説明

透明導電積層体及びタッチパネル

【課題】
耐擦傷性を備えると共に映り込みによる視認性低下を防ぎ、さらに指紋付着による汚れを除去しやすい防指紋性透明導電積層体及びそれを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】
基体となるプラスチックフィルムの表面に高分子樹脂により構成されるハードコート層を積層してなり、なおかつその反対面に導電層を積層してなる透明導電積層体であって、前記ハードコート層を構成する前記高分子樹脂に対し、算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下の第1微粒子と、算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下であってかつ前記第1微粒子とは異なる第2微粒子と、を添加してなり、なおかつ前記第1微粒子と前記第2微粒子との合計添加量が固形分比で前記高分子樹脂の5%以上20%以下となるように添加されてなる、防指紋性を付与する防指紋性処理が施されてなる、透明導電積層体とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明導電積層体に関する発明であって、より具体的にはタッチパネルに用いることができる透明導電積層体であって、指紋が付きにくい表面処理が施された、即ち防指紋性を付与された防指紋性透明導電積層体及びこれを用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今様々な日常生活の中で、種々多用な透明導電膜が普及し、利用されている。例えば銀行のATMや鉄道の券売機等において用いられるタッチパネルには透明導電膜が透明電極として用いられている。
【0003】
この透明導電膜は、従来基板としてガラス板を利用することが多かった。そしてこの透明導電膜を積層した透明導電積層体は、まず基板であるガラス板の表面に導電性のある導電性層を積層し、次いで導電性層を積層した基板ごと加熱処理を施すことにより、導電性層を透明なものとしてこれを透明導電膜とする、という工程により得られるものであったが、この工程において高熱処理を施す際に、それに耐えうる基板としてガラス板が最も適しているので、ガラス板を基板として用いていた。
【0004】
しかし昨今、例えばモバイル機器や携帯電話等に見られるように、透明導電膜を利用する機器の薄型軽量化が急激に進むようになると、透明導電膜それ自体が軽量であることや、落下などの衝撃や外圧等に対しても耐性のあることが求められるようになり始めた。そこで基板として用いられる物質は徐々にガラス板からプラスチックフィルムへと移行するようになってきた。
【0005】
この基板として用いられるプラスチックフィルムは、高熱処理にもある程度耐えられる高分子樹脂を原材料としており、さらに、ある程度の厚みや分子量のある高分子樹脂であれば、高熱処理の際にもある程度耐えられるものが開発されてきている。
【0006】
また従来は加熱されることで透明な導電膜となる導電性層に関しても、従来よりもさらに低い加熱温度であっても透明導電膜とできるように工夫がなされてきている。
【0007】
そのような状況によって、現在ではプラスチックフィルムを基板とした透明導電積層体が種々提案されるようになってきた。
【0008】
例えば特許文献1に記載された透明導電積層体であれば、透明基体/透明粘着材層/フィルム基材/透明誘電体薄膜/透明導電性薄膜、という構成を有することより、クッション性が良好なものとなり、これをタッチパネルに用いた場合、導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上効果を得られる、とされている。
【0009】
【特許文献1】特開平06−222352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
確かにこの特許文献1にて開示された発明によれば、透明基体/透明粘着材層/フィルム基材という構成部分を有するが故にクッション性も良好であり、ひいては割れにくい透明導電性積層体とすることができるのであるが、しかしこれを実際にタッチパネルの部材として用いるならば透明基体部分が最表面に露出してしまうことにより問題が生じることとなる。つまり、この特許文献1における透明基体はプラスチックフィルムであるが、プラスチックフィルムはガラスほどの硬度を有さないので傷が付きやすく、無数の傷が容易に透明基体に付いてしまうことで透明基体の透明性が低下する、透明基体そのものが脆くなる、等の問題が生じるのである。
【0011】
このような現象を防止するためには透明基体のさらに表面にハードコート層を積層することが考えられ、実際特許文献1にもそのようなことに関する言及はなされている。
【0012】
