説明

透明導電性フィルム

【課題】従来の透明導電性フィルムは、結晶性ポリマーフィルムを用いているため、色むらが生じる。色むらは非晶性ポリマーフィルムを用いることにより解決できる。しかし、非晶性ポリマーフィルムは表面に傷がつきやすい。また透明導電性フィルムの両面に金属層を有する場合、金属層どうしが圧着する。
【解決手段】透明導電性フィルム30は、非晶性ポリマーフィルムからなる基材11と、第1ハードコート層12、第1透明導電体層13、および第1金属層14と、第2ハードコート層26、第2透明導電体層27、および第2金属層28を有する。第1ハードコート層12はバインダー樹脂19と複数の粒子18を含む。第2ハードコート層26はバインダー樹脂23と複数の粒子22を含む。第1金属層14は表面に複数の凸部20を有する。第2金属層28は表面に複数の凸部21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式タッチパネルなどに用いられる透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
基材と、その両面に各々形成された透明導電体層と、各々の透明導電体層の上に形成された金属層を備えた透明導電性フィルムが知られている(特許文献1:特開2011−60146)。このような透明導電性フィルムは、例えば静電容量方式タッチパネルに用いたとき、金属層を加工して、タッチ入力領域の外縁部に引き回し配線を形成することにより、狭額縁化を実現できる。しかし、従来の透明導電性フィルムは、基材として、複屈折率が大きい上にばらつきがあるポリエチレンテレフタレートフィルム(結晶性ポリマーフィルム)を用いているため、虹色の色むら(色の濃淡)が生じるという問題がある。ポリエチレンテレフタレートフィルムの複屈折率は通常0.01程度である。
【0003】
非晶性ポリマーフィルムは結晶性ポリマーフィルムに比べて複屈折率が小さく均一である。このため透明導電性フィルムの色むらは、非晶性ポリマーフィルムからなる基材を用いることにより解消される。しかし、非晶性ポリマーフィルムは結晶性ポリマーフィルムより脆弱であるため、表面に傷がつきやすいという問題がある。さらに透明導電性フィルムの両面に金属層を有する場合、透明導電性フィルムを巻き取ってロールにしたとき、隣接する透明導電性フィルムの金属層どうしが圧着(ブロッキング;圧力で固着すること)するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−60146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、色むらを解消するため基材として非晶性ポリマーフィルムを用いた場合、基材の表面に傷がつきやすいという問題を解決することである。さらに、隣接する透明導電性フィルムの金属層どうしが圧着するという問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の透明導電性フィルムは、非晶性ポリマーフィルムからなる基材と、基材の一方の面に順次形成された、第1ハードコート層、第1透明導電体層、第1金属層を有する。また、基材の他方の面に順次形成された、第2ハードコート層、第2透明導電体層、第2金属層を有する。第1ハードコート層はバインダー樹脂と複数の粒子を含有する。粒子の直径あるいは高さは、バインダー樹脂の平坦な領域の厚さより大きい。第1金属層はその表面に、第1ハードコート層に含まれる複数の粒子に起因する複数の凸部を有する。
(2)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1金属層の表面の凸部の分布密度は、100個/mm〜2000個/mmである。
(3)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第2ハードコート層はバインダー樹脂と複数の粒子を含有する。第2ハードコート層に含有された粒子の直径あるいは高さは、第2ハードコート層に含有されたバインダー樹脂の平坦な領域の厚さより大きい。第2金属層はその表面に、第2ハードコート層に含まれる複数の粒子に起因する複数の凸部を有する。
(4)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第2金属層の表面の凸部の分布密度は、100個/mm〜2000個/mmである。
(5)本発明の透明導電性フィルムにおいて、非晶性ポリマーフィルムを形成する材料は、ポリシクロオレフィンまたはポリカーボネートである。
(6)本発明の透明導電性フィルムにおいて、非晶性ポリマーフィルムの面内の複屈折率は0〜0.001であり、面内の複屈折率のばらつきは0.0005以下である。
