説明

透明導電性積層フィルム及びタッチパネル

【課題】静電容量方式タッチパネルなどのパターン化された透明導電層(透明電極)を有する表示装置の視認性を向上できる透明導電性積層フィルムを提供する。
【解決手段】透明材料で形成された基材フィルムの少なくとも一方の面に、ナノメーターサイズの無機粒子及びビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたハードコート層を積層し、このハードコート層表面の一部の領域に透明導電層を形成する。前記ビニル系化合物は、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートとケイ素含有多官能(メタ)アクリレートとを含む。得られた透明導電性積層フィルムは、投影型静電容量方式タッチパネルの透明電極基板等に利用できる。前記無機粒子の平均一次粒径は1〜100nm程度である。前記無機粒子は金属酸化物粒子であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影型静電容量方式タッチパネルの電極などに利用される透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた静電容量方式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンマシンインターフェースとしての電子ディスプレイの進歩に伴い、対話型の入力システムが普及し、なかでもタッチパネル(座標入力装置)をディスプレイと一体化した装置がATM(現金自動受払機)、商品管理、アウトワーカー(外交、セールス)、案内表示、娯楽機器などで広く使用されている。液晶ディスプレイなどの軽量・薄型ディスプレイでは、キーボードレスにでき、その特長が生きることから、モバイル機器にもタッチパネルが使用されるケースが増えている。タッチパネルは、位置検出の方法により、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などに分類できる。これらの方式のうち、静電容量方式は、静電容量の変化を利用し、位置の検出を行う方式であるが、近年、機能性に優れる点から、ITOグリッド方式を採用する投影型静電容量方式タッチパネルが、スマートフォンや電子ペーパーなどのモバイル機器で採用されて脚光を浴びている。ITOグリッド方式では、透明基材の上にパターン化されたITO(酸化インジウム−酸化錫系複合酸化物)膜が形成されているが、ITO膜の屈折率は透明基材に比べて高い。そのため、ITO膜が形成されている領域と形成されていない領域とでは光透過性に差が発生するが、ITO膜も透明であるため、従来のタッチパネルの画像では視認性に影響はなかった。しかし、近年のタッチパネルの画像では、精密な画像表示が行われているため、ITO膜によるパターンの映り込みが視認性に影響を与えている。このため、ITO膜の蒸着パターンがなるべく視認されないようにする方法として、ITOに近い屈折率を持つ二酸化ニオブなどを全面蒸着(パターンなく蒸着)して、次に必要な部分にITO膜をパターン蒸着(エッチング法)で形成することも行われている。この場合には、ITO膜の密着強度を維持するために、二酸化ニオブの蒸着層の上に更に酸化ケイ素膜を蒸着で形成した上でITO膜を蒸着することも行われており、工程が煩雑であった。
【0003】
一方、透明プラスチックの屈折率を制御する方法として、プラスチックよりも屈折率が高い金属微粒子をナノサイズで含有させる方法が知られており、例えば、特開昭61−291650号公報(特許文献1)には、粒径が200ミリミクロン以下で屈折率が1.6以上の無機微粒子を含む1種以上の無機微粒子混合物を合成樹脂中に分散させた高屈折率樹脂組成物が開示されている。また、特開2000−327836号公報(特許文献2)には、分散媒体であるポリマー中に、粒子径が0.001〜0.1μmの金属超微粒子を分散させた高屈折率金属超微粒子分散ポリマーが開示されている。これらの文献には、眼鏡や光学機器のレンズにおいて、軽量性を保持しつつ、屈折率を向上させる目的で、ポリメチルメタクリレートやスチレン系樹脂などの透明樹脂に、ナノメーターサイズのチタニアや銀などの金属微粒子を含有させて、透明樹脂の屈折率を増加させることが記載されている。
【0004】
さらに、特開2008−52088号公報(特許文献3)には、透明フィルム上に、帯電防止性を有する易接着層、ハードコート層及び低屈折率層が形成されたディスプレイ用反射防止フィルムが開示されている。この文献には、反射防止性能を向上させるために、ハードコート層がジルコニア、チタニア、酸化セレン、酸化亜鉛などの酸化物微粒子を含むことが記載され、実施例では、平均粒径80nmのジルコニアが配合されている。
【0005】
しかし、これらの文献には、透明導電層は記載されておらず、パターン化された透明導電層と透明基材との積層体における光学特性の技術的意義は記載されていない。さらに、金属微粒子を含有するフィルムを光学用途に使用する場合、ナノメーターサイズの粒子であっても、一般的に、金属微粒子の割合を増加させると、全光線透過率が減少するとともにヘイズが向上する。すなわち、金属微粒子を含む透明フィルムでは、透明性と屈折率とはトレードオフの関係にあるため、金属微粒子を用いて屈折率を高めるとともに、透明性などの光学特性も両立するのは困難であった。従って、透明電極がパターン化された静電容量方式タッチパネルでは、このようなトレードオフの関係を充足しつつ、映り込みも抑制する必要があり、視認性の向上が特に困難であった。
【0006】
国際公開WO2010/114056号公報(特許文献4)には、静電容量方式タッチパネルのパターンの映り込み(骨見え)を抑制するために、透明有機高分子基板の少なくとも一方の面上に、硬化樹脂層、さらに透明導電層が順次積層された透明導電性積層体において、硬化樹脂層が樹脂成分及び平均一次粒子径1nm以上の超微粒子を含む積層体が開示されている。この文献の実施例では、PET又はPCで形成された透明基板の上に、ウレタンアクリレート100重量部に対して平均粒径30nmの酸化チタン72又は82重量部を含む硬化樹脂層が形成され、さらに硬化樹脂層の上にITO膜を形成された積層体を製造している。
【0007】
