説明

透明導電性フィルムおよびそれを用いてなるエレクトロルミネッセンス素子。

【課題】
本発明は、薄くても、表示体にカールや反りかえりなどの平面性不良が起きにくい透明導電性フィルムを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の透明導電性フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム(A)に透明導電層(B)が積層されてなる透明導電性フィルムにおいて、該二軸延伸ポリエステルフィルム(A)の50cm四方の範囲における、本文で定義する面配向係数の最大値と最小値の差が0.007以下であり、かつ、該面配向係数の平均が0.11〜0.15であることを特徴とするものである。
また、本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、かかる透明導電性フィルムを用いて構成されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄くて、カールや反りかえりなどの平面性不良のない優れた透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルデイスプレイには透明な電極が必要である。例えばエレクトロルミネッセンス素子では、透明性を有するフィルムに透明導電性層を積層した透明導電性フィルムに、逐次、発光体層、誘電体層、絶縁体層および背面電極(金属箔等)を形成する(特許文献1)か、または、該背面電極として、導電性樹脂層を塗布した層を形成した薄型のエレクトロルミネッセンス素子が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平1−81112号公報
【特許文献2】特開平5−347186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、表示装置等のさらなる薄型化の要求に伴い透明導電フィルムについてもより薄膜化が要求されるようになってきた。しかし、薄い透明導電フィルムに、例えば上述のようなエレクトロルミネッセンス素子構成の発光体層、誘電体層、絶縁体層などの表示素子として必要な各層を積層していくと、透明導電性フィルムを含む表示体が色々な形状にカールする現象が生じ、反りかえり、平面性不良がおきることがわかった。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、薄くても、表示体にカールや反りかえりなどの平面性不良が起きにくい透明導電性フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の透明導電性フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム(A)に透明導電層(B)が積層されてなる透明導電性フィルムにおいて、該二軸延伸ポリエステルフィルム(A)の50cm四方の範囲における、本文で定義する面配向係数の最大値と最小値の差が0.007以下であり、かつ、該面配向係数の平均が0.11〜0.15であることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、かかる透明導電性フィルムを用いて構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より薄く、かつカールや反りかえりなどの平面性不良が起きにくい透明導電性フィルムを提供することができるので、たとえば液晶やエレクトロルミネッセンス等を用いるフレキシブルデイスプレイ用の透明電極、あるいは携帯電話、広告用のバックライトに使用されるエレクトロルミネッセンス素子の透明電極を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、前記課題、つまり薄くても、表示体にカールや反りかえりなどの平面性不良が起きにくい透明導電性フィルムについて、鋭意検討し、平面係数のばらつきと平均が特定な範囲内に制御された、つまり特定な平面特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムに透明導電層を積層して作ってみたところ、かかる課題を一挙に解決する透明導電性フィルムを提供することができることを究明したものである。
【0009】
すなわち、フィルムが厚い場合は、表示体がカールしたり、反り返ったり、平面性不良が起きない。このことから、剛性の強いフィルムを選択することが、考えられるが、フィルムの厚さが薄くなると、剛性はフィルムの厚さの三乗に反比例して低下するために、課題解決を難しくしている。本発明は剛性が低く、かつ前記特定な平面特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることによって、表示体をより薄くでき、かつカール、反り返り、平面性不良がおきにくい透明導電性フィルムを製造できることを見出したものである。
【0010】
