説明

透明導電性積層体

【課題】耐加水分解性に優れ、かつ環境にも配慮した透明導電性積層体を良好な作業環境のもとで提供すること。
【解決手段】透明高分子基板の少なくとも一方の面に透明導電層が形成されてなる透明導電性積層体において、前記透明高分子基板が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)とカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明導電性積層体に関する。より詳しくは本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ、電磁波シールド材等のための透明導電性積層体、特に透明タッチパネルの電極基板のための透明導電性積層体に関する。また、本発明は、このような透明導電性積層体を有する透明タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
光学用途で用いられる透明高分子基板、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、タッチパネル等のための用いられる透明高分子基板としては、トリアセチルセルロース(TAC)のようなセルロース系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのようなポリエステル系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルムのようなポリカーボネート系フィルム等が知られている。
しかし、これら樹脂は、有限資源である石油を出発原料としているため、石油資源枯渇の問題が危惧されている。
【0003】
昨今、上記の問題を解決する材料としてポリ乳酸系重合体に代表される脂肪族ポリエステルが脚光を浴びており、実際多くの研究、開発がされている。ポリ乳酸系重合体はその出発原料がトウモロコシなどの植物原料であることから、資源枯渇の問題が解消される。
【0004】
しかしながら、透明導電性積層体は耐久消費材的側面のある用途にも拘わらず、ポリ乳酸系重合体の加水分解性が逆に仇となり、長期間経過した場合や高温・高湿環境下に放置された場合に、分子量低下に起因した物性低下が起こり、機能を十分には果たさなくなる問題があった。
【0005】
一方、脂肪族ポリエステルの耐加水分解性を向上させるための技術として、カルボジイミド化合物を添加することが特開2003−003052号公報(特許文献1)に公開されている。
【0006】
特許文献1において用いられているカルボジイミド化合物は、線状構造のカルボジイミド化合物であるが、この線状カルボジイミド化合物を高分子化合物の末端封止剤として用いると、カルボジイミド化合物が高分子化合物の末端に結合する反応に伴い、イソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−003052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解決することにあり、耐加水分解性に優れ、かつ環境にも配慮した透明導電性積層体を良好な作業環境のもとで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の目的は、
1.透明高分子基板の少なくとも一方の面に透明導電層が形成されてなる透明導電性積層体において、前記透明高分子基板が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)とを含むことを特徴とする透明導電性積層体によって達成される。
【0010】
本発明には下記も包含される。
2.C成分が下記式(1)で表される前記1記載の透明導電性積層体。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
3.Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である前記2記載の透明導電性積層体。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX1、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
4.C成分が、下記式(2)で表される前記2記載の透明導電性積層体。
【化3】

(式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
5.Qaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である前記4記載の透明導電性積層体。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
6.C成分が、下記式(3)で表される前記2記載の透明導電性積層体。
【化5】

(式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
7.Qbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である前記6記載の透明導電性積層体。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
8.Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである前記6または7記載の透明導電性積層体。
9.C成分が、下記式(4)で表される前記2記載の透明導電性積層体。
【化7】

