説明

透明導電性フィルム、電子機器およびタッチパネル

【課題】 十分な硬度を有し、耐擦傷性に優れ、かつ、防汚性にも優れるハードコート層を有する透明導電性フィルム、それを用いた電子機器およびタッチパネルを提供する。
【解決手段】 透明なフィルム基材11、透明導電性薄膜12およびハードコート層13を含む透明導電性フィルム10であって、前記ハードコート層13が、(A)成分:アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物、(B)成分:反応性フッ素化合物、および、(C)成分:反応性ケイ素化合物を含むハードコート形成用組成物から形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム、電子機器およびタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性薄膜としては、ガラス上に酸化インジウム薄膜を形成した、いわゆる導電性ガラスがよく知られているが、導電性ガラスは基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣り、用途によっては使用できない場合がある。そのため、近年では可撓性、加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であることなどの利点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをはじめとする各種のプラスチックフィルムを基材とした透明導電性フィルムが使用されている。
【0003】
タッチパネルに用いる透明導電性フィルムの場合は、液晶表示装置などに比べて導電性フィルムに直接接触する頻度が高いので、耐擦傷性と防汚性の両立が求められている。そこで、透明導電性フィルムにハードコート層を設け、ハードコート層の耐擦傷性と防汚性とを向上させるために、フッ素原子およびケイ素原子のいずれかの原子を有する化合物を含む硬化性組成物を用いたハードコート層が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、近年のタッチパネルの大幅な普及による適用範囲の多様化に伴い、表面が傷付いたり汚れが付着したりする機会の多様化も想定される。したがって、透明導電性フィルムには、より高いレベルでの耐擦傷性および防汚性、ならびに、これらの特性の持続が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−335984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、十分な硬度を有し、耐擦傷性に優れ、かつ、防汚性にも優れるハードコート層を有する透明導電性フィルム、それを用いた電子機器およびタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材、透明導電性薄膜およびハードコート層を含む透明導電性フィルムであって、前記ハードコート層が、下記の(A)成分、(B)成分、および(C)成分を含むハードコート形成用組成物から形成されたものであることを特徴とする。
(A)成分:アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物
(B)成分:反応性フッ素化合物
(C)成分:反応性ケイ素化合物
【0007】
本発明の電子機器は、透明導電性フィルムを備える電子機器であって、前記透明導電性フィルムが、前記本発明の透明導電性フィルムであることを特徴とする。
【0008】
本発明のタッチパネルは、透明導電性フィルムを備えるタッチパネルであって、前記透明導電性フィルムが、前記本発明の透明導電性フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の透明導電性フィルムは、十分な硬度を有し、耐擦傷性に優れ、かつ、防汚性にも優れるので、長期にわたり表面に汚れが付着しにくく、また、汚れが付着した場合であっても、容易にその汚れを拭き取ることができる。本発明の透明導電性フィルムは、耐擦傷性に優れているので、前記拭き取りの際にも、傷が付きにくい。したがって、本発明の透明導電性フィルムを用いた電子機器およびタッチパネルは、良好な特性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の透明導電性フィルムのその他の例を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の透明導電性フィルムのさらにその他の例を示す模式断面図である。
【図4】図4は、本発明のタッチパネルの構成の一例を示す模式断面図である。
【図5】図5は、本発明の透明導電性フィルムのさらにその他の例を示す模式断面図である。
【図6】図6は、本発明のタッチパネルの構成のその他の例を示す模式断面図である。
【図7】図7は、本発明のタッチパネルの構成のさらにその他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記(B)成分は、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有してもよい。下記一般式(1)において、少なくとも一つのRが、フルオロアルキル基を有する置換基であり、少なくとも一つのRが、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方を有する置換基である。
【化1】

【0012】
本発明の透明導電性フィルムでは、前記一般式(1)のRにおいて、前記フルオロアルキル基を有する置換基は、例えば、下記一般式(2)で表される構造を有してもよい。下記一般式(2)で表される構造は、その末端に、パーフルオロポリエーテル単位(−CF−CF−(O−CF−CF−CF−O−CF−CF)を有している。前記パーフルオロポリエーテル単位において、nは、1以上の整数である。
【化2】

【0013】
本発明の透明導電性フィルムでは、前記一般式(1)のRにおいて、前記アクリレート基を有する置換基は、例えば、下記一般式(3)で表される置換基を有してもよい。
【化3】

【0014】
前記(B)成分が、前記一般式(1)で表され、前記一般式(1)のRにおいて、前記一般式(2)で表される構造を有するフルオロアルキル基を有する置換基を一つ有し、前記一般式(3)で表される構造を有するアクリレート基を有する置換基を二つ有していることが好ましい。
【0015】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記(C)成分は、例えば、下記一般式(4)で表される構造を有してもよい。下記一般式(4)において、Rは、シロキサン構造を有する置換基、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方を有する置換基、および、活性水素基を有する置換基から選ばれる置換基であり、各Rは同一でも異なっていてもよい。
【化4】

【0016】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記(C)成分は、例えば、下記一般式(9)で表される構造を有してもよい。下記一般式(9)で表される構造を、6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸単位(a)とする。
【化5】

【0017】
本発明の透明導電性フィルムでは、前記一般式(4)のRにおいて、前記シロキサン構造を有する置換基は、例えば、下記一般式(5)で表される構造を有してもよい。下記一般式(5)で表される構造は、その末端に、ポリジメチルシロキサン単位(c)を有し、前記単位(c)は、メチルヒドロキシプロピルシロキサン単位(b)と結合しており、前記単位(b)は、そのヒドロキシ基が、前記単位(a)の一部である6−イソシアネートへキシルイソシアヌル酸の末端イソシアネート基とウレタン結合している。前記ポリジメチルシロキサン単位(c)において、nは、1以上の整数であり、1〜7が好ましい。
【化6】

【0018】
本発明の透明導電性フィルムでは、前記一般式(4)のRにおいて、前記活性水素基を有する置換基は、例えば、下記一般式(6)で表される置換基を有してもよい。前記一般式(6)で表される置換基では、前記単位(a)の一部である6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸の末端イソシアネート基がカルボキシル基となっている。また、前記一般式(6)で表される置換基において、前記カルボキシル基が脱炭酸化してアミノ基になっていてもよい。
【化7】

