説明

透明導電材料及び透明導電体

【課題】高湿度環境下であっても電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電材料及び透明導電体を提供すること。
【解決手段】本発明は、導電粉と、導電粉と結合可能な有機基及び反応性官能基を有する反応性化合物と、反応性化合物と結合可能な多官能性有機化合物とを含有する透明導電材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電材料及び透明導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDや、PDP、有機EL、タッチパネル等には、透明電極が使用され、このような透明電極として、透明導電体が使用されている。透明導電体は、透明導電性酸化物材料から形成されるものであり、このような透明導電性酸化物材料は、従来、酸化錫、インジウム−錫複合酸化物、酸化インジウム、酸化亜鉛、亜鉛−アンチモン複合酸化物等の金属酸化物を用いることが知られている。
【0003】
ところが、これらの透明導電体は通常スパッタ法などで膜状に作製されるが、装置が高価であり、かつ、製膜の効率が悪く、また、その膜はひび割れし易い等の問題がある。一方、上記透明導電性酸化物材料から作られた導電粉と樹脂等の複合化による透明導電体も検討されており、この前記複合化透明導電体は屈曲性に優れ、ひび割れしにくい構造であることが特徴である。
【0004】
しかしながらこの複合化透明導電体を高湿度環境下で用いると、複合化透明導電体によって徐々に水分が吸収され、透明導電体自体の電気抵抗値が上昇し、さらにかかる電気抵抗値の経時的変化も大きくなる傾向にある。
【0005】
このため、このような透明導電体を例えばタッチパネル等に用い高湿度環境下におくと、徐々にタッチパネルの作動が不安定になる虞がある。
【0006】
そこで、水分の吸収に起因した電気抵抗値の上昇や経時的変化を抑制する透明導電材料が望まれている。例えば、導電粉を固着する樹脂として、吸湿性の小さいとされているフェノキシ樹脂またはフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂の混合樹脂、或いはポリフッ化ビニリデンを用いた光透過性導電材料が提案されている(例えば下記特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平08−78164号公報
【特許文献2】特開平11−273874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら近年では、透明導電体の更なる高信頼性を求め、高湿度環境下であっても、より電気抵抗値の変化が小さい透明導電体が求められている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高湿度環境下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電材料及び透明導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、上記特許文献1又は2に記載の、吸湿性が小さいとされている樹脂を用いた場合も、高湿度環境下において長期間使用されると抵抗値が上昇する場合があることを見出し、上記課題を十分に解決することができないことから、透明導電体において生じる電気抵抗値の上昇や経時的変化が、導電粉同士の接合点の切断によるものではないかと考えた。即ち、透明導電体に水分が付着した場合に、この導電粉を含む透明導電体が膨潤する傾向が認められることから、樹脂等に水分が拡散し、樹脂等が膨潤する結果、導電粉同士が乖離し、当該透明導電体の電気抵抗値の上昇や経時的変化が引き起こされるのではないかと考えた。そして、本発明者らはかかる推測に基づいて更に鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の透明導電材料は、導電粉と、前記導電粉と結合可能な有機基及び複数の反応性官能基を有する反応性化合物と、前記反応性化合物と結合可能な多官能性有機化合物とを含有することを特徴とする。
【0011】
この透明導電材料によれば、導電粉と有機基とが結合し、且つ反応性化合物と多官能性有機化合物とが結合するように導電粉と反応性化合物と多官能性有機化合物とを反応させると、反応性化合物と多官能性有機化合物との結合により高分子架橋体が得られると共に導電粉を高分子架橋体に強固に結合させることが可能となる。このため、高湿環境下に置かれても、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能な透明導電体を得ることが可能となる。
【0012】
上記のように、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となるメカニズムはいまだ明らかではないが、導電粉と高分子架橋体とを含む透明導電体においては、高分子架橋体が、透明導電体内で点在する導電粉同士の隙間を充填し、高湿環境下に置かれても、高分子架橋体の膨潤が十分に防止され、その結果、導電粉同士の乖離が十分に防止され、当該透明導電体の電気抵抗値の上昇や経時的変化が十分に防止されるものと本発明者らは考えている。
【0013】
加えて、表面に有機基を有する導電粉と、有機基を有しない反応性化合物と多官能性有機化合物とを反応させる場合、予め導電粉表面に絶縁体層が形成されているため、初期抵抗値が高くなる傾向が見られ、また導電粉表面において、反応性化合物と反応しないフリーな状態の有機基が多く残り、この界面での密着性が低下するため、この部分が透明導電体において水分が浸入しやすい箇所となると考えられるところ、本発明の透明導電材料の場合、反応性化合物中に含まれる有機基が導電粉と結合するため、初期抵抗値の増加を抑え、導電粉表面において上記のようなフリーな状態の有機基が存在せず、透明導電体において水分が浸入しやすい箇所を十分に低減することができる。本発明者らはこのことも上記効果が得られる要因の一つではないかと考えている。
【0014】