しかし、この積層体でも、光の散乱を抑制するのは困難であり、パターンの映り込みと、高い透明性などの光学性とを両立するのは困難であった。さらに、微粒子の割合も少なく、屈折率の向上効果も低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−291650号公報(請求項1、従来の技術及び発明の効果の欄、実施例)
【特許文献2】特開2000−327836号公報(請求項1、従来の技術及び発明の効果の欄、実施例)
【特許文献3】特開2008−52088号公報(特許請求の範囲、段落[0026]〜[0028]、実施例)
【特許文献4】国際公開WO2010/114056号公報(請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、光散乱を抑制して、高い透明性を保持しつつ、パターン化された透明導電層(透明電極)を有する表示装置の視認性を向上できる透明導電性積層フィルム及びこのフィルムを備えた静電容量方式タッチパネルを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、静電容量方式タッチパネルのパターン化された透明導電層の映り込みを抑制できる透明導電性積層フィルム及びこのフィルムを備えた静電容量方式タッチパネルを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、静電容量方式タッチパネルの視認性を向上できる透明導電性積層フィルム及びこのフィルムを備えた静電容量方式タッチパネルを提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、視認性の改良された静電容量方式タッチパネルを簡便に製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明材料で形成された基材フィルムの少なくとも一方の面に、ナノメーターサイズの無機粒子及びビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたハードコート層を積層し、さらにこのハードコート層の一部に透明導電層を形成することにより、パターン化された透明導電層(透明電極)を有する表示装置の視認性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の透明導電性積層フィルムは、透明材料で形成された基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面に積層され、かつナノメーターサイズの無機粒子及びビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたハードコート層と、このハードコート層表面の一部の領域に形成された透明導電層とを含む透明導電性積層フィルムであって、前記ビニル系化合物が、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートとケイ素含有多官能(メタ)アクリレートとを含む。前記ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートは、5〜7官能(メタ)アクリレートと、2〜4官能(メタ)アクリレートとの組み合わせであり、前記ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートは、シリコーン(メタ)アクリレートであってもよい。前記5〜7官能(メタ)アクリレートと、前記2〜4官能(メタ)アクリレートとの割合は、前者/後者=99/1〜30/70程度であり、かつ前記ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートの割合は、ケイ素非含有(メタ)アクリレート100重量部に対して0.1〜30重量部程度であってもよい。前記重合性組成物は、さらにセルロースエステルを含んでいてもよい。前記ビニル系化合物と前記無機粒子との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜10/90程度であってもよい。前記無機粒子は平均一次粒径1〜100nmの金属酸化物粒子であってもよい。前記無機粒子は、チタン及び/又はジルコニウムを含んでいてもよい。前記基材フィルムと前記透明導電層との屈折率差は0.3以上であってもよい。前記ハードコート層の屈折率は、基材フィルムの屈折率よりも大きく、かつ透明導電層の屈折率よりも小さくてもよい。本発明の透明導電性積層フィルムにおいて、前記透明導電層が形成された領域と、前記透明導電層が形成されていない領域との全光線透過率の差は2%であってもよい。前記透明導電層が形成されていない領域の全光線透過率が80%以上であってもよく、前記透明導電層が形成されていない領域のヘイズは5%以下であってもよい。前記ハードコート層の表面において、透明導電層が形成された領域と透明導電層が形成されていない領域との面積比は、前者/後者=9/1〜1/9程度であってもよい。前記基材フィルムは、ポリエステル系樹脂又はセルロースエステルで形成されていてもよい。この透明導電層を有する透明導電性積層フィルムは、透明導電層がパターン化されて形成されたタッチパネルの透明電極基板であり、かつこの透明電極基板が視認側の上部電極基板であってもよい。
【0015】
本発明には、基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層をコーティングで形成した後、得られたハードコート層に透明導電層を物理的又は化学的気相法で形成する前記透明導電性積層フィルムの製造方法も含まれる。本発明には、前記透明導電性積層フィルムを電極基板として備える投影型静電容量方式タッチパネルも含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、透明材料で形成された基材フィルムの少なくとも一方の面に、ナノメーターサイズの無機粒子及び特定のビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたハードコート層が積層され、さらにこのハードコート層表面の一部の領域に透明導電層が形成されているため、光散乱を抑制して、高い透明性を保持しつつ、パターン化された透明導電層(透明電極)を有する表示装置の視認性を向上できる。特に、投影型静電容量方式タッチパネルなどのパターン化された透明導電層の映り込みを抑制できる。さらに、本発明では、このような視認性の改良された静電容量方式タッチパネルを簡便に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[透明導電性積層フィルム]
