説明

透明導電膜とその製造方法、並びに有機電子素子、有機発光素子及び有機発電素子

【課題】高い導電性と透明性を兼ね備え、かつ、フレキシブルな有機EL素子、有機太陽電池といった有機電子素子を形成した際に、良好な特性が得られる新規の透明導電体を得ることができる透明導電膜とその製造方法を提供することである。且つ、それを用いた良好な特性を有する、有機発光素子(有機EL素子)、有機発電素子(有機太陽電池)と言った有機電子素子を提供する。
【解決手段】分散剤を用いずに溶剤中に純度90%以上のカーボンナノチューブを分散した組成物液を透明基板上に塗布することを特徴とする透明導電膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機発光素子(有機EL素子))、有機発電素子(有機太陽電池)といった有機電子素子等に用いられる透明導電体に関し、特に、透明支持体の上に設けた透明導電膜であって、有機電子素子の駆動電圧や効率、寿命といった素子性能を向上させることができる透明導電膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子や有機太陽電池といった有機電子素子が注目されており、このような素子において、透明支持体の上に透明導電膜を設けた透明導電体は必須の構成技術となっている。
【0003】
従来、透明導電体は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基板上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明導電性支持体が、その導電性や透明性といった性能の点から、主に使用されてきた。しかし、真空蒸着法やスパッタリング法を用いた透明導電膜は生産性が低いため製造コストが高いことや、可撓性に劣るためフレキシブル性が求められる素子用途には適用できないことが問題であった。
【0004】
これに対し導電性ポリマーを適当な溶媒に溶解または分散した塗液を用い、塗布や印刷によって透明導電膜を形成する方法(例えば特許文献1参照)が提案されている。しかし、真空成膜法によるITO等の金属酸化物透明導電膜に較べると、透明性、導電性とも著しく低下するという課題があった。さらに、これを用いて有機EL素子といった有機電子素子を形成した場合、透明導電膜自身の低導電性に加え、該透明導電膜上に設けられる機能層との界面抵抗が高いと思われる挙動(例えば、有機EL素子では駆動電圧の上昇)が見られ、素子としての性能が低下するという課題があった。
【0005】
一方近年では、カーボンナノチューブやグラフェン等の炭素材料を用いた透明導電膜の開発が活発になっている。
【0006】
炭素は、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレンおよびカーボンナノチューブを含む、4つの知られた一般的構造を有する。結晶構造は、原子の格子配列を指す。カーボンナノチューブは、単層または多層を有して成長した管状構造であり、複数の六角形で形成された、シートとして考えることができ、シートは、そのそれぞれの炭素原子を3つの隣接炭素原子と結合させることにより形成される。カーボンナノチューブは、約数オングストロームから数百ナノメートルの直径を有する。カーボンナノチューブは、チューブ軸に対する炭素原子の六方格子の配向およびチューブ直径に従い、金属と類似した導電体として、または半導体として機能し得る。
【0007】
カーボンナノチューブは、2本のグラファイトロッド間のアーク放電により初めて(例えば、非特許文献1参照)生成された。この手法は、主に多層カーボンナノチューブを生成した。後に、主に単層カーボンナノチューブを生成する方法や2層カーボンチューブを作製する方法(例えば、非特許文献2及び特許文献2参照)が発見および報告された。
【0008】
またこれら炭素材料は、カーボンナノチューブの金属性/半導体性の存在と、金属性カーボンナノチューブ分子内での高い移動度が実験的も検証されており(例えば、非特許文献3参照)、最近では導電性ポリマー層とカーボンナノチューブの層を順不動に有する事を特徴とする透明導電膜(特許文献3参照)が開示された。
【0009】
単層カーボンナノチューブを含有する透明導電膜(特許文献4参照)、更にはカーボンナノチューブを含む薄膜に分子半導体を併用する透明導電膜(特許文献5参照)等が開示されている。しかし、何れも現状では、カーボンナノチューブ自体の純度の問題及び分子間の界面抵抗の問題などでITOシートの導電性に及ばないばかりか、透明導電膜の表面平滑性も十分ではない。従って、導電性と表面平滑性を高いレベルで両立させることのできる技術は得られていない。この為有機電子デバイス用の電極として用いた場合、十分な性能が得られず、実用化に至っていなかった。
【0010】
カーボンナノチューブとは、前記したように一つの炭素原子が他の隣接した炭素原子と結合して、六角形のハニカム構造を形成している炭素原子から形成されるチューブ状の物質である。カーボンナノチューブは、高い異方性を有し、一層(シングルウォール)、2層(ダブルウォール)、多層(マルチウォール)、またはロープ状(すなわち、らせん状)などの多様な構造を有し、ナノメートル単位の極めて小さい直径を有している。優れた機械特性、優れた電気的選択性、優れた電界放出特性、高効率な水素貯蔵特性などを有することで知られている。
【0011】
特に、カーボンナノチューブは高い電気伝導性を示すため、次世代の導電膜として期待されている。カーボンナノチューブは、電気放電法、熱分解法、レーザー蒸着法、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相蒸着法または電気分解法など公知の方法で合成される。かようなカーボンナノチューブを用いて導電膜を形成するためには、カーボンナノチューブを適切な分散媒に分散させなければならない。
【0012】
しかしながら、カーボンナノチューブは、分子間力であるファンデルワールス力のような表面引力(〜950meV/nm)によって非常に凝集しやすい。こうしたカーボンナノチューブの凝集は、機械的強度および導電性を向上させることができる3次元的なネットワーク構造の形成を阻害するため、これまでカーボンナノチューブを分散させる為の分散剤が多数開示されている。しかしながらこの様な分散剤はカーボンナノチューブを被覆する事によりカーボンナノチューブの凝集を抑える為、カーボンナノチューブ本来の導電性を阻害してしまうと言う課題を有している。この為カーボンナノチューブを適切な分散法により分散させることは好ましい方法であり、このような問題の解決法として、非特許文献4は、水中にカーボンナノチューブおよび有機物質を分散させてカーボンナノチューブ薄膜を製造した後、カーボンナノチューブ薄膜を水に浸漬させて、有機物質を除去して分散させる技術や特定の分散条件により、カーボンナノチューブを安定に分散させる方法が開示されてきており、カーボンナノチューブ間の抵抗を小さくする技術として好ましいものである(例えば、特許文献6や非特許文献5参照)。しかし、これだけで十分な性能は得られにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−273964号公報
【特許文献2】特開2006−273622号公報
【特許文献3】特開2009−211978号公報
【特許文献4】特表2010−506824号公報
【特許文献5】特表2008−544946号公報
【特許文献6】特開2009−16326号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Sumio Iijima、Nature、Vol.354、1991年11月7日、56〜58
【非特許文献2】D.S.Bethuneら、Nature、Vol.363、605ページ(1993)
【非特許文献3】T.W.Ebbesenら:Nature、Vol.382、1996年7月4日、54〜56
【非特許文献4】Nano letters 2005,Vol.5,No.4,757−760
【非特許文献5】Nano Technology 22 (16):APR 22 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高い導電性と透明性を兼ね備え、かつ、フレキシブルな有機EL素子、有機太陽電池といった有機電子素子を形成した際に、良好な特性が得られる新規の透明導電体を得ることができる透明導電膜とその製造方法を提供することである。且つ、それを用いた良好な特性を有する、有機発光素子(有機EL素子)、有機発電素子(有機太陽電池)と言った有機電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、以下の構成を採ることにより達成することができる。
【0017】
〔1〕
分散剤を用いずに溶剤中に純度90%以上のカーボンナノチューブを分散した組成物液を透明基板上に塗布することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【0018】
〔2〕
〔1〕記載の透明導電膜の製造方法により作製し、π共役系低分子化合物を含有させたことを特徴とする透明導電膜。
【0019】
〔3〕
前記π共役系低分子化合物が、ポルフィリン又はフタロシアニンの少なくとも何れかであることを特徴とする〔2〕記載の透明導電膜。