本発明の透明導電性フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、主鎖中の結合にエステル結合を有する高分子の総称であって、通常ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。ここでジカルボン酸成分としては、たとえばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることができる。また、グリコール成分としては、たとえばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどが挙げられる。
【0011】
本発明の透明導電性フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルム(A)のポリエステルは特に限定されるわけではないが、エチレンテレフタレート単位および/もしくはエチレン2,6−ナフタレート単位が構成成分の95モル%以上含有することが好ましい。97モル%以上であれば、より好ましい。
【0012】
本発明の透明導電性フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルム(A)のポリエステルは耐熱性の点から融点が246〜280℃であることが好ましい。さらに好ましくは250〜275℃である。
【0013】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルム(A)の製造方法としては、特に限定されないが、たとえばポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給、溶融しスリット状のダイからシート状またはチューブ状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る。製膜方法としてはチューブラー方式、テンター方式などがあるがフィルムの品質の面でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後幅方向に延伸する、あるいは幅方向に延伸した後長手方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。
【0014】
本発明の透明導電性フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルム(A)は、50cm四方の範囲における面配向係数の最大値と最小値の差(以下、ばらつきと表記)が0.007以下であることが必要である。ここで、フィルムの面配向係数とは、フィルムの長手方向屈折率をnMD、フィルムの幅方向屈折率をnTD、そしてフィルムの厚さ方向屈折率をnZDとした際に、面配向係数fn=(nMD+nTD)/2−nZDで算出される値である。
【0015】
さらに、かかる面配向係数のばらつきは、好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.003以下であるのが、平面性不良をより効果的に防止することができるのでよい。
【0016】
かかる屈折率、面配向係数(fn)は、以下の手段で測定したものである。すなわち、ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、アッベ屈折計にて長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(それぞれnX、nY、nZ)を求めた。面配向係数fnはfn=(nX+nY)/2−nZを計算して求めたものである。
【0017】
フィルムの50cm四方の範囲における面配向係数の最大値および最小値は、具体的には、フィルムの測定面を一定として、フィルム50cm四方を10cm四方に碁盤の目状に裁断し、25片のサンプルを作成し、その25サンプルの中央より長手方向2cm幅方向1cmを切り出して上記方法で面配向係数を測定、算出し、面配向係数の最大値と最小値の差であるばらつきを求めたものである。
【0018】
同一のフィルムに対して幅方向の位置を一定にして、該測定を3回行い、最大値と最小値の差の平均を求めて、面配向係数のばらつきとした。本発明では、サンプルの測定面は製膜の際にキャスティングドラムに密着させた面の反対側のフィルム面の面配向係数を測定したものである。
【0019】
また、フィルムの両面の面配向係数の差の絶対値の算出、測定に際しては、フィルム上の任意の場所より2cm四方のサンプル片を10サンプル採取し、ダイヤルゲージにて厚みを測定し、屈折率の測定をフィルム両面に対して行ったものを採用した。
【0020】
かかる範囲における面配向係数のばらつきを0.007以下とする手法は、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜に使用するモーターの駆動斑を抑制する方法、溶融押出したポリマーのキャスティングドラムへの密着時の斑および延伸時の斑を抑制する方法などが挙げられる。たとえば、キャスト時の斑を抑制し均一な未延伸シートを得る方法としては、静電印加によりポリマーをドラムに密着する際の電極としてテープ状の電極を用いる方法が好ましい。従来より一般的に用いられているワイヤー電極に比較してテープ電極ではドラムとフィルムの密着点への電荷の集中が起こり斑の抑制に効果があるのみならず、電極自体のバタツキによる斑の発生の抑制の観点からもテープ電極が好ましい。