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明材料で形成された基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面に積層され、かつナノメーターサイズの無機粒子及びビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたハードコート層と、このハードコート層表面の一部の領域に形成された透明導電層とを含む。
【0018】
(基材フィルム)
基材フィルムは、透明な材質で形成されているITOなどの透明導電層を蒸着で形成できるポリマーフィルムであればよく、例えば、セルロース誘導体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などであってもよい。これらのうち、セルロースエステル、ポリエステル系樹脂などが汎用される。
【0019】
セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3−4アシレートなどが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂などが挙げられる。
【0020】
これらのうち、PETなどのポリC2−4アルキレンアリレートが特に好ましい。さらに、基材フィルムは、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂を二軸延伸したフィルムであってもよい。
【0021】
基材フィルムは、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
基材フィルムの厚みは、用途に応じて10〜300μm程度である。
【0023】
(ハードコート層)
ハードコート層は、ナノメーターサイズの無機粒子及びビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されている。本発明では、ナノメーターサイズの無機粒子を含有させることにより、単層のハードコート層を介在させるだけで視認性を向上できる。
【0024】
(A)無機粒子
無機粒子の粒径はナノメーターサイズであればよく、詳しくは、平均一次粒径が1〜100nm程度の範囲から選択でき、例えば、2〜50nm、好ましくは3〜40nm、さらに好ましくは5〜30nm(特に8〜20nm)程度である。無機粒子の粒径が大きすぎると、光散乱が大きくなるとともに、透明性も低下する。
【0025】
無機粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形などが挙げられるが、等方的に光を散乱し、視認性を向上できる点から、略球状などの等方形状が好ましい。
【0026】
無機粒子は、基材フィルムの屈折率よりも大きい屈折率を有していればよく、例えば、1.7〜2.0程度である。屈折率が低すぎると、ハードコート層の屈折率を上昇させる効果が低く、高すぎると、光散乱が大きくなるともに、透明性が低下する。
【0027】
無機粒子を構成する無機化合物としては、例えば、金属単体、金属酸化物、屈折率を上昇できる効果の点から、金属酸化物が好ましい。
【0028】
金属酸化物としては、例えば、周期表第4A族金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)、第5A族金属酸化物(酸化バナジウムなど)、第6A族金属酸化物(酸化モリブデン、酸化タングステンなど)、第7A族金属酸化物(酸化マンガンなど)、第8族金属酸化物(酸化ニッケル、酸化鉄など)、第1B族金属酸化物(酸化銅など)、第2B族金属酸化物(酸化亜鉛など)、第3B族金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化インジウムなど)、第4B族金属酸化物(酸化ケイ素、酸化錫など)、第5B族金属酸化物(酸化アンチモンなど)などが挙げられる。これらの金属酸化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
これらの金属酸化物のうち、少ない割合でハードコート層の屈折率を上昇でき、かつ添加量が増加してもヘイズの上昇を抑制できる点から、酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの周期表第4A族金属酸化物が好ましく、酸化チタンが特に好ましい。
【0030】
酸化チタンとしては、慣用の酸化チタン[組成式TixOy]を利用でき、二酸化チタン、Ti、Tiなどを利用できるが、通常、二酸化チタンを主成分とする。さらに、酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などの結晶形であってもよいが、ルチル型の二酸化チタンが好ましい。
【0031】
無機粒子(特に酸化チタン)は、凝集を抑制する点から、表面処理されていない粒子が好ましい。無機粒子の分散状態は、ハードコート層の全光線透過率及びヘイズによって評価でき、ハードコート層の全光線透過率が75%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上であってもよく、ヘイズは5%以下、好ましくは3%以下(例えば、0.01〜3%)、さらに好ましくは2%以下(例えば、0.1〜2%)であってもよい。
【0032】
(B)ビニル系化合物
ビニル系化合物は、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートとケイ素含有多官能(メタ)アクリレートとを含む。
【0033】
(B1)ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレート
ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートとしては、分子内に2以上(例えば、2〜8程度)の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが使用される。
