説明

透明導電積層体及びタッチパネル

【課題】 透明導電積層体全体の表面が略均等に透明な視認状態を呈することが可能とし、また構成物質から析出したオリゴマーが他の積層物へ悪影響を及ぼすような現象が生じないようにした透明導電性積層体を提供する。
【解決手段】 第1基体/有機誘電体層/無機誘電体層/導電層、という構成を有してなる透明導電積層体であって、導電層の一部をエッチングした後に、該エッチングを施して導電層を除去した箇所である除去部と、該エッチングを施した後も導電層が残留している箇所である残留部と、それぞれの箇所における透過色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた特定式による値で2以下であり、前記除去部と前記残留部と、それぞれの箇所における反射光の反射色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた特定式による値で5以下である、という機能を有してなる透明導電積層体とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明導電積層体及び該透明導電積層体を用いたタッチパネルに関するものであり、より具体的には高分子樹脂フィルムの表面に透明導電膜を有する、耐久性を向上させた透明導電積層体及び該透明導電積層体を用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今様々な日常生活の中で、種々多用なタッチパネルを用いた製品が普及している。例えば銀行のATMや鉄道の券売機、カーナビゲーションのディスプレイ部分やオフィス用コピー機の操作部分等に用いられており、そして今や携帯電話のような携帯用小型モバイル機器における画像・情報表示部分を機器操作装置部分として兼用するためにタッチパネルが用いられているが、これらのタッチパネルには透明導電膜が透明電極として用いられている。
【0003】
この透明導電膜は従来基板としてガラス板を利用することが多かった。そしてこの透明導電膜を積層した透明導電積層体は、まず基板であるガラス板の表面に導電性のある導電性層を積層し、次いで導電性層を積層した基板ごと加熱処理を施すことにより導電性層を透明なものとしてこれを透明導電膜とする、という工程により得られるものであったが、この工程において高熱処理を施す際に、それに耐えうる基板としてガラス板が最も適しているのでガラス板を基板として用いていた。
【0004】
しかし昨今、透明導電膜を利用する機器の軽薄短小化が急激に進むようになると、例えば昨今の小型軽量化・薄型化されたモバイル機器や携帯電話等に見られるように、透明導電膜を備えた機器は従来静置された状況で利用されていたところ、屋外での利用も活発なものとなり、それに伴い、軽量であることや落下などの衝撃や外圧等に対しても耐性のある透明導電膜であることが求められるようになり始めた。そこで基板として用いられる物質は徐々にガラス板からプラスチックフィルムへと移行するようになってきた。
【0005】
この基板として用いられるプラスチックフィルムは、高熱処理にもある程度耐えられる高分子樹脂を原材料としており、さらに、ある程度の厚みや分子量のある高分子樹脂であれば、高熱処理の際にもある程度耐えられるものが開発されてきている。
【0006】
また従来は加熱されることで透明な導電膜となる導電性層に関しても、従来よりもさらに低い加熱温度であっても透明導電膜と出来るように工夫がなされてきている。
【0007】
そのような状況によって、現在ではプラスチックフィルムを基板とした透明導電積層体が種々提案されるようになってきた。
【0008】
例えば特許文献1に記載された透明導電積層体であれば、透明基体/透明粘着材層/フィルム基材/透明誘電体薄膜/透明導電性薄膜、という構成を有することより、これをタッチパネルに用いた場合、導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上効果を得られる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−222352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
確かにこの特許文献1にて開示された発明によれば、透明基体/透明粘着材層/フィルム基材/誘電体薄膜/透明導電膜、という構成を有することで、割れにくい透明導電性積層体を得られていた。しかしその一方でフィルム基材/誘電体薄膜/透明導電膜という構成を有するが故に、例えばこれを製造する時の加熱工程時や、透明導電膜が不要な部分であってこれをエッチングした箇所などからオリゴマーが析出する場合があり、この析出したオリゴマーの存在故に透明誘電体薄膜や透明導電性薄膜を積層する際にこれらの膜を汚染してしまう、膜が汚染されることにより本来発揮すべき性能が充分に発揮されない、又は効果を持続させられない、等の問題が生じることがあった。
【0011】
さらにフィルム基材とその表面の積層物や、積層物同士の密着性が充分でないために最終製品としての信頼性にも問題が生じることがあった。例えば特許文献1に記載された透明導電性積層体の透明誘電体薄膜/透明導電性薄膜という構成部分において、加熱工程時にオリゴマーの析出を完全に押さえられないという問題が生じ、ITOの耐久性が劣化する、という現象が生じることがあった。
【0012】
