説明

透明架橋フィルム

【課題】
本発明は、単独で自己支持性を有し、高耐熱性、表面硬度に優れ、かつ光学等方性に優れた透明架橋フィルムを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の透明架橋フィルムは、ビニルエステル組成物65〜96重量部および多官能アクリレート4〜35重量部を含有する液状活性線硬化性組成物に、樹状構造を含む多官能アクリレートを添加した組成物を架橋させたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己支持性を有し、光学用フィルムとして好適な透明性、高いガラス転移点温度、更には表面硬度、光学等方性に優れた透明架橋フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム(PET、PEN等)、ポリカーボネートフィルム(PC)、ポリメチルメタクリレートフィルム(PMMA)、トリアセチルセルロースフィルム(TAC)、非晶性ポリオレフィンフィルム(非晶PO)等の透明プラスチックフィルムは、ガラスと比べて、軽量・割れにくい・曲げられるといった好適な性質を有する一方で、フィルム表面の硬度が低く、また耐摩耗性も不足しているため、他の固い物質との接触、引っ掻き等により表面に損傷を受けやすく、商品価値を著しく低下させたり、使用不可能となる場合がある。
【0003】
このため、上記の基材フィルム上に耐擦傷性や耐摩耗性に優れたハードコート層を設ける方法が知られており、ハードコートフィルムとして汎用的に利用されている。しかしながら、光学フィルムの代表的用途である液晶ディスプレイパネル(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の各種ディスプレイ用フィルムとして使用する場合には、次の様な課題が挙げられる。(1)設けたハードコート層と基材フィルムとの屈折率差が原因となり、虹色のむら(干渉縞)が発生する。(2)光源からの熱、加工中の熱などに起因する変形などによる商品価値低下の問題がある。
【0004】
前者の干渉縞は基材とハードコート層との屈折率差が原因となり、界面で反射する光の干渉により、3波長蛍光灯下で観察すると虹彩状反射が観察される現象で、ディスプレイ用途に用いる場合には視認性を低下させるひとつの原因となっている。
【0005】
この現象を改善する手段として、基材とハードコート層の屈折率差を小さくする方法がある。この方法として、基材とハードコート層の間に、両者の中間の屈折率をもつプライマー層を設けるという方法が提案されている。この方法では、中間層を設けても屈折率が段階的に変化するに過ぎず、干渉縞は低減しても無くなるまでには至らない。また中間層を設ける工程が必要となるためコスト高になるという問題もあった。(特許文献1参照)
その他の改善方法として、基材フィルムを溶解する溶剤を用いてハードコート剤を塗布し、基材を溶解または膨潤させることで反射界面レスとして干渉縞を低減する方法(特許文献2)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、基材フィルムを溶解、膨潤させる方法では、適用できる樹脂が限定され高度に二軸配向したポリエステルフィルムなどではオルトクロロフェノールのような特殊な溶剤に限定され、作業環境が極めて悪い。また、干渉縞の低減ができてもヘイズが高くなりディスプレイ用途などで求められる低いヘイズを得ることができず、視認性の悪いものになったりする。
【0007】
また、後者の熱による劣化は、基材フィルムのガラス転移点温度向上により改善することが知られている。耐熱性については、例えばアクリル樹脂フィルムの耐熱性を改良する目的で、グルタル酸無水物単位を有するフィルム(特許文献3および特許文献4参照)が開示されている。
【0008】
しかしながら単一フィルムであって高い耐熱性と表面硬度、光学等方性、更には自己支持性を有する透明フィルムは未だ提案されておらず、本フィルムの開発は偏向板保護フィルム、反射防止フィルム、拡散フィルム、集光フィルムなどの広範囲の光学用フィルムとして好適に使用できるものとなる。
【特許文献1】特開2000−111706号公報
【特許文献2】特開2003−205563号公報
【特許文献3】特開平7−268036号公報
【特許文献4】特開2004−2711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、単独で自己支持性を有し、高耐熱性、表面硬度に優れ、かつ光学等方性に優れた透明架橋フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の透明架橋フィルムは、ビニルエステル組成物65〜96重量部および第1の多官能アクリレート4〜35重量部を含有する液状活性線硬化性組成物に、樹状構造を含む第2の多官能アクリレートを添加した組成物を架橋させたことを特徴とするものである。
【0011】
かかる透明架橋フィルムの好ましい態様は、
(1) 前記樹状構造が、デンドリマー構造であり、
(2) 前記デンドリマー構造が、第2世代〜第4世代のデンドリマー構造であり、
