説明

透明導電膜及び透明導電膜の製造方法

【課題】電極パターンを目立たないようにした透明導電膜とその製造方法を提供する。
【解決手段】透明層の少なくとも1つの面1aには、凹凸加工により凹部1b及び凸部1cが形成されており、凹部1bに積層された第1の導電層2aと凸部1cに積層された第2の導電層2bとが、凹部1b及び凸部1cの凹凸方向において位置をずらして配置されており、第1及び第2の導電層2a,2bは、それぞれ隣り合う導電層と電気的に絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極、ポインティングデバイス、電磁波遮蔽膜等として有用な透明導電膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性積層体の一つである透明導電膜は、導電性と光学的な透明性とを合わせ持つという特性を有しているため、産業的には、透明電極、電磁波遮蔽膜、面状発熱膜、反射防止膜等として使用されている。特に、近年では、タッチパネル向けに用いるポインティングデバイス(位置入力装置)として多用されている。
ところで、ポインティングデバイスには、静電容量結合式や光学式等、多様な方式が存在する。これらの方式の中で、透明導電膜が使用されるのは、例えば、上下の電極が接触することで入力位置を特定する抵抗膜式や、静電容量の変化から入力位置を特定する静電容量式である。
【0003】
ポインティングデバイスは、入力装置として、例えば、携帯用端末、携帯ゲーム機等のディスプレイ前面にも使用され、ディスプレイと共にタッチパネルを構成している。このため、これらの用途で使用されるポインティングデバイスには、特に、ディスプレイの表示を損なわないだけの、透過・反射特性が必要である。また、静電容量式では、大きく表面容量型と投影型に分けられ、投影型では、静電容量の変化を検出する電極としての導電層の有る部分と無い部分をエッチング処理などにより形成(パターニング)する。導電層の有る部分と無い部分で光学特性が違うことで、導電層の模様が目立ってしまう外観上の不具合が生じないようにする対策も必要になる。
【0004】
例えば、特許文献1では、パターニングされた電極によって画定された感応エリアを表面上に有する基材を備える2次元位置センサが考案されている。この2次元位置センサではまさに、エッチング処理等によりパターニングした電極同士の隙間が目立たないようにするための対策が必要となる。また、基材の表面上に電極同士の隙間となる部分を確保する必要がある分、電極を配置するのに利用できる基材の表面上の面積がわずかではあるが小さくなる。
【0005】
特許文献2では、同一面上に2方向に延在する透光性電極パターンを形成し、絶縁されている電極パターン同士を、中継電極を形成して電気的に接続し、さらに電極パターンの無い部分にはダミーパターンを形成し、電極パターンの無い部分の面積を小さくした入力装置が考案されている。電極パターンの無い面積を小さくし、かつ中継電極の面積を小さくする事で、これらが目立たないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−323650号公報
【特許文献2】特開2010−002958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のように、互いに絶縁されている電極パターン同士を電気的に接続させる為に、電極と同一面上に中継電極を形成する工程には、精密さが必要になる。また、電極パターンとダミーパターンの隙間を小さくする工程にも精密さが必要になる。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡便な工程で製造できる導電層の模様が目立ちにくいようにすることができる透明導電膜、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、次の特徴を持つ。
透明層の少なくとも1つの面に、凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記凹部に積層された導電層と前記凸部に積層された導電層とが前記凹部及び前記凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、各導電層は、隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする透明導電膜。
本発明によると、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、導電層による電極同士に隙間が生じず、電極同士の境界部が目立ち難く出来る。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、次の特徴を持つ。
前記凹部、前記凸部、及び、前記導電層に跨って絶縁層が積層されており、該絶縁層の表面に凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記絶縁層の凹部に積層された導電層と前記絶縁層の凸部に積層された導電層とが前記絶縁層の凹部及び凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、前記絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ積層された導電層は、前記絶縁層上の隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