また全体としてモバイル機器等の種類が多様なものとなった結果、透明導電性フィルムに要求される内容も多岐にわたるようになってきたが、特許文献1に開示された発明であれば、回路形成部分では透明導電性薄膜の積層部分とこれが積層されていない部分との間でいわゆる色目の差が生じてしまう。そして外見上本来であれば均等に透明であることが望まれる透明導電積層体の外観にあって、透明導電積層体の回路を構成する透明導電性薄膜の積層部分がある程度の輪郭をもって視認できてしまう、といった事態が生じ始めている。即ち一見して回路部分があたかも浮き上がって見える、といった視認性阻害と言える現象が生じてしまい、問題であった。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明導電積層体全体の表面が略均等に透明な視認状態を呈することが可能とし、また構成物質から析出したオリゴマーが他の積層物へ悪影響を及ぼすような現象が生じないようにした透明導電性積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するために、本願発明の請求項1に係る発明は、第1基体の表面に、少なくとも有機物質による有機誘電体層と、無機物質による無機誘電体層と、導電層と、をこの順に積層してなる、透明導電積層体であって、前記透明導電積層体の前記導電層の一部をエッチングした後に、該エッチングを施して前記導電層を除去した箇所である除去部と、該エッチングを施した後も前記導電層が残留している箇所である残留部と、それぞれの箇所における透過色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた特定式による値ΔEが2以下であり、前記除去部と前記残留部と、それぞれの箇所における反射光の反射色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた下記式による値ΔEが5以下であり、前記除去部におけるb*値と、前記残留部におけるb*値とが、共に2以下であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の透明導電積層体であって、前記透明導電積層体の導電層積層側面とは反対側の表面側に、円の半径が8mmの円柱を沿わせた時の、前記透明導電積層体における導電層の延長率が2%以内であること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の透明導電積層体であって、前記第1基体の導電層積層側面とは反対側にハードコート層を積層してなること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記有機誘電体層の光線屈折率nが1.4以上1.6以下であること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記第1基材がポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、又はノルボネン系フィルムの何れかであり、前記無機物質による無機誘電体層が、酸化珪素による層であり、前記導電層が、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)又はガリウム添加酸化亜鉛(GZO)の何れか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記第1基材がポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、又はノルボネン系フィルムの何れかであり、前記無機物質による無機誘電体層が、酸化珪素による層であり、前記導電層が、酸化インジウムスズ(ITO)であり、前記導電層を構成するITO層は非晶質ITO層であるが、前記透明導電積層体をアニールすることで前記非晶質ITO層が結晶化ITO層となるものであること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記有機誘電体層の厚みが3nm以上78nm以下であり、前記無機誘電体層の厚みが2nm以上77nm以下であり、前記有機誘電体層と前記無機誘電体層の厚みの合計が5nm以上80nm以下であること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記第1基体の導電層積層側の面とは反対表面側に、さらに少なくとも粘着層と、キャリアフィルムと、をこの順に積層してなること、又は前記第1基体の導電層積層側の面とは反対表面側に、さらに少なくとも粘着層と、セパレータと、をこの順に積層してなること、又は前記第1基体の導電層積層側の面とは反対表面側に、さらに少なくとも粘着層と、第2基体と、ハードコート層と、をこの順に積層してなること、を特徴とする。
【0022】
本願発明の請求項9に記載のタッチパネルに関する発明は、本願発明の請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の透明導電積層体を用いてなること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本願発明に係る透明導電積層体であれば、第1基体/有機誘電体層/無機誘電体層/導電層、という構成を有した透明導電積層体において導電層をエッチングして回路を形成すると、導電層が除去された除去部と、回路として導電層が残存している残留部、それぞれの箇所における透過色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた特定式による値で2以下であり、またそれぞれの箇所における反射光の反射色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた特定式による値で5以下となるので、透明導電積層体全体の厚みを薄くし、なおかつ導電層をエッチングして回路を形成しても、回路部分が浮き出て見えてしまうことがなくなり、結果として透明導電積層体全体の表面が略均等に透明な視認状態を呈することが可能となる。
【0024】
