説明

透明導電性組成物、およびこれを用いた透明導電膜または透明導電体

【課題】塗料を塗布することにより形成され、かつ導電性の優れた透明導電膜または透明導電体を実現可能とする透明導電性組成物、およびそれを用いた透明導電膜または透明導電体を提供する。
【解決手段】本発明の透明導電性組成物は、導電性無機酸化物粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂とを含む。導電性無機酸化物粒子は、例えば、酸化インジウムと、前記酸化インジウムに添加されたスズ、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子とを含む。イオン性液体は、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる1種以上の塩を含む。導電性無機酸化物粒子の平均粒径は、5nm〜200nmであると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性組成物、およびこれを用いた透明導電膜または、基材と基材の一方の主面に設けられた透明導電膜(透明導電層)とを含む透明導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性組成物は、電気電子機器、特に、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP),液晶パネル(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OEL)等のディスプレイデバイスやタッチパネル等の表示面に用いられる、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、反射防止膜等の透明導電膜の材料として有用であるため、注目されている。
【0003】
従来、透明導電膜は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、銀、ニッケル、または金等の導電性材料を、スパッタリング法、または蒸着法により基材上に堆積させることにより形成していた。しかし、スパッタリング法、または蒸着法を用いた透明導電膜の製造は、生産性が悪く、大量生産には適さない。そのため、上記導電性材料を含む塗料を塗布することにより透明導電膜(透明導電層)を形成する試みがなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。塗布による透明導電膜の製法は、比較的簡便であるため、低コストで透明導電膜を作製できる。
【0004】
特許文献1に記載の塗料は、平均粒径が0.1μm以下の錫ドープ酸化インジウム微粉末と熱可塑性樹脂とを含んでいる。特許文献2に記載の塗料は、一次粒子の平均粒径が1〜360nmのルテニウム微粒子と、一次粒子の平均粒径が35nm〜70nmのスズ添加酸化インジウム微粒子とを含んでいる。特許文献3に記載の塗料は、水および/または有機溶媒と、これらの溶媒に分散された平均粒径2nm〜200nmの金属微粒子と、透明導電性無機酸化物微粒子(例えば、酸化錫)とを含んでいる。
【特許文献1】特開平11−227740号公報
【特許文献2】特開2004−203941号公報
【特許文献3】特開平8−77832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の塗料を塗布することにより形成された透明導電膜の導電性は、スパッタリング法、または蒸着法によって形成された透明導電膜の導電性よりも劣るという問題があった。
【0006】
本発明は、塗料を塗布することにより形成され、かつ導電性の優れた、透明導電膜または透明導電体を実現可能とする透明導電性組成物、およびそれを用いた透明導電膜または透明導電体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の透明導電性組成物は、導電性無機酸化物粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂とを含む。
【0008】
本発明の透明導電膜は、本発明の透明導電性組成物を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の透明導電体は、基材と、前記基材の一方の主面に設けられた透明導電層とを含み、前記透明導電層が、本発明の透明導電性組成物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、上記従来の塗料を用いて形成された透明導電膜または透明導電体よりも、導電性が高い透明導電膜または透明導電体を実現可能とする透明導電性組成物、およびそれを用いた透明導電膜または透明導電体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施形態1)
実施形態1では、本発明の透明導電性組成物の一例について説明する。
【0012】
本実施形態の透明導電性組成物は、導電性無機酸化物粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂とを含む。
【0013】
本実施形態の透明導電性組成物を用いれば、後述する実施例において示すように、イオン性液体を含まない従来の塗料を用いた場合に比べて、導電性の優れた透明導電膜(透明導電層)を提供できる。これはイオン性液体が、常温常圧で液体であり、蒸気圧がないかあるいは極めて小さく、かつイオン伝導性を有することに起因しているものと思われる。イオン性液体は、透明導電膜中において導電性無機酸化物粒子間に存在することにより、透明導電膜の導電性を向上させているものと思われる。
【0014】
例えば、導電性無機酸化物粒子の含有率が高い塗料(イオン性液体は含まない)を塗布することにより形成された透明導電膜中には、隣り合う導電性無機酸化物粒子同士が接触しない部分が多く存在する。イオン性液体を含む本発明の透明導電性組成物を用いて形成された透明導電膜では、隣り合う導電性無機酸化物粒子間にイオン性液体が存在することにより、導電性無機酸化物粒子間の導通が補助されているものと思われる。
【0015】
導電性無機酸化物粒子とバインダ樹脂とを含む塗料を基材の一方の主面に塗布して、基材上に透明導電層(透明導電膜)を形成する場合、導電性の高い透明導電層を得るためには、例えば、下記の2通りの方法が考えられる。1つ目は、塗料に含まれる導電性無機酸化物粒子の配合割合(体積割合)を高める方法であり、2つ目は、平均粒径の大きい導電性無機酸化物粒子を用いる方法である。
