説明

透明導電膜形成用耐熱アクリル系樹脂積層体

【課題】本発明は、外力による複屈折の変化、即ち光弾性係数の小さい耐熱性アクリル系透明樹脂基板にハードコート層ならびに無機バリア層を有する事により表面硬度を改良して表面硬度、光学特性、耐熱性が良好な無機バリア層を有した耐熱性アクリル系樹脂積層体にスズ添加酸化インジウムをはじめとした透明導電膜を形成した透明導電性積層体、すなわち光学特性、抵抗値の安定性、耐熱安定性に優れたディスプレイ用透明電極に使用できる透明導電性積層体を提供することにある。
【解決手段】メタクリル酸メチル単位40〜90質量%、無水マレイン酸単位5〜20質量%、及び芳香族ビニル化合物単位5〜40質量%を共重合して得られる耐熱性アクリル系樹脂透明基板にハードコート層ならびに無機バリア層を有する事で得た耐熱性アクリル系樹脂積層体に透明導電膜を形成することにより光学特性、抵抗値の安定性、耐熱安定性に優れた透明導電性積層体が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の耐熱性アクリル系樹脂積層体は透明導電膜を形成するのに適しており、光学特性、抵抗値の安定性、耐熱安定性に優れた透明導電性積層体は、太陽電池の光電変換素子の窓電極、電磁シールドの電磁遮蔽膜、透明電波吸収体、透明タッチパネル等の入力装置の電極、液晶表示体,EL(エレクトロルミネセンス)発光体,EC(エレクトロクロミック)表示体等の透明電極などの基板を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は、透明樹脂として他の透明樹脂よりその高い光透過率、耐候性、高い剛性に特徴があり、レンズ、自動車部品、照明部品、各種ディスプレイなどに使用され、中でも車両用部品、照明器具、建築用材料、看板、絵画や、表示装置の表示窓や銘板等広い用途で用いられている。携帯電話の表示窓は、内部の液晶表示を見やすくすると同時に、外からの衝撃や圧力から、内部の液晶を守り、平滑性が必要なことから、アクリル樹脂シートが広く用いられている。製造加工時には耐擦傷性のための表面硬度の硬いもの、さらに、アクリル樹脂は吸水性のためガスバリア性も望まれる。
【0003】
また、透明導電膜は可視光透過性と電気伝導性を兼ね備えた膜として広く知られており、その代表的なものとして、スズ添加酸化インジウム膜(以下「ITO膜」という)が挙げられる。ITO膜を透明基材上に積層した積層体は、電極、通電による発熱体、電磁波の遮蔽材や透光体として広く用いられている。透光体の用途としては、自動車、航空機や、建物の窓、スクリーン、モニター等の電磁波シールド板、液晶表示基板等がある。透光体の形状としては、使用する用途に応じた平面形状や曲面形状等がある。透明基材上にITO膜を形成する手段としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が知られている。このような透光体の基材としては、これまでガラスが主に用いられてきたが、需要や用途が増えるにつれ、加工性や生産性の向上が求められるようになってきた。そのため近年、ガラスに比べ軽量で加工性・生産性に優れたプラスチックが注目されポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、環状オレフィン樹脂などが用いられるようになってきた。透明プラスチック基板に金属酸化物のガス・水蒸気バリア層を設けた透明導電性フィルムが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
液晶ディスプレイに用いられる電極基板では、全光線透過率が同じであっても複屈折がより小さい高分子材料成形体が必要とされ、さらに近年、液晶ディスプレイが大型化し、それに必要な高分子光学材料成形品が大型化するにつれて、外力の偏りによって生じる複屈折の分布を小さくするために、外力による複屈折の変化、即ち光弾性係数の小さい材料が求められている。透明な光等方性ベースシートとしてポリアリレート、ポリカーボネートに酸化ケイ素の層を設けた電極基板が知られている(例えば、特許文献3参照)。
中でもアクリル系樹脂は、その透明性の高さから幅広く用いられており、基材に使用する場合、基材とITO膜との密着力不足を補うために、アクリル系樹脂基材とITO膜との間に3次元架橋したアクリル系樹脂系の中間層を介することが知られている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。しかし、アクリル系樹脂基材にITO膜を形成してなる透明導電膜基板は実用化には至っておらず、基材とITO膜との密着性不良、基材の変形によるITO膜の破壊のため、抵抗値の安定性が保たれないものと考えられる。
【特許文献1】:特開昭55−105222号公報
【特許文献2】:特開昭62−51740号公報
【特許文献3】:特許第3305022号公報
【特許文献4】:特開昭62−71111号公報