【0020】
〔4〕
分散溶媒が無機超酸であることを特徴とする〔1〕記載の透明導電膜の製造方法。
【0021】
〔5〕
フェムト秒パルスレーザー法を用いて分散することを特徴とする〔1〕記載の透明導電膜の製造方法。
【0022】
〔6〕
〔2〕又は〔3〕に記載の透明導電膜を電極に用いたことを特徴とする有機電子素子。
【0023】
〔7〕
〔2〕又は〔3〕に記載の透明導電膜を電極に用いたことを特徴とする有機発光素子。
【0024】
〔9〕
〔2〕又は〔3〕に記載の透明導電膜を電極に用いたことを特徴とする有機発電素子。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、高い導電性と透明性を兼ね備え、かつ、フレキシブルな有機EL素子、有機太陽電池といった有機電子素子を形成した際に、良好な特性を得られる新規の透明導電体を得ることができる透明導電膜とその製造方法を提供出来た。また、本発明の構成を好適に用いることにより初めて塗布型プロセスにより、金属グリッド等を用いない、実質的に全面透明な大面積面電極を提供でき、且つ有機発光素子(有機EL素子)、有機発電素子(有機太陽電池)と言った有機電子素子として良好な特性を得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る有機電子素子の一例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態についてさらに詳細に説明する。
【0028】
〔透明導電層〕
本発明のカーボンナノチューブを含有する透明導電層は、少なくともカーボンナノチューブを含有してなり、単一の層であっても複数の層であっても何れも好適に使用できる。
【0029】
またカーボンナノチューブを含有してなる層は、基本的にカーボンナノチューブのみで形成されている事が好ましい。
【0030】
本発明で好適に使用できるカーボンナノチューブについて説明する。
【0031】
〔カーボンナノチューブ(以後CNTともいう)〕
本発明に使用されるカーボンナノチューブは、分散剤なしに溶媒に分散および/または溶解が可能なCNTである。ここで、「分散剤なしに溶媒に分散および/または溶解」可能とは、分散質(CNT)が分散剤を用いなくても溶媒中に分散可能な粒子径で安定に存在している状態をいう。「分散剤」とは、溶媒中にCNTを分散させるために一般に用いられる界面活性剤または高分子材料等の添加剤をいう。また「分散可能な粒子径で安定に存在」とは、常温密閉の静置状態にて、CNTが1日以上安定して溶媒中に分散存在出来ている状態を言い、安定して分散存在出来ているとは、液中のCNT濃度変動が保存後に5%以内である事を言う。
【0032】
本発明の透明導電層に使用するのに適したカーボンナノチューブは、当業者に知られた任意の方法(レーザ・アブレーション、CVD、アーク放電)によって形成することができる。カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブではない炭素質不純物(グラファイト、非晶質、ダイヤモンド、非管状フラーレン、多層カーボンナノチューブ)又は金属不純物を最小限にしか又は全く有さないことが好ましい。金属不純物及び炭素質不純物のレベルが減少するのに伴って、透明度が著しく増大することが判っている。金属不純物及び炭素質不純物の量が減少するのに伴って、層均一性、表面粗さ、及び粒子の低減によって証明される皮膜品質も改善され、CNT成分としては50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。98質量%以上が理想的である。
【0033】
本願における純度はCNT成分量(単層、2層、さらに多層の合計量)を言い、TGAの測定から求められる。CNTを空気中で加熱すると燃焼し、燃焼後は触媒として用いられた金属粒子などが残るため各温度での質量減少率によりCNTの純度を調べることができる。CNTを加熱して行くと低温部分(約400℃くらいまで)で、不純低分子成分やアモルファス構造炭素の燃焼による質量減少が起こり、その後500度辺りから単層CNTの燃焼が始まる。2層、さらに多層CNTはより高温で燃焼していく、CNTが燃焼した後、800度以上の領域での残存質量分は金属触媒や触媒担持体等の不純分である。
【0034】
従って、これらアモルファス分と金属等不純分を除いた質量分がCNT成分量として求められる。
【0035】
高電子伝導性を達成するために、単層(1層)又は2層カーボンナノチューブ(SWCNT又はDWCNT:single wall or double wall carbon nano tube)がカーボンナノチューブの好ましいタイプである。特に、DWCNTが好ましい。
【0036】
本発明でいう主成分とは、透過型電子顕微鏡で観察したときに、任意に選択したカーボンナノチューブ100本中、目的の1層又は2層カーボンナノチューブが50本以上である事を言い、その比率はより好ましくは70本以上であり、特に好ましくは90本以上、最も好ましくは95本以上である。
【0037】
カーボン組成物中のカーボンナノチューブの純度が高いほど、導電性や熱伝導性を発現させる用途において、カーボンナノチューブに起因する機能を発現しやすく好ましい。
【0038】
また本発明にでは単層又は2層カーボンナノチューブが好適に使用されるが、特に好ましくは2層カーボンナノチューブの使用である。現在その理由は明確ではないが、理論的導電特性では単層カーボンナノチューブの方が優位にもかかわらず、本発明の特徴である分散剤を用いること無くカーボンナノチューブを分散する工程を経る場合に於いて、2層カーボンナノチューブの優位性が高まる事が明らかとなった。
【0039】
また、本発明でいう2層カーボンナノチューブとは、透過型電子顕微鏡で任意に観察した画面上において、任意のカーボンナノチューブ100本中、2層カーボンナノチューブが50本以上であることが好ましい。これにより2層カーボンナノチューブに起因する高い導電性、熱伝導性および耐久性が発現することができる。本発明において2層カーボンナノチューブの本数は100本中50本以上であり(この場合をDWCNTが主成分であるという)、より好ましくは70本以上、さらに好ましくは90本以上である。
【0040】
2層カーボンナノチューブの本数は、透過型電子顕微鏡で100万倍で観察し、150nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブであり、かつ複数の視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブにおいて、2層カーボンナノチューブの本数を計測するものとし、上記測定を10箇所について行った平均値である。
【0041】
また、本発明の組成物は、任意に選択した2層カーボンナノチューブの片端から他端までを透過型電子顕微鏡で観察したときに、2層カーボンナノチューブ中の屈曲部間距離の平均が50nm以上である。ここで、2層カーボンナノチューブ中の屈曲部とは、カーボンナノチューブのグラファイト構造中に炭素5員環と7員環が存在することによる屈曲を言い、透過型電子顕微鏡写真でカーボンナノチューブが折れ曲がって観察される部分のことを言う。屈曲部から屈曲部までの距離が長ければ長いほど、2層カーボンナノチューブの直線性は向上し、導電性、熱伝導性が高い2層カーボンナノチューブとなる。屈曲部間距離は長いほど好ましいため、100nm以上がより好ましく、500nm以上がさらに好ましく、1μm以上が特に好ましく、2層カーボンナノチューブ中に全く屈曲部分がない構造が最も好ましい。
【0042】
さらに、本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、屈曲部間距離の平均が、好ましくは500nm以上、より好ましくは1μm以上であるときに、高い電気、熱伝導性に加えて、カーボンナノチューブの強度が向上する傾向にあり、とりわけ好ましい。
【0043】
また、本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、透過型電子顕微鏡で任意に選択した2層カーボンナノチューブ100本の平均外径が1.0から3.0nmの範囲内であることが好ましい。一方、その内径は、任意の2層カーボンナノチューブ100本中、80本以上が、0.4から2.2nmの範囲内にあることが好ましい。このように外径および内径が細い2層カーボンナノナノチューブの本数が多いことにより、単位質量あたりのカーボンナノチューブの本数が多くなり、添加剤としてより高い効果が期待される。また、これらは、2層カーボンナノナノチューブの直径の均一性が高いことを示すものであるから、カーボンナノナノチューブの特性を制御しやすい利点がある。
【0044】
本発明において、2層カーボンナノチューブの外径および内径は、透過型電子顕微鏡において100万倍で観察し、150nm四方の複数の視野中から任意に抽出した100本の2層カーボンナノチューブの外径および内径を計測するものとし、外径が前記範囲内にある2層カーボンナノチューブの本数、および内径が前記範囲内にある2層カーボンナノチューブの本数を求めるものとする。上記測定を10箇所について行い、その平均値を、外径が前記範囲内にある2層カーボンナノチューブの本数、および内径が前記範囲内にある2層カーボンナノチューブの本数とする。