(7)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1ハードコート層に含まれる粒子を形成する材料はアクリルポリマー、シリコーンポリマー、スチレンポリマー、または無機シリカである。
(8)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第2ハードコート層に含まれる粒子を形成する材料はアクリルポリマー、シリコーンポリマー、スチレンポリマー、または無機シリカである。
(9)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1ハードコート層に含まれる粒子は球状であり、その直径は1μm〜5μmである。
(10)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第2ハードコート層に含まれる前記粒子は球状であり、その直径は1μm〜5μmである。
(11)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1ハードコート層に含まれる複数の粒子の含有量は、第1ハードコート層の0.05重量%〜3重量%である。
(12)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第2ハードコート層に含まれる複数の粒子の含有量は、第2ハードコート層の0.05重量%〜3重量%である。
(13)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1金属層の表面の算術平均粗さRaは0.005μm〜0.05μmであり、最大高さRzは0.5μm〜2.5μmである。
(14)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第2金属層の表面の算術平均粗さRaは0.005μm〜0.05μmであり、最大高さRzは0.5μm〜2.5μmである。
(15)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1透明導電体層を形成する材料および第2透明導電体層を形成する材料は、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物のいずれかである。
(16)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1金属層を形成する材料および第2金属層を形成する材料は、銅または銀である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、透明導電性フィルムの色むら、表面の傷、および金属層の圧着の問題が解決された。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の透明導電性フィルム(第1例)の断面模式図
【図2】本発明の透明導電性フィルム(第2例)の断面模式図
【図3】本発明の透明導電性フィルム(第3例)の断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[透明導電性フィルム]
本発明の透明導電性フィルム10(第1例)は、図1に示すように、基材11、第1ハードコート層12、第1透明導電体層13、および第1金属層14を備える。第1ハードコート層12、第1透明導電体層13、および第1金属層14は、基材11の一方の面(図1では上面)にこの順で積層される。本発明の透明導電性フィルム10は、さらに、第2ハードコート層15、第2透明導電体層16、および第2金属層17を備える。第2ハードコート層15、第2透明導電体層16、および第2金属層17は、基材11の他方の面(図1では下面)にこの順で積層される。
【0010】
基材11は非晶性ポリマーフィルムからなる。第1ハードコート層12はバインダー樹脂19と複数の粒子18を含む。粒子18の直径dは、バインダー樹脂19の平坦な領域(粒子18の無い領域)の厚さtより大きい。このため第1ハードコート層12の表面の高さは、粒子18のある領域では高く、バインダー樹脂19のみの平坦な領域では低い。第1透明導電体層13および第1金属層14は、第1ハードコート層12の表面に沿って積層される。そのため、第1金属層14の表面形状は、第1ハードコート層12の表面形状を反映し、粒子18のある位置に凸部20を有する。
【0011】
第2ハードコート層15はバインダー樹脂23を含む。第2ハードコート層15の表面形状は、第1ハードコート層12の表面形状とは異なり、平坦である。第2透明導電体層16および第2金属層17は、第2ハードコート層15の表面に沿うように積層される。そのため、第2金属層17の表面形状は第2ハードコート層15の表面形状を反映し、平坦である。
【0012】
