説明

透明性が改良された無機質膜−基板複合材料及びその製造方法

【課題】
透明性が改良された無機質膜−基板複合材料及びその製造方法を提供する。

【解決手段】
基板上に、0.15μm以下の微粒子を殆ど含まない0.2〜2μm以下の脆性無機質微粒子のエアロゾルを吹き付けるエアロゾルデポジション法<AD法>により、無機質膜を形成した複合材料であって、無機質膜が可視光線部において透過率85%以上であることを特徴とする無機質膜−基板複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が改良された無機質膜−基板複合材料及びその製造方法に関し、とくにアルミナ微粒子による透明性が改良されたアルミナ被膜−合成樹脂基板複合材料、透明性が改良されたアルミナ被膜−ガラス基板複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脆性材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズル先端から基材に高速で吹き付けて基材上に脆性材料微粒子からなる構造物を形成する複合構造物を作製方法であって、前記ノズル先端から噴射されるエアロゾルのガスによる加熱や基板加熱による基板の軟化処理を行うことなどを特徴とする複合構造物の作製方法(以下エアロゾルデポジション法<AD法>という)は知られている(特許文献1参照)。
また、脆性材料焼成体の表面に脆性材料からなる多結晶構造物が形成された脆性材料複合構造物であり、前記脆性材料焼成体の平均結晶粒径d1と前記多結晶構造物の平均結晶粒径d2の間にはd1>d2の関係があり、前記多結晶構造物を構成する結晶は実質的に結晶配向性がなく、また前記多結晶構造物の結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在しないことを特徴とする脆性材料複合構造物も知られている(特許文献2参照)。
さらに、本発明者等よる、機械的衝撃力印加による前処理行程と、熱処理行程とを脆性材料微粒子の前処理行程として併用することで得られる脆性材料微粒子を用いると、常温程度の低温においてもエアロゾルデポジション法<AD法>が行え、基板に高い成膜速度、成形性と優れた膜密度の成膜が行え、理想的な複合材料を実現でき、優れた特性の複合材料が得られる基板に高速セラミックスコーティングを行う技術は、すでに特許出願している(特許文献3参照)。
しかし、低温においてもエアロゾルデポジション法<AD法>が行えるが、アルミナ(α−Al)、チタニア、ジルコニア(YSZ、ZrO)、SiO、MgB、CeF、CoO、NiO、MgO、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、アパタイトなどの脆性材料微粒子を用いて、プラスチックス基板にエアロゾルデポジション法<AD法>を適用しても、プラスチックス基板上にできるコーティング膜は、いずれも不透明であり、透明なコーティング膜は得られていない。

【特許文献1】特開2003−34003号公報
【特許文献2】特開2002−309383号公報
【特許文献3】特願2002−309383
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、雰囲気温度がプラスチック基板の溶融温度以下、好ましくは50℃以下の常温で行えるエアロゾルデポジション法により得られ、かつ、従来技術では達成できなかった透過率を有するエアロゾルデポジション法によるコーティング膜及びその製造方法を提供する。

【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、基板上に、0.15μm以下の微粒子を殆ど含まない0.2〜2μmの脆性無機質微粒子のエアロゾルを吹き付けるエアロゾルデポジション法<AD法>により、無機質膜を形成した複合材料であって、無機質膜が可視光線部において透過率85%以上であることを特徴とする無機質膜−基板複合材料である。
また、本発明においては、基板を、ガラス又は、ポリエ−テルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(6N)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、テフロン(登録商標)(4F)、エービーエス(ABS)、アクリル(ACR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM)からなる群より選ばれる合成樹脂とすることができる。
さらに、本発明においては、脆性無機質微粒子を、アルミナとくにアルファーアルミナ(α−Al)、チタニア、ジルコニア(YSZ、ZrO)、SiO、MgB、CeF、CoO、NiO、MgO、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、アパタイトらなる群より選ばれる無機質微粒子とすることができる。
また、本発明においては、脆性無機質微粒子を、回転数:100−400rpm、ボール量400−600g、脆性無機質微粒子70−150gでミリング時間60分〜420分処理して得られる脆性無機質微粒子を用いることができる。
本発明は視点を変えれば、圧力が1kPa以下の低真空状態のチャンバーで、脆性無機質微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを、ノズル先端から基板に亜音速から音速程度で吹き付けて基板上に脆性無機質微粒子からなる被膜を形成する複合構造物を作製方法であって、前記ノズル先端から噴射されるエアロゾルの温度を室温より高く制御することを特徴とする無機質膜−基板複合材料の製造方法でもある。
前記エアロゾル温度は、50℃以下の低温で行うことができる。
また、本発明は、エアロゾルのキャリアガスとして窒素ガスを用いることが望ましい。