本発明によると、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、導電層による電極同士に隙間が生じず、電極同士の境界部が目立ち難く出来る。また、透明層の1つの面上と、その上に積層した絶縁層の表面上とに2組の導電層による電極を配置できるので、電極の配置密度を高めることができる。
【0011】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、次の特徴を持つ。
透明層の少なくとも1つの面に、該面の延在方向に間隔をおいて複数の絶縁層をそれぞれ積層させて凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記凹部に積層された導電層と前記凸部に積層された導電層とが前記凹部及び前記凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、各導電層は、隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする透明導電膜。
本発明によると、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、導電層による電極同士に隙間が生じず、電極同士の境界部が目立ち難く出来る。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、次の特徴を持つ。
前記凹部、前記凸部、及び、前記導電層に跨って第2の絶縁層が積層されており、該第2の絶縁層の表面に凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら第2の絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記第2の絶縁層の凹部に積層された導電層と前記第2の絶縁層の凸部に積層された導電層とが前記第2の絶縁層の凹部及び凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、前記第2の絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ積層された導電層は、前記第2の絶縁層上の隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項3記載の透明導電膜。
本発明によると、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、導電層による電極同士に隙間が生じず、電極同士の境界部が目立ち難く出来る。また、透明層の第2の絶縁層の上下に2組の導電層による電極を配置できるので、電極の配置密度を高めることができる。
【0013】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、次の特徴を持つ。
透明層の1つの面に、凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記透明層の他の面に、凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記透明層の前記1つの面と他の面とのそれぞれにおいて、前記凹部に積層された導電層と前記凸部に積層された導電層とが前記凹部及び前記凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、各導電層は、前記1つの面上又は前記他の面上の隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする透明導電膜。
本発明によると、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、導電層による電極同士に隙間が生じず、電極同士の境界部が目立ち難く出来る。また、透明層の2つの面にそれぞれ導電層による電極を配置できるので、電極の配置密度を高めることができる。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項1から5のいずれかに記載した発明であって、透明層の少なくとも1つの面が透明樹脂によるコーティング面であることを特徴とするものである。
【0015】
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した発明であって、透明樹脂がハードコートであることを特徴とするものである。
【0016】
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項2から4のいずれかに記載した発明であって、絶縁層が無機物であることを特徴とするものである。
【0017】
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、次の特徴を持つ。
透明層の少なくとも1つの面に対し、凹凸加工により凹部及び凸部を形成する工程と、
前記凹部及び凸部に、それら凹部及び凸部の凹凸方向に離間させて導電層をそれぞれ形成する工程と、
を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
本発明によると、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、導電層による電極同士に隙間が生じず、電極同士の境界部が目立ち難く出来る。
【0018】
次に、本発明のうち、請求項10に記載した発明は、次の特徴を持つ。
透明層の少なくとも1つの面に積層した絶縁層により前記1つの面上に凹部及び凸部を形成する工程と、