(3) 前記液状活性線硬化性組成物が、該組成物100重量部に対し、前記樹状構造を持つ多官能アクリレートを5〜50重量部含有させたものであり、
(4) 前記透明架橋フィルムのリターデーションが5nm以下であり、
(5) 前記ビニルエステル組成物が、ビスフェノール型および/または脂環式のエポキシ化合物と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とをエステル化反応させて得られるビニルエステル組成物であり、
(7) 前記透明架橋フィルムの破断伸度が2%以上20%以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単独フィルムとして自己支持性を有し、かつ十分な表面硬度を有するため、表面硬度化層を積層する必要がなく、耐熱性が高いために熱劣化による変形などが殆ど無く、干渉縞レスであり、更には光学的に等方性であるという効果を奏する透明架橋フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、前記課題、つまり単独で自己支持性を有し、高耐熱性、表面硬度に優れ、かつ光学等方性に優れた透明架橋フィルム似ついて、鋭意検討し、ビニルエステル組成物と多官能アクリレートからなる硬化性組成物に、特定な樹状構造を有する多官能アクリレートを添加・配合してみたところ、かかる課題を一挙に解決する透明架橋フィルムを提供することができることを究明したものである。
【0014】
本発明の透明架橋フィルムは、ビニルエステル組成物を主たる構成成分とし、これに特定な樹状構造を持つ多官能アクリレートを配合したものであり、必要に応じてその他の単官能や多官能アクリレートを配合して構成された液状活性線硬化性組成物を硬化してなるフィルムである。
【0015】
ここで、ビニルエステル組成物(a)とは、エポキシ基の開環反応により生成した2級水酸基と、(メタ)アクリロイル基とを同一分子中に共有する一連のオリゴアクリレートをビニルエステルと定義し、本発明において好適に用いられるビニルエステル組成物(a)は、ビスフェノール型および/または脂環式のエポキシ化合物と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とをエステル化反応させて得られるものである。ビスフェノール型および脂環式エポキシ化合物としては、以下の様なものが例示できる。
【0016】
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応物、水素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、シクロヘキサンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、ノルボルナンジアルコールとエピクロルヒドリンとの反応物、テトラブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、トリシクロデカンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカーボネート、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート等である。
【0017】
次に、本発明の第2の成分である多官能アクリレートとは、一分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する組成物であって具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの組成物は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
また、市販されているかかる多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(登録商標”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(登録商標”デナコール”シリーズなど)、新中村化学工業株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(登録商標”UNIDIC”など)、東亜合成化学工業株式会社;(登録商標”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(登録商標”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(登録商標”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を使用することができる。
【0019】
これら第2成分の第1の多官能アクリレートは、フィルムの表面硬度を向上させるのに有効である。かかる多官能アクリレートの配合量は、上記のビニルエステル組成物100重量部に対し、4〜35重量部、好ましくは5〜30重量部、更に好ましくは15〜25重量部である。
【0020】
かかる多官能アクリレートの配合量が5重量部未満では、透明架橋フィルムの表面硬度が不足し、50重量部を越える場合には、フィルムの伸度が低下してもろさが発現し、自己支持性に問題が生じるおそれがでてくる。