【0045】
上記の2層カーボンナノチューブの製造法は、特に限定されないが、ゼオライトなどの担体上に金属触媒を担持した化学気相成長法(CVD法)が好んで用いられる。その理由は、量産化が容易であること、カーボンナノチューブと触媒の切り離しが容易であること、および生成するカーボンナノチューブの直径や層数の制御が可能であるためである。
【0046】
本発明において、カーボンナノチューブの直径は、レーザー波数630〜650cm−1の共鳴ラマン散乱測定により得られるスペクトルにおいて、スペクトル350cm−1以下の領域により測定することができる。特に2層カーボンナノチューブの場合、外側のチューブと内側のチューブがそれぞれ観察され、特に本観察領域では内側に起因するピークが観察されやすい。
【0047】
本発明の組成物において、2層カーボンナノチューブの直径約1.25nmに由来するスペクトル195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、直径約1.13nmに由来するスペクトル217〜222cm−1内の最大ピーク強度をB、直径約1.25nm以上に由来するスペクトル195cm−1未満の最大ピーク強度をCとしたときに以下の関係が成立することが、好ましい。
【0048】
A/B>2.0
A/C>4.0
これらの関係は、本発明の組成物が、2層カーボンナノチューブの直径約1.25nmのカーボンナノチューブ含有量が多いことを示すものである。
【0049】
また、本発明の組成物において、レーザー波数630〜650cm−1の共鳴ラマン散乱測定により得られるスペクトルで、2層カーボンナノチューブの直径約1.25nmに由来するスペクトル195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、直径約0.71〜1.13nmに由来するスペクトル220〜350cm−1内の最大ピーク強度をDとしたときに、以下の関係が成立することが好ましい。
【0050】
A/D>1.5
この関係は、本発明の組成物が、2層カーボンナノチューブの直径約1.25nmのカーボンナノチューブ含有量が多いことを示すものである。
【0051】
また、本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、チューブの両端が全て解放端になっている2層カーボンナノチューブを含むことが好ましい。チューブの両端が解放端になっていることで、端部に官能基が存在し、樹脂や溶媒との親和性が向上するメリットがある。また、チューブ内にガスを吸着させる用途においても、末端が解放端になっていることが好ましい。2層カーボンナノチューブの末端が解放端になっていることは、透過型電子顕微鏡で観察することができる。本発明において、両末端が解放端になっている2層カーボンナノチューブは、透過型電子顕微鏡で観察される任意の2層カーボンナノチューブ中、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0052】
本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、元素分析による金属含有率が1質量%以下であることが好ましい。金属含有率が高いと、ポリマーへ添加する用途、および医療医薬用途において異物となり、人体へ悪影響を及ぼすことが懸念される。金属含有率は低いほど好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。
【0053】
本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、共鳴ラマン散乱測定により、1500〜1650cm−1の範囲内のピークが分裂して観測されることが、好ましい。カーボンナノチューブ組成物中に不純物や構造欠陥が多い場合、ピークがブロードとなり、上記測定範囲でピークが1本のみ観察されるが、カーボンナノチューブの純度が高く、かつ構造欠陥が少ない場合には、1500〜1650cm−1の範囲内のピークに分裂が見られる。
【0054】
また、本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、ラマン分光法によりその品質の評価が可能である。ラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトはグラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いほどグラファイト化度が高く、高品質なカーボンナノチューブを意味する。本発明にある2層カーボンナノチューブ含有組成物は、そのG/D比が10以上であることが好ましい。本発明の組成物において、G/D比は、より好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。
【0055】
また、本発明にある2層カーボンナノチューブ含有組成物は、X線光電子分析による炭素原子/酸素原子比が20以上であることが好ましい。2層カーボンナノチューブ含有組成物をX線光電子分析することにより、カーボンナノチューブを構成している各元素の比率、および、各元素の化学状態を分析することができ、それぞれの化学状態による結合エネルギーの差により単体、酸化物、塩化物などの化学状態を特定することができる。X線光電子分析の測定結果は、通常、炭素(C1s)のメインピークを基準にしてピークシフトを求め、補正した値を用いる。また、それぞれの化学状態由来のピークにピーク分割し、その面積比から、化学状態の組成比が分かる。ピーク分割は、最小二乗法を用いて合成波形のマッチングを行い、最適化するものとし、炭素に起因するピークと、酸素に起因するピークから、それぞれの元素比を求めることができる。本発明において、X線光電子分析による炭素原子/酸素原子比が、好ましくは20以上であるとは、カーボンナノチューブ中の官能基数が少ない、つまり、構造欠陥が少ないことを意味するものである。カーボンナノチューブ中の構造欠陥が少ないことから、導電性や電気伝導性が高いカーボンナノチューブとなる。
【0056】
本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、電子放出材料として高い特性を示すものである。電子放出材料として求められる特性は、電界集中が起こりやすい構造をとることにあり、直径が細い方が好ましい。一方、単層カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの中で最も細い直径を取りやすいものであるが、電圧を印加することで構造破壊を起こしやすく、耐久性の点から2層以上の層数を持つカーボンナノチューブが好んで用いられる。以上の理由から、直径が細い2層カーボンナノチューブが、最も好ましい電子放出材料となる。また、カーボンナノチューブに屈曲部分が多いと、電気伝導性が低く、電子放出特性は低下する。そのため、本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、屈曲間距離が長いことから、電子伝導性の点からも好ましい電子放出材料である。
【0057】
本発明の2層カーボンナノチューブ含有組成物は、フィルム上にコーティングすることにより、光透過率が85%以上、かつ表面抵抗が1000Ω/□以下である透明導電フィルムを作製することができる。光透過率を85%以上とするためには、少ないカーボンナノチューブ塗布量で高い導電性を発現する必要がある。そのためには、個々のカーボンナノチューブが高い導電性を有する必要があり、屈曲構造が少ない方が好ましい。また、直径が細いカーボンナノチューブを用いることで、少ない添加量でより多くの本数のカーボンナノチューブを添加することができ好ましい。ただし、単層カーボンナノチューブでは、バンドル構造を取りやすく、かつ、そのバンドルをほぐすことが困難である。2層カーボンナノチューブは、直径が細いとバンドル構造を取るものの、自重が単層カーボンナノチューブに比べて重く、バンドル構造をほぐすことが容易である。
【0058】
本発明において、フィルムの光透過率は、JIS−R3106に準拠して測定された値であり、フィルムの表面抵抗値は、JIS−K6911に準拠して測定された値である。
【0059】
本発明において、カーボンナノチューブを単独又は複数併用して用いる事も好ましい態様であるが、本発明では特にπ共役系化合物と併用して用いる事が特に好ましい態様である。この様な特定の化合物はカーボンナノチューブ分子間抵抗を軽減する事が出来る。
【0060】
本発明におけるπ共役系化合物は、カーボンナノチューブが分散された液に混入されても良いし、カーボンナノチューブのみの層を支持体上に塗工した後に、π共役系化合物を何らかの方法により供給し透明導電膜とすることも非常に好ましい態様である。
【0061】
〔π共役系化合物〕
本発明で好ましく用いられるπ共役系化合物は、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、及び、グラフェン化合物であるが、本発明では特に好ましくはポルフィリン化合物又はフタロシアニン化合物である。
【0062】
π共役系化合物とは、芳香族π電子を7つ以上有する化合物を意味する。具体的なポルフィリン化合物の一般式を化合物1及び3に、フタロシアニン化合物の一般式を化合物2及び4に示す。
【0063】
【化1】