前記凹部及び凸部に、それら凹部及び凸部の凹凸方向に離間させて導電層をそれぞれ形成する工程と、
を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
本発明によると、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、導電層による電極同士に隙間が生じず、電極同士の境界部が目立ち難く出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エッチング処理による透明導電膜のパターニングと違い、電極同士に隙間が生じない為、電極同士の境界部が目立ち難く出来た透明導電膜とその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態である透明導電膜の1例を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態である透明導電膜の1例を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態である透明導電膜の1例を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態である透明導電膜の1例を示す断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態である透明導電膜の1例を示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態である透明導電膜の1例を示す断面図である。
【図7】従来公知の一般的な透明導電膜の1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。
【0022】
(構成)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る基本的な構造を有する透明導電膜について説明する。
図1に示す第1実施形態の透明導電膜10は、透明層1の一面1a(図1では上面)に同一深さの凹部1bを複数形成することで、凹凸を交互に繰り返す断面形状を呈している。そして、各凹部1bの底面に第1の導電層2aを形成し、2つの凹部1b,1b間に存在する各凸部1cの先端面に第2の導電層2bを形成している。各凹部1bは、第1の導電層2aと第2の導電層2bとが凹部1bの深さ方向において重ならないのに十分な深さを有している。これにより、第1の導電層2aと第2の導電層2bとの電気的絶縁を確保している。この透明導電膜10では、タッチ操作されることで第1の導電層2a及び第2の導電層2b間の静電容量が変化する。
透明層1は、透明なガラスやフィルムであり、それらに透明樹脂であるハードコートなどの層が積層されているものが好適である。透明層1の厚さは、例えば図1に示すように凹部1b及び凸部1cを形成することで、場所によって厚みが変わっていても良く、本明細書では、以後、このことを凹凸加工を行なったと表現することにする。透明層1の厚さは、最も薄い部分でも10〜200μm程度であり、断面が矩形であるものをはじめとした凹凸状の構造(例えば、図1の凹部1b及び凸部1c)を持つことが好ましい。その場合、透明層1の断面の薄い部分と厚い部分の差は、数nm〜数十μm程度である。凹凸加工では、透明層1に物理的な加工を行なう。例えば透明層1の表面を削り取ったり、あるいはハードコートを積層する際に凹凸状の形状を付与させる。
また、透明層1は、一方または両方の面に、易接着処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。その他、例えば、図2に示す本発明の第2実施形態に係る透明導電膜11のように、透過率向上や色調調整の目的で、透明層1と第1及び第2の導電層2a,2bとの間にそれぞれ、絶縁性の無機膜や有機膜を絶縁層3として適宜積層してもよい。
この場合にも、第1の導電層2aと第2の導電層2bとは凹部1bの深さ方向において重ならず、第1の導電層2aと第2の導電層2bとの電気的絶縁が確保されているものとする。この透明導電膜11でも、タッチ操作されることで第1の導電層2a及び第2の導電層2b間の静電容量が変化する。
透明層1の材料としては、ガラス、もしくは透明樹脂であるポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)を用いることが可能である。
また、透明層1の材料としては、透明樹脂であるポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォンを用いることも可能である。
さらに、透明層1の材料としては、上述した材料の共重合体を無延伸、または延伸させたプラスチックフィルムを用いることも可能である。
また、透明層1の材料としては、上述した材料以外にも、透明性の高い他のプラスチックフィルムを用いることも可能である。
なお、本実施形態では、一例として、透明層1の材料を、コスト面で有利な、ポリエチレンテレフタレート(PET)とした場合を説明する。
【0023】
第1及び第2の導電層2a,2bは、透明性の高いものが好適である。具体的には、導電性ポリマーの塗布や、ITO(酸化インジウム錫:Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛のターゲットを使用したスパッタリング蒸着によって第1及び第2の導電層2a,2bをそれぞれ形成する。
【0024】
