説明

透明導電膜、透明導電性フィルム及びフレキシブル透明面電極

【課題】高い導電性と良好な透明性を併せ持ち、液相成膜により容易に製造できる透明導電膜を提供することにあり、さらに、この透明導電膜を用いた透明導電性フィルム、さらには大面積においても電極での電圧降下が抑えられたフレキシブル透明面電極を提供することにある。
【解決手段】金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜において、少なくとも該金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布膜を加熱処理することにより、少なくとも一部の金属ナノワイヤが該粒状金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合していることを特徴とする透明導電膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル等の各種分野において好適に用いることができる、高い導電性と良好な透明性を併せ持つ透明導電膜であり、液相成膜により容易に製造できる透明導電膜に関するものであり、さらに、それを用いた透明導電性フィルム及びフレキシブル透明面電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパー等の透明電極、ならびに電磁波シールド材等に用いられている。
【0003】
一般に透明導電材料としては、例えば金属酸化物が用いられており、具体的には、錫や亜鉛をドープした酸化インジウム(ITO、IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)、フッ素やアンチモンをドープした酸化錫(FTO、ATO)等が挙げられる。一般に、金属酸化物透明導電膜の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の気相成膜法が用いられる。しかしながら、これらの成膜方法は真空環境を必要とするため装置が大掛りかつ複雑なものとなり、また成膜に大量のエネルギーを消費するため、製造コストや環境負荷を軽減できる技術の開発が求められていた。また、一方で、液晶ディスプレイやタッチディスプレイに代表されるように、透明導電材料の大面積化が指向されており、それに伴い透明導電材料の軽量化や柔軟性に対する要請が高まっていた。さらに、大面積の透明電極においては、透明電極の電圧降下の影響が大きくなり、さらなる低抵抗化が求められてきた。
【0004】
このような要請に対して、導電性微粒子を含有する液状材料を用いて塗布や印刷のような液相成膜法により透明導電膜を形成する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、従来の方法では、塗布液を塗布し乾燥して塗膜を形成した後、高導電率の導電性被膜を作製するためには、200℃以上の加熱処理を施す必要があった。樹脂をはじめとする高分子材料をこのような高温にさらすと、変形や溶融、劣化等の損傷を受けることから、プラスチックフィルムのような樹脂基材上に透明導電膜を形成する場合には適用できない。
【0006】
液相成膜に適した透明導電材料として、π共役系高分子に代表される導電性高分子材料が挙げられる。導電性高分子材料を用いると、適当な溶媒に溶解または分散し、必要に応じてバインダー成分を加えて塗布や印刷することによって透明導電素子を形成することができる。しかし、真空成膜法によるITOやZnO等の金属酸化物透明導電素子に対しても導電性は劣りかつ透明性にも劣る。
【0007】
金属酸化物や導電性高分子に比べ、Ag、Cu、Au等の金属材料の導電率は2桁以上高く、導電性の観点では好ましいが、透明性を確保できないという問題があった。それに対して、均質な金の超薄膜を形成することにより導電性と透明性を両立できることが報告されている。しかし、均質な金の超薄膜を形成するには、デュアルイオンビームスパッタ法という特殊な真空成膜法が必要であり、製造コストや環境負荷の軽減は実現できない。
【0008】
さらに、酸化銀と還元剤を含有する導電性組成物を塗布した後、加熱処理することにより導電性皮膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、比較的低温の加熱処理で導電性が発現することから、プラスチックフィルムのような樹脂基材上に透明導電膜を形成する場合に好ましい技術ではある。しかしながら、粒子接合界面でのロスは完全にはなくならないため、金属本来の導電性は発現できていない。さらに、面電極として面全体に導電性皮膜を形成すると透明性は得られない。
【0009】
また、液相成膜が可能な透明導電材料技術として、CNT(カーボンナノチューブ)や金属ナノワイヤを導電体として用いる方法(例えば、特許文献2〜7参照)が提案されている。CNTや金属ナノワイヤのような導電性繊維を導体として用いる透明導電材料においては、導電性繊維間の電気的なネットワーク形成によって導電性が発現する。従って、理想的には全ての導電性繊維が他の導電性繊維と少なくとも2つ以上の接点を有して、空間的に広く分布してネットワークを形成している状態であることが、導電性と透明性を両立するために好ましい。しかし、導電性繊維のネットワーク形成を制御できないため、満足できる導電性を得ることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−308730号公報