また第1基体の表面に、少なくとも有機物質による有機誘電体層と、無機物質による無機誘電体層と、導電層と、をこの順に積層した構成を有する透明導電積層体とすると同時に、この透明導電積層体における導電層の延長率が、透明導電積層体のハードコート層側に円の半径が8mmの円柱を沿わせた時に2%以内となるようにしたので、導電層が割れにくくなり、その結果導電層部分にクラックが生じる率を低く出来るようになる。つまり透明導電積層体のハードコート側からタッチペン等で押下した時に、その反対側の面に位置する導電層はさほど伸長しないものになり、その結果クラックが生じにくくなる、という透明導電積層体とすることが出来るのである。
【0025】
そしてこれらの性能を同時に発揮する透明導電積層体とすれば、視認性も好適な状態を維持し、また導電層が割れないことより長期間にわたり性能を維持、発揮できる透明導電積層体とすることが出来るようになるのであり、これをタッチパネルに用いた場合ではタッチパネルの性能も当初の性能を長期にわたり維持できるものとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明に係る透明導電積層体につき、第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る透明導電積層体は、基本的に次のような構成である。即ち、第1基体の表面に、少なくとも有機物質による有機誘電体層と、無機物質による無機誘電体層と、導電層と、を積層してなる構成を有する透明導電積層体である。
【0027】
以下、順に説明をしていく。
まず最初に第1基体であるが、これは例えば高分子樹脂による成型体であって、より具体的には透明高分子樹脂フィルムであることが考えられる。つまりフィルム状とすることで様々な面、平面や曲面に対し本実施の形態に係る透明導電積層体を容易に用いることが可能となるからである。この第1基体として用いられる高分子樹脂フィルムは、従来公知の透明導電積層体において一般的に用いられるフィルムであってよく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ノルボネン系フィルム等であることが考えられるが、本実施の形態においてはPETフィルムを用いることとする。PETフィルムは透明導電積層体の基体として広く利用されているものであり、その取扱等についてもすでに充分周知であり、本実施の形態に係る透明導電積層体を実際に製造するに際しても取扱が用意であり、作業がしやすいという利点があると言える。
【0028】
この第1基体の厚みは25μm以上125μm以下であることが好ましいが、これは本実施の形態においては後述するように基体と言える部分が2つ存在することを想定した上で、得られる本実施の形態に係る透明導電積層体の全体の厚みを出来るだけ薄いものにするために125μm以下とすることが好ましく、しかし必要以上に薄い基体としてしまうと、後述の積層物を積層するに際して基体それ自身が破損してしまう、又は得られた本実施の形態に係る透明導電積層体を繰り返し使用する場面においてすぐ基体が破損してしまい、即ち透明導電積層体としての機能が破損してしまうため、25μm以上の厚みが必要なのである。
【0029】
本実施の形態に係る透明導電積層体では、この第1基体の表面に有機物質による有機誘電体層が積層されている。そこで次にこの有機物質による有機誘電体層につき説明する。
【0030】
先に述べたような第1基体を構成する高分子樹脂フィルムは通常、一般的に加熱をするとオリゴマーが析出することは知られているところである。
【0031】
例えばこのオリゴマーが、透明導電積層体において広く用いられる後述するような無機物質による無機誘電体層や導電層を構成する物質と接すると、それらの物質を破損することが知られており、即ち無機誘電体層や導電層に到達したオリゴマーはこれらの層の性質を劣化させてしまうことが知られている。
【0032】
そこで第1基体から析出するオリゴマーが無機誘電体層や導電層まで浸透してしまわないように、その間に防御壁とも言うべき層を積層することにより無機誘電体層や導電層を保護することを目的として、通常アンダーコート層と称される層を形成することが行われる。これを本実施の形態では有機物質による有機誘電体層とする。
【0033】
またこの有機物質による有機誘電体層は上記の目的の他にも、第1基体表面をより平滑なものとすることにより無機物質による無機誘電体層を積層しやすくする、第1基体と無機物質による無機誘電体層との密着性を向上させる、という目的も有している。
【0034】
このような目的を達し、効果を得るためには、有機物質としてシロキサン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、又はチタネート系樹脂等をその原材料として用いることが考えられるが、ここではシロキサン系樹脂を用いることとする。そしてシロキサン系樹脂の中でも、有機官能基を有したシロキサン系樹脂である、シロキサン結合を有するシランカップリング剤を用いることとする。しかし必ずしも上述の物質に制限するものではなく、例えば上述した物質に無機微粒子を含有させてあっても構わない。
【0035】
ここで有機物質による有機誘電体層につきさらに説明を加える。
後述するように、本実施の形態においてこの有機誘電体層のさらに表面には例えば酸化珪素等のような無機物質による無機誘電体層を積層する。ここで、従来有機誘電体層を得るためには、本来有機官能基を有さないテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を従来公知のウェットコーティング法により積層して緻密なシロキサン結合を有する膜を得ていたが、この場合層間密着性や延伸時におけるクラック発生などの問題点を生じることが判明した。そこで本願発明に係る発明者は可撓性のある有機官能基を含むシロキサン結合膜を用いることが最も本願発明の目的に合致すると判断したのである。
【0036】