絶縁層3は、透明性の高いものが好適である。一般に光学薄膜として使用されている絶縁性の無機物の蒸着や、絶縁性の有機系材料の塗布を用いて形成する。なお、例えば、図3に示す本発明の第3実施形態に係る透明導電膜12では、凹凸を形成していない平面状の透明層1の一面1aに全面に亘って均一に第1の絶縁層3aを積層させ、さらに、第1の絶縁層3a上に、マスクをして部分的に第2の絶縁層3bを積層させている。マスクする代わりに、第2の絶縁層3bを第1の絶縁層3aの全面に積層させた後に、エッチングにより部分的に除去しても構わない。
この透明導電膜12では、各第2の絶縁層3bによって、図1や図2の透明導電膜10,11における凸部1cに代わる凸部4bが構成され、また、隣り合う2つの第2の絶縁層3b,3bの間に、図1や図2の透明導電膜10,11における凹部1bに代わる凹部4aが構成される。そして、凹部4aの底面(第1の絶縁層3aの表面)と凸部4bの先端面(第2の絶縁層3bの先端面)とに、それぞれ第1及び第2の導電層2a,2bが形成される。
この場合、各凹部4aの深さ(第2の絶縁層3bの高さ)は、第1の導電層2aと第2の導電層2bとが凹部4aの深さ方向(凹凸方向)において重ならないのに十分な寸法とする。これにより、第1の導電層2aと第2の導電層2bとの電気的絶縁を確保することができる。この透明導電膜12でも、タッチ操作されることで第1の導電層2a及び第2の導電層2b間の静電容量が変化する。
なお、第1の絶縁層3aを省略し、透明層1の一面1a上に各第2の絶縁層3bを直接形成してもよい。
【0025】
また、図4に示す本発明の第4実施形態に係る透明導電膜13のように、2次元位置センサを構成する為に、第1及び第2の導電層2a,2bを2組有する構成としても構わない。例えば、x軸方向の位置センサ用の電極に、1組目の第1及び第2の導電層2a,2bを用い、y軸方向の位置センサ用の電極に、2組目の第1及び第2の導電層2a,2bを用いる。その為には、一面1aに第1及び第2の導電層2a,2bを形成した2つの透明層1を、一面1aと対向する面同士貼り合わせて、図4に示す透明導電膜13を形成したり、1つの透明層1の対向する両面に第1及び第2の導電層2a,2bをそれぞれ形成して図4に示す透明導電膜13とする。この透明導電膜13でも、タッチ操作されることで各組の第1の導電層2a及び第2の導電層2b間の静電容量が変化する。なお、1組目の第1及び第2の導電層2a,2bと2組目の第1及び第2の導電層2a,2bとは、それぞれ延在方向が交差していることが好ましい。
また、図5に示す本発明の第5実施形態に係る透明導電膜14のような構成とすることもできる。詳しくは、図1の透明導電膜10と同様に第1及び第2の導電層2a,2bを形成した上から、透明層1の一面1aの全体に亘って絶縁層3を積層する。そして、積層した絶縁層3の表面に凹凸加工により交互に形成した各凹部3cの底面及び各凸部3dの先端面に、それぞれ第1及び第2の導電層2a,2bを形成する。これにより、第1及び第2の導電層2a,2bを2組有する構成とする。
図5のような構成とする場合、各凹部3cは、第1の導電層2aと第2の導電層2bとが凹部3cの深さ方向(凹凸方向)において重ならないのに十分な深さとする。これにより、絶縁層3上の第1の導電層2aと第2の導電層2bとの電気的絶縁を確保することができる。この透明導電膜14でも、タッチ操作されることで各組の第1の導電層2a及び第2の導電層2b間の静電容量が変化する。
また、図6に示す本発明の第6実施形態に係る透明導電膜15のような構成とすることもできる。詳しくは、図3の透明導電膜12と同様に第1及び第2の絶縁層3a,3b上に凹部4a及び凸部4bを形成して、第1及び第2の導電層2a,2bを形成した上から、透明層1の一面1aの全体に亘って第3の絶縁層3eを積層する。そして、積層した第3の絶縁層3eの表面上に、マスクをして部分的に第4の絶縁層3fを積層させる。マスクする代わりに、第4の絶縁層3fを第3の絶縁層3eの全面に積層させた後に、エッチングにより部分的に除去しても構わない。これにより、第1及び第2の導電層2a,2bを2組有する構成とする。
この透明導電膜15では、各第4の絶縁層3fによって凸部4cが構成される。そして、凸部4cの先端面(第4の絶縁層3fの先端面)に、それぞれ第3の導電層2cが形成される。この第3の導電層2cは、第3の絶縁層3eによって第1及び第2の導電層2a,2bとそれぞれ電気的に絶縁される。この透明導電膜15では、タッチ操作されることで第1の導電層2a及び第2の導電層2b間の静電容量や、第2の導電層2b及び第3の導電層2c間の静電容量が変化する。
なお、この場合にも、第1の絶縁層3aを省略し、透明層1の一面1a上に各第2の絶縁層3bを直接形成してもよい。
(入力装置の製造方法)
【0026】
本実施形態の透明導電膜の製造方法は、透明層1の少なくとも1つの面(例えば、図1の一面1a)に対し、凹凸加工により凹部及び凸部(例えば、図1の凹部1b及び凸部1c)を形成する工程、もしくは、透明層1の少なくとも1つの面(例えば、図3の透明層1の一面1a)の全面もしくは部分的に絶縁層(例えば、図3の第1及び第2の絶縁層3a,3b)を積層させる処理により凹部及び凸部(例えば、図3の凹部4a及び凸部4b)を形成する工程と、
前記凹部及び凸部に、それら凹部及び凸部の凹凸方向に離間させて、互いに電気的に絶縁された導電層2(例えば、図1及び図3の第1及び第2の導電層2a,2b)を形成する工程を含む方法である。
【0027】
凹凸状の構造を形成するには、図1乃至図6を参照して上述した方法を用いる。
特に、透明層1の一面1aの全面もしくは部分的に絶縁層3(第1乃至第4の絶縁層3a,3b,3e,3f)を積層させて凹凸状の構造を形成するには、図3、図5及び図6を参照して上述した方法を用いる。
