説明

透明導電膜および透明導電膜用コーティング組成物

【課題】 少量の添加にて、マトリックスの特性を損なわずに、電気的特性を制御性良く改善し、かつ良好な透明性を発揮してなる透明導電膜および透明導電膜用コーティング組成物を提供する。
【解決手段】 樹脂マトリックス中に炭素繊維構造体を分散させてなる透明導電膜であって、前記炭素繊維構造体は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする透明導電膜である。ガラス基板上に膜厚0.1〜5μmに形成された場合おいて、表面抵抗値1.0×1012Ω/□以下、全光線透過率が30%以上である特性を有する。当該透明導電膜を形成するコーティング組成物は、平均粒子径0.05〜1.5mmのビーズを用いたメディアミルで、炭素繊維構造体を分散させて調製されることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明導電膜および透明導電膜用コーティング組成物に関するものである。詳しく述べると、本発明は、良好な透明性を有する一方で高い導電特性を発揮する透明導電膜およびこれを形成するための透明導電膜用コーティング組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、透明性を有する導電膜は、例えば、液晶表示装置や有機EL装置などの各種電子デバイスにおける電極材料として、また、例えば、クリーンルームのパーティションや試験装置の覗窓といった透視可能でかつ塵埃を嫌う部材において静電気を除去して塵埃付着を防止する用途等において用いられている。
【0003】
このような透明導電膜としては、従来例えば、ITOやIZO等といった無機酸化物系のもの、金属蒸着フィルム等が広く用いられているが、その電気的特性の制御が困難である、適用可能な基材の種類が限定される等の制約がある。
【0004】
また、マトリックス中に金属、金属酸化物あるいはカーボン等の微粒子を配合して導電性を付与してなる導電膜も知られており、さらに例えば、特許文献1および2には、極細の長炭素繊維を熱可塑性樹脂中に配合してなる導電性透明樹脂板が、また特許文献3には、カーボンナノチューブが一本一本分離した状態であるいは複数本集まって束になったものが一束づづ分離した状態で熱可塑性樹脂中に分散してなる導電性透明樹脂板が提唱されている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜3に示されるものにおいては、単繊維状の長炭素繊維あるいはカーボンナノチューブを熱可塑性樹脂マトリックスに配合するものであり、これら繊維をマトリックス中に均一に分散させることが困難であり、面内において均一な導電特性が得られない虞れが高いものであった。また、分散性を上げようとしてマトリックス中での混練を高めると繊維が裁断されてしまうというという問題が生じ、所定の導電性を得るために、大量の繊維の添加する必要が生じ、透明性を低下させる原因となっていた。
【特許文献1】特開2001−62952号公報
【特許文献2】特開2004−195993号公報
【特許文献2】特開2004−230690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、少量の添加にて、マトリックスの特性を損なわずに、電気的特性を制御性良く改善し、かつ良好な透明性を発揮してなる透明導電膜および透明導電膜用コーティング組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討の結果、その添加量が少なくても十分な電気的特性を発揮させるためには、可能な限り微細な炭素繊維を用い、さらにこれら炭素繊維が一本一本ばらばらになることなく互いに強固に結合し、疎な構造体で樹脂中に保持されるものであること、また炭素繊維自体の一本一本が極力欠陥の少ないものであることが有効であること、また、これらをマトリックス中に分散させる上で、特定の分散処理を行うことにより、炭素繊維構造を破壊することなく均一に分散させ得ることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、樹脂マトリックス中に炭素繊維構造体を分散させてなる透明導電膜であって、前記炭素繊維構造体は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする透明導電膜である。
【0009】
本発明はまた、樹脂100質量部に対し、炭素繊維構造体1〜25質量部を分散させてなることを特徴とする透明導電膜を示すものである。
【0010】
本発明はさらに、ガラス基板上に膜厚0.1〜5μmに形成された場合おいて、表面抵抗値1.0×1012Ω/□以下、全光線透過率が30%以上であることを特徴とする透明導電膜を示すものである。
【0011】
上記課題を解決する本発明は、さらに、ビヒクル不揮発成分として樹脂を含有する液状樹脂組成物中に、炭素繊維構造体を分散させてなる透明導電膜用コーティング組成物であって、前記炭素繊維構造体は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする透明導電膜用コーティング組成物である。
【0012】
本発明はまた、液状樹脂組成物100質量部に対し、炭素繊維構造体1〜25質量部を配合してなることを特徴とする透明導電膜用コーティング組成物を示すものである。
【0013】