本発明の透明導電性フィルム10の基材11には、複屈折率が小さく均一な非晶性ポリマーフィルムが用いられる。そのため本発明の透明導電性フィルム10では色むらが解消される。また、本発明の透明導電性フィルム10は、第1ハードコート層12および第2ハードコート層15が基材11の表面を覆っているため、基材11の表面に傷がつくことが防止される。さらに、第1金属層14の表面は凸部20を有するため、透明導電性フィルム10を巻回してロールにしたとき、第1金属層14と第2金属層17が点接触となる。これにより第1金属層14と第2金属層17が圧着することが避けられる。
【0013】
本発明の透明導電性フィルム10は傷や圧着を避けられるため、長尺の透明導電性フィルム10をロール ツー ロールプロセスにより製造することができる。また、長尺の透明導電性フィルム10を巻回した透明導電性フィルムロールの形態で、保管、輸送、および加工を行なうことができる。そのため本発明の透明導電性フィルム10は生産性が高い。
【0014】
本発明の透明導電性フィルム30(第2例)は、図2に示すように、基材11、第1ハードコート層12、第1透明導電体層13、および第1金属層14を備える。第1ハードコート層12、第1透明導電体層13、および第1金属層14は、基材11の一方の面にこの順で積層される。本発明の透明導電性フィルム30は、さらに、第2ハードコート層26、第2透明導電体層27、および第2金属層28を備える。第2ハードコート層26、第2透明導電体層27、および第2金属層28は、基材11の他方の面にこの順で積層される。
【0015】
基材11は非晶性ポリマーフィルムからなる。第1ハードコート層12はバインダー樹脂19と複数の粒子18を含む。粒子18の直径dはバインダー樹脂19の平坦な領域(粒子18の無い領域)の厚さtより大きい。このため第1ハードコート層12の表面の高さは、粒子18のある領域では高く、バインダー樹脂19のみの平坦な領域では低い。第1透明導電体層13および第1金属層14は、第1ハードコート層12の表面に沿って積層される。そのため、第1金属層14の表面形状は、第1ハードコート層12の表面形状を反映し、粒子18のある位置に凸部20を有する。
【0016】
第2ハードコート層26はバインダー樹脂23と複数の粒子22を含む。粒子22の直径はバインダー樹脂23の平坦な領域(粒子22の無い領域)の厚さより大きい。第2ハードコート層26の表面形状は、第1ハードコート層12の表面形状と類似し、粒子22のある領域では高く、バインダー樹脂23のみの平坦な領域では低い。第2透明導電体層27および第2金属層28は、第2ハードコート層26の表面に沿うように積層される。そのため、第2金属層28の表面形状は、第2ハードコート層26の表面形状を反映し、粒子22のある位置に凸部21を有する。
【0017】
本発明の透明導電性フィルム30の基材11には、複屈折率が小さく均一な非晶性ポリマーフィルムが用いられる。そのため本発明の透明導電性フィルム30では色むらが解消される。また、本発明の透明導電性フィルム30は、第1ハードコート層12および第2ハードコート層26が基材11の表面を覆っているため、基材11の表面に傷がつくことが防止される。さらに、第1金属層14は凸部20を有し、第2金属層28は凸部21を有するため、透明導電性フィルム30を巻回してロールにしたとき、第1金属層14と第2金属層28が点接触となる。この結果、第1金属層14と第2金属層28が圧着することが避けられる。圧着防止効果は、第1例の透明導電性フィルム10より、第2例の透明導電性フィルム30の方が高い。
【0018】
本発明の透明導電性フィルム30は傷や圧着を避けられるため、長尺の透明導電性フィルム30をロール ツー ロールプロセスにより製造することができる。また、長尺の透明導電性フィルム30を巻回した透明導電性フィルムロールの形態で、保管、輸送、および加工を行なうことができる。そのため本発明の透明導電性フィルム30は生産性が高い。
【0019】
本発明の透明導電性フィルム40(第3例)は、図3に示すように、基材11、第1ハードコート層12、第1屈折率調整層24(index matching layer)、第1透明導電体層13、および第1金属層14を備える。第1ハードコート層12、第1屈折率調整層24、第1透明導電体層13、および第1金属層14は、基材11の一方の面にこの順で積層される。本発明の透明導電性フィルム40は、さらに、第2ハードコート層26、第2屈折率調整層25、第2透明導電体層27、および第2金属層28を備える。第2ハードコート層26、第2屈折率調整層25、第2透明導電体層27、および第2金属層28は、基材11の他方の面にこの順で積層される。
【0020】