【0021】
一方、延伸時の斑発生を抑制する方法としては、延伸条件や延伸方式、さらに詳しくは延伸にロールを用いる場合には、ロールの真円性、ロール表面の均一性、また、フィルムの温度均一性などを挙げることができる。これらの手法の中でも、フィルムが加熱ロールに接触していないロール間での空中において延伸する方法が好ましく、さらには空中で延伸する際のフィルムのバタツキを抑制することが好ましい。また、フィルムの温度を均一化する方法としては、延伸前の予熱区間において十分に加熱する方法、延伸温度より高温で予熱を行う方法が好ましく、詳しくは予熱ロールを使用する場合には同一温度に設定したロールを少なくとも2本以上用いてフィルムを加熱することが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の透明導電フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルム(A)は、前記面配向係数の平均が0.11〜0.15であることが必要である。かかる面配向係数の平均が0.11未満であると、ばらつきが大きくなり、乾燥工程での反りなどの平面性不良に問題が生じ、また前記面配向係数の平均が0.15を越えると、平面性が劣る。かかる面配向係数の平均は0.127〜0.145の範囲であるとさらに好ましい。かかる面配向係数の平均をかかる範囲内とする方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば延伸条件や熱処理条件を適正な範囲とすることにより達成することができる。生産性の点からは延伸温度を高くして高倍率に延伸することが好ましいが、高温で延伸することは延伸張力のばらつきが生じやすく、配向斑の点からは好ましくない。そこで、延伸にロールを用いる場合には、好ましいロール表面としてシリコーンやセラミックがあげられるが、特に非粘着性シリコーンをロール表面素材に用いて構成されたものを使用するのが好ましい。さらに、同時二軸延伸する手段を採用した場合であると、延伸張力が均一になりやすく、配向斑の観点からも好ましい。また、輻射熱を利用して短時間で高温にかつ均一にフィルム温度を上昇させて延伸してもよい。
【0023】
本発明の透明導電性フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルム(A)は、150℃で30分加熱したときの該加熱前後のフィルム長手方向およびそれと直交する幅方向の寸法変化率が、−0.5〜+0.5%の範囲内にあるものが、表示素子を構成する各積層を乾燥する工程での平面性不良化を防止することできるのでより好ましい。
【0024】
ここでいうポリエステルフィルムの加熱前後の寸法変化率は、該フィルムを、長手方向150mm、それと直行する方向に150mmの正方形で切り出し、切り出したフィルムの中心より長手方向とそれと直行する方向に、鉄ペンでそれぞれ100mmの標線を設ける。熱処理前の標線をノギスで読みとって、処理前長(L0)とし、フィルムを150℃のオーブンで30分加熱処理した後に、室温で30分以上冷やした後に、処理前に設けた標線の長さをノギスで読みとって、処理後長(L)として、次式で寸法変化率を算出したものである。
【0025】
加熱前後の寸法変化率(%)=[(L−L0)/L0]*100
本発明の透明導電フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルム(A)は、フィルム厚みt(単位μm)と、フィルム両面の面配向係数の差の絶対値Δfの関係が、下記式(1)を満足することが、乾燥工程での平面性不良を防止する点で好ましい。
【0026】
0.001≦Δf・t≦0.700 ・・・(1)
Δf・tが0.700を越える場合、乾燥工程でフィルムの表裏で変形度が大きく異なることが生じるので好ましくない。また、Δf・tが0.001未満である場合は平面性が悪化するので好ましくない。フィルム厚みtはエレクトロルミネッセンス塗工層を把持するために、
10〜250μmが好ましい。本発明の効果はフィルム厚みが10μm〜130μmの薄手において顕著に発揮される。
【0027】
本発明の透明導電性フィルムに用いられる二軸延伸ポリエステルフィルム(A)は、固体高分解能核磁気共鳴分光法(NMR)において測定される緩和時間T1ρにおいて、カルボニルの緩和時間(τ1)とフェニル基4級炭素の緩和時間(τ2)の関係が、下記式(2)を満たすことが、乾燥工程での平面性の観点から好ましい。
1.8 ≦τ1/τ2≦ 50 ・・・(2)
