説明

透明導電膜及びその製造方法

【課題】簡便な工程で、帯電防止機能が高く且つ透明性に優れる透明導電膜を透明基板上に形成する。
【解決手段】本発明の透明導電膜の製造方法は、導電性粒子と、樹脂と、前記樹脂を溶解可能で且つ沸点が120℃以上の溶剤とを含むコーティング組成物を作製する工程と、透明基板の上に、前記コーティング組成物をスプレーコーターにより塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥して透明導電膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。また、本発明の透明導電膜は、上記本発明の透明導電膜の製造方法によって形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布型透明導電膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布型透明導電膜、特に導電性無機粒子を含む透明導電膜は、一般にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのフレキシブルシートに塗布されて形成され、ディスプレイの帯電防止、タッチパネル電極、配線電極などに用いられている。
【0003】
従来、PETフィルムなどのフレキシブルシートに透明導電膜を形成する方法としては、導電性無機粒子を含有するコーティング組成物を、グラビア印刷などの連続的な塗布方法によって塗布、乾燥する工程が行われている。
【0004】
一方、ガラス上に直接塗布型透明導電膜を形成する方法としては、導電性無機粒子を含むシリカゾルをガラス上に吹き付け塗布した後に熱処理して透明導電膜を形成する方法(特許文献1)や、インクジェット方式により塗液をガラス基板上に直接パターニングしながら出射して塗膜を形成する方法(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−312136号公報
【特許文献2】特開2004−055363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶モジュールなどのガラス基板上に直接帯電防止機能を付与する場合、特許文献1に記載のように塗液を吹き付ける方法によれば、比較的容易に透明導電膜を形成することが可能であるが、塗布後の高温での熱処理によって液晶モジュールが損傷する問題がある。また、特許文献2に記載のようにインクジェット方式では、面積の小さい基板に均一に塗布することは可能であるが、大面積の基板に均一に塗布するには不向きという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するもので、導電性粒子、樹脂、溶剤を含むコーティング組成物をスプレーコーターを用いて基板上に塗布することにより、剛直な基板の上に直接透明導電膜を形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の透明導電膜の製造方法は、導電性粒子と、樹脂と、前記樹脂を溶解可能で且つ沸点が120℃以上の溶剤とを含むコーティング組成物を作製する工程と、透明基板の上に、前記コーティング組成物をスプレーコーターにより塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥して透明導電膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の透明導電膜は、上記本発明の透明導電膜の製造方法によって形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な工程で、帯電防止機能が高く且つ透明性に優れる透明導電膜を透明基板上に直接形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の透明導電膜の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
先ず、本発明の透明導電膜の製造方法について説明する。
【0013】
本発明の透明導電膜の製造方法は、導電性粒子と、樹脂と、上記樹脂を溶解可能な溶剤とを含むコーティング組成物を作製する工程と、透明基板の上に、上記コーティング組成物をスプレーコーターにより塗布して塗膜を形成する工程と、上記塗膜を乾燥して透明導電膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
上記コーティング組成物をスプレーコーターにより塗布することにより、剛直な基板上に、均一な塗膜を形成することができるとともに、多層塗布が可能となり、さらに塗布速度を速くすることができるため、比較的大面積の基板にも効率的に塗膜を形成できる。
【0015】
上記導電性粒子としては、透明性と導電性を兼ね備えた粒子であればよく、例えば、導電性金属酸化物粒子や導電性窒化物粒子などを用いることができる。上記導電性金属酸化物粒子としては、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ(ATO)粒子、スズ含有酸化インジウム(ITO)粒子、アルミニウム含有酸化亜鉛(AZO)粒子、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)粒子などの金属酸化物粒子が挙げられる。上記導電性金属酸化物粒子は、単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。また、上記導電性粒子は、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子及びスズ含有酸化インジウム粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種を主成分とすることが好ましい。これらの化合物は透明性、導電性や化学特性に優れており、塗膜にした場合にも高い光透過率と導電性を実現することができるからである。ここで、主成分とは、導電性粒子全体に対して、70重量%以上含まれる導電性粒子をいう。