【特許文献2】特表2004−526838号公報
【特許文献3】特開2005−8893号公報
【特許文献4】特開2005−255985号公報
【特許文献5】特表2006−517485号公報
【特許文献6】特表2006−519712号公報
【特許文献7】米国特許第2007/0074316A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高い導電性と良好な透明性を併せ持ち、液相成膜により容易に製造できる透明導電膜を提供することにあり、さらに、この透明導電膜を用いた透明導電性フィルム、さらには大面積においても電極での電圧降下が抑えられたフレキシブル透明面電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0013】
1.金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜において、少なくとも該金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布膜を加熱処理することにより、少なくとも一部の金属ナノワイヤが該粒状金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合していることを特徴とする透明導電膜。
【0014】
2.前記塗布膜が、少なくとも金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液を基材上に塗布乾燥して得られることを特徴とする前記1記載の透明導電膜。
【0015】
3.少なくとも金属ナノワイヤを含有する塗布液を基材上に塗布乾燥した後、少なくとも粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液を金属ナノワイヤ塗布膜上に塗布し、さらに、加熱処理することにより、少なくとも一部の金属ナノワイヤが該粒状金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合していることを特徴とする前記1記載の透明導電膜。
【0016】
4.透明樹脂フィルム上に、前記1〜3のいずれか1項記載の透明導電膜を有することを特徴とする透明導電性フィルム。
【0017】
5.前記透明導電膜上に、さらに導電性高分子または導電性微粒子含有層が積層されていることを特徴とする前記4記載の透明導電性フィルム。
【0018】
6.前記4または5記載の透明導電性フィルムを用いることを特徴とするフレキシブル透明面電極。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い導電性と良好な透明性を併せ持ち、液相成膜により容易に製造できる透明導電膜、さらに、この透明導電膜を用いた透明導電性フィルム、さらには大面積においても電極での電圧降下が抑えられたフレキシブル透明面電極を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜において、少なくとも該金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布膜を加熱処理することにより、少なくとも一部の金属ナノワイヤが該粒状金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合している透明導電膜により、高い導電性と良好な透明性を併せ持ち、液相成膜により容易に製造できる透明導電膜が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0021】
本発明の透明導電膜は、還元剤と粒状金属化合物を加熱処理することにより生成した金属微粒子を介して金属ナノワイヤが接合していることを特徴とする透明導電膜である。本発明によれば、200℃未満の比較的低温の加熱処理でも、金属ナノワイヤが接合されることから、プラスチックフィルムのような透明脂基材上に透明導電膜を形成することが可能となる。
【0022】
なお、本願において「接合している」とは、金属ナノワイヤや金属微粒子が融着して、電気的に一つの連続体と看做せる状態を意味する。単に接触している場合には、接触抵抗による導電性のロスが発生するが、接合体の場合にはその影響がないため導電性を向上できる。
【0023】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態等について詳細な説明をする。
【0024】
〔金属ナノワイヤ〕
本発明の透明導電膜において、金属ナノワイヤは主要な導電体として機能する。本発明では、金属ナノワイヤの金属元素として、バルク状態での導電率が1×10S/m以上の元素を用いることができる。本発明で好ましく用いることができる金属ナノワイヤの金属元素として具体例としては、Ag、Cu、Au、Al、Rh、Ir、Co、Zn、Ni、In、Fe、Pd、Pt、Sn、Ti等を挙げることができる。本発明においては2種類以上の金属ナノワイヤを組み合わせて用いることもできるが、導電性の観点から、少なくともAg、Cu、Au、Al、Coより選択される金属元素を用いることが好ましい。
【0025】