上記透明導電材料において、前記反応性化合物が1万以上の重量平均分子量を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0015】
反応性化合物の分子量が上記範囲であると、反応性化合物が低分子化合物である場合に比べて、分子中の官能基数を増やすことができ、その効果として、架橋密度を向上させることができる。また、結果として透湿性、機械的強度に優れた透明導電体を得ることができる。
【0016】
上記透明導電材料は、単官能性有機化合物からなる添加剤を更に含むことが好ましい。この場合、抵抗の変動がより小さい透明導電体を得ることが可能となる。
【0017】
上記透明導電材料において、前記反応性化合物が分子中に更に疎水基を有することが好ましい。上記反応性化合物が更に疎水基を有すると疎水化、立体障害の付与により水分がより浸入しにくい透明導電体を得ることが可能となる。
【0018】
上記透明導電材料において、前記疎水基がアリール基又はアルキル基であることが好ましい。上記疎水基がアリール基又はアルキル基であると、これらの疎水基が反応性化合物に由来する架橋により形成された高分子ネットワーク内の隙間に作用し、立体障害として水分の浸入を抑え、また疎水性のため水分を受容し難いことにより、得られる透明導電体は、より効果的に導電粉に水分が付着することを抑制することが可能となる。
【0019】
上記透明導電材料において、前記反応性官能基のうち少なくとも一つがビニル基であることが好ましい。上記反応性官能基のうち少なくとも一つがビニル基であると、他の官能基(ビニル基)と反応して、高分子化、架橋化し機械的強度の向上や耐水性の向上が図られる。また、ビニル基の誘導体であるアクリロイル基またはメタクリロイル基である場合、透明性が高く光学特性に優れた透明導電材料を得ることが可能となる。
【0020】
上記透明導電材料において、前記有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。なお、上記シリルアミン基には、シリルアミンから誘導された基も含まれ、置換基等を有していてもよい。
【0021】
上記有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基からなる群より選ばれる基であると、有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基以外の基である場合に比べて、導電粉を反応性化合物により強固に固定させることができる。換言すれば導電粉との結合性に優れるものとすることができる。
【0022】
上記透明導電材料において、前記反応性化合物が分子中に更にカルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる親水基を有することが好ましい。ここで、アミン誘導体基とは、アミンから誘導された基をいう。
【0023】
上記反応性化合物が分子中に更にカルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる親水基を有すると、当該親水基を有する反応性化合物を含む透明導電材料において、導電粉の分散性が向上する。この場合、この透明導電材料によれば、導電粉が凝集した透明導電材料と比較すると、ヘイズ値が低下した透明導電体を得ることができる。また上記透明導電材料によれば、導電粉が均一に分散されることで、後述する高分子架橋体と導電粉との接触面積が増加し、全体の強度がより向上した透明導電体を得ることが可能となる。
【0024】
本発明の透明導電体は、導電粉と、前記導電粉と結合可能な有機基及び複数の反応性官能基を有する反応性化合物と、前記反応性化合物と結合可能な多官能性有機化合物とを、前記導電粉と前記有機基とが結合し、かつ前記反応性化合物と前記多官能性有機化合物とが結合するように反応させることにより得られるものである。
【0025】
ここで、本発明における透明導電体とは、膜状及び板状のものを含み、膜状透明導電体は厚みが50nm〜1mmの範囲のものをいい、板状透明導電体は厚みが1mmを超えるものをいう。
【0026】
本発明の透明導電体によれば、導電粉と有機基とが結合し、且つ反応性化合物と多官能性有機化合物とが結合するように導電粉と反応性化合物と多官能性有機化合物とを反応させると、反応性化合物と多官能性有機化合物との結合により高分子架橋体が得られると共に導電粉を高分子架橋体に強固に結合させることが可能となる。このため、高湿環境下に置かれても、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能な透明導電体を得ることが可能となる。
【0027】
上記透明導電体において、前記反応性化合物が1万以上の重量平均分子量を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0028】
反応性化合物の分子量が上記範囲であると、反応性化合物が低分子化合物である場合に比べて、分子中の官能基数を増やすことができ、その効果として、架橋密度を向上させることができる。また、結果として透湿性、機械的強度に優れた透明導電体を得ることができる。
【0029】
上記透明導電体は、単官能性有機化合物からなる添加剤を、前記導電粉、前記反応性化合物及び前記多官能性化合物と共に反応させることにより得られることが好ましい。この透明導電体によれば、抵抗の変動をより小さくすることが可能となる。
【0030】
上記透明導電体において、前記反応性化合物が分子中に更に疎水基を有することが好ましい。上記反応性化合物が更に疎水基を有すると疎水化、立体障害の付与により水分をより浸入しにくくすることが可能となる。
【0031】
上記透明導電体において、前記疎水基がアリール基又はアルキル基であることが好ましい。上記疎水基がアリール基又はアルキル基であると、これらの疎水基が反応性化合物に由来する架橋により形成された高分子ネットワーク内の隙間に作用し、立体障害として水分の浸入を抑え、また疎水性のため水分を受容し難いことにより、得られる透明導電体は、より効果的に導電粉に水分が付着することを抑制することが可能となる。
【0032】