また、導電層2(第1乃至第3の導電層2a〜2c)を形成するには、上述した第1実施形態の説明において詳説した方法を用いる。
従来公知の一般的な透明導電膜の構成では、図7に示すように、透明層1の一面1a上にエッチング等により所望のパターンで透明な導電層2を形成し、隣り合う2つの導電層2,2を離間させることで両者の電気的な絶縁を図っている。
したがって、導電層2が存在する部分とそうでない部分とで屈折率の差が生じ、透明導電膜全体としては透明であるとは言えども、両者の間に見た目の区別が付いてしまう。また、透明層1の一面のうち隣り合う2つの導電層2,2間の部分を、電気的絶縁を確保するため離間させるので、導電層2,2間に離間のためのスペースを確保する分だけ、導電層2を配置できる面積が透明層1の面全体の面積よりも小さくなる。
これに対して、図1乃至図6を参照して上述した本発明の第1乃至第6実施形態に係る透明導電膜10〜15では、凹部1b,3c,4aの底面と凸部1c,3d,4b,4cの先端面とに高さをずらして第1乃至第3の導電層2a〜2cを配置するので、各導電層2a〜2c同士の電気的絶縁を確保しつつ、透明層1の一面1aの全面積分を、第1乃至第3の導電層2a〜2cを配置するスペースとして使用することができる。
また、透明層1の一面1aを平面視した場合に、一面1aの全体が、互いに電気的に絶縁された第1乃至第3の導電層2a〜2cにより覆われた状態(最上層に露出しているか否かを問わず)となるので、導電層とそれ以外の層との屈折率の差により導電層のパターンが目立ってしまうのを防止することができる。
しかも、第1乃至第3の導電層2a〜2c同士の電気的絶縁を確保するために、それぞれを精密な加工を用いて一面1aと平行な方向に離間させる必要がないので、簡便な加工で透明導電膜10〜15を製造することができる。
【0028】
(実施例)
ここで、図3を参照して、本発明の透明導電膜の実施例の構成を説明する。
透明層1は、両方の面(一面1a及びその反対側の面)に、ハードコートを塗布した透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、その厚さは、188μmである。ハードコート層を形成する材料として、商品名 ライトアクリレートDPE−6A(共栄社製、アクリル6官能)80重量部と、商品名 エポリード302(ダイセル化学社製、エポキシ3官能)を20重量部と、商品名 サイクロマーM−100(ダイセル化学社製)5重量部と、商品名 イルガキュア907 (チバガイギー社製)を2重量部と、商品名 アデカオプトマーSP−150(旭電化社製)を3重量部を用い、メチルエチルケトン中に混合溶解し、ロールコータにてPETフィルム上に5μmの厚さに塗布し、オーブンにて溶媒除去後紫外線照射により硬化させ、ハードコート層を得た。
第1の絶縁層3aは、形成せず、第2の絶縁層3bを透明層1の一面1a上に直接形成した。その際には、透明層1の一面1aにマスクをし、厚さ約200nmの酸化シリコンをDCマグネトロンスパッタリング法にて約30μmの幅で成膜した。評価試験用に5cm角でも成膜した。
つづいて、第1及び第2の導電層2a,2bを積層した。その際、DCマグネトロンスパッタリング法にて厚さ20nmのITO(Indium Tin Oxide)膜を形成した。
【0029】
(比較例)
次に、図7を参照して、比較例の透明導電膜の構成を説明する。
実施例と違い、第2の絶縁層を透明層1の一面1a上に形成しなかった。そして、透明層1の一面a上に積層した導電層2の一部を約30μmの幅でエッチング処理して除去した。評価試験用に5cm角でもエッチング処理をした。
また、実施例及び比較例で作成した透明導電膜に対し、各評価試験を行う際の方法を、以下に示す。
【0030】
A.目視観察
目視により、実施例では第2の絶縁層3bのある部分と無い部分、比較例では導電層2のある部分と無い部分の見え方に違いがあるか観察を行なった。
B.色彩測定
分光光度計を用い、D65光源による色彩値を測定した。
【0031】
I.実施例
目視では、第2の絶縁層3bのある部分と無い部分の区別はつきにくかった。
具体的には、第2の絶縁層3bがある部分については、透過光(透過色)と反射光(表面色)とをL 表色系で比較すると、透過L 、a 、b =94.8、−0.4、1.7であり、反射L 、a 、b =40.0、0.9、−3.7だった。
一方、第2の絶縁層3bが無い部分については、透過L 、a 、b =94.7、−0.1、2.1であり、反射L 、a 、b =40.5、−0.4、−5.0だった。
このように、第2の絶縁層3bがある部分と無い部分との透過光(透過色)や反射光(表面色)の差は、それぞれ、透過L 、a 、b が−0.1、0.3、0.4、反射L 、a 、b が0.5、−1.3、−1.3となった。
【0032】
II.比較例
目視でも、導電層2のある部分と無い部分の区別はつきやすかった。
導電層2がある部分については、透過L 、a 、b =94.7、−0.1、2.1であり、反射L 、a 、b =40.5、−0.4、−5.0だった。
一方、導電層2が無い部分については、透過L 、a 、b =96.4、−0.4、1.4であり、反射L 、a 、b =34.2、0.0、−0.7だった。
このように、導電層2がある部分と無い部分との透過光(透過色)や反射光(表面色)の差は、それぞれ、透過L 、a 、b が−1.7、0.3、0.7、反射L 、a 、b が6.3、−0.4、−4.3となった。