そして有機誘電体層として有機官能基を有するシロキサン系樹脂を用いることにより、本願発明に係る製造方法により得られる透明導電積層体を実際に使用しても従来品に比してクラックが生じることがなくなり、また層間密着力も充分に確保されることとなり、好ましい結果を得られる。また有機誘電体層をウェットコーティング法により積層するものとしたことで、有機誘電体層による層間密着性が充分に確保され、また他の層への効果も充分に波及させることが出来るようになる。
【0037】
また本実施の形態では有機官能基を有するシロキサン系樹脂を用いることが好適でありこれを用いることとしているが、これはシロキサン系樹脂をバリア層として積層することにより、まずその直下に存在する金属蒸着層を酸化や汚れ、傷つきから保護するのみならず、本実施の形態に係るフィルム全体における各層の層間密着力を維持しなおかつ可撓性を保持する、という種々の目的を同時に達することが出来るようになる。
【0038】
つまり層間密着力を維持することで特に金属蒸着層の剥離・脱落等の発生を防止し、さらには可撓性を保持することにより本実施の形態に係る透明導電積層体を実際にタッチパネル等に用いてもクラックの発生を防止することが可能となるのである。
【0039】
尚、有機誘電体層とする物質を選定するにあたっては、上述の通り本実施の形態では第1基体にPETフィルムを用いることとしているが、PETフィルムとの相性及び後述する無機誘電体層との相性、即ちこれら2つの層に対して上述した主な効果、つまり第1基体から析出するオリゴマーの無機誘電体層への浸透を防御すると同時に、第1基体と無機誘電体層との密着性を好適なものにする、という効果を発揮しやすい物質であることが大切である点を付言しておく。
【0040】
有機誘電体層は本実施の形態においてウェットコーティング法により第1基体であるPETフィルム表面に積層されるが、その厚みは3nm以上78nm以下であることが望ましい。3nm以下であれば上述のオリゴマー防止効果が殆ど得られず、また78nmを超えるとITOパターンの色目差が大きくなってしまうからであり、これらの現象は発明者が見いだした結果によるものである。
【0041】
また本実施の形態における有機誘電体層の光線屈折率nが1.4以上1.6以下であることが好適であるが、これはより一層本実施の形態に係る透明導電積層体にあってより一層好ましい色目を得ることが出来る、ということを発明者が見いだした結果によるものであることもあわせて述べておく。
【0042】
本実施の形態に係る透明導電積層体ではこの有機誘電体層の表面に無機物質による無機誘電体層を積層する。そしてこの無機物質による無機誘電体層としては当然誘電体である物質を用いればよく、本実施の形態では酸化珪素を用いることとする。
【0043】
この酸化珪素による無機物質による無機誘電体層は、従来公知のスパッタリング法等のいわゆるドライコーティングと称される手法で前述の有機物質による有機誘電体層表面に積層される。そしてその厚みとして本実施の形態では2nm以上77nm以下であることが好適である。また本実施の形態において、無機誘電体層と有機誘電体層とは隣接して積層されているが、これら2つの層の厚みの合計が本実施の形態では5nm以上80nm以下であることが好適である。これらの厚みに関しては発明者が種々検討した結果見いだしたものである。
【0044】
そしてこの酸化珪素による無機物質による無機誘電体層の表面に導電層を積層するのであるが、この導電層としては酸化インジウムスズ(ITO)や酸化アルミニウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、又はアルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)やガリウム添加酸化亜鉛(GZO)等のような酸化亜鉛系材料、等を用いることが考えられる。そして本実施の形態ではITOを積層するものとする。そしてこの積層方法もやはり従来公知のスパッタリング法等のいわゆるドライコーティング法によればよく、その積層される厚みは13nm以上30nm以下であることが好適であることを発明者は見いだした。
【0045】
さらに発明者は、導電層を構成するITO層は当初積層直後は非晶質なITO層であるが、本実施の形態に係る透明導電積層体をアニールすることでこの非晶質ITO層が結晶化ITO層となるようにすることがより一層効果的であることを見いだした。よって、本実施の形態における導電層は上記の通り、積層直後は非晶質ITO層であるものの、透明導電積層体をアニールすることでこれを結晶化ITO層となるものであることとする。
【0046】
ここで酸化珪素による無機誘電体層とITOによる導電層とに関し簡単に述べる。
そもそも導電性を向上させるためにはITOの結晶性を向上させることが必要である。逆に言えばITOの結晶性が高いほど導電性が良好なものとなる。
【0047】
しかし基材であるプラスチックフィルムの表面に直接ITOを積層しようとすると、積層工程に際して生じる高熱によりプラスチックフィルムから水や有機溶剤などのITOの結晶性にとっては不要な不純物質が析出してしまう。そこで予めITOの積層工程時においてプラスチックフィルムから析出する不純物質がITOに悪影響を及ぼさないようにするバリアとしても作用するように無機物質による無機誘電体層を設けておくと好ましいと言える。
【0048】
そしてそのために、本実施の形態においては、基材フィルムであるPETフィルムとITO膜との間に無機物質による無機誘電体層を設けることが考えられ、また実際に行っている。しかし無機物質による無機誘電体層として利用可能な誘電性を有する物質を無分別に用いても、やはりITO膜の導電性は必ずしも向上しない。
【0049】