【0016】
また、上記導電性粒子の平均粒子径は、30〜200nmであることが好ましく、より好ましくは50〜180nmである。ここで、上記平均粒子径は、透明導電膜に含まれる導電性粒子の平均分散粒子径をいう。上記平均粒子径が200nmを超えると、粒子の散乱によって塗膜のヘイズ値が上昇しすぎる傾向がある。また、導電性粒子の平均粒子径を小さくするためには1次粒子径の小さい導電性粒子を用いることが必要となるが、一般に、粒子の1次粒子径が小さいほど比表面積が増大して分散が難しくなるため、平均粒子径を30nm未満にすることは実質的に困難である。
【0017】
上記平均粒子径を30〜200nmとするためには、導電性粒子の1次粒子径は5〜180nmであることが好ましい。ここで、粒子の1次粒子径とは、導電性粒子そのものをサンプルとし、透過型電子顕微鏡(TEM)により、粒界で区切られた個々の粒子の粒子径を観察・測定した後、少なくとも100個の粒子の粒子径を平均した平均粒子径をいう。導電性粒子の1次粒子径が5nm未満であると、結晶性のよい粒子を得ることが難しい。一方、1次粒子径が180nmよりも大きいと、平均粒子径を200nm以下にすることが困難である。
【0018】
上記樹脂としては、上記導電性粒子を分散して塗膜を形成できるものであればよく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、及び光硬化性モノマーと重合開始剤とを含む光硬化性樹脂などが挙げられる。
【0019】
上記コーティング組成物は、さらに上記樹脂を溶解可能な溶剤を含む。コーティング組成物は固形分である導電性粒子を多く含むため、仮に樹脂成分が光硬化性モノマーのような液状成分であったとしても、溶剤を含まない場合にはコーティング組成物を塗布に適した粘度とすることが困難になる傾向がある。
【0020】
上記溶剤としては、上記樹脂を溶解し、且つ塗布後の乾燥工程によって除去できるものであればよく、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールアルキルエーテルやグリコールアルキルエステルなどが挙げられる。
【0021】
上記コーティング組成物は、上記溶剤として、沸点が120℃以上の溶剤を含むことが好ましく、150℃以上の溶剤を含むことがより好ましい。コーティング組成物に含まれる溶剤が、沸点が120℃未満の溶剤のみから構成されている場合、スプレーノズルから噴射された液滴が、基板に着弾する前に乾燥してしまいやすくなり、均一な塗膜が形成できなくなる傾向があるからである。また、上記溶剤が加熱乾燥により除去できれば、その沸点は特に限定されない。
【0022】
上記沸点が120℃以上の溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、キシレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0023】
上記沸点が120℃以上の溶剤は、コーティング組成物に含まれる溶剤の全重量に対して、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上であり、100重量%であってもよい。
【0024】
上記コーティング組成物の不揮発固形分の含有量は、10重量%以上50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは12重量%以上45重量%以下、特に好ましくは15重量%以上40%重量以下である。不揮発固形分の含有量が10重量%未満であると、乾燥後の膜厚を厚くするのが困難になり、必要な導電性が得られなくなる傾向がある。また、不揮発固形分の含有量が少なくても塗布量を多くすれば膜厚を増やすことが可能となるが、基板上のコーティング組成物の量が多くなるほど、スプレーノズルから噴射される噴射液の勢いによって液が移動しやすくなるため、均一な塗布膜を得ることが困難になる傾向がある。一方、含有量が50重量%を超えると、液滴が基板に着弾する前に乾燥してしまいやすくなり、均一な塗布膜が得られにくくなる傾向がある。
【0025】
上記コーティング組成物の粘度は、1mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることが好ましい。粘度が20mPa・sを超えると、スプレーノズルより微小な液滴を均一に噴射することが困難になる傾向があり、さらに基板に着弾した液膜のレベリング性が低下し、均一な塗布膜を形成しにくくなる傾向がある。また、コーティング組成物に含まれる溶剤の粘度は1mPa・s以上であることが多いため、コーティング組成物の粘度を1mPa・s未満にすることは実質的に困難である。
【0026】
上記コーティング組成物の不揮発固形分のうち、上記導電性粒子の体積含有率は、25%以上55%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以上50%以下であり、特に好ましくは35%以上45%以下である。ここで、上記導電性粒子の体積含有率は、不揮発固形分から形成される透明導電膜中の導電性粒子の体積の比率を意味する。上記体積含有率が55%を超えると、塗膜が脆くなって耐溶剤性が悪化する傾向がある。また、上記体積含有率が25%を下回ると、塗膜強度は向上するものの、粒子間の接点が少なくなりすぎるため、塗膜の表面抵抗が上昇する傾向がある。