【0064】
【化2】

【0065】
本発明で用いるグラフェン、もしくはグラファイトから単原子層グラファイトを剥離させるプロセスにより合成されるグラフェンが複数重なった層状グラフェンは、数枚から20枚程度の単原子層グラフェンが重なったシート状の炭素材料であり、典型的には厚さ2〜10nm程度、幅1〜5mm程度の平面シート状のカーボンフィルムである。
【0066】
またカーボンナノチューブは、ITOの様に透明面電極としての機能を有しており、本発明の好ましい透明導電膜の形態は、以下の形態の何れかを構成として含有していることが好ましい。
【0067】
カーボンナノチューブを主成分とする単一層
カーボンナノチューブを主成分とする複数層
カーボンナノチューブを主成分とするグリッド電極と導電性ポリマー層
カーボンナノチューブを主成分とする面電極と導電性ポリマー層等
を挙げることができる。
【0068】
〔分散溶剤〕
本発明においてはカーボンナノチューブが溶剤中に分散剤を用いる事無く良好に分散される事が重要である。従って従来公知の分散方法を好適に使用でき、その際の溶剤は有機溶剤、無機溶剤を問わないし、分散方法も限定されない。
【0069】
但し素材の安全性、カーボンナノチューブへのダメージの可能性等の観点からは有機溶剤の方が好ましい。しかし、無機溶剤、特に無機超酸溶剤も用いられる。
【0070】
本発明で好ましく用いられる無機超酸溶剤とは100%硫酸よりも酸性が強い酸を表す呼び名であり。超強酸とも言う。これらはトリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH、triflic acidとも)やフルオロスルホン酸(FSOH)、塩酸、硝酸、硫酸、クロロスルホン酸等主成分とした超酸類を含み、具体的にはクロロスルホン酸、王水及びその添加比の異なる混合物類、硝酸と硫酸の混合物が好ましい。本発明の無機超酸溶剤は水で希釈されても良く、その際の水としては、純水、超純水、蒸留水、イオン交換水など、いずれも用いることができるが、超純水が好ましい。
【0071】
例えば非特許文献5、Nano Technology 22(16):APR 22 2011に於いては、クロロスルホン酸を用いることによりSWCNTを分散剤を用いる事無く良好に分散できる事を開示しており、又Adv.Funct.Mater.2011,XX,1−8に於いては、硫酸:硝酸=3:1の混合液により同様に分散剤を用いる事無く良好にSWCNTを分散できる事を開示している。本発明に於いてはこれらの技術を活用し、SWCNT並びにDWCNT及びMWCNTに関しても検証を行い本発明に至ったものである。
【0072】
又、一方本発明で好ましく用いられる有機溶剤としては有機溶剤を主成分とするが水を含んでも構わない。水としては、純水、超純水、蒸留水、イオン交換水など、いずれも用いることができるが、超純水が好ましい。
【0073】
有機溶媒としては、公知の物を好適に使用できるが、通常水溶性のある有機溶剤が好ましい。一例をあげると例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなど;多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど;ケトン類、例えばアセトンなど、低級カルボン酸類、例えば蟻酸、酢酸など;環状エーテル類、例えばテトラヒドロフランなど;並びに非プロトン性極性溶剤、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、N−アセチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを挙げる事が出来、何れも好適に使用する事が出来る。
【0074】
〔組成液・その他の添加剤〕
分散体及び塗布用組成物のpH調整も重要である。好ましいpHは、3〜10pHである。より好ましいpHは3〜6であるが、本願の目的から塗工後溶剤と一緒に揮発し透明導電膜中に残存しないpH調整剤が好ましい。
【0075】
CNTの長さは20nm〜1cm、より好ましくは20nm〜500μm、特に好ましくは100nm〜100μmである。CNTは、個々のCNTとして、又はCNTバンドルとして存在する。透明導電層内のCNTの直径は、0.05nm〜5nmが好ましく、より好ましくは0.5nm〜4nm、特に好ましくは1.0〜3.0nmである。本発明に於いては、単層及び2層カーボンナノチューブ共に直径が上記範囲にあるものがもっとも好適である。
【0076】
バンドルの直径は、1nm〜1μmであってよい。好ましくはこのようなバンドルの直径は50nm未満、特に好ましくは20nm未満であり、長さ20nm〜50mmで、長いほど好ましい。電子の輸送を容易にするために、より大きい表面積が達成され、そして、より小さなバンドル・サイズを有し、これにより、バンドルの内側に位置していてアクセスすることができないCNTの表面を露出させることにより、より大きい有効表面積が達成されることが重要である。CNTの端部は、適宜のサイズの半球形バッキーボールによって閉じられていることが好ましいが、CNTの端部の両方または片方のみが開いていてもよい。
【0077】
本発明では0.05〜10質量%(500〜100000)ppmの範囲のCNT固形分濃度を有する分散体を形成することが好ましく、この様な態様のために、官能化したCNT(上記のように製造されるか又は供給元から購入される)を用いる事も可能である。
【0078】
官能化CNTとしては、カーボンナノチューブの任意の位置に、カルボン酸、カルボン酸アニオン(カルボン酸塩)、ヒドロキシル、硫黄含有基、カルボニル、リン酸塩、硝酸塩等の置換基の付加したカーボンナノチューブである。これらの、カーボンナノチューブは本発明の透明導電層形成にとって好ましい物である。
【0079】
〔分散〕
本発明に於いてはカーボンナノチューブを分散剤を用いる事無く良好に分散させる事が重要であり、その点に於いて有効な従来公知の分散技術を何れも好適に使用できる。
【0080】
一般的にカーボンナノチューブを溶媒に分散するには、通常、超音波分散機や一般に高速分散機(ホモジナイザー、マイクロ流動化装置、カウル・ブレード高剪断ミキサー、自動媒体ミル、ボールミル)を使用することができる。
【0081】
本発明では特に分散剤を用いる事無く良好に分散させる観点から、高強度フェムト秒パルスレーザーを用いたレーザー分散技術やラボプラストミルやナノマイザーの様な高せん断力による1次混錬と超音波分散を組合せた技術が好ましい。中でも生産性の観点から後者が最も良好である。これらの技術に遠心分離技術を組合せる事で、より最も好ましい分散液を得る事が出来る。
【0082】
更に、本発明の透明導電層上には、導電性ポリマー及び水酸基含有化合物を含有する層を設ける事が好ましい。この様な導電性ポリマー及び水酸基含有化合物は、下記に示す。
【0083】
この様な態様としては、CNTを主成分とした層をグリッド電極に導電性ポリマー及び水酸基含有化合物を含有する均一層を設けた面電極として形成する態様や、CNTを主成分とした均一な面電極の上に、更に導電性ポリマー及び水酸基含有化合物を含有する均一層を設けた面電極として用いる態様の何れも好適に使用できるが、特に後者が好ましい態様である。
【0084】
〔導電性ポリマー〕
導電性高分子化合物としては、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレン)、ポリアニリンの基本骨格を持つものが好ましい(xは1以上の整数であることが好ましい。)。
【0085】
【化3】

【0086】
ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体の好ましい具体例を示す(n、m、k、jは0以上の整数、xは2以上の整数である。)。
【0087】
【化4】