本発明はさらに、平均粒子径0.05〜1.5mmのビーズを用いたメディアミルで、炭素繊維構造体を分散させて調製されたものであることを特徴とする請求項4または5に記載の透明導電膜用コーティング組成物を示すものである。
【0014】
本発明はさらに、前記メディアミルによる分散処理に先立ち、さらに、高速せん断型分散装置を用いて分散処理を行うことにより調製されたものであることを特徴とするの透明導電膜用コーティング組成物を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、導電性付与剤として樹脂マトリックス中に配合される炭素繊維構造体が、複数本の微細径の炭素繊維を、前記炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって互いに強固に結合し、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を有するものであるために、樹脂マトリックス中に配合された際、当該炭素繊維構造体は、疎な構造を残したまま容易に分散し、少量の添加量においても、マトリックス中に、微細な炭素繊維を均一な広がりをもって配置することができる。このように、マトリックス全体に微細な炭素繊維を均一に分散分布させ得るため、少量添加においてもマトリックス全体に良好な導電性パスが形成され、制御性よく良好な導電性を付与してなる導電膜とすることができ、また均一分散可能であるため、その透明性に関しても良好なものとなるものである。
【0016】
また、このような透明導電膜を形成するコーティング組成物を調製するにおいて、上記したような所定粒子径のビーズを用いたメディアミルを用いることによって、例えば、界面活性剤等の分散安定剤を用いずとも、良好な均一分散を達成し得、しかも上記炭素繊維構造体における繊維構造を破壊する虞れもない。従った、上述したような良好な特性を有する透明導電膜を容易に形成し得るものとなる。さらに、上記メディアミルによる分散処理に先立ち、高速せん断型分散装置を用いて分散処理を行うことにより、より均一な分散性が得られるものとなり、製膜した際における特性向上が図れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る透明導電膜は、熱硬化性樹脂マトリックス中に以下に述べるような特定の炭素繊維構造体を分散させてなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る透明導電膜に配合される炭素繊維構造体は、例えば、図2(a)および(b)に示すTEM写真に見られるように、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有することを特徴とする炭素繊維構造体である。
【0020】
炭素繊維構造体を構成する炭素繊維の外径を、15〜100nmの範囲のものとするのは、外径が15nm未満であると、後述するように炭素繊維の断面が多角形状とならず、一方、炭素繊維の物性上直径が小さいほど単位量あたりの本数が増えるとともに、炭素繊維の軸方向への長さも長くなり、高い導電性が得られるため、100nmを越える外径を有することは、樹脂等のマトリックスへ導電性付与剤として配される炭素繊維構造体として適当でないためである。なお、炭素繊維の外径としては特に、20〜70nmの範囲内にあることが、より望ましい。この外径範囲のもので、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層したもの、すなわち多層であるものは、曲がりにくく、弾性、すなわち変形後も元の形状に戻ろうとする性質が付与されるため、炭素繊維構造体が一旦圧縮された後においても、樹脂等のマトリックスに配された後において、疎な構造を採りやすくなる。
【0021】
なお、2400℃以上でアニール処理すると、積層したグラフェンシートの面間隔が狭まり真密度が1.89g/cmから2.1g/cmに増加するとともに、炭素繊維の軸直交断面が多角形状となり、この構造の炭素繊維は、積層方向および炭素繊維を構成する筒状のグラフェンシートの面方向の両方において緻密で欠陥の少ないものとなるため、曲げ剛性(EI)が向上する。
【0022】
加えて、該微細炭素繊維は、その外径が軸方向に沿って変化するものであることが望ましい。このように炭素繊維の外径が軸方向に沿って一定でなく、変化するものであると、樹脂等のマトリックス中において当該炭素繊維に一種のアンカー効果が生じるものと思われ、マトリックス中における移動が生じにくく分散安定性が高まるものとなる。
【0023】
そして本発明に係る炭素繊維構造体においては、このような所定外径を有する微細炭素繊維が3次元的に存在するが、これら炭素繊維は、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているものである。このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、樹脂等のマトリックス中に配した場合に当該構造体が炭素繊維単体として分散されることなく、嵩高な構造体のままマトリックス中に分散配合されることができる。また、本発明に係る炭素繊維構造体においては、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって炭素繊維同士が互いに結合されていることから、その構造体自体の電気的特性等も非常に優れたものであり、例えば、一定圧縮密度において測定した電気抵抗値は、微細炭素繊維の単なる絡合体、あるいは微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等の値と比較して、非常に低い値を示し、マトリックス中に分散配合された場合に、良好な導電パスを形成できることができる。