そこで本実施の形態に係る発明者がITOを用いた導電層と相性のよい誘電体物質に関し種々選択検討した結果、酸化珪素を層としたその表面にITO膜を積層するとITOの結晶性が向上することがわかった。これは酸化珪素層の表面が比較的滑らかであり、その表面にITOを積層することでITOを構成する分子が比較的規則正しく積み重ねられるため、それがひいては結果としてITOの結晶性を向上させているものと考えられる。そして酸化珪素を積層することで、この層が当然無機物質による無機誘電体層としての作用も発揮し、上述したバリア性も発揮する。
【0050】
このように酸化珪素層の表面にITO膜を積層することによりITOの結晶性が向上し、その結果ITO膜の導電性も良好なものとなることが判明したので、本実施の形態においても無機物質による無機誘電体層として酸化珪素を、導電層としてITOを、それぞれ用いているのである。またITO以外の前述した物質等を用いても同様の現象を得ることが出来た。
【0051】
また後述するように、通常透明導電積層体の最表面には全面的に導電層が存在するのではなく必要な箇所しか存在していない。即ち導電層を回路として用いることより、回路となる部分には導電層が存在するが回路ではない部分には導電層は不要である。そのため一般的には導電層を積層した後にエッチング処理を施すことにより回路として必要な部分にのみ導電層を残し、不要な部分の導電層は全て除去される。
【0052】
このような処理が施された後のことを考えると、仮にバリア層としても作用する無機誘電体層を設けておかなければ、エッチング処理により導電層を除去された部分には基材となるプラスチックフィルムがそのまま露出することになるが、この露出した部分から経時変化により前述した不純物質が析出する現象が生じる。そして不純物質が析出することにより、本実施の形態に係る透明導電積層体が例えば白濁する、変質する、等の状態となってしまうことが考えられ、またこれを例えばタッチパネルの部材として用いた場合には、タッチパネルの性質劣化を招くことになりかねない。さらに本実施の形態においてはプラスチックフィルムの表面に有機誘電体層が積層されているが、これだけでは係る事態の防止に対しさほどの効果を発揮しない。
【0053】
かような想定される事態を考慮した場合、導電層がエッチング処理により除去された部分から析出しかねないプラスチックフィルムからの不純物質による悪影響を防ぐためにも、バリア層としても作用する無機物質による無機誘電体層が必要であると言える。
【0054】
このようにITOは、PETフィルム等のプラスチックフィルムから生じるオリゴマーの影響を受けてその本来有する性質を劣化させてしまうため、本実施の形態では前述したようにバリア層、防御壁としても作用する無機物質による無機誘電体層を積層しているのである。
【0055】
尚、より一層の軽薄短小化に応じるため、等の理由により本実施の形態に係る透明導電積層体も薄くするため、層間密着性の良好な物質の組み合わせを選択することにより上述したような有機誘電体層を省略することも考えられるかもしれないが、その場合でも上述した目的を達するために無機誘電体層を積層する必要があることを述べておく。
【0056】
また以上説明した本実施の形態に係る透明導電積層体において、第1基材の導電層積層側面とは反対側の面、即ち第1基体の、有機誘電体層/無機誘電体層/導電層と積層してなる側とは反対側の表面にハードコート層を積層することも考えられる。特にITO等による導電層はクラックが生じやすい層であるため、本実施の形態に係る透明導電積層体の導電層積層側面とは反対側面にハードコート層を積層しておくことで、ハードコート層側から本実施の形態に係る透明導電積層体を押下しても、押下側面とは反対側面の導電層にクラックが生じることを防止することが可能となるためである。
【0057】
本実施の形態では係るハードコート層は必須ではないものの、上記のように設けておくことで導電層をよりよく保護できるようになるので、以下本実施の形態ではこのハードコート層が積層されている構成、即ちハードコート層/第1基材/有機導電対層/ムキ導電対層/導電層という構成であるものとして説明を続けることとする。
【0058】
尚、このハードコート層は従来公知のものであってよい。例えば紫外線硬化型樹脂や多官能アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、無機有機ハイブリッド樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等のハードコート層に従来公知に用いられてなる樹脂を、例えば従来公知のウェットコーティング法により積層するものであってよい。当然このハードコート層は透明導電積層体の透明性を損なうものであってはならない。またその厚みは1μm以上10μm以下であれば好適なものとなせる。そして本実施の形態では、紫外線硬化型樹脂をウェットコーティング法により、第1基材の表面に厚みが3μmとなるように積層するものとする。
【0059】
以上のように構成される本実施の形態に係る透明導電積層体において、さらに重要なことは視認性が良好である、即ち一見すると表面が均等に透明であるということ、また実際に押下した場合に誘電層が容易に割れないこと、の2点である。そこで次にこれらの重要な点に関し説明する。
【0060】
まず視認性が良好である、という点につき簡単に説明する。
従来の透明導電積層体では前述した通り最表面には均等に導電層が積層されているのではなく、回路を形成するために必要な箇所を残し、それ以外の部分、即ち回路を形成するために不要な導電層はエッチングなどの処理により除去されるのであるが、係るエッチングによる除去が実行された後の透明導電積層体の略側面視における全体の厚みを考えると、導電層が残留している残留部と、導電層が除去された除去部と、それぞれの箇所において導電層の有無の分だけ厚みに差が生じる。
【0061】
そしてその厚みの差が透明導電積層体における残留部から入射した光と除去部から入射した光との行路差となり、つまりそれぞれの部分における光の透過率及び反射光の色目が異なることとなる。そして透過率及び色目が異なる、ということは概して述べるならば除去部と残留部とで透過率及び色目に差が存在することにより、これらの差が大きければ大きいほど残留部が視認できる状態となるのである。