本発明において、金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にかつ大量に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に関わる金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0026】
本発明において金属ナノワイヤの平均直径は、透明性の観点から200nm以下であることが好ましく、導電性の観点から10nm以上であることが好ましい。平均直径が200nm以下であれば光散乱の影響を軽減でき、平均直径がより小さい方が光透過率低下やヘイズ劣化を抑制することができるため好ましい。一方で、平均直径が10nm以上であれば導電体としての機能を有意に発現でき、平均直径がより大きい方が導電性が向上するため好ましい。従って、より好ましくは20〜150nmであり、40〜150nmであることがさらに好ましい。
【0027】
本発明において金属ナノワイヤの平均長さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましく、凝集による透明性への影響から100μm以下であることが好ましい。より好ましくは1〜50μmであり、3〜50μmであることがさらに好ましい。
【0028】
本発明において上記金属ナノワイヤの平均直径及び平均長さは、SEMやTEMを用いて十分な数のナノワイヤについて電子顕微鏡写真を撮影し、個々のナノワイヤ像の計測値の算術平均から求めることができる。ナノワイヤの長さは、本来直線状に伸ばした状態で求めるべきであるが、現実には屈曲している場合が多いため、電子顕微鏡写真から画像解析装置を用いてナノワイヤの投影径及び投影面積を算出し、円柱体を仮定して算出する(長さ=投影面積/投影径)ものとする。計測対象のナノワイヤ数は、少なくとも100個以上が好ましく、300個以上のナノワイヤを計測するのがさらに好ましい。
【0029】
〔粒状金属化合物〕
本発明で用いられる粒状金属化合物の具体的なものとしては、金属酸化物、金属塩、金属錯体等を挙げることができる。金属種としては前述の金属ナノワイヤで挙げた金属種を好ましく用いることができる。本発明においては2種類以上の金属微粒子を組み合わせて用いることもできるが、導電性の観点から、少なくともAg、Cu、Au、Al、Coより選択される元素を用いることが好ましい。例えば金属種として銀を用いる場合は、粒状金属化合物としては酸化第1銀、酸化第2銀、炭酸銀、酢酸銀、アセチルアセトン銀錯体等が使用できる。これらの粒子状銀化合物を単体、または2種類以上混合して用いることができる。なお、これらの粒子状銀化合物は、製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
【0030】
これらの粒子状銀化合物の好ましい平均粒径は0.001〜1μmであり、還元反応における加熱温度、用いる還元剤の還元力、透明性への影響、分散性等に応じて適宜選択される。特に、還元反応の速度が速くなることや金属ナノワイヤに対する金属微粒子の個数の関係から、平均粒径が0.5μm以下であることがより好ましく、さらに、透明性の観点からは0.1μm以下であることがより好ましい。また、分散性や導電性の視点からは0.01μm以上であることがより好ましい。
【0031】
粒状金属化合物は、透明導電膜中で金属ナノワイヤと金属微粒子の比率は特に制限はないが、例えば質量比で100:100〜100:0.1の範囲で、導電性、熱処理条件、透明性等を考慮して適宜決めることができる。なお、金属微粒子の比率が金属ナノワイヤよりも多くなると透明性が劣ったものとなり、また、100:0.1よりも小さいと導電性向上効果が小さくなる。
【0032】
〔還元剤〕
本発明で用いられる還元剤は、粒状金属化合物を還元するもので、還元反応後の副生成物が気体や揮発性の高い液体となり、生成した導電性膜内に残留しないものが好ましい。このような還元剤の具体的な例としては、エチレングリコール、ホルマリン、ヒドラジン、アスコルビン酸、各種アルコール等が挙げられる。これらの還元剤は、液体であれば溶媒としても用いることができ、このような例としては、エチレングリコール等が挙げられる。
【0033】
還元剤の使用量は、粒状金属化合物1モルに対して0.01〜20モル程度とすることが望ましい。還元反応の効率や、加熱によって揮発することを考慮すると、還元剤を粒状金属化合物と等モルより多めに添加することが望ましいが、最大20モルを超えて添加しても効果が飽和し、不経済である。一方、還元剤の使用量が、粒状金属化合物1モルに対して0.01モル未満では、還元反応が十分に進行せず、結果として、金属微粒子の形成が不十分となり、金属ナノワイヤ間の接合が不十分となる。
【0034】
上記の還元剤の中には、還元力が高いものがある。その場合は、少なくとも粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液を塗布する直前に、粒状金属化合物を含む主剤と還元剤を含む副剤を混合すれば、塗布液の保管や塗布の間に、還元反応が起こるのを大幅に抑えることができる。
【0035】
少なくとも金属ナノワイヤを含有する塗布液と、少なく粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液は一つの液とすることで、塗布乾燥工程が簡略化できて好ましい。一方、別の液として、先に金属ナノワイヤ膜を形成した後に、少なく粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液を金属ナノワイヤ膜上に塗布することも、各液の分散安定性、造膜性、等を考慮して適宜添加剤や媒質を選択できることから好ましい。