(τ1/τ2)がかかる範囲内にあれば、ポリエステル分子鎖中の運動性が抑制された結晶と非晶の中間相が形成され、乾燥工程後も該構造が維持されることにより、熱履歴による結晶化を抑制し、その結果、優れた耐衝撃性を発現することが可能になる。したがって、(τ1/τ2)が1.8未満であると、分子鎖の運動性抑制が弱く、平面性が悪化することがあり、さらに成形加工後の平面性に劣ることがある。逆に(τ1/τ2)が50を越えるようであれば、運動性が抑制されすぎて平面性の劣化を招くことがある。
【0028】
τ1およびτ2の関係をかかる範囲内とする方法としては、特に限定されるものではないが、ポリエステルの固有粘度、触媒、ジエチレングリコール量やフィルム製造時の延伸条件および熱処理条件などの適正化により達成することができる。
【0029】
本発明の透明導電性フィルムに用いるのに好ましいこれらの二軸延伸ポリエステルフィルム(A)の製造方法については、特開2000−289024、特開2001−347565、特開2002−103443に開示されている手段を採用することができる。
【0030】
二軸延伸ポリエステルフィルム(A)と透明導電層(B)との接着性を上げるために前もって、フィルム/シートに、フィルム/シートにする行程、あるいはフィルム/シートにした後で接着樹脂をコーテイング、あるいは放電処理などの表面処理をすることが好ましい。
【0031】
なお、ここではフィルムとは厚みが1μm以上、2mm以下のものをさす。
【0032】
二軸延伸ポリエステルフィルム(A)上に積層される透明導電性層(B)としては、導電性を有し且つ薄膜形成時に透明性を有するものがよく、例えば金、銀、白金、パラジウム、ロジウム等の金属、あるいは酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、或いは酸化インジウム−酸化錫系、酸化錫−酸化アンチモン系等の導電性金属酸化物などの金属系透明導電性薄膜が透明性を保持しながら高い導電性を示すことから好ましい。中でも同じ導電性でも透明性が高い導電性金属酸化物がより好ましい。特に好ましくは酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、あるいはこれらの二種以上の化合物である。これらの金属系導電性薄膜は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。
【0033】
これらの透明導電性層(B)は単層でもよいが2層以上の複層にすることもできる。透明導電性層(B)の厚みは特に限定されないが、表面電気抵抗値として、好ましくは1Ω/□〜1000Ω/□、より好ましくは30Ω/□〜1000Ω/□がよい。また、透明導電性層(B)の可視光線領域の全光線透過率は50%以上で、好ましくは70%以上がよい。
【0034】
表面電気抵抗については、エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度を高めるには透明導電フィルムの表面電気抵抗値が低い方がよいが1Ω/□以下では消費電力が大きくなり不経済であり、発光輝度と消費電力のバランスを考慮すれば30Ω/□以上1000Ω/□以下が好ましい。全光線透過率は高い方がエレクトロルミネッセンス発光の光をより多く通すのでエレクトロルミネッセンス素子の発光輝度が高くなり望ましいが、全光線透過率が50%以上であれば実用上問題ないが70%以上であれば発光輝度が高くなる点でより好ましい。
【0035】
なお、ここでいう表面抵抗値はJIS R1637に基づいて、4探針法にて誘電体層上に測定電極を置き測定したものであり、全光線透過率は、JIS K7105に基づいて測定したものである。
【0036】
本発明の透明導電性フィルムの透明導電層(B)として、導電性高分子も用いることができる。かかる導電性高分子としては、透明性、導電性、可撓性の上からポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、ならびにそれらの共重合物から選ばれた導電性高分子のいずれか一種または二種以上の混合物などを使用することができる。中でも側鎖を導入することにより水あるいはその他の溶媒に可溶性、または分散性を有するポリチオフェン、ポリアルキルフルオレン、ポリフルオレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレンの誘導体、およびこれらの共重合物から選ばれた少なくとも一種の導電性高分子が、透明性、導電性に優れ、かつフィルム/シートにコーテイングすることができ、適切な厚みの導電性高分子膜を均一に形成することができることから、より好ましく使用される。特にポリジオキシチオフェンを含有してなる導電性高分子、中でもポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる導電性高分子は、水あるいはその他の溶媒に溶解、あるいは分散できることから容易に高分子フィルムにコーテイングでき、さらに透明性と導電性が特に高い膜を形成できることから最も好ましく使用される。
【0037】
ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸からなる導電性高分子の水あるいはその他の溶媒に溶解、または分散した樹脂液の作成方法は、特開平7−90060号公報、特許第3210211号公報、あるいは国際公開第02/067273号パンフレットに提案されている手段を採用することができる。