【特許文献5】:特開昭62−173248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外力による複屈折の変化、即ち光弾性係数の小さい耐熱性アクリル系透明樹脂基板にハードコート層ならびに無機バリア層を有する事により表面硬度を改良して表面硬度、光学特性、耐熱性が良好な無機バリア層を有した耐熱性アクリル系樹脂積層体、ならびにこの耐熱性アクリル系樹脂積層体にスズ添加酸化インジウムをはじめとした透明導電膜を形成した透明導電性積層体、すなわち光学特性、抵抗値の安定性、耐熱安定性に優れた透明導電性積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、メタクリル酸メチル単位40〜90質量%、無水マレイン酸単位5〜20質量%、及び芳香族ビニル化合物単位5〜40質量%を共重合して得られる耐熱性アクリル系樹脂透明基板にハードコート層ならびに無機バリア層を有する事で得た耐熱性アクリル系樹脂積層体に透明導電膜を形成することにより光学特性、抵抗値の安定性、耐熱安定性に優れた透明導電性積層体が出来ることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)メタクリル酸メチル単位40〜90質量%、無水マレイン酸単位5〜20質量%、及び芳香族ビニル化合物単位5〜40質量%を共重合して得られる耐熱性アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面に、ハードコート処理を1種以上施すことを特徴とするハードコート層を被覆し、その少なくとも一表面上にスズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなる透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
(2)メタクリル酸メチル単位40〜90質量%、無水マレイン酸単位5〜20質量%、及び芳香族ビニル化合物単位5〜40質量%を共重合して得られる耐熱性アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面に、無機バリア層を1種以上有していることを特徴とし、さらにその少なくとも一表面上にスズ,ゲルマニウム,亜鉛,ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなる透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
(3)該耐熱性アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面の表面に、
A.ハードコート層
B.無機バリア層
で形成された多層膜を有し、さらにその少なくとも一表面上にスズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなることを特徴とする(1)または(2)に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
(4)アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面の表面に、
A.ハードコート層からなる第一層
B.無機バリア層からなる第二層
の順で形成された多層膜を有し、さらにその少なくとも一表面上にスズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなることを特徴とする(3)に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【0007】
(5)無機バリア層が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素又はこれらの2種以上からなる混合材料の薄膜である、(2)〜(4)のいずれかに記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
(6)無機バリア層が酸化ケイ素であり、SiOx(ただし、1<x≦2)の膜である、(5)に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
(7)該耐熱性アクリル系樹脂透明基板がフィルム、もしくはシートであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
(8)全光線透過率が70%以上、シート抵抗値100Ω/□以下であることを特徴とする(1)〜(7)に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体のディスプレイ用透明電極への使用。