上記透明導電体において、前記反応性官能基のうち少なくとも一つがビニル基であることが好ましい。上記反応性官能基のうち少なくとも一つがビニル基であると、他の官能基(ビニル基)と反応して、高分子化、架橋化し機械的強度の向上や耐水性の向上が図られる。また、ビニル基の誘導体であるアクリロイル基またはメタクリロイル基である場合、透明性が高く光学特性に優れた透明導電材料を得ることが可能となる。
【0033】
上記透明導電体において、前記有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
【0034】
上記有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基からなる群より選ばれる基であると、有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基以外の官能基である場合に比べて、導電粉を反応性化合物により強固に固定させることができる。換言すれば導電粉との結合性に優れるものとすることができる。
【0035】
上記透明導電体において、前記反応性化合物が分子中に更にカルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる親水基を有することが好ましい。
【0036】
上記反応性化合物が分子中に更にカルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる親水基を有すると、当該親水基を有する反応性化合物を含む透明導電材料において、導電粉の分散性が向上する。この場合、この透明導電材料によれば、導電粉が凝集した透明導電材料と比較すると、ヘイズ値が低下した透明導電体を得ることができる。また上記透明導電材料によれば、導電粉が均一に分散されることで、後述する高分子架橋体と導電粉との接触面積が増加し、全体の強度がより向上した透明導電体を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、高湿度環境下であっても、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電材料及び透明導電体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0039】
[透明導電体の第1実施形態]
まず、本発明の透明導電体の第1実施形態について説明する。
【0040】
図1は、本発明の透明導電体の第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、本実施形態の透明導電体10は、導電粉11と高分子架橋体12とを有する。導電粉11は透明導電体10の内部に充填されており、導電粉11は高分子架橋体12に固着されている。
【0041】
透明導電体10において、導電粉11同士は好ましくは互いに接しており、かつ透明導電体10の表面10a又は10bに一部の導電粉11が露出している。このため、上記透明導電体10は十分な導電性を有することが可能となる。
【0042】
透明導電体10によれば、高湿環境下に置かれても、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。このように、透明導電体10における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となるメカニズムはいまだ明らかではないが、導電粉11と高分子架橋体12とを含む透明導電体10においては、高分子架橋体12が、透明導電体10内で点在する導電粉11同士の隙間を充填し、高湿環境下に置かれても、高分子架橋体12の膨潤が十分に防止され、その結果、導電粉11同士の乖離が十分に防止され、当該透明導電体10の電気抵抗値の上昇や経時的変化が十分に防止されるものと本発明者らは考えている。
【0043】
加えて、表面に有機基を有する導電粉11と、有機基を有しない反応性化合物と多官能性有機化合物とを反応させる場合、予め導電粉表面に絶縁体層が形成されているため、初期抵抗値が高くなる傾向が見られ、また導電粉11表面において、反応性化合物と反応しないフリーな状態の有機基が多く残り、この界面での密着性が低下するため、この部分が透明導電体10において水分が浸入しやすい箇所となると考えられるところ、本発明の透明導電材料の場合、反応性化合物中に含まれる有機基が導電粉11と結合するため、初期抵抗値の増加を抑え、導電粉11表面において上記のようなフリーな状態の有機基が存在せず、透明導電体10において水分が浸入しやすい箇所を十分に低減することができる。本発明者らは、このことも上記効果が得られる要因の一つではないかと考えている。
【0044】
上記透明導電体10において、高分子架橋体12がアリール基、アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの疎水基を有することが好ましい。高分子架橋体12が上記疎水基を有すると、高分子架橋体12の疎水化や分子間の立体障害により、高分子架橋体の透湿性が低下し、より効果的に高分子架橋体12の膨潤を抑制することができる。
【0045】
ここで、上記透明導電体10の製造方法について説明する。
【0046】
透明導電体10は、透明導電材料を用いて形成することができる。
【0047】
(透明導電材料)
透明導電材料は、導電粉11と、導電粉11と結合可能な有機基及び複数の反応性官能基を有する反応性化合物と、反応性化合物と結合可能な多官能性有機化合物とを含む。
【0048】
上記透明導電材料を用いると、反応性化合物と多官能性有機化合物との反応により得られる高分子架橋体12の強度を向上させることが可能となる。加えて、導電粉11を高分子架橋体12に強固に結合させることが可能となる。したがって、この透明導電材料によれば、水分が浸入しても高分子架橋体12の膨潤が十分に防止され、高湿環境下に置かれても、電気抵抗値の上昇や経時的変化をより抑制することが可能な透明導電体10を得ることが可能となる。
【0049】
(反応性化合物)