【0038】
導電性高分子にポリスチレン粒子、アクリル樹脂粒子などの粒子を添加することによって滑性が高まることからディスプレイ画面サイズにフィルム/シートを断裁する際に、断裁したフルイム/シートの積み上げが容易になるなどの特長が発現する。また、樹脂を添加することによって、透明導電層(B)の強度が強くなり、擦れや引っかき耐久性などの品質の安定性が向上する。
【0039】
導電性高分子を二軸延伸ポリエステルフィルム(A)に積層する方法は、電解重合法、蒸着法、コーテイング法(塗工法)などが有り、用途、導電性有機物によって適宜選択でき、特に限定されるものではない。しかし、水あるいはその他の溶媒に溶ける導電性高分子をコーテイング法により積層するのが、フィルム/シートのように幅が広く、長さが長い基材に一様に、規定の厚みで積層できることからより好ましい。コーテイングの方法は特に限定されるものではなく、用途に応じて適切な方法を選択して使用することができる。
【0040】
導電性高分子を用いた透明導電層(B)の厚みは、導電性高分子の種類によって異なり、表面抵抗値、光線透過率によって適宜決定すべきであるが、具体的には400nmから5μm程度が好ましい、より好ましい厚みは表面抵抗値と光線透過率の点で500nmから2μmである。400nm未満では表面抵抗値が高くなり、5μmを超えると、導電性高分子の光吸収により光線透過率が低下する。
【実施例】
【0041】
以下実施例により本発明を説明するが、実施例中の特性値は次の方法により評価したものである。評価は室温20〜25℃かつ相対湿度40〜65%に制御された室内において実施した。
【0042】
(1)ポリエステルフィルムの加熱前後の寸法変化率は、フィルムを長手方向150mmそれと直行する方向に150mmの正方形で切り出し、切り出したフィルムの中心より長手方向とそれと直行する方向に鉄ペンでそれぞれ100mmの標線を設た。熱処理前の標線をノギスで読みとり処理前長(L0)とし、フィルムを150℃のオーブンで30分加熱処理した後に室温で30分以上冷やした後に処理前に設けた標線の長さをノギスで読みとり処理後長(L)とした。寸法変化率は、次式で計算した。
・加熱前後の寸法変化率(%)=[(L−L0)/L0]*100。
【0043】
(2)ポリエステルの融点ポリエステルを結晶化させ、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC7型)により、10℃/分の昇温速度で測定し融解のピーク温度を融点とした。
【0044】
(3)屈折率、面配向係数(fn)は、ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、アッベ屈折計にて長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(それぞれnX、nY、nZ)を求めた。面配向係数fnは
fn=(nX+nY)/2−nZ
を計算して求めた。
【0045】
フィルムの50cm四方の範囲における面配向係数の最大値および最小値は、フィルムの測定面を一定として、フィルム50cm四方を10cm四方に碁盤の目状に裁断し、25片のサンプルを作成し、その25サンプルについて上記方法で面配向係数を測定、算出し、面配向係数の最大値と最小値の差であるばらつきを求めた。
【0046】
同一のフィルムに対して幅方向の位置を一定にして、該測定を3回行い、最大値と最小値の差の平均を求めて、面配向係数のばらつきとした。本実施例に際しては、サンプルの測定面は製膜の際にキャスティングドラムに密着させた面の反対側のフィルム面の面配向係数を測定した。
【0047】
また、フィルムの両面の面配向係数の差の絶対値の算出、測定に際しては、フィルム上の任意の場所より2cm四方のサンプル片を10サンプル採取し、ダイヤルゲージにて厚みを測定し、屈折率の測定をフィルム両面に対して行った。
【0048】
(4)表面抵抗値はJIS R1637に基づいて、4探針法にて誘電体層上に測定電極を置き測定した。
【0049】
(5)全光線透過率、b*値:JIS K7105に基づいて測定した。
【0050】
(6)エレクトロルミネッセンス素子の反り返り、平面性は標準石盤に裏面電極側を下に向けて静置し目視観察にて良否を判定した。判定基準は、つぎの通りとし、○判定を合格とした。
○判定:反り返りがなく、平面に波打ちが無い状態
▲判定:反り返りはないが、平面にでこぼこの波打ちがある状態
×判定:反り返りがある状態
〔実施例1〜3〕