【0019】
本発明の透明導電性フィルムでは、前記一般式(4)のRにおいて、前記アクリレート基を有する置換基は、例えば、下記一般式(7)で表される構造を有してもよい。前記一般式(7)で表される構造は、末端にアクリレート基を有する脂肪族ポリエステル単位(d)を有し、前記単位(d)は、前記単位(a)の一部である6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸の末端イソシアネート基とウレタン結合している。前記一般式(7)において、mおよびnは、それぞれ、1〜10の整数であり、同一でも異なっていてもよい。lは、1〜5の整数である。
【化8】

【0020】
前記(C)成分が、前記一般式(9)で表される構造である単位(a)を含み、かつ前記一般式(5)〜(7)で表される置換基を含む6−イソシアネートへキシルイソシアヌル酸の誘導体の場合、前記単位(a):前記単位(b):前記単位(c):前記単位(d)の成分割合(モル比)は、前記単位(a)を100としたとき、前記単位(b)は、例えば、1〜80の範囲であり、好ましくは、1〜60の範囲であり、前記単位(c)は、例えば、10〜400の範囲であり、好ましくは、10〜300の範囲であり、前記単位(d)は、例えば、1〜100の範囲であり、好ましくは、5〜50の範囲である。
【0021】
本発明において、前記(C)成分の各構成成分(単位)の割合(モル比)は、例えば、H−NMRスペクトルの積分曲線から求めることができる。前記(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、例えば、500〜150000の範囲であり、好ましくは、2000〜100000の範囲である。前記重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
【0022】
前記(B)成分として前記一般式(1)で表される構造を有する化合物を用い、かつ、前記(C)成分として前記一般式(4)で表される構造を有する化合物を用いることが好ましい。類似の構造を有する化合物を用いることで、それぞれの有する作用が形成されたハードコート層において発現しやすくなることが推測されるが、本発明はこの推測によっては何ら制限されない。
【0023】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート形成用組成物が、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が0.05〜0.4重量部の範囲で配合され、かつ、前記(C)成分が0.05〜1重量部の範囲で配合されていることが好ましい。
【0024】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート形成用組成物が、さらに下記(D)成分を含むことが好ましい。
(D)成分:無機酸化物粒子表面が重合性不飽和基を含む有機化合物で修飾され、かつ、重量平均粒径が200nm以下である粒子
【0025】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、光の散乱防止、ハードコート層の透過率低下防止、着色防止および透明性の点等から、前記(D)成分の重量平均粒径が、1〜100nmの範囲であることが好ましい。前記重量平均粒径は、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0026】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記(D)成分としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート形成用組成物が、前記(A)成分100重量部に対し、前記(D)成分が、100〜200重量部の範囲で配合されていることが好ましい。
【0028】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート形成用組成物が、さらに、下記(E)成分を含むことが好ましい。
(E)成分:下記一般式(8)で表されるグリコール系化合物
【化9】

