評価用フィルムをスパッタリング装置内に配置し、ターゲットとしてNb25を用いたスパッタリングによりNb25からなる厚さ50オングストロームの無機薄膜層を形成し、その上にターゲットとしてSiを用いたスパッタリングにより、SiO2からなる厚さ60オーングストロームの無機薄膜層を形成し、その上にターゲットとしてIn23/SnO2=90/10(重量比)の酸化物混合体を用いたスパッタリングにより、ITOからなる厚さ270オングストロームの透明導電膜を形成した。なお、上記スパッタは、いずれも、アルゴンガスおよび酸素ガス流入下、無加熱の条件下で行った。
【0155】
この積層フィルムを大気中に取り出した後、大気下で200℃×10分のアニール処理を行い、透明導電性フィルム1を得た。得られた透明導電フィルム1のシート抵抗値を4探針法により測定したところ、95Ω/□という低いシート抵抗値を示した。また透明導電性フィルム1の全光線透過率をヘイズメーターにより測定したところ(JIS−7361に準拠)90%と高い全光線透過率を示した。さらに、透明導電性フィルム1を1N塩酸中に10分間浸漬した後でもシート抵抗値に変化はなく、高い結晶性を有する透明導電膜が得られていることを示した。
【0156】
[比較例1]
(B)成分として、BPFL70.08gおよびRES5.51gの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン84.06g(0.250mol)を使用した以外は、実施例1と同様に重合体と評価用フィルムを得た。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
さらに、スパッタリング装置を用いて、得られた評価用フィルムの片面にアルゴン雰囲気下150℃、5分間の成膜条件下で透明導電膜を形成した。なお、ターゲット材料としてはITOを用いた。得られた透明導電性フィルムの比抵抗値は、5×10-3(Ω・cm)であった。なお、成膜温度を実施例1と同様に230℃とした場合には、フィルムが変形し均一な透明導電膜が形成されなかった。
【0157】
[比較例2]
帝人(株)製のポリエチレンナフタレートフィルム:ネオテックスを使用し、評価は実施例1と同様の方法で行った(膜厚125μm)。フィルムの物性を表1に示す。
さらに、スパッタリング装置を用いて、上記フィルムの片面にアルゴン雰囲気下150℃、5分間の成膜条件下で透明導電膜を形成した。なお、ターゲット材料としてはITOを用いた。得られた透明導電性フィルムの比抵抗値は、7×10-3(Ω・cm)であった。なお、成膜温度を実施例1と同様に230℃とした場合には、フィルムが変形し均一な透明導電膜が形成されなかった。
【0158】
[比較例3]
温度計、攪拌機、窒素導入管、及び冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン9.70g(23.6mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(60ml)を加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物5.30g(23.6mmol)を室温で加え、そのままの温度で12時間攪拌を続けて反応させ、ポリアミック酸を含む溶液を得た。
【0159】
得られたポリアミック酸を含む溶液にNMP(75ml)を加えて希釈した後、ピリジン(7.5ml)および無水酢酸(6.7ml)を加え、110℃で6時間攪拌してイミド化を行った。その後、室温まで冷却した後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりろ物を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(重合体)を得た(収量13.5g、収率95.3%)。
【0160】
次いで、得られた重合体をDMAcに再溶解させ、20質量%の樹脂溶液を得た。該樹脂溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板上にドクターブレード(100μmギャップ)を用いて塗布し、100℃で30分乾燥させ、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムをさらに150℃、減圧下で3時間乾燥して、膜厚30μmの評価用フィルムを得た。評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0161】
さらに、スパッタリング装置を用いて、得られた評価用フィルムの片面にアルゴン雰囲気下230℃、5分間の成膜条件下で透明導電膜を形成した。なお、ターゲット材料としてはITOを用いた。得られた導電性フィルムの比抵抗値は、2×10-4(Ω・cm)であった。
【0162】
【表1】

【0163】
上記結果より、前記重合体(I)を含む基材は、耐熱性、耐熱着色性に優れることが分かる。また、前記重合体(I)を含む基材は耐熱性に優れるため、その少なくとも一方の面に透明導電膜を形成する際の成膜方法が限定されず、表面抵抗値の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。そのため、タッチパネル等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に透明導電膜を有する透明導電性フィルムであって、該基材が、示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が230〜350℃である芳香族ポリエーテル系重合体を含む、透明導電性フィルム。
【請求項2】
示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が230〜350℃である芳香族ポリエーテル系重合体を含む基材の少なくとも一方の面に、透明導電膜を形成した後、(基材のTgマイナス20℃)以下の温度でアニール処理してなる、透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記透明導電膜が、酸化インジウムおよび2〜18重量%の酸化スズ(但し、透明導電膜全体を100重量%とする。)を含んでなる、請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記透明導電膜の膜厚が20〜50nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
基材の少なくとも一方の面に、無加熱または(基材のTgマイナス20℃)以下の温度でスパッタリングしてなる無機物層を少なくとも1層有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記無機物層の屈折率が1.4〜2.5である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記無機物層の膜厚が3〜70nmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記芳香族ポリエーテル系重合体が、下記式(1)で表わされる構造単位および下記式(2)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(i)を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【化2】

(式(2)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。)
【請求項9】
前記芳香族ポリエーテル系重合体が、さらに、下記式(3)で表わされる構造単位および下記式(4)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(ii)を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【化3】

(式(3)中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【化4】

(式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。)
【請求項10】
前記芳香族ポリエーテル系重合体において、前記構造単位(i)と前記構造単位(ii)とのモル比が50:50〜100:0である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
前記芳香族ポリエーテル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000〜500,000である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
前記基材の厚み30μmにおけるJIS K7105透明度試験法による全光線透過率が85%以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項13】
前記基材の厚み30μmにおけるYI値(イエローインデックス)が3.0以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項14】
前記基材の厚み30μmにおける厚み方向の位相差(Rth)が200nm以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項15】
静電容量タッチパネル用である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムの少なくとも一方の面に、偏光板、反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜および防汚膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の層を備えてなる積層体。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムまたは請求項16に記載の積層体を含むタッチパネル。
【請求項18】
静電容量タッチパネルである、請求項17に記載のタッチパネル。
【請求項19】
請求項17または18に記載のタッチパネルを含む、表示装置。

【公開番号】特開2012−218163(P2012−218163A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82460(P2011−82460)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】