説明

透明導電性積層体及びタッチパネル

【課題】透明導電体層がパターニングされて、加熱処理によって透明導電体層が結晶化された場合であっても、パターニングにより形成した段差が設計値よりも大きくなって見栄えが悪くなることを防止することができる透明導電性積層体を提供すること。
【解決手段】第一透明樹脂フィルムの片面または両面に被覆層を有する被覆フィルムと第二透明樹脂フィルムの片面に透明導電体層を有する透明導電性フィルムとが、被覆フィルムの被覆層の側と透明導電性フィルムの透明導電体層を有しない側が対面するように粘着剤層を介して積層されている透明導電性積層体であって、前記粘着剤層は、120℃における貯蔵弾性率が80000Pa以下であり、かつ、前記粘着剤層と被覆層との接着力が5〜20N/25mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆フィルムと透明導電性フィルムが粘着剤層を介して積層されている透明導電性積層体に関する。本発明の透明導電性積層体は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ方式や光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。特に、透明導電体層をパターニングした透明導電性積層体は、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に好適に用いられる。その他、透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーター等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性フィルムとしては、透明な樹脂フィルム基材に透明導電体層(例えば、ITO膜)が積層されたものが知られている。前記透明導電性フィルムが、静電容量方式のタッチパネルの電極基板に用いられる場合には、前記透明導電体層がパターニングされたものが用いられる(特許文献1、2)。このようなパターニングされた透明導電体層を有する透明導電性フィルムは、他の透明導電性フィルム等とともに積層して用いられ、同時に2本以上の指で操作できるマルチタッチ方式の入力装置に好適に使用される。
【0003】
しかしながら、透明導電体層をパターニングすると、パターニングにより透明導電体層に段差が生じてパターニング部と非パターニング部との相違が明確化して見栄えが悪くなっていた。即ち、視認面側からの外部光が透明導電体層で反射する際や、表示素子側からの内部光が透明導電体層を透過する際に、パターニングの有無が明確となって見栄えが悪くなっていた。
【0004】
また、透明導電性フィルムは、樹脂フィルム基材において透明導電体層を設けない側に、粘着剤層を介して他の透明な樹脂フィルム基材を積層した積層体として用いられる。例えば、抵抗膜方式などのタッチパネルなどにおける透明電極に用いる透明導電フィルムにおいては、外観、視認性の観点から、透明導電性フィルムと被覆フィルムとを粘着剤層を介して積層した透明導電性積層体が用いられている(特許文献3、4)。しかし、前記被覆フィルムを用いた透明導電性積層体は、透明導電体層をパターニングして用いると、被覆フィルムを用いていない透明導電性フィルムよりもパターニングの有無が明確となって見栄えが悪くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−076432号公報
【特許文献2】特許第4364938号明細書
【特許文献3】特開2002−103504号公報
【特許文献4】特開平07−013695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記パターニングによる見栄えの悪さは、前記透明導電体層を結晶化させるために、前記透明導電性フィルムまたは透明導電性積層体に加熱処理を施した場合に顕著であった。加熱処理によって透明導電性フィルムまたは透明導電性積層体におおきな波状のうねりが生じて、前記パターニングにより形成した透明導電体層の段差が設計値以上に大きくなったこと(例えば、フィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルムの場合には、段差が設計値の5倍以上になる)が原因であると考えられる。前記うねりは、透明導電性フィルムよりも透明導電性積層体において認められ、特に、被覆フィルムの被覆層の側を粘着剤層に積層した態様の透明導電性積層体においてうねりが大きくなっていた。
【0007】
本発明は、被覆フィルムの被覆層と透明導電性フィルムの透明導電体層を設けない側が粘着剤層を介して積層した透明導電性積層体であって、透明導電体層がパターニングされて、加熱処理によって透明導電体層が結晶化された場合であっても、パターニングにより形成した段差が設計値よりも大きくなって見栄えが悪くなることを防止することができる透明導電性積層体を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、前記透明導電性積層体を用いた静電容量方式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記透明導電性積層体により本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち本発明は、第一透明樹脂フィルムの片面または両面に被覆層を有する被覆フィルムと第二透明樹脂フィルムの片面に透明導電体層を有する透明導電性フィルムとが、被覆フィルムの被覆層の側と透明導電性フィルムの透明導電体層を有しない側が対面するように粘着剤層を介して積層されている透明導電性積層体であって、
前記粘着剤層は、120℃における貯蔵弾性率が80000Pa以下であり、かつ、
前記粘着剤層と被覆層との接着力が5〜20N/25mmであることを特徴とする透明導電性積層体、に関する。
【0011】
前記透明導電性積層体において、前記透明導電体層は、パターニングされている場合においても好適に適用できる。
【0012】
前記透明導電性積層体において、前記透明導電体層は、少なくとも1層のアンダーコート層を介して、前記第二透明樹脂フィルムに積層されていることが好ましい。
【0013】
前記透明導電性積層体において、前記粘着剤層に積層される被覆層は、被覆フィルムに対して、150℃、1時間の熱処理を施した後において、被覆層表面の表面自由エネルギーが25mN/m〜40mN/mであることが好ましい。
【0014】
前記透明導電性積層体において、前記粘着剤層に積層される被覆層は、被覆層表面の算術平均粗さ(Ra)が10nm以下であることが好ましい。
【0015】
前記透明導電性積層体において、前記粘着剤層に積層される被覆層は、被覆層表面の自乗平均粗さ(Rq)が12nm以下であることが好ましい。
【0016】
前記透明導電性積層体は、タッチパネルに好適に用いられるものである。また、前記透明導電性積層体が適用されるタッチパネルとしては、静電容量方式タッチパネルが好適である。
【0017】
また本発明は、前記透明導電性積層体を少なくとも1つ備えていることを特徴とするタッチパネル、に関する。
【発明の効果】
【0018】
パターニングされた透明導電体層を有する透明導電性フィルムは、透明導電体層のパターニング部と非パターニング部において線膨張係数が異なる。また、透明導電体層を結晶化するために、透明導電性フィルムに加熱処理を施してその後に冷却した際には、前記線膨張係数の相違によって、透明導電性フィルムのパターニング部と非パターニング部とで膨張及び収縮挙動が異なることが分かった。そして、このような線膨張係数の相違により生じる膨張及び収縮挙動が、透明導電性フィルム自体においておおきな波状のうねりになり、前記パターニングにより形成した透明導電体層の段差が顕著になり、見栄えが悪化していること考えられる。即ち、透明導電性フィルムにおいて、パターニングによって透明導電体層が残るパターニング部は、透明は樹脂フィルム基材に比べて硬く、透明樹脂フィルム基材の熱収縮が発生しにくいが、透明導電体層が残らない非パターニング部は熱収縮が発生しやすくなり、この相違により、うねりが発生して、見栄えが悪化していること考えられる。
【0019】
また、透明導電性フィルムと他の樹脂フィルム基材を、粘着剤層を介して積層した透明導電性積層体では、透明導電性フィルムに発生するうねりに粘着剤層が追従して、さらに、粘着剤層を介して他の樹脂フィルム基材にうねりが伝わる。その結果として、透明導電性積層体では、うねりが大きく増加されることになると考えられる。特に、他の樹脂フィルム基材が被覆フィルムであり、当該被覆フィルムにおける被覆層の側を粘着剤層に積層している場合にはうねりが大きく増加されると考えられる。
【0020】
本発明の透明導電性積層体では、透明導電性フィルムと被覆フィルムを積層している粘着剤層は、120℃における貯蔵弾性率が80000Pa以下であり、かつ、前記粘着剤層と被覆層との接着力が5〜20N/25mmになるように設計されている。前記所定範囲の貯蔵弾性率を満足する粘着剤層を用いることによって、加熱処理を施した場合においても、透明導電性フィルムに生じる波状のうねりを粘着剤層が吸収してうねるが伝播することを抑えることができ、パターニングにより形成した段差が設計値よりも大きくなることを防止することができる。また、前記粘着剤層が前記所定範囲の比較的に弱い接着力に制御することにより、透明導電性フィルムで発生したうねりに粘着剤層が追従したとしても、粘着剤層と被覆フィルムの間にズレが発生して、粘着剤層から伝わるうねりを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の透明導電性積層体の実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の透明導電性積層体の実施形態の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の透明導電性積層体の実施形態の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の透明導電性積層体のパターンの一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の透明導電性積層体の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1乃至図3は本発明の透明導電性積層体Aの一実施形態を示す断面図である。図1乃至3では、被覆フィルム1と透明導電性フィルム2が粘着剤層3を介して積層されている。