【0062】
つまり残留部も除去部もどちらも概して述べれば略透明な状態と言えるかもしれないが、人の目で確認できる程度に視認差が生じることで、本来であれば一見すると全面的に略均等に透明であることが望まれる透明導電積層体にあって、回路を形成する部分である残留部が浮き出て見える状態となってしまい、即ち略均等に透明であるとは言えない状態となる。このように本来であれば全面が均等に視認できなければならない透明導電積層体にあって、あたかも回路形態を示す残留部が見える状態となり、これが視認性を阻害する要因となってしまうのである。
【0063】
しかしさらに詳細に検討するに、導電層部分について膜厚を制御しようとするならば、係る部分が導電性に関わる重要な箇所であり、これを制御することにより視認性を制御することを試みることは必ずしも好ましいこととは言えない。
【0064】
そこで本実施の形態においては、導電層部分ではなく無機誘電体層と有機誘電体層部分の合計厚みを制御することにより、入射する光の行路差を制御することを試みた。
【0065】
そして本願発明に係る発明者が種々検討した結果、エッチングを施して導電層を除去した箇所である除去部と、エッチングを施した後も導電層が残留している箇所である残留部と、それぞれの箇所における透過色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた下記式による値ΔEが2以下であり、またそれぞれの箇所における反射光の反射色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた下記式による値ΔEが5以下である、という状態を呈することが出来るようになれば上述した視認性阻害といった現象の発生を抑制できることがわかったのである。
【0066】


(式)
但し
ΔL=(除去部におけるL*値)−(残留部におけるL*値)
Δa=(除去部におけるa*値)−(残留部におけるa*値)
Δb=(除去部におけるb*値)−(残留部におけるb*値)

【0067】
ちなみに、透過色目差においてΔEが2以下であるならば、通常人間の目からは全体として黄色味が感じられないレベルの透過光であると言え、反射色目差においてΔEが5以下であるならば、全体が均一に見えるレベルであると言え、以上全体として除去部と残留部との境目が人間の目では判別し難いほどに差異が存在しない状態に至っている、と言える。
【0068】
そして本実施の形態において無機誘電体層と有機誘電体層との2層の厚みの合計が5nm以上80nm以下であるならば、上記式を満足させることが可能となることを本願発明に係る発明者は見いだしたのである。そしてさらに有機誘電体層の光線屈折率nが1.4以上1.6以下とすれば,より一層好適に上記式を満足させる結果を得やすいこともあわせて発明者は見いだしたのである。
【0069】
次に導電層が割れにくい、という点につき説明する。
本実施の形態において述べる導電層が割れにくいという現象とは、透明導電積層体のハードコート層側に、円の半径が8mmの円柱を沿わせた時の、前記透明導電積層体における導電層の延長率が2%以内であること、を指すものとする。
【0070】
これに関しさらに説明すると、例えばペン先の球が半径0.8mmのタッチパネル用タッチペンを想定した場合、このペンで本実施の形態に係る透明導電積層体を押下げると、ペン先に接する透明導電積層体の表面、即ちハードコート層側の表面から透明導電積層体の厚み方向に向けて力が加えられることになる。すると、ペン先とは接していない透明導電積層体の反対側表面、即ち誘電層表面がペン先による圧力の影響で膨張するかのように延伸されることになる。
【0071】
さらに説明を続ける。
まずペン先によりハードコート層面が押下げられる。するとそれに伴い透明導電積層体全体が押下げられ、押下げられた部分が押下中心部分から外周方向に向けてあたかも膨張するかのように延伸する。しかしこの延伸する長さは、ペン先が接している面における延伸長さに比べて透明導電積層体に厚みがある分だけ余分に延伸することになる。
【0072】
例えば、タッチペンのペン先球体半径が0.8mmであり、透明導電積層体全体の厚みが25μmであるとすると、タッチペンで透明導電積層体のハードコート層側から押下げると、ハードコート層面は1.6πmm伸びるのに対し、反対側の表面である導電層表面は1.65πmm伸びることになる。これは、ペン先球体の中心部からハードコート層表面までの距離は球体半径と同一なので0.8mmであるのに対し、導電層表面までの距離は透明導電積層体全体の厚み分だけ加算されるので、即ち0.8mmに25μmが加えられた距離となる。そして球体の押下により延伸するとは、即ち球体の球面に沿って透明導電積層体が伸びていく、という現象に他ならないのである。
【0073】
さて、以上を踏まえて再び本願発明において述べる伸長率につき考えると、球体の接しているハードコート層の延伸量Xに対し、反対側の導電層における延伸量YがXの102%以内であること、つまりXの伸びた量に比べて余分に延伸する量が2%以下であること、が重要なのである。
【0074】
この2%以下とすることが即ち本実施の形態における透明導電積層体を構成する導電層がさほど延伸しないことを本願発明に係る発明者は見いだしたのであり、即ち導電層がさほど延伸しないためこれを構成する物質が延伸することにより割れてしまう、といった現象が生じることを防止、抑制することが可能となることを見いだしたのである。そして導電層が係る状況において割れないということは、例えばタッチパネル等の先が細かなもので本実施の形態に係る透明導電積層体をハードコート層側から押したとしても、係る行為によって反対面側の導電層表面が引き延ばされ、そしてこの引き延ばしに対し導電層を構成する、例えばITO等の物質に追従性がないが故に割れが生じる、という現象を回避することが可能となるのである。