【0021】
本発明の第3成分である樹状構造を持つ第2の多官能アクリレートとは、1分子中に、3(より好ましくは10以上)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹状構造を分子骨格に持つ組成物である。かかる樹状構造としては、デンドリマー、レギュラーデンドロン、デンドリグラフトおよびハイパーブランチポリマーを含む既知の樹状構造を例として挙げることができる。
【0022】
前記樹状構造であるデンドリマーは一般的には、中核になる核分子のまわりに枝状の骨格を重ねていく拡散法と、枝部分のユニットの組み合わせからはじめ、中の方に向かっていく収斂法で合成されるものである。該デンドリマーとは、コアと呼ばれる中心分子と、デンドロンと呼ばれる側鎖部分から構成されるものである。また、デンドロン部分の分岐回数を世代という。
【0023】
また、市販されているかかる樹状構造を持つ組成物としては、Sartomer Co., Inc.;(商品名“CN”シリーズなど)、大阪有機化学工業株式会社;(商品名“V#1000”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を使用することができる。
【0024】
これら第3成分の樹状構造を持つ第2の多官能アクリレートは、フィルムの表面硬度を向上させるのに有効である。かかる樹状構造を持つ多官能アクリレートの配合量は、上記のビニルエステル組成物と第2成分の多官能アクリレートを含有する液状活性線硬化型組成物100重量部に対し、5〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、更に好ましくは10〜25重量部である。多官能アクリレートの配合量が5重量部未満では、透明架橋フィルムの表面硬度が不足し、50重量部を越える場合には架橋密度が上昇し、もろさが発現して自己支持性に問題が生じるおそれがでてくる。
【0025】
本発明の透明架橋フィルムの表面硬度は、上記の第2成分および第3成分の配合量により左右されるものであり、好ましくは耐擦傷性の点から鉛筆硬度でH以上、より好ましくは2H以上であるのがよい。
【0026】
また、本発明の液状活性線硬化性組成物には、上記のビニルエステル組成物、多官能アクリレートの混合物以外に、以下のような2官能以下のアクリレート化合物を本発明の効果を阻害しない範囲内で低粘度化などの目的で使用することができる。
【0027】
アリルエステルモノマ−:オルソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、コハク酸ジアリル。
【0028】
アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマー:メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,6−ジブロム−4−tert−ブチルフェニルアクリレート、各種のウレタンアクリレート、エポキシアクリレート。
【0029】
本発明の透明架橋フィルムの破断伸度は、2%以上20%以下であることが望ましい。かかる破断伸度が2%未満の場合には、フィルムの自己支持性が低下し、ハンドリングが困難となる場合がある。また、破断伸度が20%を越える場合は、表面硬度の低下が起こる可能性が高い。これらのことから、破断伸度と自己支持性、表面硬度のバランスと取ることが肝要である。
【0030】
本発明に用いられる透明架橋フィルムを構成する上記ビニルエステル組成物、第1の多官能アクリレート、樹状構造を持つ第2の多官能アクリレート、光重合開始剤を含有する液状活性線硬化性組成物は、溶剤で希釈して用いても良いし、無溶剤とすることもできる。溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。光重合開始剤のフィルム内での均一分散性、および塗工時の作業性の向上、フィルムの平滑性、厚みのコントロール等を容易にするために有機溶剤を含むことが好ましい。特に製膜時の剪断力を軽減し、一方向への配向を緩和させるために有機溶剤を使用して低粘度で製膜することがフィルムの屈折率の等方性の点で好ましい。また紫外線によって硬化させる場合には紫外線照射を窒素雰囲気下で行うのが効率的であり、好ましい。
【0031】
以下に具体的な製膜方法を例示するが必ずしもこれに限定されるものではない。上記液状活性線硬化性組成物を、フィルム、金属板、回転する鏡面ドラム上、あるいは無端の駆動ベルトなどの基材上に流延し、必要に応じて溶剤を乾燥後、紫外線を照射して架橋硬化し、得られたフィルムを鏡面ドラム、もしくは該ベルトから連続的に剥離し巻き取る方法が好ましい。この方法を用いる場合、フィルム、金属板、ドラムおよびベルトといった基材の表面は硬化後のフィルムの剥離応力を軽減し、かつフィルムの等方性を維持するためにシリコーン、フッ素化合物などにより表面に離型処理されたものを用いるのが好ましい。
【0032】
本発明の透明架橋フィルムの厚みは、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは5〜300μm、より好ましくは20〜150μmであるのがよい。