【0088】
ポリチオフェンおよびその誘導体の好ましい具体例を示す(n、mは0以上の整数、kは1以上の整数、xは2以上の整数である)。
【0089】
【化5】

【0090】
ポリ(チオフェンビニレン)およびその誘導体の好ましい具体例を示す(n、m、k、jは0以上の整数、xは2以上の整数である)。
【0091】
【化6】

【0092】
ポリアセチレンおよびその誘導体の好ましい具体例を示す(n、mは0以上の整数、xは2以上の整数である。)。
【0093】
【化7】

【0094】
ポリピロールおよびその誘導体の好ましい具体例を示す(nは0以上の整数、kは1以上の整数、xは1以上の整数である)。
【0095】
【化8】

【0096】
ポリフルオレンおよびその誘導体の好ましい具体例を示す(n、mは0以上の整数、xは1以上の整数である。)。
【0097】
【化9】

【0098】
ポリ(p−フェニレン)およびその誘導体の好ましい具体例を示す(n、mは0以上の整数、x、yは1以上の整数である。)。
【0099】
【化10】

【0100】
ポリアニリンおよびその誘導体の好ましい具体例を示す(nは0以上の整数、xは2以上の整数である。)。
【0101】
【化11】

【0102】
本発明の導電性ポリマーはπ共役系化合物とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーであることが好ましい。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系化合物を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0103】
(ポリアニオン)
前記ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
【0104】
前記ポリアニオンは、π共役系化合物を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系化合物に対するドーパントとして機能して、π共役系化合物の導電性と耐熱性を向上させる。
【0105】
前記ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系化合物への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系化合物へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0106】
前記ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0107】
これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。また、化合物内にフッ素を有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。
【0108】
これらのうち、スルホ基を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0109】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0110】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0111】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系化合物を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0112】
こうした導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT:PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT:PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることが出来る。
【0113】
2nd.ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。該水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。該酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などが挙げられる。該水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0114】
〔水酸基含有非導電性ポリマー〕
本発明における水酸基含有非導電性ポリマーとしては、ポリマー(A)が好ましい。ポリマー(A)の主たる共重合成分は下記モノマーM1、M2、M3からなり、共重合成分の50mol%以上の成分が該モノマーのいずれか、あるいは、合計が50mol%以上ある共重合ポリマーである。該モノマー成分の合計が80mol%以上であることがより好ましく、さらに、いずれか単独のモノマーから形成されたホモポリマーであっても良く、また、好ましい実施形態である。
【0115】
モノマーM1 CH=C(X)O−R−OH
モノマーM2 CH=C(X)COO−R−OH
モノマーM3 CH=C(X)CONH−R−OH
式中、X〜Xは、水素原子またはメチル基、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数5以下のアルキレン基を示す。
【0116】
中でもモノマーM1の重合体が特に好ましい。更に具体的には、モノマーM1においてXは水素原子が好ましい。またRは特にエチレン基が好ましい。
【0117】
ポリマー(A)においては、水系溶媒に可溶である範囲において、他のモノマー成分が共重合されていてもかまわないが、親水性の高いモノマー成分であることがより好ましい。また、ポリマー(A)は数平均分子量1000以下の含有量が0〜5%であることが好ましい。低分子成分が少ないことで、素子の保存性や、導電層に対して垂直方向の導電性に障壁があるような挙動をより低下させることができる。
【0118】
このポリマー(A)の数平均分子量1000以下の含有量を0〜5%とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、または低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。
【0119】
再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。
【0120】
また、分取GPCは例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量をカットすることができる方法である。
【0121】
リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適正から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
【0122】
本発明のポリマー(A)の分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。本発明のポリマー(A)の分子量分布は1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。数平均分子量1000以下の含有量はGPCにより得られた分布において、数平均分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。リビング重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。リビングラジカル重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0123】
〔水系溶媒〕
本発明において、水系溶媒とは、50質量%以上が水である溶媒を表す。もちろん、他の溶媒を含有しない純水であっても良い。水系溶媒の水以外の成分は、水に相溶する溶剤であれば特に制限はないが、アルコール系の溶媒を好ましく用いることができ、中でも、沸点が比較的水に近いイソプロピルアルコールを用いることが形成する膜の平滑性などには有利である。
【0124】
本発明の導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含む分散液は、導電層の導電性、透明性、平滑性を同時に満たす範囲において、さらに他の透明な非導電性ポリマーや添加剤を含有してもよい。
【0125】
透明な非導電性ポリマーとしては、天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができ、水溶性高分子又は水性高分子エマルジョンが特に好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が、水性高分子エマルジョンとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が、使用することができる。
【0126】
また、前記水性高分子エマルジョンの合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコーン樹脂)を使用することができる。
【0127】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤などの安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料などの着色剤などが挙げられる。更に、塗布性などの作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0128】
〔透明基板〕
本発明では、透明基板(以下、単に基板ともいう)として、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラスなどを用いることができ、軽量性と柔軟性の観点から透明プラスチックフィルムを用いることが好ましい。
【0129】
プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。中でも好ましいのは、PETおよびPENである。
【0130】
前記透明導電膜及び有機電子素子において、基板は、表面平滑性に優れているものが好ましい。表面の平滑性は算術平均粗さRaが5nm以下かつ最大高さRzが50nm以下であることが好ましく、Raが2nm以下かつRzが30nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくはRaが1nm以下かつRzが20nm以下である。基板の表面は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の下塗り層を付与して平滑化してもよいし、研磨などの機械加工によって平滑にすることもできる。ここで、表面の平滑性は、原子間力顕微鏡(AFM)等による測定から、表面粗さ規格(JIS B 0601−2001)に従い、求めることができる。
【0131】
前記基板には、大気中の酸素、水分を遮断する目的でガスバリア層を設けるのが好ましい。ガスバリア層の形成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、金属窒化物が使用できる。これらの材料は、水蒸気バリア機能のほかに酸素バリア機能も有する。特にバリア性、耐溶剤性、透明性が良好な窒化シリコン、酸化窒化シリコンが好ましい。また、バリア層は必要に応じて多層構成とすることも可能である。ガスバリア層の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。前記ガスバリア層を構成する各無機層の厚みに関しては特に限定されないが、典型的には1層あたり5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1層あたり10nm〜400nmである。ガスバリア層は基板の少なくとも一方の面に設けられ、両面に設けられるのがより好ましい。
【0132】
さらに前記基板の表面は、ハードコート層等による保護層処理がされていてもよい。ハードコート層は、光ラジカル発生材、ラジカル重合性の単官能および/又は多官能モノマーの混合物を所望の膜厚に均一に塗布したのち、必要なエネルギー量の紫外光を照射することによってラジカル重合させることにより得られる、透明かつ高硬度のポリマー層である。
【0133】
〔下引き層〕
本発明の透明導電膜は、基板表面にシランカップリング剤を塗布することにより形成された下引き層を有していても良い。
【0134】
下引層に使用可能なシランカップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等が挙げられる。中でもメルカプト基、ジアルキルアミノ基のいずれかの基を分子内に有する物が好ましく、具体的にはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメトキシシラン・塩酸塩、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が特に好ましい。
【0135】
シランカップリング剤を用いて下引層を形成するには、シランカップリング剤を水や有機溶剤等に溶かし、塗布した後に乾燥させる。溶媒は、シランカップリング剤を単に溶かすだけでなく、無機基材への展開性、濡れ性等に影響する。水を使用する場合は、アミノシランの場合は溶解し易く、pH調節は必要ないが、その他のシランカップリング剤はpH4付近の水を使用下することが好ましい。
【0136】
乾燥は、室温〜100℃の温度で、2〜30分程度が好ましい。乾燥によって、シランカップリング剤と機材が化学反応を起こし、シランカップリング剤の有機官能基が機材表面の外に配向し、その上にパターン状に形成するカーボンナノチューブを含有する透明導電層と相互作用し、接着性を向上させると考えられる。
【0137】
以下にCNTのグリッド電極を設けて、均一面の導電ポリマー層を設ける場合を詳述するが、CNTをも均一な面電極とする場合には、第二導電層の形成方法に準じて作製する事で好適に作製する事が出来る。
【0138】
本発明の透明導電層はカーボンナノチューブを含有する第一導電層と、導電性ポリマーを含有する第二導電層から構成されることが好ましい。導電層の形成方法としては、前記下引き層を有する基板上に印刷方式により、カーボンナノチューブのペーストの細線パターンを印刷、焼成して、第一導電層を形成することが好ましい。前記基板と該基材上に形成された第一導電層とを覆うように、第二導電層の塗布液を塗布することにより、第一導電層の無い細線パターンの間にも電極を展開することが出来る。
【0139】
(第一導電層)
まず基板上に第一導電層として、カーボンナノチューブからなる細線パターンを形成する。細線パターンは、カーボンナノチューブの分散液を用い、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法により形成できる。各印刷の方式は、一般的に電極パターン形成に使われる手法が本発明に関しても適用可能である。具体的な例として、グラビア印刷法については特開2009−295980号公報、特開2009−259826号公報、特開2009−96189号公報、特開2009−90662号公報記載の方法等が、グラビア印刷法については特開2004−268319号公報、特開2003−168560号公報記載の方法等が、スクリーン印刷法については特開2010−34161号公報、特開2010−10245号公報、特開2009−302345号公報記載の方法等が例として挙げられる。
【0140】
又同様にCNTの均一層を設けた後に、酸素プラズマエッチング等でパターン化する方式も好適に使用できる。またこの様に作製する事で、印刷法よりグリッド高さを低くすることが可能であり、実質的に透明な電極作製の観点で有利で好ましい。
【0141】
第一導電層における細線の線幅は任意であるが、10〜400μmが好ましく、20〜200μmがさらに好ましく、30〜120μmがより好ましい。細線の高さは、0.001〜2.0μmが好ましく、0.005〜1.5μmがより好ましい。
【0142】
第一導電層の細線部の表面比抵抗は、5Ω/□以下であることが好ましく、1Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0143】
(第二導電層)
さらに、第二導電層として、パターン形成された第一導電層を被覆するように、導電性ポリマーからなる分散液を塗布、乾燥して膜形成する。第二導電層の塗布は、前述のグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。
【0144】
第二導電層は、さらに導電性ポリマーの導電性増強効果を有する水酸基含有非導電性ポリマーを含むことが好ましい。これにより、高い導電性、高い透明性、耐水性を同時に満たすことができる。
【0145】
このような積層構造を有する本発明の導電層を形成することで、金属または金属酸化物細線、あるいは導電性ポリマー層単独では得ることのできない高い導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
【0146】
第二導電層の導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとの比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、水酸基含有非導電性ポリマーが30質量部から900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、水酸基含有非導電性ポリマーの導電性増強効果、透明性の観点から、水酸基含有非導電性ポリマーが100質量部以上であることがより好ましい。
【0147】
第二導電層の乾燥膜厚は1nmから200nmであることが好ましい。導電性の点から、10nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、100nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、50nm以下であることがより好ましい。
【0148】
第二導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80℃から150℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。本発明において、乾燥終了後、さらに熱処理を行う事で、水酸基含有非導電性ポリマーの架橋反応を促進、完了させることができる。これにより電極の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。特に、有機EL素子においては、駆動電圧の低減、寿命の向上といった効果が得られる。
【0149】
熱処理は、50℃以上200℃以下の温度で、30分以上行う事が好ましい。50℃未満では、反応促進効果が小さく、200℃を超える場合、素材への熱的ダメージが増えるためか、効果が小さくなる。処理温度としては80℃以上150℃以下であることがより好ましく、処理時間としては1時間以上であることがより好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性の観点から24時間以下であることが好ましい。熱処理は、導電層を塗布、乾燥した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよい。オフラインで行う場合、さらに減圧下で行う事が、水分の乾燥促進にもつながり、好ましい。
【0150】
本発明において、酸触媒を用いて水酸基含有非導電性ポリマーの架橋反応を促進、完了させることができる。酸触媒としては、塩酸、硫酸や硫酸アンモニウムを用いることができる。また導電性ポリマーにドーパントとして用いるポリアニオンにおいて、スルホ基含有ポリアニオンを使用することで、ドーパントと触媒を兼用することができる。また、酸触媒の使用と合わせて、前述の熱処理を行う事ができ、処理時間の短縮にもつながり、好ましい。
【0151】
〔有機電子素子の構成〕
本発明に係る有機電子素子について図を用いて説明する。図1において、基板(10)上に対向する第一電極(11)と第二電極(12)を有し、第一電極(11)と第二電極(12)電極間に少なくとも1層の有機機能層(13)を有する。本発明において第一電極(11)は、カーボンナノチューブを含有する第一導電層(14)と、導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとからなる第二導電層(15)を含み、導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる第二導電層は、カーボンナノチューブを含有する第一導電層の隙間に充填されている。
【0152】
本発明に係る有機機能層(13)としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系の素子である有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。
【0153】
〔有機機能層構成〕
(有機EL素子)
〔有機発光層〕
本発明において有機発光層を有する有機電子素子は、有機発光層に加えて、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層、ホールブロック層、電子ブロック層などの有機発光層と併用して発光を制御する層を有しても良い。本発明の導電性ポリマー含有層はホール注入層として働くことも可能であるので、ホール注入層を兼ねることも可能だが、独立にホール注入層を設けても良い。
【0154】
構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)(第一電極部)/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(ii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(iii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/(第二電極部)
(iv)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
(v)(第一電極部)/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
ここで、発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある単色発光層であってもよく、また、これらの少なくとも3層の発光層を積層して白色発光層としたものであってもよく、さらに発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明の有機EL素子としては、白色発光層であることが好ましい。
【0155】
〔発光ドーパント〕
本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
次いで、本発明に好ましく用いられる発光ドーパントについて説明する。
【0157】
本発明に関わる有機発光デバイスとしては、以下に係る発光ドーパント(以下、燐光発光体、燐光性化合物、燐光発光性化合物ともいう)を用いる事が好ましい。
【0158】
本発明では発光λmaxが300〜480nmにある少なくとも1種の燐光発光ドーパントを含有し、該ドーパントは、下記一般式(A)〜(C)から選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する事が好ましい。
【0159】
【化12】