しかし一般的にハードコート層を設けた場合、これをタッチパネルに用いると、今度はハードコート層表面に直接指が触れることにより指紋が表面に付着してしまい、これが視認性を低下させる状況を現出することとなり問題であった。そしてこの現象は特許文献1に記載されたものであっても同様に生じてしまい、問題であった。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明基体としてプラスチックフィルムを用いながら、耐擦傷性を備えると同時に指紋付着による汚れを除去しやすい防指紋性透明導電積層体及びそれを用いたタッチパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するために、本願発明の請求項1に記載の透明導電積層体は、基体となるプラスチックフィルムの表面に、少なくとも高分子樹脂により構成されるハードコート層を積層してなり、なおかつ前記基体の反対側の表面に少なくとも導電層を積層してなる、透明導電積層体であって、前記ハードコート層が、前記ハードコート層の前記基体側とは反対側の表面に、指紋の付きにくい性質である防指紋性を付与する防指紋性処理が施されてなるものであり、前記防指紋性処理が、前記ハードコート層を構成する前記高分子樹脂に対し、算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下の第1微粒子と、算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下であってかつ前記第1微粒子とは異なる第2微粒子と、を添加してなり、なおかつ前記第1微粒子と前記第2微粒子との合計添加量が固形分比で前記高分子樹脂の5%以上20%以下となるように添加されてなる処理であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項2に記載の透明導電積層体は、請求項1に記載の透明導電積層体であって、前記防指紋性処理において、前記高分子樹脂に対し、前記第1微粒子及び前記第2微粒子にさらに加えて、算術平均径により算出された平均粒径が100nm以下の第3微粒子も添加してなり、なおかつ前記第1微粒子と前記第2微粒子と前記第3微粒子との合計添加量が固形分比で前記高分子樹脂の5%以上20%以下となるように添加されてなること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項3に記載の透明導電積層体は、請求項1又は請求項2に記載の透明導電積層体であって、前記第1微粒子及び前記第2微粒子が、シリカ系微粒子、シリコーン系微粒子、アクリル系微粒子、又はスチレン系微粒子の何れかであること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項4に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記透明導電積層体の防指紋性処理を施された表面の十点平均粗さRzが3.5μm以下であること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項5に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記透明導電積層体のJIS_K7105によるヘーズ値が20以下であること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項6に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記高分子樹脂が、活性エネルギー線で硬化可能なアクリレート系樹脂又は活性エネルギー線で硬化可能なメタアクリレート系樹脂の何れか若しくは双方の樹脂に、親水性を有する官能基と、親油性を有する官能基と、を導入してなる高分子樹脂であること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項7に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記ハードコート層の前記基体側とは反対側の表面における純水接触角が90°以下であること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項8に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記ハードコート層の前記基体側とは反対側の表面におけるオレイン酸接触角若しくはヘキサデカン接触角の何れか若しくは双方が50°以下であること、を特徴とする。
【0022】
本願発明の請求項9に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記ハードコート層における濡れ張力が、JIS_K6768による測定値で27.3dyne/cm以上であること、を特徴とする。
【0023】
本願発明の請求項10に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記基体となるプラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィン系フィルム、又はトリアセチルセルロース系フィルム、の何れかであること、を特徴とする。
【0024】
本願発明の請求項11に記載の透明導電積層体は、請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、前記ハードコート層が、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、スピンコート法、の何れかにより、またその厚みが1μm以上10μm以下となるように、塗工積層されてなるものであること、を特徴とする。
【0025】