【0033】
また、本発明の透明架橋フィルム中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有してもよい。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
【0034】
本発明の透明架橋フィルムは、好ましくはリターデーションが5nm以下、より好ましくは3nm以下、特に好ましくは1.5nm以下であるのがよい。これにより、光学的に等方である特性を有することができる。本発明においては、光学的等方性の指標としてリターデーションを用いる。
【0035】
ここでいうリターデーションとは、フィルム面内のリターデーション(Re)、およびフィルム厚み方向のリターデーション(Rth)の両方を表し、フィルムの主屈折率をnx(面内幅方向)、ny(面内長手方向)、nz(厚み方向)とし、フィルムの厚さをd(nm)とすると、Re=|nx−ny|×d、Rth=|(nx+ny)/2−nz|×dで求めたものである。
【0036】
かかるRe、Rthは、市販の自動複屈折計(例えば王子計測社製、「KOBRA−21ADH」)を用いて測定することができる。
【0037】
このようなフィルムを得るためには、該液状活性線硬化性組成物を、回転するドラム上、あるいは無端の駆動ベルトに流延して紫外線を照射して硬化させ、得られたフィルムをドラム、もしくは該ベルトから連続的に剥離し巻き取る製膜方法において過剰な応力をかけないようにすることが重要である。剥離などの際にフィルムに過剰な応力が作用するとフィルム面内に分子配向を生じ、レターデーションが大きくなるため、ドラムやベルトの表面に低応力で剥離可能な処理を施すのが有効である。具体的には低い張力で巻き取る若しくは、ゆっくりと巻き取るといった方法で剥離する。なお、基材の表面処理はシリコーンやフッ素化合物による処理が好ましい。
【0038】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。特に断りのない限り、3枚のサンプルの測定値の平均値を各測定における値とする。
【0039】
(1)光学的等方性
王子計測機器(株)製の自動複屈折計KOBRA−21ADH若しくはこれの同等品を用い、低位相差モードでサンプル中央部を測定する。測定波長は590nmとし、遅相軸を固定して、入射角を0°から50°まで10°ごとに変更して位相差の入射角依存性を測定する。入射角0°の値を面内位相差(Re)とし、厚み方向位相差(Rth)の算出には、入射角0°および40°の測定値を用いる。
【0040】
(2)鉛筆硬度
HEIDON(新東科学株式会社製)若しくはこれの同等品を用いてJIS K−5400(1990)に従って測定荷重500gで測定する。
【0041】
(3)自己支持性
25℃65%RHにおいて180度に折り曲げた時にフィルムが破断するかどうかで判断する。3枚のサンプルフィルム全てが破断しない場合は自己支持性ありとする。
【0042】
(4)破断伸度
25℃、65%RH下で株式会社オリエンテック製 引張試験機若しくはこれの同等品を用い、JIS K 7127法に従って試験を行い、フィルムが破断した時の歪み(伸び率)を求めて破断伸度とする。
【0043】
(5)干渉縞の有無
干渉縞の評価は、以下に方法に従いサンプルにハードコート層を積層した状態で評価を行った。まず、サンプルの片面に、厚みが約5μmとなるようにハードコート層を設けた。ハードコート層は、ハードコート塗料(JSR社製 Z7528 濃度50%若しくはこれの同等品)を#10のメタリングバーを用いて、薄膜を形成し、90℃にしたオーブンに入れ1分間熱処理を行った後、高圧水銀灯一灯(120W)を備えた、コンベアー式UV照射装置に、5m/minの速度で一度通し紫外線照射を行う。このようにしてハードコート層が積層されたサンプルを得る。
【0044】
さらに、裏面の反射の影響をなくすために、裏面(ハードコート層面の反対面)を240番のサンドペーパーで粗面化した後、黒色マジックインキ(登録商標)にて着色して調整したサンプルを、暗室にて、3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX−N 15W)若しくはこれの同等品)の直下30cmに置き、視点を変えながらサンプルを目視したときに、虹彩模様が視認できるか否かで評価する。3枚のサンプルのうち最も低い評価を用いる。
・虹彩模様がみえない : Aランク
・非常に弱い虹彩模様が見える : Bランク
・弱い虹色模様が見える : Cランク
・強い虹色模様がはっきり見える: Dランク。
【0045】
(6)全光線透過率
JIS K 7105法に従って試験を行う。なお、全光線透過率については10枚のサンプルの平均値とする。
【0046】
(7)ヘイズ
JIS K 7105法に従って試験を行う。
【実施例】
【0047】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0048】
(塗剤の調整)
(塗剤1:ビニルエステル組成物)