【発明の効果】
【0005】
本発明の基板上に、0.15μm以下の微粒子を殆ど含まない0.2〜2μmの脆性無機質微粒子のエアロゾルを吹き付けるエアロゾルデポジション法<AD法>により、無機質膜を形成した複合材料であって、無機質膜が可視光線部において透過率85%以上であることを特徴とする無機質膜−基板複合材料は、被膜が緻密で透明性が高く、装飾用、耐薬品用、耐天候用の基材として種々の用途に用いることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、使用されるエアロゾルデポジション装置の概略図を図1に示す。
本発明で用いる基板は、ガラス又は合成樹脂であれば何でも良いが、透明性の高いものがより望ましい。
本発明で用いるガラスとしては、ケイ酸ガラス、ソーダガラス、カリガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
本発明で用いる合成樹脂としては、何でも良いが、ポリエ−テルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(6N)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、テフロン(登録商標)(4F)、エービーエス(ABS)、アクリル(ACR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM)からなる群より選ばれるものが好ましい。
また、本発明で用いる脆性無機質微粒子としては、周知の無機質材料ならなんでも使えるが、アルミナとくにアルファーアルミナ(α−Al)、チタニア、ジルコニア(YSZ、ZrO)、SiO、MgB、CeF、CoO、NiO、MgO、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、アパタイトらなる群より選ばれる無機質微粒子が好ましく用いられる。
【0007】
本発明では、基板上に、0.15μm以下の微粒子を殆ど含まない0.2〜2μmの脆性無機質微粒子を用いるが、ここで0.15μm以下の微粒子を殆ど含まないとは、目安として、電子顕微鏡の観察で平均の個数の比較において、0.15μm以下の微粒子/0.2〜2μm脆性無機質微粒子=3程度以下のもの、好ましくは1以下、より好ましくは、0.1〜0.5のものをいう。
このような0.15μm以下の微粒子を殆ど含まない0.2〜2μmの脆性無機質微粒子は、いかに示す処理を行うことにより得られる。
脆性無機質微粒子のミリング処理には,遊星型ボールミル(P−6,フレッチェ)を用いている.ミリング速度は200rpmとして,ミリング時間を変えて成膜性を調査した。
本発明のミリングは、脆性無機質微粒子を、回転数:100−400rpm、ボール量400−600g、脆性無機質微粒子70−150gでミリング時間60分〜420分処理する。
アルミナ微粉末を用いた処理時間による差を図2から図4に示す。
成膜したアルミナ膜の微細組織および結晶構造はそれぞれ,走査型電子顕微鏡(KEYENCE,VE−7800)およびX線回折装置(理学)にて評価した.成膜に使用したプラスチックのダイナミック硬度測定は,ダイナミック硬度試験機(島津,DUH−201)を用いて測定した.アルミナ膜の透光度は紫外線可視光光度計(島津,UV−2450PC)を用いて評価した.波長範囲は300−800nmである.