【0024】
さらに、特に限定されるわけではないが、この粒状部の粒径は、図2に示すように、前記微細炭素繊維の外径よりも大きいことが望ましい。このように炭素繊維相互の結合点である粒状部の粒径が十分に大きなものであると、当該粒状部より延出する炭素繊維に対して高い結合力がもたらされ、樹脂等のマトリックス中に当該炭素繊維構造体を配した場合に、ある程度のせん弾力を加えた場合であっても、3次元的な構造を保持したままマトリックス中に分散させることができる。なお、本明細書でいう「粒状部の粒径」とは、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして測定した値である。
【0025】
さらに、本発明に係る炭素繊維構造体は、上記したように炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しており、このため当該構造体は炭素繊維が疎に存在した嵩高な構造を有するが、具体的には、例えば、その嵩密度が0.0001〜0.05g/cm、より好ましくは0.001〜0.02g/cmであることが望ましい。嵩密度が0.05g/cmを超えるものであると、少量添加によって、樹脂マトリックスの物性を改善することが難しくなるためである。
【0026】
また、本発明に係る炭素繊維構造体は、3次元的に存在する炭素繊維がその成長過程において形成された粒状部において互いに結合されていることから、上記したように構造体自体の電気的特性等も非常に優れたものであるが、例えば、一定圧縮密度0.8g/cmにおいて測定した粉体抵抗値が、0.02Ω・cm以下、より望ましくは、0.001〜0.010Ω・cmであることが好ましい。粉体抵抗値が0.02Ω・cmを超えるものであると、樹脂マトリックスに配合された際に、良好な導電パスを形成することが難しくなるためである。
【0027】
また、本発明に係る炭素繊維構造体は、高い強度および導電性を有する上から、炭素繊維を構成するグラフェンシート中における欠陥が少ないことが望ましく、具体的には、例えば、ラマン分光分析法で測定されるI/I比が、0.2以下、より好ましくは0.1以下であることが望ましい。ここで、ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛では1580cm−1付近のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1付近にピーク(Dバンド)が出現する。このため、DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)が上記したように所定値以下であると、グラフェンシート中における欠陥量が少ないことが認められるためである。
【0028】
本発明に係る前記炭素繊維構造体はまた、空気中での燃焼開始温度が750℃以上、より好ましくは800〜900℃であることが望ましい。前記したように炭素繊維構造体が欠陥が少なく、かつ炭素繊維が所期の外径を有するものであることから、このような高い熱的安定性を有するものとなる。
【0029】
上記したような所期の形状を有する炭素繊維構造体は、特に限定されるものではないが、例えば、次のようにして調製することができる。
【0030】
基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して繊維構造体(以下、中間体という)を得、これをさらに高温熱処理する。
【0031】
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素(CO)、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、本発明に係る繊維構造体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様も含むものである。雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
【0032】
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
【0033】
中間体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素および触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、前記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cmから数十センチの大きさの集合体を合成する。
【0034】
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしながら、本発明に係る炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。もちろん、このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受け、また、前記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度およびガス温度等によっても影響受けるが、概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長方向を一定方向とすることなく、制御下に多方向として、本発明に係るような三次元構造を形成することができるものである。なお、生成する中間体において、繊維相互が粒状体により結合された前記したような三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、およびガス温度等を最適化することが望ましい。