【0160】
〔式中、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Rb、Rcは各々水素原子または置換基を表し、A1は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、MはIrまたはPtを表す。〕
【0161】
【化13】

【0162】
〔式中、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Rb、Rc、Rb、Rcは各々水素原子または置換基を表し、A1は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、MはIrまたはPtを表す。〕
【0163】
【化14】

【0164】
〔式中、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Rb、Rcは各々水素原子または置換基を表し、A1は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、MはIrまたはPtを表す。〕
(一般式(A)〜(C)で表される部分構造)
本発明においては、上記の波長域の燐光発光ドーパントが、前記一般式(A)〜(C)から選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する。
【0165】
前記一般式(A)において、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Rb、Rcは各々水素原子または置換基を表し、A1は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、MはIrまたはPtを表す。
【0166】
また、前記一般式(B)において、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Rb、Rc、Rb、Rcは各々水素原子または置換基を表し、A1は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、MはIrまたはPtを表す。
【0167】
また、前記一般式(C)において、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Rb、Rcは各々水素原子または置換基を表し、A1は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、MはIrまたはPtを表す。
【0168】
一般式(A)〜(C)において、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Raで表される脂肪族基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)が挙げられ、芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、アズレニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、o−テルフェニル基、m−テルフェニル基、p−テルフェニル基、アセナフテニル基、コロネニル基、フルオレニル基、ペリレニル基等を挙げることができ、これらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい。複素環基としては、例えば、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、カルバゾリル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、クロマニル基等を挙げることができ、これらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0169】
一般式(A)〜(C)において、Rb、Rc、Rb、Rcが表す置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0170】
一般式(A)〜(C)において、A1は芳香族環、芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、該芳香族環としてはベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられ、該芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。
【0171】
一般式(A)〜(C)の構造は部分構造であり、それ自身が完成構造の発光ドーパントとなるには、中心金属の価数に対応した配位子が必要である。具体的には、ハロゲン(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フタラジニル基等)、一般式(A)〜(C)の金属を除いた部分構造等が挙げられる。
【0172】
一般式(A)〜(C)において、MはIr、Ptを表し、特にIrが好ましい。また一般式(A)〜(C)の部分構造3個で完成構造となるトリス体が好ましい。
【0173】
以下、本発明に係る発光ドーパントの前記一般式(A)〜(C)の部分構造を持つ化合物を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0174】
【化15】