基材11は非晶性ポリマーフィルムからなる。第1ハードコート層12はバインダー樹脂19と複数の粒子18を含む。粒子18の直径dはバインダー樹脂19の平坦な領域(粒子18の無い領域)の厚さtより大きい。このため第1ハードコート層12の表面の高さは、粒子18のある領域では高く、バインダー樹脂19のみの平坦な領域では低い。第1屈折率調整層24、第1透明導電体層13、および第1金属層14は、第1ハードコート層12の表面に沿って積層される。そのため、第1金属層14の表面形状は、第1ハードコート層12の表面形状を反映し、粒子18のある位置に凸部20を有する。
【0021】
第2ハードコート層26はバインダー樹脂23と複数の粒子22を含む。粒子22の直径はバインダー樹脂23の平坦な領域(粒子22の無い領域)の厚さより大きい。第2ハードコート層26の表面形状は、第1ハードコート層12の表面形状と類似し、粒子22のある領域では高く、バインダー樹脂23のみの平坦な領域では低い。第2屈折率調整層25、第2透明導電体層27、および第2金属層28は、第2ハードコート層26の表面に沿うように積層される。そのため、第2金属層28の表面形状は、第2ハードコート層26の表面形状を反映し、粒子22のある位置に凸部21を有する。
【0022】
本発明の透明導電性フィルム40の基材11には、複屈折率が小さく均一な非晶性ポリマーフィルムが用いられる。そのため本発明の透明導電性フィルム40では色むらが解消される。また、本発明の透明導電性フィルム40は、第1ハードコート層12および第2ハードコート層26が基材11の表面を覆っているため、基材11の表面に傷がつくことが防止される。さらに、第1金属層14は凸部20を有し、第2金属層28は凸部21を有するため、透明導電性フィルム40を巻回してロールにしたとき、第1金属層14と第2金属層28が点接触となる。この結果、第1金属層14と第2金属層28が圧着することが避けられる。
【0023】
本発明の透明導電性フィルム40は傷や圧着を避けられるため、長尺の透明導電性フィルム40をロール ツー ロールプロセスにより製造することができる。また、長尺の透明導電性フィルム40を巻回した透明導電性フィルムロールの形態で、保管、輸送、および加工を行なうことができる。そのため本発明の透明導電性フィルム40は生産性が高い。
【0024】
[基材]
基材11は非晶性ポリマーフィルムからなる。非晶性ポリマーフィルムは結晶性ポリマーフィルムより複屈折が小さく均一であるため、本発明の透明導電性フィルムでは色むらが解消される。本発明に用いられる非晶性ポリマーフィルムの面内の複屈折率は、好ましくは0〜0.001であり、さらに好ましくは0〜0.0005である。本発明に用いられる非晶性ポリマーフィルムの面内の複屈折率のばらつきは、好ましくは0.0005以下であり、さらに好ましくは0.0003以下である。前記の複屈折率およびそのばらつきは、適切な種類の非晶性ポリマーフィルムを選択することにより達成できる。
【0025】
非晶性ポリマーフィルムを形成する材料は、特に制限は無いが、好ましくはポリシクロオレフィンまたはポリカーボネートである。非晶性ポリマーフィルムからなる基材11の厚さは、例えば20μm〜200μmである。非晶性ポリマーフィルムは、表面に、例えばポリウレタンからなる薄い易接着層(図示しない)を有していてもよい。
【0026】
[ハードコート層]
第1ハードコート層12は、基材11の一方の面に形成され、第2ハードコート層15、26は、基材11の他方の面に形成される。第1ハードコート層12はバインダー樹脂19と複数の粒子18を含む。複数の粒子18はバインダー樹脂19中にランダムに分布する。第2ハードコート層15はバインダー樹脂23を含む。第2ハードコート層26はバインダー樹脂23と複数の粒子22を含む。
【0027】
第1ハードコート層12に含まれる複数の粒子18は、例えばアクリルポリマー、シリコーンポリマー、スチレンポリマー、または無機シリカからなる。粒子18の形状は例えば球である。粒子18が球の場合、その直径dは、好ましくは1μm〜5μmであり、さらに好ましくは1.5μm〜3.5μmである。粒子18が球でない場合(例えば不定形の場合)、その高さ(基材11の表面に直交する方向の大きさ)は、好ましくは1μm〜5μmであり、さらに好ましくは1.5μm〜3.5μmである。粒子18が球の場合、その好ましい直径dは、最頻粒子径(粒径分布の極大値を示す粒径)であることが好ましい。粒子18が球でない場合(例えば不定形の場合)、その好ましい高さは、最頻粒子径(粒径分布の極大値を示す粒径)であることが好ましい。第1ハードコート層12の、粒子18の含有量は、圧着を防止する観点から、第1ハードコート層12の重量の0.05重量%〜3重量%が適切である。
【0028】