である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明をさらに詳細に説明する。本発明におけるアクリル系樹脂透明基板の耐熱アクリル系樹脂には、メタクリル酸エステルおよびまたはアクリル酸エステルと、スチレン及びo−メチルスチレン,p−メチルスチレン,2,4−ジメチルスチレン,o−エチルスチレン,p−エチルスチレン,p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン,α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類との共重合体があげられる。好ましいものとしてはメタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体があり、共重合体中のメタクリル酸メチル単位が40から90重量%、無水マレイン酸単位が5〜20重量%、スチレン単位が5〜40重量%、かつ無水マレイン酸単位に対するスチレン単位の割合が1〜3倍であることが耐熱性、光弾性係数の点から好ましい。さらに好ましくは、共重合体中のメタクリル酸メチル単位が42〜83重量%、無水マレイン酸単位が5〜18重量%、スチレン単位が12〜40重量%であり、とりわけ好ましくは、共重合体中のメタクリル酸メチル単位が45〜ら78重量%、無水マレイン酸単位が6〜15重量%、スチレン単位が16〜40重量%である。この樹脂の特徴は、耐熱性はもちろん、耐湿性、ガス・水蒸気バリア性、光学特性、耐溶剤性に優れている。
【0009】
耐熱アクリル系樹脂の重量平均分子量は5万〜20万のものが望ましい。重量平均分子量は成形品の強度の観点から5万以上が望ましく、成形加工性、流動性の観点から20万以下が望ましい。さらに望ましい範囲は7万〜15万である。また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。アクリル系樹脂を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができるが、光学用途としては微小な異物の混入はできるだけ避けるのが好ましく、この観点からは懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が望ましい。溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調整した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
【0010】
重合反応に用いられる開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えばアゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物が用いられ、又特に90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上でかつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましく、具体的には1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は0.005−5質量%の範囲で用いられる。重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤は、一般的なラジカル重合において用いる任意のものが使用され、例えばブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、重合度が上記の範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。耐熱アクリル系樹脂の製造方法は、特公昭63−1964等に記載されている方法等を用いることができる。アクリル系樹脂は、分子量、組成等がことなる2種以上のものを同時に用いることができる。
【0011】
本発明における耐熱性アクリル系樹脂透明基板を製造するには、必要に応じて染料、顔料、ヒンダードフェノール系やリン酸塩等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、2-ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系などの紫外線吸収剤、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系などの可塑剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、またはトリグリセリド系などの離型剤、高級脂肪酸エステル、ポリオレフィン系などの滑剤、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩などの帯電防止剤、リン系、リン/塩素系、リン/臭素系などの難燃剤、反射光のぎらつきを防止するためにメタクリル酸メチル/スチレン共重合体ビーズなどの有機系光拡散剤、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルクなどの無機系光拡散剤、補強剤として多段重号で得られるアクリル系ゴム等を使用しても良い。これらの添加剤を配合するときには、公知の方法で実施しうる。例えば、単量体混合物にあらかじめ添加剤を溶解しておき重合する方法や、溶融状態、ビーズ状あるいはペレット状の樹脂に添加剤をミキサー等でドライブレンドし、押出し機を用いて混練、造粒する方法などが挙げられる。ただし、透明導電膜の製膜時に高温で加熱処理される場合があり、揮発性のある添加剤を配合するのは好ましくない。
【0012】