【0027】
上記コーティング組成物には、さらに、導電性粒子の分散性を向上させるための分散剤や、基板に対する濡れ性やレベリング性を向上させるための表面調整剤が添加されていてもよい。
【0028】
上記コーティング組成物の作製方法は、導電性粒子を樹脂及び溶剤中に分散できればよく、特に限定されない。例えば、導電性粒子を分散させるために、ボールミル、サンドミル、ピコミル、ペイントコンディショナーなどのメディアを介在させた機械的処理方法、又は超音波分散機、ホモジナイザー、ディスパー及びジェットミルなどを使用した分散処理方法などが採用できる。
【0029】
上記スプレー塗布に用いるスプレーコーターは、特に限定されず、ノズルの数も単数であってもよく、塗布速度を上げるために複数であってもよい。
【0030】
上記コーティング組成物を透明基板に塗布した後、乾燥によって溶剤を除去する。乾燥条件や乾燥時間は、用いる溶剤によって適宜設定すればよい。また、必要に応じて、塗膜にUV光やEB光を照射して塗膜を硬化させたりして、透明導電膜を形成してもよい。
【0031】
上記透明基板は、透明で平滑な基板であれば特に限定されないが、ガラス基板とすることもできる。例えば、本発明では、焼成工程や加圧工程が必要ないため、液晶モジュールのガラス基板の上に直接透明導電膜を形成できる。
【0032】
(実施形態2)
次に、本発明の透明導電膜について説明する。
【0033】
本発明の透明導電膜は、上記実施形態1で説明した本発明の透明導電膜の製造方法によって形成されたことを特徴とする。上記製造方法によれば、透明導電膜を効率良く形成することができる。
【0034】
また、上記透明導電膜の膜厚は、0.3μm以上3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上2.5μm以下であり、特に好ましくは0.8μm以上2.0μm以下である。膜厚が薄いほど表面抵抗値が増加してしまい、また、膜厚が0.3μm未満になると、塗膜の光透過率は向上するものの、塗膜が薄すぎるために硬度が低下する傾向がある。また、膜厚を厚くすると表面抵抗値は低下する傾向にあるが、3μmを超えると表面抵抗値はほぼ一定となる。一方、膜厚が厚くなると光透過率が低下し、さらに材料量が増加してコスト高となることから、膜厚は3μm以下とすることが好ましい。
【0035】
続いて、本発明の透明導電膜について図面に基づき簡単に説明する。図1は、本発明の製造方法により得られた透明導電膜の一例を示す概略断面図である。図1において、透明導電膜12は、透明基板11の一方の主面に設けられている。
【0036】
上記透明導電膜12の表面抵抗は、1×108Ω/スクエア以下であることが好ましく、1×106Ω/スクエア以下であることがさらに好ましく、1×105Ω/スクエア以下であることが特に好ましい。上記表面抵抗値は低ければ低いほどよいが、焼成工程や加圧工程を行わず、塗布工程のみによって作製する本発明の場合は、表面抵抗を1000Ω/スクエア以下とすることは実質的に難しい。
【0037】
上記透明導電膜12のヘイズ値は、3.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。また、導電性粒子を含有するため、ヘイズ値を0.2%以下にすることは困難である。また、上記透明導電膜の可視光透過率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
先ず、以下のようにしてITO分散体組成物aを調製した。
【0040】
<ITO分散体組成物a>
100mlのプラスチック製ビンに、下記の成分を計り取り、ペイントシェーカー(東洋精機社製)で25分間分散処理した後、ジルコニアビーズを取り除いて、ITO分散体組成物aを得た。
【0041】
(1)スズ含有インジウム酸化物(ITO)粒子 12.0g
(2)分散剤“BYK111”(ビックケミー社製) 0.60g
(3)メチルエチルケトン(和光純薬社製) 27.4g
(4)トルエン(和光純薬社製) 2.27g
(5)ジルコニアビーズ(液の攪拌分散用、直径0.3mm) 60.0g
【0042】
ITO分散体組成物aにおける、ITO粒子の平均粒子径を動的光散乱方式の粒度分布計(コールター社製“N4PLUS”)で測定したところ、110nmであった。
【0043】
<ITO分散体組成物b>
また、下記の成分を計り取り、上記と同様にしてペイントシェーカーにて分散処理し、ITO分散体組成物bを得た。
【0044】
(1)スズ含有インジウム酸化物(ITO)粒子 21.2g
(2)分散剤“BYK111”(ビックケミー社製) 0.85g
(3)メチルエチルケトン(和光純薬社製) 8.98g
(4)トルエン(和光純薬社製) 8.98g
(5)ジルコニアビーズ(液の攪拌分散用、直径0.3mm) 60.0g
【0045】
ITO分散体組成物bにおける、ITO粒子の平均粒子径を上記と同様にして測定したところ、180nmであった。
【0046】
次に、以下のようにしてコーティング組成物1〜4を調製した。
【0047】
<コーティング組成物1>
プラスチック製ビンに、ITO分散体組成物a及び下記の成分を計り取り、混合・攪拌して、固形分濃度が25重量%のコーティング組成物1を30g調製した。
【0048】
(1)ITO分散体組成物a 20.3g
(2)アクリル樹脂“BR106”(三菱レイヨン社製) 1.12g
(3)メチルエチルケトン(和光純薬社製) 4.29g
(4)トルエン(和光純薬社製) 4.29g
【0049】
<コーティング組成物2〜4>