【0034】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールSなど)のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。さらに、2官能ビニル系化合物としては、例えば、エポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタンジ(メタ)アクリレートなどのオリゴマー又は樹脂も例示できる。
【0035】
3官能以上(3〜8官能程度)の(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、これらの多官能(メタ)アクリレートにおいて、多価アルコールは、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシド)の付加体であってもよい。アルキレンオキシドの平均付加モル数は、例えば、0〜30モル(特に1〜10モル)程度の範囲から選択できる。これらの多官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
これらの多官能(メタ)アクリレートのうち、ハードコート性などの点から、3官能以上の(メタ)アクリレート(特に、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの4〜8官能(メタ)アクリレート)を少なくとも含む多官能(メタ)アクリレートが好ましい。特に、5〜7官能(メタ)アクリレートと、2〜4官能(メタ)アクリレート[特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3〜4官能(メタ)アクリレート]とを組み合わせてもよく、両者の割合(重量比)は、例えば、前者/後者=100/0〜10/90、好ましくは99/1〜30/70、さらに好ましくは90/10〜50/50(特に80/20〜40/60)程度である。本発明では、官能基数の異なる多官能(メタ)アクリレートをこのような割合で組み合わせることにより、ハードコート層の機械的特性を向上でき、大量の無機粒子の配合が可能となり、ハードコート層の屈折率を向上できる。
【0037】
(B2)ケイ素含有多官能(メタ)アクリレート
ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートとしては、シリコーン(メタ)アクリレートが汎用される。本発明では、前記ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートに加えて、ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートを配合することにより、多量の無機粒子を含有させるにも拘わらず、ヘイズを抑制でき、透明性などの光学特性を向上できるとともに、屈折率も調整でき、視認性も向上できる。
【0038】
シリコーン(メタ)アクリレートは、通常、オルガノシロキサン単位[−Si(−R)−O−](基Rは置換基を示す)を有しており、Si原子(又はオルガノシロキサン単位)の数は、1分子中に1以上(例えば、1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15程度)であってもよい。また、(メタ)アクリロイル基の数は、1分子中に2以上(例えば、2〜20、好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜10程度)であってもよい。
【0039】
シリコーン(メタ)アクリレートは、モノマーであってもよく、オリゴマー(又はプレポリマー)であってもよく、モノマー及びオリゴマーを組み合わせて使用してもよい。また、オリゴマー(プレポリマー)は、複数の(−Si−O)結合を有するポリシロキサン系オリゴマーであってもよく、加水分解縮合性基(例えば、メトキシ、エトキシなどのC1−4アルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子など)を有するシリコーン(メタ)アクリレートモノマーの加水分解縮合による2量体、3量体などの多量体であってもよい。
【0040】
代表的なシリコーン(メタ)アクリレートとしては、1分子中に1つのSi原子を有するシリコーンモノ乃至テトラ(メタ)アクリレート、1分子中に2つのSi原子を有するシリコーンテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0041】
これらのシリコーン(メタ)アクリレートのうち、1分子中に複数(例えば、2〜10個、好ましくは3〜8個、さらに好ましくは4〜7個程度)の(メタ)アクリロイル基と、1又は複数(例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜6個程度)のSi原子を有するシリコーン(メタ)アクリレート成分[例えば、シリコーンジ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート、好ましくはシリコーントリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート]が好ましい。なお、シリコーンジ(メタ)アクリレートは、商品名「EBECRYL350」(ダイセル・サイテック(株)製)などとして入手でき、シリコーンヘキサ(メタ)アクリレートは、商品名「EBECRYL1360」(ダイセル・サイテック(株)製)などとして入手できる。
【0042】
ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートの割合は、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレート100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部(特に1〜5重量部)程度である。
【0043】
ビニル系化合物としては、多官能(メタ)アクリレートに加えて、単官能ビニル系化合物、例えば、アルキル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートやアダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体などを含んでいてもよい。