【0075】
このように先の細いものでハードコート層側から押下しても導電層に割れが生じない、ということは導電層の性能が損なわれることがない、ということであり、即ち透明導電積層体の有する導電性という性能を維持することが出来る、ということが言えるのである。
【0076】
以上の理由により、本実施の形態に係る透明導電積層体をタッチパネルに用いたとしても導電層に割れが生じないので、タッチパネルの透明導電性という性能が損なわれることがなく、好適なものとすることが出来るのである。
【0077】
以上、説明した本実施の形態に係る透明導電積層体では、色目を調整することも可能であり、導電層を割れにくいものとすることも可能であり、ひいては両方の性質を同時に呈することが出来るようにすることも可能であるが、これに関してはここではその詳述は省略することとする。
【0078】
以上の通り、本実施の形態に係る透明導電積層体であれば、導電層部分が例えば浮き出ているかのような視認性を呈することなく、即ち平面全体にわたり略均一に透明であり、またタッチペンなどの先細なもので押下げた場合であっても導電層に割れが生じにくい、といった特性を有した透明導電積層体とすることが出来、またこれをタッチパネルに用いることで、良好な視認性を呈したり、誘電層が割れにくいことより性能を長期にわたり維持できる、また構成によっては双方の特性を活かしたタッチパネルを得ることが出来るようになる。
【0079】
以上、本願発明に係るハードコート層/第1基体/有機誘電体層/無機誘電体層/導電層という構成を有する透明導電積層体に関し説明をした。理論的にはこれだけでも当然透明導電積層体としての効果・作用を発揮するものであり、実際に軽薄短小を求められる電気産業界にあってこれをタッチパネル用電極として用いるならば、全体の厚みをより薄く出来る、という利点もある。しかし実際には耐久性の面で問題が生じることも考えられるので、本実施の形態では第1基体のハードコート層が積層されている側の面に、主にクッション性を向上させるために粘着層を介して第2基体を貼着することが考えられる。以下この場合につき説明をする。尚、第1基体にハードコート層が積層されていない場合であっても考え方は同様であることを予め断っておく。
【0080】
第2基体としては、第1基体の場合と同様透明な高分子樹脂フィルムであることが好ましく、より具体的には従来公知の透明導電積層体において一般的に用いられるフィルム、例えば第1基体の場合と同様、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、又はノルボネン系フィルム等であることが考えられるが、本実施の形態においては第1基体と同様にPETフィルムを用いることとする。またその厚みは25μm以上125μm以下であることが好ましい。
【0081】
このように第1基体と第2基体とを同一の透明高分子樹脂フィルムとすることで、実際の製造が容易でありまたその管理も容易なものとすることが出来、さらに得られる本実施の形態に係る透明導電積層体の扱いも容易なものとすることが出来る、と言える。
【0082】
そして第1基体と第2基体とを貼着するための粘着層としては前述した通りであるが、さらに付言するならば、この粘着層は第2基体と合わせていわゆるクッション性を確保するための効果を発揮する部分となるものであり、適度なクッション性を呈することの出来る物質であれば好ましいと言える。当然、クッション性を適度に呈するための厚さが必要であるが粘着層が厚すぎると本実施の形態に係る透明導電積層体全体の厚みが増してしまい、また粘着層が薄すぎるとクッション性を充分に発揮することが出来ないので、これらの点に注意しながら適宜厚みを決定すればよい。
【0083】
このクッション性につきさらに説明を加える。
本実施の形態に係る透明導電積層体を例えばタッチパネルに用いる場合を想定するならば、タッチパネルはすでに周知の通り人間の指であったり、場合によってはペンにより特定箇所を押下することで信号を入力する構成となっているのであるが、タッチパネルにおいてはこの押下行為をする箇所・範囲が通常固定されており、特定箇所ばかりが繰り返して押下されることとなる。そして押下指示をするのがたとえ指先であっても、その指示を受け入れる側の積層体にある程度の厚みがないと断面視において押下げられる角度が急激なものとなり、その急激な角度が原因で積層体に、いわゆる「割れ」が生じてしまい、その割れが原因でいわば断線状態が生じ、結果としてタッチパネルの機能が失われてしまうのである。要するに薄い板を急激な角度で何度も折り曲げると容易に破断してしまう、といったような現象が生じてしまうのである。
【0084】
しかし軽薄短小が求められるモバイル機器等においては、それを構成する各部材に薄さが求められ、そのため透明導電積層体の基体を厚くするにも限界が生じてしまう。
【0085】
そこで基体そのものは薄いものの、いわば基体の底にクッション材を挿入することにより押下による加圧に積層体が耐えられるようにすることが考えられ、その効果を得るために本実施の形態では基体のさらに「底」に粘着層を介してもう一枚の基体を用いることとしているのであり、また2つの基体を貼着するための粘着層もそれ自体にある程度のクッション性を備えることとすれば、第2の基体による効果と合わせてクッション性を高めることが可能となることが考えられ、その結果本実施の形態では上述した通り、第1基体の有機物質による有機誘電体層とは反対の側に粘着層と第2基体とを積層しているのである。
【0086】
このように本実施の形態に係る透明導電積層体は、第2基体/粘着層/ハードコート層/第1基体/有機物質による有機誘電体層/無機物質による無機誘電体層/導電層、という構成にしたので、これをタッチパネルの部材として用いてもクッション性も備え、またオリゴマーの析出が生じてもそれを原因とした性能劣化が生じないものにすることが出来るのである。