【0023】
被覆フィルム1は、第一透明樹脂フィルム10の片面に第一被覆層112または両面に第一、第二被覆層11、12を有する。図1、図3では、第一透明樹脂フィルム10の両面に第一、第二被覆層11、12を有する場合であり、図2では、片面にのみ第一被覆層11を有する場合である。なお、両面に第一、第2被覆層11、12を設ける場合、両者の材料、厚み等は同じであってもよく、異なっていてもよい。本発明の透明導電性積層体Aでは、前記第一被覆層11の側に粘着剤層3が積層されている。
【0024】
透明導電性フィルム2は、第二透明樹脂フィルム20の片面に透明導電体層21を有する。図1、図2は、第二透明樹脂フィルム20に、直接、透明導電体層21を設けた場合である。図3に示すように、透明導電体層21は、アンダーコート層22を介して設けることができる。アンダーコート層22は1層でもよく、2層以上であってもよい。透明導電性フィルム2の透明導電体層21を有しない側に、粘着剤層3を介して被覆フィルム1が積層される。なお、図1乃至図3では示していないが、透明導電体層21は、適宜にパターニングされたものを用いることができる。
【0025】
被覆フィルム1に係る第一透明樹脂フィルム10としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。
【0026】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルム、例えば、(A)側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換及び/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体的には、イソブチレン及びN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の高分子フィルムを用いることができる。
【0027】
前記第一透明樹脂フィルム10の厚さは、うねりを抑える観点から、通常、70〜300μmであるのが好ましく、より好ましくは100〜200μmである。
【0028】
被覆層は、第一透明樹脂フィルムの片面または両面に形成される。但し、第一被覆層11は、粘着剤層3との関係において、粘着剤層3の接着力が5〜20N/25mmを満足するものが選択されて用いられる。
【0029】
前記透明導電性積層体において、前記第一被覆層は、被覆フィルムに対して、150℃、1時間の熱処理を施した後において、被覆層表面の表面自由エネルギーは25mN/m〜40mN/mであることが好ましい。
【0030】
また、前記第一被覆層は、被覆層表面の算術平均粗さ(Ra)は10nm以下であることが好ましく、さらには1nm〜8nm、さらには3nm〜6nmであるのが好ましい。また、前記第一被覆層は、被覆層表面の自乗平均粗さ(Rq)は12nm以下であることが好ましく、さらには2nm〜10nm、さらには4nm〜8nmであるのが好ましい。
【0031】
第一、第二被覆層11、12の厚さは、被覆層を形成する材料に応じて適宜に決定することができるが、15nm〜10μmであるのが好ましい。前記第一、第二被覆層11、12の厚さは、透明導電性積層体を加熱する際に、第一透明樹脂フィルムから析出するオリゴマーを防止する観点からは20nm〜1μmであるのが好ましい。一方、前記第一、第二被覆層11、12の厚さは、透明導電性積層体を加熱した際のカールの抑制や第一透明樹脂フィルムの表面保護の観点からは1μm〜10μmであるのが好ましく、さらには2μm〜10μmであるのが好ましい。なお、第一透明樹脂フィルムの両面に第一被覆層11および第二被覆層12の設ける場合、両者の厚さ、材料は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
被覆層の形成材料としては、例えば、従来、ハードコート層に用いられていた各種の材料を用いることができ、例えば、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル・ウレタン系樹脂などの硬化型樹脂が挙げられる。これら形成材料から、被覆層は硬化樹脂層として形成される。
【0033】
前記硬化型樹脂の具体例としては、例えば、特開2008−151998号公報に記載の(A)成分:ウレタンアクリレートおよびウレタンメタクリレートの少なくとも一方、(B)成分:ポリオールアクリレートおよびポリオールメタクリレートの少なくとも一方、(C)成分:下記(C1)および下記(C2)の少なくとも一方から形成されるポリマー若しくはコポリマー又は前記ポリマーとコポリマーの混合ポリマー、(C1):水酸基およびアクリロイル基の少なくとも一方の基を有するアルキル基を有するアルキルアクリレート、(C2):水酸基およびアクリロイル基の少なくとも一方の基を有するアルキル基を有するアルキルメタクリレート、を含有する組成物が挙げられる。
【0034】
また、被覆層の形成材料としては、後述のアンダーコート層の形成材料、オリゴマー防止層の形成材料を用いることができる。その他、被覆層としては、下記の硬化樹脂層1、2を用いることができる。
【0035】
なお、被覆層の形成材料には、適宜に、溶媒、必要に応じて、レベリング剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の添加剤種々の添加剤を添加することができる。
【0036】
<硬化樹脂層1>
被覆層の形成材料としては、物性の差に基づいて相分離する少なくとも2種の成分を含有する樹脂組成物を用いることができる。当該組成物を用いた硬化樹脂層1によって、硬化樹脂層1表面に凹凸を形成することができる。
【0037】
(樹脂組成物)
硬化樹脂層1の形成に用いられる樹脂組成物としては、例えば国際公開WO2005/073763号パンフレットに記載の物性の差に基づいて相分離する少なくとも2種の成分を含有する組成物を好適に用いることができる。すなわち、この樹脂組成物は、基板上に塗布されて硬化樹脂層1を形成するときに、樹脂組成物中に含まれる第1成分と第2成分の物性の差に基づいて、両者が相分離することにより、表面にランダムな凹凸を有する樹脂層を形成し得るものである。この樹脂組成物に含有される具体的な第1及び第2成分としては、それぞれ独立に、モノマー、オリゴマー及びポリマーからなる群から選択することができる。
【0038】
第1成分および第2成分として、例えば、多官能性モノマーなどのモノマー、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリシラン樹脂、ポリイミド樹脂またはフッ素樹脂を骨格構造に含む樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、低分子量であるいわゆるオリゴマーであってもよい。多官能性モノマーとして、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリレートとの脱アルコール反応物、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
【0039】
オリゴマーおよびポリマーとしては、上記骨格構造の2種以上からなる共重合体であってもよく、上記骨格構造とそれ以外のモノマーとからなる共重合体であってもよい。
【0040】
樹脂組成物の第1成分および第2成分は、同種の骨格構造を含むオリゴマーまたはポリマーを用いてもよく、また互いに異なる骨格構造を含むオリゴマーまたはポリマーを用いてもよい。また、第1成分および第2成分のうち何れか一方がモノマーであって、他方がオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0041】
樹脂組成物の第1成分および第2成分はそれぞれ、互いに反応する官能基を有しているのが好ましい。このような官能基を互いに反応させることによって、硬化樹脂層1の硬度を高めることができる。このような官能基の組合せとして、例えば、活性水素を有する官能基(水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基など)とエポキシ基との組合せ、活性水素を有する官能基とイソシアネート基との組合せ、エチレン性不飽和基とエチレン性不飽和基との組合せ、シラノール基とシラノール基との組合せ、シラノール基とエポキシ基との組合せ、活性水素を有する官能基と活性水素を有する官能基との組合せ、活性メチレンとアクリロイル基との組合せ、オキサゾリン基とカルボキシル基との組合せ等が挙げられる。
【0042】
ここにいう「互いに反応する官能基」とは、第1成分および第2成分のみを混合しただけでは反応は進行しないが、触媒または硬化剤を併せて混合することにより互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる触媒として、例えば光開始剤、ラジカル開始剤、酸・塩基触媒、金属触媒などが挙げられる。使用できる硬化剤として、例えば、メラミン硬化剤、(ブロック)イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤などが挙げられる。
【0043】
樹脂組成物の第1成分および第2成分それぞれが、互いに反応する官能基を有する場合は、第1成分と第2成分との混合物は、熱硬化性、光硬化性(紫外線硬化性、可視光硬化性、赤外線硬化性など)といった硬化性を有することとなる。
【0044】
本発明においては、好ましくは第1成分および第2成分として、(メタ)アクリル樹脂を骨格構造に含む樹脂を使用することができる。また、第1成分および第2成分の分子量は、分子量(第1成分および第2成分が樹脂である場合は重量平均分子量)で100〜100000であるのが好ましい。
【0045】
第1成分と第2成分との相分離をもたらし得る各成分の物性の差として、例えばそれぞれの樹脂のSP値、ガラス転移温度(Tg)、表面張力、数平均分子量などが一定の差異を有する場合が挙げられる。
【0046】
SP値とは、solubility parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。SP値は、例えば、SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)に記載の方法により測定し得る。