上記反応性化合物は1万以上の重量平均分子量を有する高分子化合物であることが好ましい。反応性化合物が低分子化合物である場合に比べて、分子中の官能基数を増やすことができ、その効果として、架橋密度を向上させることができる。また、結果として透湿性、機械的強度に優れた透明導電体を得ることができる。なお、上記重量平均分子量は100万以下であることがより好ましい。重量平均分子量が100万を超えると、液体への溶解性が不十分となり、取り扱いが難しいことや硬化物の耐湿性が低下する等の傾向がある。
【0050】
このときの反応性化合物の構造は線状構造、分岐構造となるが、より具体的には、主鎖となる線状の構造体に複数種の反応性官能基が修飾された構造、又は主鎖及び主鎖から分岐した側鎖に複数種の反応性官能基が修飾された構造が挙げられる。
【0051】
上記高分子化合物としては、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアニリン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリフェニル又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の一般的に供される高分子化合物を適宜使用することができる。この中でも光透過性、無着色性、耐スクラッチ性等の面からアクリル樹脂が特に好ましい。
【0052】
上記反応性化合物は複数の反応性官能基を有する。ここで、複数の反応性官能基は互いに同一の基であってもよく、異なった種類の基であってもよい。
【0053】
本実施形態に係る反応性化合物が有する反応性官能基の種類は、複数であれば特に限定されないが、2〜4種であることが好ましい。この反応性官能基の種類が4種を超えると、反応性官能基の種類が4種以下である場合に比べて、反応性化合物の保存安定性の悪化や高分子架橋体12の架橋密度の低下を招く恐れがある。
【0054】
上記反応性官能基としては、同一の種類の官能基と重合する官能基(例えばビニル基等)や、異なった種類の官能基と重合する官能基(例えば水酸基やエポキシ基等)が挙げられる。重合方法としては、光、熱、触媒、開始剤等あらゆる方法を利用できる。
【0055】
それらの中でも光重合(光重合開始剤による重合も含む。)が好ましい。上記反応性化合物が光重合性を有すると、硬化反応の制御ができ、かつ短い所要時間で硬化させることができるため、工程管理が簡便になる利点がある。
【0056】
或いは、上記反応性官能基としては、特に限定されないが、反応性二重結合(重合性二重結合)基が好ましい。より好ましくは、上記反応性二重結合基がビニル基のときである。上記複数の反応性官能基がビニル基を少なくとも1つ有することによって、少なくとも上記反応性化合物の分子量が1万以上であることから硬化後の分子量は1万以上になり高分子架橋体12の耐湿性、機械的強度を特定の水準以上に保持できる利点がある。更に高分子化合物中のビニル基の含有率を上げることにより架橋密度を上げることができ、より耐久性に優れた高分子架橋体12を得ることができる。なお、ここで言うビニル基とはビニル基から誘導される基も含まれ、置換基等を有していてもよい。このような基として例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、スチレン基等の重合性二重結合を含む基が挙げられる。
【0057】
上記反応性化合物中のビニル基等の含有率は特に限定されないが、反応性化合物の1分子中の平均反応基数が、分子量1万につきビニル基換算で好ましくは2〜50基、より好ましくは5〜20基である。2基未満の場合、2基以上の場合と比べて反応性化合物が十分に架橋することができないため、この反応性化合物を含む高分子架橋体の架橋密度が低いものになる。また、50基を超えると、反応性化合物の主鎖または側鎖の分子量が低下し、立体障害等の影響により架橋密度が低下することや、反応性化合物の他の官能基を十分修飾できない等の影響が想定される。
【0058】
上記反応性化合物は有機基を有する。有機基は導電粉11との結合機能を有する。この有機基としては、有機シラン基、有機アルミニウム基、有機チタン基、有機りん基が挙げられる。この中でも有機シラン基が好適に用いられる。具体的には有機基が有機シラン基であるアルコキシシラン基及びシリルアミン基からなる群より選ばれる基であることがより好ましい。これらの基を有する反応性化合物は、反応性官能基がアルコキシシラン基、シリルアミン基及びシリルアミン基の誘導体以外の有機基である場合に比べて、導電粉11を反応性化合物に対してより強固に固定させることができる。換言すれば導電粉との結合性に優れるものとすることができる。また、アルコキシシラン基は熱により、反応が促進されるため、加熱処理を施すことで更に結合性を高めることができる。
【0059】
なお、上記反応性化合物中のアルコキシシラン基等の含有率は特に限定はされないが、反応性化合物の1分子中の平均反応基数が、分子量が1万につき、トリエトキシシラン基換算で好ましくは2〜20基、より好ましくは5〜10基である。2基未満の場合、反応性化合物と導電粉の結合が十分確保できない。また、20基を超えると、反応性化合物の保存安定性が低下し、ゲル化や変質により使用できなくなる恐れがある。
【0060】
このように、上記反応性化合物は機能の異なる複数の官能基を分子内に複数有するため、機能的な構造体を形成することが可能となる。
【0061】
また、上記反応性官能基以外の官能基として、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる親水基が反応性化合物に含まれることも好ましい。これらの親水基を有する反応性化合物を含む透明導電材料においては、導電粉11の分散性が向上する。このため、上記親水基がカルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる基である透明導電材料を用いて形成した透明導電体10は、導電粉11が凝集した透明導電材料と比較すると、抵抗値、ヘイズ値が低下することになる。また導電粉11が均一に分散されることで、高分子架橋体12と導電粉11との接触面積が増加し、透明導電体10全体の強度もより向上する。
【0062】
さらに、上記反応性化合物が分子内に疎水基を有することが好ましい。この場合、透明導電体10を形成すると、反応性化合物と多官能性有機化合物との反応により得られる高分子架橋体12への水分の浸入が十分に防止され、抵抗値の変動が十分に防止された透明導電体10を得ることが可能となる。