本発明におけるハードコート層としては、例えば、分子中に少なくとも2個の官能基を有する化合物からなる被膜を硬化したものが挙げられる。ハードコート層を形成するための官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基のような不飽和二重結合を有する基、エポキシ基やシラノール基のような反応性の置換基などが挙げられる。なかでも、不飽和二重結合を有する基は、紫外線や電子線のような活性化エネルギー線の照射により容易に硬化しうるので、好ましく用いられる。不飽和二重結合を有する基を分子中に少なくとも2個有する化合物としては、例えば、多官能アクリレート化合物などが挙げられる。ここで、多官能アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基及び/又はメタクロイルオキシ基を有する化合物をいう。以下、アクリロイルオキシ基とメタクロイルオキシ基とをまとめて(メタ)アクリロイルオキシ基と呼ぶ。
【0013】
多官能アクリレート化合物としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。 エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基を有するポリオール化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のカルボニル基を有するカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリオール化合物とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物などである。
【0014】
これらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いることができる。またこれら各化合物の2量体、3量体などのオリゴマーであってもよい。
ハードコート層は、通常の方法、例えば、ハードコート剤を樹脂基材の表面に塗布することにより被膜とし、これに活性化エネルギー線を照射することにより設けることができる。塗布方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、スピンコート法、ダイコート法、フローコート法、スプレーコート法などが挙げられる。ハードコート層の厚みは、通常0.5〜50μm 程度、好ましくは1〜20μm 程度である。さらに好ましくは2〜10μm程度である。その厚みが0.5μm 以上50μm以下であると、耐擦傷性が良く、亀裂の発生が起こりにくくなる。
【0015】
かかるハードコート層は、帯電防止性のハードコート層であってもよい。帯電防止性のハードコート層としては、例えば、導電性粒子が分散されたハードコート層、界面活性剤を含有するハードコート層などが挙げられる。導電性粒子が分散されたハードコート層としては、不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物が硬化されてなる硬化被膜に、導電性粒子が分散されてなる層などが挙げられる。導電性粒子としては、例えば、スズ、アンチモン、チタン、インジウムの如き金属の酸化物や、これらの金属の複合酸化物、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)やアンチモンドープ酸化スズなどの粒子が挙げられる。導電性粒子の粒子径は、一次粒子径で通常、0.001〜0.1μm 程度である。導電性粒子の粒子径は、一次粒子径で通常、0.001〜0.1μm 程度である。この範囲内では、透明性が維持される傾向にある。
【0016】
また、塗膜の耐摩耗性の向上と硬化時における体積収縮率の減少のために、無機微粒子を含有させても構わない。無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン等の金属酸化物よりなる微粒子が好ましい。かかる無機微粒子の含有量は20〜60重量%が好ましく、無機微粒子の平均粒径は100μm以下のものが好ましい。この含有量の範囲内では、製品フィルムのカール発生を抑えられ、ハードコート樹脂の伸縮性不良と屈曲によるクラックの発生も低減できる。また、この平均粒径は100nm以上であることが好ましい。
反射防止層のハードコート性(傷防止性)向上のために、無機微粒子表面に光重合反応性を有する感光性基を導入したものが好ましい。この感光性基としては単官能性または多官能性アクリレートが好ましい。
このハードコート層は、その表面が鉛筆硬度で4H以上の硬さを有することが好ましい。
【0017】
本発明における無機バリア層は、アクリル樹脂透明基板の表面硬度を強くするだけでなく、透明性、透明導電膜との密着性の向上、アクリル樹脂透明基板の耐久性の向上或いは、ガス・水蒸気バリア性能を向上させる効果が期待できる。