(式中、Qcは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
10.Qcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である前記9記載の透明導電性積層体。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
11.ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである前記9または10記載の透明導電性積層体。
12.脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)がポリ乳酸系樹脂である、前記1〜11のいずれか記載の透明導電性積層体。
13.脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)がステレオコンプレックスポリ乳酸系樹脂である、前記1〜12のいずれか記載の透明導電性積層体。
14.前記透明高分子基板と前記透明導電層との間にコート層が形成されている、前記1〜13のいずれか記載の透明導電性積層体。
15.前記透明高分子基板の前記透明導電層が形成された面と他方の面にコート層が形成されている、前記1〜14のいずれか記載の透明導電性積層体。
16.前記透明高分子基板の面内位相差Reが20nm以下である、前記1〜15のいずれか記載の透明導電性積層体。
【0011】
さらに本発明には、
前記1〜15のいずれかに記載の透明導電性積層体を有するタッチパネル、
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)とカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む、導電性積層体用透明高分子基板も包含される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物由来の原料を用いることで環境に配慮し、かつ耐加水分解性、耐熱性に優れることにより、透明性など光学特性が良好な透明導電性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
<透明導電性積層体>
本発明の透明導電性積層体は、透明高分子基板の少なくとも一方の面に透明導電層が形成されて、前記透明高分子基板が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)とカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む。
また、本発明の透明導電性積層体は、透明高分子基板(第1の基板)上の透明導電層が形成された面と他方の面上に、粘着剤層及び第2の透明基板を順次積層していてもよい。
【0014】
<透明高分子基板>
本発明の透明導電性積層体に用いられる透明高分子基板は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)とカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む。
【0015】
前記透明高分子基板は光学的に複屈折の少ないもの、複屈折を例えばλ/4やλ/2に制御したもの、又は複屈折をまったく制御していないものを、用途に応じて適宜選択することができる。光学的に複屈折の少ないものとは、波長が550nmにおける面内位相差Reの値が20nm以下のことをいう。また複屈折を有するものとは、延伸等の操作により、面内位相差Reの値が20nmを超えるもののことをいう。面内位相差Reはフィルム面内における最大屈折率とフィルム面内において最大屈折率を示す方向に直交する方位の屈折率の差に厚みをかけたもので定義される。
【0016】
ここで言うように用途に応じて適宜選択を行う場合としては、例えば液晶ディスプレイに使用する偏光板や位相差フィルム、インナー型のタッチパネルのように、直線偏光、楕円偏光、円偏光などの偏光によって機能を発現するディスプレイ部材として、本発明の透明導電性積層体を用いる場合を挙げることができる。
【0017】
ここで、透明高分子基板としては、後述する脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)を含むことが必須であるが、要求される光学特性や、機械特性の観点から、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリケトン樹脂、脂肪族ポリケトン樹脂、フッソ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等をブレンドすることができる。
中でも、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)がポリ乳酸である場合には、相溶性が良く、また屈折率が近いという観点からアクリル系樹脂、とりわけ、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【0018】
透明高分子基板中の脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の含有量は40重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70%重量以上、最も好ましくは75重量%以上である。脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の含有量が40重量%未満であると、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の結晶化が生じにくくなり、耐熱性に問題が生じる場合等がある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)とカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)以外にも目的とする光学特性、機械特性を損なわない範囲で、公知の有機材料、無機材料が添加されてもよい。
【0019】
透明有機高分子基板の厚みは適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性などの点より10〜500μm程度であり、特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0020】
また上記透明有機高分子基板は、目的にもよるが透明性に優れることが好ましい。ここで「透明」とは、例えば、全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上、最も好ましくは92%以上である。また、ヘイズ値は20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。
【0021】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)>
本発明において、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族多価アルコールを主成分として重縮合してなる重合体やそれらの共重合体が例示される。