【0175】
【化16】

【0176】
【化17】

【0177】
【化18】

【0178】
【化19】

【0179】
【化20】

【0180】
【化21】

【0181】
【化22】

【0182】
【化23】

【0183】
【化24】

【0184】
更に、本発明においては、前記発光ドーパントのイオン化ポテンシャルエネルギーが5.3eVより小さいものであることが高効率かつ色度の安定性を良好にする上で好ましい。即ち、燐光発光ドーパントAの最高電子占有準位が、5.3eVより浅いことが好ましい。
【0185】
なお、燐光発光ドーパントAの最高電子占有準位(HOMO)レベル(またはイオン化ポテンシャルとも呼ぶ)は、例えば紫外光電子分光法(UPS)等を用いることで求めることができる。即ち、これらの化合物の単体膜を、ガラス基板上に成膜した薄膜のUPSを測定することでHOMOレベルを測定することができる。
【0186】
例えばアルバック−ファイ(株)製ESCA 5600 UPS(ultraviolet photoemission spectroscopy)にて測定される値を用いることができる。
【0187】
発光λmaxが300〜480nm以外の波長の燐光発光体を併用する事が出来、これらの組合せにより白色の発光層を形成する事が可能である。
【0188】
これらのドーピング材料を0.1〜30質量部含むようにすることも好ましく、より好ましくは1〜25質量部含有し、従来公知の好適なHost材料との組合せにより用いる事が好ましい。有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
【0189】
〔第二電極部〕
本発明に係る第二電極は有機EL素子においては陰極となる。本発明に係る第二電極部は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。第二電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0190】
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0191】
第二電極部の導電材として金属材料を用いれば第二電極側に来た光は反射されて第一電極部側にもどる。第一電極部のカーボンナノチューブは光の一部を後方に散乱、あるいは反射するが第二電極部の導電材として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となりより取り出しの効率が向上する。
【0192】
〔有機光電変換素子〕
有機光電変換素子は、第一電極部、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層およびn型半導体層)を有する光電変換層(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)、第二電極部が積層された構造を有する。
【0193】
光電変換層と第二電極部との間に電子輸送層などの中間層を有しても良い。
【0194】
〔光電変換層〕
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成している。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0195】
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
【0196】
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0197】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0198】
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0199】
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換−無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
【0200】
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0201】
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
【0202】
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0203】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
【0204】
これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。
【0205】
これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
【0206】
p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
【0207】
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0208】
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
【0209】
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。
【0210】
これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
【0211】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
【0212】
本発明の光電変換素子を、太陽電池などの光電変換材料として用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層して(タンデム型)利用してもよい。
【0213】
また、光電変換材料は、環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。
【実施例】
【0214】
以下実施例により本発明を説明するが、本発明の構成はこれらにより限定されるものではない。
【0215】
〔実施例1〕
以下、実施例1以外で用いるものも含めて7種のCNTを合成、或いは準備した。
【0216】
[CNT]
1)SWCNT−A(本発明):90%SWNTs(95%CNTs) Nanostructured & Amorphous Materials,Inc製;純度95%、外径1〜2nm、分子長5〜30μm
2)SWCNT−B(比較):Arc Nanotubes Helix Material Solutions, Inc.製 純度60% 外径1.2〜1.5nm、分子長0.5〜3μm
3)SWCNT−C(比較):As−prepared SWCNTs Chengdu Organic Chemicals Co. Ltd製 純度40% 外径1.1nm、分子長10〜30μm
4)DWCNT−A(本発明):L−DWNT−1;純度90%、外径5nm、分子長5〜15μm
5)DWCNT−B(本発明):特開2006−273622号 段落0032〜0038に従い合成/確認した
6)DWCNT−C(比較):MRDW Materials and Electrochemical Research (MER) Corporation製 As−Produced Double−Wall Carbon Nanotubes 純度15% 外径3〜5nm、分子長5〜15μm
7)MWCNT(本発明):(95+%,OD<8nm)Nanostructured & Amorphous Materials,Inc製;純度95%、外径8nm、分子長10〜30μm
(担持体Aの合成)
セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB:アルドリッチ製)3.64gと、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH:アルドリッチ製)1.45gを35℃のイオン交換水28.8mlに加えた後に、ヒュームドシリカ(アルドリッチ製)2.4gを加え1時間撹拌した。20時間エージング後に、オートクレーブに移し、150℃で96時間、水熱合成した。水熱合成後に生成物をろ取、洗浄後に550℃で8時間焼成後に、800℃で1時間焼成し担持体Aを得た。
【0217】
(担持体への金属塩敷設)
硝酸鉄・9水和物(関東化学社製)0.03gと硝酸コバルト・6水和物(関東化学社製)0.17gとをエタノール(関東化学社製)15mlに溶解した。この溶液に、MCM−41を1.4g加え、超音波洗浄機で30分間処理し、60℃及び120℃の恒温下でエタノールを除去して乾燥した。その後空気中、400℃で1時間加熱し、担持体Aの粉末に金属塩が担持された固体触媒を得た。
【0218】
(2層カーボンナノチューブを含有する組成物の合成)
内径32mmの石英管の中央部に配置された石英ウール上に、上記で調製した固体触媒1.0gをとり、アルゴンガスを600ml/分で供給した。石英管を電気炉中に設置して、中心温度を925℃に加熱した(昇温時間60分)。925℃に到達した後、反応管内を真空引きし、10Pa以下になったことを確認後に、エタノール蒸気を100Paの圧力になるように20分間導入した。エタノール蒸気の導入を止めた後に、高純度アルゴンガス(高圧ガス工業製)を5ml/分で30分供給し、温度を室温まで冷却し、2層カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。
【0219】
(2層カーボンナノチューブを含有する組成物の高分解能透過型電子顕微鏡分析)
得られたカーボンナノチューブを高分解能透過型電子顕微鏡で観察し目視で、層数が2層のカーボンナノチューブがカーボンナノチューブに占める割合は80%以上である事を確認した。
【0220】
カーボンナノチューブ以外の炭素不純物(フラーレン、ナノパーティクル、アモルファスカーボン等)はほとんど観察されなかった。2層カーボンナノチューブ100本中、80本以上が、そのチューブ外径が1.0〜3.0nmであり、詳細には2層カーボンナノチューブの外径は1.2から2.5nmを示すものが多く、外径の平均は2.2nmであった。一方、2層カーボンナノチューブの100本中、80本以上が、そのチューブ内径が0.4〜2.2nmであり、詳細には2層カーボンナノチューブの内径は0.5〜1.8nmを示すものが多く、内径の平均は1.5nmであった。また、屈曲間距離の平均は、約800nmであった。ナノチューブの末端部分の構造は、観察された2層カーボンナノチューブの90%以上が開放端であった。
【0221】
(2層カーボンナノチューブを含有する組成物の共鳴ラマン分光分析)
上記により得られたカーボンナノチューブを含有する組成物を共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)を用いて、レーザー波数630〜650cm−1で測定してG/D比を求めた結果、G/D比は、約12であり、Gバンドは分裂して観測された。また、350cm−1以下の領域において、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、217〜222cm−1内の最大ピーク強度をB、195cm−1未満の最大ピーク強度をC、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をD0としたときに、ピーク強度比は、A/B>3.5、A/C>6.0、A/D0>2.5であった。
【0222】
(精製・元素分析)
上記のようにして得られたカーボンナノチューブを含有する組成物を、空気中400℃で30分間焼成した後に、トルエン50ml(和光純薬製)に加え、40分間超音波振動を加えた。次に、イオン交換水50mlを加え、10分間、激しく攪拌した。黒色のトルエン相と灰色の水相を分液漏斗で分け、トルエン相をろ過した。トルエン相はカーボンナノチューブを主成分とし、水相はMCM−41、触媒金属を主成分とすることを、SEMおよびX線分析装置(EDX;オックスフォード社製ISIS)で確認した。トルエン相から回収されたカーボンナノチューブ組成物のEDX元素分析の結果、鉄の含有量は0.03質量%、コバルトの含有量は0.2質量%であった。
【0223】
(X線光電子分析)
上記のようにして精製したカーボンナノチューブを含有する組成物を、X線光電子分析(島津製作所社製ESCA−1000)により元素の組成比を測定し、前述の方法により分析した結果、炭素原子/素原子比が30であった。
【0224】
(分散液調整及びCNT層塗工)
各カーボンナノチューブを分散剤含有の超純水又はクロロスルホン酸の超純水溶液(鹿特級 関東化学社製)に0.2質量%となる様に添加し、分散方法A)攪拌:常温にて300rpmの攪拌速度で24時間密閉容器で攪拌した。この液をPTFEの0.2μmフィルターでろ過し、石英ガラス上にスピン塗布しTが85%となる様に調整した。スピンの回転により、膜の流動性が無くなる程度まで乾燥させた後、ホットプレート上で170℃で3分間熱処理を行い、余分な溶剤を除去し、CNT層を形成した。
【0225】
表1の様に比較のサンプルNo.2〜3、7〜8には分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(関東化学社製)をカーボンナノチューブの3倍量添加した。上記の分散剤とクロロスルホン酸溶剤との組合せは、分散剤の分解の為確認できなかった。
【0226】
《透明電極の測定及び評価》
下記方法で、作製した各透明導電膜の表面比抵抗について測定し評価した。
【0227】
(表面比抵抗Rs)
表面比抵抗Rs(Ω/□)は、ダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて透明導電膜の表面比抵抗を四端子法で測定した。
【0228】
(透過率T)
透明性T(%)の評価として、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、数値を求めた。
【0229】
【表1】

【0230】
表1から本発明の実施態様である高純度なCNTと分散剤を用いない透明導電膜の性能が秀でている事が理解できる。
【0231】
〔実施例2〕
次いで分散溶剤と分散方法を替えて実施例1と同様の検討を行った。
【0232】
各カーボンナノチューブを分散剤含有又は非含有のエタノール(超高純度グレード関東化学社製)に0.02質量%となる様に添加し、分散方法B)超音波及び遠心分離機 ALDRICH社の[カーボンナノチューブの評価・分散方法]を参考に以下の方法で分散した。チップ型超音波ホモジナイザー(1/2インチ、出力20W/cm)をSWCNT分散液に直接挿入し、分散処理を3時間行う。この際、超音波振動によって試料溶液が加熱されるので、分散液を入れたガラス容器を15℃に冷却した水浴中に浸し、温度上昇を抑える。この分散処理で、十分な分散状態が得られるが、同時に超音波ホモジナイザーのチップ先端から発生する金属片が混入している。この金属片はミクロンオーダーのサイズであり、そのまま長時間放置すれば瓶の底に沈殿して除去することができるが、低速の遠心分離処理(1650G、10min)を施して金属片のみを取り除く。
【0233】
更にこの溶液の上澄み50%を分取し、超遠心分離処理(219000G、15min)を行い、遠心管の上部40%の分散液を採取する。この処理によって、ほぼ不純物は取り除かれるが、少量の不純溶解物がまだ含まれている。そこで、採取した上部40%の分散溶液を別の遠心管に入れ、さらに超遠心分離処理を3時間施す。長時間遠心分離処理をすることにより、沈降速度の遅いSWCNTもすべて沈殿するが、溶解性不純物は沈降すること無く上部に残留する。これを取り出して廃棄する。上澄み部分を取り除いた沈殿物に溶剤を加えてチップ型超音波ホモジナイザー(1/2インチ、出力20W/cm)で冷却しながら10分間分散処理する。このようにして得られたCNT分散液を作製した。
【0234】
上記の液をスプレー塗布にて石英ガラス上に塗布し85%T%となる様に調整した。ホットプレートは100℃に設定し塗布完了後、30秒熱処理を行い、余分な溶剤を除去し、CNT層を形成した。
【0235】
表2の様に比較のサンプルNo.11〜13、23〜24には分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(関東化学社製)をカーボンナノチューブの3倍量添加した。
【0236】
表2に示すポルフィリンA〜Dは下記に示す。下記ポルフィリンをDMFに超音波を用い、0.05質量%濃度で溶解し、上記のCNT層で塗り重ね透明導電膜とした(サンプルNo.13、15及び17〜25)以外は実施例1同様に評価した。
【0237】
【化25】