【0063】
上記疎水基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等のアリール基、又は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基等のアルキル基が挙げられる。かかる末端基が上記アリール基又はアルキル基であると、反応性化合物の疎水化および分子相互間の立体障害形成による水の拡散防止作用により、より効果的に高分子架橋体12の膨潤を抑制することができる。
【0064】
(多官能性有機化合物)
上記多官能性有機化合物は、分子内に反応性官能基が2つ以上存在する化合物であり、高分子架橋体12を形成させることが可能なものであれば特に限定されず、反応性化合物と結合して高分子架橋体12を構成するものであってもよいし、反応性化合物と結合しないものであってもよい。
【0065】
このような多官能性有機化合物としては、例えば上述した反応性化合物がビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を有する場合、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性有機化合物は、上記反応性化合物や他の多官能性有機化合物等と重合反応を起こし、また、多官能性有機化合物は分子中に官能基が2つ以上含まれることにより、もう一方の官能基も重合反応に寄与するため、確実に架橋反応が進行し、高分子架橋体12を形成する。
【0066】
一方、反応性化合物がビニル基等を有し、これらの官能基と結合しないものとしては例えばエポキシ基が挙げられる。この場合、エポキシ基はビニル基と結合はしないが、エポキシ基同士で重合が進行し、アクリル樹脂とエポキシ樹脂の複合架橋体を形成する。また、多官能性有機化合物がビニル基とエポキシ基を有する場合はアクリル樹脂とエポキシ樹脂の共重合架橋体を形成することになる。
【0067】
(導電粉)
上記導電粉11は、透明導電性酸化物材料から構成される。透明導電性酸化物材料は、透明性及び導電性を有するものであれば特に限定されないが、かかる透明導電性酸化物材料としては、例えば、酸化インジウム、又は酸化インジウムに、錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム又はマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化錫、又は酸化錫に、アンチモン、亜鉛又はフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛に、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、又はマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたもの等が挙げられる。
【0068】
上記導電粉11は、耐水性を有する導電粉であることが好ましい。ここで、「耐水性を有する導電粉」とは、水分により、抵抗値の増加等、劣化を生じない導電粉のことをいう。具体的には、耐水性を有する導電粉は、上記透明導電性酸化物材料によって異なる。すなわち、透明導電性酸化物材料が酸化インジウム、又は酸化インジウムに、錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム又はマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物である場合、耐水性を有する導電粉としては、導電粉を1質量%含む混合液のpHを3以上とするものや、導電粉を1質量%含む混合液のpHを3未満とするものであり且つハロゲン元素濃度が0.2質量%以下であるものが挙げられる。酸化錫、又は酸化錫に、アンチモン、亜鉛又はフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた錫複合酸化物である場合は、耐水性を有する導電粉としては、導電粉を1質量%含む混合液のpHを1以上とするものであり且つハロゲン元素濃度が1.5質量%以下であるものが挙げられる。酸化亜鉛、又は酸化亜鉛にアルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた亜鉛複合酸化物である場合は、耐水性を有する導電粉としては、導電粉を1質量%含む混合液のpHを4〜9とするものが挙げられる。なお、「混合液」とは、水及び導電粉からなるものをいう。
【0069】
このような導電粉11を用いると、この耐水性を有する導電粉11と高分子架橋体12とを含む透明導電体10は、高湿度環境下においても、抵抗値の経時的変化をより防止することができる。
【0070】
導電粉を1質量%含む混合液のpHの調整は例えば水洗、中和、加熱による不純物の脱離等によって行うことができるが、中和、特にアンモニア水を用いた中和によって行うことが好ましい。この方法を用いることで容易に上記混合液のpHを制御できると共に、導電粉から塩素を選択的に溶出させ、導電粉中の塩素濃度を効果的に低減させることができる。
【0071】
導電粉11の平均粒径は10nm〜80nmであることが好ましい。平均粒径が10nm未満であると、平均粒径が10nm以上である場合と比べて、透明導電体10の導電性が安定しない傾向にある。すなわち、本実施形態に係る透明導電材料は導電粉11において生じる酸素欠陥によって導電性が発現することとなるが、導電粉11の粒径が10nm未満では、例えば外部の酸素濃度が高い場合には酸素欠陥が減少し、導電性が変動する虞がある。一方、平均粒径が80nmを超えると、例えば可視光の波長領域では、平均粒径が80nm以下である場合に比べて光散乱が大きくなり、可視光の波長領域で透明導電体10の透過率が低下し、ヘイズ値が増加する傾向がある。
【0072】