【0035】
触媒および炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の一定温度で加熱生成して得られた中間体は、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合わせたような(生焼け状態の、不完全な)構造を有し、ラマン分光分析をすると、Dバンドが非常に大きく、欠陥が多い。また、生成した中間体は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属を含んでいる。
【0036】
従って、このような中間体からこれら残留物を除去し、欠陥が少ない所期の炭素繊維構造体を得るために、適切な方法で2400〜3000℃の高温熱処理する。
【0037】
すなわち、例えば、この中間体を800〜1200℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去した後、2400〜3000℃の高温でアニール処理することによって所期の構造体を調製し、同時に繊維に含まれる触媒金属を蒸発させて除去する。なお、この際、物質構造を保護するために不活性ガス雰囲気中に還元ガスや微量の一酸化炭素ガスを添加してもよい。
【0038】
前記中間体を2400〜3000℃の範囲の温度でアニール処理すると、炭素原子からなるパッチ状のシート片は、それぞれ結合して複数のグラフェンシート状の層を形成する。
【0039】
また、このような高温熱処理前もしくは処理後において、炭素繊維構造体の円相当平均径を数cmに解砕処理する工程と、解砕処理された炭素繊維構造体の円相当平均径を50〜100μmに粉砕処理する工程とを経ることで、所望の円相当平均径を有する炭素繊維構造体を得る。なお、解砕処理を経ることなく、粉砕処理を行っても良い。また、本発明に係る炭素繊維構造体を複数有する集合体を、使いやすい形、大きさ、嵩密度に造粒する処理を行っても良い。さらに好ましくは、反応時に形成された上記構造を有効に活用するために、嵩密度が低い状態(極力繊維が伸びきった状態でかつ空隙率が大きい状態)で、アニール処理するとさらに樹脂への導電性付与に効果的である。
【0040】
本発明の透明導電膜において、マトリックスとなる樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、その他天然樹脂ないしその変性物等各種のものであり得るが、このうち、薄膜コーティングが容易である点から、熱硬化性樹脂系のものが好ましい。
【0041】
本発明の透明導電膜において、樹脂中における前記炭素繊維構造体の配合量としては、特に限定されるものではないが、良好な透明性および導電特性を得る上からは、一般的には、樹脂100質量部に対し、炭素繊維構造体1〜25質量部を分散させてなることが好ましい。このような配合を有する本発明の透明導電膜は、例えば、ガラス基板上に膜厚0.1〜5μmに形成された場合おいて、表面抵抗値1.0×1012Ω/□以下、全光線透過率が30%以上である特性を発揮することができる。また、透明導電膜のヘイズ値としては、30%以下となる。
【0042】
さらに、例えば、透明電極材料等としての用途においては、例えば、樹脂100質量部に対し、炭素繊維構造体10〜25質量部を分散させることが好ましく、この場合において、表面抵抗値10〜10Ω/□、全光線透過率が50%以上である特性を有することが、また、例えば、静電除去用窓材等のとしての用途においては、例えば、樹脂100質量部に対し、炭素繊維構造体1〜10質量部を分散させることが好ましく、この場合において、表面抵抗値10〜1012Ω/□、全光線透過率が30%以上である特性を有することがそれぞれ望ましい。
【0043】
次に、上述したような透明導電膜を形成するための本発明に係るコーティング組成物について説明する。
【0044】
本発明に係るコーティング組成物は、ビヒクル不揮発成分として樹脂を含有する液状樹脂組成物中に、上述したような特定構造の炭素繊維構造体を分散させてなるものである。
【0045】
このコーティング組成物において用いられる炭素繊維構造体としては、上記に詳述した通りのものである。
【0046】
一方、本発明において用いられる液状樹脂組成物とは、水性または油性の、塗料組成物、インキ組成物、各種コーティング組成物などといった、ビヒクル不揮発成分として樹脂を溶媒に溶解あるいは分散媒に分散した各種液状樹脂組成物が含まれる。樹脂成分としては、可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、その他天然樹脂ないしその変性物等の造膜性を有する有機物が含まれ、具体的には例えば、水性アクリル系、ラッカーなどのアクリル系、アルキッド、各種変性アルキッド、不飽和ポリエステルなどのエステル系、メラミン系、ウレタン系、エポキシ系、その他、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアミド、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂などを挙げることができるが、これらに何ら限定されるものではない。そして、このような含まれる樹脂成分によって、焼付硬化型、常温硬化型等の各種タイプを採ることができる。