【0047】
第1成分と第2成分との相分離をもたらす第1成分および第2成分それぞれの物性の差がSP値の差である場合、第1成分のSP値と第2成分のSP値との差は、0.5以上であるのが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。このSP値の差の上限は特に限定されないが、一般には15以下である。第1成分のSP値と第2成分のSP値との差が0.5以上である場合は、互いの樹脂の相溶性が低く、それにより被覆組成物の塗布後に第1成分と第2成分との相分離がもたらされると考えられる。
【0048】
後述するように、樹脂組成物は、有機溶媒を含む被覆組成物として基板上に塗布されて硬化樹脂層1が形成されるが、この被覆組成物に含まれる、第1成分、第2成分および有機溶媒について、第1成分のSP値(SP)、第2成分のSP値(SP)および有機溶媒のSP値(SPsol)が、下記条件;
SP<SP、かつ
SPとSPsolとの差が2以下;
を満たす関係にあるのがより好ましい。SPとSPsolとの差が2以下であることによって、低ヘイズであり、かつ相分離による凹凸の形成性に優れた硬化樹脂層1を調製することができることとなる。SPとSPsolとの差は1以下、つまり0〜1の範囲内であるのがさらに好ましい。なお、SPおよびSPsolは、これらの差が2以下であればよく、SP<SPsolであってもよく、SP>SPsolであってもよい。
【0049】
樹脂組成物における上記の第1成分と第2成分の比率は、両者が相分離を生じるように適宜に設定されるが、重量比で1:99〜99:1であることが好ましく、1:99〜50:50であることがより好ましく、1:99〜20:80の割合で用いることがさらに好ましい。また、樹脂組成物中には、上記の第1成分および第2成分のほかに、通常使用される樹脂が含まれてもよい。
【0050】
また、被覆層の形成材料としては、前記樹脂組成物を用いる場合には、当該樹脂組成物に微粒子を配合することが好ましい。
【0051】
(微粒子)
硬化樹脂層1に含有される微粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子やシリコーン系微粒子などがあげられる。前記微粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系微粒子が好ましい。有機系微粒子としては、屈折率の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
【0052】
硬化樹脂層1中の微粒子の平均粒径は、硬化樹脂層1の厚みの25〜80%であることが好ましく、30%〜70%であることがより好ましく、35%〜65%であることがさらに好ましい。微粒子の平均粒径が、硬化樹脂層1の厚みの80%を超えると、ヘイズが上昇して透明性が損なわれたり、硬化樹脂層1の形成時に粒子に起因したスジが発生するなどの外観上の不良を生じる傾向がある。一方、微粒子の平均粒径が硬化樹脂層1の厚みの25%より小さいと、表面の凹凸形成が十分ではなくなる。
【0053】
ヘイズの上昇を抑制する観点からは、微粒子の平均粒径は2400nmであることが好ましく、2000nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがより好ましい。微粒子の平均粒径は250nm以上であることが好ましく、500nm以上であることがより好ましく、700nm以上であることがさらに好ましい。
【0054】
硬化樹脂層1中の微粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、0.05〜2重量部であることがより好ましく、0.1〜1重量部であることがさらに好ましい。硬化樹脂層1中の微粒子の含有量が小さいと、硬化樹脂層1の表面に十分な凹凸が形成され難くなる傾向がある。一方、微粒子の含有量が大きすぎると、微粒子による光散乱に起因して透明導電性フィルムのヘイズが高くなり、視認性が低下する傾向がある。また、微粒子の含有量が大きすぎると、硬化樹脂層1の形成時(溶液の塗布時)に、スジが発生し、視認性が損なわれたりする場合がある。
【0055】
上記のように、硬化樹脂層1中の微粒子の粒径は硬化樹脂層1の厚みよりも小さく、また、微粒子の含有量は少量である。そのため、一般には、このような粒子の存在のみによって耐ブロッキング性や易滑性を付与するのに十分な表面凹凸が形成されているとは考え難い。本発明において、このような少量の微粒子の添加で表面凹凸が形成される理由は定かではないが、微粒子が樹脂組成物の相分離のきっかけとなり、相分離が促進されることによって大きな凹凸が形成され易くなっているものと推定される。
【0056】
(被覆組成物)
硬化樹脂層1を形成するのに用いられる被覆組成物は、上記の樹脂組成物および溶媒を含む。前記のように被覆組成物には、微粒子を含有することができる。また、被覆組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0057】
被覆組成物は、上記の第1成分と第2成分およびその他の樹脂、必要に応じて上記の微粒子、ならびに溶媒および添加剤、触媒等と混合することにより調製される。被覆組成物中の溶媒は、特に限定されるものではなく、第1成分および第2成分、塗装の下地となる部分の材質および組成物の塗装方法などを考慮して適時選択される。溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0058】
第1成分と第2成分の相分離をもたらす物性の差がSP値の差である場合、前述のようにSPとSPsolとの差を2以下とする観点からは、溶媒として、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;アニソール、フェネトールプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、また2種以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。また、2種以上の有機溶媒を用いる場合は、用いられる有機溶媒のうち少なくとも1種に、SPとSPsolとの差を2以下とするものを用いればよい。
【0059】
被覆組成物において、微粒子は溶液中に分散されていることが好ましい。溶液中に微粒子を分散させる方法としては、樹脂組成物溶液に微粒子を添加して混合する方法や、予め溶媒中に分散させた微粒子を樹脂組成物溶液に転化する方法等、各種公知の方法を採用することができる。
【0060】
(塗布および硬化)
硬化樹脂層1は、上記の被覆組成物を塗布することにより形成される。被覆組成物の塗布方法は、被覆組成物および塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法などにより塗布することができる。
【0061】
基材に塗布された塗膜はそのまま硬化させてもよく、また硬化させる前に塗膜を乾燥させて、硬化前に予め相分離させておいてもよい。塗膜を硬化させる前に乾燥させる場合は、30〜200℃、より好ましくは40〜150℃で、0.1〜60分間、より好ましくは1〜30分間乾燥させて、溶媒を除去し、予め相分離させることができる。第1成分と第2成分との混合物が光硬化性である場合に、硬化前に乾燥させて予め相分離させておくことは、硬化樹脂層1中の溶媒を効果的に除去でき、かつ表面凹凸が形成され易いという利点がある。
【0062】
硬化させる前に相分離させる他の方法として、塗膜に光を照射して相分離させる方法を用いることもできる。照射する光として、例えば露光量0.1〜1.5J/cmの光、好ましくは0.5〜1.5J/cmの光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。光を照射して相分離させることによって、被覆組成物に含まれる溶媒の乾燥ムラに起因する表面形状のムラを回避できるという利点がある。
【0063】
被覆組成物を塗布後、必要に応じて乾燥した塗膜を硬化させることによって、硬化樹脂層1が形成される。第1成分と第2成分との混合物が熱硬化性である場合は、40〜280℃、より好ましくは80〜250℃で、0.1〜180分間、より好ましくは1〜60分間加熱することにより、硬化させることができる。第1成分と第2成分との混合物が光硬化性である場合は、必要に応じた波長の光を発する光源を用いて光を照射することによって、硬化させることができる。なお、光照射は、上記のとおり相分離させる目的で用いることもできる。
【0064】
<硬化樹脂層2>
硬化樹脂層2は、硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物を硬化することにより形成された硬化層である。硬化樹脂層2は、第一透明樹脂フィルム10中の移行成分、例えば、ポリエステルフィルム中の移行成分であるポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する等の機能を有する。
【0065】
硬化樹脂層2の厚さは、120nm以上にすることが好ましい。硬化樹脂層2の厚さは150nm以上であるのが好ましく、さらには300nm以上であるのが好ましい。一方、硬化樹脂層2の厚さは、特に制限はされないが、通常、コーテフィングフィルム1のカール抑制やコスト低減の点から、1μm以下であるのが好ましく、さらには500nm以下であるのが好ましい。
【0066】
硬化型化合物としては、分子中に少なくとも一つの重合性二重結合を有する官能基を有し、樹脂層を形成できる材料が用いられる。重合性二重結合を有する官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等があげられる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味し、本発明では(メタ)とは同様の意味である。
【0067】
硬化型化合物としては、前記重合性二重結合を有する官能基を有する、硬化型樹脂があげられる。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