前記一般式(8)において、mおよびnは、それぞれ、1以上の整数であり、同一でも異なっていてもよい。
【0029】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート形成用組成物が、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が0.05〜0.4重量部の範囲で配合され、かつ、前記(C)成分と前記(E)成分とが、合計で0.1〜1重量部の範囲で配合されていることが好ましい。
【0030】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート層の最表層が、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)による分析での、反応性フッ素化合物由来のフッ素原子強度が5〜30%の範囲内であり、かつ、反応性ケイ素化合物由来のケイ素原子強度が0.2〜10%の範囲内であることが好ましい。この範囲であると、耐擦傷性と防汚性をより良好に両立させることができる。
【0031】
ところで、反応性フッ素化合物や反応性ケイ素化合物の添加量と、最表層における前記各原子強度とは、必ずしも一致したり比例関係になったりはしない傾向にある。例えば、同一組成のハードコート層形成用組成物を用いてハードコート層を形成した場合であっても、前記ハードコート層の膜厚が異なると、最表層における前記各原子強度は同一にならない場合もある。したがって、本発明のハードコート層形成用組成物を用いて、より良好な特性を有するハードコートフィルムを得ようとする場合、前記各原子強度に着目した特性評価をすることは有効である。
【0032】
前記フッ素原子強度は、10〜30%の範囲内であることがより好ましく、15〜30%の範囲内であることがさらに好ましい。前記ケイ素原子強度は、0.2〜8%の範囲内であることがより好ましく、0.2〜6%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート層の厚みは、特に制限されず、前記透明なフィルム基材の厚み等に応じて最適な厚みを設定することができるが、例えば、3〜50μmの範囲である。前記厚みを前記範囲とすることで、硬度の低下を招くことなく、透明導電性フィルムのカールおよび折れの発生を、より効果的に防止できる。前記厚みは、より好ましくは、4〜25μmの範囲であり、さらに好ましくは、5〜18μmの範囲である。
【0034】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート層表面のJIS K 5600−5−4の規定に準じた加重500gでの鉛筆硬度が、4H以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート層表面の表面自由エネルギーが、15〜25mJ/mの範囲であることが好ましい。表面自由エネルギーとは、Kaelble Uy理論の水/ヘキサデカンの2成分の計算により算出された値をいう。前記表面自由エネルギーは、15〜22mJ/mの範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは、15〜20mJ/mの範囲である。前記表面自由エネルギー値は、水とヘキサデカンの各々について接触角を測定し、その値から算出するが、協和界面科学(株)製「全自動接触角計DM700」等で自動算出することができる。
【0036】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記ハードコート層が、さらに微粒子を含有していることが好ましい。
【0037】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記透明なフィルム基材の一方の面に前記ハードコート層を有し、他方の面に前記透明導電性薄膜を有していることが好ましい。
【0038】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記透明なフィルム基材が、複数枚の透明フィルムを透明粘着剤層を介して貼り合わせた積層体であることが好ましい。
【0039】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、前記透明フィルムの少なくとも1枚が装飾フィルムであることが好ましい。
【0040】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されない。
【0041】
本発明の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材、透明導電性薄膜およびハードコート層を含むものである。本発明の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材の一方の面にハードコート層を有し、他方の面に透明導電性薄膜を有してもよい。あるいは、一方の面に透明導電性薄膜を有し、前記透明導電性薄膜上にハードコート層を有してもよい。優れた防汚性を発揮する観点から、本発明の透明導電性フィルムは、指やペン等に接触される最表面側(例えば、タッチパネル用途に使用する際には、その視認側)に、ハードコート層が積層されていることが好ましい。
【0042】
透明なフィルム基材の材料は特に制限されず、各種の透明材料を適宜に選択して用いることができるが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましい。その材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等があげられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好適である。
【0043】
前記透明なフィルム基材の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30〜1.80の範囲であり、好ましくは、1.40〜1.70の範囲である。
【0044】
本発明において、前記透明なフィルム基材の厚みは、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、1〜400μmであることが好ましい。より好ましくは、5〜200μmの範囲である。前記厚みが1μmよりも小さい場合は、耐久性や加工性の点から好ましくない。また、400μmより大きい場合は、本発明の透明導電性フィルムを備える電子機器やタッチパネルにおいて、部材が厚くなってしまうのに加えて、例えば、抵抗膜方式のタッチパネルの場合には入力時に重加重が必要となるため、好ましくない。
【0045】
前記透明なフィルム基材は、複数枚の透明フィルムを透明粘着剤層を介して貼り合わせた積層体であってもよい。この場合、各フィルムの厚みや材料は適宜に選択することができるが、少なくとも1枚は、厚みが20〜125μmの範囲にあることが好ましい。
【0046】
また、前記透明なフィルム基材は、装飾フィルムであってもよい。透明なフィルム基材が複数枚の透明フィルムを透明粘着剤層を介して貼り合わせた積層体である場合には、前記複数枚の透明フィルムのうちの少なくとも1枚が装飾フィルムであればよい。前記装飾フィルムは、透明フィルムの片面または両面に、印刷などの公知の方法を用いて色や模様を形成したものを用いることができる。前記装飾フィルムにスパッタリング法などを用いて透明導電性薄膜を形成すると、スパッタリングの際に印加される熱により装飾された部分を損傷してしまう場合がある。このため、前記装飾フィルムを用いる場合には、前述のように、前記透明なフィルム基材として複数枚の透明フィルムの積層体を用い、装飾が施されていない透明フィルムに透明導電性薄膜を形成することが好ましい。
【0047】
前記透明なフィルム基材が、前記透明フィルムの積層体である場合に用いる粘着剤層としては、透明性を有するものを特に制限なく使用できる。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが用いられる。前記粘着剤層は、前記透明フィルムの貼り合わせ後、そのクッション効果により、前記透明なフィルム基材の一方の面に設けられた透明導電性薄膜の耐擦傷性や、タッチパネルに用いた場合の打点特性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させる観点から、粘着剤層の弾性係数を、1〜100N/cmの範囲に設定することが好ましい。同様の理由から、前記粘着剤層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5〜100μmの範囲である。
【0048】
前記弾性係数が1N/cm未満では、前記粘着剤層は非弾性となるため、加圧により容易に変形して前記フィルム基材、さらには前記透明導電性薄膜に凹凸を生じさせ、また加工切断面からの粘着剤のはみ出しなどが生じやすくなる。さらに、前記透明導電性薄膜の耐擦傷性や前記打点特性の向上効果が低減する。一方、弾性係数が100N/cmを超えると、前記粘着剤層が硬くなり、そのクッション効果を期待できなくなるため、前記透明導電性薄膜の耐擦傷性や前記打点特性を向上できない。また、粘着剤層の厚さが1μm未満となると、そのクッション効果をやはり期待できないため、前記透明導電性薄膜の耐擦傷性や前記打点特性の向上を望めない。逆に、厚すぎると、透明性を損なったり、前記粘着剤層の形成およびフィルム基材の貼り合わせの際の作業性やコストの面で好結果を得にくい場合がある。
【0049】