【0047】
また、液状樹脂組成物において、溶媒あるいは分散媒として用いられる液体としても、特に限定されるものではなく、使用される樹脂成分に応じて、適当なものを選択し得るが、具体的には、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のグリコールないしその誘導体類;グリセロール、グリセロールモノエチルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等のグリセロールないしその誘導体類;N−メチルピロリドンなどのアミド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;流動パラフィン、デカン、デセン、メチルナフタレン、デカリン、ケロシン、ジフェニルメタン、トルエン、ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、シクロヘキサン、部分的に水が添加されたトリフェニル等の炭化水素類、ポリジメチルシロキサン、部分オクチル置換ポリジメチルシロキサン、部分フェニル置換ポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロジフェニル、クロロジフェニルメタン等のハロゲン化炭化水素類;ふっ化物類;安息香酸エチル、安息香酸オクチル、フタル酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、セバシン酸ジブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル等のエステル化合物類などが挙げられる。
【0048】
本発明にかかるコーティング組成物の製造方法において、このような熱硬化性樹脂組成物に対する上記炭素繊維構造体の配合量としては、特に限定されるわけではなく、得ようとする透明導電膜に必要とされる電気的特性等に応じて適宜選択されるが、例えば、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、炭素繊維構造体1〜25質量部程度配合することができる。このような配合割合のいずれの範囲においても、炭素繊維構造体が均一に分散された組成物を得ることができる。
【0049】
なお、本発明において用いられるコーティング組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の種々の添加剤、例えば、顔料および染料などの着色剤、各種安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤等を配合することが可能である。
【0050】
本発明に係る透明導電膜用コーティング組成物は、用いられる炭素繊維構造体が上述したように疎な構造体であって分散性が良好であるため、比較的分散性の高いものとして得られるが、好ましくは、メディアミル、特に、平均粒子径0.05〜1.5mmのビーズを用いたメディアミルで、炭素繊維構造体を分散させて調製されたものであることが好ましい。さらに好ましくは、このようなメディアミルによる分散処理に先立ち、以下に詳述するような高速せん断型分散装置を用いて分散処理を行い、続いてメディアミルによる分散処理を施すことにより調製されたものであることがより好ましい。
【0051】
なお、メディアミルに用いるビーズの粒子径としては、あまりが小さすぎると、カーボンナノ構造体が微細に破断されてしまう虞れがあり、また、ビーズの持つ運動エネルギーが小さくなり、分散が進行しない恐れがある。また、取り扱いが困難となるため、ビーズの平均直径が、0.05mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが特に好ましい。一方、ビーズが大きすぎると、単位体積あたりのビーズ個数が少なくなるため分散効率が低下し、カーボンナノ構造体の粉砕が不十分となり、アスペクト比が大きい状態でカーボンナノ構造体が存在することとなって、塗料やコーティング剤としての液性が得られなくなる虞れがある。このため、ビーズの平均直径が、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることが特に好ましい。
【0052】
メディアミルに用いられる分散メディアとしてのビーズの材質は特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ、ジルコニア、鋼、クロム鋼、ガラスなどを例示することができるが、このうち、製品中の不純物の存在、また、比重に起因する運動エネルギーの大きさを等を考慮すると、ジルコニアビーズを用いることが好ましい。
【0053】
ビーズの形状も特に限定されるものではないが、一般的には球形状のものが使用される。
【0054】
メディアミルは構造としては、特に限定されるものではなく、各種公知のメディアミルが適用できる。具体的には、各種公知のアトライター、サンドミル、ボールミルなどが挙げられる。
【0055】