本願発明の請求項12に記載のタッチパネルは、請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の透明導電積層体を用いてなること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本願発明にかかる透明導電積層体であれば、基体表面に積層されたハードコート層に防指紋性処理が施されているので、この面に指で触れて指紋が付いてしまっても、簡単に拭き取るだけでこの指紋が除去されることとなり、ハードコート層に汚れが固着することがなくなる。より具体的には、かかる防指紋性処理としてハードコート層を形成する高分子樹脂(バインダー樹脂)を選択することにより、また同時に複数種類の微粒子を配合させることで表面凹凸を形成することで、指紋が付着しても目立ちにくくすることを可能としたハードコート層とすることができる。さらに本願発明にかかる防指紋性処理を施すことでヘーズ値を20以下とできるので、防指紋性、耐擦傷性を備えつつも透明性を確保した透明導電積層体を得ることが容易に可能となり、さらにこの透明導電積層体をタッチパネルに用いることで、得られるタッチパネルは防指紋性、耐擦傷性を備えつつも視認性の良いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
本願発明にかかる透明導電積層体につき、第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態にかかる透明導電積層体は次のような構成である。即ち基体となるプラスチックフィルムの表面に、少なくとも高分子樹脂により構成されるハードコート層を積層してなり、なおかつ前記基体の反対側の表面に少なくとも導電層を積層してなる構成を有している。そしてハードコート層の基体側とは反対側の表面に、指紋の付きにくい性質である防指紋性を付与する防指紋性処理が施されている。
【0029】
以下、順次説明をしていく。
まず最初に基体となるプラスチックフィルムであるが、これは例えば高分子樹脂による成型体であって、より具体的には透明高分子樹脂フィルムであることが考えられる。つまりフィルム状とすることで様々な面、平面や曲面に対し本実施の形態にかかる透明導電積層体を容易に用いることが可能となるからである。この第1基体として用いられる高分子樹脂フィルムは、従来公知の透明導電積層体において一般的に用いられるフィルムであって良く、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリカーボネートフィルム、ポリオレフィン系フィルム、又はトリアセチルセルロース系フィルム等であることが考えられるが、本実施の形態においてはPETフィルムを用いることとする。PETフィルムは透明導電積層体の基体として広く利用されているものであり、その取扱等についてもすでに充分周知であり、本実施の形態にかかる透明導電積層体を実際に製造するに際しても取扱が用意であり、作業がしやすいという利点があると言える。また本実施の形態において用いられるプラスチックフィルムの25μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0030】
次にこの基材であるプラスチックフィルムの片面に積層される導電層につき説明する。
この導電層は透明導電積層体において用いられる通常公知の導電層であって良く、例えばスズ−インジウム酸化物(ITO)や酸化珪素、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウム、等が用いられ、本実施の形態においてはITOを積層しているものとするが、必ずしもITOや上述したものに限定されるものではないことを予め断っておく。またその積層方法についてもスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、塗工法等の従来公知の手法であって良く、本実施の形態では従来公知の真空蒸着法によりせきそうされてなるものとする。さらに導電層の厚みについて述べると、10nm以上50nm以下であることが好適であると言えるが、本実施の形態においてはITO膜を20nmの厚みで積層してなるものとする。
【0031】
また基材であるプラスチックフィルムとその表面に積層する導電層との物質的な相性によっては積層しにくい場合も考えられるが、その場合はプラスチックフィルムと導電層との間にアンダーコート層を設けることで対処することができる。
【0032】
このようなアンダーコート層としては、例えばシロキサン系樹脂等をいわゆるウェットコーティング法により厚みが10nm以上100nm以下となるように積層してなるものであり、本実施の形態ではシロキサン系樹脂を塗工法により厚みが50nmとなるように積層してなるものとする。
【0033】
尚、このアンダーコート層には基材となるプラスチックフィルムと導電層との密着性を向上させるという効果を得ることができるが、その他にも、場合によっては導電層とプラスチックフィルムとが接することによりプラスチックフィルムから生じるオリゴマーが導電層に悪影響を及ぼすことを防ぐ効果を得られる場合もあるが、ここではこれ以上の詳述は省略する。
【0034】
さて、基本的に透明導電積層体は以上の構成を有していれば導電性を有したフィルムとして作用し利用することができ、これをタッチパネルに用いるには通常は基体となるプラスチックフィルムの導電層が積層されていない側を使用面として露出させる。しかし実際にそのように使用するならば、使用を繰り返すことによりプラスチックフィルムの露出された表面に容易に無数の細かな傷が付けられることとなり、また該表面に付着したほこりも原因となってやはり細かな傷が付けられてしまい、やがてはこの傷が曇りの原因となり、結果的に視認性や光線透過性の悪い状態となってしまい、即ち容易にかつ短期間のうちにプラスチックフィルムが劣化してしまうこととなるので、実際に上述した状態の積層体をタッチパネルに用いようとするならば、プラスチックフィルムそのものが露出してしまう表面側にさらにハードコート層を積層することが一般的に行われるのである。そこで本実施の形態にかかる透明導電積層体にも使用面側にハードコート層を積層することとしているのである。