【0036】
本発明に係る粒状金属化合物は還元剤の存在下で、比較的低温で加熱することにより、容易に金属に還元される。そして、この還元反応時に生じる反応熱によって、還元反応によって形成された金属微粒子が溶融し、隣接する金属ナノワイヤに融着して金属ナノワイヤを結合させる。金属ナノワイヤ自身はバルク金属に近い導電性を示し、また、金属微粒子と金属ナノワイヤの結合部も接触抵抗を低くすることができることから、高い導電性の導電性膜を形成できる。なお、粒状金属化合物は塗布膜乾燥時には表面張力の関係から金属ナノワイヤの交点付近に析出しやすいため、効率的に金属ナノワイヤを結合させることができる。
【0037】
加熱処理条件としては120〜200℃で、好ましくは140〜160℃、処理時間は30秒〜120分である。処理方法は、フィルムをロール形態で処理する方法や搬送しながら処理する方法等を用いることができる。特に、搬送しながら処理する方法では、テンタリング法や搬送張力の調整等により、基材の熱変形を抑制することが可能となるので好ましく用いることができる。
【0038】
本発明においては、加熱処理の前後で粒状金属化合物の形状が変化する場合があり、金属ナノワイヤや金属微粒子の粒径や材質、接合操作時の様々な条件等によって多様な接合状態を形成することができる。例えば、本発明において「少なくとも一部の金属ナノワイヤが該金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合している」状態とは、a)少なくとも1つの金属微粒子が、加熱処理前の粒状金属化合物の形状をほとんど保持したままで2つ以上の金属ナノワイヤに接合している状態や、b)少なくとも1つの金属微粒子が、加熱処理前の粒状金属化合物とは大きく形状を変えて2つ以上の金属ナノワイヤに接合している状態、c)複数の金属微粒子が、紐状に連なって2つ以上の金属ナノワイヤに接合している状態、d)複数の金属微粒子が、凝集した状態で2つ以上の金属ナノワイヤに接合している状態等をいう。
【0039】
本発明において、透明導電膜における金属ナノワイヤと金属微粒子の換算膜厚は、導電性と透明性の関係から5〜100nmであることが好ましく、10〜80nmであることがより好ましい。ここで換算膜厚とは、透明導電素子単位面積当たりの金属ナノワイヤ及び金属微粒子の平均質量と等しい質量を有する均一な金属膜の厚みを意味する。
【0040】
(透明樹脂)
また、本発明の透明導電膜は、金属ナノワイヤと金属微粒子の他に、透明樹脂を含有してもよい。透明樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂等を単独あるいは複数併用して用いることができる。これらは、少なくとも金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液や、少なくとも金属ナノワイヤを含有する塗布液、少なくとも粒状金属化合物と還元剤を含有する塗布液等に含有させることもできるが、別の塗布液として準備してオーバーコートしてもよい。塗布量としては、金属ナノワイヤが完全には埋もれてしまわない量であることが好ましい。
【0041】
〔導電性高分子化合物〕
本発明の透明導電膜は、金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜の他に、導電性高分子化合物や導電性微粒子含有層を積層してもよい。これは、金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜のどちらの側に設けてもよいが、金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜の少なくとも一部が、導電性高分子化合物あるいは導電性微粒子含有層と重なっていることがより好ましい。例えば、金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜上に、導電性高分子化合物や導電性微粒子含有塗布液をオーバーコートすることにより形成できる。前述のように、透明樹脂を金属ナノワイヤが完全には埋もれてしまわない量含んだ金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜上に、導電性高分子化合物や導電性微粒子含有塗布液を金属ナノワイヤが完全に埋もれる量オーバーコートすれば、導電性高分子化合物や導電性微粒子含有層による透明性の低下を最低限に収めつつ、かつ、表面を平坦化できるのでより好ましい形態となる。
【0042】
本発明に用いられる導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンからなる群より選ばれる化合物を挙げることができる。これらの導電性高分子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明においては、上記導電性高分子の導電性をより高めるために、ドーピング処理を施すことができる。導電性高分子に対するドーパントとしては、例えば、炭素数が6〜30の炭化水素基を有するスルホン酸(以下「長鎖スルホン酸」ともいう。)あるいはその重合体(例えば、ポリスチレンスルホン酸)、ハロゲン、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、MClO(M=Li、Na)、R(R=CH、C、C)、またはR(R=CH、C、C)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも、上記長鎖スルホン酸が好ましい。