なお、ビーズのベッセルへの充填割合はベッセルや撹拌子の形態等によって決定すればよく、特に限定されるものではないが、その割合が低すぎると炭素繊維構造体に対し十分な粉砕ないし切断作用を発揮できなくなる虞れがある。一方、その割合が高すぎると、回転に大きな駆動力を必要とし、またビーズの磨耗による被処理媒体の汚染の増大を引き起こす虞れがある。このため、ビーズの充填割合は、例えば、ベッセルの有効容積の70〜85容積%程度とすることが望ましい。
【0056】
また、処理時間、軸回転数、ベッセル内圧、モーター負荷等の操作条件は、カーボンナノ構造体の配合量、および分散させるべき樹脂の特性、特に、粘度やカーボンナノ構造体との相溶姓などにより左右され、その目的に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
また、このようなメディアミルによる分散処理に先立ち、用いられる高速せん断型分散装置としては、例えば、高速回転可能な攪拌ホイールと、この攪拌ホイールの外周面に近傍する内周面を有する容器部とを有し、当該ホイールを先端速度30m/s以上で高速回転させ、ホイールの遠心力によって、被処理液が容器内側面に回転しながら薄膜状に押し付けられ、該薄膜に前記ホイールの先端部が接触して、被処理液を攪拌する機能を有するミキサーが好ましく、その他のインライン・ローター・ステーター式ミキサー等も好ましく用いられる。このような好ましい高速せん断型分散装置として、具体的には例えば、TKフィルミックス(特殊機化工業(株))等を例示できる。
【0058】
また、これら以外にも、例えば、TKラボディスパー、TKパイプラインミクサー、TKホモミックラインミル、TKホモジェッター、TKユニミキサー、TKホモミックラインフロー、TKアヂホモディスパー(以上、特殊機化工業(株))、ホモジナイザー・ポリトロン((株)セントラル科学貿易)、ホモジナイザー・ヒストロン((株)日音医理科器機製作所)、バイオミキサー((株)日本精機製作所)、ターボ型攪拌機((株)小平製作所)、ウルトラディスパー(浅田鉄鋼(株))、エバラマイルザー(荏原製作所(株))等の高速せん断型分散装置を用いることも可能である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
なお、以下において、各物性値は次のようにして測定した。
【0061】
<嵩密度の測定>
内径70mmで分散板付透明円筒に1g粉体を充填し、圧力0.1Mpa、容量1.3リットルの空気を分散板下部から送り粉体を吹出し、自然沈降させる。5回吹出した時点で沈降後の粉体層の高さを測定する。このとき測定箇所は6箇所とることとし、6箇所の平均を求めた後、嵩密度を算出した。
【0062】
<ラマン分光分析>
堀場ジョバンイボン製LabRam800を用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
【0063】
<TG燃焼温度>
マックサイエンス製TG−DTAを用い、空気を0.1リットル/分の流速で流通させながら、10℃/分の速度で昇温し、燃焼挙動を測定した。燃焼時にTGは減量を示し、DTAは発熱ピークを示すので、発熱ピークのトップ位置を燃焼開始温度と定義した。
【0064】
<X線回折>
粉末X線回折装置(JDX3532、日本電子製)を用いて、アニール処理後の炭素繊維構造体を調べた。Cu管球で40kV、30mAで発生させたKα線を用いることとし、面間隔の測定は学振法(最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)、炭素材料学会編)に従い、シリコン粉末を内部標準として用いた。
【0065】
<粉体抵抗および復元性>
CNT粉体1gを秤取り、樹脂製ダイス(内寸40リットル、10W、80Hmm)に充填圧縮し、変位および荷重を読み取る。4端子法で定電流を流して、そのときの電圧を測定し、0.9g/cmの密度まで測定したら、圧力を解除し復元後の密度を測定した。粉体抵抗については、0.5、0.8および0.9g/cmに圧縮したときの抵抗を測定することとする。
【0066】
<塗布性>
以下の基準により評価した。
○:バーコーダーで容易に塗布できる。
×:バーコーダーでの塗布は困難。
【0067】
<全光透過率>
JIS K 7361に準拠して測定された。ヘーズ・透過率計(HM−150、(株)村上色材技術研究所製)を用い、ガラス板(全光線透過率91.0%、50×50×2mm)に所定の膜厚に塗布して測定した。
【0068】
<表面抵抗値>
ガラス板上に50×50mmの硬化塗膜を作製し、四探針式抵抗率計(三菱化学(株)製、MCP−T600、MCP−HT4500)を用いて塗膜表面9箇所の抵抗(Ω)を測定した。同抵抗計により体積抵抗(Ω・cm)に換算し、平均値を算出した。
【0069】
合成例1
CVD法によって、トルエンを原料として微細炭素繊維を合成した。
【0070】
触媒としてフェロセン及びチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気で行った。トルエン、触媒を水素ガスとともに380℃に加熱し、生成炉に供給し、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体(第一中間体)を得た。合成された中間体を窒素中で900℃で焼成して、タールなどの炭化水素を分離し、第二中間体を得た。この第二中間体のラマン分光測定のR値は0.98であった。また、この第一中間体をトルエン中に分散して電子顕微鏡用試料調製後に観察したTEM写真を図1に示す。
【0071】