【0044】
ビニル系化合物と無機粒子との割合(重量比)は、基材フィルムと透明導電層との屈折率差などに応じて適宜選択でき、例えば、99/1〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、前者/後者=80/20〜5/95、好ましくは50/50〜10/90、さらに好ましくは40/60〜15/85(特に30/70〜20/80)程度である。本発明では、特定のビニル系化合物を組み合わせるため、多量の無機粒子を配合しても、機械的特性に優れ、ハードコート層の屈折率を向上できる。無機粒子の割合が少なすぎると、屈折率を向上できず、多すぎると、ハードコート層の機械的特性が低下する。
【0045】
(C)重合性組成物
重合性組成物(硬化性樹脂前駆体)は、ハードコート層の塗工性及び機械的特性を向上させるために、セルロースエステルを含んでいてもよい。セルロースエステルとしては、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−6アシレートなどが例示できる。これらのセルロースエステルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
これらのセルロースエステルのうち、溶剤のへの溶解性が高く、塗工液の調製がし易い上に、少量の添加によって塗工液の粘度調節が容易にできるとともに、塗工液での微粒子の凝集を抑制し、保存安定性を高めることができる点から、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アシレート(特に、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテートC3−4アシレート)が好ましい。
【0047】
セルロースエステルの割合は、ビニル系化合物100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部(特に0.2〜1重量部)程度である。
【0048】
重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光重合開始剤には、慣用の光増感剤や光重合促進剤(例えば、第三級アミン類など)が含まれていてもよい。光重合開始剤の割合は、ビニル系化合物100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であってもよい。重合性組成物は、透明性を損なわない範囲で、さらに慣用の添加剤を含有していてもよい。重合性組成物は、塗工性などの点から、さらに溶媒を含んでいるのが好ましい。
【0049】
重合性組成物(硬化性樹脂前駆体)は、熱硬化性組成物であってもよいが、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物、EB硬化性化合物であってもよい。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性樹脂である。
【0050】
ハードコート層の屈折率は、基材フィルムの屈折率よりも大きく、かつ透明導電層の屈折率よりも小さく、例えば、1.5〜2.2程度の範囲から選択でき、例えば、1.55〜2.0、好ましくは1.6〜1.95、さらに好ましくは1.65〜1.9(特に1.7〜1.85)程度であってもよい。
【0051】
ハードコート層の厚みは、例えば、0.01〜30μm、好ましくは0.015〜20μm、さらに好ましくは0.02〜10μm(特に0.03〜10μm)程度である。
【0052】
(透明導電層)
透明導電層は、透明電極として利用されている慣用の透明導電層を利用でき、導電性無機化合物で形成された透明導電層でよい。導電性無機化合物としては、ITO膜などの金属酸化物が汎用される。
【0053】
本発明では、透明導電層は、ハードコート層表面の一部の領域に(部分的に)形成されており、通常、格子状などにパターン化されて形成されている。本発明では、透明導電層の有無により、積層フィルムの光透過性の違いが発生することによるパターンが映り込むことを有効に防止できる。
【0054】
基材フィルムと透明導電層との屈折率差は0.3以上であってもよく、例えば、0.3〜0.9、好ましくは0.35〜0.8、さらに好ましくは0.4〜0.75(特に0.5〜0.75)程度であってもよい。
【0055】
透明導電層の厚みは、例えば、1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜400nm(特に20〜300nm)程度であってもよい。
【0056】
(透明導電性積層フィルムの特性)
本発明の透明導電性積層フィルムは透明性に優れており、透明導電層が形成された領域における全光線透過率は、例えば、75%以上、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは85〜95%程度である。一方、透明導電層が形成されていない領域における全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは85〜99%、さらに好ましくは90〜95%程度である。
【0057】
透明導電層が形成された領域と透明導電層が形成されていない領域との全光線透過率の差は、例えば、2%以下であってもよく、好ましくは0.1〜2%、さらに好ましくは0.2〜1.5%程度である。
【0058】
このように、本発明の透明導電性積層フィルムは透明性に優れているが、透明導電層が形成された領域と透明導電層が形成されていない領域とでは屈折率差を有している。そのため、このようなフィルムでは、領域間における反射率の差によりパターンの映り込みなど、視認性が低下する。しかし、本発明では、屈折率差があるにも拘わらず、ナノメータサイズの無機粒子を含むハードコート層を介在させることにより、屈折率差に起因するパターンの映り込みを抑制でき、視認性を向上できる。
【0059】
本発明の透明導電性積層フィルムは、ヘイズも低く、透明導電層が形成された領域におけるヘイズは、例えば、5%以下、好ましくは0.1〜3%、さらに好ましくは0.3〜1.5%程度である。一方、透明導電層が形成されていない領域におけるヘイズは、例えば、5%以下、好ましくは0.1〜3%、さらに好ましくは0.3〜2%程度である。