【0087】
以上、第2基体/粘着層という積層を第1基体のハードコート層側表面になした場合につき説明したが、これ以外に、例えば単に運搬上のことを考慮してキャリアフィルムを粘着層を介して第1基体に貼着することも考えられ、また第1基体が傷つくことにより透明性が低下することを防止するため、即ち第1基体表面を保護するために粘着層を介してセパレータを貼着することも考えられる。これらキャリアフィルムやセパレータは従来公知のものであってよい。例えばキャリアフィルムとしてはPETによるものであってよく、セパレータとしてはポリプロピレンフィルムによるものであってよいが、特段制限するものではないことを付言しておく。
【産業上の利用可能性】
【0088】
回路部分と回路が存在しない部分との透過色目差を小さくしているので、透明導電積層体における回路部分が浮き出て見えることがなくなり、また可撓性を良好なものとしているので、これを例えば、視認性をより一層向上させた、また導電性部分にクラックが生じることを抑制したタッチパネルに適用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基体の表面に、少なくとも有機物質による有機誘電体層と、無機物質による無機誘電体層と、導電層と、をこの順に積層してなる、透明導電積層体であって、
前記透明導電積層体の前記導電層の一部をエッチングした後に、該エッチングを施して前記導電層を除去した箇所である除去部と、該エッチングを施した後も前記導電層が残留している箇所である残留部と、それぞれの箇所における透過色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた下記式による値ΔEが2以下であり、
前記除去部と前記残留部と、それぞれの箇所における反射光の反射色目差が、L*値、a*値、b*値を用いた下記式による値ΔEが5以下であり、
前記除去部におけるb*値と、前記残留部におけるb*値とが、共に2以下であること、
を特徴とする、透明導電積層体。


(式)
但し
ΔL=(除去部におけるL*値)−(残留部におけるL*値)
Δa=(除去部におけるa*値)−(残留部におけるa*値)
Δb=(除去部におけるb*値)−(残留部におけるb*値)
である。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電積層体であって、
前記透明導電積層体の導電層積層側面とは反対側の表面側に、円の半径が8mmの円柱を沿わせた時の、前記透明導電積層体における導電層の延長率が2%以内であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の透明導電積層体であって、
前記第1基体の導電層積層側面とは反対側にハードコート層を積層してなること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記有機誘電体層の光線屈折率nが1.4以上1.6以下であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記第1基材がポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、又はノルボネン系フィルムの何れかであり、
前記無機物質による無機誘電体層が、酸化珪素による層であり、
前記導電層が、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)又はガリウム添加酸化亜鉛(GZO)の何れか若しくは複数であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記第1基材がポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、又はノルボネン系フィルムの何れかであり、
前記無機物質による無機誘電体層が、酸化珪素による層であり、
前記導電層が、酸化インジウムスズ(ITO)であり、
前記導電層を構成するITO層は非晶質ITO層であるが、前記透明導電積層体をアニールすることで前記非晶質ITO層が結晶化ITO層となるものであること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記有機誘電体層の厚みが3nm以上78nm以下であり、
前記無機誘電体層の厚みが2nm以上77nm以下であり、
前記有機誘電体層と前記無機誘電体層の厚みの合計が5nm以上80nm以下であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記第1基体の導電層積層側の面とは反対表面側に、さらに少なくとも粘着層と、キャリアフィルムと、をこの順に積層してなること、
又は前記第1基体の導電層積層側の面とは反対表面側に、さらに少なくとも粘着層と、セパレータと、をこの順に積層してなること、
又は前記第1基体の導電層積層側の面とは反対表面側に、さらに少なくとも粘着層と、第2基体と、ハードコート層と、をこの順に積層してなること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の透明導電積層体を用いてなること、
を特徴とする、タッチパネル。


【公開番号】特開2010−228295(P2010−228295A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78396(P2009−78396)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【特許番号】特許第4364938号(P4364938)
【特許公報発行日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】