実施例1〜3においては、ポリエチレンテレフタレートを十分に真空乾燥後、280℃で溶融押出をし、キャスティングドラムに密着させ未延伸シートを得た。その際、静電印加電極としてテープ状の電極を使用した。次に未延伸シートに逐次二軸延伸を施して二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。その際、延伸条件は長手方向延伸前予熱温度を115℃(5秒)とし、延伸温度113℃、倍率3.1倍をフィルムが空中にある状態で、延伸速度65000%/分で行った。一旦フィルム温度を35℃に冷却後、直行方向に延伸前予熱温度95℃(5秒)とし、延伸温度120℃、倍率3.2倍の幅方向延伸を行った。延伸後熱処理を温度190℃(6秒)で行った。フィルムの厚みは溶融押し出し量を変化させ、未延伸シートの厚みを変えることで調整した。この方法で得られたフィルムを200℃に加熱した熱風オーブン内で1分間加熱するように搬送し高分子フィルムを基材(A)を得た。
【0051】
この基材(A)に巻き取り式DCパルシング法マグネトロンスパッター装置を用いて表面抵抗値が400Ω/□になるように、ITO薄膜(透明導電層(B))を形成した。なお、スパッターの条件は、ITOターゲット(酸化インジウム(90wt%)と酸化錫(10wt%)の焼結ターゲット(焼結密度99%以上))を用い、真空度4×10−3Paまでスパッター装置内を排気後酸素3.5mol%のAr/O混合ガスを導入し、真空度4×10−2Paにした後に、基材速度3m/minでスパッターした。得られた透明導電性フィルムの評価結果は表1のとおりであった。
【0052】
得られた透明導電フィルムを50cm四方に切り出し、任意の配置で25個のエレクトロルミネッセンス素子を作成するために、以下の方法で無機エレクトロルミネッセンス層を形成した。
【0053】
まず透明導電フィルムの透明導電層(B)上にフッ素系樹脂バインダー30部、有機溶剤メチルエチルケトン40部、蛍光発光体30部を混合し、スクリーン印刷して、遠赤外線ヒーターで120℃、3分間加熱乾燥し蛍光体層(C)を形成した。
【0054】
次にフッ素系樹脂30部、有機溶剤メチルエチルケトン40部、チタン酸バリウム30部を混合し、スクリーン印刷して、遠赤外線ヒーターで120℃、3分間加熱乾燥し蛍光体層上に誘電体層(D)を形成した。さらに市販の銀カーボンペースト(田中貴金属工業(株)製TS−5201)を乾燥膜厚が12μmになるように塗布し遠赤外線ヒーターで150℃、3分間加熱乾燥し裏面電極層(E)を形成した。
【0055】
透明導電フィルムの透明導電層(B)上に予め透明導電層(B)を露出した部分を残して置き、この部分に総断面積0.2mmの銅縒り線をリード線(F)としてハンダ付けして透明導電フィルム側の電極とし、銀カーボンペースト層上の任意の部分に総断面積0.2mmの銅縒り線をリード線(F)としてハンダ付けして裏面電極側の電極とした。
【0056】
電極を形成した後、無機エレクトロルミネッセンス層側全体に市販のUV硬化型防湿塗料(デュポン(株)製UVエンキャップ5018)を乾燥膜厚が25μmになるようにスクリーン印刷して、遠赤外線ヒーターで85℃、2分間加熱乾燥し、さらに100w/cmのエネルギー強度の高圧水銀灯で照射して、該樹脂を架橋硬化させ防湿層(G)を形成した。25個のエレクトロルミネッセンス素子はカッターで切り出し、エレクトロルミネッセンス素子を完成させた。
【0057】
完成後のエレクトロルミネッセンス素子の反り返りと平面性を目視判定した結果、表1に示すように良好なエレクトロルミネッセンス素子を得ることが出来た。(図2にエレクトロルミネッセンス素子の形成例を示す)
〔実施例4〕
実施例1〜3と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルム(修正しました)からなる基材(A)を得た後に、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる導電性高分子水溶液(固形分濃度0.7%)(Agfa−Gevaert N.V製 商品名:Orgacon N300 NEW)を乾燥後の膜厚が1.2μmになるように塗工し、透明導電層(B)を形成した。得られた透明導電性フィルムの評価結果は表1のとおりであった。
【0058】
実施例1〜3と同様の方法でエレクトロルミネッセンス素子を完成させた。完成後のエレクトロルミネッセンス素子の反り返りと平面性を目視判定した結果、表1に示すように良好なエレクトロルミネッセンス素子を得ることが出来た。
【0059】
〔比較例1〜3〕
実施例1〜3の縦方向延伸方式はそのままで延伸温度を115℃、延伸倍率を3.5倍として、それ以外の(比較例のサンプルを変更したのに伴い、記述を修正しました)製膜条件を同じとして表1に示す物性を有する二軸延伸ポリエステルフィルム(修正しました)からなる基材(A)を得た。その後実施例1〜3と同様の方法で透明導電性フィルムを完成させた。
【0060】
得られた透明導電性フィルムの評価結果は表1のとおりで、面配向係数が高く、また50cm角内の面配向係数差も大きかった。延伸倍率の上昇によりフィルム面内配向の等方性に偏りが見られた。
【0061】
さらに実施例1〜3と同様の方法でエレクトロルミネッセンス素子を完成させた。完成後のエレクトロルミネッセンス素子の反り返りと平面性を目視判定した結果、表1に示すように比較例ではフィルム面内配向の当方性が損なわれ配向に偏りが生じた結果エレクトロルミネッセンス素子に加工したときに面内の平面性が損なわれたと考える。この傾向は高分子フィルムの厚みが薄くなるほどその影響は顕著であり、平面にでこぼこの波打ちがあるのみならず素子の反り返りが大きく、エレクトロルミネッセンス素子としての商品価値は無かった。(全体的に修正しました)