【0008】
粉末のミリング処理方法を以下に示す.ミリング処理には遊星型ボールミル(P−6,フレッチェ)を用いた.まず,ジルコニア製性ミルポットに所定量のジルコニアボール(400−600g)および脆性無機質微粒子(70−150g)を入れて,ミルポットを装置に固定して,ミルリング処理を実施した.ミリングは,回転数100−400rpmにて4分ミリング後,1分停止を1セットとして所定の時間(30−420分)になるまでミリングを繰り返した.ミリング終了後,ジルコニアボールと粉末を分級して,成膜に用いた.ミリングおよび熱処理によってアルミナ粉末の状態を変化させて,PES基板上におけるアルミナ膜の形成状態を評価した結果を表1に示す.ミリング時間が30分までの成膜形態は,無処理粉末(as−received)を用いた場合とほとんど変化しない.つまり,成膜時間を増やしても膜厚は増加せず,白濁した膜が形成した.ミリング時間が90分の粉末を用いると,アルミナ膜の成膜が可能となってくる.90分以上ミリングした場合も同様に成膜が可能であった.一方,熱処理を行うと,成膜形態は無処理粉末の結果と比較して悪くなる傾向を示した. 次に,各種プラスチック基板上へのアルミナ膜の成膜形態をミリング条件の異なる2つの粉末を用いて成膜を行った結果を表2に示す.ミリングE(ミリング時間180分)では,6NおよびPCには成膜可能,PEおよびPPには非常に薄い膜が形成され,4FおよびABSには成膜できなかった.また,ACRでは基板が削れた.また,ミリング時間を増加させたミリングC(ミリング時間420分)では,6N,PC,ABS,PPで成膜可能となり,PEおよび4Fに薄い膜が形成した.このように,ミリング時間の変化によって,成膜可能なプラスチック基板の種類が増加した.なお,ACRにも成膜条件を制御することによって,1μm以上の膜が形成することを確認しており,ミリングC(ミリング時間420分)の粉末を用いることによって,評価対象としたプラスチック基板にアルミナ膜の成膜を可能にした.