透明なフィルム基材は、その表面に易接着処理層を設けて、前記ハードコート層や前記透明導電性薄膜の密着性を向上させるようにしてもよい。前記易接着処理層は、前記透明なフィルム基材の表面に予めスパッタリング処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、酸またはアルカリ処理、エッチング処理をすることにより設けることができ、また下塗り処理を施して設けることができる。また、前記ハードコート層や前記透明導電性薄膜を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化を行なってもよい。前記易接着処理層を設けることは、前記ハードコート層の形成の場合に特に有効である。
【0050】
前記透明導電性薄膜の形成に用いる薄膜材料は特に制限されず、透明な導電性の膜を形成しうるものを適宜に選択して用いる。例えば、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫およびこれらの合金等からなる金属、また酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムおよびこれらの混合物等からなる金属酸化物、ヨウ化銅等からなる他の金属化合物、ポリチオフェンやポリアニリン等の導電性高分子、カーボンナノチューブを含む組成物などが用いられる。前記透明導電性薄膜は、結晶層、非結晶層のいずれであってもよい。前記材料としては、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。
【0051】
前記透明導電性薄膜の形成方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法またはこれらの組み合わせ法などの各種薄膜形成法を適宜に選択できる。透明導電性薄膜の形成速度や大面積膜の形成性、生産性などの点から、前記薄膜形成法としては真空蒸着法やスパッタリング法を採用するのが好ましい。
【0052】
前記透明導電性薄膜の厚さは、使用目的に応じて適宜に決定することができる。厚さは通常10〜300nm、好適には10〜200nm、さらには15〜50nmであるのがよい。前記透明導電性薄膜は、その表面抵抗値を1×10Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするのが好ましい。
【0053】
前記透明導電性薄膜は、アンカー層を介して設けられていてもよい。前記アンカー層は1層または2層以上設けることができる。アンカー層としては、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成する。アンカー層の形成は、前記透明なフィルム基材と前記透明導電性薄膜との密着性を向上させるとともに、前記透明導電性薄膜の耐擦傷性や耐屈曲性を向上させ、タッチパネル用としての打点特性の向上に有効である。
【0054】
前記アンカー層を形成する無機材料としては、例えば、無機物として、SiO、MgF、A1などが好ましく用いられる。また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物が挙げられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0055】
前記アンカー層は、上記の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗工法などにより形成できる。
【0056】
前記アンカー層の厚さは、通常、100nm以下、好ましくは15〜100nm程度、さらに好ましくは20〜60nmであるのがよい。
【0057】
前記ハードコート層は、前記(A)成分、前記(B)成分および前記(C)成分を含むハードコート層形成用組成物を用いて形成される。
【0058】
前記(A)成分としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用できる。前記(A)成分としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
前記(A)成分としては、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記単官能アクリレートは、例えば、エチレンオキサイド変性フェノールのアクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノールのアクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールのアクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノールのアクリレート、2−エチルへキシルカルビトールアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート等を含む。前記単官能メタクリレートは、例えば、エチレンオキサイド変性フェノールのメタクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノールのメタクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールのメタクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノールのメタクリレート、2−エチルへキシルカルビトールメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリプロピレングリコールモノメタクリレート等を含む。前記多官能アクリレートは、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールのジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAのジアクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAのジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンアリルエーテルジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を含む。前記多官能メタクリレートは、例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールのジメタクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジメタクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAのジメタクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAのジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパンアリルエーテルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、ハードコート層の硬度を、より優れたものにできるからである。前記(A)成分としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。前記(A)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
前記(B)成分および前記(C)成分は、前述のとおりである。前記(B)成分の使用により、得られるハードコート層の表面自由エネルギー値が低下し、前記ハードコート層の防汚性が向上する。一方で、前記(B)成分の配合量が過剰となると、得られるハードコート層の耐擦傷性が低下する傾向にある。また、前記(C)成分の使用により、例えば、形成されるハードコート層表面構造が剛直になるとともに滑り性が向上し、耐擦傷性に優れるようになる。一方で、前記(C)成分の配合量が過剰となると、得られるハードコート層の防汚性が低下する傾向にある。これらの点等から、前記(B)成分と前記(C)成分の配合割合は、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が0.05〜0.4重量部の範囲であり、かつ、前記(C)成分が0.05〜1.0重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、前記(B)成分が0.1〜0.3重量部の範囲であり、かつ、前記(C)成分が0.2〜1.0重量部の範囲である。
【0061】
本発明の透明導電性フィルムは、例えば、前記透明なフィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を形成し、さらに、前記三成分を溶媒に溶解若しくは分散させたハードコート層形成用組成物を準備し、前記ハードコート層形成用組成物を、前記透明導電性薄膜を形成した前記透明なフィルム基材に塗工して塗膜を形成することにより、製造することができる。前記ハードコート層形成用組成物は、前記透明導電性薄膜上に塗工してもよいし、前記透明導電性薄膜を形成した面の反対側の面に塗工してもよい。前記透明導電性薄膜を形成した前記透明なフィルム基材の両面に塗工することもできる。
【0062】
前記溶媒は、特に限定されない。前記溶媒は、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を含む。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
前述のとおり、前記ハードコート層形成用組成物は、さらに、前記(D)成分を含むことが好ましい。前記(D)成分において、無機酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
本発明におけるハードコート層形成用組成物において、光の散乱防止、ハードコート層の透過率低下防止、着色防止および透明性の点等から、前記(D)成分は、重量平均粒径が200nm以下の範囲である、いわゆるナノ粒子である。前記重量平均粒径は、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定できる。前記重量平均粒径は、好ましくは、1nm〜100nmの範囲である。