【0022】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などの重縮合体、もしくは共重合体などを例示することができ、なかでもポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシカルボン酪酸、ポリ4−ポリヒドロキシ酪酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトン、ならびにこれらの共重合体などが好ましく挙げられる。中でも特にポリ乳酸系樹脂が好ましく、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸および、ステレオコンプレックス結晶を形成しうるステレオコンプレックスポリ乳酸、ラセミポリ乳酸やエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸が挙げられる。共重合可能な成分としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。共重合成分の導入量は通常は10モル%未満であればよい。なかでも透明性および耐熱性の観点からステレオコンプレックスポリ乳酸が最も好適である。
【0023】
以下、ここではポリ乳酸系樹脂(特にステレオコンプレックスポリ乳酸)について詳しく説明する。
ステレオコンプレックスポリ乳酸のステレオコンプレックス結晶化度(S)は示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃未満に観測されるポリ乳酸ホモ結晶融解熱(ΔHm)、190℃以上に観測されるポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHmsc)より下記式により求められる値である。
(S)=〔ΔHmsc / (ΔHm + ΔHmsc)〕×100
【0024】
ステレオコンプレックス結晶化度(S)は好ましくは93%から100%、より好ましくは95%から100%の範囲が選択される。特に好ましくはステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%である。
ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上である透明高分子基板を用いることにより、透明性を高く保つことができる。また、耐熱性も高いものとなる。
【0025】
なお、ステレオコンプレックス結晶化度(S)は、ポリ乳酸(A成分)が示差走査熱量計(DSC)の測定条件下(190℃)におけるステレオコンプレックス結晶を形成する割合を表すものであり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が100%であったとしても、DSC測定前のポリ乳酸(A成分)は、結晶状態である場合も、非結晶状態である場合もあるが、本発明に用いる透明高分子基板は、結晶状態であることが好ましい。
【0026】
ここで「結晶状態」とは、DSC測定で(示差走査熱量計)、昇温速度は20℃/分で求めた、第一回昇温時のポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶のピーク熱量(ΔHcsc)が10J/g以下、好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは1J/g以下であることである。即ち、既にステレオコンプレックス結晶が存在する場合には、このピーク熱量は確認されないことを意味する。なお、上記式を満足しない場合には、耐熱性が悪くなり、透明導電層やコート層などの加工の際に不具合が生じる場合がある。
【0027】
上述のステレオコンプレックス結晶化度を好適に満たすために、ポリ乳酸において、ポリD−乳酸成分とポリL−乳酸成分との重量比は90/10から10/90であることが好ましい。
【0028】
より好ましくは80/20から20/80、さらに好ましくは30/70から70/30、とりわけ好ましくは40/60から60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましく選択される。
【0029】
ポリL‐乳酸成分およびポリD‐乳酸成分は、従来公知の方法で製造することができる。
例えば、L‐ラクチドまたはD‐ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧下、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
【0030】
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えば開環重合あるいは直接重合法においてはヘリカルリボン翼等、高粘度用撹拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
【0031】
重合開始剤としてはアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。
【0032】
固相重合法で使用するポリ乳酸プレポリマーは、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で固体状態で重合される。
【0033】
金属含有触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、チタン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が例示される。
【0034】
なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
【0035】
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示でされる。
【0036】
なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
【0037】
触媒の使用量は、ラクチド1kg当たり0.42×10−4から100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4から42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4から16.8×10−4(モル)モル使用される。
【0038】
ポリ乳酸重合に使用された金属含有触媒は、ポリ乳酸使用に先立ち、従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。
かかる失活剤としては例えばイミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンド及びジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸、式 xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エスエテル、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