【0060】
本発明の透明導電性積層フィルムは、少なくとも一方の面にハードコート層が形成されていればよく、両面に形成されていてもよい。ハードコート層が両面に形成された場合、透明導電層も両面に形成されてもよい。
【0061】
本発明の透明導電性積層フィルムには、さらに慣用の機能層、例えば、アンチニュートンリング層、光散乱層、反射防止層、低屈折率層などと組み合わせてもよい。
【0062】
[透明導電性積層フィルムの製造方法]
本発明の透明導電性積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層をコーティングで形成した後、得られたハードコート層に透明導電層を物理的又は化学的気相法で形成する方法により得られる。
【0063】
(ハードコート層の形成工程)
詳細には、ハードコート層の形成工程においては、重合性組成物を含む塗工液を塗布した後、硬化することにより得ることができる。
【0064】
重合性組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0065】
重合性組成物が有機溶媒を含有する場合など、塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃程度の温度で行ってもよい。
【0066】
硬化工程において、重合性組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線としては、例えば、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線、電子線(EB)などが利用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。
【0067】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm、好ましくは70〜7000mJ/cm、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm程度であってもよい。
【0068】
電子線の場合は、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは5〜150kGy、さらに好ましくは10〜100kGy(特に20〜80kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
【0069】
なお、活性エネルギー線の照射は、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【0070】
ハードコート層に対する透明導電層の密着性を向上させるために、ハードコート層を表面処理に供してもよい。表面処理としては、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などが挙げられる。
【0071】
(透明導電層の形成工程)
導電性無機化合物で形成された透明導電層は、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な方法であれば、特に限定されず、慣用の成膜方法を利用して形成できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、スパッタリング法、プラズマCVD法(特にスパッタリング法)が好ましい。
【0072】
一方、導電性ポリマーで構成された透明導電層は、導電性ポリマーを含有する液状組成物を前述のコーティングなどで塗布して乾燥することにより製造できる。
【0073】
透明導電層は、タッチパネルなどの種類に応じて、格子状又はストライプ状などの形状にパターン化される。投影型静電容量方式タッチパネルでは、例えば、ハードコート層の全面に透明導電層を形成した後、酸やアルカリなどを用いたエッチングにより格子状にパターン化する方法や、マスクなどを利用したパターニングにより格子状のパターンを形成する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた透明導電性積層フィルムを以下の項目で評価した。
【0075】
[ヘイズ(HZ)及び全光線透過率(TT)]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
【0076】
[視認性]
黒紙の上に透明導電層が形成された領域と形成されていない領域とを並べて置き、目視で観察して以下の基準で判定した。
【0077】
◎:差がわからない
○:差がわかりにくい
△:わずかに差がある
×:明らかに差がある。
【0078】
[ハードコート層の配合成分]
6官能アクリレート:六官能アクリル系UV硬化モノマー、ダイセルサイテック(株)製「DPHA」
3官能アクリレート:三官能アクリル系UV硬化モノマー:ダイセルサイテック(株)製「PETIA」
シリコーンアクリレート:六官能アクリル系UV硬化モノマー、ダイセルサイテック(株)製「EBECRYL1360」
CAP:セルロースアセテートプロピオネート、イーストマン社製「CAP−482−20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000
酸化チタン分散液:シーアイ化成(株)製「RTTDNB15WT%−N39」
BuOH:1−ブタノール、沸点113℃
MMPG:1−メトキシ−2−プロパノール、沸点119℃
MEK:メチルエチルケトン
IPA:2−プロパノール
開始剤1:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)184」
開始剤2:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)907」。
【0079】
比較例1〜2及び実施例1〜3