第1ハードコート層12のバインダー樹脂19は、例えば紫外線や電子線による硬化性樹脂組成物を含む。硬化性樹脂組成物は、好ましくは、グリシジルアクリレート系重合体にアクリル酸を付加反応させたポリマー、あるいは、多官能アクリレート重合体(ペンタエリスリトールやジペンタエリスリトール等)を含み、さらに重合開始剤を含む。第1ハードコート層12の、バインダー樹脂19のみの領域(粒子18の無い領域)の厚さtは、好ましくは0.5μm〜3μmであり、さらに好ましくは0.8μm〜3μmである。第2ハードコート層15のバインダー樹脂23についても同様である。また、第2ハードコート層26のバインダー樹脂23および粒子22についても同様である。
【0029】
第1ハードコート層12の表面は、粒子18が球の場合、粒子18の直径dがバインダー樹脂19のみの領域の厚さtより大きいため、粒子18に起因する突出部を有する。第1ハードコート層12の表面は、粒子18が球でない場合、粒子18の高さがバインダー樹脂19のみの領域の厚さtより大きいため、粒子18に起因する突出部を有する。第1ハードコート層12の表面の突出部の位置は粒子18の位置とほぼ一致する。粒子18の位置はランダムに分布するため、第1ハードコート層12の表面の突出部の位置もランダムに分布する。第1ハードコート層12の突出部の形状および分布密度は、粒子18の形状、大きさ、および含有量を変更することにより、調整することが出来る。第1ハードコート層12の突出部の分布密度は、好ましくは、100個/mm〜2000個/mm、より好ましくは、100個/mm〜1000個/mmである。第2ハードコート層26の突出部の分布密度も同様である。
【0030】
第1ハードコート層12の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは0.005μm〜0.05μmであり、最大高さRzは、好ましくは0.5μm〜2.5μmである。第2ハードコート層26の表面の算術平均粗さRa、および最大高さRzも同様である。
【0031】
[透明導電体層]
第1屈折率調整層24が無い場合、第1透明導電体層13は第1ハードコート層12の表面に形成される。第1屈折率調整層24がある場合、第1透明導電体層13は第1屈折率調整層24の表面に形成される。第1透明導電体層13は、可視光領域(380nm〜780nm)で透過率が高く(80%以上)、かつ単位面積当たりの表面抵抗値(単位:Ω/□:ohms per square)が、500Ω/□以下である層からなる。第1透明導電体層13の厚さは、好ましくは10nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmである。第1透明導電体層13は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物のいずれかからなる。第2透明導電体層16は第2ハードコート層15の表面に形成される。第2透明導電体層16の物性、材料は第1透明導電体層13と同様である。第2屈折率調整層25が無い場合、第2透明導電体層27は第2ハードコート層26の表面に形成される。第2屈折率調整層25がある場合、第2透明導電体層27は第2屈折率調整層25の表面に形成される。第2透明導電体層27の物性、材料は第1透明導電体層13と同様である。
【0032】
[金属層]
第1金属層14は第1透明導電体層13の表面に形成される。第1金属層14は、本発明の透明導電性フィルムを例えばタッチパネルに用いる際に、タッチ入力領域の外縁部に引き回し配線を形成するために用いられる。第1金属層14を形成する材料は、代表的には銅や銀であり、これ以外にも導電性に優れた任意の金属が用いられる。第1金属層14の厚さは、好ましくは50nm〜500nmであり、より好ましくは100nm〜300nmである。第2金属層17は、第2透明導電体層16の表面に形成される。第2金属層17の用途、材料、厚さは第1金属層14と同様である。また、第2金属層28は、第2透明導電体層27の表面に形成される。第2金属層28の用途、材料、厚さは第1金属層14と同様である。
【0033】
第1金属層14の表面は、第1ハードコート層12の表面形状に類似し、ランダムに分布する凸部20を有する。凸部20の分布密度は、好ましくは、100個/mm〜2000個/mm、より好ましくは、100個/mm〜1000個/mmである。第1金属層14の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは0.005μm〜0.05μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.03μmである。第1金属層14の表面の最大高さRzは、好ましくは0.5μm〜2.5μmであり、より好ましくは0.5μm〜2.0μmである。第1金属層14の表面の算術平均粗さRaおよび最大高さRzは、粒子18の形状、大きさ、および含有量を調整することにより、変更することが出来る。第2金属層28の表面は、第2ハードコート層26の表面形状を反映し、ランダムに分布する凸部21を有する。第2金属層28の表面粗さは第1金属層14の表面粗さと同様である。