【0039】
触媒失活能の観点から、式xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルリンオキソ酸あるいはこれらの酸性エステル類、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体及び上記のメタリン酸系化合物が好適に使用される。
【0040】
本発明で使用するメタリン酸系化合物は、3から200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらのアルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下、DHPAと略称することがある)などが好適に使用される。
【0041】
本発明で使用するポリ乳酸は、含有ラクチド量が1から5000ppmのものが好ましい。ポリ乳酸中に含有するラクチドは溶融加工時、ポリ乳酸(以下、樹脂ということがある)を劣化させ、色調を悪化させ、場合によっては製品として使用不可能にする場合がある。
【0042】
溶融開環重合された直後のポリL−D−乳酸および/またはポリD−乳酸は通常1から5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−D−乳酸および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
【0043】
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。すなわち、実用的な溶融安定性が達成される1から1000ppmに設定するのが合理的である。さらに好ましくは1から700ppm、より好ましくは2から500ppm、特に好ましくは5から100ppmの範囲が選択される。
【0044】
ポリ乳酸成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明における透明高分子基板の溶融製膜時の樹脂の安定性を向上せしめ、製造を効率よく実施できる利点および耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
【0045】
本発明に使用されるポリ乳酸の重量平均分子量は、成形加工性と得られる成形品の機械的、熱的物性との関係を考察して選択される。即ち、透明高分子基板の強度、伸度、耐熱性等の機械的、熱的物性を発揮させるためには重量平均分子量は好ましくは8万以上、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは13万以上である。
【0046】
しかし、重量平均分子量の上昇とともに、ポリ乳酸の溶融粘度は指数関数的に上昇し、射出成形等の溶融成形を行うとき、樹脂粘度を成形可能範囲にするため、成形温度をポリ乳酸の耐熱温度以上に高く設定しなければならない場合が発生する。
具体的には、ポリ乳酸は、300℃を超える温度で成形を行うと樹脂の熱分解のためフィルム品が着色し、商品としての価値が低いものとなってしまう可能性が高い。
【0047】
したがってポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、さらに好ましくは30万以下である。30万を越える場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融製膜が困難になる場合がある。
従ってポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは8万から50万、より好ましくは10万から40万、さらに好ましくは13万から30万である。
【0048】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を分子量分散(Mw/Mn)という。分子量分散が大きいことは、平均分子量に比較し、大きな分子や小さな分子の割合が多いことを意味する。
【0049】
即ち、例えば重量平均分子量が25万程度で、分子量分散の3以上のポリ乳酸は、分子量が25万より大きい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、溶融粘度が大きくなり、上記の意味で成形上好ましくない。また8万程度の比較的小さい重量平均分子量で分子量分散の大きなポリ乳酸では、分子量が8万より小さい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、成形品の機械的物性の耐久性が小さくなり、使用上好ましくない。かかる観点より分子量分散の範囲は、好ましくは1.5から2.4、より好ましくは1.6から2.4、さらに好ましくは1.6から2.3の範囲である。
【0050】
本発明で用いられるポリ乳酸は、前述したようにポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とを重量比で10/90から90/10の範囲で接触させることにより、好ましくは溶融接触させることにより、より好ましくは溶融混練接触させることにより、フィルム化し、これを必要に応じて延伸等の工程に付して、前記した透明高分子基板として用いることができる。 このポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分との接触温度はポリ乳酸の溶融時の安定性及びステレオコンプレックス結晶化度の向上の観点より220から290℃、好ましくは220から280℃、さらに好ましくは225から275℃の範囲が選択される。
【0051】
溶融混練方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融撹拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型撹拌槽、住友重機械工業(株)製「バイボラック」、三菱重工業(株)製N−SCR,(株)日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式撹拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型撹拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
【0052】
透明高分子基板の厚みは適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性などの点より10〜500μm程度であり、特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0053】
本発明で用いるポリ乳酸には、本発明の主旨に反しない範囲において、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の形成を安定的且つ高度に進めるために特定の添加物を配合する手法が好ましく適用される。
すなわち、例えば、ステレオコンプレックス結晶化促進剤として下記式で表されるリン酸金属塩を添加する手法が挙げられる。
【0054】
【化9】