【0016】
塗料に含まれる導電性無機酸化物粒子の配合割合を高めれば、透明導電層における導電性無機酸化物粒子の占有体積が大きくなり、透明導電層の導電性が向上する。
【0017】
平均粒径の大きい導電性無機酸化物粒子を用いると、導電性無機酸化物粒子内の電子伝導距離が長くなり、かつ、導電性無機酸化物粒子間の接触点が少なる。そのため、導電性無機酸化物粒子間の接触抵抗が小さくなり、透明導電層の導電性が向上する。
【0018】
しかし、導電性無機酸化物粒子の配合割合が高すぎると(透明導電層中の導電性無機酸化物粒子の占有体積が大きすぎると)、バインダ樹脂の量が少なくなり、導電性無機酸化物粒子同士の接合強度が低くなる。これにより、透明導電層の強度が低下し、ひび割れ等が生じる。また、バインダ樹脂と基材との接合強度も低くなり、透明導電層が基材から剥がれやすくなる。
【0019】
導電性無機酸化物粒子の平均粒径が大きすぎると、透明導電層の透明性が低下する。通常、可視光に対しては、導電性無機酸化物粒子の平均粒径は、光の波長の下限値(約400nm)の1/2よりも小さく、例えば、200nm以下であると好ましい。一方、平均粒径が小さくなりすぎると、粒子同士が凝集して凝集体を生成しやすく、導電性無機酸化物粒子が均一性よく分散した塗料を得ることが困難となる。そのため、導電性無機酸化物粒子の平均粒径は、5nm以上であると好ましい。さらに、透明導電膜の透明性と導電性との両立を考慮すると、導電性無機酸化物粒子の平均粒径は、20nm〜100nmであるとより好ましい。
【0020】
尚、本願において、平均粒径は、上位、下位各々10%を除いた中位80%の一次粒子の平均粒径であり、透過型電子顕微鏡を用いて測定した値である。
【0021】
本実施形態の透明導電性組成物は、イオン性液体を含むことによって導電性が向上しているので、導電性無機酸化物粒子の配合割合、または導電性無機酸化物粒子の平均粒径について、選択の自由度が高い。よって、本実施形態の透明導電性組成物によれば、導電性のみならず、透明性が優れ、機械的強度の高い透明導電膜または透明導電体を提供することも可能である。
【0022】
また、本実施形態の透明導電性組成物によれば、スパッタリング法、または蒸着法で形成された従来の透明導電膜または透明導電体よりも、可撓性が高い透明導電性膜または透明導電体を提供することが可能である。
【0023】
導電性無機酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムと、酸化インジウムに添加されたスズ、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子とを含む粒子、ITO粒子、酸化インジウム粒子、酸化亜鉛粒子、フッ素ドープ酸化スズ粒子、酸化スズ粒子、酸化アンチモン粒子等が挙げられる。
【0024】
なかでも、酸化インジウムと、酸化インジウムに添加されたスズ、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子とを含む粒子は、透明性および導電性が優れているので、好ましい。また、上記粒子が亜鉛を含む場合は、紫外線遮蔽用途に適した透明導電膜を作製できる。
【0025】
尚、本願において、「添加」とは、所定の結晶格子の原子が、他の原子によって置換されること、または、所定の格子欠陥に、原子がドープされることを意味する。
【0026】
導電性無機酸化物粒子が、酸化インジウムと、酸化インジウムに添加されたスズ、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子とを含む粒子である場合、スズ、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の原子の含有量は、インジウム100molに対して、1mol%〜200mol%であると好ましい。含有量が少なすぎまたは多すぎると、粒子の導電性が低下するからである。
【0027】
導電性無機酸化物粒子は、スズ、亜鉛およびアルミニウムと酸化インジウムとを含む複合粒子であってもよい。より具体的には、導電性無機酸化物粒子は、酸化インジウムと酸化亜鉛とからなる複合体に、スズおよびアルミニウムが添加された複合粒子であってもよい(特開2004−307221号に記載)。導電性無機酸化物粒子として上記複合粒子を用いれば、透明性、導電性および紫外線遮蔽性が優れた透明導電膜を作製できる。
【0028】
尚、ここで、「複合」とは、結晶構造を変えることなく、互いに異なる材料が固溶体となっていることをいう。
【0029】
導電性無機酸化物粒子が、スズ、亜鉛およびアルミニウムと酸化インジウムとを含む複合粒子である場合、スズ、亜鉛およびアルミニウムの含有量は、インジウム100molに対して、それぞれ3mol%〜20mol%、10mol%〜200mol%、1mol%〜15mol%であると好ましい。
【0030】
導電性無機酸化物粒子の形状について、特に制限はなく、略球状の他に、扁平状、紡錘状、棒状等であってもよい。
【0031】
導電性無機酸化物粒子は、市販のものを用いていてもよいが、例えば、特開2004−307221号に記載の方法で作製されたものを用いてもよい。
【0032】
イオン性液体としては、特に制限はないが、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0033】
イミダゾリウム塩としては、例えば、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムトシレイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムビス[サリシレート(2)]ボレート、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムコバルトテトラカルボニル、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムクロライド、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムトシレイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムビス[サリシレート(2)]ボレート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムコバルトテトラカルボニル、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムクロライド、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムクロライド、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムクロライド、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムクロライド、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0034】