【0065】
前記(D)成分において、前記無機酸化物粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物と結合(表面修飾)されている。前記重合性不飽和基が前記(A)成分と反応硬化することで、ハードコート層の硬度を向上させる。前記重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基が好ましい。また、前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物あるいは加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、光感応性基を有するものであることも好ましい。
【0066】
前記(D)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対し、100〜200重量部の範囲であることが好ましい。前記(D)成分の配合量を100重量部以上とすることで、透明導電性フィルムのカールおよび折れの発生を、より効果的に防止でき、200重量部以下とすることで、耐擦傷性や鉛筆硬度を高いものとすることができる。前記(D)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対し、より好ましくは、120〜180重量部の範囲である。
【0067】
前記(D)成分の配合量を調整することで、例えば、前記ハードコート層の屈折率を調整することが可能である。前記透明なフィルム基材と前記ハードコート層界面に生じる干渉縞を防止する点等から、前記透明なフィルム基材と前記ハードコート層との屈折率差を小さくすることが好ましい。前記干渉縞は、透明導電性フィルムに入光した外光の反射光が虹色の色相を呈する現象である。最近、オフィス等では、明瞭性に優れた三波長蛍光灯が多用されている。前記三波長蛍光灯の下では、前記干渉縞が顕著に現れる。これらの点等から、前記ハードコート層形成用組成物の調製にあたっては、前記屈折率差が小さくなるように、前記(D)成分の配合量を調整することが好ましい。
【0068】
前記屈折率差は、0.04以下が好ましく、より好ましくは、0.02以下である。具体的には、例えば、前記透明なフィルム基材として、PETフィルム(屈折率:約1.64)を用いる場合、前記(D)成分に酸化チタンを用い、これを前記ハードコート層形成用組成物中の樹脂成分全体に対し、30〜40重量%程度配合させることで、前記屈折率差を0.02以下に制御することができ、干渉縞の発生を抑制することができる。
【0069】
前述のとおり、前記ハードコート層形成用組成物は、さらに、前記(E)成分を含むことが好ましい。
【0070】
前記(E)成分を使用する場合には、前記ハードコート層形成用組成物の調製において、前記(E)成分を、前記(C)成分との混合物として準備することが好ましい。前記混合物を含む材料としては、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の商品名「GRANDIC PC−4100」等があげられる。前記混合物を含む材料の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。
【0071】
前記(E)成分の使用により、例えば、形成されるハードコート層表面構造が剛直になるとともに滑り性が向上し、耐擦傷性により優れるようになる。耐擦傷性と防汚性との両立の観点からは、前記(E)成分の配合割合は、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が0.05〜0.4重量部の範囲であり、かつ、前記(C)成分と前記(E)成分とが、合計で0.1〜1重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、前記(B)成分が0.1〜0.3重量部の範囲であり、かつ、前記(C)成分と前記(E)成分とが、合計で0.2〜1重量部の範囲である。
【0072】
前記ハードコート層形成用組成物は、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等を含んでもよい。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
前記ハードコート層形成用組成物に微粒子を添加することで、さらに防眩性も兼ね備えた透明導電性フィルムを得ることができる。前記微粒子は、形成されるハードコート層表面を凹凸形状にして防眩性を付与し、また、前記ハードコート層のヘイズ値を制御することを主な機能とする。前記ハードコート層のヘイズ値は、前記微粒子と前記ハードコート層形成用組成物との屈折率差を制御することで、設計することができる。前記微粒子としては、例えば、無機微粒子と有機微粒子とがある。前記無機微粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子、タルク微粒子、カオリン微粒子、硫酸カルシウム微粒子等があげられる。また、有機微粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機微粒子および有機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0074】
前記ハードコート層形成用組成物において、前記(A)成分が光硬化型化合物を含む場合、例えば、特開2008−88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。前記光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記光重合開始剤の配合量は、特に制限されない。前記配合量は、前記(A)成分100重量部に対し、例えば、1〜30重量部の範囲であり、好ましくは、1〜25重量部の範囲である。
【0075】
前記ハードコート層形成用組成物を、前記透明なフィルム基材上、または、前記透明なフィルム基材上に形成された前記透明導電性薄膜上に塗工して塗膜を形成する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。塗膜を形成した後に、前記塗膜を硬化させる。この硬化に先立ち、前記塗膜を乾燥させることが好ましい。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0076】
前記ハードコート層形成用組成物の塗膜の硬化手段は、特に制限されない。前記硬化手段は、電離放射線硬化が好ましい。前記硬化手段には、各種活性エネルギーを用いることができる。前記活性エネルギーは、紫外線が好ましい。エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素等の線源が好ましい。前記エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cmの範囲が好ましい。前記照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化がより十分となり、形成される前記ハードコート層の硬度もより十分なものとなる。前記照射量が、5000mJ/cmを以下であれば、形成される前記ハードコート層の着色を防止でき、透明性を向上させることができる。
【0077】
以上のようにして、本発明の透明導電性フィルムを製造することができる。なお、本発明の透明導電性フィルムは、前述の方法以外の製造方法で製造してもよい。
【0078】
図1の模式断面図に、本発明の透明導電性フィルムの構成の一例を示す。同図においては、分かりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は、実際とは異なっている。図示のとおり、この透明導電性フィルム10では、透明なフィルム基材11の片面に透明導電性薄膜12が、他方の面にハードコート層13が形成されている。ただし、本発明は、これに限定されない。透明導電性フィルムの用途に応じて、図2の模式断面図に示す透明導電性フィルム20のように、透明なフィルム基材11の片面に透明導電性薄膜12が形成され、この透明導電性薄膜12上にハードコート層13が形成されている構成を取ることもできる。また、これらの例のハードコート層13は、単層である。ただし、本発明は、これに限定されず、前記ハードコート層13は、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。この場合、少なくとも本発明におけるハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層が、最表面にあればよい。
【0079】
これらの透明導電性フィルムは、例えば、抵抗膜方式のタッチパネルや静電容量方式のタッチパネルなどに好適に用いられる。
【0080】
前記ハードコート層13は、さらに、反射防止処理、防眩(アンチグレア)処理などが施されたものであってもよい。
【0081】