【0055】
式中、R11は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0056】
【化10】

【0057】
式中R14、R15およびR16は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0058】
上記二つの式において表されるリン酸金属塩のM、Mは、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、LiなかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。
これらのリン酸金属塩は、(株)ADEKA製の商品名、「アデカスタブ」NA−11、NA−71等が好適な剤として例示される。
【0059】
ポリ乳酸に対して、リン酸金属塩は0.001〜2wt%、好ましくは0.005〜1wt%、より好ましくは0.01〜0.5wt%さらに好ましくは0.02〜0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上する効果が小さく、多すぎるとステレオコンプレックス結晶融点を低下させるので好ましくない。
【0060】
さらに所望により、リン酸金属塩の作用を強化するため、公知の結晶化核剤を併用することができる。なかでも珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、アミド系有機化合物が好ましくは選択される。
結晶化核剤の使用量は、ポリ乳酸に対し0.03〜5wt%、より好ましくは0.04〜2wt%、さらに好ましくは0.05〜1wt%の範囲が選択される。
【0061】
ポリ乳酸にはその製造上、カルボン酸基が含まれてくることがあるが、その含まれるカルボン酸基の量は少ないほどよい。そのような理由から、たとえばラクチドから水以外の開始剤を用いて開環重合したものや、重合後に化学的に処理をしてカルボン酸基を低減したポリマーを用いることは好ましい。
【0062】
なお、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0063】
<カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)>
まず、本発明において特徴的な成分である、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)について説明する。C成分は環状構造を有する(以下、C成分を環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0064】
ここで環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されて形成している。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0065】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0066】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化11】

【0067】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0068】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0069】
【化12】

【0070】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0071】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0072】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0073】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0074】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0075】
上記式(1−1)、(1−2)においてXおよびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0076】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0077】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0078】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0079】
上記式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。s及びkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0080】
上記式(1−3)においてXは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0081】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0082】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0083】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0084】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0085】
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として、以下(a)〜(c)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
[環状カルボジイミド化合物(a)]
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
【0087】
【化13】

【0088】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0089】
【化14】

【0090】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0091】
【化15】

【0092】
【化16】

【0093】
【化17】

【0094】
【化18】

【0095】
【化19】

【0096】
【化20】

【0097】
【化21】

【0098】
【化22】

【0099】
【化23】

【0100】
【化24】

【0101】
【化25】

【0102】
【化26】

【0103】
【化27】

【0104】
【化28】

【0105】
[環状カルボジイミド化合物(b)]
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
【0106】
【化29】