【0009】
【表1】

【0010】
本発明において、成膜時のキャリアガスをヘリウムガスで成膜を行うと膜が白濁化する,膜の均一性が悪くなるという結果が得られた.そして,窒素ガスを用いるとアルミナ膜の透明性や均一性がといった成膜状態が改善される.また,キャリアガスの流量を増加すると膜状態は悪くなる傾向にある.ガス流量は,3−6L/min程度が最も良い結果が得られている.ただし,キャリアガス流量の最適条件は,粉末のミリング処理の条件によっても異なる.
ノズル−基板間距離も15mm程度あるほうが良い.5mm程度に近づけると白濁化する傾向にある.さらに,420分のミリングを行ったアルミナ粉末を用いた実験では,エアロゾルチャンバからプロセスチャンバにつなぐチューブの途中に簡単なトラップを入れることによっても透過率は改善される.
【実施例1】
【0011】
あらかじめアルファーアルミナ微粒子に遊星ミル処理を施したミリングE(ミリング時間180分)の微粒子を用いた。これをエアロゾル発生器に設置した後、ガスボンベを開き、窒素ガスを流量3L/minで搬送管を通じてエアロゾル発生器に導入し、酸化アルミニウム微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを発生させる。
このエアロゾルを搬送管を通じてさらに構造物形成室の方向へ搬送し、高速に加速しつつノズルより基板に向けて噴射させる。ここでは、基板としてポリカーボネート(PC)基板、ケイ素ガラス基板、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板を用いた。
このときの酸化アルミニウム微粒子の速度は亜音速から音速程度まで加速されている。十分に加速されて運動エネルギーを得たエアロゾル中の酸化アルミニウム微粒子は、基板に衝突し、その衝撃のエネルギーにより細かく破砕されて、発生した微細断片粒子が基板の表面上で接合し、さらに微細断片粒子同士が接合して緻密質のアルミナ構造物を形成する。基板はXYステージ17により揺動され、所定の面積を持つアルミナとして表面上に形成されていく。この制御により、膜厚1〜2μmの酸化アルミニウム膜(構造物)が形成された。
以上の操作はいっさい非加熱の常温工程でおこなった。また形成中は排気ポンプを運転し、形成室内は圧力が1kPa以下の低真空状態に置かれている。また形成中は微細振幅振動装置を稼動させ、搬送管を振動させており、搬送管の内壁に微粒子が付着して堆積することを防ぐ。このため堆積した微粒子が離脱し凝集粒となってノズルから噴射されるという弊害がない。
【0012】
PC基板上に成膜したアルミナ膜のXRD測定結果を図5に示す.XRD測定方法を以下に示す.測定に用いたのは,自動X線測定装置(Rigaku,RINT2000/PC),ゴニオメータはRINT2000縦型ゴニオメータ,アタッチメントは薄膜,標準多目的試料台を用いている.プラスチック基板に10×10mm,膜厚10μm以下の膜を成膜した試料を付属の測定ホルダーにセットし,これを所定の装置の位置に取り付けた後,付属の測定ソフト(標準測定)を立ち上げ,管球:Cu,測定モード:2θ/θおよび連続モード,測定条件:開始角度20°,終了角度60°,サンプリング幅0.02°,スキャンスピード0.2°/min,電圧40V,電流40A,発散スリット1°,発散縦制限スリット5mm,散乱スリット1.16mm,受光スリット0.15mmなどに設定した後に測定を行っている.図5-Aは,アルミナ粉末,PC基板およびPC基板上のアルミナ膜のXRD測定結果を示している.PC基板のみでは非晶質構造を示しており,成膜後の測定結果を見ると回折ピークが現れていることから,基板上に結晶性膜が形成されていることがわかる.さらに,成膜に用いたアルミナ粉末の回折パターンと比較したところ,強度比や回折パターンには変化が見られない.このため,アルファアルミナの結晶構造を有する膜がPC基板上に形成されていることがわかる.ただし,各ピーク強度は小さく,ブロードになっている.一方,図5−Bはミリング処理を施していない粉末を用いてガラス基板上に成膜したアルミナ膜,ミリング条件の異なるアルミナ粉末を用いてPC基板上に成膜したアルミナ膜のXRD測定結果である.ガラスおよびPC基板形成された回折パターンには違いが見られない.ガラス基板上でも,プラスチック基板上でも同様にピーク強度が減少することや回折ピークのブロードニングも見られるため,膜構造は基板により大きく異ならないと考えることができるため,成膜機構も類似であると予想している.さらに,図5−B中のミリングE(ミリング時間180分)およびミリングC(ミリング時間420分)の回折パターンも比較すると,成膜後の結晶構造に対するミリング処理による変化は見られなかった.
次に,PCおよびPES基板上に成膜したアルミナ膜の断面観察結果を図6に示す.両者ともに,基板上に約1〜2μmの厚さを有する非常に緻密なアルミナ膜が形成されていることがわかる.さらに,プラスチック基板との界面には剥離や中間層などは観察されないことから,プラスチック基板と密着性の良い膜が形成されていると考えられる.
【実施例2】
【0013】
ミリングE(ミリング時間180分)のアルファーアルミナ微粒子を用いて、実施例1と同様にして基板上に膜厚1〜2μmのアルミナ膜(構造物)を作成した。基板にはPC,6NおよびPIを用いた。
透過率の測定方法は以下の通りである.透過率は,プラスチック基板上に40mm×20mm,厚さ1−3μmの無機質膜を成膜した試料を用いて,UV2200シリーズ用積分球付属装置(島津,ISR−2200)を取り付けた紫外線可視光光度計(島津,UV−2450PC)を用いて測定している.試料を挿入した付属のフィルムホルダを積分球入口窓部に取り付けた.そして,付属ソフトであるUVPCを立ち上げ,装置のキャリブレーションを実行した後,ソフトウェア上にて,測定条件で透過率測定モードを選択,測定範囲を800−300nmとし,スキャン速度は高速,スリット幅を1.0nm,サンプルピッチをAutoに設定した後に,オートゼロを実行し,測定を行った.PC,6NおよびPIに成膜したアルミナ膜の透過率を測定した結果を図7に示す.横軸は波長,縦軸は透過度を示している.図中の2つの線はそれぞれのプラスチック基板およびアルミナを成膜した試料の透過度を示している.測定に用いた試料の外観も併記している.測定結果より,PCおよび6Nでは成膜した試料の透過度は,基板のそれとほとんど変化しない.PIでは若干透過度が低下するものの,例えば600nmにおいて数%の低下しか見られない.以上から,少なくとも0.5μm以上の膜厚で波長範囲400−800nmにて85%以上,好ましくは1μm以上の膜厚で波長範囲400−800nmにて90%以上の透過率を有するアルミナ膜を作成できる.
300−800nmの波長領域の透光度評価では,PC,6NおよびPI基板上に成膜したアルミナ膜の透過度は,測定領域では透光度が非常に高い.成膜条件をさらに最適化することによって,様々な樹脂基板上にアルミナを始めとする酸化物セラミックス膜においても,AD法の特徴である高速成膜・常温での結晶膜・緻密膜形成が実現できると考えられる。