【0044】
また、本発明の透明導電膜は、水溶性有機化合物を含有してもよい。水溶性有機化合物の中で、導電性高分子材料に添加することによって導電性を向上させる効果を有する化合物が知られており、2nd.ドーパント(あるいは増感剤)と称する場合がある。本発明で用いることができる2nd.ドーパントには特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。中でも、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0045】
導電性微粒子としては、透明性から無機半導体微粒子であることが好ましく、例えば、錫や亜鉛をドープした酸化インジウム(ITO、IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)、フッ素やアンチモンをドープした酸化錫(FTO、ATO)等の微粒子を挙げることができる。
【0046】
〔添加剤〕
本発明の、金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜においてには、目的に応じて、可塑剤、酸化防止剤等の安定剤、マイグレーション防止剤、界面活性剤、分散剤、染料や顔料等の着色剤等の添加物を含んでいてもよい。
【0047】
〔疎水化処理〕
本発明においては、水系にて製造した金属ナノワイヤや金属ナノ粒子を、必要に応じて疎水化処理することができる。例えば、金属ナノワイヤを疎水化処理する方法としては、特開2007−500606号公報等を参考にできる。金属ナノ粒子を疎水化する方法としては、特開2006−299329号公報等を参考にできる。
【0048】
〔液相成膜法〕
透明な樹脂支持体(以後、単に透明な支持体もしくは支持体ともいう)上に、本発明の透明導電膜を成膜する方法としては、高生産性と生産コスト低減の両立、及び環境負荷軽減の観点から、塗布法や印刷法等の液相成膜法を用いることが好ましい。塗布法としては、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等を用いることができる。印刷法としては、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
【0049】
液相成膜法で透明導電膜を形成した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、透明樹脂支持体や透明導電膜が損傷しない範囲の温度で処理することが好ましい。また、本発明に係る金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜を形成した後、いずれかのタイミングで必要に応じて加圧または加圧加熱処理処理を施すこともできる。これにより、より高い導電性を得たり、表面の平滑化が可能となる。加圧に際しては、プレート上でプレートで加圧する面/面加圧、ロールとロールの間に基材フィルムを通過させながら加圧させるニップロール加圧、プレート上をロールで加圧する組み合わせた加圧を採用することができる。また、加圧に際して加熱すると効果的になるので、40〜300℃の範囲で加熱することが好ましい。特に透明樹脂を併用する場合は、透明樹脂のTg以上に加熱することが好ましい。加熱の時間は温度との関係で調節されて、高い温度では短く、低温では長くというようにすることができる。加熱の方法は、ニップロールの場合には、ロールを予め所定の温度に加熱しておく方法やオートクレーブ室のような加熱室内で加熱する方法がある。
【0050】
〔透明導電性フィルム〕
本発明の、金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜を、透明樹脂フィルム上に設けることにより透明導電性フィルムとすることができる。金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜の基材として、透明樹脂フィルムを用いて直接透明樹脂フィルム上に設けてもよいし、別の基材上に作製した後に透明樹脂フィルムに転写してもよい。
【0051】
本発明に用いられる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0052】
透明樹脂フィルムには、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については、従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理とは、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としてはポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0053】
本発明の透明導電性フィルムの全光線透過率は、60%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であることが望ましい。全光透過率は、分光光度計やヘイズメーター等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0054】