無機バリア層としては、金属酸化物、金属窒化物、若しくはこれらの混合物で構成された薄膜であることが好ましい。具体的な無機バリア層の構成成分としては、一般的に真空成膜される材料であれば原則的に使用可能であり、中でもセラミック材料を用いると、透明性の高い薄膜を形成することができる。セラミック材料としては、SiOx、AlOx、SiOxNy、SiNx、SiOxNyCz,SiNxCy,AlOxNy,AlNx,AlOxNyCz,及びAlNxCy等を例示することができる。ここで、x、y、zは、それぞれ数を表す。これらの金属化合物材料の中でも、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び、これらの混合材料が無機バリア層として好ましい。さらに好ましくは、SiOx(ただし、1<x≦2)膜であり、表面硬度は硬く、非導電性である。この中で、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0の珪素酸化物を主成分とする金属酸化物が良好である。珪素酸化物の珪素原子数に対する酸素原子数の割合は、X線光電子分光法、X線マイクロ分光法、オージェ電子分光法、ラザホード後方散乱法等により分析、決定される。この割合の範囲であると、透明性が良好である。更に上記珪素酸化物中に、酸化マグネシウム及び/又はフッ化マグネシウムを全体の重量に対して5〜30質量%含有すると、透明性をより高くすることができる。
【0018】
無機バリア層はイオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD(化学気相蒸着)法、プラズマCVD法、物理蒸着法等の真空成膜法で作成することができる。なかでも、樹脂基板上に優れたガスバリア性が得られるという観点から、高速成膜で大面積を均一に成膜できるイオンプレーティング法が好ましい。
無機バリア層の厚さは1〜1000nmが好ましく、より好ましくは2〜100nm、さらに好ましくは3〜50nmである。
【0019】
本発明における耐熱性アクリル系樹脂透明基板のフィルム・シートは、厚さの違いのみであり、フィルムは300μm以下の厚さのものを言い、シートは300μmを超えるものである。耐熱性アクリル系透明樹脂基板の厚さは、0.01〜10.0mmの範囲のフィルムまたはシートであることが好ましい。0.01〜10.0mmの範囲のフィルムまたはシートは、パネル加工時に変形しにくく取り扱いやすい。また、基板の荷重による変形も生じにくくなるので、液晶表示素子を組み立てた際に、二重像が顕著になり表示品位が損なわれにくくなる。さらに好ましい厚さは0.1〜5.0mmの範囲である。
【0020】
耐熱性アクリル系樹脂透明基板のフィルムまたはシートは透明性が必須であり、その透明性の指標として全光線透過率が80%以上、ヘイズ値が5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは全光線透過率が85%以上、ヘイズ値が2%以下である。
耐熱性アクリル系樹脂透明基板のフィルムまたはシートは光学等方性が優れるものが好ましく、リタデーション値が30nm以下、遅相軸のバラツキが40度以内、より好ましくはリタデーション値が20nm以下、遅相軸のバラツキが20度以内のものが好適である。ここで、リタデーション値は、公知の測定装置を用いて測定した波長590nmにおける複屈折の屈折率の差△nと膜厚dとの積△n・dで表されるものである。
耐熱性アクリル系樹脂透明基板のフィルムまたはシートはその表面にスパッタ法や真空蒸着法などにより金属蒸着膜を形成する際に、その操作温度に耐え得る耐熱性を有していることが必要である。その耐熱性の指標として、温度80℃の雰囲気下で約30分間静置した際、そり・変形がないことが好ましい。
【0021】
本発明における透明導電膜に用いる材料としては、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜を利用することができる。
酸化インジウム膜に添加されるスズ,ゲルマニウム,亜鉛,ガリウム、マグネシウムの含有量は、これらのうち1種類を添加する場合は、インジウムに対するこれらの材料の原子比(Sn/In,Ge/In,Zn/In,Ga/In,Mg/In)をいずれも0.5〜20.0%が好ましい。より好ましくは5〜10%が好ましい。中でも導電性と透明性のバランスがよいスズが最も好ましい。このような比率で添加すると、膜の導電性及び透明性を良好に維持できる。また、これらの材料の複数種類を添加する場合は、添加する材料の全体の添加量をインジウムに対して20.0%以下とするとよい。
【0022】
透明導電膜の膜厚は、10nm〜1000nmの範囲に設定するとよい。この膜厚の範囲では、用途によって異なるが、可撓性が保たれた連続的な膜を得る事が出来る。さらに、本発明の透明導電膜の膜厚は用途に応じて20〜500nmとすることが望ましい。
透明導電性積層体は、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が10%以下であることが必要であり、この範囲では、透明感が良好である。さらに好ましくは全光線透過率が80%以上、ヘイズ値が5%以下である。ただしディスプレイ用透明電極の場合、70%以上であれば適用できる。
透明導電性積層体のシート抵抗値は、用途によって異なるが、5〜10000Ω/□の範囲のものが導電性材料として好ましい。さらに好ましくは10〜300Ω/□の範囲のものが好ましい。ただし、ディスプレイ用透明電極に適しているのは10〜100Ω/□の範囲のものが好ましい。
透明導電性積層体の製造方法において、成膜法は、特に限定するものではなく、スパッタリング法、EB蒸着法、イオンプレーデイング法、CVD法を用いることもできるが、より好ましくは、スパッタリング法により成膜する。