【0107】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qを構成する基の内一つは3価である。
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0108】
【化30】

【0109】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
【0110】
【化31】

【0111】
【化32】

【0112】
【化33】

【0113】
【化34】

【0114】
[環状カルボジイミド化合物(c)]
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
【0115】
【化35】

【0116】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【0117】
【化36】

【0118】
Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0119】
【化37】

【0120】
【化38】

【0121】
【化39】

【0122】
[環状カルボジイミド化合物の製造方法]
本発明において、環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定無く、従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0123】
また、本発明に用いる環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法を組み合わせ、あるいは目的とする化合物に応じて適切に改変、組み合わせすることにより製造することができる。
【0124】
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System Boc2O/DMAP,Pedro Molina etal.
【0125】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(a−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化40】

【化41】

(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化42】

(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化43】

【0126】
(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0127】
【化44】

【0128】
【化45】

【0129】
【化46】

【0130】
なお、環状カルボジイミド化合物は、高分子化合物の酸性基を有効に封止することができるが、本発明の主旨に反しない範囲において、所望により、例えば、従来公知のポリマーのカルボキシル基封止剤を併用することができる。かかる従来公知のカルボキシル基封止剤としては、特開2005−2174号公報記載の剤、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、などが例示される。
【0131】
<透明導電層>
本発明の透明導電性積層体では、透明高分子基板の少なくとも一方の面上に透明導電層が配置されている。
本発明において、導電層を構成する材料としては、特に制限は無いが、例えば金属層、結晶質や非晶質の金属化合物、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン,ポリチオフェン,ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール,ポリアニリン,ポリアセン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子等を用いたうち、透明導電層を形成できる導電材料を挙げることができるが、中でも例えば結晶質の金属層あるいは結晶質の金属化合物を挙げることができる。透明導電層を構成する具体的な成分としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫等の金属酸化物が挙げられる。これらのうち酸化インジウムを主成分とした結晶質の層であることが好ましく、特に結晶質のITO(Indium Tin Oxide)からなる層が好ましく用いられる。
【0132】
また、透明導電層が結晶質の材料から作られている場合、結晶粒径は、特に上限を設ける必要はないが3000nm以下であることが好ましい。結晶粒径が3000nmを超えると筆記耐久性が悪くなるため好ましくない。ここで結晶粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)下で観察される多角形状又は長円状の各領域における対角線又は直径の中で最大のものと定義される。
透明導電層が結晶質の膜でない場合には、タッチパネルに要求される摺動耐久性や環境信頼性が低下することがある。
【0133】
透明導電層は、公知の手法にて形成することが可能であり、例えばDCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、パルスレーザーデポジション法等の物理的形成法(Physical Vapor Deposition(以下では「PVD」とする))等を用いることができるが、大面積に対して均一な膜厚の金属化合物層を形成するという工業生産性に着目すると、DCマグネトロンスパッタリング法が望ましい。なお、上記物理的形成法(PVD)のほかに、化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition(以下では「CVD」とする))、ゾルゲル法などの化学的形成法を用いることもできるが、膜厚制御の観点からはやはりスパッタリング法が望ましい。
【0134】
透明導電層の厚みは、透明性と導電性の点から5〜50nmであることが好ましい。更に好ましくは5〜30nmである。透明導電層の厚みが5nm未満では抵抗値の経時安定性に劣る傾向が有り、また50nmを超えると表面抵抗値が低下するためタッチパネルとして好ましくない。
【0135】
本発明の透明導電性積層体をタッチパネルに用いる場合、タッチパネルの消費電力の低減と回路処理上の必要等から、厚み10〜30nmにおいて透明導電層の表面抵抗値が100〜2000Ω/□(Ω/sq)、より好ましくは140〜1000Ω/□(Ω/sq)の範囲を示す透明導電層を用いることが好ましい。
【0136】
<コート層>
本発明の透明導電性積層体では、透明高分子基板と透明導電層との間にコート層が形成されていてもよい。 本発明に用いられるコート層を構成する材料としては無機材料や硬化性樹脂等の有機材料が挙げられる。硬化性樹脂としては、例えば、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の多官能アクリレート系放射線硬化性樹脂、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のケイ素アルコキシドの重合体やエーテル化メチロールメラミン等のメラミン系熱硬化性樹脂、フェノキシ系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂等がある。これらの中でも、多官能アクリレート系樹脂等の放射線硬化性樹脂は、放射線の照射により比較的短時間に架橋度の高い層がコート層として得られることから、製造プロセスへの負荷が少なくまた層の強度が強い特徴があり、最も好ましく用いられる。
【0137】
放射線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の放射線を照射する事によって重合が進行する樹脂を指し、単位構造内に2個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレート成分を樹脂組成中に含有するアクリル系樹脂が挙げられる。例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等の各種アクリレートモノマーやポリエステル変性アクリレート、ウレタン変性アクリレート、エポキシ変性アクリレートの多官能アクリレートオリゴマー等が本用途に好ましく用いられる。これらの樹脂は単独の組成で用いても、数種の混合組成で用いても良く、また場合によっては、各種ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を組成中に適量添加することも好ましく行われる。