温度計、撹拌装置、分留コンデンサー、ガス導入管を取り付けた1Lのフラスコに、ビスフェノールAジエポキシ化合物 374.4g(1.20モル)、メタクリル酸 206.4g(2.4モル)、オクチル酸クロム 1.5g、亜リン酸0.15g、ハイドロキノン0.2gを加え、窒素ガスを吹き込みながら120〜125℃で2時間反応を行った。酸価11.0となった段階で、フラスコ内組成物を金属製バットに注入し、冷却したところ無色透明なビニルエステル組成物が得られた。
【0049】
(塗剤2:樹状構造を持つ多官能アクリレート)
樹状構造を持つ多官能アクリレートとしてCN2304(ハイパーブランチ体ポリエステルアクリレート:Sartomer Co., Inc.製)を用いた。CN2304は第3世代のデンドリマー構造を持つ。
【0050】
(塗剤3:樹状構造を持つ多官能アクリレート2)
樹状構造を持つ多官能アクリレートとしてCN2302(ハイパーブランチ体ポリエステルアクリレート:Sartomer Co., Inc.製)を用いた。CN2302は第2世代のデンドリマー構造を持つ。
【0051】
(塗剤4:樹状構造を持たない多官能アクリレート)
多官能アクリレートとしてDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬(株)製)を用いた。
【0052】
(光開始剤:オリゴヒドロキシケトン系光重合開始剤)
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン重合体(ESACURE KIP150:LAMBERTI製)を用いた。
【0053】
上記の材料を表1に示す混合比率(固形分重量比)で混合して塗布液とした。
【0054】
【表1】

【0055】
(製膜方法)
調合塗液をフッ素処理金属板上へアプリケーターを用いて塗工後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、金属板から剥離してフィルムを得た。なおフィルム厚みは50μmとした。
【0056】
上記の方法によって作成したフィルムの評価結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2からも明らかなように、多官能アクリレートが配合されていない場合(比較例1)では十分な表面硬度が得られなかった。これに対して、樹状構造アクリレートが添加されている場合(実施例1〜6)では、ガラス転移点温度、表面硬度、自己支持性、破断伸度、透明性、光学等方性のバランスのよいフィルムであった。
【0059】
これに対し、樹状構造を持たない多官能アクリレートを用いた場合(比較例2〜5)、では、ガラス転移点温度、表面硬度、自己支持性、破断伸度、透明性、光学等方性のバランスを取ることができなかった。
【0060】
表2に示すようにそれぞれの組成物が本発明の範囲にある場合(実施例1〜6)には、自己支持性、破断伸度に優れ、ガラス転移点温度が高く、表面硬度、透明性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の透明架橋フィルムは、光学用フィルムとして満足しうる透明性、耐熱性、表面硬度に優れ、かつ光学的等方性がある単独フィルムとして自己支持性に優れたものであり、各種ディスプレイの基材フィルムとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル組成物65〜96重量部および第1の多官能アクリレート4〜35重量部を含有する液状活性線硬化性組成物に、樹状構造を含む第2の多官能アクリレートを添加した組成物を架橋させた透明架橋フィルム。
【請求項2】
前記樹状構造が、デンドリマー構造である請求項1に記載の透明架橋フィルム。
【請求項3】
前記デンドリマー構造が、第2世代〜第4世代のデンドリマー構造である請求項2に記載の透明架橋フィルム。
【請求項4】
前記液状活性線硬化性組成物が、該組成物100重量部に対し、前記樹状構造を持つ第2の多官能アクリレートを5〜50重量部含有させたものである請求項1〜3のいずれかに記載の透明架橋フィルム。
【請求項5】
前記透明架橋フィルムのリターデーションが5nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の透明架橋フィルム。
【請求項6】
前記ビニルエステル組成物が、ビスフェノール型および/または脂環式のエポキシ化合物と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とをエステル化反応させて得られるビニルエステル組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の透明架橋フィルム。
【請求項7】
前記透明架橋フィルムの破断伸度が2%以上20%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の透明架橋フィルム。

【公開番号】特開2009−91477(P2009−91477A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264094(P2007−264094)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】