【0035】
このハードコート層に関し詳しくは後述するが、簡単に述べておくと透明導電積層体におけるハードコート層は、基本的には従来公知の樹脂、例えばアクリレート系樹脂等をグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、スピンコート法といった塗工法等である、いわゆるウェットコーティング法により積層することにより得られるものであり、本実施の形態も基本的にはこれに準じたものである。
【0036】
このように基材となるプラスチックフィルムの、導電層とは反対側にハードコート層を積層することにより、これをタッチパネルに用いても実際に露出する面、即ち指やタッチペンなどと接触する面にはハードコート層が積層されていることとなるので、上述したような傷による問題の発生を抑制できる。つまりハードコート層が存在することにより、この面に対し指で触れたりタッチペンのペン先を接触させたりしても容易には傷が生じにくくなり、そのため傷による透明性や視認性の低下といった現象が生じにくくなるのである。
【0037】
但しハードコート層を設けただけであれば、その表面が略平滑であるために、映り込みと呼ばれる現象が発生し視認性を悪化させることとなってしまう。つまり、ハードコート層表面に例えば蛍光灯が映り込んだり、外光が反射してしまうことにより本来見えなければならない部分がそれらの光に邪魔されて見えない、又は見えにくい状況となってしまうのである。そこで本実施の形態においてはかかる現象が生じることを防止するためにハードコート層の表面に微細な凹凸を設けてなるのである。
【0038】
しかしハードコート層の表面に映り込み防止のための微細凹凸を設けることにより、この微細凹凸が原因で付着した汚れが拭き取れなくなってしまうという新たに生じかねない問題を防ぐため、以下に説明する防指紋性処理をハードコート層表面に対し施すこととする。
【0039】
本実施の形態における防指紋性処理について述べると、これは具体的にはハードコート層を構成する高分子樹脂に対し、算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下の第1微粒子と、算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下であってかつ第1微粒子とは異なる第2微粒子と、を添加してなり、なおかつ第1微粒子と第2微粒子との合計添加量が固形分比で高分子樹脂の5%以上20%以下となるように添加されてなる処理である。
【0040】
まずハードコート層として用いられる高分子樹脂は前述の通りの従来公知な高分子樹脂が利用することができ、好ましいものとしては活性エネルギー線で硬化可能なアクリレート系樹脂又は活性エネルギー線で硬化可能なメタアクリレート樹脂の何れか若しくは双方の樹脂とすることが考えられ、さらに具体的にはアクリレート系樹脂等の樹脂が好適であり、本実施の形態ではアクリレート系樹脂を用いることとする。
【0041】
そしてハードコート層を構成する樹脂に対し、本実施の形態では親水性を有する官能基と、親油性を有する官能基と、を導入することとし、より具体的には水酸基、スルホン基、カルボニル基、リン酸基等の親水性を有する官能基と、アルキル基等の親油性を有する官能基と、を予め導入しておく。かようにする理由については後述する。
【0042】
さらに本実施の形態では、このように準備されたハードコート層を構成する高分子樹脂に対し2種類の微粒子を混合する。具体的には前述の通り、これら2種類の微粒子、即ち第1微粒子と第2微粒子とは共に算術平均径により算出された平均粒径(以下、単に「平均粒径」とも言う。)が5μm以下であるものとする。そしてこれら第1微粒子と第2微粒子との合計添加量が固形分比で高分子樹脂の5%以上20%以下となるようにハードコート層を構成する高分子樹脂に対し添加してなる。
【0043】
まず第1微粒子及び第2微粒子につき述べると、これらはシリカ系微粒子、シリコーン系微粒子、アクリル系微粒子、又はスチレン系微粒子の何れかであること、が好ましく、以下の説明では共にシリカ系微粒子であるものの、その平均粒径が異なる2種類のシリカ系微粒子を用いることとする。即ち第1微粒子として平均粒径が1.5μmのシリカ粒子を、第2微粒子として平均粒径が3.5μmのシリカ粒子を用いることとする。またこれら第1微粒子と第2微粒子との合計添加量は、ハードコート層を構成するアクリレート系樹脂に対し固形分比で10%とする。そしてこのようにして得られた、2種類の微粒子を含有する高分子樹脂をウェットコート法により基材となるプラスチックフィルムの表面に、厚みが5μmとなるように、塗工積層する。尚、この際の塗工厚みとしては1μm以上10μm以下の範囲に収まるようにすれば好適な効果を得られることを述べておく。
【0044】