【0034】
本発明の透明導電性フィルム10を巻回した場合、第1金属層14の表面と第2金属層17の表面が接触する。第1金属層14の表面にはランダムに分布する凸部20があり、第2金属層17の表面は平坦である。そのため、第1金属層14の表面と第2金属層17の表面は点接触となる。これにより、第1金属層14と第2金属層17の圧着を防止することができる。本発明の透明導電性フィルム30、40を巻回した場合、第1金属層14の表面と第2金属層28の表面が接触する。第1金属層14の表面にはランダムに分布する凸部20があり、第2金属層28の表面にはランダムに分布する凸部21がある。そのため、第1金属層14の表面と第2金属層28の表面は点接触となる。これにより、第1金属層14と第2金属層28の圧着を防止することができる。第1金属層14と第2金属層28の圧着防止効果は、第1金属層14と第2金属層17の圧着防止効果より大きい。
【0035】
[屈折率調整層]
本発明の透明導電性フィルム40(第3例)は、図3に示すように、第1ハードコート層12と第1透明導電体層13の間に、第1屈折率調整層24(index matching layer)を有する。また、第2ハードコート層26と第2透明導電体層27の間に、第2屈折率調整層25を有する。第1屈折率調整層24は、第1透明導電体層13を後工程でパターニングした後に、第1透明導電体層13のある部分と無い部分の反射率の差を小さくし、第1透明導電体層13のパターンが視認されにくくする。第2屈折率調整層25の機能も同様である。
【0036】
第1屈折率調整層24の屈折率は、第1ハードコート層12の屈折率と第1透明導電体層13の屈折率との中間的な値に設定されることが好ましい。第1屈折率調整層24を形成する材料は、例えばウレタン系ポリマーである。第1屈折率調整層24の厚さは、好ましくは5nm〜150nmである。第2屈折率調整層25についても同様である。
【0037】
[製造方法]
本発明の透明導電性フィルム10(第1例)の製造方法の一例を説明する。非晶性ポリマーフィルムからなる基材11の片面に、バインダー樹脂19と複数の粒子18を含むハードコート剤を塗布する。次に基材11の他の面に、バインダー樹脂23を含むハードコート剤を塗布する。次に基材11の両面のハードコート剤に紫外線を照射してハードコート剤を硬化させ、第1ハードコート層12と第2ハードコート層15を形成する。次に第1ハードコート層12の表面に、スパッタ法などにより、第1透明導電体層13と第1金属層14を順次積層する。第1透明導電体層13と第1金属層14の積層は、スパッタ装置内に、透明導電体層用ターゲットと金属層用ターゲットを設けることにより、連続的に(チャンバーを大気開放しないで)積層することができる。第2ハードコート層15の表面についても同様にして、第2透明導電体層16と第2金属層17を順次積層する。
【0038】
本発明の透明導電性フィルム30(第2例)の製造方法の一例を説明する。非晶性ポリマーフィルムからなる基材11の片面に、バインダー樹脂19と複数の粒子18を含むハードコート剤を塗布する。次に基材11の他の面に、バインダー樹脂23と複数の粒子22を含むハードコート剤を塗布する。次に基材11の両面のハードコート剤に紫外線を照射してハードコート剤を硬化させ、第1ハードコート層12と第2ハードコート層26を形成する。次に第1ハードコート層12の表面に、スパッタ法などにより、第1透明導電体層13と第1金属層14を順次積層する。第1透明導電体層13と第1金属層14の積層は、スパッタ装置内に、透明導電体層用ターゲットと金属層用ターゲットを設けることにより、連続的に積層することができる。第2ハードコート層26の表面についても同様にして、第2透明導電体層27と第2金属層28を順次積層する。
【0039】
本発明の透明導電性フィルム40(第3例)の製造方法の一例を説明する。非晶性ポリマーフィルムからなる基材11の片面に、バインダー樹脂19と複数の粒子18を含むハードコート剤を塗布する。次に基材11の他の面に、バインダー樹脂23と複数の粒子22を含むハードコート剤を塗布する。次に基材11の両面のハードコート剤に紫外線を照射してハードコート剤を硬化させ、第1ハードコート層12と第2ハードコート層15を形成する。次に第1ハードコート層12の表面に屈折率調整剤を塗布し、第2ハードコート層15の表面に屈折率調整剤を塗布する。次に第1ハードコート層12上の屈折率調整剤と第2ハードコート層15上の屈折率調整剤に紫外線を照射して屈折率調整剤を硬化させ、第1屈折率調整層24と第2屈折率調整層25を形成する。次に第1屈折率調整層24の表面に、スパッタ法などにより、第1透明導電体層13と第1金属層14を順次積層する。第1透明導電体層13と第1金属層14の積層は、スパッタ装置内に、透明導電体層用ターゲットと金属層用ターゲットを設けることにより、連続的に積層することができる。第2屈折率調整層25の表面にも同様にして、第2透明導電体層27と第2金属層28を順次積層する。