また、硬化型化合物としては、前記活性エネルギー線硬化型樹脂の他に、分子中に少なくとも一つの重合性二重結合を有する官能基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。反応性希釈剤としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートがあげられる。また、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;さらには三官能以上の(メタ)アクリレート、があげられる。その他、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸の(メタ)アクリレート等もあげられる。反応性希釈剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
また、硬化樹脂層2を形成する組成物には、前記硬化型化合物に加えて、無機酸化物粒子を含有する。無機酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、マイカ、等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0070】
無機酸化物粒子は、重量平均粒径が1nm〜200nmの範囲である、いわゆるナノ粒子であることが好ましい。前記重量平均粒径は、より好ましくは、1nm〜100nmの範囲である。なお無機酸化物粒子の重量平均粒径は、コールターカウント法により、微粒子の重量平均粒径を測定した。具体的には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出した。
【0071】
前記無機酸化物粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物と結合(表面修飾)されているものを用いることができる。前記重合性不飽和基は、硬化型化合物と反応硬化することで、オリゴマー防止層の硬度を向上させる。前記重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基が好ましい。また、前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物あるいは加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、光感応性基を有するものであることも好ましい。
【0072】
前記無機酸化物粒子を硬化型化合物に配合することにより、硬化樹脂層2の屈折率が制御される。硬化樹脂層2の屈折率は、粘着剤層13との屈折率差が0.04以下になるように制御される。当該屈折率差の制御により、硬化樹脂層2に起因する干渉縞の発生を抑えることができる。当該屈折率差は、0.03以下であるがより好ましく、さらには0.02以下であるのが好ましい。
【0073】
前記無機酸化物粒子の配合量は、前記のように硬化型化合物とともに併用することで、前記屈折率差が0.04以下になるような割合で用いられる。粘着剤層3の屈折率は、通常、1.46〜1.49(例えば、アクリル系粘着剤層の屈折率約1.47)であり、硬化樹脂層2の屈折率と粘着剤層13との屈折率差が0.04以下になるように、硬化型化合物、無機酸化物粒子の屈折率を考慮して、前記無機酸化物粒子の配合量は決定される。かかる観点から、前記無機酸化物粒子(例えば、屈折率が1.43〜1.47の場合)は、硬化型化合物(例えば、屈折率が1.51〜1.55)100重量部に対し、50〜300重量部、好ましくは100〜200重量部の範囲、より好ましくは、100〜150重量部の範囲である。前記配合量は、硬化樹脂層2に硬度を付与しカールの発生を抑えたり、耐擦傷性を付与したりするうえでも好ましい。
【0074】
また、硬化樹脂層2を形成する組成物には、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子に加えて、無機酸化物粒子以外の平均粒径が300〜2μmの第二粒子を含有することができる。前記第二粒子を硬化樹脂層2に含有させることにより、硬化樹脂層2に耐ブロッキング性を付与することができる。例えば、硬化樹脂層2が第二粒子を含有している場合には、長尺状の被覆フィルム1を巻回する際に保護フィルムを用いることなくロール状にすることができる。第二粒子の平均粒径が300nmよりも小さい場合には、耐ブロッキング性の付与が十分ではなく、一方、2μmを超える場合には、へイズが上昇する場合があり好ましくない。第二粒子の平均粒径は400〜1500nmが好ましく、さらには500〜1000nmであるのが好ましい。第二粒子の平均粒径は、レーザー法により測定した値である。
【0075】
また、第二粒子の配合割合は、前記硬化型化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部であるのが好ましい。第二粒子の配合割合が0.1重量部よりも小さい場合には、耐ブロッキング性の付与が十分ではなく、一方、10重量部を超える場合には、へイズが上昇する場合があり好ましくない。第二粒子の配合割合は0.03〜5重量部が好ましく、さらには0.05〜1重量部であるのが好ましい。
【0076】
前記第二粒子としては、特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル−スチレン共重合体、メラミン樹脂等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子;ガラス、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛等の無機系粒子があげられる。なお、前記第二粒子は、前記無機酸化物粒子以外のものが用いられるが、前記第二粒子と前記無機酸化物粒子とは平均粒径において差別化することができ、前記第二粒子の材料には無機酸化物を含むことができる。前記第二粒子としては、屈折率差がヘイズに影響を及ぼす点から、有機系粒子を用いるのが好ましい。また、前記第二粒子としては、その屈折率と、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子の平均屈折率との差が0.1以下であるものを用いることが好ましい。前記屈折率差を0.1以下とすることで、第二粒子を配合することによるヘイズの上昇を小さく抑えることができる。前記屈折率差は0.05以下であるのが好ましく、さらには0.03以下であるの好ましい。硬化型化合物および前記無機酸化物粒子の平均屈折率はこれら材料により形成される硬化樹脂層2の屈折率である。
【0077】
硬化樹脂層2は、硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物の硬化層として形成される。当該硬化層の形成は、活性エネルギー線硬化または熱硬化により行うことができ、前記組成物には、硬化方法に応じた重合開始剤が配合される。重合開示剤は、活性エネルギー線として電子線を採用する場合には特に必要ではないが、活性エネルギー線として紫外線を採用する場合には、光重合開始剤が用いられる。また、熱硬化型粘着剤組成物の場合には、熱開裂型重合開始剤が用いられる。硬化層の形成は、活性エネルギー線として紫外線を用いるのが好ましい。
【0078】
光重合開始剤としては、従来公知の、例えば、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ケトン化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、芳香族ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、チオキサンソン系化合物などがあげられる。
【0079】
光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、活性エネルギー線硬化型化合物100重量部に対して0.1〜10重量部であるのが好ましい。前記光重合開始剤の使用量は、1重量部以上であるのが好ましく、さらには2重量部以上であるのが好ましい。一方、前記光重合開始剤の使用量は、8重量部以下であるのが好ましく、さらには5重量部以下であるのが好ましい。
【0080】
また、前記組成物は、適宜に溶媒により希釈した組成物溶液として用いることができる。前記組成物に、溶媒を含有する組成物溶液は、第一透明樹脂フィルム10に塗工して塗工層を形成した後、溶媒を乾燥してから、硬化される。
【0081】
組成物溶液に用いられる溶媒としては、硬化型化合物等を溶解できるものが選択される。溶媒の具体例としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン等のエーテル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル系;アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル等のアセチルアセトン系;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系などの各種溶媒を用いることができる。これら溶媒は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物溶液の濃度は、通常、1〜60重量%であり、好ましくは2〜10重量%である。
【0082】
組成物溶液の塗工法としては、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。塗工層の形成は、最終的に得られる硬化樹脂層2の厚さが120nm以上になるように行われる。
【0083】
次いで、前記塗工層に含まれる溶媒の乾燥を行なった後に、硬化させる。硬化手段は、熱硬化または活性エネルギー線硬化により適宜選択されるが、硬化手段としては、通常、紫外線を照射することにより行なうのが好ましい。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線照射は、紫外線波長365nmでの積算光量で50〜500mJ/cmが好ましい。照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化がより十分となり、形成される硬化樹脂層2の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm以下であれば、形成される硬化樹脂層2の着色を防止することができる。
【0084】