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
情報機器の表示装置に必要なバックライトとして用いられるエレクトロルミネッセンス素子の重要な構成材料である透明導電性フィルムとして利用でき、特に薄型の表示装置に好適なバックライトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の複合透明性基材断面の一例を示す概略図である。
【図2】本発明を用いたエレクトロルミネッセンス素子断面の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1.高分子フィルム、またはシートからなる基材(A)
2.透明導電層(B)
3.蛍光体層(C)
4.誘電体層(D)
5.裏面電極層(E)
6.リード線(F)
7.防湿層(G)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルム(A)に透明導電層(B)が積層されてなる透明導電性フィルムにおいて、該二軸延伸ポリエステルフィルム(A)の50cm四方の範囲における、本文で定義する面配向係数の最大値と最小値の差が0.007以下であり、かつ、該面配向係数の平均が0.11〜0.15である透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリエステルフィルム(A)が、150℃で30分加熱したときの該加熱前後のフィルム長手方向およびそれと直交する幅方向の、本文で定義する寸法変化率が−0.5〜+0.5%の範囲内にあるものである請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリエステルフィルム(A)が、246〜280℃の融点を有するものである請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリエステルフィルム(A)が、ポリエステルの構成成分の95モル%以上がエチレンテレフタレート単位および/もしくは2,6−エチレンナフタレート単位である請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記二軸延伸ポリエステルフィルム(A)の厚みをt(単位μm)、基材両面の面配向係数の差の絶対値をΔfとしたときに、下記式(1)の関係を満足する請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
0.001≦Δf・t≦0.700 ・・・(1)
【請求項6】
前記透明導電層(B)が、JIS R1637に基づいて測定される表面抵抗値が30Ω/□以上1000Ω/□以下の範囲で、かつ、JIS K7105に基づいて測定されるその全光線透過率が70%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性積層体。
【請求項7】
前記透明導電層(B)が、金属系透明導電性薄膜からなる請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記金属系透明導電性薄膜が、導電性金属酸化物からなる薄膜で構成されているものである請求項7に記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記金属酸化物が、酸化インジウム、酸化錫及び酸化亜鉛から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる薄膜である請求項8に記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
前記透明導電層(B)が、導電性高分子からなる請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
前記導電性高分子が、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリフルオレンおよびこれらの誘導体ならびにこれらの共重合物から選ばれた導電性高分子のいずれか一種または二種以上の混合物からなる薄膜である請求項10に記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の導電性フィルムを用いて構成されているエレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−103221(P2007−103221A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293263(P2005−293263)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】