本発明の透明導電性フィルムにおける電気抵抗値としては、表面抵抗率として10Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗率は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0055】
本発明の透明導電性フィルムは、後述の各種透明電極や電磁波シールドフィルムとして好ましく用いることができる。
【0056】
〔フレキシブル透明面電極〕
本発明の金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜を透明樹脂フィルム上に形成した透明導電性フィルムは、フレキシブル透明面電極として好ましく使用でき、例えば、有機ELや無機ELディスプレイや照明、各種電子ペーパー、太陽電池等の透明電極として好ましく使用できる。特に、10cmやA4サイズ程度、あるいはそれ以上といった大きな面積の電極として使用する場合、従来のITOフィルム等では給電からの距離が遠い部分では電極でのわずかな電圧降下が無視できなくなり悪影響がでる。一方、本発明のフレキシブル透明面電極では、低抵抗の金属ナノワイヤ部により、給電から遠い部分にもほとんど電圧降下なく電流を供給できることから、本発明が特に有効となる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0058】
実施例1
〔透明導電性フィルムの作製〕
(下引き済みPENフィルム)
帝人デュポン社製、膜厚90μmの二軸延伸PENフィルムの両面に12W・min/mのコロナ放電処理を施し、それぞれの面に下引き塗布液B−1を乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、さらに、それぞれの面のB−1乾燥膜上に12W・min/mのコロナ放電処理を施し、その上に下引き塗布液B−2を乾燥膜厚0.2μmになるように塗布した。その後、120℃で1.5分の熱処理を実施し、下引き済みPENフィルムを得た。
【0059】
〈下引き塗布液B−1〉
スチレン20質量部、グリシジルメタクリレート40質量部、ブチルアクリレート40質量部の共重合体ラテックス液(固形分30%) 50g
SnOゾル(A) 440g
化合物(UL−1) 0.2g
水で1000mlに仕上げる
〈下引き塗布液B−2〉
変性ポリエステルA(固形分18%) 215g
化合物(UL−3) 0.4g
真球状シリカマット剤 シーホスターKE−P50(日本触媒社製) 0.3g
水で1000mlに仕上げる
【0060】
【化1】

【0061】
〈SnOゾル(A)の合成〉
SnCl・5HO 65gを蒸留水2000mlに溶解して均一溶液とし、次いでこれを煮沸し沈澱物を得た。生成した沈澱物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて何度も水洗した。沈澱を水洗した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈澱物に蒸留水を添加し全量を2000mlとする。これに30%アンモニア水40mlを加え加温することにより、均一なゾルを得た。さらに、アンモニア水を添加しながらSnOの固型分濃度が8.3質量%になるまで加熱濃縮し、SnOゾル(A)を得た。
【0062】
〈変性水性ポリエステルAの合成〉
重縮合用反応容器に、テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホ−イソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を投入し、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。その後、さらに反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、変性水性ポリエステルAの前駆体を得た。前駆体の固有粘度は0.33であった。
【0063】
攪拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの三つ口フラスコに、純水850mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、150gの上記前駆体を徐々に添加した。室温でこのまま30分間攪拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、固形分濃度が15質量%の溶液を調製した。
【0064】
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、上記前駆体溶液1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱した。この中に、過硫酸アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、さらに3時間反応を続けた。その後、30℃以下まで冷却し、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルAの溶液を調製した(ポリエステル成分/アクリル成分=80/20)。
【0065】
(透明導電性フィルム101の作製)
Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745に記載の方法を参考に、平均直径60nm、平均長さ5.5μmの銀ナノワイヤを作製し、フィルターを用いて銀ナノワイヤを濾別、水洗処理を施した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ分散液W−10(銀ナノワイヤ含有量0.5%)を調製した。
【0066】
イオン交換水50mlに硝酸銀10.0gを溶解し、さらに、これに分散剤としてディスパービック190(ビックケミー社製)6.25gを添加した水溶液に、攪拌しながら2M水酸化ナトリウム水溶液を29.5ml滴下し、攪拌を10〜30分続けて、酸化銀微粒子の懸濁液を調製した。この懸濁液中の酸化銀微粒子の粒径を、粒径測定器(商品名;HORIBA LA−920、堀場製作所社製)で測定したところ、その平均粒径は0.1μmであった。次いで、この酸化銀微粒子の懸濁液を、メタノールで2〜5回洗浄し、余分なイオン類を除去した。次いで、これを熱風乾燥炉にて、温度50℃で、5時間乾燥させて、酸化銀微粒子組成物を得後、エタノール中に再分散して酸化銀分散液(酸化銀微粒子含有量0.5%)を調製した。この分散液の粒径測定器にて測定したところ、その平均粒径は、懸濁液中の酸化銀微粒子の平均粒径と同じであった。次いで、この分散液200gに、還元剤としてエチレングリコールを0.5g添加して還元剤含有酸化銀分散液P−10を作製した。
【0067】
得られたW−10とP−10を、銀ナノワイヤと酸化銀粒子の質量比が100:1の比率になるよう混合し、銀ナノワイヤと酸化銀粒子と還元剤を含有する塗布液M−10を調製した。
【0068】
塗布液M−10を、前述の下引き済みPENフィルム上に換算膜厚が30nmになるように塗布した後、80℃にて乾燥処理し、引き続いて140℃のオーブンで5分間加熱処理を行った。続いて、ウレタンアクリレートの溶液(メチルイソブチルケトン溶媒)を乾燥後の換算厚さが40nm相当になるように塗布し、本発明の透明導電性フィルム101を作製した。
【0069】
(透明導電性フィルム102の作製)
透明導電性フィルム101の作製において、W−10とP−10を、銀ナノワイヤと酸化銀粒子の質量比が30:1の比率になるよう混合した以外は同様にして本発明の透明導電性フィルム102を作製した。
【0070】
(透明導電性フィルム103の作製)
透明導電性フィルム101の作製において、W−10とP−10の混合液は作製せずに、銀ナノワイヤと酸化銀粒子の質量比と、乾燥後の換算厚さが同様になるようにW−10を塗布乾燥した後、その上にP−10を塗布した以外は同様にして本発明の透明導電性フィルム103を作製した。
【0071】
(透明導電性フィルム201の作製)
透明導電性フィルム103の作製において、P−10の液を塗布しなかった以外は同様にして比較の透明導電性フィルム201を作製した。
【0072】
(透明導電性フィルム202の作製)
透明導電性フィルム101の作製において、加熱処理をしなかった以外は同様にして比較の透明導電性フィルム202を作製した。
【0073】
(比較フィルム203の作製)
透明導電性フィルム101の作製において、P−10の変わりに銀微粒子分散液とした以外は同様にして比較の透明導電性フィルム203を作製した。
【0074】
〔透明導電性フィルムの評価〕
作製した各透明導電性フィルムの表面抵抗率及び全光線透過率(以下、単に「透過率」という。)を、各々JIS K 7194:1994及びJIS K 7361−1:1997に準拠した方法で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表より、本発明の透明導電性フィルムは比較の透明導電性フィルムに比べ、高い導電性と良好な透明性を有することが分かる。また、各透明導電性フィルムを電子顕微鏡観察したところ、本発明の透明導電性フィルム101、102、103は金属微粒子により金属ナノワイヤが接合している状態を観察できたが、比較の透明導電性フィルム202、203では金属ナノワイヤに接触している金属微粒子は存在するが接合はしていなかった。
【0077】
実施例2
〔表示素子の作製〕
(透明導電性フィルム104の作製)
実施例1で作製した透明導電性フィルム101上に、導電性高分子層として、スルホン酸系ドーパントを含有する導電性ポリアニリンの分散液ORMECON D1033(ドイツ オルメコン社製)を用いて、乾燥膜厚が130nmとなるように塗布乾燥して、本発明の透明導電性フィルム104を作製した。
【0078】
(透明導電性フィルム105の作製)
透明導電性フィルム104の作製において、導電性高分子の変わりに下記のITO微粒子を、ブチラール樹脂BM−S(積水化学社製)の溶液(メチルエチルケトン/トルエン=2/1の質量比の混合溶媒)にITO粒子とブチラール樹脂の体積比率が2:1になるように混合して用いた以外は同様にして、本発明の透明導電性フィルム105を作製した。
【0079】
(ITO微粒子)
InClを35質量%含む水溶液と、SnClを80質量%含む水溶液を混合し、27℃に溶液温度を保ちながら6.3%のアンモニア水を徐々に加えて、水溶液のpHが9になるように調整した。この溶液を27℃で50分間攪拌しIn、Snの共沈水酸化物を得た。この共沈物を濾別し、イオン交換水で洗浄した後、500℃で2.5時間焼成することにより針状ITO粒子の凝集体を得た。この粒子を機械的に粉砕することにより、ITO微粒子を得た。