さらにこの第二中間体をアルゴン中で2600℃で高温熱処理し、得られた炭素繊維構造体の集合体を気流粉砕機にて粉砕し、本発明に係る炭素繊維構造体を得た。
【0072】
得られた炭素繊維構造体をトルエン中に超音波で分散して電子顕微鏡用試料調製後に観察したTEM写真を図2に示す。
【0073】
さらに高温熱処理前後において、炭素繊維構造体のX線回折およびラマン分光分析を行い、その変化を調べた。結果を図3および4に示す。
【0074】
また、得られた炭素繊維構造体の嵩密度は0.0032g/cm、ラマンI/I比値は0.090、TG燃焼温度は786℃、面間隔は3.383オングストローム、粉体抵抗値は0.0083Ω・cm、復元後の密度は0.25g/cmであった。
【0075】
実施例1〜9
ポリウレタン樹脂溶液(不揮発分:20%)100質量部に、上記合成例1で得られた炭素繊維構造体を表1に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維構造体を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0076】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表1に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0077】
また、実施例6で得られた硬化塗膜における炭素繊維構造体の分散状態を電子顕微鏡により観察した。得られた結果を図5に示す。
【0078】
参考例1〜6
分散方法を、表1に示すものに代えた以外は、実施例1〜9と同様にして、コーティング組成物を製造し、実施例1〜9と同様にして、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0079】
比較例1〜4
ポリウレタン樹脂溶液(不揮発分:20%)100質量部に、多層カーボンナノチューブ(清華ナフィン製、外径10〜20nm、長さ数μm〜数十μm)を表1に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0080】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表1に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
実施例10〜18
ポリエステル樹脂溶液(不揮発分:65%)100質量部に、上記合成例1で得られた炭素繊維構造体を表2に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維構造体を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0082】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表1に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0083】
参考例7〜12
分散方法を、表2に示すものに代えた以外は、実施例10〜18と同様にして、コーティング組成物を製造し、実施例10〜18と同様にして、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0084】
比較例5〜8
ポリエステル樹脂溶液(不揮発分:65%)100質量部に、多層カーボンナノチューブ(清華ナフィン製、外径10〜20nm、長さ数μm〜数十μm)を表2に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0085】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表1に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0086】
実施例19〜27
フェノール樹脂(不揮発分:50%)100質量部に、上記合成例1で得られた炭素繊維構造体を表3に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維構造体を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0087】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表3に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0088】
参考例13〜18
分散方法を、表3に示すものに代えた以外は、実施例19〜27と同様にして、コーティング組成物を製造し、実施例19〜27と同様にして、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0089】
比較例9〜12
フェノール樹脂(不揮発分:50%)100質量部に、多層カーボンナノチューブ(清華ナフィン製、外径10〜20nm、長さ数μm〜数十μm)を表1に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0090】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表1に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
実施例28〜36