【0023】
本発明の耐熱性アクリル系樹脂積層体は、ハードコート層、無機バリア層の層構成を有する多層積層シート上にITO膜を形成したものである。この多層積層体の層構成は、透明基板に第一層:ハードコート層、第二層:無機バリア層、もしくは、第一層:無機バリア層、第二層:ハードコート層のいずれでも構わない。さらに、透明基板の片面もしくは両面に層構成を有しても構わない。好ましくは、透明基板に第一層:ハードコート層、第二層:無機バリア層の構成である。
【0024】
ハードコート層は、透明基板に耐スクラッチ性、表面硬度、耐透湿性、耐熱性、耐溶剤性等の性質を付与するのに貢献する。無機バリア層は、透明基板に耐スクラッチ性、表面硬度、耐透湿性、耐透気性、耐熱性、耐溶剤性等の性質を付与するのに貢献する。好ましくは第一層:中間層を構成するハードコート層と、第二層:最外層を構成する無機バリア層の組合せは、一段と耐スクラッチ性および表面硬度を向上させる役割を果たすと共に、ITO膜の形成時、熱によるダメージを軽減化させていると考えられる。
さらに本発明の酸化亜鉛系透明導電積層体に最外層として、任意の樹脂又は無機化合物の層を1層又は2層以上積層してもよい。このような最外層には、保護膜、反射防止膜、フィルター等の役割、又は、液晶の視野角の調整、曇り止め等の機能を持たせることができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。単位を部で表示しているところは、重量部を表す。
<評価法>
(A)ハードコート層を被覆した樹脂積層体の評価
(A−1)全光線透過率、ヘイズ
JIS K 6711に準拠して評価した。
(A−2)面内レタデーション(Re)の測定
大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100を用いて、回転検光子法により23℃における面内レタデーション(Re)を測定した。
(A−3)ハードコート層の外観評価
蛍光灯がついている部屋で、蛍光灯が上からハードコート層を被覆した樹脂積層体表面に写りこむ(反射する)ようにし、表示部分を斜めから見て蛍光灯の像がゆがむ個所で凹凸の有無を目視で観察し、凹凸が無い場合は「○」(良好)とし、凹凸が生じた場合は「×」(不良)と評価した。
(A−4)耐久性試験1の密着性:
ハードコート層を被覆した樹脂積層体を80℃の恒温室槽で24時間放置し、密着性の評価方法として粘着テープ(ニチバン製1.8cm幅のセロハンテープ)の粘着面を樹脂積層体のハードコート層表面に密着させ、引き剥がす剥離テストにより評価する。ハードコート層が全く剥離しない場合を「○」(良好)とし、全面剥離した場合を「×」(不良)と表示する。
【0026】
(A−5)光弾性係数の測定
Macromolecules 2004,37,1062-1066に詳細の記載のある複屈折測定装置を用いた。レーザー光の経路にシート片の引張装置を配置し、23℃で伸張応力をかけながら複屈折を測定した。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分)、試験片幅は7mmで測定を行った。複屈折(Δn)と伸張応力(σR)の関係から、最小二乗近似により線形領域の直線の傾きをもとめ光弾性係数(CR)を計算し、光惰性係数の絶対値(|CR|)を求めた。傾きの絶対値が小さいほど光弾性係数が0に近いことを示し、好ましい光学特性であることを示す。
|CR|=|Δn|/σR
(CR:光弾性係数、σR:伸張応力、Δn:複屈折、n1:伸張方向の屈折率、n
2:伸張方向と垂直な屈折率)
【0027】
(B)SiOx膜を有したアクリル系樹脂積層体の評価
(B−1)全光線透過率、ヘイズ
上記(A−1)と同様に測定した。
(B−2)面内レタデーション(Re)の測定
上記(A−2)と同様に測定した。
(B−3)SiOx膜の状態
SiOx膜を有したアクリル系樹脂積層体表面を顕微鏡で800倍に拡大し、SiOx膜の亀裂が認められない場合は「○」(良好)と評価し、亀裂が認められる場合は「×」(不良)と評価した。
(B−4)密着性評価
密着性の評価方法として粘着テープ(ニチバン製1.8cm幅のセロハンテープ)の粘着面を透明導電性積層体のSiOx膜に密着させ、引き剥がす剥離テストにより評価する。SiOx膜が全く剥離しない場合を「○」(良好)とし、全面剥離した場合を「×」(不良)と表示した。
(B−5)光弾性係数の測定
上記(A−5)と同様に測定した。
【0028】
(C)透明導電膜を形成してなる透明導電性積層体の評価
(C−1)全光線透過率、ヘイズ
上記(A−1)と同様に測定した。
(C−2)面内レタデーション(Re)の測定
上記(A−2)と同様に測定した。
(C−3)ITO膜の外観評価:
透明導電性積層体表面を顕微鏡で800倍に拡大し、ITO膜の亀裂が認められない場合は「○」(良好)と評価し、亀裂が認められる場合は「×」(不良)と評価した。
(C−4)密着性評価
密着性の評価方法として粘着テープ(ニチバン製1.8cm幅のセロハンテープ)の粘着面を透明導電性積層体のITO膜に密着させ、引き剥がす剥離テストにより評価する。ITOO膜が全く剥離しない場合を「○」(良好)とし、全面剥離した場合を「×」(不良)と表示した。