【0080】
(透明導電性フィルム204の作製)
帝人デュポン社製、膜厚90μmの二軸延伸PENフィルムに、公知のスパッタリング法でITO膜を作製して比較の透明導電性フィルム204を作製した。表面抵抗は100Ω/□であった。
【0081】
(表示素子S−101の作製)
10cm×12cmの透明導電性フィルム101を準備して、透明面電極101とした。
【0082】
(電解質溶液1の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mgを加えて完全に溶解した後、酸化チタン0.5gを加えて超音波分散機にて酸化チタンを分散した。この溶液にポリビニルアルコール(ケン化度約87〜89%、重合度4500)を150mg加えて120℃に加熱しながら1時間攪拌し、電解質溶液1を得た。
【0083】
(金属電極の作製)
厚さ1.5mmで10cm×12cmのガラス基板上に、公知のスパッタリング法でCu膜を全面に形成した後、電解メッキによりCu極上に銀を10μm堆積させて、銀電極(電極2)を得た。
【0084】
(表示素子の作製)
上記調製した電解質溶液1に、平均粒子径が20μmのポリアクリル製の球形ビーズを体積分率として4体積%になるように加えて攪拌した溶液を、上記電極2の上に塗布し、その上から透明面電極101を直角方向に組合せて表示素子S−101を作製した。重ね合わされた10cm×10cmの部分が表示部(黒/白ベタ)であり、残りの部分がリード部として用いられる。リード部全体に導電性銀ペーストを十分な膜厚で塗布した。
【0085】
透明導電性フィルム101を、透明導電性フィルム104、105、201、202、203、204に変更し、同様にして表示素子S−104、S−105、S−201、S−202、S−203、S−204を作製した。
【0086】
〔表示素子の評価〕
作製した各表示素子について、単一乾電池を2個直列に接続した電源を用いて、透明電極側に−、電極2側に+を接続し、全体の表示状態を目視観察で、微小領域の表示状態をルーペ観察した。
【0087】
その結果、本発明の透明面電極を用いたS−101は目視では全面ほぼ均一な黒表示となった。ルーペで観察すると問題とならないレベルであるが、微妙な濃度ムラが見られた。本発明の透明面電極を用いたS−104及びS−105は目視、ルーペ観察とも均一な黒表示となった。これに対し、比較の透明面電極を用いたS−201、202、203はリードから遠い部分は濃度がわずかに低下し、目視で分かるレベルであり、NGレベルである。ルーペで観察すると微妙な濃度ムラも見られた。比較の透明面電極を用いたS−204はリードから遠い部分は濃度が明らかに低下し、NGである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノワイヤ及び金属微粒子を含む透明導電膜において、少なくとも該金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布膜を加熱処理することにより、少なくとも一部の金属ナノワイヤが該粒状金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合していることを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
前記塗布膜が、少なくとも金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液を基材上に塗布乾燥して得られることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
【請求項3】
少なくとも金属ナノワイヤを含有する塗布液を基材上に塗布乾燥した後、少なくとも粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布液を金属ナノワイヤ塗布膜上に塗布し、さらに、加熱処理することにより、少なくとも一部の金属ナノワイヤが該粒状金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合していることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
【請求項4】
透明樹脂フィルム上に、請求項1〜3のいずれか1項記載の透明導電膜を有することを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記透明導電膜上に、さらに導電性高分子または導電性微粒子含有層が積層されていることを特徴とする請求項4記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
請求項4または5記載の透明導電性フィルムを用いることを特徴とするフレキシブル透明面電極。

【公開番号】特開2013−84628(P2013−84628A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−18942(P2013−18942)
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2007−307148(P2007−307148)の分割
【原出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】