また必要に応じて、被覆フィルム1には、第一透明樹脂フィルム10において粘着剤層3に積層しない側に機能層を設けることができる。機能層としては、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。機能層は、第二被覆層12とともに設けることができる。防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。
【0085】
透明導電性フィルム2に係る第二透明樹脂フィルム20としては、前記第一透明樹脂フィルム10と同様の樹脂フィルムを例示できる。第二透明樹脂フィルム20は、第一透明樹脂フィルム10と同じ材料を用いることができる。前記第二透明樹脂フィルム20の厚みは、通常、2〜200μmであるのが好ましく、さらには2〜100μmであるのが好ましい。第二透明樹脂フィルム20の厚みが2μm未満であると、第二透明樹脂フィルム20の機械的強度が不足し、この第二透明樹脂フィルム20をロール状にしてアンダーコート層や透明導電体層を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが200μmを超えると、透明導電体層21の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れなくなる場合がある。
【0086】
第二透明樹脂フィルム20において、前記粘着剤層3を積層しない他方の片面には、直接またはアンダーコート層22を介して、透明導電体層21を有する。
【0087】
第二透明樹脂フィルム20には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施してもよい。これにより、この上に設けられる透明導電体層21またはアンダーコート層22の第二透明樹脂フィルム20に対する密着性を向上させることができる。また、透明導電体層21またはアンダーコート層22を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0088】
透明導電体層21の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。
【0089】
透明導電体層21の厚みは特に制限されないが、10nm以上とするのが好ましく、15〜40nmであることがより好ましく、20〜30nmであることがさらに好ましい。透明導電体層21の厚みが15nm以上であると、表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好なものとし易い。また、連続被膜を形成し易い。また、透明導電体層21の厚みが40nm以下であると、より透明性の高い層とすることができる。
【0090】
透明導電体層21の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0091】
透明導電体層21は、後述のアンダーコート層22との屈折率の差が0.1以上とすることが好ましい。透明導電体層21の屈折率は、通常、1.95〜2.05程度である。
【0092】
アンダーコート層22は、無機物、有機物、又は、無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は屈折率である〕が挙げられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウムに対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化錫を0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0093】
また、上記有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0094】
なお、上記の透明導電体層21を形成した後には、必要に応じて、100〜150℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。このため、第一、第二透明樹脂フィルム10、20は、100℃以上、更には150℃以上の耐熱性を有することが好ましい。本発明では、透明導電体層3は、エッチングしてパターニングすることができる。透明導電体層3を結晶化するとエッチングが困難になる場合があるため、透明導電体層3のアニール化処理は、透明導電体層3をパターニングした後に行うことが好ましい。さらにはアンダーコート層2をエッチングする場合には、アンダーコート層2のエッチングの後に透明導電体層3のアニール化処理を行うことが好ましい。
【0095】
粘着剤層3は、被覆フィルム1の第一被覆層11の側と、透明導電性フィルム2の透明導電体層21を有しない側とを積層するために使用される。粘着剤層3は、120℃における貯蔵弾性率が80000Pa以下であり、かつ、粘着剤層3の接着力は、第一被覆層11との関係において5〜20N/25mmになるように制御されている。かかる貯蔵弾性率を有する粘着剤層3を用いることで、うねりを緩衝させて、透明導電性フィルム1において生じるうねりが、被覆フィルム1に及ぶことを抑制することができる。
【0096】
前記粘着剤層3の貯蔵弾性率は、粘着剤層3を形成後の表面形状の均一性を維持する観点から45000Pa以上であるのが好ましい。前記粘着剤層3の貯蔵弾性率が80000Paを超えるとうねりを十分に抑えることができないおそれがある。
【0097】
上記粘着剤層3の貯蔵弾性率、接着力は、粘着剤に係わるベースポリマーの種類、Tg、架橋剤の種類、配合量等により制御することができる。
【0098】
例えば、前記粘着剤層3の貯蔵弾性率は80000Pa以下に制御する方法の一つとして、ベースポリマーの主骨格を構成するモノマーと、主骨格を構成するモノマーと共重合させるモノマーとの組み合わせによって、粘着剤層3の120℃での貯蔵弾性率を低下させることにより、粘着剤層3の貯蔵弾性率は80000Pa以下に制御する方法がある。120℃での貯蔵弾性率を低下させる原因としては、粘着剤層の加熱により、粘着剤層中に未反応で残っている主骨格と共重合させるモノマーがラジカルを有し、そのラジカルがベースポリマーの主鎖を切断することが考えられる。上記方法を用いることにより、粘着剤層3が常温で80000Paより大きい貯蔵弾性率を有している場合であっても、粘着剤層3の加熱により、120℃での貯蔵弾性率を80000Pa以下の値とすることが可能となる。また、粘着剤層3が常温で80000Pa以下の貯蔵弾性率を有している場合であっても、粘着剤層3を加熱することにより、120℃での貯蔵弾性率を80000Pa以下の所望の値とすることが可能となる。
【0099】
粘着剤層3としては、上記貯蔵弾性率、接着力を満たすものであれば、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0100】
前記アクリル系粘着剤としては、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとするものを用いることができる。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0101】
アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は1〜14程度であり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの中でもアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0102】
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー(複素環含有モノマーを含む)、芳香族含有モノマー等が挙げられる。
【0103】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。これらのなかでもアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0104】
水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどが挙げられる。
【0105】
また、窒素含有モノマーとしては、例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなども改質目的のモノマー例として挙げられる。
【0106】
芳香族含有モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0107】
上記モノマーの他に、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0108】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
【0109】
粘着剤層3をアクリル系粘着剤により形成する場合、アクリル系ポリマーの主骨格を構成するモノマーであるアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートと組み合わせる共重合モノマーとしては、水酸基含有モノマーが好ましい。例えば、主骨格を構成するモノマーとしてブチル(メタ)アクリレートを用い、水酸基含有モノマーとして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いるのが、120℃における粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させるうえで好ましい。
【0110】
これらの中でも、架橋剤との反応性が良好である点から、水酸基含有モノマーが好適に用いられる。また、接着性、接着耐久性の点から、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0111】
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、重量比率において、50重量%以下である。好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。
【0112】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。
【0113】