ピリジニウム塩としては、例えば、N−ブチルピリジニウムクロライド、N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、N−ブチルピリジニウムメタンスルフェイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムクロライド、3−メチル−N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0035】
ピロリジニウム塩としては、例えば、1−エチル1−メチルピロリジニウムブロマイド、1−エチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチル1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムメタンスルフェイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムブロマイド、1−ブチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0036】
アンモニウム塩としては、例えば、テトラnブチルアンモニウムクロライド、テトラnブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0037】
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラnブチルフォスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0038】
バインダ樹脂について特に制限はないが、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、繊維素系樹脂等が好ましい。なかでも、可視光に対して透明性の高いアクリル樹脂等が特に好ましい。
【0039】
透明導電性組成物において、イオン性液体は、導電性無機酸化物粒子100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部含まれていると好ましい。イオン性液体が多すぎると、導電性向上の効果が不十分となり、多すぎるとブリードアウトする恐れがある。
【0040】
透明導電性組成物において、バインダ樹脂は、導電性無機酸化物粒子100重量部に対して、50重量部以下含まれていると好ましい。バインダ樹脂が多すぎると、透明導電層の導電性が低下するからである。バインダ樹脂の含有量は、さらには、1重量部以上30重量部以下であると好ましい。
【0041】
本実施形態の透明導電性組成物は、必要に応じて、着色剤等を含んでいてもよい。着色剤は、有機顔料、無機顔料、染料のいずれであっても良い。有機顔料としては、例えば、キナクドリン、ペリレンオレンジ等が、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、コバルトーブルー等が、染料としては、アゾ染料、キノリン染料、アントラキノン染料等が用いられる。
【0042】
本実施形態の透明導電性組成物は、CRT、PDP,LCD、OEL等のディスプレイデバイスやタッチパネル等の表示面に用いられる、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、反射防止膜の材料として有用であるが、各種表示装置や電池等に用いられる透明電極の材料としても有用である。
【0043】
(実施形態2)
実施形態2では、本発明の透明導電膜、透明導電体およびそれらの製造方法の一例について説明する。
【0044】
図1に示すように、本実施形態の透明導電体1は、基材2と、基材2の一方の主面に設けられた透明導電層(透明導電膜)3とを含んでいる。
【0045】
基材2としては、可視光に対して光透過性を有し、平面を有していれば特に制限はないが、例えば、ガラス、または、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、あるいは、ポリカーボネイト等の樹脂を含む、フィルムまたはシート等が用いられる。基材2は、可撓性を有していると好ましい。可撓性を有する透明導電体1を提供できるからである。基材2の厚みについて特に制限はないが、例えば、50μm〜500μmであると好ましい。
【0046】
透明導電層3は、実施形態1の透明導電性組成物を含んでいる。透明導電層3は、例えば、実施形態1の透明導電性組成物と溶剤とを混合して得られる塗料を、基板2の一方の主面に塗布することにより作製できる。
【0047】
このように、本実施形態の透明導電体の製造方法は、基材の一方の主面に、実施形態1に記載の透明導電性組成物を含む塗料を塗布して透明導電層3を形成する工程を含んでいるので、例えば、スパッタリング法、または蒸着法を用いる場合よりも、大量生産に適し、比較的簡便であり、低コスト化を実現できる。
【0048】
塗料の塗布方法について、特に制限はないが、例えば、グラビア塗布法、リバースロール塗布法、スクリーン印刷法、スピンコート法、溶液浸漬法、インクジェット法等が挙げられる。
【0049】
溶剤について、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、クレゾール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、水等が用いられる。
【0050】
透明導電層3の表面電気抵抗は、低ければ低いほど好ましいが、例えば、5000Ω/□以下、さらには、3000Ω/□以下であると好ましい。
【0051】
透明導電膜側を光入射側として測定した透明導電体の全光透過率は、高ければ高いほど好ましいが、例えば、70%以上、さらには、80%以上であると好ましい。
【0052】
以下、実施例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。尚、実施例および比較例において、表面電気抵抗、全光透過率は下記の方法に従って測定した。
【0053】