表1に示すアクリレート、セルロースエステル及び酸化チタン分散液を、表1に示す混合溶媒に溶解した。この溶液を用いてトリアセチルセルロースフィルム上にワイヤーバー#5を用いて流延したのち、60℃のオーブン内で1分間放置後、コートフィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm)に通して、紫外線硬化処理を行い、塗工膜を硬化させてハードコート層を形成した。さらに、ハードコート層の上に、InO及びSnOの複合酸化物物(ITO)をスパッタリング処理して透明導電層を形成した後、1Nの塩酸に浸漬することによりITO膜を除去して透明導電層が形成されていない領域を作成した。得られた積層フィルムの透明導電層が形成されていない領域のヘイズ及び全光線透過率、ハードコート層の屈折率を測定し、視認性を評価した結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1の結果から明らかなように、比較例1の積層フィルムでは屈折率が低く、視認性が低い。また、比較例2の積層フィルムはヘイズが高い。一方、実施例の積層フィルムは、屈折率が高く、特に、実施例4の積層フィルムは、視認性に優れるとともに、屈折率が高い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明導電層をパターン化して利用する各種の光学表示装置に利用でき、例えば、パーソナルコンピューター、テレビ、携帯電話(スマートフォン)、電子ペーパー、遊技機器、モバイル機器、時計、電卓などの電気・電子又は精密機器の表示部において、表示装置(液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機又は無機EL表示装置など)と組み合わせて用いられるタッチパネル(抵抗膜方式タッチパネル、静電容量方式タッチパネルなど)に利用できる。特に、優れた視認性から、ITOグリッド方式を採用する投影型静電容量方式タッチパネルの視認側の上部電極板に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材料で形成された基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面に積層され、かつナノメーターサイズの無機粒子及びビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたハードコート層と、このハードコート層表面の一部の領域に形成された透明導電層とを含む透明導電性積層フィルムであって、前記ビニル系化合物が、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートとケイ素含有多官能(メタ)アクリレートとを含む透明導電性積層フィルム。
【請求項2】
ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレートが、5〜7官能(メタ)アクリレートと、2〜4官能(メタ)アクリレートとの組み合わせであり、ケイ素含有(メタ)アクリレートが、シリコーン(メタ)アクリレートである請求項1記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項3】
5〜7官能(メタ)アクリレートと、2〜4官能(メタ)アクリレートとの割合が、前者/後者=99/1〜30/70であり、かつケイ素含有多官能(メタ)アクリレートの割合が、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレート100重量部に対して0.1〜30重量部である請求項2記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項4】
重合性組成物が、さらにセルロースエステルを含む請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項5】
ビニル系化合物と無機粒子との割合(重量比)が、前者/後者=50/50〜10/90である請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項6】
透明導電層が形成された領域と透明導電層が形成されていない領域との全光線透過率の差が2%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項7】
無機粒子が平均一次粒径1〜100nmの金属酸化物粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項8】
無機粒子がチタン及び/又はジルコニウムを含む請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項9】
基材フィルムと透明導電層との屈折率差が0.3以上である請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項10】
ハードコート層の屈折率が、基材フィルムの屈折率よりも大きく、かつ透明導電層の屈折率よりも小さい請求項1〜9のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項11】
透明導電層が形成されていない領域の全光線透過率が80%以上であり、透明導電層が形成されていない領域のヘイズが5%以下である請求項1〜10のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項12】
基材フィルムが、ポリエステル系樹脂又はセルロースエステルで形成されている請求項1〜11のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項13】
透明導電層がパターン化された形成されたタッチパネルの透明電極基板である請求項1〜12のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項14】
基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層をコーティングで形成した後、得られたハードコート層に透明導電層を物理的又は化学的気相法で形成する請求項1〜13のいずれかに記載の透明導電性積層フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の透明導電性積層フィルムを電極基板として備える投影型静電容量方式タッチパネル。

【公開番号】特開2012−218368(P2012−218368A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88454(P2011−88454)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】