前記アクリル系ポリマーには配合される架橋剤は、透明導電性フィルムとの密着性や耐久性を向上でき、また高温での信頼性や粘着剤自体の形状の保持を図ることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系などを適宜に使用可能である。これら架橋剤は1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート化合物が用いられる。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したアダクト系イソシアネート化合物;イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどが挙げられる。
【0115】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、前記ポリイソシアネート化合物架橋剤を0.01〜2重量部含有してなることが好ましく、0.02〜2重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1.5重量部含有してなることがさらに好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0116】
過酸化物系架橋剤としては、各種過酸化物が用いられる。過酸化物としては、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ‐sec‐ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐へキシルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ‐n‐オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ2‐エチルヘキサノエート、ジ(4‐メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、などが挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドが好ましく用いられる。
【0117】
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、前記過酸化物0.01〜2重量部であり、0.04〜1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0118】
さらに、本発明の粘着剤には、シランカップリング剤を含有することできる。シランカップリング剤を用いることにより、耐久性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、任意の適切な官能基を有するものを用いることができる。具体的には、官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基、アセトアセチル基、イソシアネート基、スチリル基、ポリスルフィド基等が挙げられる。具体的には、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のポリスルフィド基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0119】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.001〜5重量部が好ましく、さらには0.01〜1重量部が好ましく、さらには0.02〜1重量部がより好ましく、さらには0.05〜0.6重量部が好ましい。
【0120】
また、粘着剤層3には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層3とすることもできる。
【0121】
尚、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子など適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0122】
粘着剤層3は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の粘着剤溶液として用いられる。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0123】
粘着剤層3の形成方法としては、特に制限されず、粘着剤(溶液)を塗工し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型フィルムにより転写する方法等があげられる。塗工法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0124】
被覆フィルム1の第一被覆層11と透明導電性フィルム2の透明導電体層1が設けられていない側との貼り合わせは、透明導電性フィルム2の側に前記の粘着剤層3を設けておき、これに前記被覆フィルム1の第一被覆層11側を貼り合わせるようにしてもよいし、逆に被覆フィルム1の第一被覆層11側に前記の粘着剤層3を設けておき、これに透明導電性フィルム2を貼り合わせるようにしてもよい。
【0125】
粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般的には、1〜500μmであり、好ましくは1〜50μmである。さらには1〜40μmが好ましく、さらには5〜30μmが好ましく、特に10〜25μmが好ましい。1μmより薄いと耐久性が悪くなり、厚くなると発泡などによる浮きや剥がれが生じやすく外観不良となりやすい。
【0126】
その他、図示していないが、第二透明樹脂フィルム20の粘着剤層3を積層する側には、オリゴマー防止層を介して、粘着剤層3を積層することができる。
【0127】
オリゴマー防止層の形成材料としては透明な膜を形成しうる適宜なものが用いられ、無機物、有機物またはそれらの複合材料であってもよい。その膜厚は0.01〜20μmであることが好ましい。また、当該オリゴマー防止層の形成にはコーターを用いた塗布法やスプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられることが多いが真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法といった手法が用いられていてもよい。コーティング法においては、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、UV硬化型樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂成分やこれらアルミナ、シリカ、マイカ等の無機粒子の混合物を使用してもよい。または、高分子基板を2層以上の共押出しにより基材成分に防止層5の機能を持たせてもよい。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法といった手法においては、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルトもしくはスズやこれらの合金等からなる金属、または酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムもしくはこれらの混合物からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【0128】
パターニング工程では、前記透明導電体層21をエッチングすることによりパターニングを行なうことができる。エッチングに際しては、パターンを形成するためのマスクにより透明導電体層21を覆って、エッチング液により、透明導電体層21をエッチングする。
【0129】
透明導電体層21は、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズが好適に用いられるため、エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。
【0130】
アンダーコート層22が少なくとも2層ある場合には、透明導電体層21のみをエッチングしてパターニングすることができる他、透明導電体層21を、酸によりエッチングしてパターニングした後に、少なくとも、第二透明樹脂フィルム20から最も離れたアンダーコート層を透明導電体層21と同様にエッチングしてパターニングすることができる。好ましくは、第二透明樹脂フィルム20から第一層目のアンダーコート層以外の透明導電体層21を透明導電体層21と同様にエッチングしてパターニングすることができる。
【0131】
アンダーコート層22のエッチングに際しては、透明導電体層21をエッチングした場合と同様のパターンを形成するためのマスクによりアンダーコート層22を覆って、エッチング液により、アンダーコート層22をエッチングする。第二層目より上のアンダーコート層は、前述の通り、SiO等の無機物が好適に用いられるため、エッチング液としては、アルカリが好適に用いられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、第一層目の透明導電体層は、酸またはアルカリによって、エッチングされないような有機物により形成するのが好ましい。
【0132】
さらに、本発明の透明導電性積層体には、60〜200℃で加熱処理して、透明導電体層21を結晶化する工程を施すことができる。結晶化工程による加熱処理により、透明導電体層21は、結晶化される。本発明の透明導電性積層体は、上記所定の貯蔵弾性率、接着力を有する粘着剤層3が積層されているため、加熱処理が施された場合においても、フィルムのうねりを小さく抑えることができる。
【0133】
結晶化に際しての加熱温度は、通常、60〜200℃程度であり、好ましくは100〜150℃である。また加熱処理時間は、5〜250分間である。かかる観点からすれば、第一、第二透明樹脂フィルム10、20は、上記加熱処理が施されることから、100℃以上、更には150℃以上の耐熱性を有することが好ましい。
【0134】
また、パターニング工程により、透明導電体層21がパターニングされている場合には、フィルムのうねりが大きくなり、透明導電体層の段差による見栄えの悪さが顕著になる傾向にある。そのため、前記結晶化工程は、前記透明導電性積層体にパターニング工程を施した後に施すことが好ましい。また、透明導電体層21を結晶化するとエッチングが困難になる場合があることからも、結晶化工程は、パターニング工程により透明導電体層21をパターニングした後に行うことが好ましい。さらに、アンダーコート層22をエッチングする場合には、アンダーコート層22のエッチングの後に結晶化工程を行うことが好ましい。