このようにしてハードコート層を構成する高分子樹脂を準備し、これを基材となるプラスチックフィルムの表面に塗布、積層することで以下のことが言える。まず微粒子を含有していることより、ハードコート層の表面は必ずしも均一なもの、滑らかなものとはならず、微細な凹凸がランダムにかつ無数に発生したものとなる。このようにランダムな微細凹凸を設けることにより映り込みの発生を防止できる。またこの微細凹凸の略断面視を考えると、均一な高さを備えた凹凸となるものではなく、即ちとあるところでは第1微粒子による凹凸が生じている一方で、そのすぐ隣では第2微粒子による凹凸が生じている、という箇所が存在しているが、この場合微粒子の平均粒径が異なることより凹凸の形状、高さが隣接していても異なることがあり得る。つまり略断面視における凹凸の形状が違うことより、この表面に例えば指先を接触させることにより皮脂が付着した場合、凹凸が美麗に均等なものであるならばこれを拭き取ろうとしても隙間に入り込んでしまい拭き取れない、拭き取りにくくなるが、本実施の形態の場合は凹凸が不均等であるため、必ずしも隙間に入り込んでしまって拭き取れないという現象が生じるとは限らない、と言える。
【0045】
このような状況を確実に作り出すために、前述したハードコート層の表面、即ち防指紋性処理を施された表面の十点平均粗さRzが3.5μm以下となるようにすれば好適な表面とすることができる。
【0046】
尚、本実施の形態にかかる透明導電性積層体はその名の通り透明性を確保することも重要であるが、具体的にはJIS_K7105によるヘーズ値が20以下であることが望ましい。またこの値を実現できるように第1微粒子と第2微粒子とを含有させなければならない。
さらにまた、従来であればハードコート層に例えば皮脂・油分が付着したらこれをハードコート層それ自身が弾きだそうとする働きを持たせようと考えられ、またそう作用するように工夫がなされていたところ、本実施の形態では前述の通りハードコート層を構成する高分子樹脂に親水性及び親油性を有する官能基を導入していることで従来の考え方とは逆に、ハードコート層表面の一点に付着してしまった皮脂や油分を薄く広げることにより、つまりあたかも一点に付着したシミを広範囲に広げることで、これを人間の視力であれば広範囲に広げられたシミの境界がぼやけてわからなくなるまで薄めることで、あたかも汚れが付着していないかのような、錯覚させられるような状況に導くこととしている。
【0047】
つまり、前述した微細凹凸の存在と相まって効果的に皮脂・油脂を除外する、又はその存在を目立たなくすることができるようになる。つまり、ハードコート層に付着した皮脂・油脂はまず薄く広げられ、人間の視力ではその境界がわからないまでに薄められることとなるが、その一方でハードコート層表面には微細凹凸が不規則に存在するので、薄く広げられた皮脂・油脂は凹凸にはまり込むことなく容易に拭き取られることとなるのである。
【0048】
このような状況を現出可能とするために、親水性、親油性を持つ官能基を導入する量については以下の条件を達することができるように導入すれば良い。即ち
1)ハードコート層の基体側とは反対側の表面における純水接触角が90°以下であること。
2)ハードコート層の基体側とは反対側の表面におけるオレイン酸接触角若しくはヘキサデカン接触角の何れか若しくは双方が50°以下、より望ましく40°以下であること。
3)ハードコート層における濡れ張力が、JIS_K6768による測定値で27.3dyne/cm以上であること。
の3つの条件のうちどれか1つを実現できれば良く、さらに2つ実現できれば尚良く、3つとも達成できれば非常に好適な透明導電積層体とすることができる。
【0049】
以上説明した透明導電積層体であれば、導電性を有する積層体であって、透明導電積層体の透明度が汚れや微細な傷で落ちてしまわないように、また映り込みが生じて視認性が低下してしまわないように防指紋性処理も施されたハードコート層が使用面側に積層されている、というものが得られる。
【0050】
そしてこれを例えばタッチパネルに用いれば、具体的にはタッチパネルにおいて実際に指やタッチペンで触れる面に位置するようにこれを用いれば、従来よりも長期化にわたり透明性を確保でき、かつ性能低下も生じない、さらに指で触れることにより付着する皮脂も簡単に拭き取れる、即ち長期間にわたり美麗な状態を容易に維持できるタッチパネルを得ることができるようになるのである。
【0051】
(実施の形態2)
以上説明した第1の実施の形態とは異なる形態を有する本願発明にかかる透明導電積層体に関し、次に第2の実施の形態として説明する。
【0052】
この第2の実施の形態にかかる透明導電積層体は、基本的には全て第1の実施の形態と同様であるが、ハードコート層を形成する高分子樹脂に含有させる微粒子が第1の実施の形態においては2種類であったところ、さらにもう1種類、即ち第3微粒子を用いる、という特徴を有している。即ち第1の実施の形態においてさらに第3微粒子を用いたものが本実施の形態となる。そこでこの第3微粒子につき説明をする。
【0053】
この第3微粒子は、算術平均径により算出された平均粒子が100nm以下である。即ち第1微粒子及び第2微粒子と比べてはるかに小さい微粒子である。また第1微粒子及び第2微粒子と同様に、第3微粒子もシリカ系微粒子、シリコーン系微粒子、アクリル系微粒子、又はスチレン系微粒子の何れかであること、が好ましく、本実施の形態ではその平均粒径は50nmであるものとする。さらに第3微粒子の含有量について説明すると、第1微粒子と第2微粒子と第3微粒子との合計添加量は、ハードコート層を構成するアクリレート系樹脂に対し固形分比で10%とするが、実際に効果的であり好適なのは第1微粒子と第2微粒子と第3微粒子との合計添加量が固形分比で高分子樹脂の5%以上20%以下となるように添加されることである。