アクリル樹脂(不揮発分:35%)100質量部に、上記合成例1で得られた炭素繊維構造体を表4に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維構造体を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0092】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表3に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0093】
参考例19〜24
分散方法を、表4に示すものに代えた以外は、実施例28〜36と同様にして、コーティング組成物を製造し、実施例28〜36と同様にして、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0094】
比較例13〜16
アクリル樹脂(不揮発分:35%)100質量部に、多層カーボンナノチューブ(清華ナフィン製、外径10〜20nm、長さ数μm〜数十μm)を表1に示す割合で添加し、ビーズミル(ダイノーミル、(株)シンマルエンタープライゼス)を用いて、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.05mm、1.5mm)、周速10m/秒、ビーズ充填量80容積%、処理時間2時間の条件でさらに粉砕、分散処理することにより、炭素繊維を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0095】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表1に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0096】
実施例37〜40
実施例6、15、24、33において、ビーズミルを用いた分散処理に先立ち、TKフィルミックス(特殊機化工業(株))を用い、先端速度50m/sで、2分間の分散処理を行った以外は、実施例6、15、24、33と同様ににて、炭素繊維構造体を分散させたコーティング組成物を製造した。
【0097】
この液状樹脂組成物を使用して、ガラス板上に表1〜4に示す所定膜厚の硬化塗膜を作製し、塗布性、全光透過率、表面抵抗値を評価した。得られた結果を表1〜4に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係る透明導電膜に用いられる炭素繊維構造体の中間体のTEM写真である。
【図2】(a)(b)は、それぞれ本発明に係る透明導電膜に用いられる炭素繊維構造体のTEM写真である。
【図3】本発明に係る透明導電膜に用いられる炭素繊維構造体および該炭素繊維構造体の中間体のX線回折チャートである。
【図4】本発明に係る透明導電膜に用いられる炭素繊維構造体および該炭素繊維構造体の中間体のラマン分光分析チャートである。
【図5】本発明に係る透明導電膜における炭素繊維構造体の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂マトリックス中に炭素繊維構造体を分散させてなる透明導電膜であって、前記炭素繊維構造体は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
樹脂100質量部に対し、炭素繊維構造体1〜25質量部を分散させてなることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
【請求項3】
ガラス基板上に膜厚0.1〜5μmに形成された場合おいて、表面抵抗値1.0×1012Ω/□以下、全光線透過率が30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電膜。
【請求項4】
ビヒクル不揮発成分として樹脂を含有する液状樹脂組成物中に、炭素繊維構造体を分散させてなる透明導電膜用コーティング組成物であって、前記炭素繊維構造体は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする透明導電膜用コーティング組成物。
【請求項5】
液状樹脂組成物100質量部に対し、炭素繊維構造体1〜25質量部を配合してなることを特徴とする請求項4に記載の透明導電膜用コーティング組成物。
【請求項6】
平均粒子径0.05〜1.5mmのビーズを用いたメディアミルで、炭素繊維構造体を分散させて調製されたものであることを特徴とする請求項4または5に記載の透明導電膜用コーティング組成物。
【請求項7】
前記メディアミルによる分散処理に先立ち、さらに、高速せん断型分散装置を用いて分散処理を行うことにより調製されたものであることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜用コーティング組成物。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−310154(P2006−310154A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132691(P2005−132691)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(502205145)株式会社物産ナノテク研究所 (101)
【出願人】(391013106)株式会社パーカーコーポレーション (27)
【Fターム(参考)】