【0138】
なお、紫外線照射によってコート層を形成する樹脂の重合を行う場合には公知の光反応開始剤が適量添加される。光反応開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2、4−ジクロロチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物等が挙げられる。
【0139】
この他、反応促進剤として、公知のトリエチレンジアミン等の第三アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物を適量添加する事で架橋速度を向上することが可能である。
【0140】
なお、コート層は透明高分子基板上に直接、もしくは適当なアンカー層を介して積層される。こうしたアンカー層としては例えば、該コート層と透明高分子基板との密着性を向上させる機能を有する層や、水分や空気の透過を防止する機能もしくは水分や空気を吸収する機能を有する層、紫外線や赤外線を吸収する機能を有する層、基板の帯電性を低下させる機能を有する層等が好ましく挙げられる。
さらに本発明のコート層にはアンチグレア性、アンチニュートンリング性、易滑性、帯電防止性の付与などを目的として無機系、有機系を問わず公知の粒子を添加してもよい。
【0141】
コート層の透明高分子基板への実際の塗工法としては、前記の化合物ならびに各種添加剤(硬化剤、触媒等)を各種有機溶剤に溶解して、濃度や粘度を調節した塗工液を用いて、透明高分子基板上に塗工後、放射線照射や加熱処理等により層を硬化させる。塗工方式としては例えば、マイクログラビヤコート法、マイヤーバーコート法、ダイレクトグラビヤコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、コンマコート法、ダイコート法、ナイフコート法、スピンコート法等の各種塗工方法が用いられる。
【0142】
なお、硬化性樹脂、添加剤、有機溶剤の組み合わせは、目標とするコート層の機能にあわせて、適宜複数を選択、調整することができる。
もちろん、これらのコート層は透明高分子基板と透明導電層との間のみならず、透明導電層が形成された他方の面に形成されて、ハードコート性、アンチグレア性、易滑性などを透明導電性積層体に付与させてもよい。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これにより何ら限定を受けるものではない。
【0144】
<評価方法>
(1)ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、検出器;示差屈折計((株)島津製作所製)RID−6Aカラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
【0145】
(2)ガラス転移点温度(Tg)および融点:
DSC2920 Modulated DSC(TA Instruments社製)を用いて、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
【0146】
(3)ヘイズ:
日本電色(株)製ヘーズメーター(MDH2000)を用いて測定した。
【0147】
(4)厚み:
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0148】
(5)環状カルボジイミド構造の核磁気共鳴法(NMR)による同定および組成物中の環状カルボジイミドの定量:
合成した環状カルボジイミド化合物はH−NMR、13C−NMRによって確認した。NMRは日本電子(株)製の商品名『JNR−EX270』を使用した。溶媒は重クロロホルムを用いた。
【0149】
(6)環状カルボジイミドのカルボジイミド骨格の赤外分光法(IR)による同定:
合成した環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格の有無は、FT−IRによりカルボジイミドに特徴的な2100〜2200cm−1の確認を行った。FT−IRはサーモニコレー(株)製の商品名『Magna−750』を使用した。
【0150】
(7)イソシアネートガス発生テスト:
試料を、160℃で5分間加熱し、熱分解GC/MS分析によりイソシアネートガスの発生有無を確認した。GC/MSは日本電子(株)製GC/MS Jms Q1000GC K9を使用した。
【0151】
(8)耐加水分解性:
試料を、温度85℃、湿度85%RHの環境下に24時間放置し、外観不良や端面からの剥離などの異常がないものは○、問題があるものは×とした。
【0152】
(9)総合評価:
イソシアネートガスの発生テストにおいて、イソシアネートガス発生がなく、耐加水分解性の評価結果が○のものを○とし、それ以外のものは×とした。
【0153】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の作製>
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリL−乳酸を得た。得られたポリL−乳酸の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
ポリL−乳酸の製造において、L−ラクチドをD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更したこと以外は同じ条件で重合を行い、ポリD−乳酸を得た。得られたポリD−乳酸の重量平均分子量(Mw)は15.1万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
上記操作で得られたポリL−乳酸とポリD−乳酸とを各50重量部およびリン酸金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−71:0.1重量部)を、2軸混練装置の第一供給口より供給、シリンダー温度250℃で溶融混練し、ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1)を得た。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は216℃であった。
【0154】
<カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)の作製>
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを撹拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物L(ニトロ体)を得た。
【0155】
次に中間生成物L(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、撹拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物M(アミン体)が得られた。
【0156】
次に撹拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み撹拌させた。そこに中間生成物M(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物N(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0157】
次に、撹拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み撹拌させる。そこに、25℃で中間生成物N(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記に示す環状カルボジイミド化合物(C1)を得た。C1の構造はNMR、IRにより確認した。
【0158】
【化47】