【実施例】
【0040】
シクロオレフィンポリマーからなる長尺フィルム基材11の一方の面に、バインダー樹脂19と複数の粒子18を含むハードコート剤を塗布した。長尺フィルム基材11の他方の面に、バインダー樹脂23と複数の粒子22を含むハードコート剤を塗布した。ハードコート剤に紫外線を照射し、ハードコート剤を硬化させて、第1ハードコート層12および第2ハードコート層26を形成した。長尺フィルム基材11は、日本ゼオン社製「ZEONOR」(登録商標)であり、厚さは100μm、面内の複屈折率は0.0001であった。粒子18、22は、積水樹脂社製「SSX105」であり、直径3μmの球である。粒子18、22の材質は架橋アクリル・スチレン系樹脂である。バインダー樹脂19、23は、DIC社製「UNIDIC」である。バインダー樹脂19,23の材質は多官能ポリアクリレートである。第1ハードコート層12の表面は、複数の粒子18に起因したランダムに分布する凸部と、粒子18と粒子18の間のほぼ平坦な領域を有する。凸部の分布密度は205個/mmであった。粒子18と粒子18の間のほぼ平坦な領域の厚さtは1μmであった。第1ハードコート層12の表面の算術平均粗さRaは0.008μmであり、最大高さRzは0.8μmであった。第2ハードコート層26の表面の凸部の分布密度、算術平均粗さRa、最大高さRzは、第1ハードコート層12のそれらと同じであった。
【0041】
第1ハードコート層12および第2ハードコート層26が形成された長尺フィルム基材を、巻き取り式スパッタ装置に投入し、第1ハードコート層12の表面に、厚さ27nmのインジウムスズ酸化物層(第1透明導電体層13)と、厚さ200nmの銅層(第1金属層14)を、連続的に積層した。第1金属層14の表面の算術平均粗さRaは0.02μmであり、最大高さRzは1.6μmであった。次に、第2ハードコート層26の表面に、厚さ27nmのインジウムスズ酸化物層(第2透明導電体層27)と、厚さ200nmの銅層(第2金属層28)を、連続的に積層した。第2金属層28の表面の算術平均粗さRaは0.02μmであり、最大高さRzは1.6μmであった。
【0042】
[評価]
上記の透明導電性フィルム30は、複屈折率の極めて小さいポリシクロオレフィンフィルムを基材11に用いたため、色むらが見られなかった。また、第1ハードコート層12および第2ハードコート層26を設けたため、表面傷が発生しなかった。さらに、透明導電性フィルム30を巻回しても、第1金属層14の凸部20および第2金属層28の凸部21により、第1金属層14と第2金属層28が点接触となり、圧着が発生しなかった。このため、本発明の透明導電性フィルム30は、ロール ツー ロールプロセスで取り扱うことができ、生産性が高い。
【0043】
[測定方法]
[複屈折率]
フィルム基材11の面内の複屈折率は、位相差計(王子計測機器社製KOBRA-WPR)を用いて、波長590nmの光で測定した。
[表面粗さ]
表面粗さRa、Rzは光学式プロファイロメーター(Veeco Instruments社製Optical Profilometer NT3300)を用いて測定した。
[膜厚]
1μm未満の膜厚は、透過型電子顕微鏡(日立製作所製H-7650)を用いて断面を観察し、測定を行なった。基材11の厚さは膜厚計(Peacock社製デジタルダイアルゲージDG-205)を用いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の透明導電性フィルムの用途に制限は無いが、本発明の透明導電性フィルムは静電容量方式タッチパネル、特に投影型の静電容量方式タッチパネルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
10 透明導電性フィルム
11 基材
12 第1ハードコート層
13 第1透明導電体層
14 第1金属層
15 第2ハードコート層
16 第2透明導電体層
17 第2金属層
18 粒子
19 バインダー樹脂
20 凸部
21 凸部
22 粒子
23 バインダー樹脂
24 第1屈折率調整層
25 第2屈折率調整層
26 第2ハードコート層
27 第2透明導電体層
28 第2金属層
30 透明導電性フィルム
40 透明導電性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ポリマーフィルムからなる基材と、
前記基材の一方の面に順次形成された、第1ハードコート層、第1透明導電体層、および第1金属層と、
前記基材の他方の面に順次形成された、第2ハードコート層、第2透明導電体層、および第2金属層とを有し、
前記第1ハードコート層はバインダー樹脂と複数の粒子を含有し、