また上記導電粉11の比表面積は10〜50m/gであることが好ましい。比表面積が10m/g未満であると、可視光の光散乱が大きくなる傾向があり、比表面積が50m/gを超えると、透明導電材料の安定性が低くなる傾向がある。なお、ここで言う比表面積は、比表面積測定装置(型式:NOVA2000、カンタクローム社製)を用いて、試料を300℃で30分間真空乾燥した後に測定した値をいうものとする。
【0073】
透明導電体10を構成する材料中の導電粉11の含有率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。含有率が10体積%未満であると、透明導電体10の抵抗値が高くなる傾向にあり、含有率が70体積%を超えると、透明導電体10の機械的強度が低下する傾向にある。
【0074】
導電粉11は以下のようにして製造することができる。ここでは、導電粉11として、酸化インジウムに錫をドープしたもの(以下、「ITO」という。)を用いた場合を例に挙げる。
【0075】
まず、塩化インジウム及び塩化錫を、アルカリを用いて中和処理することにより共沈させる(沈殿工程)。このとき副生する塩はデカンテーションや遠心分離法によって除去する。得られた共沈物に対して乾燥を行い、得られた乾燥体に対して雰囲気焼成及び粉砕の処理を行う。こうして導電粉が製造される。上記焼成の処理は、酸素欠陥の制御の観点から、窒素雰囲気中、若しくはヘリウム、アルゴン、キセノン等の希ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。
【0076】
(その他の成分)
透明導電材料は、上記反応性化合物、多官能性有機化合物及び導電粉11に加えて、単官能性有機化合物からなる添加剤を含むことが好ましい。この場合、抵抗の変動がより小さい透明導電体10を得ることが可能となる。ここで、単官能性有機化合物に含まれる官能基は、高分子架橋体12に必要な機能を補完するために適宜選択されるものであり、本発明においては耐湿性の付与を目的とするものである。このような官能基としては、例えばアリール基やアルキル基などが挙げられる。官能基は、これらのうちメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基、フェニル基、ナフチル基であることが好ましい。上記添加剤の具体例としては、例えばフェノキシポリエチレングリコールアクリレートが挙げられる。
【0077】
透明導電体10は、以下のようにして製造することができる。
【0078】
まず導電粉11と、上記反応性化合物と、多官能性有機化合物及び重合開始剤とを含む透明導電材料を液体中に分散させ、分散液を得る。透明導電材料を分散させる液体としては、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
【0079】
次に、上記分散液を基板の一面上に塗布する。分散液の基板上への塗布方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー法が挙げられる。
【0080】
分散液中に含まれる重合開始剤が熱重合開始剤である場合には、乾燥後、熱重合開始剤の重合開始温度以上に加熱して硬化させる。これにより、基板の一面上に透明導電体10が得られることになる。
【0081】
分散液中に含まれる重合開始剤が光重合開始剤である場合には、乾燥後、光を照射して硬化させる。こうして透明導電体10が基板の一面上に形成される。
【0082】
こうして得られる透明導電体10は、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、タッチパネル等に好適に用いることができる。
【0083】
[透明導電体の第2実施形態]
次に、本発明の透明導電体の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0084】
図2は、本発明の透明導電体の第2実施形態を示す模式断面図である。図2に示すように、本実施形態の透明導電体20は、導電粉11を含む透明導電層14と、高分子架橋体12からなる高分子架橋体層15と、支持体13とを備えており、支持体13上に、高分子架橋体層15及び透明導電層14が順次積層されている。上記透明導電層14には導電粉11が充填されており、かつ導電粉11の間には、浸透した高分子架橋体12が存しており、高分子架橋体12は導電粉11を固着している。
【0085】
上記透明導電体20によれば、高湿環境下に置かれても、透明導電体20における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。
【0086】
支持体13は、後述する高エネルギー線及び可視光に対して透明な材料で構成されるものであれば特に限定されず、公知の透明フィルムでよい。すなわち支持体13としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。樹脂フィルムの他に、支持体として、ガラスを用いることもできる。
【0087】
透明導電体20は、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、図示しない基板上に導電粉11を載置する。このとき、基板上には、導電粉を基板上に固定するためのアンカー層を予め設けておくことが好ましい。予めアンカー層を設けておくと、導電粉11を基板上にしっかりと固定させることができる。上記導電粉11の載置を容易に行うことができる。上記アンカー層としては、例えばポリウレタン等が好適に用いられる。
【0088】
また、基板上に導電粉を固定するためには、導電粉11を基板側に向かって圧縮して圧縮層を形成してもよい。この場合、アンカー層を形成することなく導電粉11を基板に接着することができ有用である。この圧縮はシートプレス、ロールプレス等により行うことができる。なお、この場合も、基板上に予めアンカー層を設けておくことが好ましい。この場合、導電粉11をよりしっかりと固定させることが可能である。
【0089】
上記基板としては、例えば、ガラスのほか、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムや各種プラスチック基板等が用いられる。
【0090】
次に、上述した透明導電材料の第1形態から導電粉を省いたもの(以下単に「非導電材料」ともいう。)を圧縮層の一面上に塗布する。このとき、非導電材料の一部が圧縮層に浸透することとなる。