図3の模式断面図に、本発明の透明導電性フィルムの構成のさらにその他の例を示す。図3において、図1と同一部分には、同一符号を付している。図3に示す透明導電性フィルム30は、図1における透明なフィルム基材11の代わりに、2枚の透明フィルム31a、31bを透明粘着剤層32を介して、貼り合わせた積層体を用いた場合の一例である。この例のように、前記透明なフィルム基材が複数枚の透明フィルムの積層体である場合には、透明導電性フィルムは、前記複数枚の透明フィルムが積層された状態でタッチパネルや電子機器の電極などに使用される。この例の透明導電性フィルムは、例えば、ハードコート層が形成された第1の透明フィルムと、透明導電性薄膜が形成された第2の透明フィルムとを貼り合せて製造することができる。また、それぞれの透明フィルムの大きさ(面積)が異なっていてもよい。図3では透明フィルムが2枚積層されているが、透明フィルムの積層は3枚以上であってもよい。例えば、図5の模式断面図に示すように、3枚の透明フィルムが積層されていてもよい。図5において、図1と同一部分には、同一符号を付している。図5に示す透明導電性フィルム50は、図1における透明なフィルム基材11の代わりに、3枚の透明フィルム51a、51bおよび51cを透明粘着剤層52aおよび52bを介して貼り合わせた積層体を用いた場合の一例である。この例のように、前記透明なフィルム基材が3枚の透明フィルムの積層体である場合には、透明導電性薄膜が形成されている第1の透明フィルム(例えば、図5の透明フィルム51c)の厚さは、20〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜125μmである。前記透明導電性薄膜および防汚性を有するハードコート層が形成されていない第2の透明フィルム(例えば、図5の透明フィルム51b)の厚さは、20〜300μmであることが好ましい。前記ハードコート層が形成されている第3の透明フィルム(例えば、図5の透明フィルム51a)の厚さは、20〜300μmであることが好ましい。
【0082】
(タッチパネル)
図4の断面図に、本発明のタッチパネルの構成の一例を示す。図4において、図1と同一部分には、同一符号を付している。図示のとおり、このタッチパネル40は、透明導電層を有する一対のパネル板41a、41bおよびスペーサ42を備える。一方のパネル板41aは、図1に示す本発明の透明導電性フィルム10である。他方のパネル板41bは、基体43上に透明導電性薄膜12が積層された構成である。前記一対のパネル板41a、41bは、それぞれの透明導電性薄膜同士が対向するように、前記スペーサ42を介して配置されている。前記基体43は、例えば、前述の透明なフィルム基材であってもよいし、タッチパネルに可撓性が要求されない場合は、例えば、厚み0.05〜10mm程度のガラス板やフィルム状もしくは板状のプラスチックであってもよい。前記プラスチックの材質は、前記透明なフィルム基材の形成材料と同様である。
【0083】
このタッチパネル40は、前記一方のパネル板41a側から、指や入力ペン等により前記スペーサ42の弾性力を抗して押圧打点したとき、前記一対のパネル板41a、41bの透明導電性薄膜同士が接触して、電気回路のON状態となり、押圧を解除するとOFF状態に戻る、抵抗膜方式のタッチパネルである。すなわち、このタッチパネル40は、透明スイッチ構体として機能する。前記一方のパネル板41aは、図1に示す本発明の透明導電性フィルムであるため、例えば、耐擦傷性や防汚性、および、打点特性などに優れ、長期に亘って前記機能を安定に維持させることができる。ただし、本発明のタッチパネルは、これに限定されない。本発明のタッチパネルは、例えば、図6に示すタッチパネル60のように、一方のパネル板が、図3に示す本発明の透明導電性フィルムからなるパネル板61aであってもよいし、図7に示すタッチパネル70のように、一方のパネル板が、図5に示す本発明の透明導電性フィルムからなるパネル板71aであってもよい。また、前記他方のパネル板41bが、本発明の透明導電性フィルムであってもよい。
【0084】
前記スペーサ42は、従来公知のものを採用することができる。前記スペーサ42の製造方法、サイズ、配置位置、数量は、特に限定されない。また、前記スペーサ42の形状は、例えば、略球形、多角形等の従来公知の形状を採用することができる。
【0085】
本発明の透明導電性フィルムは、静電容量方式のタッチパネルにも良好に使用できる。静電容量方式のタッチパネルは、パネル表面に均一な電界を作り、指が触れることによる電気容量の変化を感知するものである。静電容量方式のタッチパネルでは、図1に示す本発明の透明導電性フィルムに加え、図2に示すような、透明導電性薄膜12上にハードコート層13が形成されている本発明の透明導電性フィルムも好ましく使用できる。
【0086】
本発明の透明導電性フィルムは、上述のとおり、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式などのタッチパネルに好適に適用できる。特に、静電容量方式のタッチパネルに好適である。本発明の透明導電性フィルムをタッチパネルに使用する場合には、優れた防汚性を発揮する観点から、本発明の透明導電性フィルムは、指やペン等に接触される最表面側(例えば、タッチパネルの視認側)に、ハードコート層が積層された構成で使用されることが好ましい。また、本発明の透明導電性フィルムは、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、サーマル・リライタブル方式、光書き込み液晶方式、高分子分散型液晶方式、ゲスト・ホスト液晶方式、トナー表示方式、クロミズム方式、電界析出方式などのフレキシブル表示素子などの電子機器にも好適に適用できる。本発明の透明導電性フィルムは、タッチパネルや表示素子の他に、導電性が要求される任意の用途に使用される。その用途としては、例えば、帯電防止フィルム、電磁波シールドなどがあげられる。
【実施例】
【0087】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。なお、下記実施例および比較例における各種特性は、下記の方法により評価若しくは測定した。
【0088】
(ハードコート層の厚み)
(株)ミツトヨ製のマイクロゲージ式厚み計を用い、ハードコートフィルムの全体厚みを測定し、前記全体厚みから、透明なフィルム基材の厚みを差し引くことにより、ハードコート層の厚みを算出した。
【0089】
(耐擦傷性)
ハードコート層の耐擦傷性は、以下の試験内容にて評価した。
(1)ハードコートフィルムの中心部から150mm×50mmのサンプルを切り出し、ハードコート層が形成されていない面を下にして、ガラス板に載せた。
(2)直径11mmの円柱の平滑な断面に、スチールウール#0000を均一に取り付け、荷重1.5kgにて前記サンプル表面を、毎秒約100mmの速度で10往復した後に、サンプル表面に入った傷の本数を目視により数え、以下の指標により判定した。
A:傷の本数が、10本以下
B:傷の本数が、11本以上29本以下
C:傷の本数が、30本以上
【0090】
(ペン摺動性)
ハードコート層の耐擦傷性は、以下の試験内容のペン摺動性にて評価した。
透明導電性積層体で構成したパネル板側から、ポリアセタール製のペン(先端径0.8R)を用いて、荷重500g、速度5000mm/min、ストローク100mmでペン先を往復させ100万回の摺動を行い、ハードコート層表面の状態を観察した。
A:摺動部に傷が認められない
B:摺動の折り返し部分にのみ傷が確認できる
C:摺動部分の全体にわたって傷が確認できる
【0091】
(鉛筆硬度)
ハードコートフィルムの中心部から100mm×50mmのサンプルを切り出し、ハードコート層が形成されていない面を下にして、ガラス板上に載せた後、JIS K 5600−5−4記載の鉛筆硬度試験の規定に準じ、荷重500gでの鉛筆硬度を測定した。鉛筆は、三菱鉛筆(株)製「Uni」(鉛筆引かき値試験用 日塗検検査済)を用いた。
【0092】
(表面自由エネルギー)
協和界面科学(株)製「全自動接触角計DM700」を用いて、水、ヘキサデカンの接触角を測定し、解析ソフトFAMASにて表面自由エネルギーを算出した。算出方法は、Kaelble Uy理論による2成分解析を用いた。
【0093】
(ESCAによる原子強度測定)
試料を5mm角程度に切断して得た試料片を、モリブデン(Mo)板上に配置し、Mo板ごと試料台に固定した。アルバック・ファイ(株)製「Quantum 2000」を用いて、原子強度の測定を行った。X線源はモノクロAlKα、X線出力は30W(15kV)、測定領域は200μmφ、光電子取り出し角は試料表面に対して45°とした。結合エネルギーの補正は、C1sスペクトルのC−C結合に起因するピークを285.0eVに補正することで行った。中和条件は、中和銃とArイオン銃(中和モード)を併用することで行った。
試料の任意の2点を0〜1100eVにてワイドスキャン測定を行い、定性分析を実施した。検出された元素に対して、ナロースキャンを行い、元素比率(atomic%)を算出した。Si2pスペクトルについては、2官能シリコン、ならびに、多官能シリコンおよびSiOxの各結合に帰属されるピークで波形解析を行い、反応性ケイ素化合物由来のケイ素原子強度を算出する。
前記条件によって、試料の最表面から深さ約5〜10nmまでの領域についての各原子強度比が測定できる。試料表面は、予め、汚染物を除去するために、試料表面を破壊しない程度に拭取りすることで洗浄を行った。さらにC60イオン銃によりエッチング除去することにより、汚染物の除去を行った。
【0094】
(粒子((B)成分)の重量平均粒径)
(B)成分を含む樹脂原料を、メチルエチルケトン(MEK)で固形分濃度を10%まで希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所製、「LB−500」)を用いて、粒度分布を測定した。得られた粒度分布から重量平均粒径を算出した。
【0095】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリスチレンを標準試料として測定した。具体的には、下記の装置、器具および測定条件により測定した。
分析装置:東ソー(株)製、商品名「SC−8020」
カラム:昭和電工(株)製、商品名「Shodex」
カラムサイズ:20.0mmφ×500mm
カラム温度:室温
溶離液:クロロホルム
流量:3.5mL/分
入口圧:70kgf/cm(6.9MPa)
【0096】
[実施例1]
(ハードコート層形成用組成物の調製)
粒子表面が重合性不飽和基を含む有機化合物で修飾されたナノシリカ粒子(前記(D)成分)を分散させた、前記(A)成分を含む樹脂原料(JSR(株)製、商品名「オプスターZ7540」、固形分:56重量%、溶媒:酢酸ブチル/メチルエチルケトン(MEK)=76/24(重量比))を準備した。