前記粒子の直径あるいは高さは、前記バインダー樹脂の平坦な領域の厚さより大きく、
前記第1金属層はその表面に、前記第1ハードコート層に含まれる前記複数の粒子に起因する複数の凸部を有する透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記第1金属層の表面の前記凸部の分布密度は、100個/mm〜2000個/mmである請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記第2ハードコート層はバインダー樹脂と複数の粒子を含有し、
前記第2ハードコート層に含有された前記粒子の直径あるいは高さは、前記第2ハードコート層に含有された前記バインダー樹脂の平坦な領域の厚さより大きく、
前記第2金属層はその表面に、前記第2ハードコート層に含まれる前記複数の粒子に起因する複数の凸部を有する請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記第2金属層の表面の前記凸部の分布密度は、100個/mm〜2000個/mmである請求項3に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記非晶性ポリマーフィルムを形成する材料は、ポリシクロオレフィンまたはポリカーボネートである請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記非晶性ポリマーフィルムの面内の複屈折率は0〜0.001であり、面内の複屈折率のばらつきは0.0005以下である請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記第1ハードコート層に含まれる前記粒子を形成する材料はアクリルポリマー、シリコーンポリマー、スチレンポリマー、または無機シリカである請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記第2ハードコート層に含まれる前記粒子を形成する材料はアクリルポリマー、シリコーンポリマー、スチレンポリマー、または無機シリカである請求項3〜7のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記第1ハードコート層に含まれる前記粒子が球状であり、その直径が1μm〜5μmである請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
前記第2ハードコート層に含まれる前記粒子が球状であり、その直径が1μm〜5μmである請求項3〜9のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
前記第1ハードコート層に含まれる前記複数の粒子の含有量は、前記第1ハードコート層の0.05重量%〜3重量%である請求項1〜10のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
前記第2ハードコート層に含まれる前記複数の粒子の含有量は、前記第2ハードコート層の0.05重量%〜3重量%である請求項3〜11のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項13】
前記第1金属層の表面の算術平均粗さRaは0.005μm〜0.05μmであり、最大高さRzは0.5μm〜2.5μmである請求項1〜12のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項14】
前記第2金属層の表面の算術平均粗さRaは0.005μm〜0.05μmであり、最大高さRzは0.5μm〜2.5μmである請求項3〜13のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項15】
前記第1透明導電体層を形成する材料および前記第2透明導電体層を形成する材料は、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物のいずれかである請求項1〜14のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項16】
前記第1金属層を形成する材料および前記第2金属層を形成する材料は銅または銀である請求項1〜15のいずれかに記載の透明導電性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107349(P2013−107349A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255764(P2011−255764)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】