【0091】
そして、支持体13を非導電材料上に設ける。非導電材料としては、後述する高エネルギー線によって硬化しうるものが用いられる。
【0092】
図2において高エネルギー線を照射することにより非導電材料において反応性化合物と多官能性有機化合物とを反応させて高分子架橋体12を得る。このことにより、導電粉11内に浸透して硬化された高分子架橋体12は、導電粉11を固着して透明導電層14を形成する。また、導電粉11内に浸透しない材料はそのまま硬化し高分子架橋体層15を形成する。このとき、さらに支持体13と高分子架橋体層15とが接着することとなる。
【0093】
上述した高エネルギー線は、例えば紫外線等の光であってもよく、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0094】
このように高エネルギー線を照射することにより、非導電材料が硬化し各層が形成されることとなる。その後基板を剥離することにより、図2に示す透明導電体20が得られる。
【0095】
本実施形態に係る透明導電層14を構成する材料中の導電粉11の含有率は10体積%〜70体積%であることが好ましい。配合量が10体積%未満であると、透明導電体の抵抗値が高くなる傾向にあり、配合量が70体積%を超えると、透明導電層14の機械的強度が低下する傾向にある。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0097】
例えば本発明の透明導電材料は、必要に応じて、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤等を含有してもよい。
【0098】
本発明の透明導電材料は、更にアクリル樹脂等の粘度上昇剤を含有してもよい。この場合、この透明導電材料は、透明導電ペーストとして機能し得る。かかる透明導電ペーストによれば、高湿度環境下においても、電気抵抗値の経時的変化を十分に防止することができる。なお、透明導電ペーストは一定の粘性を有するため、基板に付与する際に均一に付与することができ、狭小部や凹凸部であっても容易に付与することができる。この透明導電ペーストは、上述した分散液に、アクリル系樹脂等の粘度上昇剤を添加し乾燥させることにより得ることができる。
【0099】
上記透明導電体20の製造方法の説明において、透明導電材料として、高エネルギー線によって硬化しうるものを含むものが用いられているが、その代わりに熱によって硬化しうるものを含むものが用いられてもよい。
【0100】
また、透明導電体20において、透明導電層14における導電粉11を除いた部分、及び高分子架橋体層15は、上記第1形態に係る透明導電材料から導電粉を省いたものを用いて形成されているが、上記第2形態に係る透明導電材料から導電粉を省いたものを用いて形成してもよい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
(導電粉の作製)
塩化インジウム四水和物(関東化学社製)19.9g及び塩化第二錫(関東化学社製)2.6gを水980gに溶解した水溶液と、アンモニア水(関東化学社製)を水で10倍に希釈したものとを調製しながら混合し、白色の沈殿物(共沈物)を生成させた。
【0103】
生成した沈殿物を含む液体を遠心分離機で固液分離し固形物を得た。これを更に水1000gに投入し、ホモジナイザーで分散して、遠心分離機で固液分離を行った。分散及び固液分離を5回繰り返したのち、固形物を乾燥し、窒素雰囲気中、600℃で1時間加熱して、ITO粉(導電粉)を得た。このITO粉及び水から混合水を調製した。このときの混合水中に含まれる導電粉の含有率は1質量%となるようにした。そして、その混合水についてpHメーターを用いてpHを測定したところ、その混合水のpHは3.0、塩素は検出限界以下であった。
【0104】
(実施例1)
上記ITO粉(導電粉)17.75g、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(添加剤、新中村化学社製)3g、アクリルポリマー(反応性化合物、平均分子量約5万、ビニル基(反応性官能基)として平均50基、トリエトキシシラン(有機基)として平均25基含有)6g、A−TMMT(多官能性有機化合物、新中村化学社製)3g、アセトン30g(関東化学社製)、UV重合開始剤0.24g(チバスペシャリティケミカル社製)、を混合し、ホモジナイザーで分散することによって、ペースト状の透明導電材料を得た。この透明導電材料をスピンコート法にて50mm角のガラス基板に塗布後、アセトンを除去し、窒素雰囲気中で高圧水銀灯から発生したUV光(強度160W/cm)を照射した。更に120℃で1時間加熱処理を行い、透明導電膜を得た。
【0105】
(実施例2)
添加剤を添加せず、A−TMMTの添加量を6gに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0106】
(実施例3)
反応性化合物の平均分子量が約1万でビニル基として平均2基、トリエトキシシランとして平均5基に変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0107】
(実施例4)
反応性化合物の平均分子量が約8万でビニル基として平均80基、トリエトキシシランとして平均60基に変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0108】
(実施例5)
多官能性有機化合物をテトラエチレングリコールジアクリレートに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0109】
(実施例6)
添加剤をステアリルアクリレートに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0110】
(実施例7)
反応性化合物の平均分子量が約1万でビニル基として平均10基、トリエトキシシランとして平均2基に変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0111】