【0014】
本発明によって,各種プラスチック基板上へ高い透過率の膜が形成できることを示してきた.しかし,成膜条件によっては,成膜によってプラスチック基板が削ることや,膜厚が1μm以上にならないという現象も現れる.さらに,同じ成膜条件にて成膜を行っても,プラスチック基板によってアルミナ膜の膜厚が異なるという結果を得ている.これらの結果は,アルミナの成膜形態に基板特性が影響していることが考えられる.そこで,成膜に用いたプラスチック基板のダイナミック硬度測定を行った.測定方法は以下の通りである.測定に用いたのは,ダイナミック硬度試験機(島津,DUH−201)であり,四角錐のダイヤモンドのビッカース圧子を用いた.測定は,測定試料をホルダーにセットした後に,付属の測定ソフトを立ち上げ,測定モード:負荷−除荷モード,試験力:10g,保持時間:15s,負荷速度:1(1.35[gf/sec])とした後に測定を実施した.測定結果には7点実施した結果の算術平均を使用している.成膜に用いたプラスチック基板のダイナミック硬度評価を行った.PC,6N,PP,PE,4F,ARB,ACR,PI,POMのプラスチック基板のダイナミック硬度測定結果を図8に示す.横軸はDHV−1(塑性変形分を考慮しないダイナミック硬度),横軸はDHV−2(塑性変形分を考慮したダイナミック硬度)を示している.測定したプラスチック基板ではDHV−1が4から25,DHV−2が7から105という値を示している.成膜条件を制御すると測定したすべてのプラスチック基板にアルミナ膜の成膜が可能であることを示している.DHV−1およびDHV−2の値による影響は見られない.
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の複合材料は、これまで存在しなかったユニークなで複合材料あって、無機質膜−基板複合材料は、被膜が緻密で透明性が高く、装飾用、耐薬品用、耐天候用の基材として種々の用途に用いることができるので、産業上の利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明で用いるエアロゾルデポジション装置の概略図
【図2】ミリング処理時間0のアルミナ微粉末の電子顕微鏡写真
【図3】ミリング処理時間1時間のアルミナ微粉末の電子顕微鏡写真
【図4】ミリング処理時間7時間のアルミナ微粉末の電子顕微鏡写真
【図5】実施例1のX線回折図
【図6】PC基板(左)及びPES基板(右)におけるアルミナ被膜の断面写真
【図7】PC基板(上)、ナイロン基板(中)、ポリイミド基板(下)の透明性の比較
【図8】各種プラスチック基板のダイナミック硬度試験

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、0.15μm以下の微粒子を殆ど含まない0.2〜2μm以下の脆性無機質微粒子のエアロゾルを吹き付けるエアロゾルデポジション法<AD法>により、無機質膜を形成した複合材料であって、無機質膜が可視光線部において透過率85%以上であることを特徴とする無機質膜−基板複合材料。
【請求項2】
基板が、ガラス又は、ポリエ−テルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(6N)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、テフロン(登録商標)(4F)、エービーエス(ABS)、アクリル(ACR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM)からなる群より選ばれる合成樹脂である請求項1に記載した無機質膜−基板複合材料。
【請求項3】
脆性無機質微粒子が、アルミナ、チタニア、ジルコニア(YSZ、ZrO)、SiO、MgB、CeF、CoO、NiO、MgO、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、アパタイトらなる群より選ばれる無機質微粒子である請求項1に記載した無機質膜−基板複合材料。
【請求項4】
脆性無機質微粒子が、回転数:100−400rpm、ボール量400−600g、脆性無機質微粒子70−150gでミリング時間60分〜420分処理して得られる脆性無機質微粒子である請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載された無機質膜−基板複合材料。
【請求項5】
圧力が1kPa以下の低真空状態のチャンバーで、脆性無機質微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを、ノズル先端から基板に亜音速から音速程度で吹き付けて基板上に脆性無機質微粒子からなる被膜を形成する複合構造物を作製方法であって、前記ノズル先端から噴射されるエアロゾルの温度を室温より高く制御することを特徴とする無機質膜−基板複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記エアロゾル温度は、50℃以下の低温で行うことを特徴とする請求項5記載の無機質膜−基板複合材料の製造方法。
【請求項7】
エアロゾルのキャリアガスとして窒素ガスを用いることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載した無機質膜−基板複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−130703(P2006−130703A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319933(P2004−319933)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年9月17日 社団法人日本セラミックス協会発行の「第17回秋季シンポジウム 講演予稿集」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「ナノテクノロジープログラム(ナノ加工・計測技術) ナノレベル電子セラミックス材料低温成形・集積化技術」産業活力特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】