実施例と比べて比較例の透明導電膜は、色彩値の差が大きく、目視でパターンの区別がつきやすかったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の透明導電膜及び透明導電膜の製造方法は、ポインティングデバイス、特に、静電容量式タッチパネル、及び静電容量式タッチパネルの製造方法として用いる事が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 透明層
1a 一面
1b,3c,4a 凹部
1c,3d,4b,4c 凸部
2 導電層
2a 第1の導電層
2b 第2の導電層
2c 第3の導電層
3 絶縁層
3a 第1の絶縁層
3b 第2の絶縁層
3e 第3の絶縁層
3f 第4の絶縁層
10〜15 透明導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明層の少なくとも1つの面に、凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記凹部に積層された導電層と前記凸部に積層された導電層とが前記凹部及び前記凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、各導電層は、隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
前記凹部、前記凸部、及び、前記導電層に跨って絶縁層が積層されており、該絶縁層の表面に凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記絶縁層の凹部に積層された導電層と前記絶縁層の凸部に積層された導電層とが前記絶縁層の凹部及び凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、前記絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ積層された導電層は、前記絶縁層上の隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
【請求項3】
透明層の少なくとも1つの面に、該面の延在方向に間隔をおいて複数の絶縁層をそれぞれ積層させて凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記凹部に積層された導電層と前記凸部に積層された導電層とが前記凹部及び前記凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、各導電層は、隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする透明導電膜。
【請求項4】
前記凹部、前記凸部、及び、前記導電層に跨って第2の絶縁層が積層されており、該第2の絶縁層の表面に凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら第2の絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記第2の絶縁層の凹部に積層された導電層と前記第2の絶縁層の凸部に積層された導電層とが前記第2の絶縁層の凹部及び凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、前記第2の絶縁層の凹部及び凸部にそれぞれ積層された導電層は、前記第2の絶縁層上の隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項3記載の透明導電膜。
【請求項5】
透明層の1つの面に、凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記透明層の他の面に、凹凸加工により凹部及び凸部が交互に形成されて、それら凹部及び凸部にそれぞれ導電層が積層されており、前記透明層の前記1つの面と他の面とのそれぞれにおいて、前記凹部に積層された導電層と前記凸部に積層された導電層とが前記凹部及び前記凸部の凹凸方向において位置をずらして配置されており、各導電層は、前記1つの面上又は前記他の面上の隣り合う導電層に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする透明導電膜。
【請求項6】
前記透明層の少なくとも前記1つの面が透明樹脂によるコーティング面であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の透明導電膜。
【請求項7】
前記透明樹脂がハードコートであることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜。
【請求項8】
前記絶縁層が無機物であることを特徴とする、請求項2から4のいずれかに記載の透明導電膜。
【請求項9】
透明層の少なくとも1つの面に対し、凹凸加工により凹部及び凸部を形成する工程と、
前記凹部及び凸部に、それら凹部及び凸部の凹凸方向に離間させて導電層をそれぞれ形成する工程と、
を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【請求項10】
透明層の少なくとも1つの面に積層した絶縁層により前記1つの面上に凹部及び凸部を形成する工程と、
前記凹部及び凸部に、それら凹部及び凸部の凹凸方向に離間させて導電層をそれぞれ形成する工程と、
を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−199042(P2012−199042A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61884(P2011−61884)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】