(比較例1)
反応性化合物、多官能性有機化合物は添加せず、添加剤として、メタク リル酸メチルを12gに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0112】
(比較例2)
反応性化合物の平均分子量が約5万で、ビニル基として平均50基、添加量が6gに変更し、多官能性有機化合物、添加剤の代わりに、メタクリル酸メチルを6gに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0113】
(比較例3)
多官能性有機化合物を添加せず、反応性化合物と添加剤をそれぞれ6g添加したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0114】
(比較例4)
反応性化合物を添加せず、添加剤と多官能性有機化合物をそれぞれ6g添加したこと以外は実施例1と同様にして透明導電膜を得た。
【0115】
[評価方法]
(透明導電膜の抵抗評価)
上記のようにして得られた透明導電膜について、以下のようにして電気抵抗の評価を行った。すなわち、上記のようにして得られた透明導電膜の予め定められた測定点につき、四端子四探針式表面抵抗測定器(三菱化学社製MCP−T600)で電気抵抗の値を測定し、その測定値を初期電気抵抗値とした。その後、この透明導電膜を60℃95%RH環境下で1000時間放置し、それを取り出した後、この透明導電膜が室温まで下がったところで、加湿前に定めた測定点において再度電気抵抗の値を測定し、これを加湿後電気抵抗値とした。そして、下記式:
変化率=加湿後電気抵抗値/初期電気抵抗値
に基づいて変化率を算出した。結果を表1に示す。
【表1】

【0116】
表1から明らかなように、実施例1〜7は、比較例1〜4に比べて電気抵抗値変化が小さく、電気抵抗値の上昇が十分に抑制できていることが分かった。以上の結果より、本発明の透明導電材料によれば、高湿環境下であっても、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の透明導電体の第1実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の透明導電体の第2実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0118】
10,20…透明導電体、11…導電粉、12…高分子架橋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粉と、
前記導電粉と結合可能な有機基及び複数の反応性官能基を有する反応性化合物と、
前記反応性化合物と結合可能な多官能性有機化合物と、
を含有する透明導電材料。
【請求項2】
前記反応性化合物が1万以上の重量平均分子量を有する高分子化合物である請求項1記載の透明導電材料。
【請求項3】
単官能性有機化合物からなる添加剤を更に含む請求項1又は2に記載の透明導電材料。
【請求項4】
前記反応性化合物が分子中に更に疎水基を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項5】
前記疎水基がアリール基又はアルキル基である請求項4記載の透明導電材料。
【請求項6】
前記反応性官能基のうち少なくとも一つがビニル基である請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項7】
前記有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基からなる群より選ばれる基である請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項8】
前記反応性化合物が分子中に更にカルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる親水基を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項9】
導電粉と、
前記導電粉と結合可能な有機基及び複数の反応性官能基を有する反応性化合物と、
前記反応性化合物と結合可能な多官能性有機化合物とを、
前記導電粉と前記有機基とが結合し、かつ
前記反応性化合物と前記多官能性有機化合物とが結合するように反応させることにより得られる透明導電体。
【請求項10】
前記反応性化合物が1万以上の重量平均分子量を有する高分子化合物である請求項9記載の透明導電体。
【請求項11】
単官能性有機化合物からなる添加剤を、前記導電粉、前記反応性化合物及び前記多官能性化合物と共に反応させることにより得られる請求項9又は10に記載の透明導電体。
【請求項12】
前記反応性化合物が分子中に更に疎水基を有する請求項9〜11のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項13】
前記疎水基がアリール基又はアルキル基である請求項12記載の透明導電体。
【請求項14】
前記反応性官能基のうち少なくとも一つがビニル基である請求項9〜13のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項15】
前記有機基がアルコキシシラン基及びシリルアミン基からなる群より選ばれる基である請求項9〜14のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項16】
前記反応性化合物が分子中に更にカルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びアミン誘導体基からなる群より選ばれる親水基を有する請求項9〜15のいずれか一項に記載の透明導電体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−92869(P2006−92869A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275717(P2004−275717)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】