[表面電気抵抗] 表面電気抵抗は、三菱化学(株)製の抵抗率計ロレスターGPを用いて、四端子法により測定した。電圧端子間距離は5mmとした。表面電気抵抗の値が小さいほど、導電性が高いことを意味する。
【0054】
[全光透過率] 日本分光(株)製の紫外可視分光光度計(V−570)を用い、入射光強度に対する透過光強度の割合を全光透過率として測定した。全光透過率は、透明導電膜側を光入射側として測定した。全光透過率の値が大きいほど、透明性が高いことを意味する。
【実施例1】
【0055】
下記組成をビーズミルにて分散混合して塗料を得た。
【0056】
スズが添加された酸化インジウム粒子(同和鉱業社製、平均粒径:40nm ):100重量部
アクリル樹脂(三菱レーヨン社製、BR113):10重量部
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド:1重量部
メチルエチルケトン:100重量部
イソプロピルアルコール:100重量部
トルエン:50重量部
基材として、透明PETフィルム(厚み:100μm)を用意し、基材の一方の主面上に上記塗料をバーコーターにより塗布し、次いで塗膜を乾燥して、厚さ1μmの透明導電層を含む透明導電体を得た。
【0057】
透明導電層の表面電気抵抗は2200Ω/□であり、透明導電体の全光透過率は82%であった。
【実施例2】
【0058】
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えてN−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、透明導電層を含む透明導電体を得た。
【0059】
透明導電層の表面電気抵抗は2400Ω/□であり、透明導電体の全光透過率は82%であった。
【実施例3】
【0060】
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えて1−エチル1−メチルピロリジニウムブロマイドを用いたこと以外は実施例1と同様にして透明導電体を含む透明導電体を得た。
【0061】
透明導電層の表面電気抵抗は3100Ω/□であり、透明導電体の全光透過率は80%であった。
【実施例4】
【0062】
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えてテトラnブチルアンモニウムクロライドを用いたこと以外は実施例1と同様にして透明導電層を含む透明導電体を得た。
【0063】
透明導電層の表面電気抵抗は2400Ω/□であり、透明導電体の全光透過率は82%であった。
【実施例5】
【0064】
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えてテトラnブチルホスホニウムブロマイドを用いたこと以外は実施例1と同様にして透明導電層を含む透明導電体を得た。
【0065】
透明導電層の表面電気抵抗は2400Ω/□であり、透明導電体の全光透過率は82%であった。
【0066】
(比較例1)
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドを用いないこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電層を含む透明導電体を得た。
【0067】
透明導電層の表面電気抵抗は6000Ω/□であり、透明導電体の全光透過率は83%であった。
【0068】
実施例1〜5と比較例1とを比較すると、イオン性液体を含む塗料を用いて作製された透明導電層(実施例1〜5)では、イオン性液体を含まない塗料を用いて作製された透明導電層(比較例1)よりも、表面電気抵抗が低い。この結果から、透明導電性組成物がイオン性液体を含んでいると、これを用いて作製された透明導電膜の導電性が向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の透明導電性組成物を用いれば、塗料を塗布することにより形成され、かつ導電性の優れた、透明導電膜または透明導電体を提供できるので、本発明の透明導電性組成物は、例えば、CRT、PDP,LCD、OEL等のディスプレイデバイスやタッチパネル等の表示面に用いられる、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、反射防止膜、または各種表示装置や電池等に用いられる透明電極の材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態の透明導電体の一例を示した断面図。
【符号の説明】
【0071】
1 透明導電体
2 基材
3 透明導電層(透明導電性膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性無機酸化物粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂とを含む透明導電性組成物。
【請求項2】
前記導電性無機酸化物粒子は、酸化インジウムと、前記酸化インジウムに添加されたスズ、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子とを含む請求項1に記載の透明導電性組成物。
【請求項3】
前記イオン性液体は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含む請求項1または2に記載の透明導電性組成物。
【請求項4】
前記導電性無機酸化物粒子の平均粒径は、5nm〜200nmである請求項1〜3のいずれかの項に記載の透明導電性組成物。
【請求項5】
前記導電性無機酸化物粒子の平均粒径は、20nm〜100nmである請求項1〜3のいずれかの項に記載の透明導電性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の透明導電性組成物を含むことを特徴とする透明導電膜。
【請求項7】
基材と、前記基材の一方の主面に設けられた透明導電層とを含み、
前記透明導電層が、請求項1〜5のいずれかの項に記載の透明導電性組成物を含むことを特徴とする透明導電体。
【請求項8】
前記基材は、ガラスまたは樹脂を含む請求項7に記載の透明導電体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−253025(P2006−253025A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69567(P2005−69567)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】