【0097】
前記樹脂原料は、前記(A)成分(紫外線硬化型化合物)として、ジペンタエリスリトールおよびイソホロンジイソシアネート系ポリウレタン、前記(D)成分として、表面を有機分子により修飾したシリカ微粒子(重量平均粒径:100nm以下)を、(A)成分合計:(D)成分=2:3の重量比で含有する。前記樹脂原料の硬化皮膜の屈折率は、1.485であった。
【0098】
この樹脂原料の固形分100重量部に対し、反応性フッ素化合物(ダイキン工業(株)製、商品名「オプツール(登録商標)DAC」、固形分20%、溶媒:1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール)を0.2重量部、反応性ケイ素化合物(大日本インキ化学工業(株)製、商品名「GRANDIC PC−4100」)を0.5重量部、および、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」)を0.5重量部加え、固形分濃度が50重量%になるように、酢酸ブチルを用いて希釈することにより、ハードコート層形成用組成物を調製した。なお、前記反応性フッ素化合物は、前記一般式(1)で表され、前記一般式(1)のRにおいて、前記一般式(2)で表される構造を有するフルオロアルキル基を有する置換基を一つ有し、前記一般式(3)で表される構造を有するアクリレート基を有する置換基を二つ有している化合物を主成分とする。また、前記反応性ケイ素化合物は、下記に示す成分1、成分2および溶媒を含む混合物である。
【0099】
成分1:前記一般式(4)で表される反応性シリコーン(前記一般式(5)の単位(c)のポリジメチルシロキサン単位(X1)と、前記一般式(5)の単位(b)のメチルヒドロキシプロピルシロキサン単位(X2)と、前記一般式(9)の6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸単位(X3)と、前記一般式(7)の単位(d)の置換基(X4)とを、X1:X2:X3:X4(モル比)=187:39:100:57の割合で有する)(6.85重量部)
成分2:前記一般式(8)で表されるグリコール系化合物(3.15重量部)
溶媒:酢酸エチル(90重量部)
【0100】
(ハードコート層の形成)
前記ハードコート層形成用組成物を、両表面に易接着層が設けられた、透明なフィルム基材(厚み125μmのPETフィルム)の一方の面に、バーコーターを用いて塗工し、塗膜を形成した。前記塗工後、60℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。前記乾燥後の塗膜に、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射することで硬化処理を施し、厚み7μmのハードコート層を形成した。
【0101】
(透明導電性薄膜の形成)
前記PETフィルムのハードコート層を形成しなかった面に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる4×10Torr(5.33×10Pa)の雰囲気中で、酸化インジウム90重量%−酸化スズ10重量%の焼結体を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ25nmのITO膜(光の屈折率:2.00)からなる透明な導電性薄膜を形成した。このようにして、本実施例の透明導電性フィルムを作製した。
【0102】
[実施例2]
厚みが15μmとなるように前記ハードコート層を形成した以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0103】
[実施例3]
前記反応性フッ素化合物を0.1重量部、前記反応性ケイ素化合物を0.5重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0104】
[実施例4]
前記反応性フッ素化合物を0.2重量部、前記反応性ケイ素化合物を0.2重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0105】
[実施例5]
前記反応性フッ素化合物を0.1重量部、前記反応性ケイ素化合物を1重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0106】
[実施例6]
前記反応性フッ素化合物を0.2重量部、前記反応性ケイ素化合物を1重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0107】
[実施例7]
前記反応性フッ素化合物を0.1重量部、前記反応性ケイ素化合物を0.2重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0108】
[実施例8]
前記反応性フッ素化合物を0.1重量部、前記反応性ケイ素化合物を0.1重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0109】
[実施例9]
前記反応性フッ素化合物を0.2重量部、前記反応性ケイ素化合物を0.1重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本実施例の透明導電性フィルムを得た。
【0110】
[実施例10]
実施例1と同様に、両表面に易接着層が設けられた、第一のPETフィルム(厚み125μm)の一方の面に、ハードコート層を形成した。第二のPETフィルム(厚み25μm)の一方の面に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる4×10Torr(5.33×10Pa)の雰囲気中で、酸化インジウム90重量%−酸化スズ10重量%の焼結体を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ25nmのITO膜(光の屈折率:2.00)からなる透明な導電性薄膜を形成した。前記第一のPETフィルムのハードコート層を形成しなかった面に、アクリル系の透明粘着層を約20μmの厚さに形成した。この粘着層面に、前記第二のPETフィルムの透明な導電性薄膜を設けていない側の面を貼り合わせて積層体を作製した。このようにして、本実施例の透明導電性フィルムを作製した。
【0111】
[比較例1]
前記反応性フッ素化合物および前記反応性ケイ素化合物を加えなかった以外は、実施例1と同様な方法にて、本比較例の透明導電性フィルムを得た。
【0112】
[比較例2]
前記反応性フッ素化合物は加えず、前記反応性ケイ素化合物を0.2重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本比較例の透明導電性フィルムを得た。
【0113】
[比較例3]
前記反応性フッ素化合物は加えず、前記反応性ケイ素化合物を1重量部とした以外は、実施例1と同様な方法にて、本比較例の透明導電性フィルムを得た。
【0114】
[比較例4]
前記反応性フッ素化合物を0.2重量部、前記反応性ケイ素化合物を加えなかった以外は、実施例1と同様な方法にて、本比較例の透明導電性フィルムを得た。
【0115】
[比較例5]
前記反応性フッ素化合物を1重量部、前記反応性ケイ素化合物を加えなかった以外は、実施例1と同様な方法にて、本比較例の透明導電性フィルムを得た。
【0116】
このようにして得られた実施例および比較例の各透明導電性フィルムについて、各種特性の測定若しくは評価を行った。この結果を、下記表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
前記表1に示すように、実施例の透明導電性フィルムは、耐擦傷性および表面自由エネルギー値で表される防汚性が良好であった。特に実施例1〜6および10においては、極めて優れた耐擦傷性を示した。また、実施例の透明導電性フィルムは、鉛筆硬度が高く、かつカール特性が良好であった。これに対し、比較例の透明導電性フィルムは、耐擦傷性が十分ではなかった。比較例1〜3の透明導電性フィルムは、表面自由エネルギー値が大きく、防汚性が良好であるとはいえない。比較例4および比較例5の透明導電性フィルムは、表面自由エネルギー値は小さいものの、耐擦傷性が十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の透明導電性フィルムは、十分な硬度を有し、耐擦傷性に優れ、かつ、防汚性にも優れるものである。したがって、本発明の透明導電性フィルムは、フレキシブル表示素子等の電子機器、タッチパネル等に好適に使用でき、その用途は制限されず、広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
10、20、30、50 透明導電性フィルム
11 透明なフィルム基材
12 透明導電性薄膜
13 ハードコート層
31a、31b、51a、51b、51c 透明フィルム
32、52a、52b 透明粘着剤層
40、60、70 タッチパネル
41a、41b、61a、71a パネル板
42 スペーサ
43 基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルム基材、透明導電性薄膜およびハードコート層を含む透明導電性フィルムであって、
前記ハードコート層が、下記の(A)成分、(B)成分、および(C)成分を含むハードコート形成用組成物から形成されたものであることを特徴とする透明導電性フィルム。
(A)成分:アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物
(B)成分:反応性フッ素化合物
(C)成分:反応性ケイ素化合物
【請求項2】
前記(B)成分が、下記一般式(1)で表される構造を有する、請求項1記載の透明導電性フィルム。
【化1】