【0238】
【表2】

【0239】
表2から、本発明の実施態様である高純度なCNTと分散剤を用いない透明導電膜の性能が秀でている事が理解できると共に、本発明の好ましい添加剤との組合せにより、更に性能が向上する事が理解できる。
【0240】
〔実施例3〕
上記の実施例No.16の組成に於いて分散方法を以下に変更した以外は、実施例2と同様に作製・評価した。
【0241】
分散方法C)常温にて300rpmの攪拌速度で24時間密閉容器で攪拌しながら、FCPA μJewelD−400(IMRA社製のフェムト秒パルスレーザー)照射によるレーザーアブレーション分散により分散した。
【0242】
得られた透明導電膜No.36はNo.16と同等の性能を示し、本願の分散剤を用いない透明導電膜を上記方法にて達成する事によっても得られる事が判った。
【0243】
〔実施例4〕
《有機EL素子の作製》
以上の様にして作製した透明導電膜の幾つかを用い、発光部2mm角のOLEDデバイスを作製し性能評価を行った。
【0244】
先ず最初に、透明導電膜にPEDOT/PSSをHIL層として塗工する。
【0245】
本願では、Clevios 510 Heraeus社製を用い、付量100nmとなる様に設け、150度で30分加熱した。
【0246】
この様にして作製した各透明導電層とHILの積層体をAppl.Phys.Lett.88,183104_2006 同様にoxygen−plasmaを用いてパターンを行い第一電極(陽極)とし、以下の手順でそれぞれ有機EL素子を作製した。
【0247】
パターニングを行った透明導電層を市販の真空蒸着装置内にセットし、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0248】
次いで、以下の手順で各発光層を設けた。
【0249】
まず、真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
【0250】
Ir−1が13質量%、Ir−14が3.7質量%の濃度になるように、Ir−1、Ir−14及び化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
【0251】
次いで、E−66が10質量%になるように、E−66及び化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
【0252】
その後、M−1を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成し、更にCsFを膜厚比で10%になるようにM−1と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0253】
形成した電子輸送層の上に、第一電極用外部取り出し端子およびパターン辺長2inch角、及び10inch(1inchは、2.540cmである)角の第二電極(陰極)形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの第二電極を形成した。
【0254】
さらに、第一電極及び第二電極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き第二電極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア2inch角、及び10inch角の有機EL素子を作製した。
【0255】
【化26】

【0256】
作製した各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して輝度が300cd/mになるよう発光させ、発光状態を以下の基準で目視評価し、結果を表3に示す。
【0257】
○ :全面が均一に発光している
○△:全面が発光しているが中心部分が僅かに暗い
△ :端部は明るく発光しているが中心部は明らかに暗い
△×:端部は発光しているが中心部は発光していない
× :端部が僅かに発光している又は全面発光しない
(電力効率の測定)
分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、各有機EL素子の正面輝度及び輝度角度依存性を測定し、正面輝度1000cd/mにおける電力効率を求めた。なお、表には、有機EL素子1の電力効率を100とした際の相対値で表示した。
【0258】
(駆動寿命の測定)
正面輝度10000cd/mを初期輝度として連続駆動時の輝度変動を測定し、その輝度半減時間を駆動寿命として求めた。なお、表には、有機EL素子1の駆動寿命を100とした際の相対値で表示した。
【0259】
【表3】

【0260】
実施例5
実施例2のNo.12,13,14,20及び比較にITOを用いて以下の方法で、光電変換素子−12、−13、−14、及び光電変換素子−20並びにITO(30Ω/□)の素子を作製した。
【0261】
〈電子輸送層の製膜〉
TiOx前駆体をゾルゲル法で調製した。
【0262】
先ず、100ml三口フラスコに2−メトキシエタノール12.5mlと、6.25mmolのチタニウムテトライソプロポキシドとを入れ、氷浴中で10分間冷却した。次に、12.5mmolのアセチルアセトンをゆっくり加えて、氷浴中で10分間撹拌した。次に、混合溶液を80℃で2時間加熱後、1時間還流した。最後に、室温まで冷却し、TiOx前駆体を得た。なお、上記工程は全て窒素雰囲気で行った。
【0263】
次いで、この150mmolのTiOx前駆体溶液を透明導電層上にスピンコート(回転速度2000rpm、回転時間60s)した。次に、不要部分を拭き取って除去した後、グローブボックスから空気中に取り出し、室温で30分間放置してTiOx前駆体を加水分解させた。次に、TiOx前駆体を150℃で1時間加熱処理して30nmのTiOx層(アモルファス酸化物半導体層)を得た。
【0264】
《バルクヘテロジャンクション層の製膜》
次に、酸化物半導体層の上にプレックスコアOS2100(ポリ3−アルキルチオフェン、プレックストロにクス社製)とNanom Spectra E100H(フェニル−C61−酪酸メチル、フロンティアカーボン社製)を質量比5:4で混合した1.8質量%クロロベンゼン溶液をスピンコート(800rpm、60s)し、不要部分を拭き取って除去した後、150度で10分間加熱して、有機半導体層(有機光電変換層)を100nm成膜した。
【0265】
〈正孔輸送層の製膜〉
次に、有機半導体層の上にBayer社製、Baytron P4083(PEDOT:PEDOT/PSS、Bayer社製)をスピンコート(4000rpm,60 s)し、150度で10分間加熱して正孔輸送層を40nm成膜した。
【0266】
〈対電極の製膜〉
次に、導電性ポリマー層の上にAg電極層として、銀ナノ粒子ペースト分散液(アルバックマテリアル社製 L−Ag1T)をスクリーン印刷によって、前記の透明導電層パターンと直交するように1cm巾のラインを二本印刷し、120度で10分の加熱乾燥を行うことで電極層を形成し、有機光電変換素子1を得た。
【0267】
得られた有機光電素子1は、再び前記グローブボックスに入れた後、封止剤(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて厚さ30μmの厚さのアルミニウムホイルと封止を行ったのち、大気中に取り出し、光電変換効率の測定を行った。
【0268】
比較の光電変換素子−12及び13は、光電変換効率が略ゼロに対し、本発明の光電変換素子−14でITOの1/10、本発明の光電変換素子−20でITOの80%の効率を達成し、光電変換素子用の透明導電膜として有効である事を示した。
【符号の説明】
【0269】
10 基板
11 第一電極
12 第二電極
13 有機機能層
14 第一導電層
15 第二導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤を用いずに溶剤中に純度90%以上のカーボンナノチューブを分散した組成物液を透明基板上に塗布することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の透明導電膜の製造方法により作製し、π共役系低分子化合物を含有させたことを特徴とする透明導電膜。
【請求項3】
前記π共役系低分子化合物が、ポルフィリン又はフタロシアニンの少なくとも何れかであることを特徴とする請求項2記載の透明導電膜。
【請求項4】
分散溶媒が無機超酸であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項5】
フェムト秒パルスレーザー法を用いて分散することを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の透明導電膜を電極に用いたことを特徴とする有機電子素子。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の透明導電膜を電極に用いたことを特徴とする有機発光素子。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の透明導電膜を電極に用いたことを特徴とする有機発電素子。

【図1】
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【公開番号】特開2013−16293(P2013−16293A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147103(P2011−147103)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】