【0029】
(C−5)シート抵抗値の経時変化測定
4探針法(接触型):JIS R 1637に準拠して評価した。
透明導電性積層体のシート抵抗値は、成膜直後と50日後実験室内で静置したものについて測定した。
(C−6)耐久性試験1:耐熱試験後のシート抵抗値の経時変化測定
80℃の恒温室槽で200時間静置した後、室温に戻してから(B−5)と同様の方法にて測定した。
(C−7)耐久性試験2:耐寒試験後のシート抵抗値の経時変化測定
−20℃の冷凍庫で200時間静置した後、室温に戻してから(B−5)と同様の方法にて測定した。
(C−8)耐久性試験3:耐湿熱試験後のシート抵抗値の経時変化測定
60℃、90%RHの恒温室槽で200時間静置した後、室温に戻してから(B−5)と同様の方法にて測定した。
【0030】
(C−9)基板の変形評価1:熱オーブンテスト
温度80℃の雰囲気下、約30分間静置して目視でそり・変形を評価した。透明導電性積層体が全く変形・そりがない場合を「○」(良好)、変形・そりがわずかに認められる場合を「△」(可)とし、変形・そりが認められる場合を「×」(不良)と表示する。
(C−10)基板の変形評価2:熱オーブンテスト
温度90℃の雰囲気下、約1時間静置して目視でそり・変形を評価した。透明導電性積層体が全く変形・そりがない場合を「○」(良好)、変形・そりがわずかに認められる場合を「△」(可)とし、変形・そりが認められる場合を「×」(不良)と表示する。
【0031】
<用いた原材料>
(a)アクリル系樹脂
メタクリル酸メチル96.7質量部、アクリル酸メチル2.1重量部、及びキシレン1重量部からなる単量体混合物に、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,3-トリメチルシクロヘキサン0.0294重量部、及びn-オクチルメルカプタン0.28重量部を添加し、均一に混合する。この溶液を内容積10リットルの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、以下の実施例に使用したアクリル系樹脂である(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル)共重合体ペレットを得た。得られた共重合体のアクリル酸メチル含量は2.0%、重量平均分子量は102,000、ASTM-D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。
【0032】
(b)耐熱アクリル系樹脂
特公昭63-1964に記載の方法で、メタクリル酸メチル-無水マレイン酸-スチレン共重合体を得た。得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、無水マレイン酸10質量%、スチレン16質量%であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM-D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.6g/10分であった。
(c)各樹脂透明基板の作成
クロックナー社製 F40の射出成形機を利用し、各樹脂について平板(80×80×2mmt)を作成した。それぞれの樹脂の成形温度は、アクリル系樹脂:260℃、耐熱アクリル系樹脂:270℃、ポリカーボネート樹脂:300℃で行った。
【0033】
[実施例1および比較例1]
(b)耐熱アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂(旭美化成(株)社製、製品名WONDERLITE PC175)を各々射出成形した樹脂透明基板のシート(80×80×2mmt)について、市販のJPC製ハードコート液TKH-36Aに、各シートを浸漬し、引き上げて、紫外線を照射し、ハードコート層をシート表面に形成した。ハードコート層の膜厚はいずれも約5μmに調整した。各樹脂積層体の評価結果を表1に併記した。
【0034】
[実施例2および比較例2]
実施例1および比較例1のハードコート層を形成した各樹脂積層体に、さらにSiOx(ただし、1<x≦2)膜をスパッタリング法により製膜した。SiOx膜の膜厚は約30nmに調整した。
アクリル系樹脂積層体の評価結果を表2に併記した。
【0035】
[実施例3および比較例3、4]
実施例1、比較例1のハードコート層を形成した各樹脂積層体のシートおよび(a)アクリル系樹脂のシート上に、DCマグネトロンスパッタリング法により透明導電膜としてITOを製膜し、透明導電性積層体を得た。透明導電膜の膜厚は約400nmに調整した。また、このスパッタリングにおいては、質量比90/10のIn23/SnO2をターゲットとし、10−3Paまで排気し、体積比92.5/7.5のアルゴン/酸素を導入ガスとし、室温下でDCマグネトロンスパッタリングを行った。成膜時間は約10分とした。透明導電性積層体の評価結果を表3に併記した。
【0036】
[実施例4]
実施例1で得られた各樹脂積層体のシート上に、DCマグネトロンスパッタリング法により透明導電膜としてITOを製膜し、透明導電性積層体を得た。透明導電膜の膜厚は約1200nmに調整した。また、このスパッタリングにおいては、質量比90/10のIn23/SnO2をターゲットとし、10−3Paまで排気し、体積比92.5/7.5のアルゴン/酸素を導入ガスとし、室温下でDCマグネトロンスパッタリングを行った。成膜時間は約30分とした。