前記一般式(1)において、少なくとも一つのRが、フルオロアルキル基を有する置換基であり、少なくとも一つのRが、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方を有する置換基である。
【請求項3】
前記一般式(1)のRにおいて、前記フルオロアルキル基を有する置換基が、下記一般式(2)で表される構造を有する、請求項2記載の透明導電性フィルム。
【化2】

前記一般式(2)において、nは、1以上の整数である。
【請求項4】
前記一般式(1)のRにおいて、前記アクリレート基を有する置換基が、下記一般式(3)で表される置換基を有する、請求項2または3記載の透明導電性フィルム。
【化3】

【請求項5】
前記(C)成分が、下記一般式(4)で表される構造を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【化4】

前記一般式(4)において、Rは、シロキサン構造を有する置換基、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方を有する置換基、および、活性水素基を有する置換基から選ばれる置換基であり、各Rは同一でも異なっていてもよい。
【請求項6】
前記一般式(4)のRにおいて、前記シロキサン構造を有する置換基が、下記一般式(5)で表される構造を有する、請求項5記載の透明導電性フィルム。
【化5】

前記一般式(5)において、nは、1以上の整数である。
【請求項7】
前記一般式(4)のRにおいて、前記活性水素基を有する置換基が、下記一般式(6)で表される置換基を有する、請求項5または6記載の透明導電性フィルム。
【化6】

【請求項8】
前記一般式(4)のRにおいて、前記アクリレート基を有する置換基が、下記一般式(7)で表される置換基を有する、請求項5から7のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【化7】

前記一般式(7)において、mおよびnは、それぞれ、1〜10の整数であり、同一でも異なっていてもよい。lは、1〜5の整数である。
【請求項9】
前記ハードコート形成用組成物が、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が0.05〜0.4重量部の範囲で配合され、かつ、前記(C)成分が0.05〜1重量部の範囲で配合されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
前記ハードコート形成用組成物が、さらに下記(D)成分を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
(D)成分:無機酸化物粒子表面が重合性不飽和基を含む有機化合物で修飾され、かつ、重量平均粒径が200nm以下である粒子
【請求項11】
前記(D)成分の重量平均粒径が、1〜100nmの範囲である、請求項10記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
前記(D)成分が、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の微粒子を含む、請求項10または11記載の透明導電性フィルム。
【請求項13】
前記ハードコート形成用組成物が、前記(A)成分100重量部に対し、前記(D)成分が、100〜200重量部の範囲で配合されている、請求項10から12のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項14】
前記ハードコート形成用組成物が、さらに下記(E)成分を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
(E)成分:下記一般式(8)で表されるグリコール系化合物
【化8】

前記一般式(8)において、mおよびnは、それぞれ、1以上の整数であり、同一でも異なっていてもよい。
【請求項15】
前記ハードコート形成用組成物が、前記(A)成分100重量部に対し、前記(B)成分が0.05〜0.4重量部の範囲で配合され、かつ、前記(C)成分と前記(E)成分とが、合計で0.1〜1重量部の範囲で配合されている、請求項14記載の透明導電性フィルム。
【請求項16】
前記ハードコート層の最表層が、ESCAによる分析での、反応性フッ素化合物由来のフッ素原子強度が5〜30%の範囲内であり、かつ、反応性ケイ素化合物由来のケイ素原子強度が0.2〜10%の範囲内である、請求項1から15のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項17】
前記ハードコート層の厚みが、3〜50μmの範囲である、請求項1から16のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項18】
前記ハードコート層表面のJIS K 5600−5−4の規定に準じた加重500gでの鉛筆硬度が、4H以上である、請求項1から17のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項19】
前記ハードコート層表面の表面自由エネルギーが、15〜25mJ/mの範囲である、請求項1から18のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項20】
前記ハードコート層が、さらに微粒子を含有している、請求項1から19のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項21】
前記透明なフィルム基材の一方の面に前記ハードコート層を有し、他方の面に前記透明導電性薄膜を有している、請求項1から20のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項22】
前記透明なフィルム基材が、複数枚の透明フィルムを透明粘着剤層を介して貼り合わせた積層体である、請求項1から21のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項23】
前記透明フィルムの少なくとも1枚が装飾フィルムである、請求項22記載の透明導電性フィルム。
【請求項24】
透明導電性フィルムを備える電子機器であって、前記透明導電性フィルムが、請求項1から23のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムであることを特徴とする電子機器。
【請求項25】
透明導電性フィルムを備えるタッチパネルであって、前記透明導電性フィルムが、請求項1から23のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムであることを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−224956(P2011−224956A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154869(P2010−154869)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】