説明

透明樹脂板の製造方法

【課題】 近赤外線の透過を抑制するとともに表面の硬度が高く、少量生産に向いた透明樹脂板を提供すること。
【解決手段】 ポリカーボネイト基板1の表面にタングステン酸セシウム化合物の微粒子を分散したメタクリル酸メチル樹脂を塗布硬化させてアクリル系プライマー層2を成膜し、アクリル系プライマー層2の硬化表面にシロキサン系塗料を塗布硬化させてシリコン系ハードコート膜3を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線を遮蔽するアクリル、ポリカーボネイト等の透明樹脂板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎天下に置かれる車両室内は、その温度が高温となることから、赤外線を遮蔽・反射する窓用素材が開発されている。
このような窓用素材として利用されるポリカーボネイト、アクリル等の透明樹脂板について、近赤外線吸収剤を溶解した液状樹脂でコーティングするものや、透明樹脂板自体に近赤外線吸収剤を添加する技術が例えば特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1においては、近赤外線吸収剤として一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子を利用することが開示されている。特許文献1に開示された実験例によると、複合タングステン酸化物微粒子のうちCsを用い、トルエン、微粒子分散用分散剤と混合し、平均分散粒子径80nmのCs0.33WO微粒子の分散液を作製し、さらにハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)とトルエンとの混合液を混合して50μmPETフィルム上に塗布している。また、複合タングステン酸化物微粒子(Cs0.33WO)分散粉を、ポリエステル樹脂ペレットに添加して溶融混練し、押出し成形して、厚さ50μmのフィルムを形成する。このような方法で製造された透明樹脂板は、近赤外線の波長において低い透過率を達成しており、窓用素材として期待されるものである。
【0004】
また、透明樹脂板に対して近赤外線吸収剤を塗布する技術としてはさらに、特許文献2に示す技術も知られている。
【特許文献1】特開2007−314752号公報
【特許文献2】特開平7−310044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、複合タングステン酸化物微粒子を塗布する方法においては、ハードコート用紫外線硬化樹脂を加えて成膜表面の硬度の向上を図っているものの、近赤外線吸収剤の添加により樹脂層の可塑化が生じてしまい、ハードコート本来の強度が損なわれる。また、フィルム自体に溶融混練する方法は、製造に関与する設備が多くフィルムを大量に生産する場合にはコストパフォーマンスが良い。しかしながら、フィルムの特性については顧客仕様が関係するため、特性に合わせたフィルムを生産ラインに載せるたびに設備の調整をしなくてはならず少量生産には向かない。
また、特許文献2では、近赤外線における透過率を55%程度に下げてはいるが、車内温度の加熱を抑制するには透過率をさらに下げることが求められる。
【0006】
本発明は、近赤外線の透過を抑制するとともに表面の硬度が高く、少量生産に向いた透明樹脂板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の透明樹脂板の製造方法は、樹脂基板の表面に複合タングステン酸化物微粒子を分散したメタクリル酸メチル樹脂を塗布硬化させてプライマー層を成膜し、アクリル系プライマー樹脂の硬化表面にシロキサン系塗料を塗布硬化させてシリコン系ハードコート膜を成膜する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、近赤外線の透過を少量の添加剤により減衰させ、かつ表面の無機系のハードコート層の硬度を保った透明樹脂板の製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を説明する。
図1は本実施例による透明樹脂板1の断面図である。透明樹脂板は、樹脂基板2(ポリカーボネート基板)上にアクリル系プライマー層3、更にその上にシリコン系ハードコート層4を有している。これらの層は、以下に示す工程により形成される。
まず、ポリカーボネート基板2に、メタクリル酸メチル樹脂(通称、アクリル樹脂)系塗料を塗布する。塗料には、特許文献1に示される複合タングステン酸化物MWOの中でタングステン酸セシウム化合物(一般式CsYWO)の微粒子(10〜30nm)を選択して分散させたものを利用する。微粒子の大きさは、透過させる光の波長よりも短いものが良い。タングステン酸セシウム化合物の微粒子は、可視光領域の光の一部を選択的に透過し、透過色調は青色系を呈するものとなる。タングステン酸セシウム化合物の微粒子は、他の複合タングステン酸化物に比べて少量で良好な近赤外透過を抑制する特性をもたらすため、プライマー層のような薄い中間層に混入させるのに適している。UV吸収剤をアクリル樹脂系塗料に添加しても良い。
【0010】
このアクリル樹脂系塗料を塗布して、ポリカーボネート基板2の表面に膜を形成し、130℃の雰囲気下での60分程度の加熱乾燥する。この膜がアクリル系プライマー層3となり、次に行われるシリコン系ハードコート層4の密着性を向上させる。また、無機材料であるシリコン系ハードコート層4との熱膨張差に起因するクラック発生などを防止する上で寄与するものとなる。
【0011】
次いで、シロキサン系塗料をアクリル系プライマー層3の表面に塗布する。120℃程度の加熱乾燥により縮合反応させ硬化する。これにより、シロキサン系塗料は、ケイ素原子と酸素原子の繰り返し構造を基本に結合したシロキサン結合を有するシリコン系ハードコート層4を成膜する。このようにして形成されたハードコート層4やプライマー層3の膜厚は、塗料の粘度や密度、浸漬時の引き上げ速度や、環境温度などの影響を受けるが、それぞれ数μm程度である。
【0012】
図2は、透明樹脂板1の透過率測定結果を示すグラフである。透明樹脂板1の透過率は、曲線Tに示すように波長600nmから透過率は減少し、近赤外線(800nm〜1100nm)の範囲においては、20パーセントを下回る透過率となっている。一方、同図において太陽光スペクトラムSも併せて図示しているが、太陽光のスペクトラムは波長が長くなるにつれて減衰するものであるため、透明樹脂板1の近赤外線遮蔽特性により、日射を遮り高い断熱効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の日射遮蔽分散体、日射遮蔽体の模式的な断面図である。
【図2】透明樹脂板1の透過率測定結果を示すグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1・・・透明樹脂板
2・・・アクリル系プライマー層
3・・・シリコン系ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板の表面に複合タングステン酸化物微粒子を分散したメタクリル酸メチル樹脂を塗布硬化させてアクリル系プライマー層を成膜し、
前記アクリル系プライマー層の硬化表面にシロキサン系塗料を塗布硬化させてシリコン系ハードコート膜を成膜することを特徴とした透明樹脂板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−256413(P2009−256413A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104370(P2008−104370)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(399034253)株式会社レニアス (21)
【Fターム(参考)】