【0054】
尚、このようにして得られた3種類の微粒子を含有する高分子樹脂は、第1の実施の形態と同様にウェットコート法により基材となるプラスチックフィルムの表面に、その厚みが5μmとなるように塗工積層する。尚、この際の塗工厚みとしては1μm以上10μm以下の範囲に収まるようにすれば好適な効果を得られることを述べておく。
【0055】
その他に関しては第1の実施の形態にかかる透明導電積層体と全く同様であって良いのであるが、本実施の形態において第3微粒子を用いることにより、ハードコート層表面においてより一層複雑にかつランダムに微細凹凸が形成されることとなり、皮脂・油脂の付着がより一層回避されやすいものとなるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体となるプラスチックフィルムの表面に、少なくとも高分子樹脂により構成されるハードコート層を積層してなり、なおかつ前記基体の反対側の表面に少なくとも導電層を積層してなる、透明導電積層体であって、
前記ハードコート層が、前記ハードコート層の前記基体側とは反対側の表面に、指紋の付きにくい性質である防指紋性を付与する防指紋性処理が施されてなるものであり、
前記防指紋性処理が、
前記ハードコート層を構成する前記高分子樹脂に対し、
算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下の第1微粒子と、算術平均径により算出された平均粒径が5μm以下であってかつ前記第1微粒子とは異なる第2微粒子と、を添加してなり、
なおかつ前記第1微粒子と前記第2微粒子との合計添加量が固形分比で前記高分子樹脂の5%以上20%以下となるように添加されてなる処理であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電積層体であって、
前記防指紋性処理において、
前記高分子樹脂に対し、前記第1微粒子及び前記第2微粒子にさらに加えて、算術平均径により算出された平均粒径が100nm以下の第3微粒子も添加してなり、
なおかつ前記第1微粒子と前記第2微粒子と前記第3微粒子との合計添加量が固形分比で前記高分子樹脂の5%以上20%以下となるように添加されてなること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の透明導電積層体であって、
前記第1微粒子、前記第2微粒子並びに前記第3微粒子が、シリカ系微粒子、シリコーン系微粒子、アクリル系微粒子、又はスチレン系微粒子の何れかであること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記透明導電積層体の防指紋性処理を施された表面の十点平均粗さRzが3.5μm以下であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記透明導電積層体のJIS_K7105によるヘーズ値が20以下であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記高分子樹脂が、
活性エネルギー線で硬化可能なアクリレート系樹脂又は活性エネルギー線で硬化可能なメタアクリレート系樹脂の何れか若しくは双方の樹脂に、
親水性を有する官能基と、親油性を有する官能基と、を導入してなる高分子樹脂であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記ハードコート層の前記基体側とは反対側の表面における純水接触角が90°以下であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記ハードコート層の前記基体側とは反対側の表面におけるオレイン酸接触角若しくはヘキサデカン接触角の何れか若しくは双方が50°以下であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記ハードコート層における濡れ張力が、JIS_K6768による測定値で27.3dyne/cm以上であること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記基体となるプラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィン系フィルム、又はトリアセチルセルロース系フィルム、の何れかであること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の透明導電積層体であって、
前記ハードコート層が、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、スピンコート法、の何れかにより、またその厚みが1μm以上10μm以下となるように、塗工積層されてなるものであること、
を特徴とする、透明導電積層体。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の透明導電積層体を用いてなること、
を特徴とする、タッチパネル。

【公開番号】特開2010−44687(P2010−44687A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209668(P2008−209668)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】