【0135】
本発明の透明導電性積層体は、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に好適に用いることができる。静電容量方式のタッチパネルは、マルチタッチ方式を採用することができ、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、前記電極基板の一部として用いることができる
【実施例】
【0136】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0137】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)の測定>
装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
カラム:東ソー社製TSKgel GMHXL、G4000HXLおよびG5000HXLを直列に連結
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0138】
<各層の厚み>
フィルム基材、被覆層、粘着剤層等の1μm以上の厚みを有するものに関しては、ミツトヨ製マイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。被覆層、粘着剤層等の直接厚みを計測することが困難な層の場合は、各層を設けた基材の総厚みを測定し、基材の厚みを差し引くことで各層の膜厚を算出した。
【0139】
第一層目のアンダーコート層、第二層目のアンダーコート層、ITO膜等の厚みは、大塚電子(株)製の瞬間マルチ測光システムであるMCPD2000(商品名)を用い、干渉スペクトルよりの波形を基礎に算出した。
【0140】
<アンダーコート層の表面抵抗>
JIS K 6911(1995)に準拠する二重リング法に従って、三菱化学(株)製の表面高抵抗計を用いて、アンダーコート層の表面電気抵抗(Ω/□)を測定した。
【0141】
<粘着剤溶液(1)の調製>
冷却管、撹拌羽、温度計が付属した4つロフラスコ中に、ブチルアクリレート95部、アクリル酸4.9部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル140部とともに加え、十分に窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら、55℃で8時間反応させ、重量平均分子量240万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL,日本ポリウレタン社製)を固形分で0.6部およびシランカップリング剤(信越シリコーン株式会社製,KBM403)0.1部を加えて、粘着剤溶液(1)を調製した。
【0142】
<粘着剤溶液(2)の調製>
冷却管、撹拌羽、温度計が付属した4つロフラスコ中に、ブチルアクリレート50部、フェノキシエチルアクリレート48.7部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.3部、および2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル140部とともに加え、十分に窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら、55℃で8時間反応させ、重量平均分子量250万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL,日本ポリウレタン社製)を固形分で0.6部およびシランカップリング剤(信越シリコーン株式会社製,KBM403)0.1部を加えて、粘着剤溶液(2)を調製した。
【0143】
<粘着剤溶液(3)の調製>
冷却管、撹拌羽、温度計が付属した4つ口フラスコに、ブチルアクリレート82.1部、ベンジルアクリレート13部、アクリル酸4.8部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部ととともに加え、十分に窒素置換した後、窒素気流下で撹拌しながら、55℃で8時間反応させ、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL,日本ポリウレタン社製)を固形分で0.45重量部およびベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製,ナイパーBMT)0.1部を配合して、粘着剤溶液(2)を調製した。
【0144】
<形成材料(1)による被覆層の形成>
相分離によって表面凹凸を形成する樹脂組成物、光重合開始剤を含む樹脂成分を、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンの混合溶媒に固形分濃度60重量%で含有する樹脂溶液(日本ペイント社製 商品名「ルシフラール NAB−007」を準備した。アクリル系微粒子(積水化成品工業社製 商品名「BMSA−18GN」(平均粒径0.8μm)を、メチルイソブチルケトン中に分散させ、この分散液を前記の樹脂溶液と混合して、樹脂成分100重量部に対してアクリル系微粒子0.1重量部を含有し、固形分濃度が40重量%である被覆組成物(形成材料(1))を調製した。
【0145】
上記被覆組成物(形成材料(1))を、厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)に、前記の被覆組成物を、バーコーターを用いて塗布し、60℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量300mJ/cmの紫外線を照射することで、樹脂組成物を硬化処理して、厚み5μmの被覆層を形成した。なお、被覆層の厚みは、分光計測計(大塚電子製 商品名「MCPD2000」)を用いて、フィルムの幅方向に等間隔の5点について測定した厚みの平均値から求めた。
【0146】
<形成材料(2)による被覆層の形成>
アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学(株)製のユニディック17−806)100部に、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製のイルガキュア184)5部を加えて、30重量%の濃度にトルエンで希釈して、被覆組成物(形成材料(2))を調製した。
【0147】
上記被覆組成物(形成材料(2))を、厚さが125μmのPETフィルムにバーコーターを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥した。その後、直ちにオゾンタイプ高圧水銀灯(エネルギー密度80W/cm、15cm集光型)2灯で紫外線照射を行ない、厚さ5μmの被覆層を形成した。
【0148】
<形成材料(3)による被覆層の形成>
無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなるナノシリカ粒子を分散させた、活性エネルギー線硬化型化合物を含む被覆層形成材料(JSR(株)製,商品名「オプスターZ7540」,固形分:56重量%,溶媒:酢酸ブチル/メチルエチルケトン(MEK)=76/24(重量比),屈折率1.49)を準備した。前記被覆層形成材料は、活性エネルギー線硬化型化合物として、ジペンタエリスリトールおよびイソホロンジイソシアネート系ポリウレタン、表面を有機分子により修飾したシリカ微粒子(重量平均粒径100nm以下)を、前者:後者=2:3の重量比で含有する。この被覆層形成材料の活性エネルギー線硬化型化合物の固形分100重量部あたり、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」)5重量部を混合した。この混合物に固形分濃度が5重量%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈して、被覆組成物(形成材料(3))を調製した。
【0149】
上記被覆組成物(形成材料(3))を、厚さが125μmのPETフィルムにコンマコーターを用いて塗布し、塗工層を形成した。次いで、145℃で1分間加熱し、前記塗工層を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmで紫外線照射を行ない、厚さ300nmの被覆層を形成した。
【0150】
<形成材料(4)による被覆層の形成>
イソシアヌル酸系アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、イソホロンジイソシアネートポリウレタンからなる紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名「GRANDIC PC−1070」)に樹脂固形分100重量部あたり、レベリング剤(大日本インキ化学工業社製、商品名「GRANDIC PC−4100」)1重量部を加えたものを、酢酸エチルにより、固形分濃度が50重量%となるように希釈して、被覆組成物(形成材料(4))を調製した。
【0151】
上記被覆組成物(形成材料(4))を、厚さが125μmのPETフィルムに、ダイコーターにて塗工し、塗工層を形成した。次いで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、厚さ5μmの被覆層を形成した。
【0152】
<形成材料(5)による被覆層の形成>
シリカゾル(コルコート(株)製,コルコートP)を、固形分濃度2%になるようにエタノールで希釈して、被覆組成物(形成材料(5))を調製した。
【0153】
上記被覆組成物(形成材料(5))を、厚さが125μmのPETフィルムに、シリカコート法により塗布し、その後、150℃で2分間乾燥、硬化させて、厚さが50nmの被覆層を形成した。
【0154】
実施例1
<粘着剤層(1)の形成>
上記の粘着剤溶液(1)を、離型処理を施したポリエステルフィルム(厚さ38μm)からなるセパレータ上に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように、リバースロールコート法により塗布し、130℃で3分間加熱処理して、溶剤を揮発させ、粘着剤層(1)を得た。