下記表1に示すITO分散体組成物及びその他の成分を、表1に示す配合量で配合し、コーティング組成物1と同様にして、それぞれ、コーティング組成物2〜4をそれぞれ30g調製した。表1で、メチルエチルケトン及びトルエンは沸点が120℃未満の溶剤であり、シクロヘキサノンは沸点が120℃以上の溶剤である。
【0050】
得られたコーティング組成物1〜4の粘度を、東機産業社製の粘度測定機“VISCOMETER(TV−22)”により測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
続いて、上記コーティング組成物1〜4を用いて、下記のとおり透明導電膜を作製した。
【0053】
(比較例1)
コーティング組成物1を、厚さ2mm、横150mm、縦150mmの光学ガラス基板上にスプレーコーター(サンエイテック社製のマイクロコートシステム、バルブ:780Sスプレーバルブ)にて塗布した。具体的には、塗布ロボット(JANOME社製のDESKTOP ROBOT“JR2400”)にガラス基板をセットし、ノズル高さ35mm、Y軸スキャン速度35mm/s、X軸移動ピッチ25mm、塗布列数8とし、スプレー条件は、液圧力0.2kPa、ノズル圧力0.5kPaとして塗布を行った。得られた塗膜を100℃の乾燥機で2分間乾燥させて、実施例1の透明導電膜を形成した。
【0054】
(実施例1)
コーティング組成物2を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、実施例1の透明導電膜を得た。
【0055】
(実施例2)
コーティング組成物3を用い、Y軸スキャン速度を20mm/s、X軸移動ピッチを20mm、塗布列数を10に変更した以外は、比較例1と同様にして、実施例2の透明導電膜を得た。
【0056】
(実施例3)
コーティング組成物4を用い、Y軸スキャン速度を45mm/sに変更した以外は、比較例1と同様にして、実施例3の透明導電膜を得た。
【0057】
実施例1〜3と比較例1の透明導電膜の膜厚、表面抵抗、光透過率及びヘイズを下記のとおり測定した。その結果を表2に示す。
【0058】
(膜厚)
透明導電膜をガラス基板ごと切断し、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製“S−4500”)にて断面観察して、膜厚を測定した。
【0059】
(表面抵抗)
ダイアインスツルメンツ社製の抵抗計(“ロウレスタAP−MCP−T400”)を用いて、透明導電膜の表面抵抗を測定した。
【0060】
(光透過率)
先ず、紫外可視近赤外分光光度計“V−570”(日本分光社製)を用い、450〜650nmの波長領域における光透過率スペクトルを測定した。次に、基板の光透過率を換算した塗膜のみの光透過率スペクトルについて、波長領域450〜650nmの範囲の光透過率を平均した値を光透過率とした。
【0061】
(ヘイズ)
紫外可視近赤外分光光度計“V−570”(日本分光社製)を用いて、ヘイズ値を測定した。
【0062】
【表2】

【0063】
表2に示すように、本発明の実施例1〜3と比較例1においては、優れた導電性及び透明性を有する透明導電膜が得られた。また、沸点が120℃以上の溶剤を用いた実施例1〜3では、そうでない比較例1に比べてヘイズ値が低く、より透明な導電膜が得られたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、簡便な工程で、帯電防止機能が高く且つ透明性に優れる透明導電膜を透明基板上に直接形成することができ、その透明導電膜は帯電防止フィルム、タッチパネル用電極などへの応用が期待できる。
【符号の説明】
【0065】
11 透明基板
12 透明導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と、樹脂と、前記樹脂を溶解可能で且つ沸点が120℃以上の溶剤とを含むコーティング組成物を作製する工程と、
透明基板の上に、前記コーティング組成物をスプレーコーターにより塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥して透明導電膜を形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記透明基板が、ガラス基板である請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記コーティング組成物の不揮発固形分の含有量が、10重量%以上50重量%以下である請求項1又は2に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記コーティング組成物の粘度が、1mPa・s以上20mPa・s以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング組成物の不揮発固形分のうち、前記導電性粒子の体積含有率が、25%以上55%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって形成されたことを特徴とする透明導電膜。
【請求項7】
膜厚が、0.3μm以上3.0μm以下である請求項6に記載の透明導電膜。

【図1】
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【公開番号】特開2011−187286(P2011−187286A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50666(P2010−50666)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】