【0159】
<透明高分子基板用材料の作製>
(1)透明高分子基板用材料(E1)
ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1)を100重量部、環状カルボジイミド化合物(C1)を1重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化して透明高分子基板用材料(E1)を得た。
【0160】
(2)透明高分子基板用材料(E2)
ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1)を80重量部、三菱レイヨン(株)製のポリメチルメタクリレートである商品名「アクリペットVH001」を20重量部、環状カルボジイミド化合物(C1)を1重量部をブレンダーで混合、100℃、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化して透明高分子基板用材料(E2)を得た。
【0161】
(3)透明高分子基板用材料(E3)
ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1)を100重量部、日清紡ケミカル(株)製「カルボジライト」LA−1(LA1)を1重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化して透明高分子基板用材料(E3)を得た。
【0162】
<透明高分子基板の作製>
(1)透明高分子基板(B1)の製造:
透明高分子基板用材料(E1)を110℃で5時間乾燥させた後、230℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度230℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させた後、未延伸フィルム(F1)を得た。厚みは110μmであった。その後、この未延伸フィルム(F1)を温度70℃で横1.1倍に延伸した後、同設備にて115℃にて熱固定を実施することにより、厚み100μm、ヘイズ0.18%の透明高分子基板(B1)を得た。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%、ポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶のピーク熱量(ΔHcsc)は確認されず、ステレオコンプレックスポリ乳酸からなることを確認した。Re値は8nmであった。当該基板の製造時にイソシアネート臭の発生は認められず、良好な作業環境のもとで製膜実施可能であった。
【0163】
(2)透明高分子基板(B2)の製造:
透明高分子基板用材料(E2)を105℃で5時間乾燥させた後、230℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度230℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させた後、未延伸フィルム(F2)を得た。厚みは250μmであった。その後、この未延伸フィルム(F2)を温度75℃で縦2.0倍、横1.8倍に延伸した後、同設備にて115℃にて熱固定を実施することにより、厚み100μm、ヘイズ0.11%の透明高分子基板(B2)を得た。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%、ポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶のピーク熱量(ΔHcsc)は確認されず、ステレオコンプレックスポリ乳酸からなることを確認した。Re値は3nmであった。当該基板の製造時にイソシアネート臭の発生は認められず、良好な作業環境のもとで製膜実施可能であった。
【0164】
(3)透明高分子基板(B3)の製造:
ステレオコンプレックスポリ乳酸(A1)を110℃で5時間乾燥させた後、230℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度230℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させた後、未延伸フィルム(F3)を得た。膜厚は190μmであった。その後、この未延伸フィルム(F1)を温度70℃で縦1.6倍、横1.5倍に延伸した後、同設備にて115℃にて熱固定を実施することにより、厚み100μm、ヘイズ0.10%の透明高分子基板(B1)を得た。Re値は12nmであった。当該基板の製造時にイソシアネート臭の発生は認められず、良好な作業環境のもとで製膜実施可能であった。
【0165】
(4)透明高分子基板(B4)の製造:
透明高分子基板用材料(E3)を110℃で5時間乾燥させた後、230℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度230℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させた後、未延伸フィルム(F4)を得た。厚みは190μmであった。その後、この未延伸フィルム(F1)を温度70℃で縦1.6倍、横1.5倍に延伸した後、同設備にて115℃にて熱固定を実施することにより、厚み100μm、ヘイズ0.19%の透明高分子基板(B4)を得た。当該基板の製造時にイソシアネート臭が認められた。
【0166】
[実施例1]
透明高分子基板(B1)上に東亞合成(株)社製「アロニックス」M−215を100重量部、平均一次粒子径が約30nmであるシーアイ化成(株)社製SiO超微粒子の10重量%イソプロピルアルコール分散液を15重量部(固形分換算)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製イルガキュア184を5重量部をイソブチルアルコールで適宜粘度調整した塗液をワイヤーバーで塗布し、80℃で1分間加熱乾燥した後、紫外線ランプで120mW/cm、400mJ/cmの紫外線を照射し、厚み約3μmのコート層を形成した。
このコート層の上に、酸化インジウムと酸化錫が重量比95:5の組成で充填密度98%の酸化インジウム− 酸化錫ターゲットを用いスパッタリング法により透明導電層を形成した。形成された透明導電層の厚さは約20nmであった。さらに120℃60分間の熱処理を行い、透明導電層を結晶化させ、透明導電性積層体を得た。
【0167】
[実施例2]
透明高分子基板(B1)のかわりに透明高分子基板(B2)を用い、両面にコート層を形成した以外は実施例1と同様の方法にて透明導電性積層体を得た。
【0168】
[比較例1]
透明高分子基板(B1)のかわりに透明高分子基板(B3)を用いた以外は実施例1と同様の方法にて透明導電性積層体を得た。
【0169】
[比較例2]
透明高分子基板(B1)のかわりに透明高分子基板(B4)を用いた以外は実施例1と同様の方法にて透明導電性積層体を得た。
【0170】
実施例および比較例により得られた透明導電性積層体の評価結果を表1に示す。表から脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)とカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む透明導電性積層体においては、イソシアネートガスの発生がなく耐加水分解性に優れることが分かった。結果を表1に示す。
【0171】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明高分子基板の少なくとも一方の面に透明導電層が形成されてなる透明導電性積層体において、前記透明高分子基板が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)とを含むことを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項2】
C成分が下記式(1)で表される請求項1記載の透明導電性積層体。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項3】
Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である請求項2記載の透明導電性積層体。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX1、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項4】
C成分が、下記式(2)で表される請求項2記載の透明導電性積層体。
【化3】

(式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項5】
Qaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である請求項4記載の透明導電性積層体。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【請求項6】
C成分が、下記式(3)で表される請求項2記載の透明導電性積層体。
【化5】

(式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項7】
Qbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である請求項6記載の透明導電性積層体。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
【請求項8】
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項6または7記載の透明導電性積層体。
【請求項9】
C成分が、下記式(4)で表される請求項2記載の透明導電性積層体。
【化7】

(式中、Qcは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項10】
Qcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である請求項9記載の透明導電性積層体。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項11】
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項9または10記載の透明導電性積層体。
【請求項12】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)がポリ乳酸系樹脂である、請求項1〜11のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項13】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)がステレオコンプレックスポリ乳酸系樹脂である、請求項1〜12のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項14】
前記透明高分子基板と前記透明導電層との間にコート層が形成されている請求項1〜13のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項15】
前記透明高分子基板の前記透明導電層が形成された面と他方の面にコート層が形成されている請求項1〜14のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項16】
前記透明高分子基板の面内位相差Reが20nm以下である請求項1〜15のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の透明導電性積層体を有するタッチパネル。
【請求項18】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)とカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む、導電性積層体用透明高分子基板。

【公開番号】特開2012−807(P2012−807A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136126(P2010−136126)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】