耐熱アクリル系樹脂積層体に製膜した透明導電性積層体の全光線透過率は83.5%、シート抵抗値は約55Ω/□であった。
【0037】
[実施例5および比較例5]
実施例2および比較例2で得られた各樹脂積層体のシート上に、DCマグネトロンスパッタリング法により透明導電膜としてITOを製膜し、透明導電性積層体を得た。透明導電膜の膜厚は約400nmに調整した。また、このスパッタリングにおいては、質量比90/10のIn23/SnO2をターゲットとし、10−3Paまで排気し、体積比92.5/7.5のアルゴン/酸素を導入ガスとし、室温下でDCマグネトロンスパッタリングを行った。成膜時間は約10分とした。透明導電性積層体の評価結果を表4に併記した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の耐熱性アクリル系樹脂積層体は、表面硬度が非常に良好であり、透明導電膜を形成した透明導電性積層体、すなわち光学特性、耐熱性に優れた透明導電性積層体は、太陽電池の光電変換素子の窓電極、電磁シールドの電磁遮蔽膜、透明電波吸収体、透明タッチパネル等の入力装置の電極、液晶表示体,EL(エレクトロルミネセンス)発光体,EC(エレクトロクロミック)表示体等の透明電極などの基板を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル単位40〜90質量%、無水マレイン酸単位5〜20質量%、及び芳香族ビニル化合物単位5〜40質量%を共重合して得られる耐熱性アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面に、ハードコート処理を1種以上施すことを特徴とするハードコート層を被覆し、その少なくとも一表面上にスズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなる透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【請求項2】
メタクリル酸メチル単位40〜90質量%、無水マレイン酸単位5〜20質量%、及び芳香族ビニル化合物単位5〜40質量%を共重合して得られる耐熱性アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面に、無機バリア層を1種以上有していることを特徴とし、さらにその少なくとも一表面上にスズ,ゲルマニウム,亜鉛,ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなる透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【請求項3】
該耐熱性アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面の表面に、
A.ハードコート層
B.無機バリア層
で形成された多層膜を有し、さらにその少なくとも一表面上にスズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【請求項4】
アクリル系樹脂透明基板の片面もしくは両面の表面に、
A.ハードコート層からなる第一層
B.無機バリア層からなる第二層
の順で形成された多層膜を有し、さらにその少なくとも一表面上にスズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜からなることを特徴とする請求項3に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【請求項5】
無機バリア層が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素又はこれらの2種以上からなる混合材料の薄膜である、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【請求項6】
無機バリア層が酸化ケイ素であり、SiOx(ただし、1<x≦2)の膜である、請求項5に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【請求項7】
該耐熱性アクリル系樹脂透明基板がフィルム、もしくはシートであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体。
【請求項8】
全光線透過率が70%以上、シート抵抗値100Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜請求項7に記載の透明導電膜形成用耐熱性アクリル系樹脂積層体のディスプレイ用透明電極への使用。

【公開番号】特開2008−94064(P2008−94064A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281873(P2006−281873)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】