【0155】
<被覆フィルムの作製>
第一透明樹脂フィルムである、厚さが125μmのPETの両面に、前記<形成材料(1)による被覆層の形成>に従って、第一および第二被覆層を形成して、被覆フィルムを作製した。
【0156】
<透明導電性フィルムの作製>
(アンダーコート層の形成)
厚さが23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)からなるフィルム基材の一方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂(光の屈折率n=1.54)により、厚さが185nmの第一層目のアンダーコート層を形成した。次いで、シリカゾル(コルコート(株)製,コルコートP)を、固形分濃度2%になるようにエタノールで希釈し、第一層目のアンダーコート層上に、シリカコート法により塗布し、その後、150℃で2分間乾燥、硬化させて、厚さが33nmの第二層目のアンダーコート層(SiO膜,光の屈折率1.46)を形成した。第一層目、第二層目のアンダーコート層を形成した後の表面抵抗は、いずれも1×1012Ω/□以上であった。
【0157】
(透明導電体層の形成)
次に、第二層目のアンダーコート層上に、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ22nmのITO膜(光の屈折率2.00)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
【0158】
<透明導電性積層体の作製>
上記の両面に被覆層を有する被覆フィルムの一方の面に、上記で形成した厚さ20μmの粘着剤層(1)を転写した後に、セパレータを剥離した。次いで、当該粘着剤層(1)側に、上記透明導電性フィルム(透明導電体層を形成していない側の面)を貼り合せて、透明導電性積層体を作製した。
【0159】
(ITO膜のエッチングによるパターニング)
透明導電性積層体の透明導電体層に、ストライプ状にパターニングされているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5%の塩酸(塩化水素水溶液)に、1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。
【0160】
(ITO膜のエッチングによるパターン化)
透明導電性積層体の透明導電体層に、2mm幅のストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5%の塩酸(塩化水素水溶液)に、1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。
【0161】
(第二層目のアンダーコート層のエッチングによるパターニング)
上記ITO膜のエッチングを行った後、引き続きフォトレジストを積層したまま、45℃、2%の水酸化ナトリウム水溶液に、3分間浸漬して、第二層目のアンダーコート層のエッチングを行い、その後、フォトレジストを除去した。
【0162】
(透明導電体層の結晶化)
上記第二層目のアンダーコート層のエッチングを行った後、140℃で90分間の加熱処理を行って、ITO膜を結晶化した。
【0163】
実施例2〜5、比較例1〜4
実施例1において、粘着剤層(粘着剤溶液)の種類、被覆層の形成材料の種類、厚さを表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層体を作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。なお、被覆フィルムにおける第一被覆層、第二被覆層の形成はそれぞれの前記<形成材料(1)乃至(5)>による被覆層の形成>に従って行った。
【0164】
参考例1
実施例1において作製した透明導電性フィルムの透明導電体層を形成していない側の面に、実施例1において形成した厚さ20μmの粘着剤層(1)を転写して、粘着剤層付きの透明導電性フィルムを作製した。
【0165】
<評価>
実施例及び比較例で得られた被覆フィルム、透明導電性積層体、参考例1で得られた粘着剤層付きの透明導電性フィルムについて、下記評価を行なった。結果を表1に示す。表1には、被覆層、第二被覆層の形成材料、厚み、粘着剤層の厚みを併せて示す。
【0166】
≪表面自由エネルギー≫
表面自由エネルギー(mN/m)の測定は、実施例1、3、5及び比較例1で得られた被覆フィルムを150℃で1時間加熱する前と後について行った。表面自由エネルギーを測定は、協和界面科学(株)製の「全自動接触角計DM700」を用いて、被覆フィルムの第一被覆層に対する水、ジヨードメタン、1−ブロモナフタレンの接触角を測定し、解析ソフトFAMASにて表面自由エネルギーを算出して行った。算出方法は、Kitazaki−Hat理論による成分解析を用いた。但し、参考例1で得られた粘着剤層付きの透明導電性フィルムについては、上記同様の処理を行った後、粘着剤層上のセパレータ表面について表面自由エネルギーを測定した。
【0167】
≪表面粗さ≫
原子間力顕微鏡(AFM、Digital Instruments社製 商品名「N
anscope IV」)を用いて、実施例1、3、5及び比較例1で得られた被覆フィルムの第一被覆層の表面の算術平均粗さ(Ra)および被覆層表面の自乗平均粗さ(Rq)を測定した。但し、参考例1で得られた粘着剤層付きの透明導電性フィルムについては、粘着剤層上のセパレータの表面について各表面粗さを測定した。
【0168】
≪貯蔵弾性率≫
各例で用いたセパレータ上に形成された粘着剤層について、以下の方法により貯蔵弾性率を求めた。
[貯蔵弾性率の測定方法]
貯蔵弾性率は、レオメトリック社製の粘弾性スペクトロメータ(商品名:RSA−II)を用いて行った。測定条件は、周波数1Hz、サンプル厚2mm、圧着加重100g、昇温速度5℃/minでの−50℃〜200℃の範囲に於ける、23℃での測定値とした。
【0169】
≪接着力≫
実施例及び比較例で得られた透明導電性積層体を、幅25mm、長さ100mmに切り出し、JIS Z 0237に準拠して、NMBミネベア社製のオートグラフ(型番:TCM−IKNB)を用いて、剥離速度300mm/minで、180度剥離試験を行い、粘着剤層と第一被覆層との接着力(N/25mm)を測定した。但し、参考例1で得られた粘着剤層付きの透明導電性フィルムについては、粘着剤層とセパレータとの接着力を測定した。
【0170】
≪段差目視評価≫
ガラス板上に、実施例及び比較例で得られた透明導電性積層体の透明導電体層(ITO膜)が形成されている面が上向きになるように、テープで固定したものをサンプルとした。但し、参考例1では、粘着剤層付きの透明導電性フィルムの粘着剤層により、ITO膜が形成されている面が上向きになるように固定したものとサンプルとした。サンプルを、非接触式表面形状測定機(Veeco社製のWYKO)にて、接眼レンズが10倍、対物レンズが0.5倍で観察した。測定は、ITO膜が形成された部分の最も高い部分と、当該ITO膜に隣り合うITO膜が形成されていない部分の最も低い部分の高さの差を3点測定し、その平均値をうねり(μm)とした。
【0171】
【表1】

【符号の説明】
【0172】
1 被覆フィルム
10 第一透明樹脂フィルム
11 第一被覆層
12 第二被覆層
2 透明導電性積層体
21 透明導電体層
22 アンダーコート層
3 粘着剤層
A 透明導電性積層体
a パターニング部
b 非パターニング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一透明樹脂フィルムの片面または両面に被覆層を有する被覆フィルムと第二透明樹脂フィルムの片面に透明導電体層を有する透明導電性フィルムとが、
被覆フィルムの被覆層の側と透明導電性フィルムの透明導電体層を有しない側が対面するように粘着剤層を介して積層されている透明導電性積層体であって、
前記粘着剤層は、120℃における貯蔵弾性率が80000Pa以下であり、かつ、
前記粘着剤層と被覆層との接着力が5〜20N/25mmであることを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項2】
前記透明導電体層は、パターニングされていることを特徴とする請求項1記載の透明導電性積層体。
【請求項3】
前記透明導電体層は、少なくとも1層のアンダーコート層を介して、前記第二透明樹脂フィルムに積層されていることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性積層体。
【請求項4】
前記粘着剤層に積層される被覆層は、被覆フィルムに対して、150℃、1時間の熱処理を施した後において、被覆層表面の表面自由エネルギーが25mN/m〜40mN/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性積層体。
【請求項5】
前記粘着剤層に積層される被覆層は、被覆層表面の算術平均粗さ(Ra)が10nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性積層体。
【請求項6】
前記粘着剤層に積層される被覆層は、被覆層表面の自乗平均粗さ(Rq)が12nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性積層体。
【請求項7】
タッチパネルに用いられるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性積層体。
【請求項8】
タッチパネルが、静電容量方式タッチパネルであることを特徴とする請求項7記載の透明導電性積層体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性積層体を少なくとも1つ備えていることを特徴とするタッチパネル。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−238467(P2012−238467A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106535(P2011−106535)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】